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特開2024-147357危険木潜在突出量推定システム、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147357
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】危険木潜在突出量推定システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/00 20240101AFI20241008BHJP
   G06T 17/05 20110101ALI20241008BHJP
   E02D 17/20 20060101ALN20241008BHJP
   G01C 15/00 20060101ALN20241008BHJP
   E01C 1/00 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
G06Q50/00
G06T17/05
E02D17/20
G01C15/00 104Z
E01C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060311
(22)【出願日】2023-04-03
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知己
(72)【発明者】
【氏名】繁冨 剛
(72)【発明者】
【氏名】小澤 徹三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 俊二
(72)【発明者】
【氏名】品川 武
(72)【発明者】
【氏名】極楽寺 隼也
(72)【発明者】
【氏名】松井 爽
【テーマコード(参考)】
2D051
5B050
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2D051AA07
2D051AH01
5B050BA09
5B050BA13
5B050BA17
5B050CA07
5B050DA10
5B050EA07
5B050EA18
5B050EA19
5B050EA27
5B050FA02
5B050FA09
5B050FA17
5B050GA08
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】道路に対する危険木の存在を的確に、経済的に且つ安全側に評価する。
【解決手段】処理回路はDEMとDSMからDCMを作成する工程と、道路境界線を設定する工程と、メッシュ作成領域の指定を取り込む工程と、メッシュ作成領域にてメッシュを作成する工程と、メッシュ毎にDCMの最大値とDCMが最大値の位置のメッシュ座標を取得する工程と、メッシュ毎にDCMが最大値の位置の地盤高さのメッシュ地盤高をDEMから取得する工程と、メッシュ毎にDCMが最大値の位置に最も近い道路境界線位置の境界線座標を計算する工程と、メッシュ毎に境界線座標の地盤高さの境界線地盤高をDEMから取得する工程と、メッシュ毎にメッシュ座標と境界線座標からDCMが最大値の位置と道路の離隔を求める工程と、メッシュ毎にDCMの最大値、離隔、メッシュ地盤高、境界線地盤高から突出量を計算する工程と、突出量から表示を決める工程を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工構造物への危険木の潜在突出量を算出して表示するための危険木潜在突出量推定システムであって、
前記危険木潜在突出量推定システムは、処理回路を有するコンピュータ装置を含み、
前記処理回路は、
DEMデータ及びDSMデータを取り込んでDCMデータを作成するステップと、
人工構造物である道路の境界線データを取り込んで設定するステップと、
解析対象であるメッシュ作成領域の指定入力を取り込むステップと、
前記指定されたメッシュ作成領域にて、メッシュを作成するステップと、
メッシュ毎に、DCMの最大値と、DCMが最大値となる位置の3次元座標であるメッシュ座標を取得するステップと、
メッシュ毎に、DCMが最大値となる位置における地盤高さであるメッシュ地盤高をDEMデータから取得するステップと、
メッシュ毎に、DCMが最大値となる位置に最も近い、前記道路の境界線の位置である境界線座標を計算するステップと、
メッシュ毎に、前記境界線座標の位置における地盤高さである境界線地盤高をDEMデータから取得するステップと、
メッシュ毎に、前記メッシュ座標と前記境界線座標から、DCMが最大値となる位置と道路との離隔を求めるステップと、
メッシュ毎に、DCMの最大値、離隔、メッシュ地盤高、及び境界線地盤高に基づいて、道路への倒木の突出量を計算するステップと、
メッシュ毎に、前記計算される突出量に応じて、表示内容を決定するステップと
を実行する、
危険木潜在突出量推定システム。
【請求項2】
前記処理回路は、
前記道路への倒木の突出量を計算するステップにおいて、DCMの最大値に対して、樹木の成長率を加算した上で、道路への倒木の突出量を計算する、
請求項1に記載の危険木潜在突出量推定システム。
【請求項3】
前記処理回路は、
前記道路への倒木の突出量を計算するステップにおいて、樹木の成長率について、標準木の計測による再算出を行った上で、道路への倒木の突出量を計算する、
請求項2に記載の危険木潜在突出量推定システム。
【請求項4】
前記処理回路は、
前記道路への倒木の突出量を計算するステップにおいて、DCMの最大値に安全率を乗じた上で、道路への倒木の突出量を計算する、
請求項1に記載の危険木潜在突出量推定システム。
【請求項5】
前記処理回路は、
前記道路への倒木の突出量を計算するステップにおいて、安全率について、標準木の計測による再算出を行った上で、道路への倒木の突出量を計算する、
請求項4に記載の危険木潜在突出量推定システム。
【請求項6】
処理回路により、DEMデータ及びDSMデータを取り込んでDCMデータを作成するステップと、
前記処理回路により、人工構造物である道路の境界線データを取り込んで設定するステップと、
