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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147361
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】飛翔害虫用の捕獲器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/14 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A01M1/14 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060322
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】木尾 幹広
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA13
2B121BA09
2B121BA12
2B121BA53
2B121CC02
2B121CC11
2B121EA21
2B121FA02
(57)【要約】
【課題】飛翔害虫の捕獲数の向上を図った飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法を提供する。
【解決手段】容器2は、内面に粘着剤21が施され筒状体22と、筒状体22の一方の開口を塞ぐ底部23と、を有し、筒状体22の他方が開口されている。底部23には、蚊の誘引源3が設定されている。表面に粘着剤41が設けられた棒体4が、底部23から容器2の開口に向かって立設している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に粘着剤が施された筒状体と、前記筒状体の筒長さ方向一方側の開口を塞ぐ底部と、を有し、前記筒状体の前記筒長さ方向他方が開口された容器と、前記容器内に設置された飛翔害虫の誘引源と、を備えた飛翔害虫用の捕獲器であって、
前記底部から前記容器の前記開口に向かって立設し、表面に粘着剤が設けられた棒体をさらに備えた、
飛翔害虫用の捕獲器。
【請求項2】
請求項1に記載の飛翔害虫用の捕獲器において、
前記容器において前記底部からの前記筒長さ方向における長さが前記誘引源と同じとなる位置、または、前記位置よりも前記底部側に少なくとも1つ以上の開口部が設けられている、
飛翔害虫用の捕獲器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の飛翔害虫用の捕獲器を用いた飛翔害虫の捕獲方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔害虫用の捕獲器、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛翔害虫用の捕獲器としては、例えば、特許文献1に記載された誘引捕獲トラップが提案されている。特許文献1に記載の誘引捕獲トラップは、筒状のトラップ基体から構成され、トラップ基体の内面に粘着面を設け、トラップ基体の内部にフェロモン剤が吊下げられている。フェロモン剤は、トラップ基体から吊下げられているため、トラップ基体を横置きにして使用する必要がある。
【0003】
上記特許文献1の誘引捕獲トラップは、トラップ基体を横置きしているため、上から飛来する飛翔害虫を捕獲することができない、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-120934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、飛翔害虫の捕獲数の向上を図った飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る飛翔害虫用の捕獲器は、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
内面に粘着剤が施された筒状体と、前記筒状体の筒長さ方向一方側の開口を塞ぐ底部と、を有し、前記筒状体の前記筒長さ方向他方が開口された容器と、前記容器内に設置された飛翔害虫の誘引源と、を備えた飛翔害虫用の捕獲器であって、
前記底部から前記容器の前記開口に向かって立設し、表面に粘着剤が設けられた棒体をさらに備えた、
飛翔害虫用の捕獲器。
[2]
[1]に記載の飛翔害虫用の捕獲器において、
前記容器において前記底部からの前記筒長さ方向における長さが前記誘引源と同じとなる位置、または、前記位置よりも前記底部側に少なくとも1つ以上の開口部が設けられている、
飛翔害虫用の捕獲器。
[3]
[1]又は[2]に記載の飛翔害虫用の捕獲器を用いた飛翔害虫の捕獲方法。
【0007】
