(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147363
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】樹脂含有複合材の焼成炉、処理装置、および焼成方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20241008BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20241008BHJP
F23G 5/46 20060101ALI20241008BHJP
F27B 9/36 20060101ALI20241008BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20241008BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20241008BHJP
B09B 101/75 20220101ALN20241008BHJP
【FI】
B09B3/40
F23G7/06 Z
F23G5/46
F27B9/36
F27D17/00 104G
F27D7/02 A
B09B101:75
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060327
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】594146179
【氏名又は名称】株式会社新菱
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大輔
【テーマコード(参考)】
3K065
3K078
4D004
4K050
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
3K065JA03
3K065JA12
3K078AA03
3K078BA09
4D004AA06
4D004AA23
4D004CA24
4D004CA30
4D004CB02
4D004CB31
4K050AA04
4K050BA16
4K050CA13
4K050CD01
4K050CD12
4K050CE04
4K050DA07
4K050EA06
4K056AA12
4K056BB02
4K056CA18
4K056CA20
4K056DB03
4K056FA03
4K056FA08
4K063AA06
4K063AA13
4K063BA12
4K063BA13
4K063CA02
4K063DA01
4K063DA15
4K063DA24
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】太陽光パネルなどの樹脂含有複合材を加熱処理するときに、サーマルリサイクル時に焼成炉本体の腐食を防止し、装置のメンテナンスが容易な焼成炉等を提供する。
【解決手段】樹脂含有複合材3の樹脂を熱分解して除去するための焼成炉(13、15)であって、焼成炉(13、15)から排出される樹脂を熱分解した分解ガスを燃焼させる燃焼装置4から排出される排出ガスの熱で焼成炉(13、15)を加熱する加熱構造を有し、前記加熱構造が、間接式熱交換器(812、822)を有する、焼成炉(13、15)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂含有複合材の樹脂を熱分解して除去するための焼成炉であって、
焼成炉から排出される樹脂を熱分解した分解ガスを燃焼させる燃焼装置から排出される排出ガスの熱で前記焼成炉を加熱する加熱構造を有し、
前記加熱構造が、間接式熱交換器を有する、焼成炉。
【請求項2】
前記間接式熱交換器が、多管式熱交換器、蛇管式熱交換器および加熱壁からなる群から選択されるいずれかである、請求項1に記載の焼成炉。
【請求項3】
前記焼成炉の温度に応じて出力制御を行い、前記焼成炉の温度を調節する電気ヒーターを有する、請求項1に記載の焼成炉。
【請求項4】
前記樹脂含有複合材が、太陽光パネル、液晶パネルおよび合わせガラスからなる群から選択されるいずれかである、請求項1に記載の焼成炉。
【請求項5】