前記処理回路により、解析対象であるメッシュ作成領域の指定入力を取り込むステップと、
前記処理回路により、前記指定されたメッシュ作成領域にて、メッシュを作成するステップと、
前記処理回路により、メッシュ毎に、DCMの最大値と、DCMが最大値となる位置の3次元座標であるメッシュ座標を取得するステップと、
前記処理回路により、メッシュ毎に、DCMが最大値となる位置における地盤高さであるメッシュ地盤高をDEMデータから取得するステップと、
前記処理回路により、メッシュ毎に、DCMが最大値となる位置に最も近い、前記道路の境界線の位置である境界線座標を計算するステップと、
前記処理回路により、メッシュ毎に、前記境界線座標の位置における地盤高さである境界線地盤高をDEMデータから取得するステップと、
前記処理回路により、メッシュ毎に、前記メッシュ座標と前記境界線座標から、DCMが最大値となる位置と道路との離隔を求めるステップと、
前記処理回路により、メッシュ毎に、DCMの最大値、離隔、メッシュ地盤高、及び境界線地盤高に基づいて、道路への倒木の突出量を計算するステップと、
前記処理回路により、メッシュ毎に、前記計算される突出量に応じて、表示内容を決定するステップと
を含む、
危険木潜在突出量推定方法。
【請求項7】
前記道路への倒木の突出量を計算するステップにおいて、DCMの最大値に対して、樹木の成長率を加算した上で、道路への倒木の突出量を計算する、
請求項6に記載の危険木潜在突出量推定方法。
【請求項8】
前記道路への倒木の突出量を計算するステップにおいて、樹木の成長率について、標準木の計測による補正を行った上で、道路への倒木の突出量を計算する、
請求項7に記載の危険木潜在突出量推定方法。
【請求項9】
前記道路への倒木の突出量を計算するステップにおいて、DCMの最大値に安全率を乗じた上で、道路への倒木の突出量を計算する、
請求項6に記載の危険木潜在突出量推定方法。
【請求項10】
前記道路への倒木の突出量を計算するステップにおいて、安全率について、標準木の計測による補正を行った上で、道路への倒木の突出量を計算する、
請求項9に記載の危険木潜在突出量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路等の人工構造物への、危険木の潜在突出量を推定するためのシステム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全な道路交通を確保すると共に、倒木による第三者等被害を未然に防止するため、道路緑地における日常点検として「危険木リストアップ」点検、緑地調査及び剪定・伐採等の維持管理作業等が行われている。
【0003】
しかしながら、長大切土のり面においては、上述の点検、調査及び作業等を行うには安全性や効率性等の課題が生じる。また、道路区域外を含む高速道路沿道地域では、私有地への立入許可が必要であることや、財産権への干渉を生じてしまうこと等の、非経済的な問題が生じる。また、効果的な点検や維持管理のためには、人手や時間が必要となる等、膨大な対象に対して点検、調査及び作業を行うことには、経済的な問題が生じる。
【0004】
更に、上述の点検、調査及び作業等の対象箇所を一巡するのに長期間(例えば、5~10年程度)必要となること、及び、林木価格の低下や過疎化による森林管理の低下傾向も一因となり得る、気象現象等による倒木現象が生じ得ることから、相応の長期間において枯損や成長による変化が生じる。しかし、上述の点検、調査及び作業等の遂行に当たっては、これら変化は十分に考慮され得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-345804号公報
【特許文献2】特開2007-198760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
道路の用地内外を問わず、短期間で危険木をスクリーニングして点検対象を絞り込むと同時に優先順位を付し得る調査手法であって、危険木の存在を経済的に且つ安全側に評価し得る技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の、人工構造物への危険木の潜在突出量を算出して表示するための危険木潜在突出量推定システムは、処理回路を有するコンピュータ装置を含む。処理回路は、
DEMデータ及びDSMデータを取り込んでDCMデータを作成するステップと、
人工構造物である道路の境界線データを取り込んで設定するステップと、
解析対象であるメッシュ作成領域の指定入力を取り込むステップと、
前記指定されたメッシュ作成領域にて、メッシュを作成するステップと、
メッシュ毎に、DCMの最大値と、DCMが最大値となる位置の3次元座標であるメッシュ座標を取得するステップと、
メッシュ毎に、DCMが最大値となる位置における地盤高さであるメッシュ地盤高をDEMデータから取得するステップと、
メッシュ毎に、DCMが最大値となる位置に最も近い、前記道路の境界線の位置である境界線座標を計算するステップと、
メッシュ毎に、前記境界線座標の位置における地盤高さである境界線地盤高をDEMデータから取得するステップと、
メッシュ毎に、前記メッシュ座標と前記境界線座標から、DCMが最大値となる位置と道路との離隔を求めるステップと、
メッシュ毎に、DCMの最大値、離隔、メッシュ地盤高、及び境界線地盤高に基づいて、道路への倒木の突出量を計算するステップと、
メッシュ毎に、前記計算される突出量に応じて、表示内容を決定するステップと
を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の危険木潜在突出量推定システム及び方法を利用することにより、人工構造物である道路に対する危険木の存在を、的確に、経済的に、且つ安全側に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システムのシステム構成図である。
図2図2は、実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システムの処理を実現する、危険木危険度解析を行うソフトウエアの構成を示す図である。
図3A図3Aは、平面部における道路への突出量を示す模式図である。
