IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-画像形成装置 図1
  • 特開-画像形成装置 図2
  • 特開-画像形成装置 図3
  • 特開-画像形成装置 図4
  • 特開-画像形成装置 図5
  • 特開-画像形成装置 図6
  • 特開-画像形成装置 図7
  • 特開-画像形成装置 図8
  • 特開-画像形成装置 図9
  • 特開-画像形成装置 図10
  • 特開-画像形成装置 図11
  • 特開-画像形成装置 図12
  • 特開-画像形成装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147374
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G03G21/00 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060340
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 千晴
(72)【発明者】
【氏名】小森 彩香
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270KA58
2H270LA28
2H270LA29
2H270LA32
2H270LA79
2H270LA80
2H270LA93
2H270LA94
2H270LA99
2H270LC02
2H270MF13
2H270PA15
2H270RA11
2H270RA13
2H270RC05
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】ドラムカートリッジの寿命の予測精度を向上させた画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、感光体ドラムを有するドラムカートリッジと、転写ベルトと、コントローラと、を備えている。コントローラは、感光体ドラムの累積回転数、又は累積印刷枚数の少なくとも一方を示すドラム情報、及びベルトフィルミングが発生した可能性を示すベルトフィルミング情報に基づいて、感光体ドラムの寿命判定を行う。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムを有するドラムカートリッジと、
前記感光体ドラムと接触する転写ベルトと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記感光体ドラムの累積回転数、又は前記感光体ドラムを使用して印刷した累積印刷枚数の少なくとも一方を示すドラム情報、及び前記転写ベルトにベルトフィルミングが発生した可能性を示すベルトフィルミング情報に基づいて、前記感光体ドラムの寿命判定を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ドラムカートリッジは、前記ドラム情報を記憶するドラムメモリを有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記寿命判定にて、前記感光体ドラムの累積回転数が所定値以下であり、且つ、前記ベルトフィルミング情報に前記ベルトフィルミングの発生を示すフィルミング発生履歴が含まれているときには、前記感光体ドラムの回転数が通常時よりも大きくなるように変更した回転数を、前記感光体ドラムの累積回転数に加算した回転数を前記ドラムメモリに記憶することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記寿命判定にて、前記感光体ドラムの累積回転数が所定値以下であり、且つ、前記ベルトフィルミング情報に前記ベルトフィルミングの発生を示すフィルミング発生履歴が含まれているときには、前記感光体ドラムの回転数に1よりも大きい係数を乗じて算出される回転数を、前記感光体ドラムの累積回転数に加算した回転数を前記ドラムメモリに記憶することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
転写ユニットであって、
前記転写ベルトと、
前記ベルトフィルミング情報を記憶するベルトメモリと、
を有する転写ユニットを更に備え、
前記コントローラは、
前記ベルトメモリから前記ベルトフィルミング情報を取得することを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
印刷枚数をカウントする枚数カウント処理と、
前記ベルトフィルミングの発生を加速させる加速条件を、前記枚数カウント処理にてカウントした印刷枚数毎に取得する条件取得処理と、
前記枚数カウント処理にてカウントした前記印刷枚数と、前記条件取得処理にて取得した前記加速条件とに基づいて、前記転写ベルトに発生する前記ベルトフィルミングの発生を評価する評価値を算出する算出処理と、
前記算出処理にて算出した前記評価値を累積加算する累積加算処理と、
前記累積加算処理にて累積加算された累積評価値が評価閾値以上であるか否かを判定する評価値判定処理と、
前記評価値判定処理にて前記累積評価値が前記評価閾値以上であるか否かを判定することに基づいて、前記ベルトフィルミングの発生の有無を判定するフィルミング判定処理と、
を実行し、
前記フィルミング判定処理にて前記ベルトフィルミングが発生したと判定した場合、前記フィルミング発生履歴を、前記ベルトメモリに記憶させることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
機外湿度を検出する湿度センサを更に備え、
前記加速条件には、機外湿度が含まれ、
前記コントローラは、
前記算出処理にて、前記湿度センサにより検出される前記機外湿度が所定値を超えている場合、前記機外湿度が前記所定値を超えていな場合よりも前記評価値を大きくすることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記加速条件には、画像形成速度が含まれ、
前記コントローラは、
画像形成時の前記画像形成速度を取得し、
前記算出処理にて、取得した前記画像形成速度が全速よりも遅い場合、全速の画像形成時よりも前記画像形成速度に応じて前記評価値を大きくすることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記加速条件には、シート種類が含まれ、
前記シート種類は、普通紙と、リサイクル紙とが含まれ、
前記コントローラは、
シート種類を取得し、
