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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147375
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】画像形成装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G03G21/00 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060341
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 千晴
(72)【発明者】
【氏名】林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小森 彩香
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270LA28
2H270LA37
2H270LA76
2H270LC02
2H270LC04
2H270QB07
2H270RA01
2H270RA03
2H270RA13
2H270RA14
2H270RB01
2H270RB04
2H270RC03
2H270RC05
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】光学センサを用いることなく、ベルトフィルミングの発生を検知することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光ドラム(41)と、感光ドラム(41)から印刷媒体へ現像剤を転写する転写ベルト(52)であって、感光ドラム(41)と接触する無端状の転写ベルト(52)と、コントローラ(7)と、を備え、コントローラ(7)は、転写ベルト(52)を用いて印刷した印刷枚数と、転写ベルト(52)を用いて印刷したときの条件と、に基づいて、ベルトフィルミングが転写ベルト(52)に発生したかを推定する推定処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと、
前記感光ドラムから印刷媒体へ現像剤を転写する転写ベルトであって、前記感光ドラムと接触する無端状の転写ベルトと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記転写ベルトを用いて印刷した印刷枚数と、前記転写ベルトを用いて印刷したときの条件と、に基づいて、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したかを推定する推定処理を実行する、画像形成装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記転写ベルトを用いて印刷した前記印刷枚数と、前記転写ベルトを用いて印刷したときの前記条件と、に基づいて、評価値を算出する算出処理と、
前記算出処理で算出した前記評価値を累積加算する累積加算処理と、
を実行し、
前記推定処理にて、前記コントローラは、前記累積加算処理で算出した累積加算された前記評価値に基づいて、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したかを推定する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記推定処理にて、前記コントローラは、
累積加算された前記評価値が評価閾値以上であると判定した場合、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したと推定し、
累積加算された前記評価値が前記評価閾値未満であると判定した場合、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生していないと推定する、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
転写ユニットであって、
前記転写ベルトと、
転写メモリと、
を有する転写ユニットをさらに備え、
前記コントローラは、
前記累積加算処理で累積加算された前記評価値を前記転写メモリに記憶する記憶処理を実行する、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
機外湿度を検出する湿度センサをさらに備え、
前記条件は、機外湿度を含み、
前記コントローラは、
前記算出処理にて、前記湿度センサによって検出した前記機外湿度が湿度閾値を超えている場合には、前記機外湿度が前記湿度閾値を超えていないときよりも大きい前記評価値を算出するように設定する、
請求項2~4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記条件は、印字速度を含み、
前記コントローラは、
印字時の印字速度を取得する印字速度取得処理を実行し、
前記算出処理にて、前記印字速度取得処理で取得した前記印字速度が全速よりも遅い場合には、印字速度に応じて全速印字時よりも大きい前記評価値を算出するように設定する、
請求項2~4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記条件は、前記印刷媒体の用紙種類を含み、
前記用紙種類は、通常紙とリサイクル紙とを含み、
前記コントローラは、
前記印刷媒体の用紙種類を取得する用紙種類取得処理を実行し、
前記算出処理にて、前記用紙種類取得処理で取得した前記用紙種類が前記リサイクル紙である場合は、前記用紙種類が前記通常紙のときよりも大きい前記評価値を算出するように設定する、
請求項2~4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
表示部をさらに備え、
前記コントローラは、
前記推定処理にて、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したと推定した場合、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに生した旨を前記表示部に表示する表示処理を実行する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
請求項4に記載の画像形成装置が備えた前記転写ユニットのリサイクルの可否を判定するリサイクル判定装置であって、
装置コントローラを備え、
前記装置コントローラは、
前記転写メモリから累積加算された前記評価値を読み出す読出し処理と、
前記読出し処理にて、読み出した前記評価値がリサイクル閾値を超えているか否かを判定するリサイクル判定処理と、
前記リサイクル判定処理にて、前記評価値が前記リサイクル閾値を超えていると判定した場合は、前記転写ユニットのリサイクルは不可であると判定し、
前記評価値が前記リサイクル閾値を超えていないと判定した場合は、前記転写ユニットのリサイクルは可能であると判定するリサイクル判定処理と、
を実行する、リサイクル判定装置。
