(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147391
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】空調吹き出し装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/06 20060101AFI20241008BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F24F13/06 D
F24F13/06 A
F24F13/06 E
F24F13/22 221
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060362
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】重松 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木場 隆之
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080BA01
3L080BB01
3L080BE02
3L080BE04
(57)【要約】
【課題】吹き出し方向の偏りを無くすことで特定の方向への混合空気の吹き出し量が弱まることを防ぎ、吹出口部の結露を防止することができる空調吹き出し装置を提供する。
【解決手段】空調吹き出し装置100は、略直方体のボックス部10と、水平方向に長く開口するスリット状のノズル開口21が設けられたノズル20と、ノズル開口21が、開口11と一定距離をおいて開口11と対向する位置に設けられるように、ボックス部10とノズル20とを固定する固定部材30と、ボックス部10内に設けられ、開口11からボックス部10内に流入した一次空気SAおよび周囲空気AAの気流の方向を90度変えて吹出開口12へ誘導するガイド壁13と、を有し、吹出開口12付近に位置するガイド壁13の他端が、ボックス部10の平面視で、吹出開口12の領域に重なるようにガイド壁13が設けられたものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体のボックス部であって、上面と、前記上面と対向し吹出開口が設けられた底面と、4つの側面のうち、開口が設けられた正面と、前記正面と対向する背面および残りの面(以下それぞれ「左側面」および「右側面」という)と、からなるボックス部と、
水平方向に長く開口するスリット状のノズル開口が設けられたノズルと、
前記ノズル開口が、前記開口と一定距離をおいて前記開口と対向する位置に設けられるように、前記ボックス部と前記ノズルとを固定する固定部材と、
前記ボックス部内に設けられ、前記開口から前記ボックス部内に流入した、前記ノズル開口から流出された一次空気と前記一次空気により誘引された周囲空気の気流の方向を90度変えて、一次空気と周囲空気の混合空気を前記吹出開口へ誘導するガイド壁であり、一端が前記正面に設けられた前記開口付近に位置し、他端が前記底面に設けられた吹出開口付近に位置する湾曲または/および屈曲したガイド壁と、を有し、
前記吹出開口付近に位置する前記ガイド壁の他端が、前記ボックス部の平面視で、前記吹出開口の領域に重なるように前記ガイド壁が設けられた空調吹き出し装置。
【請求項2】
前記ガイド壁と、前記左側面および前記右側面との間に隙間が設けられた請求項1に記載の空調吹き出し装置。
【請求項3】
前記開口に連結し、内面に消音材が設けられた消音ダクトを有する請求項1に記載の空調吹き出し装置。
【請求項4】
前記吹出開口に連結し、前記混合空気を水平方向に吹き出す吹出口部と、
前記吹出口部により吹き出された前記混合空気を水平方向に拡散するプレートと、を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の空調吹き出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調対象空間において周囲空気を誘引しつつ吹出口より混合空気を吹き出す空調吹き出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー化を図ることを目的として、空調対象空間に設置し、ダクト等の周囲の空気を誘引して、一次空気と混合して空調対象空間に供給する誘引装置が知られている。また、このような誘引装置として、空調機と接続されるダクトの末端にノズルを接続し、その下流に一次空気と誘引空気とを取り入れ、吹出口に混合空気を供給する誘引混合型吹出装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、このような誘引混合型空気吹出し装置が記載されている。そして、この誘引混合型空気吹出し装置は内部に円弧状のガイド壁28aを有しており、このガイド壁が、流入した混合空気が流れる方向を約90度変えて吹き出す構造となっている(