前記算出処理にて、取得した前記シート種類が前記リサイクル紙である場合、前記シート種類が普通紙である場合よりも前記評価値を大きくすることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラムカートリッジの寿命を管理することが可能な画像形成装置が提案されている。例えば、特許文献1の画像形成装置では、寿命カウント情報として、感光体ドラムの累積回転数及び累積印刷枚数等をドラムメモリに記憶して、当該寿命カウント情報に加えて放電履歴情報を考慮して、ドラムカートリッジの寿命を管理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-56354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、画像形成装置には、感光体ドラムと転写ユニットとを備えたものがある。このような画像形成装置では、紙粉やトナー等によって転写ベルトにフィルミングが発生することがあり、当該フィルミングの原因となる紙粉やトナー等が感光体ドラムに移ることで、感光体ドラムの寿命に影響を与えるおそれがあるという課題があった。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ドラムカートリッジの寿命の予測精度を向上させた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の第1態様の画像形成装置は、感光体ドラムを有するドラムカートリッジと、前記感光体ドラムと接触する転写ベルトと、コントローラと、を備えている。前記コントローラは、前記感光体ドラムの累積回転数、又は前記感光体ドラムを使用して印刷した累積印刷枚数の少なくとも一方を示すドラム情報、及び前記転写ベルトにベルトフィルミングが発生した可能性を示すベルトフィルミング情報に基づいて、前記感光体ドラムの寿命判定を行う。
【0007】
本開示の第2態様の画像形成装置では、上記の第1態様において、前記ドラムカートリッジは、前記ドラム情報を記憶するドラムメモリを有していてもよい。
【0008】
本開示の第3態様の画像形成装置では、上記の第2態様において、前記コントローラは、前記寿命判定にて、前記感光体ドラムの累積回転数が所定値以下であり、且つ、前記ベルトフィルミング情報に前記ベルトフィルミングの発生を示すフィルミング発生履歴が含まれているときには、前記感光体ドラムの回転数が通常時よりも大きくなるように変更した回転数を、前記感光体ドラムの累積回転数に加算した回転数を前記ドラムメモリに記憶してもよい。
【0009】
本開示の第4態様の画像形成装置では、上記の第3態様において、前記コントローラは、前記寿命判定にて、前記感光体ドラムの累積回転数が所定値以下であり、且つ、前記ベルトフィルミング情報に前記ベルトフィルミングの発生を示すフィルミング発生履歴が含まれているときには、前記感光体ドラムの回転数に1よりも大きい係数を乗じて算出される回転数を、前記感光体ドラムの累積回転数に加算した回転数を前記ドラムメモリに記憶してもよい。
【0010】
本開示の第5態様の画像形成装置は、上記の第3態様または第4態様において、転写ユニットであって、前記転写ベルトと、前記ベルトフィルミング情報を記憶するベルトメモリと、を有する転写ユニットを更に備えている。前記コントローラは、前記ベルトメモリから前記ベルトフィルミング情報を取得してもよい。
【0011】
本開示の第6態様の画像形成装置では、上記の第5態様において、前記コントローラは、印刷枚数をカウントする枚数カウント処理と、前記ベルトフィルミングの発生を加速させる加速条件を、前記枚数カウント処理にてカウントした印刷枚数毎に取得する条件取得処理と、前記枚数カウント処理にてカウントした前記印刷枚数と、前記条件取得処理にて取得した前記加速条件とに基づいて、前記転写ベルトに発生する前記ベルトフィルミングの発生を評価する評価値を算出する算出処理と、前記算出処理にて算出した前記評価値を累積加算する累積加算処理と、前記累積加算処理にて累積加算された累積評価値が評価閾値以上であるか否かを判定する評価値判定処理と、前記評価値判定処理にて前記累積評価値が前記評価閾値以上であるか否かを判定することに基づいて、前記ベルトフィルミングの発生の有無を判定するフィルミング判定処理と、を実行し、前記フィルミング判定処理にて前記ベルトフィルミングが発生したと判定した場合、前記フィルミング発生履歴を、前記ベルトメモリに記憶させてもよい。
【0012】
本開示の第7態様の画像形成装置は、上記の第6態様において、機外湿度を検出する湿度センサを更に備えている。前記加速条件には、機外湿度が含まれている。前記コントローラは、前記算出処理にて、前記湿度センサにより検出される前記機外湿度が所定値を超えている場合、前記機外湿度が前記所定値を超えていな場合よりも前記評価値を大きくしてもよい。
【0013】
本開示の第8態様の画像形成装置は、上記の第6態様において、前記加速条件には、画像形成速度が含まれている。前記コントローラは、画像形成時の前記画像形成速度を取得し、前記算出処理にて、取得した前記画像形成速度が全速よりも遅い場合、全速の画像形成時よりも前記画像形成速度に応じて前記評価値を大きくしてもよい。
【0014】
本開示の第9態様の画像形成装置では、上記の第6態様において、前記加速条件には、シート種類が含まれている。前記シート種類は、普通紙と、リサイクル紙とが含まれている。前記コントローラは、シート種類を取得し、前記算出処理にて、取得した前記シート種類が前記リサイクル紙である場合、前記シート種類が普通紙である場合よりも前記評価値を大きくしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
第1態様の画像形成装置によれば、コントローラは、ドラムカートリッジの寿命に対する転写ベルトにおけるベルトフィルミングの発生の影響を考慮して、ドラム情報及びベルトフィルミング情報に基づいて、感光体ドラムの寿命判定を行う。これにより、ドラムカートリッジの寿命の予測精度を向上させることができる。
【0016】
第2態様の画像形成装置によれば、ドラムメモリからドラム情報を取得することにより、画像形成装置からドラムカートリッジが取り外された場合であっても、ドラム情報を確実に取得できる。
【0017】
第3態様の画像形成装置によれば、感光体ドラムの累積回転数が所定値以下であって、ベルトフィルミングの影響を受け易いときには、ベルトフィルミングの影響を加味して、感光体ドラムの回転数が通常時よりも大きくなるように変更した回転数を、感光体ドラムの累積回転数に加算する。これにより、ドラムカートリッジの寿命判定を、より正確に行うことができる。
【0018】
第4態様の画像形成装置によれば、感光体ドラムの累積回転数が所定値以下であって、ベルトフィルミングの影響を受け易いときには、感光体ドラムの回転数に1よりも大きい係数を乗じて算出される回転数を、感光体ドラムの累積回転数に加算する。これにより、ドラムカートリッジの寿命判定を、より正確に行うことができる。
【0019】
第5態様の画像形成装置によれば、ベルトメモリからベルトフィルミング情報を取得することにより、画像形成装置から転写ベルトが取り外された場合であっても、転写ベルトのベルトフィルミングの発生に関する情報を確実に取得できる。
【0020】
第6態様の画像形成装置によれば、コントローラは、ベルトフィルミングの加速条件を考慮して、適切なタイミングでベルトフィルミングの発生を検知できる。そして、フィルミング発生履歴をベルトメモリに記憶させおき、ドラム寿命判定に用いることで、ドラムカートリッジの寿命をより正確に予測できる。
【0021】
第7態様の画像形成装置によれば、機外湿度が所定値を超えている場合、シートから発生する紙粉量が増加し、その付着力も高まるためベルトフィルミングが加速する。そこで、機外湿度が所定値を超えている場合、機外湿度が所定値を超えていない場合よりも評価値を大きくすることで、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することができる。
【0022】