【請求項10】
画像形成装置を制御する制御方法であって、
前記画像形成装置は、
感光ドラムと、
前記感光ドラムから印刷媒体へ現像剤を転写する転写ベルトであって、前記感光ドラムと接触する無端状の転写ベルトと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記転写ベルトを用いて印刷した印刷枚数と、前記転写ベルトを用いて印刷したときの条件と、に基づいて、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したかを推定する推定ステップを実行する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラープリンタなどの画像形成装置では、各色に対応した感光体上にトナー像が形成される。そして、各トナー像は、無端状の転写ベルトによって各感光体と対向して接触するように搬送された用紙上に転写されて、用紙上にカラー画像が形成される。このような画像形成装置では、用紙の搬送時に、用紙の紙粉が転写ベルトの表面に付着する。転写ベルトは、印刷枚数が多くなると、累積する紙粉によってフィルム状に覆われる、いわゆるベルトフィルミングが発生する。特許文献1に記載の画像形成装置では、中間転写ベルトの反射光量を検出する光学センサの出力値に基づいて、ベルトフィルミングの発生を検知する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-20970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の画像形成装置は、光学センサを用いて、ベルトフィルミングの発生を検知していた。
【0005】
本開示は、光学センサを用いることなく、ベルトフィルミングの発生を検知することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本開示の第1の態様の画像形成装置は、感光ドラムと、前記感光ドラムから印刷媒体へ現像剤を転写する転写ベルトであって、前記感光ドラムと接触する無端状の転写ベルトと、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記転写ベルトを用いて印刷した印刷枚数と、前記転写ベルトを用いて印刷したときの条件と、に基づいて、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したかを推定する推定処理を実行するものである。
【0007】
第2の態様は、第1の態様の画像形成装置であって、前記コントローラは、前記転写ベルトを用いて印刷した前記印刷枚数と、前記転写ベルトを用いて印刷したときの前記条件と、に基づいて、評価値を算出する算出処理と、前記算出処理で算出した前記評価値を累積加算する累積加算処理と、を実行し、前記推定処理にて、前記コントローラは、前記累積加算処理で算出した累積加算された前記評価値に基づいて、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したかを推定するようにしてもよい。
【0008】
第3の態様は、第2の態様の画像形成装置であって、前記推定処理にて、前記コントローラは、累積加算された前記評価値が評価閾値以上であると判定した場合、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したと推定し、累積加算された前記評価値が前記評価閾値未満であると判定した場合、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生していないと推定するようにしてもよい。
【0009】
第4の態様は、第2の態様の画像形成装置であって、転写ユニットであって、前記転写ベルトと、転写メモリと、を有する転写ユニットをさらに備え、前記コントローラは、前記累積加算処理で累積加算された前記評価値を前記転写メモリに記憶する記憶処理を実行するようにしてもよい。
【0010】
第5の態様は、第2の態様から第4の態様のいずれか一の態様の画像読取装置であって、機外湿度を検出する湿度センサをさらに備え、前記条件は、機外湿度を含み、前記コントローラは、前記算出処理にて、前記湿度センサによって検出した前記機外湿度が湿度閾値を超えている場合には、前記機外湿度が前記湿度閾値を超えていないときよりも大きい前記評価値を算出するように設定するようにしてもよい。
【0011】
第6の態様は、第2の態様から第4の態様のいずれか一の態様の画像読取装置であって、前記条件は、印字速度を含み、前記コントローラは、印字時の印字速度を取得する印字速度取得処理を実行し、前記算出処理にて、前記印字速度取得処理で取得した前記印字速度が全速よりも遅い場合には、印字速度に応じて全速印字時よりも大きい前記評価値を算出するように設定するようにしてもよい。
【0012】
第7の態様は、第2の態様から第4の態様のいずれか一の態様の画像読取装置であって、前記条件は、前記印刷媒体の用紙種類を含み、前記用紙種類は、通常紙とリサイクル紙とを含み、前記コントローラは、前記印刷媒体の用紙種類を取得する用紙種類取得処理を実行し、前記算出処理にて、前記用紙種類取得処理で取得した前記用紙種類が前記リサイクル紙である場合は、前記用紙種類が前記通常紙のときよりも大きい前記評価値を算出するように設定するようにしてもよい。
【0013】
第8の態様は、第1の態様の画像形成装置であって、表示部をさらに備え、前記コントローラは、前記推定処理にて、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したと推定した場合、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに生した旨を前記表示部に表示する表示処理を実行するようにしてもよい。
【0014】
第9の態様のリサイクル判定装置は、請求項4に記載の画像形成装置が備えた前記転写ユニットのリサイクルの可否を判定するリサイクル判定装置であって、装置コントローラを備え、前記装置コントローラは、前記転写メモリから累積加算された前記評価値を読み出す読出し処理と、前記読出し処理にて、読み出した前記評価値がリサイクル閾値を超えているか否かを判定するリサイクル判定処理と、前記リサイクル判定処理にて、前記評価値が前記リサイクル閾値を超えていると判定した場合は、前記転写ユニットのリサイクルは不可であると判定し、前記評価値が前記リサイクル閾値を超えていないと判定した場合は、前記転写ユニットのリサイクルは可能であると判定するリサイクル判定処理と、を実行するものである。
【0015】
