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特開2024-147360飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147360
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/14 20060101AFI20241008BHJP
   A01M 1/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A01M1/14 S
A01M1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060321
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】木尾 幹広
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA13
2B121BA09
2B121BB32
2B121CA02
2B121CC12
2B121CC16
2B121EA21
2B121FA01
(57)【要約】
【課題】飛翔害虫の捕獲数の向上を図った飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法を提供する。
【解決手段】容器2は、内面に粘着剤21が施された断面が多角形の筒状体22と、筒状体22の一方の開口を塞ぐ底部23と、を有し、筒状体22の他方が開口されている。底部23には、蚊の誘引源3が設定されている。筒状体22の幅Wに対する筒状体22の高さH(高さH/幅W)が、1以上2以下の範囲である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に粘着剤が施された断面が多角形の筒状体と、前記筒状体の筒長さ方向一方側の開口を塞ぐ底部と、を有し、前記筒状体の前記筒長さ方向他方側が開口された容器と、前記容器内に設置された飛翔害虫の誘引源と、を備えた飛翔害虫用の捕獲器であって、
前記筒状体の幅に対する前記筒状体の高さ(高さ/幅)が、1以上2以下の範囲である、
飛翔害虫用の捕獲器。
【請求項2】
請求項1に記載の飛翔害虫用の捕獲器において、
前記容器において前記底部からの前記筒長さ方向における長さが前記誘引源と同じとなる位置、または、前記位置よりも前記底部側に少なくとも1つ以上の開口部が設けられている、
飛翔害虫用の捕獲器。
【請求項3】
請求項1に記載の飛翔害虫用の捕獲器において、
前記底部から前記容器の前記開口に向かって立設し、表面に粘着剤が設けられた棒体をさらに備えた、
飛翔害虫用の捕獲器。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の飛翔害虫用の捕獲器を用いた飛翔害虫の捕獲方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛翔害虫用の捕獲器としては、例えば、特許文献1に記載された誘引捕獲トラップが提案されている。特許文献1に記載の誘引捕獲トラップは、筒状のトラップ基体から構成され、トラップ基体の内面に粘着面を設け、トラップ基体の内部にフェロモン剤が吊下げられている。フェロモン剤は、トラップ基体から吊下げられているため、トラップ基体を横置きにして使用する必要がある。
【0003】
上記特許文献1の誘引捕獲トラップは、トラップ基体を横置きしているため、上から飛来する飛翔害虫を捕獲することができない、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-120934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、飛翔害虫の捕獲数の向上を図った飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法は、下記[1]~[4]を特徴としている。
[1]
内面に粘着剤が施された断面が多角形の筒状体と、前記筒状体の筒長さ方向一方側の開口を塞ぐ底部と、を有し、前記筒状体の前記筒長さ方向他方側が開口された容器と、前記容器内に設置された飛翔害虫の誘引源と、を備えた飛翔害虫用の捕獲器であって、
前記筒状体の幅に対する前記筒状体の高さ(高さ/幅)が、1以上2以下の範囲である、
飛翔害虫用の捕獲器であること。
[2]
[1]に記載の飛翔害虫用の捕獲器において、
前記容器において前記底部からの前記筒長さ方向における長さが前記誘引源と同じとなる位置、または、前記位置よりも前記底部側に少なくとも1つ以上の開口部が設けられている、
飛翔害虫用の捕獲器であること。
[3]
[1]に記載の飛翔害虫用の捕獲器において、
前記底部から前記容器の前記開口に向かって立設し、表面に粘着剤が設けられた棒体をさらに備えた、
飛翔害虫用の捕獲器であること。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載の飛翔害虫用の捕獲器を用いた飛翔害虫の捕獲方法であること。
【0007】
上記[1]記載の飛翔害虫用の捕獲器によれば、筒状体の内面に粘着剤が施されている。これにより、容器の外面に粘着剤を施す必要がないため、取り扱いが容易となる。しかも、容器の外面に粘着剤を施したものと比較しても、蚊の捕獲数をほとんど減らすことがない。また、筒状体の高さ/幅が、1以上2以下の範囲であるため、飛翔害虫の捕獲数向上を図ることができる。
