(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147393
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】コンセント装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/713 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H01R13/713
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060366
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智晴
(72)【発明者】
【氏名】林 文移
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA16
5E021FB21
5E021FC14
5E021MA04
5E021MA06
5E021MA08
5E021MA19
5E021MB01
(57)【要約】
【課題】 トラッキング放電による劣化が一定量進んだらコンセント装置の交換を推奨する報知を行うコンセント装置を提供する。
【解決手段】 接続されたプラグ3の栓刃3a間で発生するトラッキング放電を検出し、検出したトラッキング放電が所定の条件を満たしたらプラグへ通電する電路を遮断するコンセントCPU29を有し、トラッキング電流検出部21と、栓刃3aが接続される受刃の温度を計測する温度検出部27と、トラッキング電流検出部21が検出した電流値が所定の電流値を超えたら、所定時間のカウントを開始するタイマ部28と、異常発生を報知する報知部22とを有し、コンセントCPU29は、所定時間が経過するまでに受刃の温度が所定の温度変化量を超えて上昇したら電路を遮断すると共に、電路Lの遮断回数が所定回数を超えたら、報知部22にコンセント装置1の交換を推奨する報知を実施させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続されたプラグの栓刃間で発生するトラッキング放電を検出し、検出したトラッキング放電が所定の条件を満たしたら前記プラグへ通電する電路を遮断する遮断制御部を備えたコンセント装置であって、
トラッキング放電を検出するトラッキング電流検出部と、
前記栓刃が接続される受刃の温度を計測する温度検出部と、
前記トラッキング電流検出部が検出した電流値が所定の電流値を超えたら、所定時間のカウントを開始するタイマ部と、
異常発生を報知する報知部及び報知部を制御する報知制御部とを有し、
前記遮断制御部は、前記所定時間が経過するまでに前記受刃の温度が所定の温度変化量を超えて上昇したら前記電路を遮断すると共に、
前記電路の遮断回数が所定回数を超えたら、前記報知制御部が前記報知部に対して、コンセント装置の交換を推奨する報知を実施させることを特徴とするコンセント装置。
【請求項2】
前記報知制御部は、前記トラッキング電流検出部が検出した電流値が前記所定の電流値を超えたら、前記報知部においてトラッキング放電の発生を通知する報知を実施させることを特徴とする請求項1記載のコンセント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラッキング現象が発生したら出力を遮断する機能を備えたコンセント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンセント装置は、接続されたプラグの栓刃間でトラッキング放電が発生することがある。その場合、発熱して発火する恐れがあるため、電路を遮断する機能を備えたものがある。例えば、特許文献1のコンセント装置では、トラッキング放電を検知したら電路を遮断し、同時にトラッキング放電の発生をブザーの鳴動や表示部の表示で報知した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記トラッキング検知機能を備えた従来のコンセント装置は、電路を遮断する際に、それがトラッキング放電発生による遮断であることが報知されたため、利用者は遮断動作した原因を認識できた。
しかしながら、軽微なトラッキング放電であっても電路を遮断したため、電源が不安定になる等の前触れ無く突然電路が遮断される場合が発生し、利用者にとっては利便性が悪かった。加えて、トラッキング放電を検知して遮断動作させても、点検せずにオン操作して使用を継続する場合があり、そのような場合は劣化が放置される問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、トラッキング放電による劣化が一定量進んだらコンセント装置の交換を推奨する報知を行うコンセント装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、本発明に係るコンセント装置は、接続されたプラグの栓刃間で発生するトラッキング放電を検出し、検出したトラッキング放電が所定の条件を満たしたらプラグへ通電する電路を遮断する遮断制御部を備えたコンセント装置であって、トラッキング放電を検出するトラッキング電流検出部と、栓刃が接続される受刃の温度を計測する温度検出部と、トラッキング電流検出部が検出した電流値が所定の電流値を超えたら、所定時間のカウントを開始するタイマ部と、異常発生を報知する報知部及び報知部を制御する報知制御部とを有し、遮断制御部は、所定時間が経過するまでに受刃の温度が所定の温度変化量を超えて上昇したら電路を遮断すると共に、電路の遮断回数が所定回数を超えたら、報知制御部が報知部に対して、コンセント装置の交換を推奨する報知を実施させることを特徴とする。