図1,10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の誘引混合型空気吹出し装置は、ガイド壁28aの下流側(ボックス部16内を流れる一次空気Tおよび誘引空気Rの気流の下流側)の端面が、ボックス部16の底面の吹出開口の周縁部に位置するように設けられているため(
図4参照)、一次空気Tと一次空気Tにより誘引された誘引空気Rとがボックス部16内に流入した後、ガイド壁28aに沿って流れ、ガイド壁28aの下流側の端面付近から気流がその進行方向側に偏って吹出口部14により吹き出される。そのため、
図10を参照して説明すると、例えば吹出口部14からボックス部16の開口18が形成された側面側に吹き出される混合空気の気流の勢いは、当該側面と対向する側面側に吹き出される混合空気の気流の勢いと比べると弱くなる(つまり、ボックス部16の開口18が形成された側面と対向する側面側に吹き出される混合空気の吹出量は減少する。)。
【0006】
このように吹き出し方向が偏ると、吹出口部14のうち吹出気流が弱まる方向(吹出量が減少する方向)の室内に露出した部分は、周囲空気が誘引されて、一次空気Tにより冷やされた当該部分に周囲空気が接触する。そうすると、冷房時における一次空気Tよりも温度の高い周囲空気が当該部分に接触することで、当該部分に接触した周囲空気内の湿度が凝縮し、当該部分に結露が発生するおそれがある。そして、吹出口部14に結露が発生すると、この結露が水滴となって空調対象空間に落下し、吹出口部14の下方にある書類が汚損したり、電子機器が破損したりするなどといった問題が生じてしまう。
なお、チューニング羽根28bをボックス部16内に突出させることで、吹き出し方向の偏りを減少させることができるが、突出させたチューニング羽根28bによりボックス部16内を流通する空気の流路が狭くなるため、圧力損失が上昇し、騒音が発生する可能性がある。
【0007】
よって、本発明は、吹き出し方向の偏りを無くすことで特定の方向への混合空気の吹き出し量が減少することを防ぎ、吹出口部の結露を防止することができる空調吹き出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空調吹き出し装置は、
略直方体のボックス部であって、上面と、前記上面と対向し吹出開口が設けられた底面と、4つの側面のうち、開口が設けられた正面と、前記正面と対向する背面および残りの面(以下それぞれ「左側面」および「右側面」という)と、からなるボックス部と、
水平方向に長く開口するスリット状のノズル開口が設けられたノズルと、
前記ノズル開口が、前記開口と一定距離をおいて前記開口と対向する位置に設けられるように、前記ボックス部と前記ノズルとを固定する固定部材と、
前記ボックス部内に設けられ、前記開口から前記ボックス部内に流入した、前記ノズル開口から流出された一次空気と前記一次空気により誘引された周囲空気の気流の方向を90度変えて、一次空気と周囲空気の混合空気を前記吹出開口へ誘導するガイド壁であり、一端が前記正面に設けられた前記開口付近に位置し、他端が前記底面に設けられた吹出開口付近に位置する湾曲または/および屈曲したガイド壁と、を有し、
前記吹出開口付近に位置する前記ガイド壁の他端が、前記ボックス部の平面視で、前記吹出開口の領域に重なるように前記ガイド壁が設けられたものである。
【0009】
ガイド壁は、斯かる構成となっているため、吹出開口は、ガイド壁の他端を境目として、ボックス部の背面側にある領域と正面側にある領域とに分けられる。そして、ボックス部内に流入した一次空気および周囲空気は、ガイド壁に沿って吹出開口の全面からではなく、このガイド壁の他端によって区切られた正面側にある領域から吹き出される。
【0010】
また、前記空調吹き出し装置は、
前記ガイド壁と、前記左側面および前記右側面との間に隙間が設けられた構成であることが好ましい。
【0011】
また、前記空調吹き出し装置は、
前記開口に連結し、内面に消音材が設けられた消音ダクトを有する構成であることが好ましい。
【0012】
また、前記空調吹き出し装置は、