第8態様の画像形成装置によれば、画像形成速度が全速よりも遅い場合、クリーニングローラの圧接箇所の機械的回収力が低下して、感光体ドラムに付着した紙粉が残り易くなる。そのため、感光体ドラムと接触する転写ベルトへも紙粉が流出し易くなることから、画像形成速度が全速よりも遅い場合には、全速の画像形成時よりも画像形成速度に応じて評価値を大きくする。これにより、ベルトフィルミングの発生をより正確に評価することができる。
【0023】
第9態様の画像形成装置によれば、紙粉が脱落し易いリサイクル紙を用いると、紙粉の発生量が増加することから、シート種類がリサイクル紙である場合には、シート種類が普通紙である場合よりも評価値を大きくすることで、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】実施形態に係る画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】ドラムメモリに記憶される情報の一例を示す図である。
図4】ベルトメモリに記憶される情報の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る画像形成装置のコントローラによるドラム寿命判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6図5のドラムメモリ内情報ラッチ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態に係る画像形成装置のコントローラによる加速モード適用処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る画像形成装置のコントローラによるベルトフィルミング発生推定処理の一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態に係る画像形成装置のコントローラによる評価値累計処理の一例を示すフローチャートである。
図10】実施形態に係る画像形成装置のコントローラによる定期実施処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】実施形態に係る画像形成装置のコントローラによる帯電印加処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】実施形態に係る画像形成装置のコントローラによるエラー発生時処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13図12の続きのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態における画像形成装置1について、図1図13を参照して説明する。
【0026】
〔画像形成装置の構成〕
図1は、実施形態に係る画像形成装置1の構成の一例を示す概略図である。画像形成装置1は、例えばカラーレーザプリンタであり、図1に示すように、筐体10内に、給送部20と、画像形成部30と、排出部90と、ファン14とを備える。なお、説明の便宜上、図1の矢印に示されるように、画像形成装置1の上下方向、及び前後方向を定義する。
【0027】
筐体10の上部には、カバー11が設けられている。カバー11は、回動軸12を支点として回動可能となっている。カバー11の上面には、排出トレイ13が配置されている。排出トレイ13は、筐体10から排出されたシートPを支持する。
【0028】
筐体10内の前側及び後側には、それぞれファン14が設けられている。ファン14は、ファンモータ110(図2参照)からの駆動力により回転して、筐体10内を換気することにより、筐体10内の温度を下げる機能を有する。なお、ファン14の配置位置及び個数は、適宜変更可能である。
【0029】
給送部20は、給送トレイ21と、シート供給機構22とを有している。給送トレイ21は、筐体10内の下部に、着脱可能に配置されている。シート供給機構22は、給送ローラ23と、分離ローラ24と、分離パッド25と、紙粉取りローラ26と、ピンチローラ27とを有している。シート供給機構22は、給送トレイ21からシートPを画像形成部30へ搬送する。
【0030】
給送ローラ23は、給送トレイ21内のシートPを分離ローラ24側へ供給する。分離ローラ24及び分離パッド25は、シートPを一枚ずつ分離する。紙粉取りローラ26及びピンチローラ27は、紙粉を除去する。
【0031】
画像形成部30は、給送部20により搬送されたシートPに画像を形成する。画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、ベルトユニット70と、定着ユニット80とを有している。
【0032】
LEDユニット40は、LEDプリントヘッド41を有している。LEDプリントヘッド41は、感光体ドラム53の上方で、感光体ドラム53に対向して配置されている。
【0033】
プロセスカートリッジ50は、カバー11と給送部20との間で前後方向に並んで4つ配置されている。プロセスカートリッジ50は、ドラムカートリッジ51と、トナーカートリッジ60とを有している。トナーカートリッジ60は、ドラムカートリッジ51と分離可能である。なお、トナーカートリッジ60と、ドラムカートリッジ51とが一体的に構成されたプロセスカートリッジを用いてもよい。
【0034】
プロセスカートリッジ50は、カバー11を上方へ回動させた後、筐体10の開口部から交換可能となっている。すなわち、プロセスカートリッジ50では、トナーカートリッジ60がドラムカートリッジ51に装着された状態で、トナーカートリッジ60と共に、筐体10に着脱可能に装着されている。なお、各プロセスカートリッジ50は、トナー収容室63に収容されるトナーの色が異なるだけであり、構成は同一である。
【0035】
ドラムカートリッジ51は、帯電器52と、感光体ドラム53と、ドラムメモリ510とを有している。帯電器52は、例えば、スコロトロン型の帯電器である。感光体ドラム53の表面は、帯電器52により一様に帯電される。感光体ドラム53は、LEDプリントヘッド41から照射されるLED光により露光される。これにより、各感光体ドラム53上に印刷データに基づく静電潜像が形成される。ドラムメモリ510には、ドラム情報が記憶されている(図3参照)。
【0036】
また、ドラムカートリッジ51は、クリーニングローラ54を有している。クリーニングローラ54は、感光体ドラム53と当接することによって感光体ドラム53をクリーニングする。つまり、クリーニングローラ54は、感光体ドラム53の表面に付着したトナーや紙粉などの異物を除去して回収する。異物は、印刷ジョブが終了したときなどに、感光体ドラム53を介して転写ベルト73上に排出され、後述のベルトクリーニングローラ75に回収される。
【0037】
トナーカートリッジ60は、現像ローラ61と、供給ローラ62と、トナー収容室63を有している。現像ローラ61には、供給ローラ62の回転により、トナー収容室63内に収容されたトナーが供給される。
【0038】
現像ローラ61上に担持されたトナーは、現像ローラ61が感光体ドラム53に対向して接触するときに、感光体ドラム53上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム53上にトナー像が形成される。
【0039】
ベルトユニット70は、給送部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられている。ベルトユニット70は、ベルトメモリ71と、駆動ローラ72Aと、従動ローラ72Bと、転写ベルト73と、転写ローラ74と、ベルトクリーニングローラ75とを有している。ベルトメモリ71は、ベルトフィルミングが発生した可能性を示すベルトフィルミング情報等を記憶する。