図3B図3Bは、切土部における道路への突出量を示す模式図(右部)と、盛土部における道路への突出量を示す模式図(左部)である。
図4A図4Aは、図4Bに示される予測曲線式に基づく樹高と成長量の一覧表である。
図4B図4Bは、針葉樹、広葉樹、及び高木性苗木の成長曲線(管理時期予測曲線)と、それら曲線の数式(管理時期予測曲線式)(「平成29年 効率的な樹木管理手法に関する基礎資料作成」(高速道路総合技術研究所)より)である。
図5図5は、実測樹高(円)、DCM値(三角)、DCM×1.2倍値(矩形)について、DCM値(三角)を基準として高さ順に配列したグラフである。
図6A図6Aは、実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システムの動作を示すフローチャートであり、特に、DEMやDSMの3次元座標標高データの取り込みから、メッシュ毎のDCMが最大となる位置の座標(メッシュ座標)及び地盤高さ(メッシュ地盤高)を取得するまでを示すフローチャートである。
図6B図6Bは、実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システムの動作を示すフローチャートであり、特に、高速道路の本線に関して危険木の潜在突出量を計算し表示する処理を示すフローチャートである。
図6C図6Cは、実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システムの動作を示すフローチャートであり、特に、図6Cは、高速道路の側道に関して危険木の潜在突出量を計算し表示する処理を示すフローチャートである。
図7A図7Aは、可視画像であるオルソ画像の例である。
図7B図7Bは、樹高(DCM)を示す画像の例である。
図7C図7Cは、危険木の潜在突出量を示す画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
1.本開示に至る経緯
危険木とは、「倒木にした際に高速道路・側道及び関連施設等(以下、「道路等」という。)に影響し第三者等被害が予想される位置にある樹木等」と定義される。つまり、倒木時において樹高と道路等との距離(以下、「離隔」という。)の関係において、樹高の方が離隔より大きい樹木等を示している。
【0013】
危険木リストアップを行うには、危険木1本1本を詳細に評価することが求められる。よって、危険木リストアップにおいては、人間の車上目視を基本とする点検が行われる。そこでは、次のような課題や問題が指摘されている。
(1)対象までの距離や対象の形状については目視判断に依るため、精度的な課題がある。
(2)点検対象を計測するまでの移動にて、多くの時間が必要となり、効率性に課題がある。
(3)対象全体を計測・評価・確認するまでに5年以上の単位の時間が必要であり、計測
精度に経年的な誤差が生じる課題がある。
(4)用地外点検では進入に際して地権者の許可が必要であり、事務的な及び時間的な課題がある。
【0014】
以上を踏まえて、高速道路のような帯状に分布する対象を、用地内外を問わず、短期間で且つ均一に調査する手法が求められていた。
【0015】
本開示は、上述の課題及び問題を解決するべく行うものである。本開示に係る技術は、次のような特徴を有しており、危険木リストアップへの精度的、経済的、及び効率的な貢献を可能とするものである。
(1)科学的原理に従い物理的に計測が行われるので、個人差や恣意性が生じない。
(2)精度維持のための経年的計測を各種補正により略無くする。即ち、当初計測しか必要とされず、経済性が高い。
(3)切土の上方や法肩から、道路の用地境界外の倒木影響が想定される範囲の点検における、移動や計測が不要になる。そもそも用地境界外の地権者交渉等が不要となる。よって、効率性及び経済性に資するものである。
(4)遮音壁外部を含めた盛土部において、点検のための移動や計測が不要になる。またこの場合でも用地境界外の地権者交渉等が不要となる。よって、効率性及び経済性に資するものである。
【0016】
また、本開示に係る技術は広範囲を略同時に計測するので、同技術においては、計測条件が一定であり測定漏れが無く、精度向上が図れると共に、人力(例えば、人間の車上目視)で行うよりも、短期間で効率的且つ経済的に実施され得る。
【0017】
2.[実施の形態]
以下、添付の図面を参照して、本開示の好ましい実施の形態を説明する。
【0018】
2.1.[システム構成]
実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システムは、危険木が倒木にした際に道路等に境界を超えて突出する量を推定するシステムである。図1は、本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2のシステム構成図である。
【0019】
危険木潜在突出量推定システム2は、コンピュータ装置4及び記憶装置12を有する。コンピュータ装置4及び記憶装置12は有線または無線の通信回線で接続されており、互いにデータを送受信可能である。危険木潜在突出量推定システム2は更に外部ネットワーク14に接続されており、外部ネットワーク14に接続された他のコンピュータシステムとの間でデータを授受する。
【0020】
コンピュータ装置4は、一つ以上のプロセッサを搭載するパーソナルコンピュータ、ワークステーションコンピュータ、若しくは、サーバ機等である。
【0021】
記憶装置12は、ディスクドライブやフラッシュメモリ等の、コンピュータ装置4の外部に設けられる記憶装置であり、コンピュータ装置4で用いられる各種データベース、各種データセット、及び、各種コンピュータプログラムを記憶する。記憶装置12には、例えば、後で説明する、外部から送信されるDSMデータやDEMデータが記録される。
【0022】
外部ネットワーク14は、例えば、インターネットであり、ネットワーク端子等のインタフェース装置6を介して、コンピュータ装置4と接続する。
【0023】
更にコンピュータ装置4は、インタフェース装置6、処理回路8、及びメモリ10を含む。
【0024】