前記吹出開口に連結し、前記混合空気を水平方向に吹き出す吹出口部と、
前記吹出口部により吹き出された前記混合空気を水平方向に拡散するプレートと、を有する構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空調吹き出し装置は、斯かる構成により、誘引開口からボックス部内に流入した一次空気および周囲空気は、ガイド壁に沿ってその気流の方向が90度変わって吹出開口へ誘導されると共に、ガイド壁に沿って吹出開口の全面からではなく、ガイド壁の他端によって区切られた正面側にある領域から吹き出されるため、特に正面、背面方向の気流の偏りをなくし、混合空気を全方向に放射状に均一に吹き出すことができ、吹出口部の結露を防止することができる。
このように、本発明の空調吹き出し装置は、吹出方向の偏りを無くすことで特定の方向(例えば正面方向)への混合空気の吹き出し量が減少することを防ぐことができるため、吹出口部の結露を防止することができる。また、ボックス部内に流入した一次空気および周囲空気は、吹出開口の全面から吹き出されなくなるため、ボックス部の底面の吹出開口の周囲部分に衝突する空気の量が減少し、圧力損失および騒音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の空調吹き出し装置の実施形態を示す六面図であり、(i)は正面図、(ii)は背面図、(iii)は平面図、(iv)は底面図、(v)は左側面図である。
【
図2】
図1(iii)のA-A一部省略断面図である。
【
図3】平面視の気流の流れを説明するための図である。
【
図4】ボックス部の底面における混合空気が衝突する部分を説明するための図である。
【
図5】本発明の空調吹き出し装置の別の実施形態を示す図であり、(i)は正面図、(ii)は背面図、(iii)は平面図、(iv)は底面図である。
【
図6】
図1(iii)のA-A一部省略断面図であり、別の形態の吹出口部を設けた実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。また、以下の説明において、上下左右や縦横などの記載は、その説明において参照される図面の上下左右や縦横などを意味する。
【0016】
[空調吹き出し装置100]
図1は、本発明の空調吹き出し装置の実施形態を示す六面図であり、(i)は正面図、(ii)は背面図、(iii)は平面図、(iv)は底面図、(v)は左側面図である。また、
図2は、
図1(iii)のA-A一部省略断面図である。
図1,2に示すように、空調吹き出し装置100は、ボックス部10と、ノズル20と、固定部材30と、ガイド壁13と、を有する。ボックス部10、ノズル20、固定部材30、およびガイド壁13は鉄板製であり、ボックス部10内面には、断熱材14が設けられている。本実施形態において、断熱材14は断熱性および消音性を備えたグラスウールを用いている。なお、ノズル20内面には断熱材22が設けられており、本実施形態では、断熱材22としてポリエチレンフォームを用いている。
【0017】
ボックス部10は、正面10a、背面10b、上面10c、底面10d、左側面10e、および右側面10fからなる略直方体の形状をしている(
図1~3参照)。
【0018】
そして、ボックス部10の底面10dには吹出開口12が設けられている(
図1,2参照)。本実施形態において、吹出開口12は円形であるが(
図3参照)、四角形やその他多角形など形状に制限はない。
また、ボックス部10の4つの側面(正面10a、背面10b、左側面10e、および右側面10f)のうち、正面10aには、開口11が設けられている(
図2参照)。
【0019】
一方、ノズル20は、一端がダクトDと連接されるダクト接続口23が設けられ(
図2参照)、他端には水平方向に長く開口するスリット状のノズル開口21(
図1(i),
図2参照)が設けられている。
【0020】
また、固定部材30は、ボックス部10とノズル20とを固定する部材である。固定部材30は、ノズル開口21が、開口11と一定距離d1をおいて、開口11と対向する位置に設けられるようにボックス部10とノズル20とを固定する。
固定部材30は、その上面30aおよび底面30bは、周縁部301を残して、ほぼ全面が開口されている(
図1(iii),(iv)参照)。また、左側面30cおよび右側面30dは、ノズル開口21が固定部材30の開口30sの中に位置するように部分的に開口されている(
図1(v)参照)。