【0040】
駆動ローラ72A及び従動ローラ72Bは、前後方向に離間して配置されている。駆動ローラ72Aと従動ローラ72Bとの間には、無端ベルトからなる転写ベルト73が設けられている。転写ベルト73は、4つのプロセスカートリッジ50に対向して配置され、その外側の面が各感光体ドラム53に接している。
【0041】
転写ベルト73の内側には、4つの転写ローラ74が、各感光体ドラム53との間で転写ベルト73を挟持するように、各感光体ドラム53に対向して配置されている。転写ローラ74には、転写時に定電流制御によって転写電圧が印加される。
【0042】
各感光体ドラム53上に形成されたトナー像は、転写ベルト73上に供給されたシートPが各感光体ドラム53と各転写ローラ74との間を通過することで、シートP上に転写される。
【0043】
転写ベルト73の下方には、ベルトクリーニングローラ75が配置されている。ベルトクリーニングローラ75は、トナー等の異物を転写ベルト73から除去し、除去した異物をトナー貯留部76内に収容する。
【0044】
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ50及びベルトユニット70の後側に配置されている。定着ユニット80は、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向して配置されて加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを有している。シートPが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、シートP上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0045】
排出部90は、排出経路91と、排出ローラ92とを有している。排出経路91は、定着ユニット80の出口から上方に向かって延びて、前側へ反転するように形成されている。排出ローラ92は、画像が形成されたシートPを排出経路91に沿って搬送して、排出トレイ13に排出する。
【0046】
〔画像形成装置の電気的構成〕
図2は、画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。図2に示すように、画像形成装置1は、ファンモータ110と、表示部120と、開閉センサ130と、湿度センサ140と、通信インタフェース(I/F)150とを更に備えている。
【0047】
コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、NVRAM(Non Volatile Random Access Memory)104、ASIC105、電圧印加回路106、及び異常放電検知回路107を有し、これらが内部バスによって接続されている。コントローラ100は、画像形成装置1の各部に対する全般的な制御を行う。
【0048】
ROM102には、画像形成装置1を制御するための各種制御プログラムや各種設定等が記憶されている。例えば、ROM102には、後述する機外湿度テーブル、画像形成速度テーブル、メディアタイプテーブル等が記憶されている。
【0049】
RAM103は、各種制御プログラムが読み出される作業領域、及び印刷データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0050】
NVRAM104には、画像形成装置1を制御するための各種制御プログラムや各種設定等が記憶されている。NVRAM104は、各種制御プログラムが読み出される作業領域、及び印刷データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0051】
ASIC105には、給送部20、LEDユニット40、プロセスカートリッジ50、ベルトユニット70、排出部90、電圧印加回路106、異常放電検知回路107、ファンモータ110、表示部120、開閉センサ130、湿度センサ140、及び通信I/F150等が電気的に接続されている。
【0052】
電圧印加回路106は、帯電器52のワイヤー及びグリッドへ電圧を印加する。異常放電検知回路107は、電圧印加回路106に流れる電流値に基づいて、異常放電の発生を検知する。
【0053】
表示部120は、例えば、筐体10の上面に配置されている。表示部120には、ユーザに対するメッセージ等が表示される。開閉センサ130は、カバー11が開閉したか否かを検知するセンサである。開閉センサ130は、カバー11の開閉を検知すると、検知結果をコントローラ100へ出力する。
【0054】
湿度センサ140は、筐体10の外部の湿度を検出するセンサである。湿度センサ140は、例えば、筐体10の後面に配置されている。湿度センサ140は、検出した湿度に応じた信号を、コントローラ100へ出力する。
【0055】
通信I/F150は、LAN等のネットワークに接続され、画像形成装置1用のドライバが組み込まれたPC等の外部装置との接続を可能にしている。画像形成装置1は、通信I/F150を介して、印刷ジョブ等を受信可能である。
【0056】
図3は、ドラムメモリ510に記憶される情報の一例を示す図である。図3に示すように、ドラムメモリ510には、ドラムID511、ドラム累積回転数512、累積印刷枚数513、及び放電履歴情報514等のドラム情報が記憶されている。
【0057】
ドラムID511は、ドラムカートリッジ51を識別するための識別情報である。ドラム累積回転数512は、ドラムカートリッジ51の使用を開始した時からの感光体ドラム53の累積回転数である。累積印刷枚数513は、ドラムカートリッジ51の使用を開始した時からの印刷枚数である。放電履歴情報514は、過去に発生した帯電器52における異常放電に関する情報である。
【0058】
図4は、ベルトメモリ71に記憶される情報の一例を示す図である。図4に示すように、ベルトメモリ71には、ベルトID711、ベルト累積回転数712、及び累積評価値713等が記憶されている。
【0059】
ベルトID711は、ベルトユニット70を識別するための識別情報である。ベルトID711は、例えば、ベルトユニット70毎に固有のシリアルナンバーである。ベルト累積回転数712は、転写ベルト73の回転数の累積加算された値である。累積評価値713は、印刷ジョブ毎にベルトフィルミングの発生の有無を判定する評価値が累積加算された値である。
【0060】
〔コントローラによる制御の流れ〕
次に、画像形成装置1のコントローラ100による制御の流れについて、図5図13を参照して説明する。本実施形態の画像形成装置1では、コントローラ100は、転写ベルト73のベルトフィルミングの影響を考慮して、ドラムカートリッジ51の寿命の予測を行う。
【0061】
[ドラム寿命判定処理]
図5は、コントローラ100によるドラム寿命判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートにおいて、まず、コントローラ100は、電源がオンであるか、又はカバー11が開閉したか否かを判定する(S1)。具体的には、コントローラ100は、画像形成装置1が起動した状態か否かを検知することに基づいて、電源がオンであるか否かを判定する。また、コントローラ100は、開閉センサ130からの検知結果に基づいて、カバー11が開放状態から閉鎖状態へ回動したか否かを判定する。