インタフェース装置6は、ネットワーク端子、映像入力端子、USB端子、キーボード、マウス等を含む、外部からデータを取得可能なインタフェースユニットである。外部から、インタフェース装置6を介して、種々のデータが取得される。データは、例えば、航空レーザ用写真データ、DSMデータ、DEMデータ、管理図やキロポスト等の平面図データである。取得後、これらのデータは、記憶装置12に記録され得る。記憶装置12に記録されるデータは適宜、インタフェース装置6を介して、コンピュータ装置4内に取得され得る。
【0025】
更に、危険木潜在突出量推定システム2により生成される各種データは、記憶装置12に適宜記録される。各種データは、例えば、後で説明する、DCMデータである。危険木潜在突出量推定システム2により生成され記憶装置12に適宜記録される各種データは、インタフェース装置6を介して、コンピュータ装置4内に再び取得され得る。
【0026】
処理回路8は、プロセッサにより構成される。ここでのプロセッサは、CPU(Central Processing Unit;中央処理ユニット)やGPU(Graphics Processing Unit;画像処理ユニット)を包括するものである。本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2の各種処理は、各種プログラムを処理回路8が実行することによって実現される。なお、当該各種処理は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0027】
本開示における処理回路8は、複数台の信号処理回路から構成されてもよい。各信号処理回路は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)であり、「プロセッサ」と呼ばれ得る。本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2における様々な処理の一部を、あるプロセッサ(例えば、或るGPU)が実行し、他の一部の処理を、他のプロセッサ(例えば、或るCPU)が実行してもよい。
【0028】
メモリ10は、コンピュータ装置4内部のデータ書き換えが可能な記憶部であり、例えば、多数の半導体記憶素子を含むRAM(Random Access Memory)により構成される。メモリ10は、処理回路8が様々な処理を実行する際の、具体的なコンピュータプログラムや、変数値や、パラメータ値等を一時的に格納する。なおメモリ10は、いわゆるROM(Read Only Memory)を含んでもよい。ROMには、以下で説明する危険木潜在突出量推定システム2の処理を実現するコンピュータプログラムが予め格納されている。処理回路8がROMからコンピュータプログラムを読み出し、RAMに展開することにより、処理回路8が当該コンピュータプログラムを実行可能になる。
【0029】
本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2の処理を実現するコンピュータプログラムは、図2に示すような危険木危険度解析を行うソフトウエアを構築する。図2に示す危険木危険度解析のソフトウエア、更には本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2は、適宜、地図情報システム(GIS)を利用する。本開示にて利用される地図情報システム(GIS)は、例えば、ESRI社によるArcGISである。他のGISが利用されてもよい。
【0030】
本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2は、C言語やPython等のコンピュータ言語を用いて構築されている。本開示に係る危険木潜在突出量推定システム2の構築のために用いられ得るコンピュータ言語はこれらに限定されるものでは無く、勿論、他のコンピュータ言語が用いられてもよい。
【0031】
2.1.1.[ソフトウエア構成]
図2は、実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2の処理を実現する、危険木危険度解析を行うソフトウエアの構成を示す図である。
【0032】
図2に示すように、「入力データ」には、
・航空レーザ用写真データ(I-02)、
・DEMやDSMの3次元座標標高データ(I-04)、
・管理図やKP(キロポスト)の平面図データ(I-06)
が含まれる。
【0033】
ここで、「航空レーザ用写真データ」は、例えば、tifファイルであり、オルソ画像データである。DEM及びDSMは、周知のように、「Digital Elevation Model:数値標高モデル」及び「Digital Surface Model:数値表面モデル」である。後で説明するDCMは、これも周知のように、「Digital Canopy Model:樹高モデル」である。
【0034】
本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2は、航空機からのLiDARによるリモートセンシング技術を用いて、DEMやDSMの3次元座標標高データを取得することを前提としている。なお、後でも説明するように、DEMやDSMの3次元座標標高データは、他のリモートセンシング技術により取得されるものであってもよい。
【0035】
図2に示すように、入力データ「航空レーザ用写真データ(I-02)」については、オルソ画像の接合(M-02)が行われ、ラスターデータとして航空写真レイヤ(O-02)が出力される。
【0036】
入力データ「DEMやDSMの3次元座標標高データ(I-04)」については、DEMとDSM画像の作成(M-04)が行われ、ラスターデータとしてDEM・DSMレイヤ(O-04)が出力される。また、DEMとDSM画像の作成(M-04)を受けて、DEMとDSMの差分を取ることによりDCM画像の作成(M-06)が行われ、ラスターデータとしてDCMレイヤ(O-06)が出力される。
【0037】
また、GIS上での手動作成により、危険木の危険度を評価する領域である評価領域のメッシュが設定され(M-10)、ポリゴンデータとして評価領域レイヤ(O-12)が出力される。同じく、GIS上での手動作成により、高速道路の本線及び側道の境界、即ち、「倒木リスク境界線」が設定され(M-12)、ポリゴンデータとして境界レイヤ(O-14)が出力される。