【0008】
上記[2]記載の飛翔害虫用の捕獲器によれば、開口部を設けることにより、より一層、飛翔害虫の捕獲数向上を図ることができる。
【0009】
上記[3]記載の飛翔害虫用の捕獲器によれば、容器内に棒体を設けることにより、より一層、飛翔害虫の捕獲数向上を図ることができる。
【0010】
上記[4]記載の飛翔害虫の捕獲方法によれば、筒状体の内面に粘着剤が施されている。これにより、飛翔害虫の捕獲数を減らすことなく、取り扱いが容易となる。また、筒状体の高さ/幅が、1以上2以下の範囲であるため、飛翔害虫の捕獲数向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法によれば、飛翔害虫の捕獲数の向上を図ることができる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態における本発明に飛翔害虫用の捕獲器を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す飛翔害虫用の捕獲器の上面図である。
図3図3は、比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J、1Kについて蚊の屋内捕獲試験を行い、侵入数、捕獲数及び逃亡数を求めた結果を示すグラフである。
図4図4は、比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J、1Kについて蚊の屋内捕獲試験を行い、侵入数に対する捕獲数の割合、侵入数に対する逃亡数の割合を求めた結果を示すグラフである。
図5図5は、比較品1Lについて蚊の室内捕獲試験を行った結果を示すグラフである。
図6図6は、比較品1M~1Qについて蚊の屋内捕獲試験を行った結果を示すグラフである。
図7図7は、本発明品1T~1Wについて蚊の屋外捕獲試験を行った結果を示すグラフである。
図8図8は、本発明品1EE~1GGについて蚊の屋内捕獲試験を行い、侵入数、捕獲数及び逃亡数を求めた結果を示すグラフである。
図9図9は、本発明品1EE~1GGについて蚊の屋内捕獲試験を行い、侵入数に対する捕獲数の割合、侵入数に対する逃亡数の割合を求めた結果を示すグラフである。
図10図10は、第2実施形態における本発明に飛翔害虫用の捕獲器を示す断面図である。
図11図11は、図10に示す飛翔害虫用の捕獲器の上面図である。
図12図12は、本発明品10A,10Bについて蚊の屋内捕獲試験を行った結果を示すグラフである。
図13図13は、本発明品10A~10Eについて蚊の屋内捕獲試験を行い、棒体を設けることによる蚊の捕獲数の倍数を求めた結果を示すグラフである。
図14図14は、本発明品10AA,10Bについて蚊の屋内捕獲試験を行い、侵入数、総捕獲数及び逃亡数を求めた結果を示すグラフである。
図15図15は、本発明品10AA,10Bについて蚊の屋内捕獲試験を行い、侵入数に対する捕獲数の割合及び侵入数に対する逃亡数の割合を求めた結果を示すグラフである。
図16図16は、本発明品10AA,10F,10Bについて蚊の屋内捕獲試験を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0015】
以下、説明の便宜上、図1図2図10及び図11に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。なお、上下方向が、本発明の「筒長さ方向」に対応する。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態の飛翔害虫用の捕獲器1(以下、単に「捕獲器1」と略記する)は、飛翔害虫としての蚊を粘着剤で捕獲する捕獲器である。捕獲器1は、内面に粘着剤21が施された断面が正方形の筒状体22と、筒状体22の下側(筒長さ方向一方側)の開口を塞ぐ底部23と、を有する容器2と、底部23に設置され、筒状体22内に収容された蚊の誘引源3(図2参照)と、を備えている。
【0017】
上記筒状体22は、上側(筒長さ方向他方側)の開口24は塞がれていない。また、粘着剤21は、筒状体22の全内面に設けられている。粘着剤21は、筒状体22の外面や底部23には設けられていない。本実施形態の筒状体22は、幅Wに対する高さH(高さH/幅W)が、1以上2以下の範囲(より最適には1.25以上1.5以下の範囲)に設けられている。幅Wは、6cm以上、15cm以下が最適である。高さHは、6cm以上~25cm以下が最適である。本実施形態では、筒状体22は、黒色に設けられている。
【0018】
筒状体22は、前後方向に対向し、左右方向に延びる前側部221及び後側部222と、前側部221及び後側部222の左端を連結し、前後方向に延びる左側部223と、前側部221及び後側部222の右端を連結し、前後方向に延びる右側部224と、を有している。これら前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224は、平板状に設けられている。
【0019】