上記[1]の構成の飛翔害虫用の捕獲器によれば、筒状体の内面に粘着剤が施されている。これにより、容器の外面に粘着剤を施す必要がないため、取り扱いが容易となる。しかも、容器の外面に粘着剤を施したものと比較しても、蚊の捕獲数をほとんど減らすことがない。また、容器内に棒体を設けることにより、飛翔害虫の捕獲数向上を図ることができる。
上記[2]の構成の飛翔害虫用の捕獲器によれば、開口部を設けることにより、より一層、飛翔害虫の捕獲数向上を図ることができる。
上記[3]の構成の飛翔害虫の捕獲方法によれば、筒状体の内面に粘着剤が施されている。これにより、容器の外面に粘着剤を施す必要がないため、取り扱いが容易となる。しかも、容器の外面に粘着剤を施したものと比較しても、蚊の捕獲数をほとんど減らすことがない。また、容器内に棒体を設けることにより、飛翔害虫の捕獲数向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る飛翔害虫用の捕獲器、及び、飛翔害虫の捕獲方法によれば、飛翔害虫の捕獲数の向上を図ることができる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に飛翔害虫用の捕獲器を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す飛翔害虫用の捕獲器の上面図である。
図3図3は、図1に示す飛翔害虫用の捕獲器の断面図である。
図4図4は、本発明品1A,比較品1Bについて蚊の屋内捕獲試験を行った結果を示すグラフである。
図5図5は、本発明品1A,1C~1E、比較品1Bについて蚊の屋内捕獲試験を行い、棒体を設けることによる蚊の捕獲数の倍数を求めた結果を示すグラフである。
図6図6は、本発明品1AA,比較品1Bについて蚊の屋内捕獲試験を行い、侵入数、総捕獲数及び逃亡数を求めた結果を示すグラフである。
図7図7は、本発明品1AA,比較品1Bについて蚊の室内捕獲試験を行い、侵入数に対する捕獲数の割合及び侵入数に対する逃亡数の割合を求めた結果を示すグラフである。
図8図8は、本発明品1AA,比較品1F,1Bについて蚊の屋内捕獲試験を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
以下、説明の便宜上、図1図3に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。なお、上下方向が、本発明の「筒長さ方向」に対応する。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態の飛翔害虫用の捕獲器1(以下、単に「捕獲器1」と略記する)は、飛翔害虫としての蚊を粘着剤で捕獲する捕獲器である。捕獲器1は、内面に粘着剤21が施された断面が正方形の筒状体22と、筒状体22の下側(筒長さ方向一方側)の開口を塞ぐ底部23と、を有する容器2と、底部23に設置され、筒状体22内に収容された蚊の誘引源3(図2参照)と、底部23から容器2の上側の開口に向かって立設し、表面に粘着剤41が施された棒体4(図2図3参照)と、を備えている。
【0014】
上記筒状体22は、上側(筒長さ方向他方側)の開口24は塞がれていない。また、粘着剤21は、筒状体22の全内面に設けられている。粘着剤21は、筒状体22の外面や底部23には設けられていない。本実施形態では、筒状体22は、黒色に設けられている。
【0015】
筒状体22は、前後方向に対向し、左右方向に延びる前側部221及び後側部222と、前側部221及び後側部222の左端を連結し、前後方向に延びる左側部223と、前側部221及び後側部222の右端を連結し、前後方向に延びる右側部224と、を有している。これら前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224は、平板状に設けられている。
【0016】
また、筒状体22には、底部23に隣接する4つの開口部25が設けられている。なお、4つの開口部25を設けることは必須ではない。開口部25は、なくてもよいし、4つより少なくてもよく、4つより多くてもよい。本実施形態では、開口部25を4つ設けた場合について説明する。また、本実施形態の筒状体22の側面には、底部23に隣接する4つの開口部25のみが設けられ、他の部分には開口部が設けられていない。4つの開口部25は、前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224にそれぞれ一つずつ設けられている。前側部221及び後側部222に設けられた開口部25が前後方向に対向して配置される。左側部223及び右側部224に設けられた開口部25が左右方向に対向して配置される。
【0017】
