(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147365
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】輻輳訓練具
(51)【国際特許分類】
A61H 5/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A61H5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060330
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】390010526
【氏名又は名称】コミー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】河端 伸裕
(72)【発明者】
【氏名】植木 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】千葉 麻央
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA31
4C046BB12
4C046DD43
4C046EE23
(57)【要約】
【課題】取扱が簡単、かつ、従来のものよりも長い距離を訓練可能な輻輳訓練具を提供する。
【解決手段】長手方向の両端部が開放された箱形状又は筒形状のスリーブ(14)と、スリーブ(14)の内部を長手方向に沿ってスライド可能な箱形状又は筒形状の基部(12)とを具備する輻輳訓練具(10)であって、スリーブ(14)及び基部(12)の上面には、中心線(20)が長手方向に沿って連続的に形成され、かつ、スリーブ(14)及び基部(12)の中心線(20)上には固視目標(22a-22g)が形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両端部が開放された箱形状又は筒形状のスリーブ(14)と、
前記スリーブ(14)の内部を長手方向に沿ってスライド可能な箱形状又は筒形状の基部(12)と、
を具備する輻輳訓練具(10)であって、
前記スリーブ(14)及び前記基部(12)の上面には、中心線(20)が長手方向に沿って連続的に形成され、かつ、
前記スリーブ(14)及び前記基部(12)の前記中心線(20)上には固視目標(22a-22g)が形成されていることを特徴とする輻輳訓練具。
【請求項2】
前記スリーブ(14)は、前記スリーブ(14)の内部をスライドする前記基部(12)の脱落を防止するためのストッパ部(24)を有する請求項1に記載の輻輳訓練具。
【請求項3】
前記中心線(20)は、異なる形状及び/又は色彩が連続的に隣り合うことによって直線状に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の輻輳訓練具。
【請求項4】
スライドする前記基部(12)の前記スリーブ(14)に対する遠位側の端部には、前記中心線(20)に直行する方向に沿って溝部(16)が形成されており、前記溝部(16)には、平板状のミラー(30)を嵌め込み可能であることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の輻輳訓練具。
【請求項5】
鏡面(32)を前記スリーブ(14)の側へ向けるように前記溝部(16)に配置した前記ミラー(30)は、側面視で前記スリーブ(14)及び前記基部(12)の上面との間に直角又は鋭角を形成することを特徴する請求項4に記載の輻輳訓練具。
【請求項6】
前記スリーブ(14)及び前記基部(12)は、展開図から組み立てる組箱形状であることを特徴とする請求項1に記載の輻輳訓練具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻輳訓練用の訓練具に関する。
【背景技術】
【0002】
外見上は片方の目が正しい方向を向いているのに、他方の目が内側や外側、上下に向いてしまっている症状を持つ人がいる。このような症状を「斜視」といい、両目で正しく見ること、すなわち両眼視ができない状態となり、立体的に見ることができにくかったり、片側の視力が弱くなってしまったりする。これらのうち、目が外側に向く外斜視については訓練することによって改善できる場合がある。具体的には、両目で近いところ、遠いところを繰り返し見ることによって、自然と「寄り目」の訓練をすることができ、「寄り目」の状態が正しい状態なのだと脳に記憶させることができる。これを輻輳訓練といい、子どもの時に行うことが好ましいとされている。