また、筒状体22には、底部23に隣接する4つの開口部25が設けられている。なお、4つの開口部25を設けることは必須ではない。開口部25は、なくてもよいし、4つより少なくてもよく、4つより多くてもよい。本実施形態では、開口部25を4つ設けた場合について説明する。また、本実施形態の筒状体22の側面には、底部23に隣接する4つの開口部25のみが設けられ、他の部分には開口部が設けられていない。4つの開口部25は、前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224にそれぞれ一つずつ設けられている。前側部221及び後側部222に設けられた開口部25が前後方向に対向して配置される。左側部223及び右側部224に設けられた開口部25が左右方向に対向して配置される。
【0020】
底部23は、平板状に設けられ、前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224との成す角度が90°となる。すなわち、筒状体22の断面積は、上端から下端まで同じに設けられている。誘引源3は、底部23に設置されている。
【0021】
上述した実施形態の捕獲器1によれば、筒状体22の内面に粘着剤21が施されている。これにより、容器2の外面に粘着剤21を施す必要がないため、取り扱いが容易となる。しかも、容器2の外面に粘着剤21を施したものと比較しても、蚊の捕獲数を減らすことがない。また、筒状体22の幅Wに対する筒状体22の高さH(高さH/幅W)が、1以上2以下の範囲であるので、扱いやすくかつ蚊の捕獲数の向上を図ることができる。
【0022】
また、上述した実施形態の捕獲器1によれば、筒状体22には、底部23に隣接する4つの開口部25が設けられている。すなわち、開口部25は、容器2において底部23からの筒長さ方向(上下方向)における長さ(高さ)が誘引源3と同じとなる位置に設けられている。言い換えると、開口部25は、底部23に設置された誘引源3と筒長さ方向と直交する水平方向に対向する位置に設けられている。これにより、より一層、蚊の捕獲数の向上を図ることができる。
【0023】
飛翔害虫用の捕獲器1は、屋外に設置して周辺部よりも暗くなるような材質、色調のものが好ましい。捕獲器1の本体の材質は、プラスチック等が好ましいが、湿った場所にでも設置できるように撥水性、耐水性を有する材質であればよく、紙、パルプ、ダンボール等でもよい。また、色調はとくに蚊類が好む黒色や赤色が好ましいが、屋外に設置して周辺部よりも暗くなるような色調であればこの限りではない。
【0024】
飛翔害虫用の誘引源3には、既知の飛翔害虫の誘引成分が使用できるが、その他、例えば、ブランデー、ウイスキー、ラム酒、ウォッカ、焼酎、日本酒等の酒類;黒酢、赤酢、食酢、リンゴ酢、米酢等の醸造酢;蜂蜜、液糖、メープルシロップ等の糖類;乳酸菌飲料、ヨーグルト、チーズ等の乳製品;果汁;果実調の香料;魚介類などの海産原料加工品;魚介類などの海産原料抽出物等の誘引成分、カイロなどの熱源、炭酸水素アンモニウムなどのCO発生源等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて誘引源として使用することができる。
【0025】
また、誘引源3となる誘引剤の剤形は使用形態に合わせて選択することができ、液状、ペースト状、固体状(ゼリー状、粉状、粒状等)、揮散紙や多孔質体等の含浸体に含浸させた状態等を挙げることができる。
【0026】
具体的に、液状の飛翔害虫用の誘引剤をそのまま用いたり、液状の飛翔害虫用の誘引剤とゲル化剤を混合させてペースト状や固体状としたり、吸水性ポリマーやパルプ製のマットに液状の飛翔害虫用の誘引剤を含浸させたり、液状の飛翔害虫用の誘引剤を無機物担体に担持させることにより、固体状の誘引剤を得たりできる。
【0027】
飛翔害虫用の誘引剤には、防除効果を高めるために、飛翔害虫の誘引性を阻害しない範囲において、既知の殺虫成分を含有することができる。
【0028】
殺虫成分としては、例えば、天然ピレトリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、アレスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、エンペントリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ジクロルボス等の有機リン系化合物、フェノブカルブ、プロポクスル等のカーバメート系化合物、フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物、ヒドラメチルノン等のアミジノヒドラゾン系化合物、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物等、及びオレンジ油、ハッカ油、ベンジルアルコール等の殺虫性製油等を用いることができる。
【0029】
その他、誘引剤に配合できる成分としては、例えば誤食防止剤、防腐剤、pH調整剤、安定化剤、色素、香料、溶媒等の各種補助成分が挙げられる。例えば、安息香酸デナトニウム、トウガラシエキス等の誤食防止剤、塩化セチルピリジニウム等の四級アンモニウム塩、ソルビン酸カリウム、パラベン、ホウ酸等の防腐剤、クエン酸、リン酸これらの塩等のpH調整剤、BHT,BHA等の安定剤、赤色、青色、黄色、緑色、黒色、茶色等を示す各種色素、果実調の香料、メタノール,エタノール,プロパノール等の低級アルコール、流動パラフィン等の炭化水素系溶剤、蒸留水,水道水,脱イオン水等の水等が挙げられる。