前記焼成炉が、マッフルと外壁を有し、前記マッフルと前記外壁の間に前記間接式熱交換器が配置される、請求項1に記載の焼成炉。
【請求項6】
前記間接式熱交換器のガス流路の下流に設けられる除害塔と、請求項1~5のいずれかに記載の焼成炉とを有する樹脂含有複合材の処理装置。
【請求項7】
樹脂含有複合材の樹脂を熱分解して除去する焼成方法であって、
焼成炉から排出される樹脂を熱分解した分解ガスを燃焼させる燃焼装置から排出される排出ガスの熱で前記焼成炉を加熱する加熱構造を有し、前記加熱構造が、間接式熱交換器を有する焼成炉で焼成する、樹脂含有複合材の焼成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂含有複合材の焼成炉に関する。また、樹脂含有複合材の処理装置に関する。また、樹脂含有複合材の焼成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済の太陽光発電パネル等の樹脂含有複合材から樹脂を熱分解によって除去し、有価物の回収や、再資源化することが行われている。樹脂を熱分解する際に発生する未燃焼ガスは有害なものを含む場合があり、アフターバーナー(燃焼装置)で燃焼して、CO2やH2O等の無害なガスにして大気に放出される。
【0003】
例えば、特許文献1は、太陽電池モジュールに含まれる太陽電池素子の構成材料を回収する方法であって、少なくともセル部及びガラス基板と、これらに結合したエチレンビニルアセテート(EVA)封止材を含む太陽電池素子を、炉内の酸素濃度を1.0体積%以上3.0体積%以下に保持した連続式熱処理炉に搬送し、300~400℃に設定された予備加熱分解部にてEVA分解ガスの一種である酢酸ガスを放出除去し、続いて400~550℃に設定された熱処理部にて酢酸以外のEVA分解ガスを脱離させて前記太陽電池素子からEVA封止材を除去して、セル部とガラス基板を分離する工程を含むことを特徴とする太陽電池素子構成材料の回収方法を開示している。
【0004】
また、特許文献2は、少なくとも無機ガラス板及びこれに結合したプラスチック層でなる合わせガラスを、ガス雰囲気中で熱処理することにより、構成部材に分離する方法において、合わせガラスを、加熱段階において、最大加熱速度50℃/分で最終温度少なくとも300℃に加熱し;及び保持段階において、プラスチック層が本質的に熱分解及び/又は蒸発するまで、前記合わせガラスを最終温度に保持することを特徴とする、合わせガラスの構成部材の分離方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6297254号公報
【特許文献2】特開平11-165150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2等において、省エネルギーの観点から、燃焼装置で燃焼した後の高温のガスを熱分解炉の加熱等に再利用することが行われている。しかしながら、例えば、太陽光発電パネルのフッ素樹脂製バックシートなど熱分解する樹脂の種類によっては、熱分解処理した際にフッ素等の腐食性ガスを発生する場合があり、また燃焼装置での処理条件によっては、未燃ガスやNOxといった腐食性ガスを発生する場合があり、サーマルリサイクル時に腐食性ガスが熱分解炉本体のガス流路を腐食し、メンテナンスに手間や費用がかかるという問題があった。
【0007】
かかる状況下、本発明は、樹脂含有複合材の樹脂の熱分解に伴うサーマルリサイクル時に腐食性ガスによる焼成炉本体の腐食を防止し、装置のメンテナンスが容易な焼成炉等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0009】
<1> 樹脂含有複合材の樹脂を熱分解して除去するための焼成炉であって、
焼成炉から排出される樹脂を熱分解した分解ガスを燃焼させる燃焼装置から排出される排出ガスの熱で前記焼成炉を加熱する加熱構造を有し、
前記加熱構造が、間接式熱交換器を有する、焼成炉。
<2> 前記間接式熱交換器が、多管式熱交換器、蛇管式熱交換器および加熱壁からなる群から選択されるいずれかである、前記<1>に記載の焼成炉。
<3> 前記焼成炉の温度に応じて出力制御を行い、前記焼成炉の温度を調節する電気ヒーターを有する、前記<1>または<2>に記載の焼成炉。