底部23は、平板状に設けられ、前側部221、後側部222、左側部223及び右側部224との成す角度が90°となる。すなわち、筒状体22の断面積は、上端から下端まで同じに設けられている。誘引源3は、底部23に設置されている。
【0018】
棒体4は、4つ設けられているが、棒体4の数は1つ以上であればよい。棒体4の材質は、プラスチック、金属等であることが好ましいが、撥水性、耐水性を有し、表面に粘着剤が塗布できるものであれば、紙、パルプ、ダンボール等でもよい。また、棒体4の形状は、円筒形状に限定されず、角筒形状などでもよく、シート状部材を折り畳んで構成されたものなどでもよい。また、棒体4の形状は、中空でない円柱形状、角柱形状などであってもよい。粘着剤41としては、筒状体22の内面に設けた粘着剤21と同様に飛翔害虫が捕獲できるものを用いている。
【0019】
上述した実施形態の捕獲器1によれば、筒状体22の内面に粘着剤21が施されている。これにより、容器2の外面に粘着剤21を施す必要がないため、取り扱いが容易となる。しかも、容器2の外面に粘着剤21を施したものと比較しても、蚊の捕獲数を減らすことがない。また、棒体4を設けることにより、蚊の捕獲数の向上を図ることができる。
【0020】
また、上述した実施形態の捕獲器1によれば、筒状体22には、底部23に隣接する4つの開口部25が設けられている。すなわち、開口部25は、容器2において底部23からの筒長さ方向(上下方向)における長さ(高さ)が誘引源3と同じとなる位置に設けられている。言い換えると、開口部25は、底部23に設置された誘引源3と筒長さ方向と直交する水平方向に対向する位置に設けられている。これにより、より一層、蚊の捕獲数の向上を図ることができる。
【0021】
飛翔害虫用の捕獲器1は、屋外に設置して周辺部よりも暗くなるような材質、色調のものが好ましい。捕獲器1の本体の材質は、プラスチック等が好ましいが、湿った場所にでも設置できるように撥水性、耐水性を有する材質であればよく、紙、パルプ、ダンボール等でもよい。また、色調はとくに蚊類が好む黒色や赤色が好ましいが、屋外に設置して周辺部よりも暗くなるような色調であればこの限りではない。
【0022】
飛翔害虫用の誘引源3には、既知の飛翔害虫の誘引成分が使用できるが、その他、例えば、ブランデー、ウイスキー、ラム酒、ウォッカ、焼酎、日本酒等の酒類;黒酢、赤酢、食酢、リンゴ酢、米酢等の醸造酢;蜂蜜、液糖、メープルシロップ等の糖類;乳酸菌飲料、ヨーグルト、チーズ等の乳製品;果汁;果実調の香料;魚介類などの海産原料加工品;魚介類などの海産原料抽出物等の誘引成分、カイロなどの熱源、炭酸水素アンモニウムなどのCO発生源等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて誘引源として使用することができる。
【0023】
また、誘引源3となる誘引剤の剤形は使用形態に合わせて選択することができ、液状、ペースト状、固体状(ゼリー状、粉状、粒状等)、揮散紙や多孔質体等の含浸体に含浸させた状態等を挙げることができる。
【0024】
具体的に、液状の飛翔害虫用の誘引剤をそのまま用いたり、液状の飛翔害虫用の誘引剤とゲル化剤を混合させてペースト状や固体状としたり、吸水性ポリマーやパルプ製のマットに液状の飛翔害虫用の誘引剤を含浸させたり、液状の飛翔害虫用の誘引剤を無機物担体に担持させることにより、固体状の誘引剤を得たりできる。
【0025】
飛翔害虫用の誘引剤には、防除効果を高めるために、飛翔害虫の誘引性を阻害しない範囲において、既知の殺虫成分を含有することができる。
【0026】
殺虫成分としては、例えば、天然ピレトリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、アレスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、エンペントリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ジクロルボス等の有機リン系化合物、フェノブカルブ、プロポクスル等のカーバメート系化合物、フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物、ヒドラメチルノン等のアミジノヒドラゾン系化合物、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物等、及びオレンジ油、ハッカ油、ベンジルアルコール等の殺虫性製油等を用いることができる。
【0027】
その他、誘引剤に配合できる成分としては、例えば誤食防止剤、防腐剤、pH調整剤、安定化剤、色素、香料、溶媒等の各種補助成分が挙げられる。例えば、安息香酸デナトニウム、トウガラシエキス等の誤食防止剤、塩化セチルピリジニウム等の四級アンモニウム塩、ソルビン酸カリウム、パラベン、ホウ酸等の防腐剤、クエン酸、リン酸これらの塩等のpH調整剤、BHT,BHA等の安定剤、赤色、青色、黄色、緑色、黒色、茶色等を示す各種色素、果実調の香料、メタノール,エタノール,プロパノール等の低級アルコール、流動パラフィン等の炭化水素系溶剤、蒸留水,水道水,脱イオン水等の水等が挙げられる。