第10の態様の制御方法は、画像形成装置を制御する制御方法であって、前記画像形成装置は、感光ドラムと、前記感光ドラムから印刷媒体へ現像剤を転写する転写ベルトであって、前記感光ドラムと接触する無端状の転写ベルトと、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記転写ベルトを用いて印刷した印刷枚数と、前記転写ベルトを用いて印刷したときの条件と、に基づいて、ベルトフィルミングが前記転写ベルトに発生したかを推定する推定ステップを実行するものである。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様の画像形成装置または第10の態様の制御方法によれば、コントローラは、転写ベルトを使って印刷する場合に、印刷枚数と、転写ベルトを用いて印刷したときの条件と、を取得する。そして、コントローラは、印刷枚数と条件とに基づいて、ベルトフィルミングが転写ベルトに発生したかを推定することができる。これにより、コントローラは、光学センサを用いることなく、ベルトフィルミングの発生を検知することができる。
【0017】
第2の態様の画像形成装置によれば、コントローラは、印刷枚数と条件とに基づいて、評価値を算出し、累積加算する。そして、コントローラは、累積加算した評価値に基づいて、ベルトフィルミングが転写ベルトに発生したかを推定する。これにより、コントローラは、転写ベルトを用いて印刷したときの条件を考慮してベルトフィルミングの発生を検知することができる。
【0018】
第3の態様の画像形成装置によれば、コントローラは、累積加算した評価値が評価閾値以上の場合、ベルトフィルミングが転写ベルトに発生したと判定するため、光学センサを用いることなく、ベルトフィルミングの発生を迅速に検知することができる。
【0019】
第4の態様の画像形成装置によれば、コントローラは、適切なタイミングで、例えば、電源ON時やカバー開閉時に、転写ユニットの転写メモリから累積加算された評価値を読み出して、転写ベルトに発生するベルトフィルミングの発生状態を評価することができる。また、使用途中の転写ユニットが画像形成装置から取り外された場合でも、転写ユニットの転写メモリに累積加算された評価値を保持させることができる。その結果、転写ユニットが再び画像形成装置に装着された場合に、コントローラは、転写ユニットの転写メモリから累積加算された評価値を読み出すことで、転写ベルトに発生するベルトフィルミングの発生状態を適切に評価することができる。
【0020】
第5の態様の画像形成装置によれば、機外湿度が湿度閾値を超えている場合には、用紙から発生する紙粉量が増加し、その付着力も高まるためベルトフィルミングが発生しやすくなる。従って、機外湿度が湿度閾値を超えている場合には、機外湿度が湿度閾値を超えていないときよりも大きい評価値を算出するように設定することによって、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することができる。
【0021】
第6の態様の画像形成装置によれば、印字速度が全速よりも遅い場合には、クリーニングローラの圧接箇所の機械的回収力が低下して、感光ドラムに付着した紙粉が残りやすくなる。そのため、感光ドラムと接触する転写ベルトへも紙粉が流出しやすくなる。従って、印字速度が全速よりも遅い場合には、印字速度に応じて全速印字時よりも大きい評価値を算出するように設定することによって、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することができる。
【0022】
第7の態様の画像形成装置によれば、リサイクル紙は、紙粉が脱落しやすく、リサイクル紙を用いると紙粉発生量が増加する。従って、印刷媒体の用紙種類がリサイクル紙である場合には、用紙種類が通常紙のときよりも大きい評価値を算出するように設定することによって、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することができる。
【0023】
第8の態様の画像形成装置によれば、ユーザは、表示部を介して、ベルトフィルミングが転写ベルトに発生した旨を容易に認識することができる。
【0024】
第9の態様のリサイクル判定装置によれば、転写メモリに記憶されている累積加算された評価値がリサイクル閾値を超えている場合には、転写ベルトに発生したベルトフィルミングがある程度進行していると推定して、転写ユニットのリサイクルをやめることができる。一方、転写メモリに記憶されている評価値がリサイクル閾値を超えていない場合には、転写ベルトにベルトフィルミングは発生していないと推定して、例えば短寿命用の転写ユニットとしてリサイクルすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成の一例を示す図である。
図2図1に示す画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】転写メモリに記憶される転写ユニット情報の一例を説明するブロック図である。
図4】本体メモリに記憶される情報の一例を説明するブロック図である。
図5】画像形成装置のコントローラが実行する評価値累計処理の一例を示すメインフローチャートである。
図6図5の機外湿度影響係数H取得処理の一例を示すサブフローチャートである。
図7】機外湿度テーブルの一例を示す図である。
図8図5の印字速度影響係数F取得処理の一例を示すサブフローチャートである。
図9】印字速度テーブルの一例を示す図である。
図10図5のメディアタイプ影響係数M取得処理の一例を示すサブフローチャートである。
図11】メディアタイプテーブルの一例を示す図である。
図12図5の印刷時の評価値算出処理の一例を示すサブフローチャートである。
図13図5の累積評価値算出処理の一例を示すサブフローチャートである。
図14】画像形成装置のコントローラが実行するベルトフィルミング発生推定処理の一例を示すフローチャートである。
図15】リサイクル判定装置の電気的構成を示すブロック図である。
図16】リサイクル判定装置の装置コントローラが実行するリサイクル判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態〕
[画像形成装置1の全体構成]
画像形成装置1の概略構成について図1および図2に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成の一例を示す図である。図2は、画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真方式のプリンタである。具体的には、画像形成装置1は、レーザプリンタまたはLEDプリンタである。画像形成装置1は、本体フレーム2、4つの現像カートリッジ3、ドラムカートリッジ4、転写ユニット5、電圧供給回路6、コントローラ7、ディスプレイ8、および機外湿度センサ81を備える。
【0027】
本体フレーム2は、挿入口21と、カバー22とを有する。カバー22は、挿入口21を開放する開放位置と、挿入口21を閉鎖する閉鎖位置との間で、回動可能である。画像形成装置1は、カバー22が開放位置から閉鎖位置へ回動したことを検知するカバーセンサ23を有する。カバーセンサ23は、カバー22が開放位置から閉鎖位置へ回動したことを検知した場合、その検知信号を、コントローラ7へ送信する。
【0028】
4つの現像カートリッジ3は、ドラムカートリッジ4に対して、個別に着脱可能である。また、4つの現像カートリッジ3が装着されたドラムカートリッジ4は、本体フレーム2に対して、挿入口21を介して、着脱可能である。すなわち、4つの現像カートリッジ3は、ドラムカートリッジ4に装着された状態で、本体フレーム2に対して、着脱可能である。