【0003】
輻輳訓練のための訓練具はいくつか実用に供されており、例えば、三点カードやブロックストリングスといったものが挙げられる。これらのうち三点カードは短冊状に切った厚紙に中心線を引き、中心線上に数点の印、すなわち、固視目標を設置する。これを鼻に当て、カードと顔が直角になるように持ち、顔はまっすぐ前方を見つめる。中心線上の固視目標に遠いほうから順に両目でピントを合わせる。両目を使っていると中心線が2本交差している状態に見えるが、片目しか使えていない人には中心線が1本しか見えない。このため、距離の異なる固視目標を順番に見ることで異なった距離にピントを合わせる訓練になる。また、ブロックストリングスは、三点カードと同様の原理に基づいており、ヒモにビーズ等を括り付け、ヒモを中心線、ビーズを固視目標として使用する。
【0004】
しかしながら、三点カードやブロックストリングスは訓練時の形状を維持できるほどの剛性を有していないため、使用するためにはしっかりと支えて、ピンと張った状態を維持しなくてはならない。このようにピンと張った状態を維持することができる三点カードやブロックストリングスの長さは、ユーザの腕で張ることができる長さが最大長さとなる。このため、これ以上の長さで訓練を行うためには、固定するための補助具等が別途必要となる。そこで、例えば、棒状のものを添えて使用することも考えられるが、使用者の目の先に棒状のものがあることへの恐怖感や万が一転倒した場合のリスク等を考慮して、現実に使用することは容易ではない。
【0005】
一般的に、遠くのものを両目で見ることより近くのものを両目で見ることのほうが難しい。そこで、輻輳訓練においては、「寄り目」の状態を維持することが苦手な人はなるべく遠くのものから訓練をすることが望ましいが、上記の方法ではユーザの腕で張ることができる長さが最大長さとなる。このため、子どもが使用する場合は、その腕の長さに合わせて概ね300mm程度の長さのものが通常使用されているが、もっと長い距離で簡単に訓練出来る訓練具が医療現場では望まれている。また、このような輻輳訓練は、ビジョントレーニングの一部であり、眼球を動かす筋肉、眼筋を鍛えることによって、両目を使って目標物を正確に捉えることや目からの情報を脳で処理して体を動かすことといった運動機能を向上する効果がある。このようなことから、アスリート、スポーツ選手のパフォーマンス向上、発達期の子供の視覚機能の向上、発達障害の子どもの学力・運動能力の向上、ディスクレシア(識字障碍)の治療、中高齢者の運動機能の維持回復などに有効であるとして、欧米諸国では80年以上も前から歴史があり日本でも導入が広がりつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、取扱が簡単、かつ、従来のものよりも長い距離を訓練可能な輻輳訓練具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の輻輳訓練具は、長手方向の両端部が開放された箱形状又は筒形状のスリーブ(14)と、スリーブ(14)の内部を長手方向に沿ってスライド可能な箱形状又は筒形状の基部(12)と、を具備する輻輳訓練具(10)であって、スリーブ(14)及び基部(12)の上面には、中心線(20)が長手方向に沿って連続的に形成され、かつ、スリーブ(14)及び基部(12)の中心線(20)上には固視目標(22a-22g)が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明は、さらに下記の態様を包含する。
{1}前記スリーブ(14)は、前記スリーブ(14)の内部をスライドする前記基部(12)の脱落を防止するためのストッパ部(24)を有すること。
{2}前記中心線(20)は、異なる形状及び/又は色彩が連続的に隣り合うことによって直線状に形成されていること。
{3}スライドする前記基部(12)の前記スリーブ(14)に対する遠位側の端部には、前記中心線(20)に直行する方向に沿って溝部(16)が形成されており、前記溝部(16)には、平板状のミラー(30)を嵌め込み可能であること。
{4}鏡面(32)を前記スリーブ(14)の側へ向けるように前記溝部(16)に配置した前記ミラー(30)は、側面視で前記スリーブ(14)及び前記基部(12)の上面との間に直角又は鋭角を形成すること。
{5}前記スリーブ(14)及び前記基部(12)は、展開図から組み立てる組箱形状であること。
【発明の効果】
【0009】