<4> 前記樹脂含有複合材が、太陽光パネル、液晶パネルおよび合わせガラスからなる群から選択されるいずれかである、前記<1>~<3>のいずれかに記載の焼成炉。
<5> 前記焼成炉が、マッフルと外壁を有し、前記マッフルと前記外壁の間に前記間接式熱交換器が配置される、前記<1>~<4>のいずれかにに記載の焼成炉。
<6> 前記間接式熱交換器のガス流路の下流に設けられる除害塔と、前記<1>~<5>のいずれかに記載の焼成炉とを有する樹脂含有複合材の処理装置。
<7> 樹脂含有複合材の樹脂を熱分解して除去する焼成方法であって、
焼成炉から排出される樹脂を熱分解した分解ガスを燃焼させる燃焼装置から排出される排出ガスの熱で前記焼成炉を加熱する加熱構造を有し、前記加熱構造が、間接式熱交換器を有する焼成炉で焼成する、樹脂含有複合材の焼成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の焼成炉等は、サーマルリサイクル時に腐食性ガスによる焼成炉本体の腐食を防止し、装置のメンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の焼成炉を利用する樹脂含有複合材の処理装置の概要図である。
【
図2】本発明の焼成炉の説明するための斜視した概要図である。
【
図3】本発明の焼成炉の概要を説明するための焼成炉の入り口側から見た概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0013】
[本発明の焼成炉]
本発明の焼成炉は、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解して除去するための焼成炉であって、焼成炉から排出される樹脂を熱分解した分解ガスを燃焼させる燃焼装置から排出される排出ガスの熱で前記焼成炉を加熱する加熱構造を有し、前記加熱構造が、間接式熱交換器を有する。
【0014】
[本発明の焼成方法]
本発明の焼成方法は、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解して除去する焼成方法であって、焼成炉から排出される樹脂を熱分解した分解ガスを燃焼させる燃焼装置から排出される排出ガスの熱で前記焼成炉を加熱する加熱構造を有し、前記加熱構造が、間接式熱交換器を有する焼成炉で焼成する、樹脂含有複合材の焼成方法である。
【0015】
なお、本願において本発明の焼成炉を用いて本発明の焼成方法を行うこともでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0016】
[太陽光電池パネルのリサイクル装置]
図1は、本発明の処理装置を利用することができる樹脂含有複合材の処理装置の概要図である。ここでは、樹脂含有複合材として太陽光電池パネル(PV(Photovoltaic)パネル)などの太陽光電池素子を、加熱処理して、その構成材料を回収するための処理装置を例に説明する。
【0017】
処理装置100は、搬送ライン21により
図1の左側から右側に向けて、樹脂含有複合材3を搬送する。各室で、樹脂含有複合材3が熱処理などで処理される。処理装置100は、
図1の左側から入口室11、入口シール室12、第一の焼成炉13、切替部14、第二の焼成炉15、空冷室16、冷却室17、出口シール室18、および出口室19を有する。各室で発生した排ガスなどは、適宜、配管71や配管72などを通して、スクラバー91で処理されて排気ライン92から排気される。
【0018】
リサイクル対象などのPVパネルのような樹脂含有複合材3は、処理装置100に搬入されて、第一の焼成炉13と、第二の焼成炉15で、焼成されて、樹脂などを熱分解して、残留物を、空冷室16、冷却室17で冷却して、出口室19から回収する。この出口室19から、樹脂含有複合材から有価物を回収する。このような処理装置の詳細については、前述の特許文献1などを参照することができる。
【0019】
第一の焼成炉13や、第二の焼成炉15で、焼成により熱処理されることで、樹脂が熱分解した熱分解ガスが生じる。この熱分解ガスは、各種有機物などを含むため悪臭や環境汚染など有害な恐れがあるため、燃焼装置4で、加熱処理して排出される。この排出されたガスも高温である。本発明は、この燃焼装置4から排出されるガスを利用するサーマルリサイクルに関する。