【0028】
捕獲器1に用いる粘着剤21の成分は、ハエ取り紙や粘着式のゴキブリ、ネズミ捕獲器等で使用されているものでよく、その他、飛翔害虫が捕獲できる成分であれば使用できる。さらに粘着効果を長期間維持させるために安定剤等を含有させてもよい。
【0029】
次に、本発明者らは、本実施形態の効果を確認すべく、下記に示す第1~第4の試験を行った。
【0030】
(第1の試験)
第1の試験において、本発明者らは、棒体4の効果を確認するために、下記の表1に示す本発明品1A,比較品1Bを作成し、下記に示す蚊の屋内捕獲試験を行い、蚊の捕獲数を確認した。本発明品1A,比較品1Bの異なる点は、棒体4の有無である。本発明品1Aには4本の棒体4が設けられ、比較品1Bには棒体4が設けられていない。本発明品1A,比較品1Bの容器2は、いずれも幅W=10cm,高さ=15cmに設けられている。
【0031】
また、本発明品1A,比較品1Bの容器2は、同じであり、いずれも黒色に設け、4つの開口部25の面積=6cmに設けられている。本発明品1Aの棒体4は、直径6mm、高さ=15cmのPP(ポリプロピレン)製のストローから構成されている。棒体4の表面は、黒色に設けられている。このストローから構成された棒体4の表面には粘着剤21と同様に飛翔害虫が捕獲できる粘着剤41が施されている本発明品1A,比較品1Bの誘引源3は、同じであり、海産原料等を含む誘引剤30gを円板状のパルプ製のマット(直径7.5cm×高さ1.15cmの大きさ)に含侵させたものを、上面が開口した容器に充填したものを用いている。
【0032】
【表1】
【0033】
第1の試験における、蚊の室内捕獲試験は、下記の手順で行われた。6畳の試験室(3.6m×2.7m×高さ2.4m=23.3m)の床面に模造紙を敷いた。その後、6畳の試験室内に供試虫(羽化後15~16日のヒトスジシマカ雌成虫)100頭を放ち1時間馴化させた(砂糖水を与える条件)。次に、6畳の試験室の床面に本発明品1A,比較品1Bを同時に設置し、設置から24時間後までの筒状体22の内面への捕獲数、棒体4への捕獲数、総捕獲数を観察した。試験室は、温度約25~30℃、湿度約50~60%RHに設定した。
【0034】
そして、本発明品1A,比較品1Bの設置から24時間後までの筒状体22の内面への捕獲数、棒体4への捕獲数、総捕獲数を比較した。結果を図4に示す。上記試験は、くりかえし4回の試験を行った。図4は、4回の平均値を示す。
【0035】
図4に示すように、棒体4を設けた本発明品1Aは、棒体4なしの比較品1Bに比べて、蚊の総捕獲数が増えることが分かった。すなわち、図4の結果から、棒体4を設置することにより、蚊の捕獲数の向上を図れることが分かった。なお、前側部221および後側部222から各々4本ずつ突設された棒体4(長さ5cm)を設けた捕獲器1を用いて、同様の試験を行ったところ、棒体4なしの比較品1Bに比べて、蚊の総捕獲数は増えなかった。
【0036】
(第2の試験)
第2の試験において、本発明者らは、さらに棒体4の効果を確認するために、下記の表2に示すように、第1の試験で用いた本発明品1A,比較品1Bに加えて、本発明品1C,1D,1Eを作成し、下記に示す蚊の屋内捕獲試験を行い、蚊の捕獲数を確認した。本発明品1C,1D,1Eの異なる点は、棒体4の数である。本発明品1C,1D,1Eの容器2は、第1の試験で用いた本発明品1A,比較品1Bの容器2と形も大きさも同じものである。本発明品1C,1D,1Eの棒体4、誘引源3も、第1の試験で用いた本発明品1A,比較品1Bと同じものである。
【0037】
【表2】
【0038】
第2の試験における、蚊の室内捕獲試験は、第1の試験と同様であるため、詳細な説明を省略する。そして、本発明品1A,1C~1Eをそれぞれ比較品1Bと同時に設置し(即ち、本発明品1Aと比較品1Bとを同時設置し、本発明品1Cと比較品1Bとを同時設置し、本発明品1D,1Eについても同様にそれぞれ比較品1Bと同時設置する)、設置から24時間後までの捕獲器1の捕獲数を観察し、棒体4を設けることによる捕獲数の倍数(=棒体4ありの本発明品1A,1C,1Dまたは1Eの総捕獲数/棒体4なしの比較品1Bの総捕獲数)を求めた。結果を図5に示す。上記試験は、くりかえし4回行った。図5は、4回の平均値を示す。
【0039】
同図に示すように、棒体4が1本でもあれば、棒体4なしの比較品1Bに比べて蚊の総捕獲数を多くできることが分かった。特に、棒体4が2本以上あれば棒体4なしと比べて1.5以上となり、捕獲数が安定して高いことが分かった。
【0040】
(第3の試験)