【0030】
捕獲器1に用いる粘着剤21の成分は、ハエ取り紙や粘着式のゴキブリ、ネズミ捕獲器等で使用されているものでよく、その他、飛翔害虫が捕獲できる成分であれば使用できる。さらに粘着効果を長期間維持させるために安定剤等を含有させてもよい。
【0031】
次に、本発明者らは、本実施形態の効果を確認すべく、下記に示す第1~第5の試験を行った。
【0032】
(第1の試験)
第1の試験において、本発明者らは、筒状体22の高さH/幅Wを1以上2以下とした効果を確認するために、下記の表1に示す比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J,1Kを作成し、下記に示す蚊の屋内捕獲試験を行い、蚊の捕獲数を確認した。比較品1B~1Dと、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と、で異なる点は、比較品1B~1Dは、高さH/幅Wが2以上よりも大きい点である。本発明品1E~1Iは、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と同様に、高さH/幅Wが1以上2以下である。比較品1J,1Kと、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と、で異なる点は、比較品1J,1Kは、高さH/幅Wが2未満となる点である。
【0033】
比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J,1Kは、いずれも幅W=10cmに設けられている。比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J,1Kの高さH、高さH/幅Wは下記の表1に示す通りである。比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J,1Kの誘引源3は、同じであり、海産原料等を含む誘引剤30gを円板状のパルプ製のマット(直径7.5cm×高さ1.15cmの大きさ)に含浸させたものを、上面が開口した容器に充填したものを用いている。
【0034】
【表1】
【0035】
第1の試験における、蚊の室内捕獲試験は、下記の手順で行われた。70cm×70cm×高さ70cmのガラスチャンバー内の床面に模造紙を敷き、砂糖水の容器を置いた。その後、ガラスチャンバー内に供試虫(羽化後9~12日のヒトスジシマカ雌成虫)30頭を投入して馴化後、比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J,1Kをそれぞれ個別に設置して、時間の経過に伴う比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J,1Kへの蚊の侵入数、捕獲数及び侵入後、逃亡した虫数を30分後まで観察した。試験室は、温度約25~30℃、湿度約50~60%RHに設定した。
【0036】
そして、比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J,1Kの設置から30分後までの累計の蚊の侵入数、捕獲数及び侵入後、逃亡した虫数を求め比較した。結果を図3に示す。また、蚊の侵入数、捕獲数及び侵入後、逃亡した虫数から侵入数に対する捕獲数の割合(%)、侵入数に対する逃亡数の割合(%)を求めて比較した。結果を図4に示す。なお、上記試験は、くりかえし3回の試験を行った。図3及び図4は、3回の平均値を示す。
【0037】
図3に示すように、比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J,1Kへの蚊の侵入数は同等の範囲である。本発明品1E~1Iでは、比較品1B~1D及び比較品1J,1Kと比較して蚊の捕獲数が多く、捕獲器内からの蚊の逃亡数も少ない結果となった。本発明品1G(高さH15cm)が、蚊の捕獲数が最も多いことが分かった。図4に示すように、比較品1B~1D、本発明品1E~1I、比較品1J,1Kの蚊の侵入数の対する捕獲率あるいは逃亡率の値で比較するとさらにその傾向がみられた。詳しく説明すると、比較品1B~1D、1J、1Kにおける蚊の侵入数に対する捕獲率は、35%以下である。これに対して、高さH/幅Wが1以上2以下の本発明品1E~1Iにおける蚊の侵入数に対する捕獲率は、40%以上とすることができる。さらに高さH/Wが1.25以上1.5以下の本発明品1G~1Hにおける蚊の侵入数に対する捕獲率は、50%以上とすることができる。
【0038】
すなわち、図3及び図4の結果から、筒状体22の高さH/幅Wを1以上2以下とすることにより、蚊の捕獲数の向上を図れることが分かった。また、高さH/幅Wを1.25以上1.5以下とすると、より一層蚊の捕獲数の向上を図れることが分かった。
【0039】
(第2の試験)
第2の試験において、本発明者は、筒状体22の内面のみに粘着剤21を施したことの効果を確認するため、下記の表2に示す比較品1Lの捕獲器を作製して、下記の蚊の室内捕獲実験を行い蚊の捕獲数を確認した。比較品1Lと、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と、で異なる点は、開口部25、誘引源3が設けられていない点である。また、比較品1Lは、表面(外面及び内面)すべてに粘着剤21が施されている。また、比較品1Lを構成する筒状体22は、幅W=高さH=10cmに設けられ、内面も外面も黒色に設けられている。
