(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147368
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】圧縮空気圧水圧変換装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/06 20060101AFI20241008BHJP
F03B 17/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F03B13/06
F03B17/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060334
(22)【出願日】2023-04-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】591045839
【氏名又は名称】加賀谷 達
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 達
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA12
3H074BB09
3H074CC11
3H074CC34
(57)【要約】
【課題】
圧縮空気圧を水圧に変換する発電装置例はあるが、空気圧を直接水に印加し、利用後には大気圧に解放される形態である。この場合圧力容器内で水に空気圧を直接印加すると圧縮空気内の気体が水に溶け込むのは周知のことである。
【解決手段】
水車で発泡現象が起こると水車に重大な損傷を起こすことはよく知られた事実である。いわゆるキャビテーション現象であるから騒音・振動・水車の壊食等が装置に致命的なダメージを与える。これを解決する手段としてフリーピストン方式により圧縮空気圧を水に直接与えない方法で効果を得ることが出来る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車に並列に接続された少なくとも一対の圧縮空気圧水圧変換槽を備える圧縮空気圧水圧変換装置であって、
前記圧縮空気圧水圧変換槽は、
フリーピストンを内蔵したシリンダーと、
前記シリンダーの一端を封止する一方の耐圧蓋と、
前記シリンダーの他方を封止する他方の耐圧蓋と、
前記一方の耐圧蓋に接続される圧縮空気圧供給電動弁及び排気電動弁と、
前記他方の耐圧蓋に接続される圧力水供給電動弁及び圧力水返送電動弁と、を備え
ることを特徴とする圧縮空気圧水圧変換装置。
【請求項2】
前記圧縮空気圧水圧変換槽は、2対4槽を並列接続して連続運転可能であることを特徴とする請求項1記載の圧縮空気圧水圧変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧縮空気圧を水圧に変換すると効率的にエネルギー変換できることがペットボトルロケットからヒントを得た。
【0002】
圧縮空気貯蔵発電(CAES)が各国で既に運転中との報告がある。現在カナダ・日本・ドイツ・アメリカ等で新方式を開発中である。
本発明は、圧縮空気を貯蔵エネルギーとして利用する一形態である。圧縮空気と水を接触させずフリーピストンを介在させ間接的に圧力を伝達する圧縮空気圧水圧変換装置を用いて水力発電を効率的に運転する方法を提示するものである。
【背景技術】
【0003】
電気エネルギーの発生と消費は同期しなければならないので、日変動・季節変動に対応するため最大消費電力の設備を電力会社は運用しなければならない。このため日変動では夜間余剰電力の利用方法として深夜電力割引制度を実施し暖房・給湯の促進を推奨し実施しているが容量的には満足できる量には達していないのが現状である。
【0004】
近年、再生可能エネルギーである風力発電や太陽光発電の普及はめざましい発展を遂げているが需要と供給のバランスに各電力会社は苦慮している。