【0020】
図2は、本発明の焼成炉を説明するための斜視した概要図である。
図3は、本発明の焼成炉の概要を説明するための焼成炉の入り口側から見た概要図である。
【0021】
図2は、第一の焼成炉13、切替部14、および第二の焼成炉15部分を拡大した概要図である。第一の焼成炉13内で、樹脂含有複合材3を焼成して、熱分解ガスが発生する。熱分解ガスは、熱分解ガス配管61から、燃焼装置4の燃焼室に供給されて、燃焼装置4で、空気やLPGガスと混合されて燃焼される。燃焼後の排気ガスは、排気配管51から排出される。排気配管51は、燃焼装置4の手前側と奥側とに設けられている。燃焼装置4から排出される排気ガスは、高温なため、それぞれの排気配管51から、さらに、再加熱ライン811や、再加熱ライン821に供給される。
【0022】
燃焼装置4から排出される排気ガスを用いた手前側の第一の焼成炉13の加熱は、次のように行われる。排気配管51に接続された再加熱ライン811から排気ガスが供給される。さらに、この排気ガスは、再加熱ライン811と接続されている間接式熱交換器812で、第一の焼成炉13の加温に寄与するように熱を供給する。間接式熱交換器812を通過した排気ガスは、再加熱ライン813を通り、排気ライン73(
図1)を通って、除害塔91で処理されて、排出される。
【0023】
同様に、燃焼装置4から排出される排気ガスを用いた奥側の第二の焼成炉15の加熱は、次のように行われる。排気配管51に接続された再加熱ライン821から排気ガスが供給される。さらに、この排気ガスは、再加熱ライン821と接続されている間接式熱交換器822で、第二の焼成炉15の加温に寄与するように熱を供給する。間接式熱交換器822を通過した排気ガスは、再加熱ライン823を通り、排気ライン73(
図1)を通って、除害塔91で処理されて、排出される。
【0024】
[処理装置]
処理装置は、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解等して処理する装置であり、この熱分解する際に発生する樹脂の熱分解ガスを燃焼等して処理する装置である。燃焼装置は、
図1に示すような、太陽光電池パネルなどの樹脂含有複合材の樹脂の熱分解ガスを、処理するために用いられる。この燃焼装置は、熱分解ガスを回収して処理することができる任意の配置で設けることができる。例えば、燃焼装置は、熱分解ガスが発生する主な場となる焼成炉の周辺などに設けて用いることができる。
【0025】
燃焼装置は、熱分解ガスを燃焼させる場となる燃焼室を少なくとも有する。さらに、燃焼させるための着火手段や、燃焼温度を調整するためのガスなどの燃料の供給部、炉内温度を調整や維持するための加熱手段や保温手段、これらの制御のための制御部や、監視のためのセンサーなどを有するものとすることができる。燃焼された後の気体は、排ガスとして出口から排出される。
【0026】
[熱分解ガス]
熱分解ガスは、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する、樹脂が熱分解されたガスである。樹脂含有複合材は、使用されている樹脂の種類によって、様々な高分子などの有機化合物が含まれる。これらの樹脂には、元素として炭素や、窒素、フッ素、水素、酸素などが含まれ、これらの元素が化学結合等したものが、加熱により分解されて気化したものが熱分解ガスである。
【0027】
熱分解させるとき、気化の効率や、気化させるときの反応、気化したとき成分の特性などを考慮して、適宜、窒素雰囲気下などの不活性ガス下での気化や、空気などの酸素なども存在下での気化などを使い分ける場合がある。本発明の対象はいずれの気化条件で生じた熱分解ガスでもよいが、特に、酸素と反応させる燃焼を行うことがより有効に寄与しやすい、樹脂を窒素雰囲気下などの不活性ガス下で気化させた熱分解ガスなどを対象とすることができる。供給部の内筒に流入させる気体は、樹脂の熱分解ガスと、その熱分解ガスが生じた雰囲気ガス(窒素ガスなど)を含む気体を流入させる。
【0028】
[樹脂含有複合材]
樹脂含有複合材は、樹脂を含む複合材であればどのようなものを対象としてもよい。樹脂含有複合材の構造部材や、マトリックス樹脂、封止剤などに樹脂が用いられており、これらを単に取り外すような機械的な手法や、篩分けなどの選別手段などで樹脂を分離できないときに、熱分解で樹脂を処理するものなどで、本発明は利用できる。