【0038】
更に、DEMとDSM画像の作成(M-04)、DCM画像の作成(M-06)、評価領域のメッシュの設定(M-10)、及び本線及び側道の境界の設定(M-12)を受けて、危険木の道路への到達若しくは未到達の判定が行われ(M-08)、ポリゴンデータとして危険木領域レイヤ(O-08)、及び突出距評価レイヤ(O-10)が出力される。
この危険木の道路への到達若しくは未到達の判定(M-08)では、
・境界の判定、
・切土盛土に依る突出量の計算式の区別、
・危険木の危険度の判定
等が行われる。
【0039】
入力データ「管理図やKP(キロポスト)の平面図データ(I-06)」については、平面図の取り込みやキロポストの位置データの取り込み等(M-14)が行われ、ポリゴンデータとして平面図・KP(キロポスト)レイヤ(O-16)が出力される。
【0040】
2.1.1.1.[リモートセンシング技術により得られる入力データ]
本発明者は、道路のような帯状且つ不規則に分布する対象を短期間に且つ均一に計測する調査手法として、リモートセンシング技術を活用する物理的計測手法が、最も合理的な調査手法であると考えた。
【0041】
本発明者が想到したリモートセンシング技術を活用する物理的計測手法は、以下の通りに整理される。
(1)物理的計測手法
人、ロボット、自動車、航空機(有人・無人を問わない)、気球、ドローン、及び人工衛星をプラットフォームとし、電磁波を媒介として計測を行い、植物及びその総体(以下「樹木等」という。)の形状等をリモートセンシングする手法である。
【0042】
個別には、バックパック式センサを伴う人やロボットによる計測は短期間で行うことが不可能であること、ドローンによる計測は法的規制による障壁が想定され得ること、航空機による計測は費用が高価となること、人工衛星による計測は十分な精度の計測データが必ずしも得られないこと、等の課題が挙げられる。
【0043】
(2)樹高と離隔の計測
計測されたデータから、樹木等や地表面の自然物、及び道路等の人工構造物に関するデータを抽出して処理し、樹木等の形状及び人工構造物との離隔距離を計算し、対象樹木等が倒れた場合に人工構造物への到達の有無、その程度を評価することにより、危険木の判定を行う。
【0044】
ここでの「離隔」は、樹木の地表面における位置と、道路等の人工構造物との離隔である、と定義される。
【0045】
樹高と離隔の計測では、電磁波を利用したセンシング技術により距離や相対的な位置関係を解析する。この樹高と離隔の計測としては、パッシブな方法と、アクティブな方法とが想定され得る。パッシブな方法とは、例えば、太陽光が対象物に当たったときの反射光の特性からSfM(Struture for Motion)解析を行うものである。アクティブな方法とは、例えば、レーザ照射により直接距離計測を行いそれらの差分から対象物の大きさや位置関係を計算するものである。
【0046】
本開示では、航空機からのLiDAR(レーザ照射)によるリモートセンシング技術によりDEMやDSMの3次元座標標高データを取得することを前提としているが、3次元座標標高データを得るためのリモートセンシング技術は、上述のいずれのものであってもよいし、更に別のものであってもよい。
【0047】
2.2.[システムの動作]
実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2の動作について、以下説明する。
【0048】
2.2.1.[突出量について]
実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2は、危険木をスクリーニングした上で、危険木についての、第三者への影響度合い、即ち、危険度を、潜在突出量として評価する。
【0049】
つまり、実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2の点検対象は膨大であり、危険木リストアップによりスクリーニングを行った対象について、優先順位を付すことが不可欠である。ここで危険木潜在突出量推定システム2は、倒木した際に道路等に及ぶ影響の度合いにより優先順位を評価する。即ち、危険木潜在突出量推定システム2は、道路への想定される潜在突出量を求める。
【0050】
危険木潜在突出量推定システム2は、倒木時に樹木等のどれだけの長さの部分が、道路等に突出するかを算出(評価)する。一般的には樹高と離隔の差分を「突出量」とする。図3Aは、平面部における道路への突出量を示す模式図である。左の木、若しくは右の木が図面中央の道路に向かって倒れれば、夫々、「突出量」だけ道路へ突出する。図3Aからも明らかなように、「突出量」は樹高と離隔の差分である。
【0051】
図3Bでは、図面右部にて切土部における道路への突出量を示す模式図を表し、図面左部にて盛土部における道路への突出量を示す模式図を表している。
切土部は、以下の条件に当てはまるものである。
[切土の条件]境界標高≦地盤標高
盛土部は、以下の条件に当てはまるものである。
[盛土の条件]境界標高(「境界線地盤高」)>地盤標高(「メッシュ地盤高」)
ここで「境界標高」とは、樹木に最も近い境界(点)の標高である。「地盤標高」とは、樹木の地表面における中心点の標高である。
【0052】
なお、本開示では、リモートセンシング技術によるDEMやDSMの3次元座標標高データは、2mメッシュ化が施されたものを利用している。従って、「境界標高(後で説明する、境界線地盤高)」、「地盤標高(後で説明する、メッシュ地盤高)」、及び「樹高(後で説明する、DCM)」は、以下のように定義される。
(1)境界標高:境界上の、(樹木を含む)1つの2mメッシュからの最近傍点のDEMの標高
(2)地盤標高:一つの2mメッシュ内でDCM(樹高)が最も高い位置のDEM
(3)樹高:一つの2mメッシュ内で最も高いDCM
【0053】
図3Bに示すように、切土部、及び盛土部における突出量は、以下の式で算出される。
[切土部]
【数1】
[盛土部]
【数2】