【0029】
4つの現像カートリッジ3は、それぞれ、現像ローラ31を有する。ドラムカートリッジ4は、4つの感光ドラム41を有する。ドラムカートリッジ4に現像カートリッジ3が装着されると、現像ローラ31は、感光ドラム41に接触する。4つの現像カートリッジ3は、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、およびブラックの各色)の現像剤を収容する。
【0030】
転写ユニット5は、感光ドラム41から用紙(印刷媒体)へ、現像剤を転写するためのユニットである。転写ユニット5は、本体フレーム2に対して、着脱可能である。転写ユニット5は、第1プーリ51a、第2プーリ51b、転写ベルト52、および4つの転写ローラ53を有する。転写ベルト52は、無端状の平ベルトである。転写ベルト52は、第1プーリ51aと第2プーリ51bとの間に掛け渡されている。第1プーリ51aは、図示を省略したモータから出力される動力により、回転する。そうすると、第1プーリ51aと第2プーリ51bとの間で、転写ベルト52が回転する。第2プーリ51bは、転写ベルト52の回転に従って、回転する。
【0031】
転写ローラ53は、感光ドラム41から用紙へ、現像剤を転写させるためのローラである。本体フレーム2に転写ユニット5が装着され、かつ、4つの現像カートリッジ3が装着されたドラムカートリッジ4が本体フレーム2に装着された状態において、転写ベルト52の一部は、感光ドラム41と転写ローラ53との間に位置する。
【0032】
電圧供給回路6は、転写ローラ53へ電圧を供給するための電気回路である。図2に示すように、電圧供給回路6は、コントローラ7と電気的に接続されている。また、本体フレーム2に転写ユニット5が装着された状態において、電圧供給回路6は、4つの転写ローラ53と電気的に接続される。
【0033】
コントローラ7は、画像形成装置1の本体フレーム2内に位置する。図2に示すように、コントローラ7は、CPU等のプロセッサ71と、本体メモリ72とを有する。本体メモリ72は、情報の読み出しおよび書き込みが可能な記憶媒体である。プロセッサ71は、本体メモリ72からの情報の読み出しと、本体メモリ72への情報の書き込みと、を実行可能である。コントローラ7は、本体メモリ72に記憶されたプログラムに従ってプロセッサ71が動作することにより、画像形成装置1における諸処理を実行する。
【0034】
ディスプレイ8は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイである。ディスプレイ8は、コントローラ7と電気的に接続されている。ディスプレイ8は、コントローラ7からの指令に従って、画像形成装置1の動作に関する種々の情報を画面上に表示する。ディスプレイ8は、表示部の一例として機能する。
【0035】
機外湿度センサ81は、本体フレーム2の外部の湿度を検出するセンサである。機外湿度センサ81は、例えば、本体フレーム2の後側の側面に配置されている。図2に示すように、機外湿度センサ81は、コントローラ7に電気的に接続され、検出した湿度に応じた信号をコントローラ7へ出力する。機外湿度センサ81は、湿度センサの一例として機能する。
【0036】
また、図2に示すように、コントローラ7は、第1プーリ51aの回転数を検出する第1プーリ回転センサ82と、通信インタフェース83と、電気的に接続されている。第1プーリ回転センサ82は、例えば、第1プーリ52aの回転軸の一端側に同軸に取り付けられている。第1プーリ回転センサ82は、コントローラ7に電気的に接続され、検出した第1プーリ51aの回転数に応じた信号をコントローラ7へ出力する。
【0037】
また、通信インタフェース83は、LAN等のネットワークに接続され、画像形成装置1用のドライバが組み込まれたPC等の外部装置との接続を可能にしている。コントローラ7は、通信インタフェース83を介して、印刷ジョブを受信可能である。また、コントローラ7は、受信した印刷ジョブを本体メモリ72に記憶する。印刷ジョブには、画像形成するための画像データ、画像形成に用いる用紙のサイズ及び種類等(以下、「メディアタイプ」ともいう。)、用紙に画像を形成するために必要な各種情報が含まれている。
【0038】
図1および図2に示すように、転写ユニット5は、転写メモリ54を有する。転写メモリ54は、情報の読み出しおよび書き込みが可能な記憶媒体である。本体フレーム2に転写ユニット5が装着された場合、転写メモリ54は、コントローラ7と電気的に接続される。その結果、コントローラ7は、転写メモリ54からの情報の読み出しと、転写メモリ54への情報の書き込みと、を実行することが可能となる。
【0039】
転写メモリ54には、転写ユニット5に関する転写ユニット情報500が記憶される。ここで、転写ユニット情報500の一例について図3に基づいて説明する。図3は、転写メモリ54に記憶される転写ユニット情報500の一例を説明するブロック図である。図3に示すように、転写ユニット情報500は、ユニットID501、ベルト累積回転数502、累積評価値503などから構成されている。
【0040】
ユニットID501は、転写ユニット5を識別するための固有の識別情報を表す情報の一例である。ユニットID501は、各転写ユニット5に固有のシリアルナンバーであってもよい。ベルト累積回転数502は、第1プーリ回転センサ82から入力された第1プーリ51aの回転数から算出された転写ベルト52の回転数が累積加算された情報の一例である。累積評価値503は、後述のように、印刷ジョブ毎にベルトフィルミングの発生の有無を判定する評価値が累積加算された情報の一例である(図13参照)。
【0041】
また、図4に示すように、本体メモリ72は、転写ユニット情報701と、装置ID702と、係数情報703と、第1枚数カウンタ704と、第2枚数カウンタ705と、を記憶している。転写ユニット情報701は、画像形成装置1に装着された転写ユニット5の転写メモリ54から読み出された転写ユニット情報500である。また、装置ID702は、個々の画像形成装置1を識別するための固有の識別情報を表す情報の一例である。装置ID702は、各画像形成装置1に固有のシリアルナンバーであってもよい。
【0042】
係数情報703は、後述の機外湿度テーブル(図7参照)、印字速度テーブル(図9参照)、メディアタイプテーブル(図11参照)などを記憶している。第1枚数カウンタ704は、印刷中における印刷ジョブの印刷枚数である。第2枚数カウンタ705は、画像形成装置1における印刷枚数の累計である。
【0043】
[評価値累計処理]
次に、上記のように構成された画像形成装置1のコントローラ7が実行する評価値累計処理の一例について図5図13に基づいて説明する。図5は、画像形成装置1のコントローラ7が実行する評価値累計処理の一例を示すメインフローチャートである。図6は、図5の機外湿度影響係数H取得処理の一例を示すサブフローチャートである。図7は、機外湿度テーブルの一例を示す図である。図8は、図5の印字速度影響係数F取得処理の一例を示すサブフローチャートである。図9は、印字速度テーブルの一例を示す図である。