固定部材30は、このような形状により、ボックス部10とノズル20とを固定する強度を保持して、空調吹き出し装置100の運送時などにおける破損を防止することができると共に、誘引する周囲空気の量を確保することができる。
【0021】
ただし、本実施形態において、空調吹き出し装置100は消音ダクト40を有する。消音ダクト40は、
図2に示すように、開口11に連結し、内面に消音材41が設けられたものである。本実施形態において、消音材41は断熱性を備えたグラスウールを用いている。グラスウールは断熱性を備えているため、消音ダクト40の外面に結露が発生することを防止することができる。
【0022】
本実施形態における空調吹き出し装置100は、開口11に連結する消音ダクト40を有する構成により、後述するように、周囲空気は消音ダクト40に設けられた誘引開口42から誘引される。
そのため、本実施形態において、固定部材30は、ノズル開口21が、誘引開口42と一定距離d2をおいて、誘引開口42と対向する位置に設けられるように消音ダクト40とノズル20とを固定する(
図2参照)。
本実施形態において、ボックス部10の上面10c(
図1(iii)参照)の寸法は330mm×330mm、ボックス部10の高さ(
図1(ii)または(v)参照)は300mm、ボックス部10内の断熱材14の厚さ(
図2参照)は25mmである。
【0023】
なお、
図2に示す消音ダクト40においてハッチングされている箇所が、消音材41が設けられている部分である。
一方、
図2に示すボックス部10においてハッチングされている箇所、およびノズル部20においてハッチングされている箇所は、それぞれ断熱材14、断熱材22である。
本実施形態において、断熱材14は、消音材41と同様にグラスウールを用いている。グラスウールは断熱性と共に消音性も備えているため、断熱材14は消音材としても機能し、ボックス部10内を通過する気流により発生する騒音を抑制することができる。
また、本実施形態において、断熱材22は、ポリエチレンフォームを用いている。
【0024】
[ガイド壁]
ガイド壁13は、
図2に示すように、ボックス部10内に設けられ、開口11からボックス部10内に流入した、ノズル開口21から流出された一次空気SAと一次空気SAにより誘引された周囲空気AAの気流の方向を90度変えて、吹出開口12へ誘導するものである。
【0025】
そして、ガイド壁13は、一端が開口11付近に位置し、かつ他端が吹出開口12付近に位置しており、さらにその途中は湾曲または/および屈曲している。本実施形態では、
図2に示すように、開口11側から水平方向に伸びる水平部131、約45°斜め下に傾斜して伸びる傾斜部132、および鉛直方向に伸びる鉛直部133が連続して構成されているが、これ以外に、ガイド壁13の一部または全部を湾曲させた形状にしてもよい。
加えて、ガイド壁13と、ボックス部10の左側面10eおよび右側面10fとの間には、それぞれ隙間sが設けられている(
図3参照)。
【0026】
[吹出口部およびプレート]
空調吹き出し装置100は、さらに吹出口部50およびプレート51を有する。
本実施形態において、吹出口部50は、アルミニウム合金(例えば押出成形品など)または鉄板(例えばプレス加工されたものなど)からなるアネモ(アネモスタット)型吹出口である。また、吹出口部50の額縁501の寸法は400mm×400mmであり、外コーンと2枚の中コーンを備えた構造となっている。なお、本実施形態では角形の多層コーン型が用いられているが(
図1(iv)参照)、丸形の多層コーン型であってもよい。
一方、本実施形態において、プレート51は鉄板であり、寸法は600mm×600mmである。
なお、これらは、いずれも焼付塗装にて仕上げたものである。
【0027】
吹出口部50は、吹出開口12に連結し、混合空気を水平方向に拡散させながら吹き出すものである。また、プレート51は、吹出口部50により水平方向に吹き出された混合空気を、コアンダ効果を利用して水平方向に放射状に拡散するためのものである。
なお、空調吹き出し装置100は、設置対象の室内が天井ボードを設けないスケルトン天井の場合に採用することもできる。この場合、空調吹き出し装置100は、ボックス部10やノズル20、ダクトDなどを室内に露出させて、室内の空気を誘引することができる状態で設置される。
【0028】
[空調吹き出し装置の動作]
図3は、平面視の(上面10cから見た)空調吹き出し装置100の内部の気流の流れを説明するための図である。
【0029】
以下、