第3の試験において、本発明者らは、棒体4の効果を確認するために、下記の表3に示すように本発明品1AA,比較品1Bを作成し、下記に示す蚊の屋内試験を行い、容器2への侵入数、総捕獲数、逃亡数を確認した。比較品1Bは第1の試験で用いたものと同じである。本発明品1AAと、第1の試験で用いた本発明品1Aとの異なる点は、棒体4の材質である。本発明品1AAは、棒体4として、直径3mm×高さ15cmの針金部材から構成され、針金部材の表面が褐色に設けられている。
【0041】
【表3】
【0042】
第3の試験における、蚊の室内捕獲試験は、70cm×70cm×高さ70cmのガラスチャンバー内の床面に模造紙を敷き、砂糖水の容器を置いた。その後、ガラスチャンバー内に供試虫(羽化後18~19日のヒトスジシマカ雌成虫)30頭を投入して馴化後、発明品1AA,比較品1Bをそれぞれ個別に設置して、時間の経過に伴う本発明品1AA,比較品1Bの容器2への侵入数、総捕獲数、逃亡数を30分後まで観察した。試験室は、温度約25~30℃、湿度約50~60%RHに設定した。
【0043】
そして、発明品1AA,比較品1Bの設置から30分後までの容器2への侵入数、総捕獲数、逃亡数を求め比較した。結果を図6に示す。また、本発明品1AA,比較品1Bの容器2への侵入数に対する捕獲数の割合、逃亡数の割合を求めて比較した。結果を図7に示す。図6に示すように、棒体4を4本設置した発明品1AAでは、棒体4を設けていない比較品1Bと比較して、容器2内への蚊の侵入数は増え、容器2内からの蚊の逃亡数が減少する傾向にあった。そして、図7に示すように、容器2内に侵入した蚊の侵入数に対する捕獲数は、比較品1Bよりも発明品1AAの方が増える傾向にあり、逃亡数の割合も低下傾向にあった。
【0044】
(第4の試験)
第4の試験において、本発明者らは、棒体4に施した粘着剤41の効果を確認するために、下記の表4に示す本発明品1AA,比較品1F,1Bを作成し、下記に示す蚊(羽化後16~17日のヒトスジシマカ雌成虫)の屋内試験を行い、内面への捕獲数、棒体4への捕獲数、総捕獲数を確認した。本発明品1AAは第9の試験で用いたものと同じである。比較品1Bは第1の試験で用いたものと同じである。比較品1Fは、粘着剤41が施されていない棒体4が4本設けられている。比較品1Fの棒体4は、本発明品1AAと同じものを用いている。また、比較品1Fの容器2、誘引源3は、本発明品1AA,比較品1Bと同じものを用いている。
【0045】
【表4】
【0046】
第4の試験における、蚊の屋内捕獲試験は、第1の試験と同様であるため、ここでは詳細を省略する。そして、本発明品1AA,比較品1F,1Bの設置から24時間後までの筒状体22の内面への捕獲数、棒体4への捕獲数、総捕獲数を比較した。結果を図8に示す。上記試験は、くりかえし2回行った。図8は、2回の平均値を示す。
【0047】
第4の試験において、棒体4に粘着剤41を施した本発明品1AAは、棒体4に粘着剤41を施していない比較品1Fに比べて、明らかの蚊の捕獲数が多くなることが分かった。一方、比較品1Fは、棒体4なしの比較品1Bに比べて捕獲数は同等であり、蚊の捕獲数の増加がみられないことが分かった。すなわち、第4の試験により、蚊の捕獲数を増加させるためには、棒体4表面に粘着剤41を施す必要があることが分かった。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、飛翔害虫として蚊を捕獲していたが、これに限ったものではない。飛翔害虫としては、飛翔する害虫であればよく、例えば、イエバエ等のハエ類、ショウジョウバエ、ノミバエ、キノバエ、チョウバエ等のコバエ類等であってもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、筒状体22として断面が正方形のものを用いていたが、これに限ったものではない。筒状体22としては、筒状であればよく、円形であっても、三角形であっても、五角形であってもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、誘引源3は底部23に設置されていたが、これに限ったものではない。誘引源3は容器2内に設置されていればよく、例えば底部23よりも上側に吊下げるなどして設置してもよい。この場合、開口部25は、容器2において底部23からの筒長さ方向(上下方向)における長さ(高さ)が誘引源3と同じとなる位置、または、この位置よりも底部23側の側部221~224または底部23に設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 飛翔害虫用の捕獲器
2 容器
3 誘引源
4 棒体
21 粘着剤
22 筒状体
23 底部
25 開口部
41 粘着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8