【0044】
図10は、図5のメディアタイプ影響係数M取得処理の一例を示すサブフローチャートである。図11は、メディアタイプテーブルの一例を示す図である。図12は、図5の印刷時の評価値算出処理の一例を示すサブフローチャートである。図13は、図5の累積評価値算出処理の一例を示すサブフローチャートである。図5図13にフローチャートで示されるプログラムは、予め本体メモリ72に記憶されている。また、コントローラ7は、通信インタフェース83を介して、印刷ジョブを受け付けた際に、評価値累計処理のプログラムを起動して、ステップS11の処理に進む。
【0045】
図5に示すように、ステップS11において、コントローラ7は、印刷ジョブの印刷を行っているか否かを判定する。そして、コントローラ7は、印刷ジョブの印刷を行っていないと判定した場合は(S11:NO)、評価値累計処理を終了する。
【0046】
一方、コントローラ7は、印刷ジョブの印刷を行っていると判定した場合は(S11:YES)、ステップS12の処理に進む。ステップS12において、コントローラ7は、後述の機外湿度影響係数H取得処理(図6参照)を実行した後、ステップS13の処理に進む。ステップS13において、コントローラ7は、後述の印字速度影響係数F取得処理(図8参照)を実行した後、ステップS14の処理に進む。
【0047】
ステップS14において、コントローラ7は、後述のメディアタイプ影響係数H取得処理(図10参照)を実行した後、ステップS15の処理に進む。ステップS15において、コントローラ7は、後述の印刷時の評価値算出処理(図12参照)を実行した後、ステップS16の処理に進む。ステップS16において、コントローラ7は、後述の累計評価値算出処理(図13参照)を実行した後、評価値累計処理を終了する。
【0048】
[機外湿度影響係数H取得処理]
次に、機外湿度影響係数H取得処理について図6および図7に基づいて説明する。図6に示すように、ステップS121において、コントローラ7は、機外湿度センサ81の出力値を取得する。具体的には、コントローラ7は、機外湿度センサ81により検出された本体フレーム2の外部の湿度を取得する。その後、コントローラ7は、ステップS122の処理に進む。
【0049】
ステップS122において、コントローラ7は、ステップS121で取得した現在の機外湿度に対応する機外湿度影響係数Hを、本体メモリ72の係数情報703に記憶される機外湿度テーブル(図7参照)から読み出し、本体メモリ72に記憶する。その後、コントローラ7は、機外湿度影響係数H取得処理のサブ処理を終了してメインフローチャートに戻り、ステップS13の処理に進む。
【0050】
機外湿度影響係数Hは、機外湿度に応じて設定された係数である。機外湿度影響係数Hは、評価値算出処理で使用される。機外湿度が高くなるほど、ベルトフィルミングは発生しやすくなるので、機外湿度影響係数Hは、湿度がベルトフィルミングの発生に与える影響を評価値に反映させるための係数である。なお、機外湿度は「条件」の一例である。
【0051】
ここで、機外湿度テーブルの一例について図7に基づいて説明する。図7に示すように、機外湿度テーブルは、「機外湿度(%)」と、機外湿度に対応する「機外湿度影響係数H」とが記憶されている。例えば、「機外湿度(%)」が0[%]~50[%]の場合は、「機外湿度影響係数H」には、「1」が記憶されている。また、「機外湿度(%)」が50.1[%]~80[%]の場合は、「機外湿度影響係数H」には、「1.2」が記憶されている。また、「機外湿度(%)」が80.1[%]~100[%]の場合は、「機外湿度影響係数H」には、「1.5」が記憶されている。
【0052】
また、機外湿度が、湿度閾値、例えば、50[%]を超えている場合には、用紙から発生する紙粉量が増加し、その付着力も高まるためベルトフィルミングが発生しやすくなる。従って、機外湿度が湿度閾値50[%]を超えている場合には、「機外湿度影響係数H」に、機外湿度が湿度閾値50[%]を超えていないときの「1」よりも大きい「1.2」、「1.5」が記憶されている。また、機外湿度が湿度閾値50[%]を超えている場合には、「機外湿度影響係数H」は、機外湿度が高くなるに伴って大きな値に設定されている。すなわち、「機外湿度影響係数H」は、機外湿度が高くなるに伴って大きな値に設定されている。
【0053】
[印字速度影響係数F取得処理]
次に、印字速度影響係数F取得処理について図8および図9に基づいて説明する。図8に示すように、ステップS131において、コントローラ7は、現在の印字速度を取得した後、ステップS132の処理に進む。例えば、コントローラ7は、ユーザが予めディスプレイ8などが有する操作部を介して設定した印字速度を本体メモリ72から読み出した後、ステップS132の処理に進む。ステップS131の処理は、印字速度取得処理の一例である。
【0054】
ステップS132において、コントローラ7は、ステップS131で取得した現在の印字速度に対応する印字速度影響係数Fを、本体メモリ72の係数情報703に記憶される印字速度テーブル(図9参照)から読み出し、本体メモリ72に記憶する。その後、コントローラ7は、印字速度影響係数F取得処理のサブ処理を終了してメインフローチャートに戻り、ステップS14の処理に進む。
【0055】
印字速度影響係数Fは、印字速度に応じて設定された係数である。印字速度影響係数Fは、評価値算出処理で使用される。印字速度が遅くなるほど、ベルトフィルミングは発生しやすくなるので、印字速度影響係数Fは、印字速度がベルトフィルミングの発生に与える影響を評価値に反映させるための係数である。なお、印字速度は「条件」の一例である。
【0056】
ここで、印字速度テーブルの一例について図9に基づいて説明する。図9に示すように、印字速度テーブルは、「印字速度」と、印字速度に対応する「印字速度影響係数F」とが記憶されている。例えば、「印字速度」が「全速」の場合は、「印字速度影響係数F」には、「1」が記憶されている。また、「印字速度」が全速の半分の「半速」の場合は、「印字速度影響係数F」には、「1.1」が記憶されている。また、「印字速度」が全速の1/3の「1/3速」の場合は、「印字速度影響係数F」には、「1.2」が記憶されている。
【0057】
また、印字速度が「全速」よりも遅い場合には、図示しないクリーニングローラの圧接箇所の機械的回収力が低下して、感光ドラム41に付着した紙粉が残りやすくなる。そのため、感光ドラム41と接触する転写ベルト52へも紙粉が流出しやすくなる。従って、印字速度が「全速」よりも遅い場合には、「印字速度影響係数F」に、印字速度が「全速」のときの「1」よりも大きい「1.1」、「1.2」が記憶されている。また、印字速度が「全速」よりも遅い場合には、印字速度が遅くなるに伴って大きな値に設定されている。すなわち、印字速度影響係数Fは、印字速度が遅くなるに伴って大きな値になるように設定されている。
【0058】
[メディアタイプ影響係数M取得処理]