図1~3を参照して、本発明の空調吹き出し装置の動作について説明する。なお、以下の説明において、既に説明した構成においては、図面に同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0030】
本実施形態の空調吹き出し装置100は、消音ダクト40を有し、固定部材30は、ノズル開口21が、誘引開口42と一定距離d2をおいて、誘引開口42と対向する位置に設けられるように消音ダクト40とノズル20とを固定している(
図2参照)。
【0031】
また、ガイド壁13は、一端13sが開口11付近に位置し、かつ他端13eが吹出開口12付近に位置しており(
図2参照)、吹出開口12付近に位置するガイド壁13の他端13eが、ボックス部10の平面視で、吹出開口12の領域に重なるようにガイド壁13が設けられている(
図3参照)。そのため、吹出開口12は、ガイド壁13の他端13eを境目として、ボックス部10の背面側にある領域121と正面側にある領域122とに分けられる(
図3参照)。
【0032】
さらにガイド壁13は、その途中が湾曲または/および屈曲していることに加えて、
図3に示すように、左側面10eおよび右側面10fとの間にそれぞれ隙間sが設けられている。
なお、詳細には、本実施形態においてはボックス部10内には断熱材14が設けられているため、ガイド壁13は、この左側面10eおよび右側面10fに設けられた断熱材14との間にそれぞれ隙間sが設けられている。
【0033】
空調吹き出し装置100はこのような構成となっているため、ノズル20のノズル開口21から流出する一次空気SAと、一次空気SAにより誘引開口42から誘引される周囲空気AAは、開口11を介してボックス部10内へ流入する(
図2参照)。
【0034】
そして、このボックス部10内に流入した一次空気SAおよび周囲空気AAは、ボックス部10内で混合し(混合空気МA)、ガイド壁13に沿ってその気流の方向が90度変わって吹出開口12へ誘導されると共に(
図2参照)、その一部は隙間sからガイド壁13とボックス部10の背面10bおよび上面10cにより形成される背面側空間60(
図2参照)へと流れる。そして、隙間sからこの背面側空間60へ流れた混合空気MAは、底面10dの吹出開口12を通って吹き出される。
【0035】
このように、空調吹き出し装置100は、ノズル20から吹き出された一次空気SAが周囲空気AAを誘引し、混合して吹出口部50から吹き出すことにより、一次空気SAの搬送量を減らすことができる。そのため、搬送エネルギー(ファン動力)を低減し、省エネ化を実現することができる。
【0036】
また、ファンを小型化し、一次空気SAを搬送するダクト径を小さくすることができるため、設備の設置コストを低減し、ダクトを配設する空間の省スペース化も実現することができる。
なお、冷房時は、一次空気SAと、一次空気SAよりも温度の高い周囲空気AAとが混合されることで、混合空気のMAの温度は一次空気SAよりも高くなるため、一次空気SAを直接吹き出した場合と比べて、吹出口部50の空調対象空間の空気と接触する部分と、空調対象空間内の空気との温度差が小さくなり、当該部分に結露が発生することを抑制することができる。
【0037】
さらに、空調吹き出し装置100は、吹出開口12が、ガイド壁13の他端13eによりボックス部10の背面側にある領域121と正面側にある領域122とに分けられるため、前述したように、吹出方向の偏りを無くすことで特定の方向への混合空気の吹き出し量が減少することを防ぐことができ、吹出口部の結露の防止や、圧力損失および騒音の低減を図ることができる。
【0038】
ボックス部10の底面10dに設けられた吹出開口12は、ボックス部10の底面10dよりも面積が狭いため、ボックス部10の底面10dには、吹出開口12の周囲に開口していない周囲部分70が存在している(
図4のドットでハッチングされている箇所)。 そのため、従来、吹出開口12の周囲では、ボックス部10内へ流入した混合空気がこの周囲部分70に衝突して圧力損失が上昇していた。
【0039】
しかし、空調吹き出し装置100は、斯かる構成により、ガイド壁13に沿って吹出開口12へ流れる混合空気MAの、吹出開口12の周囲部分70に衝突する量が減少する。例えば、
図4を参照すると、ガイド壁13の他端13eを境目として、ボックス部10の背面10b側にある周囲部分70に混合空気MAが衝突する量は減少するため、ボックス部10内の圧力損失を低減させることができ、騒音の発生も抑えることができる。
【0040】
[隙間]