【0040】
【表2】
【0041】
第2の試験における、蚊の室内捕獲試験は、下記の手順で行われた。まず、6畳の試験室(3.6m×2.7m×高さ2.4m=23.3m)内の床面に模造紙を敷いた。飼育ケージの側面に手をあてて吸血意欲を示す蚊の供試虫(羽化後8~11日のヒトスジシマカ雌成虫)を吸虫管で100頭選別し、上述した6畳の試験室内に放ち1時間馴化させた(砂糖水を与える条件)。試験室は、温度約25~30℃、湿度約50~60%RHに設定した。次に、6畳の試験室の床面に比較品1Lを設置し、設置から6時間後までの比較品1Lの粘着剤21への蚊の捕獲数の分布を確認した、結果を図5に示す。なお、蚊の室内捕獲試験は3回行い、各試験で設置位置を入れ替えて試験を行った。図5に示す捕獲数は、3回、蚊の捕獲試験を行った結果の平均値を示す。
【0042】
同図に示すように、比較品1Lでは、蚊の全捕獲数の4分の3が容器2の内面に捕獲されることが確認された。
【0043】
(第3の試験)
第3の試験において、本発明者は、筒状体22の内面のみに粘着剤21を施した構成、筒状体22の幅Wを6cm以上15cm以下とした効果を確認すべく、下記の表3に示す比較品1M~1Qの捕獲器を作成して、下記の蚊(羽化後13~16日のヒトスジシマカ雌成虫)の捕獲実験を行い蚊の捕獲数を確認した。比較品1M~1Qと、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と、で異なる点は、開口部25、誘引源3が設けられていない点である。また、比較品1M~1Qは、容器2の内面すべてに粘着剤21が施されている。また、比較品1M~1Qは、高さH/幅W=1とし、下記の表3に示すように、幅Wがそれぞれ異なる。
【0044】
【表3】
【0045】
第3の試験における蚊の室内捕獲試験は、第2の試験における蚊の室内捕獲試験と同様に6畳の試験室で行われたため、ここでは詳細な説明を省略する。6畳の試験室の床面に比較品1M~1Qを1個ずつ設置し、設置から6時間後までの比較品1M~1Qの筒状体22の内面、底部23の内面への蚊の捕獲数の分布を確認した。結果を図6に示す。なお、蚊の室内捕獲試験は3回行い、各試験で設置位置を入れ替えて試験を行った。図6に示す捕獲数は、3回、蚊の捕獲試験を行った結果の平均値を示す。
【0046】
蚊は比較品1M~1Qにおいても、上部から飛来して表面にランディングして捕獲された。4回の繰り返しの試験で、幅W=15cmでは比較品1M~1Qと比較して高い捕獲数の値を示した。
【0047】
比較品1M~1Qでの平均の蚊の捕獲数を比較すると、幅W=3cm~15cmまででは、表面積の大きさに比例してサイズが大きい程、平均の捕獲数は多くなる傾向にあった。しかし、幅W=20cmとなると、平均捕獲数は幅W=15cmを超えることはなく、高い蚊の捕獲効果を得る捕獲器は幅W=15cm程度が最適であると推察された。
【0048】
すなわち、筒状体22の幅Wを6cm以上15cm以下に設定した本実施形態の捕獲器1は、サイズに対する捕獲数の向上を図ることができることが分かった。
【0049】
また、比較品1M~1Qの内面での蚊が捕獲されている部位の内訳を平均でみると、捕獲数の比較品1Mを除き、比較品1N~1Qにおいて約80%が筒状体22の内面に捕獲され、残り約20%が底部23の内面に捕獲されていた。よって、筒状体22の内面のみに粘着剤21が施された本実施形態の捕獲器1は、全ての表面に粘着剤21が施された比較品1Lや全ての内面に粘着剤21が施された比較品1M~1Qと比較しても、蚊の捕獲数をほとんど減らすことがないことが分かった。
【0050】
次に、本発明者は、誘引源3及び開口部25を設けたことによる効果を確認すべく、下記に示す第4の試験を行った。
【0051】
(第4の試験)
第4の試験において、本発明者は、下記の表4に示す本発明品1T~1Wの捕獲器1を作製して、下記の蚊の屋外捕獲試験を行い蚊の捕獲数を確認した。本発明品1T,1U,1Wと、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と、で異なる点は、開口部25の数である。本発明品1Tは、開口部25が例えば前側部221に1つ設けられている。本発明品1Uは、開口部25が2つ設けられ、2つの開口部25は前側部221及び後側部222にそれぞれ1つずつ設けられ、前後方向に対向している。本発明品1Wは、開口部25が設けられていない。本発明品1Vと、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と、は同じ構成であり、4つの開口部25が設けられている。本発明品1T~1Wは、いずれも幅W10cm、高さH15cmに設けられている。
【0052】
【表4】
【0053】
第4の試験における蚊の屋外捕獲試験は、下記の手順で行われた。屋外捕獲試験は、公園の地面に枯れ葉が堆積しており、植物も生育している林付近で行った。本発明品1T~1Wを屋外に24時間設置後のシマカ、イエカの捕獲数を比較した。結果を図7に示す。なお、蚊の屋外捕獲試験は、本発明品1T~1Wを3箇所ずつに設置して2回行った。図7に示す捕獲数は、試験2回の計6箇所での結果の平均値を示す。