次に、メディアタイプ影響係数M取得処理について図10および図11に基づいて説明する。図10に示すように、ステップS141において、コントローラ7は、現在の印刷ジョブのメディアタイプ、つまり、用紙種類を取得した後、ステップS142の処理に進む。例えば、コントローラ7は、印刷ジョブに含まれる用紙種類を本体メモリ72から読み出した後、ステップS142の処理に進む。ここで、ステップS141の処理は、用紙種類取得処理の一例である。
【0059】
ステップS142において、コントローラ7は、ステップS141で取得した現在のメディアタイプに対応するメディアタイプ影響係数Mを、本体メモリ72の係数情報703に記憶されるメディアタイプテーブル(図11参照)から読み出し、本体メモリ72に記憶する。その後、コントローラ7は、メディアタイプ影響係数M取得処理のサブ処理を終了してメインフローチャートに戻り、ステップS15の処理に進む。
【0060】
メディアタイプ影響係数Mは、メディアタイプに応じて設定された係数である。メディアタイプによって、ベルトフィルミングの発生しやすさが変わるので、メディアタイプ影響係数Mは、メディアタイプによるベルトフィルミングの発生に与える影響を評価値に反映させるための係数である。なお、メディアタイプは「条件」の一例である。
【0061】
ここで、メディアタイプテーブルの一例について図11に基づいて説明する。図11に示すように、メディアタイプテーブルは、「メディアタイプ」と、メディアタイプに対応する「メディアタイプ影響係数M」とが記憶されている。例えば、「メディアタイプ」が「plain」、つまり、「通常紙」の場合は、「メディアタイプ影響係数M」には、「1」が記憶されている。
【0062】
また、「メディアタイプ」が「thin」、つまり、「薄い紙」の場合、および、「thick」、つまり、「厚い紙」の場合は、「メディアタイプ影響係数M」には、「1」が記憶されている。また、「メディアタイプ」が「recycle」、つまり、「リサイクル紙」の場合は、「メディアタイプ影響係数M」には、「1.5」が記憶されている。
【0063】
また、リサイクル紙は、紙粉が脱落しやすく、リサイクル紙を用いると紙粉発生量が増加する。従って、「メディアタイプ」が「recycle」、つまり、「リサイクル紙」の場合には、「メディアタイプ影響係数M」に、「メディアタイプ」が「Plane」、つまり、通常紙のときの「1」よりも大きい「1.5」が記憶されている。
【0064】
[印刷時の評価値算出処理]
次に、印刷時の評価値算出処理について図12に基づいて説明する。図12に示すように、ステップS151において、コントローラ7は、現在の印刷ジョブの印刷枚数Pをカウントした後、ステップS152の処理に進む。
【0065】
ステップS152において、コントローラ7は、上記ステップS122で取得して機外湿度影響係数Hと、上記ステップS132で取得した印字速度影響係数Fと、上記ステップS142で取得したメディアタイプ影響係数Mと、を本体メモリ72から読み出す。そして、コントローラ7は、今回の印刷ジョブによって転写ベルト52に発生したベルトフィルミングを評価する評価値XNを下記式(1)により算出して本体メモリ72に記憶する。
【0066】
XN=(H+F+M)×P ・・・・(1)
H:機外湿度影響係数H、F:印字速度影響係数F、M:メディアタイプ影響係数M、P:印刷ジョブの印刷枚数P[枚]とする。
【0067】
その後、コントローラ7は、印刷時の評価値算出処理を終了してメインフローチャートに戻り、ステップS16の処理に進む。ここで、印刷時の評価値算出処理は、算出処理の一例である。
【0068】
[累積評価値算出処理]
次に、累積評価値算出処理について図13に基づいて説明する。図13に示すように、ステップS161において、コントローラ7は、上記ステップS152で算出した評価値XNを本体メモリ72から読み出す。続いて、コントローラ7は、この評価値XNがゼロであるか否かを判定する。そして、コントローラ7は、評価値XNがゼロであると判定した場合は(S161:YES)、累積評価値算出処理を終了してメインフローチャートに戻り、評価値累積処理を終了する。
【0069】
一方、コントローラ7は、評価値XNがゼロでないと判定した場合は(S161:NO)、ステップS162の処理に進む。ステップS162において、コントローラ7は、本体メモリ72の転写ユニット情報701から累積評価値Xを読み出す。また、コントローラ7は、上記ステップS152で算出した評価値XNを本体メモリ72から読み出す。そして、コントローラ7は、累積評価値Xを下記式(2)により算出して、再度、本体メモリ72の転写ユニット情報701に「累積評価値X」として記憶した後、ステップS163の処理に進む。
【0070】
X=X+XN ・・・・(2)
X:累積評価値、XN:評価値とする。
【0071】
ステップS163において、コントローラ7は、上記式(2)により算出した累積評価値Xを、転写メモリ54の転写ユニット情報500を構成する累積評価値503に上書き記憶する。その後、コントローラ7は、累積評価値算出処理を終了してメインフローチャートに戻り、評価値累積処理を終了する。ここで、累積評価値算出処理は、累積加算処理の一例である。ステップS163の処理は、記憶処理の一例である。
【0072】
[ベルトフィルミング発生推定処理]
次に、画像形成装置1のコントローラ7が実行するベルトフィルミング発生推定処理の一例について図14に基づいて説明する。図14は、画像形成装置1のコントローラ7が実行するベルトフィルミング発生推定処理の一例を示すフローチャートである。図14にフローチャートで示されるプログラムは、予め本体メモリ72に記憶されている。ベルトフィルミング発生推定処理は、推定処理および推定ステップの一例である。
【0073】
図14に示すように、ステップS201において、コントローラ7は、電源がオフからオンにされたかを判定する。電源がオフからオンにされたと判定しなかった場合は(S201:NO)、ステップS202の処理に進む。
【0074】
ステップS202において、コントローラ7は、カバーセンサ23からカバー22が開放位置から閉鎖位置へ回動したことを検知した検知信号が入力されたか否かを判定する。そして、コントローラ7は、カバー22が開閉されていないと判定した場合は(S202:NO)、ベルトフィルミング発生推定処理を終了する。
【0075】
一方、上記ステップS201で、コントローラ7は、電源がオフからオンにされたと判定した場合は(S201:YES)、ステップS203の処理に進む。また、上記ステップS202で、コントローラ7は、カバー22が開放位置から閉鎖位置へ回動されたと判定した場合は(S202:YES)、ステップS203の処理に進む。
【0076】
ステップS203において、コントローラ7は、転写ユニット5の転写メモリ54から転写ユニット情報500を読み出す。そして、コントローラ7は、転写ユニット情報500から累積評価値Xを読み出した後、ステップS204の処理に進む。なお、ステップS203において、コントローラ7は、本体メモリ72の転写ユニット情報701から累積評価値Xを読み出した後、ステップS204の処理に進むようにしてもよい。
【0077】