このようなことから太陽光発電や風力発電を一時的に停止したり、出力制御を実施し自然エネルギーを有効に利用できない状況となっている。
自然エネルギー発電事業者も独自に蓄電装置を設置し少しでも無駄をなくそうと努力しているが蓄電池が高額なことから容量的に満足な結果が得られていないのが現状である。
【0005】
そこで余剰電力で圧縮空気を製造貯蔵し電力需要期に圧縮空気エネルギーを発電に利用する方式が徐々に普及しつつある。気体をエネルギー源とする場合蒸気タービンのように高温超高圧の場合は高効率で発電できるが圧縮空気エネルギーをそのまま回転エネルギーとして利用した場合効率が非常に悪い。
【0006】
(流体のエネルギー)は(流体の密度)と(重力加速度)と(流量)と(有効落差)の積算であるから空気の密度は1立方メートル約1キログラム、水の密度は1立方メートル約1000キログラムである。空気圧を水圧に変換すると千倍のエネルギーを得ることから圧縮空気圧を水圧に変換する意味がある。
【0007】
貯蔵圧縮空気エネルギーを効率的に電気エネルギーに変換できれば、必要なときに必要な容量の発電ができ発電・送電・消費の形態に革新的な進展が見込める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
圧縮空気を直接水面に接触させ水を加圧すると空気成分の一部が水に溶け込み水車を水が通過する際にキャビテーションの発生が起こる。水力発電の水車におけるキャビテーションの発生は装置に重大な問題を起こすことが良く知られている。流体機械の性能劣化・部品破損・機器表面の壊食・振動や騒音等がある。
これらの問題を解決するには、水に直接圧縮空気圧をかけないことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
しかし、同一空気圧中で圧縮空気圧を直接水面に接し水に空気圧をかけると気体の分子量が圧力に比例した分、水に溶け込む(ヘンリーの法則)。水に溶解した酸素や二酸化炭素は時間の経過とともに機器を壊食する。更に圧縮空気圧で加圧され溶解した気体を取り込んだまま水車を通過し大気圧に減圧された場合、水車でキャビテーションの発生が起こる。
【0012】
ダム式発電所においてはダム水面に大気圧が掛かり、水車放水路にもその位置の大気圧がかかる。例えばダム水面と水車放水路の水面落差が100mとすると放流水面には100mの大気圧差がプラスに掛かるので自然にキャビテーションの発生防止になる。
【0013】
キャビテーション防止のため、圧縮空気と水を直接触れずに圧力伝達する方法が本発明の最大の特徴であると同時に水車を駆動する水を完全に外気と遮断することにより次の利点が発生する。
水車を駆動する水を外気から完全に遮断することにより、寒冷地でも運転可能な不凍液等を使用できる。不凍液とは、商品名でロングライフクーラントを意味し、凍結防止だけで無く装置の防蝕にも役立つことは明白である。
【0014】
圧縮空気圧を水に直接接触させず、且つスムーズに圧力伝達する方法の1つ提案する。
比較的長い円筒を横に置きその中に両面対象のピストンを設けピストン両端にかかる圧力差により円筒内を自由に移動できるピストンを設けフリーピストンと名付け、円筒をシリンダーと名付ける。
【発明の効果】
【0015】
圧縮空気の移送は比較的簡単で且つ長距離輸送が容易であるから、本発明の発電装置は電気需要家の近くに設置でき、使用後の圧縮空気は大気に放出しても環境に影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1はフリーピストン式発電装置2槽1対の全体図です。
【
図2】
図2はフリーピストン式発電装置4槽2対の全体図です。
【発明を実施するための形態】
【0017】
シリンダーの両端は耐圧蓋で閉じられ、左側から圧縮空気を給排気する配管が接続されシリンダーの右側耐圧蓋には水の出入りする送水返送配管が接続される。
【0018】
(第1図実施形態)