また、ボックス部10内に流入した一次空気SAおよび周囲空気AAは、その一部は隙間sからガイド壁13とボックス部10の背面10bおよび上面10cにより形成される背面側空間60へと流れる。そして、隙間sからこの背面側空間60へ流れた混合空気MAは、底面10dの吹出開口12を通って吹き出される。
【0041】
前述したような、吹出開口12付近に位置するガイド壁13の他端が吹出開口12の領域に重なるように設けられた構成である場合、ガイド壁13に沿って流れる空気の流路が狭くなるためボックス部10内の圧力損失が上昇するが、この隙間sから一部の空気を背面側空間60に逃がしてから吹き出すことで、吹き出し方向の偏りを無くすと共に、吹出開口12の周囲部分に混合空気MAが衝突することにより発生する圧力損失と、ガイド壁13に沿って流れる混合空気MAの流路が狭くなることにより発生する圧力損失との合計を最小に抑えることができる。
【0042】
本実施形態において、ボックス部10の上面10cは330mm×330mm、断熱材14の厚さは25mmであり、ガイド壁13の幅d3は240mmであるため、ボックス部10の板厚(2mm程度)を考慮すると、隙間sの幅はそれぞれ18mm程度となる。
【0043】
また、ボックス部10内の断熱材14の厚さを除いた右側面10eと左側面10f間の幅は276mm、隙間はそれぞれ18mmであり、ボックス部10内の幅に対する隙間sの比率は約6.5%となっている。
なお、隙間sは、ボックス部10内の幅に対して6%~8%の範囲に選定することが好ましい。
【0044】
さらに、本実施形態の空調吹き出し装置100は、内面に消音材41が設けられた消音ダクト40が連結するため、ノズル20(ノズル開口21)からの一次空気SAは、消音ダクト40を介してボックス部10内に流入する。よって、ボックス部10内に流入する一次空気SAにより生じる騒音を抑えることができる。また、消音材41は断熱性を備えたグラスウールであるため、消音ダクト40の外面に結露が発生することを防止することができる。
本実施形態において、消音ダクト40の寸法は、幅が330mm、長さが150mm、高さが200mmであり、消音材41の厚さは25mmである。また、開口11は、ボックス部10の正面10a(
図1(i)参照)に対して、縦150mm×横280mmの長方形状に形成されている。
【0045】
その他、本実施形態の空調吹き出し装置100は、吹出口部50およびプレート51を有しているため、吹出口部50から水平方向に吹き出された混合空気MAは、コアンダ効果によりプレート51に沿って水平方向へ放射状に拡散される。
また、空調吹き出し装置100をスケルトン天井に設置することにより、天井付近の室内空気を誘引し、一次空気と混合して吹き出すことで、室内の空気を撹拌し、室内の温度ムラを低減することができる。さらに、プレート51を取り付けることにより、(スケルトン天井ではない)天井面に設置した場合と同様に、水平方向への吹き出しを行うことができる。
【0046】
前述したように、空調吹き出し装置100は吹き出し方向の偏りを無くすことができるものであるため、プレート51が設けられることで、さらに水平方向への流れる気流を維持し、広い範囲に偏りなく混合空気MAを送ることができ、室内の空調を効率良く行うことができる。
【0047】
また、冷房時、プレート51に沿って水平方向に混合空気MAを吹き出すことで、吹出口の額縁501は、冷たい混合空気MAにより覆われる。そのため、冷たい(冷えた)額縁と、暖かい室内空気が接触することにより発生する結露を防止することができる。
【0048】
なお、具体的な構成として、ノズル20のノズル開口21の形状は、水平方向に長く開口するスリット状であるが、そのアスペクト比が大きいほど効率よく周囲空気AAを誘引することができる。
本実施形態の場合、ノズル開口21は36mm×180mm(アスペクト比5)であり、開口11の周縁部の長さは432mmであるが、アスペクト比が1に近づくほどこの周縁部の長さは短くなる。周縁部の長さが長い方が、ノズル開口21から吹き出される一次空気SAと周囲空気AAとが接触する量が増加し、効率よく誘引することができる。
また、ノズル開口21がスリット状であることにより、ノズル20の上下の傾斜面20a,20bが一次空気SAにより誘引された周囲空気AAを誘引開口42へ向かわせるガイドとなり(
図2参照)、周囲空気AAをボックス部10内へ誘導しやすくなる。
【0049】
また、開口の幅に対するノズル開口の幅の比率は、75%~90%に設定することが好ましい。上記比率に設定することで、ノズル開口から吹き出された一次空気と、誘引された周囲空気とが開口外(ボックス部外)に漏れ出ることがなく、最も効率よく周囲空気を誘引することができる。