ここで「α(安全率)」は、リモートセンシング技術にて実際よりも低く解析される場合を考慮に入れて乗ずる補正係数であり、「成長率」は、リモートセンシング技術による計測から所定期間(例えば、6年)が経過している場合に加えられる補正係数である。「α(安全率)」及び「成長率」の詳細については、後で説明する。なお、突出量は、「樹高」、「α(安全率)」、「成長率」、「離隔」、「境界標高」、及び「地盤標高」の全て若しくは一部を用いて、別途算出されるものであってもよい。
【0054】
2.2.2.[突出量の補正について]
計測されたデータについて計測自体に伴う誤差等を勘案して安全側に評価するため、及び、計測頻度は数年に一度であることから樹木等の成長状況を勘案する必要があるため、夫々、突出量の算出式に補正のための項を設ける必要がある。本開示では、以下の3つの補正を考慮している。
(1)成長量補正(成長率)
(2)安全率(α)補正
(3)標準木による補正
【0055】
なお、上述の(1)~(3)の補正の一部のみが用いられてもよいし、(1)~(3)のいずれも用いられなくてもよい。
【0056】
(1)成長量補正(成長率)
植生を構成する個別の樹木については、植栽年数が不明であることが通常である。よって、樹木成長量を考慮する補正値は、樹高分布に基づいて設定することが考えられる。林野庁計測データ(平成30年)等における樹高の分布に依ると、約90%が樹高14m以下である。
【0057】
図4Bは、針葉樹、広葉樹、及び高木性苗木の成長曲線(管理時期予測曲線)と、それら曲線の数式(管理時期予測曲線式)(「平成29年 効率的な樹木管理手法に関する基礎資料作成」(高速道路総合技術研究所)より)である。更に、図4Aは、図4Bに示される予測曲線式に基づく樹高と成長量の一覧表である。高速道路沿いの樹木の多くが広葉樹であること考慮し図4Aの左端の「広葉樹」の欄を見ると、樹高14m以下の樹木の成長量/年は0.75~0.84mであることから、樹木成長量による補正値は「0.8m/年」程度が妥当であると考えられる。
【0058】
(2)安全率(α)補正
本発明者は、航空レーザ等のリモートセンシング技術による計測では、樹高が実際よりも低く解析されている場合が存在し得ることを認識している。そのため、本開示では、安全率による補正を導入する。
【0059】
図5は、実測樹高(円)、DCM値(三角)、DCM×1.2倍値(矩形)について、DCM値(三角)を基準として高さ順に配列したグラフである。DCM×1.2倍値(矩形)と実測樹高(円)との比較から、DCM×1.2倍値(矩形)は実測樹高(円)の全サンプル値よりも大きく、DCM値を1.2倍すれば計測誤差をカバーして安全側となることを示している。よって、本開示では、標準の安全率補正として、樹高を1.2倍することを採用している。なお、図5は、本発明者らの作成による「共同研究・開発リスク木スクリーニング技術改良報告書(令和3年8月)(西日本高速道路株式会社・西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社)」を出展とするものである。
【0060】
(3)標準木による補正
既存の計測データをキャリブレーションするため、点検対象の樹木の中から、広葉樹・針葉樹・樹高別の標準木を、対象地域全域に亘りできるだけ均等に選定し、計測データと標準木データとの比較評価から補正値(率)の補正を算出することが望ましい。
【0061】
データ計測からの経過年数が長くなると、「(1)成長量補正(成長率)」及び「(2)安全率(α)補正」においては、現実の樹高状況との差異が生じること、時には差異が大きくなることも、想定され得る。点検時において樹高や離隔を計測した点検木の中から広葉樹や針葉樹等の樹種を考慮して、全体に均等に分散するように標準木を選定し、現況を反映した補正値(率)の補正を行うことが好適である。
【0062】
本開示では、標準木による成長量補正(成長率)及び安全率(α)補正に当たっては、以下の手順を行っている。
(1)位置、離隔、及び樹高に関するデータが確定している樹木群から、位置、樹高、樹種(例えば、広葉樹、針葉樹等)、及び離隔が、全体的に分散するように、例えば、数十本選定する。
(2)選定された樹木について再計測を行う。補正を含む既存の計測データと、再計測データとを比較して、成長量補正(成長率)及び安全率(α)補正を再算出する。
(3)既存の計測データを、再算出したこの成長量補正(成長率)及び安全率(α)補正により再補正する。
【0063】
2.2.3.[危険木潜在突出量推定システムの動作フローについて]
図6A図6B、及び図6Cは、実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2の動作を示すフローチャートである。これらのうち、図6Aは、DEMやDSMの3次元座標標高データの取り込みから、メッシュ毎のDCMが最大となる位置の座標(メッシュ地座標)及び地盤高さ(メッシュ地盤高)を取得するまでを示すフローチャートである。図6Bは、高速道路の本線に関して危険木の潜在突出量を計算し表示する処理を示すフローチャートである。更に、図6Cは、高速道路の側道に関して危険木の潜在突出量を計算し表示する処理を示すフローチャートである。
【0064】
図6Aに示すフローチャートにおいては、まず、コンピュータ装置4の処理回路8は、解析対象を含む領域について、DEMやDSMの3次元座標標高データを取り込み更にDCM(樹高データ)を作成する(ステップS04)。
【0065】
次に、コンピュータ装置4の処理回路8は、管理図、中心線などのデータを取り込む(ステップS06)。管理図は、高速道路の管理用図面でありCADデータである。中心線は、高速道路の管理用図面上の、高速道路上の位置を示すKP(キロポスト)座標を結ぶポリラインである。
【0066】
次に、コンピュータ装置4の処理回路8は、本線と側道とを分けて、境界線、即ち危険木の倒木リスクの境界線を取り込んで設定する(ステップS08)。本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2では、境界線の取り込み及び設定は、GISソフトウエアを介する、コンピュータ装置4の操作者のポリライン描画入力により行われる。この際、ステップS06にて取り込まれた管理図(管理用平面図)を眺めつつ、操作者による境界線のポリライン描画入力が行われる。