【0062】
コントローラ100は、電源がオンされたと判定せず、カバー11が開閉していない場合(S1:NO)、S1に戻る。一方、電源がオンされたか、又はカバー11が開閉された場合(S1:YES)、コントローラ100は、図6に示すドラムメモリ内情報ラッチ処理を実行し(S2)、ドラムメモリ510からドラム情報を取得する。
【0063】
<ドラムメモリ内情報ラッチ処理>
ここで、図6を参照して、ドラムメモリ内情報ラッチ処理S2について説明する。図6は、図5のドラムメモリ内情報ラッチ処理S2の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートにおいて、コントローラ100は、ドラムメモリ510から累積印刷枚数513を読み込み(S21)、NVRAM104に記憶する。累積印刷枚数513は、後述する図10に示すコントローラ100による定期実施処理によって、ドラムメモリ510に書き込まれる。
【0064】
S21の後、コントローラ100は、ドラムメモリ510から、感光体ドラム53の累積回転数であるドラム累積回転数512を読み込み(S22)、NVRAM104に記憶する。ドラム累積回転数512は、図10に示すコントローラ100による定期実施処理によって、ドラムメモリ510に書き込まれる。
【0065】
S22の後、コントローラ100は、ドラムメモリ510からドラムエラー履歴を読み込み(S23)、NVRAM104に記憶する。ドラムエラー履歴には、過去に発生した放電エラーの種類、エラー発生時の累積印刷枚数、及び感光体ドラム53の累積回転数等が含まれる。ドラムエラー履歴は、図12に示すコントローラ100によるエラー発生時処理によって、ドラムメモリ510に書き込まれる。
【0066】
S23の後、ドラムメモリ510から使用不可フラグ515を読み込み(S24)、NVRAM104に記憶する。そして、コントローラ100は、ドラムメモリ510からドラムエラー後処理の回数を読み込み(S25)、NVRAM104に記憶する。ドラムエラー後処理としては、ファン14の長回し等が挙げられる。ドラムエラー後処理の回数は、図11に示すコントローラ100による帯電印加処理によって、ドラムメモリ510に書き込まれる。
【0067】
以上により、コントローラ100は、図6に示すドラムメモリ内情報ラッチ処理S2を終了する。このようにして、コントローラ100は、ドラム情報として、ドラム累積回転数512、累積印刷枚数513、ドラムエラー履歴、使用不可フラグ515、及びドラムエラー後処理の回数を取得する。
【0068】
図5に戻り、S2の後、コントローラ100は、使用可否情報が使用可か否かを判定する(S3)。コントローラ100は、NVRAM104に使用不可フラグ515が記憶されている場合、使用可否情報が使用不可であると判断し(S3:NO)、ドラムカートリッジ51の使用中止をユーザに促すメッセージ等を、表示部120に表示し(S4)、S8へ進む。
【0069】
一方、コントローラ100は、NVRAM104に使用不可フラグ515が記憶されていない場合、使用可否情報が使用可であると判断し(S3:YES)、ドラムカートリッジ51の寿命が間近である状態、又は、ドラムカートリッジ51が寿命に到達した状態であるか否かを判定する(S5)。
【0070】
具体的には、コントローラ100は、ベルトフィルミングの発生履歴を考慮してカウントされるドラム累積回転数512、及び、累積印刷枚数513に基づいて、ドラムカートリッジ51の寿命判定を行う。
【0071】
コントローラ100は、ドラム累積回転数512が例えば180万回を越えた場合、又は、累積印刷枚数513が例えば9万枚を越えた場合に、ドラムカートリッジ51が寿命間近であると判定し(S5:YES)、ドラムカートリッジ51の寿命が間近である旨を示すメッセージ等を、表示部120に表示し(S6)、S8へ進む。
【0072】
更に、コントローラ100は、ドラム累積回転数512が例えば200万回を越えた場合、又は、累積印刷枚数513が例えば10万枚を越えた場合に、ドラムカートリッジ51が寿命に到達したと判定し(S5:YES)、ドラムカートリッジ51が寿命に到達した旨を示すメッセージ等を、表示部120に表示し(S7)、S8へ進む。
【0073】
一方、コントローラ100は、ドラムカートリッジ51が寿命間近の状態でも、寿命に到達した状態でもないと判定した場合(S5:NO)、S8へ進む。S8において、コントローラ100は、画像形成装置1を所定の待機状態にする。
【0074】
<加速モード適用処理>
新品のドラムカートリッジ51と、ベルトフィルミングが発生しているベルトユニット70とを組み合わせて使用した場合、新品のドラムカートリッジ51と新品のベルトユニット70とを組み合わせて使用した場合よりも、ベルトフィルミングの原因となる紙粉やトナー等が感光体ドラム53に移り易いため、感光体ドラム53のドラムフィルミングが加速する。この場合、ドラムカートリッジ51が寿命内であっても、ドラムフィルミングの影響により、画像形成時に画質不良が発生する可能性がある。
【0075】
そこで、本実施形態では、感光体ドラム53が新品に近い状態では、感光体ドラム53の寿命に与えるベルトフィルミングの影響が大きくなることを考慮して、感光体ドラム53の回転数のカウントを通常時よりも加速させる加速モードを適用する。これにより、感光体ドラム53の寿命の予測精度を向上させている。
【0076】
ここで、図7を参照して、加速モード適用処理について説明する。加速モード適用処理では、感光体ドラム53の回転数のカウントを通常時よりも加速させるか否かを判定する。図7に示すフローチャートにおいて、まず、コントローラ100は、S1と同様に、電源がオン又はカバー11が開閉したか否かを判定する(S31)。
【0077】
コントローラ100は、電源がオンされたと判定せず、カバー11が開閉していない場合(S1:NO)、S1に戻る。一方、電源がオンされたか、又はカバー11が開閉された場合(S1:YES)、コントローラ100は、ドラムメモリ510からドラム情報を取得し、感光体ドラム53の累積回転数が所定値以下か否かを判定する(S32)。所定値は、例えば1万回である。
【0078】
コントローラ100は、感光体ドラム53の累積回転数が所定値以下である場合(S32:YES)、ベルトメモリ71からベルトフィルミング情報を取得し、ベルトフィルミング情報にベルトフィルミングの発生履歴があるか否かについて判定する(S33)。なお、ベルトフィルミング発生履歴は、図8に示すベルトフィルミング発生推定処理において、ベルトメモリ71に記憶されるものである。
【0079】
コントローラ100は、ベルトメモリ71にベルトフィルミング発生履歴がある場合(S33:YES)、上述した加速モードを適用する(S34)。加速モードでは、感光体ドラム53が実際に回転した実回転数に、1より大きい係数(例えば1.2)を乗じて算出される回転数を、感光体ドラム53の累積回転数に加算した回転数をドラムメモリ510に記憶する。
【0080】
一方、感光体ドラム53の累積回転数が所定値よりも大きい場合(S32:NO)、又は、ベルトメモリ71にベルトフィルミングの発生履歴がない場合(S33:NO)、コントローラ100は、加速モードを適用せず、通常モードを適用する(S35)。通常モードでは、感光体ドラム53が実際に回転した実回転数を、感光体ドラム53の累積回転数に加算した回転数をドラムメモリ510に記憶する。