ステップS204において、コントローラ7は、累積評価値Xが評価閾値XMAX以上であるか否かを判定する。なお、評価閾値XMAXは、予め本体メモリ72に記憶されている。そして、コントローラ7は、累積評価値Xが評価閾値XMAX未満であると判定した場合は(S204:NO)、ベルトフィルミングが転写ベルト52に発生していないと推定して、ステップS205の処理に進む。ステップS205において、コントローラ7は、印刷ジョブなどの動作要求を待つ状態に設定した後、ベルトフィルミング発生推定処理を終了する。ここで、評価閾値XMAXは、評価閾値の一例である。
【0078】
一方、上記ステップS204で、コントローラ7は、累積評価値Xが評価閾値XMAX以上であると判定した場合は(S204:YES)、ベルトフィルミングが転写ベルト52に発生したと推定して、ステップS206の処理に進む。ステップS206において、コントローラ7は、ベルトフィルミングが発生したため、転写ベルト52の交換が必要である旨をディスプレイ8に表示した後、ベルトフィルミング発生推定処理を終了する。これにより、ユーザは、ディスプレイ8を介して、ベルトフィルミングが転写ベルト52に発生した旨を容易に認識することができる。ここで、ステップS206の処理は、表示処理の一例である。
【0079】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る画像形成装置1では、コントローラ7は、転写ベルト52を使って印刷する場合に、印刷枚数Pと、ベルトフィルミングが転写ベルト52に発生しやすい条件、例えば、機外湿度と、印字速度と、メディアタイプ(用紙種類)とを取得する。そして、コントローラ7は、印刷枚数Pと、例えば、機外湿度と、印字速度と、メディアタイプ(用紙種類)とに基づいて、ベルトフィルミングが転写ベルト52に発生したかを推定することができる。これにより、コントローラ7は、光学センサを用いることなく、ベルトフィルミングの発生を検知することができる。
【0080】
また、コントローラ7は、印刷枚数Pと、例えば、機外湿度と、印字速度と、メディアタイプ(用紙種類)とに基づいて、評価値XNを算出し、累積加算する。そして、コントローラ7は、累積加算した累積評価値Xに基づいて、ベルトフィルミングが転写ベルト52に発生したかを推定する。これにより、コントローラ7は、ベルトフィルミングを転写ベルト52に発生しやすくさせる条件を考慮してベルトフィルミングの発生を検知することができる。
【0081】
また、コントローラ7は、累積加算した累積評価値Xが評価閾値XMAX以上の場合、ベルトフィルミングが転写ベルト52に発生したと判定するため、光学センサを用いることなく、ベルトフィルミングの発生を迅速に検知することができる。
【0082】
また、コントローラ7は、適切なタイミングで、例えば、電源ON時やカバー22の開閉時に、転写メモリ54から累積加算された累積評価値Xを読み出して、転写ベルト52に発生するベルトフィルミングの発生状態を評価することができる。また、使用途中の転写ベルト52が画像形成装置1から取り外された場合でも、転写ベルト52の転写メモリ54に累積加算された累積評価値Xを保持させることができる。その結果、転写ベルト52が再び画像形成装置1に装着された場合に、コントローラ7は、転写メモリ54から累積加算された累積評価値Xを読み出すことで、転写ベルト52に発生するベルトフィルミングの発生状態を適切に評価することができる。
【0083】
また、機外湿度が湿度閾値、例えば、50[%]を超えている場合には、用紙から発生する紙粉量が増加し、その付着力も高まるためベルトフィルミングが発生しやすくなる。従って、機外湿度が湿度閾値を超えている場合には、機外湿度が湿度閾値を超えていないときよりも大きい機外湿度影響係数Hを設定することによって、評価値XNが大きく算出されるように設定することができる。その結果、コントローラ7は、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することができる。
【0084】
また、印字速度が「全速」よりも遅い場合には、図示しないクリーニングローラの圧接箇所の機械的回収力が低下して、感光ドラム41に付着した紙粉が残りやすくなる。そのため、感光ドラム41と接触する転写ベルト52へも紙粉が流出しやすくなる。従って、印字速度が「全速」よりも遅い場合には、印字速度に応じて全速印字時よりも大きい印字速度影響係数Fを設定することによって、評価値XNが大きく算出されるように設定することができる。その結果、コントローラ7は、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することができる。
【0085】
また、リサイクル紙は、紙粉が脱落しやすく、リサイクル紙を用いると紙粉発生量が増加する。従って、メディアタイプ(用紙種類)がリサイクル紙である場合には、メディアタイプが通常紙のときよりも大きいメディアタイプ影響係数Mを設定することによって、評価値XNが大きく算出されるように設定することができる。その結果、コントローラ7は、ベルトフィルミングの発生を正確に評価することができる。
【0086】
また、画像形成装置1のユーザは、転写ユニット5の供給者との間で、転写ユニット5に関するサブスクリプション契約を締結することが可能である。ユーザと供給者の間で、サブスクリプション契約が締結されている場合、ベルトフィルミングが転写ベルト52に発生したときに、ユーザは、画像品質の維持のために、適切なタイミングで転写ユニット5を交換できる。また、ユーザは、ユーザの使用条件によっては交換頻度を減らすことが可能となる。
【0087】
[リサイクル判定装置の概略構成]
次に、転写ユニット5をリサイクル、あるいは修理などして、ユーザに供給する場合にも上述のベルトフィルミング発生推定処理に相当する処理を実行することが考えられる。以下の説明では、ベルトフィルミング発生推定処理に相当する処理としてリサイクル判定処理を考える。図15は、リサイクル判定装置101の電気的構成を示すブロック図である。なお、リサイクル判定装置101は、画像形成装置1を生産する工場や、転写ユニット5をリサイクルして、ユーザに供給する工場などに設置されている。
【0088】
図15に示すように、リサイクル判定装置101は、装置コントローラ102やディスプレイ103等を備えている。装置コントローラ102は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを備えている。リサイクル判定装置101としては、例えば、PC(Personal Computer)などが採用され得る。
【0089】
装置コントローラ102は、転写ユニット5の転写メモリ54と電気的に接続可能である。装置コントローラ102は、転写ユニット5の転写メモリ54が電気的に接続された場合は、転写メモリ54の転写ユニット情報500からの情報の読み出しと、転写メモリ54の転写ユニット情報500への情報の書き込みと、を実行することが可能となる。
【0090】