図1は、PVパネルを例に説明したが、これらの他にも、例えば、繊維強化樹脂や、プリント配線板、液晶パネル、合わせガラスなどを対象としてもよい。
【0029】
[樹脂]
樹脂含有複合材の樹脂は、複合材に用いられ、熱分解できるものを対象とでき、熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂などを対象とすることができる。フッ素樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド、ポリビニルブチラール(PVB)を含むものなどを対象とすることができる。特に、フッ素樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステルを含むものなどを対象とすることができ、フッ素樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)を含むものなどを対象とすることができる。
【0030】
[熱分解ガス/空気の供給量]
配管62は、空気を供給する配管である。空気に含まれる酸素が、熱分解ガスの燃焼に用いられる。このため、酸素を含むものであればよいが、連続的に燃焼して、消費量も多くなりやすいことから空気を用いることが経済的に合理的である。熱分解ガスと空気との混合気体は、連続的に燃焼室に供給される。熱分解ガスが燃焼する範囲で、熱分解ガスと空気の比率を、それぞれの流量で調整する。これらの比率は、熱分解ガスの種類や、燃焼室の温度、滞留時間など考慮して燃焼されやすさに基づいて適宜設定する。状況にもよるが、例えば、Nm3(ノルマル立方メートル)に換算した流量(単位例:Nm3/時間)として、熱分解ガスの流量:空気の流量が、1:0.5~1:100程度や、1:5~1:30程度とすることができる。なお、この流量比において、熱分解ガスの流量は、焼成時の樹脂の熱分解ガスとその熱分解ガスが生じた雰囲気ガス(窒素ガスなど)などを含むものとして換算する。
【0031】
[気体の流量]
熱分解ガスと、空気の流量は、熱分解ガスの量や種類などによる燃焼しやすさや、燃焼室の仕様などにより適宜設定できる。特に、燃焼を適切に管理するには、燃焼室での滞留時間などが影響する部分が大きいと考えられるため、燃焼室の容量に基づいて流量の目安を設定することができる。
【0032】
[燃焼装置]
燃焼装置は、供給部から供給された気体を燃焼する炉である燃焼室を有する。燃焼室は、熱分解ガスの燃焼のための反応時間に適した滞留時間とすることができる容積であり、室内でガスが均一に流動し、漏出せず循環するような任意の形状とすることができる。燃焼室は、樹脂含有複合材の処理装置で生じた熱分解ガスを速やかに処理できるように、焼成炉の周囲に配置されることが好ましい。このため、装置のレイアウトを行いやすいように、略方形の炉内に、配管などを接続したものとすることができる。
【0033】
燃焼室は、熱分解ガスを含む混合気体を供給するための供給部の配管と接続されている。燃焼室内は、約800~1400℃程度の燃焼温度が想定される。燃焼室には、供給するための配管の他にも、LPGガスなどの燃料を供給する配管の接続や、着火源などを設けることもできる。
【0034】
LPGバーナー(着火源含む)で予め燃焼室を高温(約1000℃)に加熱しておき、そこに熱分解ガスと空気を供給すれば、熱分解ガスの燃焼が開始する。熱分解ガスの燃焼開始後はLPGバーナーを絞っても、熱分解ガスの燃焼熱で燃焼室の高温が維持される。
【0035】
燃焼室で、熱分解ガスや空気を含む混合気体の熱分解ガスを燃焼させて処理気体とする。燃焼された処理気体は、出口から排出される。この処理気体は、高温で、熱分解ガスの成分や燃焼条件によっては、フッ素、未燃ガス、NOxなどを含むことがあり、これらのガスは腐食性が高い腐食性ガスとなる場合もある。
【0036】
[腐食性ガス]
腐食性ガスとして、炭化水素、NOやNO2等の窒素酸化物、フッ素や塩素等のハロゲンガス、HFやHCl等のハロゲン化ガス、SO2等の硫黄酸化物、NH3、H2Sなどが挙げられる。
【0037】
[第一の焼成炉13、第二の焼成炉15]