【0081】
<ベルトフィルミング発生推定処理>
次に、ベルトフィルミングが発生したか否かを判定するベルトフィルミング発生判定処理について、図8を参照して説明する。図8は、コントローラ100によるベルトフィルミング発生推定処理の一例を示すフローチャートである。図8に示すベルトフィルミング発生推定処理において、図7のS33にて用いるベルトフィルミングの発生履歴を、ベルトメモリ71に記憶する。
【0082】
図8に示すフローチャートにおいて、コントローラ100は、電源がオンしたか、又はカバー11が開閉したか否かを判定する(S41)。コントローラ100は、電源がオン及びカバー11が開閉していない場合(S41:NO)、S41に戻る。
【0083】
一方、コントローラ100は、電源がオンしたか、又はカバー11が開閉した場合(S41:YES)、ベルトユニット内情報ラッチ処理を実行する(S42)。具体的には、コントローラ100は、ベルトメモリ71からベルト累積回転数712、及び累積評価値713等を取得する。
【0084】
<評価値累計処理>
ここで、累積評価値713の算出方法について、図9を参照して説明する。図9は、コントローラ100による評価値累計処理の一例を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートにおいて、コントローラ100は、印刷動作中か否かを判定する(S51)。コントローラ100は、印刷動作中である場合(S51:YES)、機外湿度影響係数H取得を実行する(S52)。
【0085】
S52において、コントローラ100は、湿度センサ140による検出値に基づいて、機外の湿度を取得する。ここで、機外湿度とは、画像形成装置1が設置されている環境の湿度のことである。そして、コントローラ100は、取得した機外の湿度と、ROM102に記憶された機外湿度テーブルとを参照することにより、現在の機外湿度に対応する機外湿度影響係数Hを取得し、NVRAM104に記憶する。
【0086】
機外湿度影響係数Hは、機外湿度に応じて設定された係数である。機外湿度影響係数Hは、評価値算出処理S55で使用される。機外湿度が高くなるほど、ベルトフィルミングは発生し易くなる。この機外湿度がベルトフィルミングの発生に与える影響を評価値に反映させるための係数が、機外湿度影響係数Hである。機外湿度テーブルには、機外湿度[%]と、機外湿度に対応する機外湿度影響係数Hとが記憶されている。例えば、機外湿度[%]が0[%]~50[%]である場合、機外湿度影響係数Hは「1」である。一方、機外湿度[%]が50.1[%]~80[%]である場合、機外湿度影響係数Hは「1.2」である。また、機外湿度[%]が80.1[%]~100[%]の場合、機外湿度影響係数Hは「1.5」である。このように、機外湿度が高くなると、シートPから発生する紙粉の量が増加して、その付着力が高まるので、ベルトフィルミングが発生し易くなることを考慮し、機外湿度影響係数Hを、機外湿度が高くなるに伴って大きな値に設定している。
【0087】
つまり、コントローラ100は、湿度センサ140により検出される機外湿度が所定値、この場合50[%]を超えている場合、機外湿度が50[%]を超えていない場合よりも、機外湿度影響係数Hを大きくすることで、後述する評価値XNを大きくする。
【0088】
このように、機外湿度が高くなると、シートPから発生する紙粉量が増加して、紙粉の付着力が高まるためベルトフィルミングが加速することを考慮して、機外湿度が所定値、即ち50[%]を超えている場合には、機外湿度が50[%]を超えていない場合よりも、評価値XNが大きくなるようにすることで、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することが可能である。
【0089】
S52の後、コントローラ100は、画像形成速度影響係数F取得処理を実行する(S53)。S53において、コントローラ100は、現在の画像形成速度を取得し、取得した画像形成速度と、ROM102に記憶された画像形成速度テーブルとを参照することにより、現在の画像形成速度に対応する画像形成速度影響係数Fを取得し、NVRAM104に記憶する。
【0090】
画像形成速度影響係数Fは、画像形成速度に応じて設定された係数である。画像形成速度影響係数Fは、評価値算出処理S55で使用される。画像形成速度が遅くなるほど、ベルトフィルミングは発生し易くなる。この画像形成速度がベルトフィルミングの発生に与える影響を評価値に反映させるための係数が、画像形成影響係数Fである。画像形成速度テーブルには、画像形成速度と、画像形成速度に対応する画像形成速度影響係数Fとが記憶されている。例えば、画像形成速度が「全速」である場合、画像形成速度影響係数Fは「1」である。一方、画像形成速度が全速の半分の「半速」である場合、画像形成速度影響係数Fは「1.1」である。また、画像形成速度が全速の1/3の「1/3速」の場合は、画像形成速度影響係数Fは「1.2」である。このように、画像形成速度が「全速」よりも遅い場合、クリーニングローラ54の圧接箇所の機械的回収力が低下して、感光体ドラム53に付着した紙粉が残り易くなるため、感光体ドラム53と接触する転写ベルト73へ紙粉が流出し易くなることを考慮し、印字速度影響係数Fを、画像形成速度が遅くなるに伴って大きな値になるように設定している。
【0091】
つまり、コントローラ100は、画像形成時の画像形成速度を取得し、取得した画像形成速度が全速よりも遅い場合、全速の画像形成時よりも画像形成速度が遅いほど、画像形成速度影響係数Fを大きくすることで、後述する評価値XNを大きくする。
【0092】
このように、画像形成速度が全速よりも遅い場合に、全速の画像形成時よりも画像形成速度に応じて、評価値XNが大きくなるようにすることで、ベルトフィルミングの発生をより正確に評価することを可能としている。
【0093】
S53の後、コントローラ100は、メディアタイプ影響係数M取得処理を実行する(S54)。S54において、印刷ジョブにより指定されたシートPの種類、即ちメディアタイプを取得し、取得したメディアタイプと、ROM102に記憶されたメディアタイプテーブルとを参照することにより、現在のメディアタイプに対応するメディアタイプ影響係数Mを取得し、NVRAM104に記憶する。
【0094】
メディアタイプ影響係数Mは、メディアタイプに応じて設定された係数である。メディアタイプによって、ベルトフィルミングの発生し易さが変わるので、メディアタイプ影響係数Mは、メディアタイプによるベルトフィルミングの発生に与える影響を評価値に反映させるための係数である。メディアタイプテーブルには、メディアタイプと、メディアタイプに対応するメディアタイプ影響係数Mとが記憶されている。例えば、メディアタイプが「普通紙」である場合、メディアタイプ影響係数Mは「1」である。メディアタイプが「薄紙」である場合、メディアタイプ影響係数Mは「1」である。メディアタイプが「厚紙」である場合、メディアタイプ影響係数Mは「1」である。一方、メディアタイプが「リサイクル紙」である場合は、メディアタイプ影響係数Mは「1.5」である。これは、リサイクル紙は、紙粉が脱落し易く、リサイクル紙を用いると紙粉の発生量が増加することを考慮している。
【0095】