【0067】
次に、コンピュータ装置4の処理回路8により、解析対象であるメッシュ作成領域が指定される(ステップS10)。解析対象であるメッシュ作成領域の指定は、ステップS10と同様に、GISソフトウエアを介する、コンピュータ装置4の操作者の指定入力の取り込みにより行われる。この解析対象であるメッシュ作成領域(ステップS10)の指定を受けて、コンピュータ装置4の処理回路8は、指定領域にてメッシュを自動作成する(ステップS12)。ここでのメッシュは、本実施の形態では、2mメッシュである。このメッシュは、例えば、1mメッシュや5mメッシュ等の、他のメッシュでもよい。
【0068】
次に、コンピュータ装置4の処理回路8は、解析対象におけるあらゆるメッシュにて(即ち、メッシュ毎に)、DCMの最大値と、各メッシュ内にてDCMが最大値となる位置の3次元座標(メッシュ座標)を取得する(ステップS14)。更に、コンピュータ装置4の処理回路8は、ステップS14と同様に、解析対象におけるあらゆるメッシュにて(即ち、メッシュ毎に)、DCMが最大値となる位置における地盤高さ(メッシュ地盤高)をDEMから取得する(ステップS16)。
【0069】
図6Bに示すフローチャートの前半(S20)においては、まず、コンピュータ装置4の処理回路8は、解析対象におけるあらゆるメッシュにて(即ち、メッシュ毎に)、DCMが最大値となる位置に最も近い本線の倒木リスク境界線位置(境界線座標)を計算する(ステップS22)。更に、コンピュータ装置4の処理回路8は、ステップS22と同様に、解析対象におけるあらゆるメッシュにて(即ち、メッシュ毎に)、最も近い本線の倒木リスク境界線位置における地盤高さ(境界線地盤高)をDEMから取得する(ステップS24)。更に、コンピュータ装置4の処理回路8は、ステップS22及びステップS24と同様に、解析対象におけるあらゆるメッシュにて(即ち、メッシュ毎に)、メッシュ座標(ステップS14より)と境界線座標(ステップS24より)から、DCMが最大値となる位置と本線との離隔を求める(ステップS26)。
【0070】
上述に続いて、図6Bに示すフローチャートの後半(ステップS28~ステップS42)においては、本線への倒木の突出量が計算され、計算される突出量に応じて、ディスプレイへの表示内容が決定される。この図6Bに示すフローチャートの後半(ステップS28~ステップS42)は、解析対象における全てのメッシュ毎に、実行される。その後、コンピュータ装置4の処理回路8は、突出量が0を超えるメッシュのグループ化を行う(ステップS44)。
【0071】
図6Bに示すフローチャートの後半(ステップS28~ステップS42)の詳細を説明する。先ず、コンピュータ装置4の処理回路8は、メッシュ毎に、境界線地盤高(ステップS24参照)がメッシュ地盤高(ステップS16参照)より大きいか否かをチェックする(ステップS28)。大きければ(YES)、メッシュの地点は盛土にあるということになり、処理はステップS30に進む。小さい若しくは等しければ(NO)、メッシュの地点は切土若しくは平面部にあるということになり、処理はステップS36に進む。
【0072】
ステップS30では、コンピュータ装置4の処理回路8は、経過年数が6年以下であるか否かをチェックする。経過年数は、DEM及びDSMの計測年月から、DCM作成年月(ステップS04参照)までの年月である。6年以下であれば(YES)、以下の[数3]式により突出量が計算される。即ち、[数3]式は[数2]式から「成長率」を除いた式である。
【数3】
6年より長ければ(NO)、以下の[数4]式により突出量が計算される。即ち、[数4]式は[数2]式と同じ式である。
【数4】
【0073】
一方、ステップS36でも、コンピュータ装置4の処理回路8は、経過年数が6年以下であるか否かをチェックする。6年以下であれば(YES)、以下の[数5]式により突出量が計算される。即ち、[数5]式は[数1]式から「成長率」を除いた式である。
【数5】
6年より長ければ(NO)、以下の[数6]式により突出量が計算される。即ち、[数6]式は[数1]式と同じ式である。
【数6】
【0074】
ステップS32、ステップS34、ステップS38、及びステップS40において計算される突出量を受けて、コンピュータ装置4の処理回路8は、メッシュ毎に、突出量に応じて、ディスプレイへの表示内容が決定する。本線に関して、例えば、突出量に応じて以下の表1のように表示が決められる。
【表1】

続いて、コンピュータ装置4の処理回路8は、突出量0超のメッシュをグループ化する(ステップS44)。
【0075】
一方、図6Cに示すフローチャートの前半(S50)においては、まず、コンピュータ装置4の処理回路8は、解析対象におけるあらゆるメッシュにて(即ち、メッシュ毎に)、DCMが最大値となる位置に最も近い側道の倒木リスク境界線位置(境界線座標)を計算する(ステップS52)。更に、コンピュータ装置4の処理回路8は、ステップS52と同様に、解析対象におけるあらゆるメッシュにて(即ち、メッシュ毎に)、最も近い側道の倒木リスク境界線位置における地盤高さ(境界線地盤高)をDEMから取得する(ステップS54)。更に、コンピュータ装置4の処理回路8は、ステップS52及びステップS54と同様に、解析対象におけるあらゆるメッシュにて(即ち、メッシュ毎に)、メッシュ座標(ステップS14より)と境界線座標(ステップS24より)から、DCMが最大値となる位置と側道との離隔を求める(ステップS56)。
【0076】
上述に続いて、図6Cに示すフローチャートの後半(ステップS58~ステップS72)においては、側道への倒木の突出量が計算され、計算される突出量に応じて、ディスプレイへの表示内容が決定される。この図6Cに示すフローチャートの後半(ステップS58~ステップS72)は、解析対象における全てのメッシュ毎に、実行される。その後、コンピュータ装置4の処理回路8は、突出量が0を超えるメッシュのグループ化を行う(ステップS74)。
【0077】