【0054】
評価を行った試験フィールドでは、シマカとイエカの本発明品1T~1Wの捕獲器1への捕獲が観察された。イエカの捕獲数は少ないため、主に捕獲数の多いシマカの捕獲数で、本発明品1T~1Wの捕獲器1の開口部25の数の違いによる蚊の捕獲数の傾向を確認した。
【0055】
図7から、側面の開口部25がない本発明品1Wと比較して、側面の開口部25が1個以上ある本発明品1T~1Vが蚊の捕獲数が多い傾向にあり、側面の開口部25が4個の本発明品1Vに最も蚊の捕獲数が多いことが分かった。
【0056】
以上、第4の試験の評価結果から側面に開口部25を設けることにより、誘引源3の揮散が促され、蚊の誘引効果を発揮して蚊の捕獲数を高めたことが分かった。
【0057】
(第5の試験)
次に、本発明者らは、底部23と筒状体22との成す角度の効果を確認すべく、下記に示す第5の試験を行った。第5の試験において、本発明者は、下記の表5に示す本発明品1EE~1GGの捕獲器1を作製して、下記の蚊の屋内試験を行い、蚊の捕獲数を確認した。本発明品1EEと、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と、で異なる点は、底部23と筒状体22の前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224との成す角度が75°に設けられている点である。すなわち、本発明品1EEは、上方に向かうに従って筒状体22の断面が小さくなるように前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224が傾斜している。
【0058】
本発明品1FFと、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と、で異なる点は、底部23と筒状体22の前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224との成す角度が100°に設けられている点である。すなわち、本発明品1FFは、上方に向かうに従って筒状体22の断面が大きくなるように前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224が傾斜している。
【0059】
本発明品1GGは、図1及び図2に示す本実施形態の捕獲器1と同様に構成され、底部23と筒状体22の前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224との成す角度が90°に設けられている。すなわち、本発明品1GGは、下から上に向かって筒状体22の断面が一定になる。本発明品1EE~1GGは、上方の開口24の面積が10cm×10cmで同一となり、高さH15cmに統一した。本発明品1EE~1GGの開口部25の面積もそれぞれ6cmと同一である。発明品1EE~1GGの誘引源3としても同一の海産原料等を含む誘引剤(第1の試験で用いたものと同じ)を用いている。なお、本発明品1EE,1FFのように下から上に向かって断面が異なる、すなわち下から上に向かって側部221~224の幅が異なる場合、上方の開口24の縁部を構成する部分の幅を筒状体22の幅Wとする。したがって、本発明品1EE,1FF,1GGの筒状体22の幅Wはいずれも10cmである。
【0060】
【表5】
【0061】
第5の試験における蚊の屋内捕獲試験は、70cm×70cm×高さ70cmのガラスチャンバー内の床面に模造紙を敷き、砂糖水の容器を置いた。その後、ガラスチャンバー内に供試虫(羽化後8~11日のヒトスジシマカ雌成虫)30頭を投入して馴化後、発明品1EE~1GGをそれぞれ個別に設置して、時間の経過に伴う発明品1EE~1GGへの蚊の侵入数、捕獲数及び侵入後、逃亡した虫数を30分後まで観察した。試験室は、温度約25~30℃、湿度約50~60%RHに設定した。
【0062】
そして、発明品1EE~1GGの設置から30分後までの累計の蚊の侵入数、捕獲数及び侵入後、逃亡した虫数を求め比較した。結果を図8に示す。また、蚊の侵入数、捕獲数及び侵入後、逃亡した虫数から侵入数に対する捕獲数の割合(%)、侵入数に対する逃亡数の割合(%)を求めて比較した。結果を図9に示す。なお、上記試験は、くりかえし4回の試験を行った。図8及び図9は、3回の平均値を示す。
【0063】
図8及び図9から明らかなように、筒状体22の傾斜角度を75°、100°とした発明品1EE,1FFに比べて傾斜角度90°の本発明品1GGは、蚊の侵入数は同等であるが、侵入するに対する捕獲率が明らかに高く、一度侵入した蚊の逃亡率が低いことが分かった。
【0064】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の飛翔害虫用の捕獲器10について、図10及び図11を参照して説明する。第2実施形態の飛翔害虫用の捕獲器10(以下、単に「捕獲器10」)は、第1実施形態と同様に飛翔害虫としての蚊を粘着剤で捕獲する捕獲器である。なお、図10及び図11において、上述した第1実施形態で既に説明した図1及び図2に示す捕獲器1と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0065】