つまり、コントローラは、メディアタイプ(シート種類)を取得し、取得したメディアタイプがリサイクル紙である場合、メディアタイプが普通紙である場合よりも、メディアタイプ影響係数Mを大きくすることで、後述する評価値XNを大きくする。
【0096】
このように、メディアタイプがリサイクル紙である場合に、メディアタイプが普通紙である場合よりも評価値XNが大きくなるようにすることで、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することを可能としている。
【0097】
S54の後、コントローラ100は、印刷時の評価値算出処理を実行する(S55)。S55において、コントローラ100は、現在の印刷ジョブの印刷枚数Pをカウントする枚数カウント処理を実行した後、S52にて取得した機外湿度影響係数Hと、S53にて取得した画像形成速度影響係数Fと、S54にて取得したメディアタイプ影響係数MとをNVRAM104から読み出す。なお、機外湿度、画像形成速度、及びメディアタイプ(シート種類)は、ベルトフィルミングの発生を加速させる加速条件に含まれる。また、S52~S54は、条件取得処理に相当する。
【0098】
そして、コントローラ100は、今回の印刷ジョブによって転写ベルト73に発生したベルトフィルミングの発生を評価する評価値XNを、以下の式(1)により算出する算出処理を実行し、算出した評価値XNをNVRAM104に記憶する。
XN=(H+F+M)×P・・・・式(1)
ここで、Hは機外湿度影響係数の値、Fは画像形成速度影響係数の値、Mはメディアタイプ影響係数の値を示している。Pは印刷ジョブの印刷枚数を示している。
【0099】
S55の後、コントローラ100は、累積加算処理を実行する(S56)。S56において、コントローラ100は、S55にて算出した評価値XNが0ではない場合、NVRAM104から評価値XNを読み出した後、ベルトメモリ71から累積評価値713を読み出し、以下の通り累積評価値Xとして用いる。
【0100】
コントローラ100は、累積評価値Xを以下の式(2)により算出して、算出した累積評価値Xを、ベルトメモリ71の累積評価値713に上書き記憶する。
X=X+XN ・・・・式(2)
ここで、Xは累積評価値を示し、XNは評価値を示している。このようにして、コントローラ100は、S55にて算出した評価値XNを累積加算して、累積評価値Xを算出する累積加算処理を実行する。
【0101】
図8に戻り、S42の後、コントローラ100は、図9のS56にて算出された累積評価値Xが評価閾値以上か否かを判定する評価値判定処理を実行する(S43)。評価閾値は、NVRAM104に予め記憶されているものとする。
【0102】
コントローラ100は、累積評価値Xが評価閾値以上でない場合(S43:NO)、即ち、累積評価値Xが評価閾値未満である場合、画像形成装置1を待機状態にする(S44)。
【0103】
一方、コントローラ100は、累積評価値Xが評価閾値以上である場合(S43:YES)、ベルトフィルミングが発生したと判定し、ベルトフィルミング発生履歴をベルトメモリ71に記憶させる(S45)。このようにして、コントローラ100は、累積評価値Xが評価閾値以上であるか否かを判定することに基づいて、ベルトフィルミングの発生の有無を判定するフィルミング判定処理を実行する。
【0104】
S45の後、コントローラ100は、ベルトユニットの交換を促すメッセージ等を、表示部120に表示する(S46)。S44の後、又は、S46の後、コントローラ100は、図8に示すベルトフィルミング発生推定処理を終了する。
【0105】
<定期実施処理>
次に、定期実施処理について、図10のフローチャートを参照して説明する。図10の定期実施処理では、図6のS21で読み込む累積印刷枚数、及び図6のS22で読み込む感光体ドラム53の累積回転数のドラムメモリ510への書き込みを行う。
【0106】
図10に示すフローチャートにおいて、コントローラ100は、NVRAM104に記憶された累積印刷枚数が更新されたか否かを判定する(S61)。コントローラ100は、NVRAM104に記憶された累積印刷枚数が更新された場合(S61:YES)、ドラムメモリ510に累積印刷枚数を書き込む(S62)。
【0107】
累積印刷枚数が更新されていない場合(S61:NO)、又は、S62の後、コントローラ100は、感光体ドラム53の累積回転数が更新されたか否かを判定する(S63)。感光体ドラム53の累積回転数が更新された場合(S63:YES)、コントローラ100は、感光体ドラム53の累積回転数を書き込む(S64)。
【0108】
感光体ドラム53の累積回転数が更新されていない場合(S63:NO)、又は、S64の後、コントローラ100は、図10に示す定期実施処理を終了する。
【0109】
<帯電印加処理>
次に、帯電印加処理について、図11を参照して説明する。図11は、コントローラ100による帯電印加処理の流れの一例を示すフローチャートである。図11の帯電印加処理では、図6のS25で読み込むドラムエラー後処理回数のドラムメモリ510への書き込みを行う。
【0110】
図11に示すフローチャートにおいて、コントローラ100は、ドラムエラー後処理の回数が0か否かを判定する(S71)。ドラムエラー後処理の回数が0ではないと判定した場合(S71:NO)、コントローラ100は、ファン14を長回し、即ち長時間回転させ(S72)、筐体10内の換気を行う。
【0111】
S72の後、コントローラ100は、ドラムエラー後処理の回数を1回分減少させ(S73)、ドラムメモリ510に、ドラムエラー後処理の回数を書き込み(S74)、S78へ進む。
【0112】
一方、ドラムエラー後処理の回数が0である判定した場合(S71:YES)、コントローラ100は、ドラムカートリッジ51が寿命か否かを判定する(S75)。ドラムカートリッジが寿命であると判定した場合(S75:YES)、コントローラ100は、印刷以外の帯電制御か否かを判定する(S76)。コントローラ100は、印刷以外の帯電制御である場合(S76:YES)、ファン14を長回しさせ(S77)、筐体10内の換気を行った後、S78へ進む。
【0113】
一方、コントローラ100は、ドラムカートリッジが寿命でないと判定した場合(S75:NO)、又は、印刷の帯電制御である場合(S76:NO)、S78へ進む。S78において、コントローラ100は、帯電器に印加を行う。以上により、コントローラ100は、図11に示す帯電印加処理を終了する。
【0114】
<エラー発生時処理>
次に、エラー発生時処理の流れについて、図12を参照して説明する。図12のエラー発生時処理では、図6のS23で読み込むドラムエラー履歴のドラムメモリ510への書き込みを行う。
【0115】
図12に示すフローチャートにおいて、コントローラ100は、各種センサ等の検知結果に基づいて、エラーが発生したか否かを判定する(S81)。コントローラ100は、エラーが発生した場合(S81:YES)、画像形成装置1による画像形成処理を停止させる(S82)。
【0116】
S82の後、コントローラ100は、異常放電検知回路107の検知結果に基づいて、異常放電に関連したエラーか否かを判定する(S83)。異常放電に関連したエラーである場合(S83:YES)、コントローラ100は、ドラムメモリ510から放電履歴情報514を読み出す(S84)。
【0117】