本発明の輻輳訓練具によれば、取扱が簡単、かつ、従来のものよりも長い距離を訓練可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態からなる輻輳訓練具の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の輻輳訓練具を長手方向に沿って切断した縦断面図である。
【
図3】
図3は、ミラーを取り付けた
図1の輻輳訓練具の斜視図である。
【
図4】
図4は、輻輳訓練具の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の態様に限定されず、特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱しない任意の改変が本発明に包含される。また、図面において同一の符号が付された要素は、同様の構成又は機能を有することを意図する。
【0012】
本発明の輻輳訓練具10は、
図1に示すように、長手方向の前後端が開放した箱形状のスリーブ14と、スリーブ14の内部をその長手方向に沿ってスライドできるようにスリーブ14よりも小さい外形寸法を有する箱形状の基部12とを具備する。このため、輻輳訓練具10は、使用時及び非使用時に応じてスライド方向SDに沿って伸縮することができる伸縮機構を有する。なお、ここでは、伸縮機構は、1つのスリーブ14及び基部12を具備する2段階の伸縮機構として説明するが、これに限らず、複数のスリーブ及び基部を具備した多段階の伸縮機構が構成されてもよい。
【0013】
図1は、基部12をスリーブ14に対して最も伸長した状態、すなわちスリーブ14の外側へ最大限スライドさせた状態を示す。輻輳訓練具10を使用しないときは、基部12をスリーブ14の内部へ向けてスライドして、収納することができる。基部12をスリーブ14の内部へ収納した状態の輻輳訓練具10がコンパクトになるように、基部12及びスリーブ14は、同じ長手方向寸法を有する。これによって、収納時にはコンパクトで持ち運びやすくなり、使用時、すなわち訓練時には十分な長さの訓練距離を確保することができる。
【0014】
輻輳訓練具10の長さ寸法は、100mmから600mm程度の範囲で伸縮することが好適である。特に、伸長する前は100mmから300mm、伸長した後は350mm以上となることが好ましい。伸長する前の長さ寸法を300mm以下にすることで持ち運びや収納の利便性が向上する。また、伸長した後の長さ寸法を350mm以上とすることで、ユーザ、とりわけ、子どもの腕で訓練具を保持できる長さ以上の訓練距離を確保することができ、効果的な訓練を行うことができる。
【0015】
ここでは、輻輳訓練具10は、紙に表示した展開図から組み立てる組箱である。このため、輻輳訓練具10を顔に近づけるユーザは安全に使用することができる。なお、以下の説明では、輻輳訓練具10は、紙から組み立てる組箱として説明するが、これに限らず、紙以外の素材で構成された組箱とされてもよい。また、基部12及びスリーブ14は、箱状に形成されているとして説明するが、これに限らず、筒状に形成されてもよい。
【0016】
基部12は、上面と側面とを有し、底面部分が開放した箱状に形成されている。また、基部12を伸長したときにスリーブ14に対して遠位側となる端部の上面には、幅方向、すなわち、長手方向と直行する方向に沿って溝部16が形成されている。溝部16の幅方向中央部には、半円形状の折返し部17が形成されており、基部12の内側、ここでは、下方側へ折返すことができる。
【0017】
スリーブ14のユーザの目E(
図4参照)に近づける側、すなわち、基部12が伸長する側と反対側の端部には、上面及び底面に切欠き部18が形成されている。切欠き部18は、ユーザが輻輳訓練具10を使用するために顔を近づけたときに当接する鼻の形状に合うように平面視で三角形状に形成されている。このため、切欠き部18は、底面側が上面側よりも平面視で大きく形成されている。
【0018】
図2に示すように、スリーブ14の基部12が伸長する側の端部には、底面を部分的に折り返したストッパ部24が形成されている。ストッパ部24は、基部12のスリーブ14に対して近位側となる端部の側面と当接し、基部12がこれ以上スライドすることを抑制するため、基部12の脱落を防止することができる。また、基部12を伸長したときに、スリーブ14と基部12との間にはオーバラップ部分が形成されるため、伸長したときの輻輳訓練具10の形状を安定させることができる。ここでは、
図1に示すように、基部12が完全に伸長したときのオーバラップ部分の長さ寸法は、10mmから30mmとすることが好適である。
【0019】