捕獲器10は、内面に粘着剤21が施された断面が正方形の筒状体22と、底部23と、を有する容器2と、蚊の誘引源3と、底部23から容器2の上側の開口に向かって立設し、表面に粘着剤41が施された棒体4と、を備えている。容器2、誘引源3については第1実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0066】
第1実施形態と第2実施形態とで大きく異なる点は、容器2内に粘着剤41が施された棒体4が設けられている点である。本実施形態では、棒体4は、4つ設けられているが、棒体4の数は1つ以上であればよい。棒体4の材質は、プラスチック、金属等であることが好ましいが、撥水性、耐水性を有し、表面に粘着剤が塗布できるものであれば、紙、パルプ、ダンボール等でもよい。また、棒体4の形状は、円筒形状に限定されず、角筒形状などでもよく、シート状部材を折り畳んで構成されたものなどでもよい。また、棒体4の形状は、中空でない円柱形状、角柱形状などであってもよい。粘着剤41としては、筒状体22の内面に設けた粘着剤21と同様に飛翔害虫が捕獲できるものを用いている。
【0067】
より一層、蚊の捕獲数の向上を図ることができる。
【0068】
次に、本発明者らは、第2実施形態の効果を確認すべく、下記に示す第6~第9の試験を行った。
【0069】
(第6の試験)
第6の試験において、本発明者らは、棒体4の効果を確認するために、下記の表6に示す本発明品10A,10Bを作成し、下記に示す蚊の屋内捕獲試験を行い、蚊の捕獲数を確認した。本発明品10A,10Bの異なる点は、棒体4の有無である。本発明品10Aには4本の棒体4が設けられ、本発明品10Bには棒体4が設けられていない。本発明品10A,10Bの容器2は、いずれも幅W=10cm,高さ=15cmに設けられている。
【0070】
また、本発明品10A,10Bの容器2は、同じであり、いずれも黒色に設け、4つの開口部25の面積=6cmに設けられている。本発明品10Aの棒体4は、直径6mm、高さ=15cmのPP(ポリプロピレン)製のストローから構成されている。棒体4の表面は、黒色に設けられている。このストローから構成された棒体4の表面には粘着剤21と同様に飛翔害虫が捕獲できる粘着剤41が施されている。本発明品10A,10Bの誘引源3は、第1の試験で用いたものと同じである。
【0071】
【表6】
【0072】
第6の試験における、蚊の室内捕獲試験は、下記の手順で行われた。6畳の試験室(3.6m×2.7m×高さ2.4m=23.3m)の床面に模造紙を敷いた。その後、6畳の試験室内に供試虫(羽化後15~16日のヒトスジシマカ雌成虫)100頭を放ち1時間馴化させた(砂糖水を与える条件)。次に、6畳の試験室の床面に本発明品10A,10Bを同時に設置し、設置から24時間後までの筒状体22の内面への捕獲数、棒体4への捕獲数、総捕獲数を観察した。試験室は、温度約25~30℃、湿度約50~60%RHに設定した。
【0073】
そして、本発明品10A,10Bの設置から24時間後までの筒状体22の内面への捕獲数、棒体4への捕獲数、総捕獲数を比較した。結果を図12に示す。上記試験は、くりかえし4回の試験を行った。図12は、4回の平均値を示す。
【0074】
図12に示すように、棒体4を設けた本発明品10Aは、棒体4なしの本発明品10Bに比べて、蚊の総捕獲数が増えることが分かった。すなわち、図12の結果から、棒体4を設置することにより、蚊の捕獲数の向上を図れることが分かった。なお、前側部221および後側部222から各々4本ずつ突設された棒体4(長さ5cm)を設けた捕獲器1を用いて、同様の試験を行ったところ、棒体4なしの本発明品10Bに比べて、蚊の総捕獲数は増えなかった。
【0075】
(第7の試験)
第7の試験において、本発明者らは、さらに棒体4の効果を確認するために、下記の表7に示すように、第6の試験で用いた本発明品10A,10Bに加えて、本発明品10C,10D,10Eを作成し、下記に示す蚊の屋内捕獲試験を行い、蚊の捕獲数を確認した。本発明品10C,10D,10Eの異なる点は、棒体4の数である。本発明品10C,10D,10Eの容器2は、第6の試験で用いた本発明品10A,10Bの容器2と形も大きさも同じものである。本発明品10C,10D,10Eの棒体4、誘引源3も、第6の試験で用いた本発明品10A,10Bと同じものである。
【0076】
【表7】
【0077】
第7の試験における、蚊の室内捕獲試験は、第6の試験と同様であるため、詳細な説明を省略する。そして、本発明品10A,10C~10Eをそれぞれ本発明品10Bと同時に設置し(即ち、本発明品10Aと本発明品10Bとを同時設置し、本発明品10Cと本発明品10Bとを同時設置し、本発明品10D,10Eについても同様にそれぞれ本発明品10Bと同時設置する)、設置から24時間後までの捕獲器1の捕獲数を観察し、棒体4を設けることによる捕獲数の倍数(=棒体4ありの本発明品10A,10C,10Dまたは10Eの総捕獲数/棒体4なしの本発明品10Bの総捕獲数)を求めた。結果を図13に示す。上記試験は、くりかえし4回行った。図13は、4回の平均値を示す。
【0078】
同図に示すように、棒体4が1本でもあれば、棒体4なしの本発明品10Bに比べて蚊の総捕獲数を多くできることが分かった。特に、棒体4が2本以上あれば棒体4なしと比べて1.5以上となり、捕獲数が安定して高いことが分かった。
【0079】
(第8の試験)