図6Cに示すフローチャートの後半(ステップS58~ステップS72)の詳細を説明する。先ず、コンピュータ装置4の処理回路8は、メッシュ毎に、境界線地盤高(ステップS54参照)がメッシュ地盤高(ステップS16参照)より大きいか否かをチェックする(ステップS58)。大きければ(YES)、メッシュの地点は盛土にあるということになり、処理はステップS60に進む。小さい若しくは等しければ(NO)、メッシュの地点は切土若しくは平面部にあるということになり、処理はステップS66に進む。
【0078】
ステップS60では、コンピュータ装置4の処理回路8は、経過年数が6年以下であるか否かをチェックする。経過年数は、DEM及びDSMの計測年月から、DCM作成年月(ステップS04参照)までの年月である。6年以下であれば(YES)、以下の[数7]式により突出量が計算される。即ち、[数7]式は[数2]式から「成長率」を除いた式であり、且つ[数3]式と同じ式である。
【数7】
6年より長ければ(NO)、以下の[数8]式により突出量が計算される。即ち、[数8]式は[数2]式と同じ式であり、且つ[数4]式と同じ式である。
【数8】
【0079】
一方、ステップS66でも、コンピュータ装置4の処理回路8は、経過年数が6年以下であるか否かをチェックする。6年以下であれば(YES)、以下の[数9]式により突出量が計算される。即ち、[数9]式は[数1]式から「成長率」を除いた式であり、且つ[数5]式と同じ式である。
【数9】
6年より長ければ(NO)、以下の[数10]式により突出量が計算される。即ち、[数10]式は[数1]式と同じ式であり、且つ[数6]式と同じ式である。
【数10】
【0080】
ステップS62、ステップS64、ステップS68、及びステップS70において計算される突出量を受けて、コンピュータ装置4の処理回路8は、メッシュ毎に、突出量に応じて、ディスプレイへの表示内容を決定する。側道に関して、例えば、突出量に応じて以下の表2のように表示が決められる。
【表2】

続いて、コンピュータ装置4の処理回路8は、突出量0超のメッシュをグループ化する(ステップS74)。
【0081】
以上の、図6B及び図6Cに示す高速道路の本線/側道に関して危険木の潜在突出量を計算し表示する処理を示すフローチャートにおいて、α安全率、及び/又は、成長率は、上述の「標準木による補正」により補正されるものであってもよい。
【0082】
一方、図6B及び図6Cに示す高速道路の本線/側道に関して危険木の潜在突出量を計算し表示する処理を示すフローチャートにおいては、「α安全率」と「成長率」のいずれかが、若しくはいずれもが、考慮されなくてもよい、即ち、用いられなくてもよい。
【0083】
図7A図7B、及び、図7Cは、本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2の出力画像の例である。
【0084】
まず、図7Aは、可視画像であるオルソ画像の例であり、管理用平面図等の関連データも示している。次に、図7Bは、樹高(DCM)を示す画像の例であり、キロポスト、境界線、管理用平面図等の関連データも示している。
【0085】
そして図7Cは、危険木潜在突出量推定システム2による、危険木の潜在突出量を示す画像の例である。高速道路の本線に対する、推定される潜在突出量が、解析対象である樹木範囲において凡例に従って示されている。図7Cにて示されるように、高速道路の本線に対する、危険木の危険度である潜在突出量が、樹木範囲において明確に且つ的確に示されている。
【0086】
2.3.[実施の形態のまとめ]
本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システム2は、人工構造物への危険木の潜在突出量を算出して表示する。危険木潜在突出量推定システム2は、処理回路8を有するコンピュータ装置を4含む。処理回路8は、DEMデータ及びDSMデータを取り込んでDCMデータを作成するステップと、人工構造物である道路の境界線データを取り込んで設定するステップと、解析対象であるメッシュ作成領域の指定入力を取り込むステップと、指定されたメッシュ作成領域にて、メッシュを作成するステップと、メッシュ毎に、DCMの最大値と、DCMが最大値となる位置の3次元座標であるメッシュ座標を取得するステップと、メッシュ毎に、DCMが最大値となる位置における地盤高さであるメッシュ地盤高をDEMデータから取得するステップと、メッシュ毎に、DCMが最大値となる位置に最も近い、道路の境界線の位置である境界線座標を計算するステップと、メッシュ毎に、境界線座標の位置における地盤高さである境界線地盤高をDEMデータから取得するステップと、メッシュ毎に、メッシュ座標と境界線座標から、DCMが最大値となる位置と道路との離隔を求めるステップと、メッシュ毎に、DCMの最大値、離隔、メッシュ地盤高、及び境界線地盤高に基づいて、道路への倒木の突出量を計算するステップと、メッシュ毎に、前記計算される突出量に応じて、表示内容を決定するステップと、を実行する。
【0087】
本実施の形態に係る危険木潜在突出量推定システムは、人工構造物である道路に対する危険木の存在を、的確に、経済的に、且つ安全側に評価することができる。
【0088】
3.[他の実施の形態]
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0089】
例えば、本開示の危険木潜在突出量推定システムは、人工構造物である建造物の境界への危険木の潜在突出量の推定に用いることができる。更に、本開示の危険木潜在突出量推定システムは、農地や自然造形物である河川などの、境界への危険木の潜在突出量の推定に用いることができる。
【0090】
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0091】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0092】
2・・・危険木潜在突出量推定システム、4・・・コンピュータ装置、6・・・インタフェース装置、8・・・処理回路、10・・・メモリ、12・・・記憶装置、14・・・外部ネットワーク。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C