S84の後、コントローラ100は、前回の異常放電時から所定枚数以上の印刷がなされたか否かを判断することにより、前回の異常放電時から所定期間経過したか否かを判定する(S85)。コントローラ100は、前回の異常放電時から所定期間経過したと判定した場合(S85:YES)、ドラムメモリ510にドラムエラー履歴を書き込む(S86)。S86の後、コントローラ100は、ドラム寿命の2倍を越えてからの異常放電回数が第1閾値以上か否かを判定する(S87)。第1閾値は、例えば1回である。
【0118】
コントローラ100は、ドラム寿命の2倍を越えてからの異常放電回数が第1閾値以上である場合(S87:YES)、ドラムメモリ510に使用不可フラグ515を記憶する(S88)、ドラムカートリッジ51の交換を要求するメッセージ等を、表示部120に表示する(S89)。ユーザは、表示部120の表示を確認して、ドラムカートリッジ51を交換する。
【0119】
一方、異常放電に関連した放電エラーでない場合(S83:NO)、コントローラ100は、発生したエラー情報を表示部120に表示する(S90)。
【0120】
図13に移り、コントローラ100は、ドラム寿命の2倍を越えてからの異常放電の回数が第1閾値未満である場合(S87:NO)、ドラムカートリッジ51が寿命を越えてからの異常放電の回数が第2閾値以上か否かを判定する(S91)。第2閾値は、第1閾値よりも大きい値であり、例えば2回である。
【0121】
コントローラ100は、ドラムカートリッジ51が寿命を越えてからの異常放電の回数が第2閾値以上である場合(S91:YES)、画像形成処理を停止させ(S92)、ドラムカートリッジ51の交換を要求するメッセージ等を、表示部120に表示する(S93)。
【0122】
また、コントローラ100は、前回の異常放電時から所定期間経過していないと判定した場合(S85:NO)、ドラムメモリ510から放電履歴情報514を読み出し(S94)、クリーニングを要求する旨のメッセージ等を、表示部120に表示する(S95)。S93の後、又はS95の後、コントローラ100は、エラー発生時処理を終了する。
【0123】
〔実施形態の効果〕
以上説明した本実施形態の画像形成装置1では、コントローラ100は、転写ベルト73におけるベルトフィルミングの発生履歴を考慮してカウントした感光体ドラム53の累積回転数、及び累積印刷枚数を含むドラム情報に基づいて、感光体ドラム53の寿命判定(S5)を行うので、ドラムカートリッジ51の寿命をより正確に予測することができる。
【0124】
具体的には、感光体ドラム53の累積回転数が所定値以下であり(S32:YES)、ベルトメモリ71にベルトフィルミングの発生履歴がある場合(S33:YES)、加速モードを適用して(S34)、感光体ドラム53が実際に回転した実回転数に、例えば1.2を乗じて感光体ドラム53の回転数を算出する。このように、通常モード(S35)である場合よりも、感光体ドラム53の回転数が大きくなるようにすることで、ドラムカートリッジ51の寿命判定をより正確に行うことを可能としている。
【0125】
また、コントローラ100は、ドラムメモリ510にドラム累積回転数512、累積印刷枚数513、及び放電履歴情報514等のドラム情報を記憶するので、画像形成装置1からドラムカートリッジ51が取り外された場合であっても、ドラム情報を確実に取得することが可能である。
【0126】
また、コントローラ100は、ベルトメモリ71にベルトフィルミング情報を記憶するので、画像形成装置1から転写ベルト73が取り外された場合であっても、ベルトメモリ71からベルトフィルミング情報を確実に取得することが可能である。
【0127】
また、コントローラ100は、機外湿度、画像形成速度、及びメディアタイプ等のベルトフィルミングの加速条件を考慮することで、ベルトフィルミングの発生を適切なタイミングで検知することを可能としている。更に、コントローラ100は、ベルトフィルミングの発生履歴をベルトメモリ71に記憶させて(S45)、ドラムカートリッジ51の寿命判定(S5)に用いることで、ドラムカートリッジ51の寿命の予測精度を向上させている。
【0128】
〔その他の実施形態〕
上記した実施形態の画像形成装置1は、カラーレーザプリンタであるとしたが、これに限らず、他にも、モノクロレーザプリンタや、プリンタ機能及びスキャナ機能等を備えたMFP(Multi-Function Peripheral)であってもよい。
【0129】
上記した実施形態では、コントローラ100は、機外湿度と、画像形成速度と、メディアタイプとの3つのパラメータの影響を考慮して、ベルトフィルミングの発生を評価する評価値XNを算出するものとしたが、これに限定されない。例えば、コントローラ100は、3つのパラメータのうち2つの影響を考慮して評価値XNを算出してもよい。
【0130】
上記した実施形態では、ベルトメモリ71に、ベルトフィルミング情報として、累積評価値Xを記憶していたが、これに限られない。例えば、ベルトメモリ71に、ベルトフィルミング情報として、ベルトフィルミングが発生したことを示すベルトフィルミングフラグを記憶していてもよい。
【0131】
上記した実施形態では、ベルトメモリ71に累積評価値Xが記憶されており、コントローラ100は、累積評価値Xに基づいてベルトフィルミングの発生を判定していたが、これに限られない。
【0132】
例えば、光学センサを用いて、ベルトフィルミングの発生を検知してもよい。あるいは、ベルトフィルミング発生した場合に、ユーザが、タッチパネルを含む表示部120を介して、画像形成装置1にベルトフィルミング情報を入力してもよい。その場合、ベルトメモリ71に、ベルトフィルミング情報としてベルトフィルミングが発生したことを示すベルトフィルミングフラグを記憶していてもよい。
【0133】
あるいは、ベルトメモリ71に、転写ベルト73の累積回転数、又は転写ベルト73を使用して印刷した印刷枚数を、ベルトフィルミング情報として記憶していてもよい。この場合、コントローラ100は、累積回転数、又は印刷枚数が閾値を超えているか否かによって、ベルトフィルミングが発生した可能性があるか否かを判定してもよい。
【0134】
上記した実施形態では、ドラムカートリッジ51は、ドラムメモリ510を有していたが、これに限られない。例えば、コントローラ100は、NVRAM104に、感光体ドラム53の累積回転数、及び感光体ドラム53を使用して印刷した累積印刷枚数等のドラム情報を記憶させてもよい。この場合、S32において、コントローラ100は、NVRAM104に記憶されたドラム情報を読み出して、感光体ドラム53の累積回転数が所定値以下か否かを判定すればよい。
【0135】
上記した実施形態では、ベルトユニット70は、ベルトメモリ71を有していたが、これに限られない。例えば、コントローラ100は、NVRAM104にベルトフィルミング情報を記憶させてもよい。この場合、S33において、コントローラ100は、NVRAM104に記憶されたベルトフィルミング情報を読み出して、ベルトフィルミングの発生履歴があるか否かを判定すればよい。
【0136】
本開示は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
1 画像形成装置
30 画像形成部
51 ドラムカートリッジ
53 感光体ドラム
70 ベルトユニット
71 ベルトメモリ
73 転写ベルト
74 転写ローラ
100 コントローラ
104 NVRAM
510 ドラムメモリ
512 ドラム累積回転数
513 累積印刷枚数
713 累積評価値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13