ディスプレイ103は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイである。ディスプレイ103は、装置コントローラ102と電気的に接続されている。ディスプレイ103は、装置コントローラ102からの指令に従って、リサイクル判定装置101の動作に関する種々の情報を画面上に表示する。
【0091】
[リサイクル判定処理]
次に、上記のように構成されたリサイクル判定装置101の装置コントローラ102が実行するリサイクル判定処理の一例について図16に基づいて説明する。図16は、リサイクル判定装置101の装置コントローラ102が実行するリサイクル判定処理の一例を示すフローチャートである。図16にフローチャートで示されるプログラムは、予めROMに記憶されている。また、装置コントローラ102は、転写ユニット5の転写メモリ54が電気的に接続された際に、リサイクル判定処理のプログラムを起動して、ステップS301の処理に進む。
【0092】
ステップS301において、装置コントローラ102は、転写ユニット5の転写メモリ54から転写ユニット情報500を読み出す。そして、装置コントローラ102は、転写ユニット情報500を構成する累積評価値503から累積評価値Xを読み出した後、ステップS302の処理に進む。
【0093】
ステップS302において、装置コントローラ102は、累積評価値Xがリサイクル閾値XRを超えているか否かを判定する。なお、リサイクル閾値XRは、予め装置コントローラ102のROMに記憶されている。また、リサイクル閾値XRは、評価閾値XMAXと同じ値であってもよいし、評価閾値XMAXよりも少ない値であることが好ましい。ここで、リサイクル閾値XRは、リサイクル閾値の一例である。
【0094】
そして、装置コントローラ102は、累積評価値Xがリサイクル閾値XRを超えていないと判定した場合は(S302:NO)、転写ユニット5のリサイクルは可能であると判定して、ステップS303の処理に進む。つまり、装置コントローラ102は、ベルトフィルミングが転写ベルト52に発生していないと推定して、ステップS303の処理に進む。
【0095】
ステップS303において、装置コントローラ102は、転写ユニット5のリサイクルは可能である旨をディスプレイ103に表示した後、リサイクル判定処理を終了する。例えば、装置コントローラ102は、ディスプレイ103に、「寿命判定:リサイクル可」と表示して、転写ユニット5のリサイクルは可能である旨を報知する。
【0096】
一方、装置コントローラ102は、累積評価値Xがリサイクル閾値XRを超えていると判定した場合は(S302:YES)、転写ユニット5のリサイクルは不可であると判定して、ステップS304の処理に進む。つまり、装置コントローラ102は、転写ベルト52に発生したベルトフィルミングがある程度進行していると推定して、ステップS304の処理に進む。
【0097】
ステップS304において、装置コントローラ102は、転写ユニット5のリサイクルは不可である旨をディスプレイ103に表示した後、リサイクル判定処理を終了する。例えば、装置コントローラ102は、ディスプレイ103に、「寿命判定:リサイクル不可」と表示して、転写ユニット5のリサイクルは不可である旨を報知する。
【0098】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るリサイクル判定装置101では、転写ユニット5の転写メモリ54に記憶されている累積加算された累積評価値Xがリサイクル閾値XRを超えている場合には、転写ベルト52に発生したベルトフィルミングがある程度進行していると推定して、転写ユニット5のリサイクルをやめることができる。一方、転写メモリ54に記憶されている累積評価値Xがリサイクル閾値XRを超えていない場合には、転写ベルト52にベルトフィルミングは発生していないと推定して、例えば短寿命用の転写ユニット5としてリサイクルすることが可能となる。
【0099】
[変形例1]
前記実施形態では、転写ユニット5が感光ドラム41との間で用紙を搬送する転写ベルト52を備える構成であったが、これに限定されない。例えば、転写ユニットは、転写ベルト52の代わりに、いわゆる中間転写ベルトと、中間転写ベルト上のトナー像を用紙に転写する2次転写ローラとを備える構成であってもよい。転写ユニットが、いわゆる中間転写ベルトを備える構成であっても、コントローラ7は、前記実施形態と同様に、評価値累計処理(図6参照)を実行して累積評価値Xを取得してもよい。そして、コントローラ7は、取得した累積評価値Xを転写ユニットの転写メモリ54に記憶するようにしてもよい。
【0100】
また、コントローラ7は、前記実施形態と同様に、ベルトフィルミング発生推定処理(図14参照)を実行してもよい。これにより、コントローラ7は、ベルトフィルミングがいわゆる中間転写ベルトに発生したかを推定することができる。これにより、コントローラ7は、光学センサを用いることなく、ベルトフィルミングの発生を検知することができる。
【0101】
[変形例2]
例えば、コントローラ7は、機外湿度と、印字速度と、メディアタイプ(用紙種類)とのうちの1つ、または2つの組み合わせと、印刷枚数Pとに基づいて評価値XNを算出するようにしてもよい。これにより、コントローラ7は、光学センサを用いることなく、印刷枚数と、ベルトフィルミングが発生しやすい条件とに基づいて、ベルトフィルミングの発生を推定することができる。
【0102】
[変形例3]
また、前記実施形態では、転写ユニット5が転写メモリ54を有していたが、これに限られない。例えば、本体メモリ72が、転写ユニット5に関する転写ユニット情報500を記憶していてもよい。
【0103】
[変形例4]
また、前記実施形態では、コントローラ7は、電源がオフからオンにされたと判定した場合、または、上記ステップS202で、コントローラ7は、カバー22が開放位置から閉鎖位置へ回動されたと判定した場合、ベルトフィルミング発生推定処理を実行していたが、これに限られない。例えば、印刷ジョブの終了時に、ベルトフィルミング発生推定処理を実行してもよい。
【0104】
[変形例5]
また、前記実施形態では、画像形成装置1は、第1プーリ51aの回転数を検出する第1プーリ回転センサ82を有していたが、これに限られない。例えば、コントローラ7は、第1プーリ51を回転させるモータの回転数をもとに、第1プーリ51の回転数を算出してもよい。
【0105】
[変形例6]
前記実施形態では、画像形成装置1は、カラープリンタであったが、これに限定されない。例えば、画像形成装置は、モノクロプリンタであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、複写機や複合機であってもよい。
【0106】
〔付記事項〕
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1 画像形成装置、5 転写ユニット、7 コントローラ、8 ディスプレイ、41 感光ドラム、52 転写ベルト、54 転写メモリ、81 機外湿度センサ、101 リサイクル判定装置、102 装置コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16