図1に示すように、スリーブ14及び基部12の上面の中央部には、中心線20が長手方向に沿って連続的に形成されている。中心線20は、異なる形状及び/又は色彩が連続的に隣り合うことによって直線状に形成されており、スリーブ14の切欠き部18側の端部から基部12の遠位側の端部まで連続的に延在する。ここでは、一例として、中心線20は、線路の地図記号を模擬して同じ長さの白と黒の長方形を繰り返し配置した直線状に形成されている。また、スリーブ14及び基部12の中心線20上には円形状の固視目標22a、22b、22c、22d、22e、22f、22gが形成されている。これによって、三点カードと同様の作用効果を奏する中心線20と固視目標22a-22gとが形成されている。さらに、本実施形態のような中心線20によれば、明暗の異なる色を連続させて直線状に形成することによって中心線20を目立たせることができ、ユーザが強く意識しなくても中心線20に目線を集中させることができる。なお、ここでは、中心線20は、白と黒の長方形を繰り返し配置した直線状に形成されているとして説明するが、これに限らず、例えば、異なる形状が等間隔で連続的に隣り合うことによって直線状に形成されてもよい。
【0020】
ここでは、固視目標22a-22gは、シール又は印刷によって中心線20上に形成されている。また、固視目標22a-22gは、それぞれ異なる色で形成されることが好適である。例えば、各固視目標22a-22gは、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫といった虹の色に合わせた配色とされてもよい。なお、固視目標は、シール又は印刷といった平面的なものに限らず、立体的に形成されてもよい。
【0021】
図3に示すように、折返し部17を折り返し、溝部16に平板上のミラー30が嵌め込まれてもよい。鏡面32をスリーブ14の側へ向けるように溝部16に配置したミラー30は、側面視でスリーブ14及び基部12の上面との間に直角又はこれよりも小さい角度を形成する。ここでは、
図3に示すように、嵌め込んだミラー30が、スリーブ14及び基部12の上面の法線方向、ここでは鉛直方向に沿った軸線に対してスリーブ14側へ0度から5度傾斜するように、溝部16が形成されている。これによって、直接目視確認できる中心線20とミラー30の中の虚像として確認できる中心線20とが連続する状態を好適に維持することができ、長い距離の輻輳訓練を自然に行うことができる。
【0022】
続いて、本実施形態に係る輻輳訓練具10の作用効果について説明する。
【0023】
図4には、輻輳訓練具10を先端側、すなわち、基部12側から見た使用状態の図を示す。本実施形態に係る輻輳訓練具10は、組箱形状のため、三点カードのような従来の訓練具と比較して形状を維持するための剛性が高くなる。このため、ユーザは、輻輳訓練具10を片手で保持して目Eの前に持ってくるだけでよく、基部12の遠位側を支えることなく真っすぐな外形を維持することができる。このため、三点カードのような従来の訓練具よりも長い距離での輻輳訓練が簡単に行える
【0024】
本実施形態に係る輻輳訓練具10は、伸縮機構を有する組箱形状であることから、三点カードのような平板状の訓練具よりも小さいサイズでコンパクトに収納することができ、持ち運びも簡単となる。
【0025】
本実施形態に係る輻輳訓練具10によれば、紙でできた組箱形状のため安全性が高いことに加えて、従来の訓練具を安全に保持するのが困難な小さい子どもであっても補助者が手助けすることによって使用することができ、輻輳訓練の対象となる年齢が広がる。また、紙に表示された展開図を箱形状に組み上げて輻輳訓練具10を構成するため、作る楽しみが生じる。
【0026】
本実施形態に係る輻輳訓練具10は、さらにミラー30を装着する、ここでは、嵌め込むことができる。ユーザは、
図4に示すように、目Eの黒目が真ん中に寄った寄り目の状態でミラー30を見て、訓練距離を倍にすることができる。また、ミラー30を好適な角度で嵌め込むことによって、目視確認できる中心線20とミラー30の中の虚像として確認できる中心線20とがつながった状態を維持することができ、長い距離の輻輳訓練を自然に行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
10 輻輳訓練具
12 基部
14 スリーブ
16 溝部
20 中心線
22a 固視目標
22b 固視目標
22c 固視目標
22d 固視目標
22e 固視目標
22f 固視目標
22g 固視目標
24 ストッパ部
30 ミラー
32 鏡面