図1は61:圧縮空気圧水圧変換槽Aと62:圧縮空気圧水圧変換槽Bを示し、その構造及び機構を簡単に説明する。
シリンダーの中には圧力差で左右に自由に移動でき、かつ封水のできる構造の51:フリーピストンAと52:フリーピストンBを設け左側から圧縮空気を供給し右側の水に圧力伝達をする。
【0019】
01:圧縮空気エネルギー供給施設へ接続から02:圧縮空気送気管に送気され03:圧縮空気送気管Aに分岐、31:圧縮空気供給電動弁Aで圧縮空気の供給および停止の制御を行う。31:圧縮空気供給電動弁A全開でシリンダー内に圧縮空気を供給する場合は11:圧縮空気排気電動弁Aは全閉とする。この時、圧縮空気圧は51:フリーピストンAの左側、07:圧縮空気領域に満たされる。ここで51:フリーピストンAの右側、08:受圧水領域に圧力伝達が行われる。
71:送水返送兼用管Aを経由し75:圧力水供給電動弁Aから流量調節電動弁:91を通り加圧された08:受圧水領域の水は93:水車へ圧送される。
【0020】
次に加圧された水の受け側を説明する。
93:水車を回転させ82:圧力水返送電動弁Bを通して62:圧縮空気圧水圧変換槽Bに72:送水返送兼用管Bから返送される。この時当然、76:圧力水供給電動弁B・81:圧力水返送電動弁A・32:圧縮空気供給電動弁Bの3電動弁は全閉でかつ12:圧縮空気排気電動弁Bは全開でなければならない。この条件で圧力平衡になるまで51:フリーピストンAが右側に移動し71:送水返送兼用管Aから加圧された水が送水される。同時に52:フリーピストンBは左に移動し圧力水をシリンダーB:62の08:受水領域に受け入れる。この時当然62:圧縮空気圧水圧変換槽Bの07:圧縮空気領域は大気圧である。
【0021】
51:フリーピストンAを41:フリーピストン位置検出器Aが右いっぱいと検出した時、全ての電動弁を全閉とし次に11:圧縮空気排気電動弁Aを全開とし61:圧縮空気圧水圧変換槽Aの07:圧縮空気領域を大気開放する。
【0022】
次に62:圧縮空気圧水圧変換槽Bの加圧工程に入る。
04:圧縮空気送気管Bを通し32:圧縮空気供給電動弁Bで供給停止の制御を行う。32:圧縮空気供給電動弁B全開でシリンダー内に圧縮空気を供給する場合は12:圧縮空気排気電動弁Bは全閉とする。この時、圧縮空気圧は52:フリーピストンBの左側、07:圧縮空気領域に満たされる。ここで52:フリーピストンBの右側、08:受圧水領域に圧力伝達が行われる。62:圧縮空気圧水圧変換槽Bから圧力水を供給する条件として、31:圧縮空気供給電動弁A・75:圧力水供給電動弁A・82:圧力水返送電動弁B・12:圧縮空気排気電動弁B何れも全閉で32:圧縮空気供給電動弁B・11:圧縮空気排気電動弁A・76:圧力水供給電動弁B何れも全開で流量調節電動弁:91寸開、寸開の意味は出力電力の制御の為にコントロールする。
【0023】
52:フリーピストンBを42:フリーピストン位置検出器B右いっぱいと検出した時全ての電動弁を全閉とし、次に12:圧縮空気排気電動弁Bを全開とし62:圧縮空気圧水圧変換槽Bの07:圧縮空気領域を大気開放する。次に61:圧縮空気圧水圧変換槽Aの加圧行程に戻り、これを繰り返し93:水車を圧力水で回転させ94:発電機を駆動し発電する。
【0024】
(第2図実施形態)
上記2槽1対運転では切り替え時に発電機の運転停止が避けられないことから、連続運転するために圧縮空気圧水圧変換槽を4槽2対設けることで運転停止なく連続発電が可能となる。
装置が大型になると水の往復循環の切り替え時間がより長くなるので水流切り替え時の発電機停止期間が長くなり実用的ではないので水車を連続運転するためには最低ABCDの4槽2対の圧縮空気圧水圧変換槽が必要となる。水車を通過する圧力水の水量が多くなると起動停止に時間がかかりすぎるので、あらかじめ92:バイパス流量調節電動弁を通過する圧力水を安定させてから切り替えると連続運転が可能となる。
図2のように4槽2対の圧縮空気圧水圧変換槽があれば水車を連続運転可能な装置として構築できる。