【0050】
一例として、
・周囲空気AA温度が26℃
・一次空気SA温度が12℃
・ノズル20の上下の傾斜面20a,20bの傾斜角度が水平線に対して25°(
図2参照)
・一次空気SAの風量が315m
3/h
・ダクトDの内径が170mm
・ダクトD内風速が3.67m/s
・ノズル20からの吹出風速が10.73m/s
・開口11が150mm×280mm
・ノズル開口21が36mm×180mm
であり、周囲空気の相対湿度60%で空調を行うと、一次空気SAの風量315m
3/hに対して、混合空気の風量は448m
3/h(温度が16.5℃)であった。つまり、一次空気の風量に対して誘引される周囲空気の割合を示す誘引率は、42.2%であった。
【0051】
[空調吹き出し装置200]
図5は、本発明の空調吹き出し装置の別の実施形態を示す図であり、(i)は正面図、(ii)は背面図、(iii)は平面図、(iv)は底面図である。左側面図および右側面図は、
図1に示す実施形態(
図1(v)参照)と同様であるため、記載を省略する。また、空調吹き出し装置100は吹出口部50およびプレート51を有するものであるが(
図1参照)、
図5に示す実施形態は、吹出口部50およびプレート51を有さない形態である。
【0052】
空調吹き出し装置200は、ボックス部10の正面10a(
図1(i)参照)に横長の開口11が設けられており、ノズル20も横長形状のものが、開口11と対向する位置に設けられる。そして、一次空気のダクト接続口23が、一次空気の風量により1本または2本接続される。
【0053】
もちろん、ボックス部10の正面10aに設けられる開口11の形状、およびこれと対向する位置に設けられるノズル20の形状は設計変更可能であり、ダクト接続口23の数は、3個以上、4個以上、または5個以上であってもよい。
【0054】
図6は、別の形態の吹出口部を設けた形態の一部省略断面図である。
空調吹き出し装置100の吹出口部50は、混合空気MAを水平方向に吹き出すものであるが(
図2参照)、
図6に示す吹出口部50Bのように、角度を変更可能な羽根502の角度を調整することで、混合空気MAの吹き出し方向を変更することができる。
【0055】
以上のように説明した空調吹き出し装置100,200は、本発明の空調吹き出し装置を例示するものであり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の構成は例示したものに限定されない。
例えば、ガイド壁13の構成は、混合空気MA(一次空気SAおよび周囲空気AA)の気流の方向を90度変えて吹出開口12へ誘導し得るものであれば、その形状(湾曲形状および屈曲形状)は適宜設計変更可能である。また、ガイド壁13と、ボックス部10の左側面10eおよび右側面10fとの間に設けられる隙間sの大きさや、背面側空間60の大きさ(広さ)なども適宜設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る空調吹き出し装置は、吹き出し方向の偏りを無くすことで特定の方向への混合空気の吹き出し量が弱まることを防ぎ、吹出口部の結露を防止することができる空調吹き出し装置として様々な施設で利用することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0057】
100,200 空調吹き出し装置
10 ボックス部
10a ボックス部の正面
10b ボックス部の背面
10c ボックス部の上面
10d ボックス部の底面
10e ボックス部の左側面
10f ボックス部の右側面
11 開口
12 吹出開口
121 ボックス部の背面側にある領域
122 ボックス部の正面側にある領域
13 ガイド壁
13s ガイド壁の一端
13e ガイド壁の他端
14 断熱材 20 ノズル
20a ノズルの上の傾斜面
20b ノズルの上の傾斜面
21 ノズル開口
22 断熱材
23 ダクト接続口
30 固定部材
301 周縁部
30a 固定部材の上面
30b 固定部材の底面
30c 固定部材の左側面
30d 固定部材の右側面
30s 固定部材の開口
40 消音ダクト
41 消音材
42 誘引開口
50,50B 吹出口部
501 額縁
502 羽根
51 プレート
60 背面側空間
70 周囲部分
d1 開口とノズル開口との距離
d2 誘引開口とノズル開口との距離
d3 ガイド壁の幅
s 隙間
D ダクト
SA 一次空気
AA 周囲空気
MA 混合空気