第8の試験において、本発明者らは、棒体4の効果を確認するために、下記の表8に示すように本発明品10AA,10Bを作成し、下記に示す蚊の屋内試験を行い、容器2への侵入数、総捕獲数、逃亡数を確認した。本発明品10Bは第6の試験で用いたものと同じである。本発明品10AAと、第6の試験で用いた本発明品10Aとの異なる点は、棒体4の材質である。本発明品10AAは、棒体4として、直径3mm×高さ15cmの針金部材から構成され、針金部材の表面が褐色に設けられている。
【0080】
【表8】
【0081】
第8の試験における、蚊の室内捕獲試験は、70cm×70cm×高さ70cmのガラスチャンバー内の床面に模造紙を敷き、砂糖水の容器を置いた。その後、ガラスチャンバー内に供試虫(羽化後18~19日のヒトスジシマカ雌成虫)30頭を投入して馴化後、発明品10AA,10Bをそれぞれ個別に設置して、時間の経過に伴う発明品10AA,10Bの容器2への侵入数、総捕獲数、逃亡数を30分後まで観察した。試験室は、温度約25~30℃、湿度約50~60%RHに設定した。
【0082】
そして、発明品10AA,10Bの設置から30分後までの容器2への侵入数、総捕獲数、逃亡数を求め比較した。結果を図14に示す。また、本発明品10AA,10Bの容器2への侵入数に対する捕獲数の割合、逃亡数の割合を求めて比較した。結果を図15に示す。図14に示すように、棒体4を4本設置した発明品10AAでは、棒体4を設けていない発明品10Bと比較して、容器2内への蚊の侵入数は増え、容器2内からの蚊の逃亡数が減少する傾向にあった。そして、図15に示すように、容器2内に侵入した蚊の侵入数に対する捕獲数は、発明品10Bよりも発明品10AAの方が増える傾向にあり、逃亡数の割合も低下傾向にあった。
【0083】
(第9の試験)
第9の試験において、本発明者らは、棒体4に施した粘着剤41の効果を確認するために、下記の表9に示す本発明品10AA,10F,10Bを作成し、下記に示す蚊(羽化後16~17日のヒトスジシマカ雌成虫)の屋内試験を行い、内面への捕獲数、棒体への捕獲数、総捕獲数を確認した。本発明品10AAは第8の試験で用いたものと同じである。本発明品10Bは第6の試験で用いたものと同じである。本発明品10Fは、粘着剤41が施されていない棒体4が4本設けられている。本発明品10Fの棒体4は、本発明品10AAと同じものを用いている。また、本発明品10Fの容器2、誘引源3は、本発明品10AA,10Bと同じものを用いている。
【0084】
【表9】
【0085】
第9の試験における、蚊の屋内捕獲試験は、第6の試験と同様であるため、ここでは詳細を省略する。そして、本発明品10AA,10F,10Bの設置から24時間後までの筒状体22の内面への捕獲数、棒体4への捕獲数、総捕獲数を比較した。結果を図16に示す。上記試験は、くりかえし2回行った。図16は、2回の平均値を示す。
【0086】
第9の試験において、棒体4に粘着剤41を施した本発明品10AAは、棒体4に粘着剤41を施していない本発明品10Fに比べて、明らかに蚊の総捕獲数が多くなることが分かった。一方、本発明品10Fは、棒体4なしの本発明品10Bに比べて捕獲数は同等であり、蚊の捕獲数の増加がみられないことが分かった。すなわち、第9の試験により、蚊の捕獲数を増加させるためには、棒体4表面に粘着剤41を施す必要があることが分かった。
【0087】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0088】
例えば、上述した実施形態では、飛翔害虫として蚊を捕獲していたが、これに限ったものではない。飛翔害虫としては、飛翔する害虫であればよく、例えば、イエバエ等のハエ類、ショウジョウバエ、ノミバエ、キノバエ、チョウバエ等のコバエ類等であってもよい。
【0089】
また、上述した実施形態では、筒状体22として断面が正方形のものを用いていたが、これに限ったものではない。筒状体22としては、多角形であればよく、三角形であっても、五角形であってもよい。また、筒状体22の幅Wは、筒状体22を側面から見た時の最小の幅となる。すなわち、本実施形態のように筒状体22の断面が正方形である場合は、一辺の長さが幅Wとなる。筒状体22が正三角形、正五角形である場合は、頂点から頂点と対向する辺とを結ぶ距離が幅Wとなる。正六角形の場合は、互いに対向する辺同士の距離が幅Wとなる。また、上述したように筒状体22の断面が下から上に向かって異なる場合は、筒状体22の開口24の縁部を構成する部分について側面から見た時の最小の幅を筒状体22の幅Wとする。
【0090】
また、上述した実施形態では、誘引源3は底部23に設置されていたが、これに限ったものではない。誘引源3は容器2内に設置されていればよく、例えば底部23よりも上側に吊下げるなどして設置してもよい。この場合、開口部25は、容器2において底部23からの筒長さ方向(上下方向)における長さ(高さ)が誘引源3と同じとなる位置、または、この位置よりも底部23側の側部221~224または底部23に設けてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 飛翔害虫用の捕獲器
2 容器
3 誘引源
4 棒体
21 粘着剤
22 筒状体
23 底部
25 開口部
41 粘着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16