【0025】
太陽光・風力・地熱等の自然エネルギーで圧縮空気を製造し、圧力容器に貯蔵すれば、本発明の貯蔵圧縮空気圧を水圧に変換し水力発電で発電すると化石燃料を使用することなく、電気エネルギーを必要なとき必要なだけ発電できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
電気エネルギーは貯蔵が難しく発電量と消費量が一致しなければならない。本発明装置を利用すれば化学的な電気エネルギーの貯蔵、いわゆる電池や力学的な電気エネルギーの貯蔵や揚水発電・はずみ車でのエネルギーの貯蔵より容易に効率的に発電できる。
【0027】
本発明を利用すれば小規模な自家用発電装置から、送電網に連系し日変動補完用に利用できることや大規模な発電装置まで利用可能であるばかりで無く自然エネルギーで圧縮空気を製造し圧縮空気移送ラインを広範囲に設置し各所に圧縮空気貯蔵所を設ければ災害時の全停電防止に貢献できる。
【0028】
また、圧縮空気を移送パイプで長距離輸送すれば、既存の送電網から外れた地域に電気エネルギーを供給できる。 移動可能な空気タンクに超高圧圧縮空気を貯蔵すれば本発明の発電装置が完全独立の発電装置となり、電力利用の範囲が飛躍的に広がる。
【符号の説明】
【0029】
01 圧縮空気エネルギー供給施設へ接続
02 圧縮空気送気管
03 圧縮空気送気管A
04 圧縮空気送気管B
05 圧縮空気送気管C
06 圧縮空気送気管D
07 圧縮空気領域
08 受圧水領域
11 圧縮空気排気電動弁A
12 圧縮空気排気電動弁B
13 圧縮空気排気電動弁C
14 圧縮空気排気電動弁D
21 圧縮空気圧水圧変換槽A圧縮空気側耐圧蓋
22 圧縮空気圧水圧変換槽A圧力水側耐圧蓋
23 圧縮空気圧水圧変換槽B圧縮空気側耐圧蓋
24 圧縮空気圧水圧変換槽B圧力水側耐圧蓋
25 圧縮空気圧水圧変換槽C圧縮空気側耐圧蓋
26 圧縮空気圧水圧変換槽C圧力水側耐圧蓋
27 圧縮空気圧水圧変換槽D圧縮空気側耐圧蓋
28 圧縮空気圧水圧変換槽D圧力水側耐圧蓋
31 圧縮空気供給電動弁A
32 圧縮空気供給電動弁B
33 圧縮空気供給電動弁C
34 圧縮空気供給電動弁D
41 フリーピストン位置検出器A
42 フリーピストン位置検出器B
43 フリーピストン位置検出器C
44 フリーピストン位置検出器D
51 フリーピストンA
52 フリーピストンB
53 フリーピストンC
54 フリーピストンD
61 圧縮空気圧水圧変換槽A
62 圧縮空気圧水圧変換槽B
63 圧縮空気圧水圧変換槽C
64 圧縮空気圧水圧変換槽D
71 送水返送兼用管A
72 送水返送兼用管B
73 送水返送兼用管C
74 送水返送兼用管D
75 圧力水供給電動弁A
76 圧力水供給電動弁B
77 圧力水供給電動弁C
78 圧力水供給電動弁D
81 圧力水返送電動弁A
82 圧力水返送電動弁B
83 圧力水返送電動弁C
84 圧力水返送電動弁D
91 流量調節電動弁
92 バイパス流量調節電動弁
93 水車
94 発電機
95 送電設備に接続
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車に並列に接続された少なくとも一対の圧縮空気圧水圧変換槽を備える圧縮空気圧水圧変換装置であって、
前記圧縮空気圧水圧変換槽は、
フリーピストンを内蔵したシリンダーと、
前記シリンダーの一端を封止する一方の耐圧蓋と、
前記シリンダーの他方を封止する他方の耐圧蓋と、
前記一方の耐圧蓋に接続される圧縮空気圧供給電動弁及び排気電動弁と、
前記他方の耐圧蓋に接続される圧力水供給電動弁及び圧力水返送電動弁とを備え、
前記フリーピストンは、前記一方の耐圧蓋側に位置する圧縮空気領域と、前記他方の耐圧蓋側に位置する受圧水領域とを備え、前記圧縮空気領域の受圧面積と、前記受圧水領域の受圧面積とが等しく、前記圧縮空気領域と前記受圧水領域とが常に等圧になるように移動することを特徴とする圧縮空気圧水圧変換装置。