第一の焼成炉13と第二の焼成炉15(これらを合わせて、単に「焼成炉」と記載する場合がある。)は、樹脂含有複合材3を加熱して熱分解する焼成炉である。第一の焼成炉13と第二の焼成炉15は、樹脂含有複合材3の種類に合わせて適宜処理温度などが設定されるが、例えば、約500℃で加熱して焼成する。加熱構造は、これらの焼成炉(13、15)を、焼成するための温度に加熱するための構造である。
【0038】
図3は、本発明の焼成炉の概要を説明するための焼成炉の入り口側から見た概要図である。焼成炉は、マッフルと外壁を有する。樹脂含有複合材が、マッフル内を通り、熱処理される。焼成炉の温度に応じて出力制御を行い、焼成炉の温度を調節する電気ヒーターを有する。外壁は、これらのマッフルや、ヒーター、間接式熱交換器などを覆うもので、外壁内の熱変動を抑えて熱処理温度に保温するためのものである。電気ヒーターは、焼成炉、特に樹脂含有複合材が通過するマッフル内の温度に応じて出力制御され、焼成炉の温度を調節する。
【0039】
[間接式熱交換器812、822]
間接式熱交換器812、822は、壁によって分けられた空間に温度の異なる2種類の流体を流し、高温流体より壁面への熱伝達、壁を通しての熱伝導、および壁面より低温流体への熱伝達によって、二流体間の伝熱を行わせる形式の熱交換器である。このため、燃焼装置4から排出される排出ガスは、直接焼成炉内に入ることなく、熱交換による加熱に用いられる。この燃焼装置4から排出されるガスは、フッ素や未燃ガスやNOxなどを含み腐食性を有する可能性があるが、間接式熱交換器812、822の内部を通過するものとなる。間接式熱交換器812、822は、多管式熱交換器、蛇管式熱交換器、加熱壁からなる群から選択されるいずれかである。マッフルと外壁の間に間接式熱交換器が配置される。
【0040】
従来は、焼成炉の搬送ラインが設けられて焼成対象の樹脂含有複合材が搬送されるマッフルと、その周囲の外壁との間の空洞部に、燃焼装置からの排出ガスを通過させていた。排出ガスは、燃焼装置でも燃焼を経ているため、通常、十分に処理されたガスと考えられていた。しかし、本発明者らが、再検証した結果、樹脂含有複合材の種類や、燃焼装置内の気流、温度などの条件によっては想定外のフッ素や未燃ガスやNOxなどの腐食性ガスが残っている場合があることがわかった。従来のまま、空洞部にこれらの腐食性ガスを直接供給すると、マッフルや外壁の壁面が腐食して、焼成炉全体の取り換えや清掃などの必要が生じて、メンテナンスが難しいものとなっていた。
【0041】
本発明によれば、間接式熱交換器812、822は、間接式熱交換器812、822が腐食されても、これらを選択的に取り換えることができ、焼成炉本体(マッフルの外側と外壁の内側)は腐食されることがないため、メンテナンスが容易な焼成炉となる。
【0042】
[除害塔91]
除害塔91は、間接式熱交換器等のガス流路の下流に設けられ、処理装置100内の各領域での処理に伴い発生し、配管71、72、73を通って排気された気体を、外部に排出する前に、気体中に含まれる有害物質を除去するものである。
【0043】
このように本発明は、サーマルリサイクル時に装置が腐食されにくく、メンテナンスが容易な焼成炉の提供するものである。また、熱分解処理する樹脂の種類によっては、熱分解によって腐食性のガスが発生してサーマルリサイクル時にガス流路が腐食し、装置のメンテナンスに手間がかかる問題があったが、本発明はこのような問題を解決することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、太陽光電池パネルなどの樹脂含有複合材の処理に利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0045】
100 処理装置
11 入口室
12 入口シール室
13 第一の焼成炉
14 切替部
15 第二の焼成炉
16 空冷室
17 冷却室
18 出口シール室
19 出口室
21 搬送ライン
3 樹脂含有複合材
4 燃焼装置
51 排気配管
61 熱分解ガス配管
62 空気配管
63 LPG配管
631 LPGタンク
71、72、73 排気ライン
811、813、821、823 再加熱ライン
812、822 間接式熱交換器
91 除害塔
92 排気ライン