この構成によれば、トラッキング放電による遮断動作が所定回数を超えたらコンセント装置の交換を推奨する報知が成されるため、コンセント装置の劣化を精度良く判断できるし、利用者はコンセント装置の劣化が進んだと認識できる。また、トラッキング放電によるコンセントの温度上昇を加味して電路遮断を判断するため、小さなトラッキング放電では遮断する事が無く、頻繁な遮断動作を防止できる。
【0007】
本発明の別の態様は、上記構成において、報知制御部は、放電電流検出部が算出した電流値が所定の電流値を超えたら、報知部においてトラッキング放電の発生を通知する報知を実施させることを特徴とする。
この構成によれば、利用者は電路が遮断されなくても報知動作によりトラッキング放電の発生を認識できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トラッキング放電による遮断動作が所定回数を超えたらコンセントの交換を推奨する報知が成されるため、利用者はコンセントの劣化を認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るコンセント装置の一例を示す回路ブロック図である。
【
図2】劣化を判定する制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るコンセント装置の一例を示す回路ブロック図である。
図1に示すように、コンセント装置1は、商用電源等の交流電源Pから配設された電路Lが電路遮断機構部11を介してプラグ3が接続されるコンセント12の図示しない受刃に接続されて、100V等の電圧を有する交流電力がコンセント12を介してプラグ3に供給される。
そしてコンセント装置1は、トラッキング電流検出部21、報知部22、電源トリップ回路23、テストスイッチ24、リセットスイッチ25、記憶部26、温度検出部27、タイマ部28、各部を制御するコンセントCPU29、電源回路30等を備えた制御部2を有している。
【0011】
トラッキング電流検出部21は、挿入されたプラグ3の栓刃3a間となる位置に配置された電極21aからアースに流れる電流を検出して、コンセントCPU29に検出した電流値情報を通知する。トラッキング放電が発生すると、放電電流の一部が電極21aに流れ込み、電極21aから図示しないアースに流れ出る。トラッキング電流検出部21はこの電流を検出し、電流値情報をコンセントCPU29に通知する。
尚、コンセントCPU29は、トラッキング電流検出部21が検出した放電電流情報から、実際に発生したトラッキング放電の放電電流を算出する。
【0012】
報知部22は、LEDから成る表示部22a、警報音を鳴動するブザー22bを有し、コンセントCPU29の制御により異常発生を報知する。異常の内容に応じて表示部22aの表示形態を変更し、ブザーの鳴動形態を変更し、複数種類の異常発生を判別可能な報知を実施する。尚、ここでは、トラッキング放電発生の報知とコンセント装置1の交換を推奨する報知の2種類の報知を行い、トラッキング放電発生の報知は例えばLEDを点灯させると共に、ブザー22bを報音させる。また交換を推奨する報知は、例えばLEDを点滅させる。この場合、双方を同時に報知する場合は、LEDの点滅とブザー22bの報音を実施する事になる。
【0013】
電源トリップ回路23は、コンセントCPU29から出力される遮断信号により、電路遮断機構部11を遮断動作させ、コンセント12に供給される電力を遮断する。尚、電路遮断機構部11は図示しない操作レバーのオン/オフ操作により遮断/通電動作し、電源トリップ回路23により遮断された電路Lは、操作レバーのオン操作で復帰して通電が開始される。
【0014】
テストスイッチ24は、トラッキング電流検出部21をテストするスイッチで、オン操作でトラッキング電流検出部21に所定の電流が流れ、コンセントCPU29が遮断信号を出力する。結果、電路遮断機構部11が遮断動作し、電路Lが遮断される。
【0015】
リセットスイッチ25は、表示部22aの表示及びブザー22bの報音を停止するスイッチであり、オン操作でコンセントCPU29の状態をリセットする。
【0016】
記憶部26は、電極21aに流れ込む放電電流と実際のトラッキング放電電流との比率情報、トラッキング放電の発生を判定する電流閾値、電路遮断を判断するための所定の温度変化量である温度変化量の閾値、トラッキング放電に基づく電路Lの遮断回数を記憶している。またタイマ部28は、30秒等の所定時間をカウントする。
【0017】
温度検出部27は、コンセント装置1の受刃の温度を検出するよう設置された温度センサ27aから温度情報を入手し、コンセントCPU29に通知する。
【0018】
コンセントCPU29は、制御部2の各部を制御すると共に、トラッキング放電の放電電流を算出して電路Lの遮断の有無を判断する。そして電源トリップ回路23を制御する遮断制御部の機能を有すると共に、報知部22の報知を制御する報知制御部の機能を備えている。具体的に、トラッキング電流検出部21から通知された放電電流値情報から、記憶部26が記憶している比率情報に基づいて実際のトラッキング放電の放電電流値を算出する。そして、算出した放電電流値が記憶部26が記憶している電流閾値より大きい場合は、更に所定の制御を実施する。
尚、電極21aに流れ込む放電電流と実際に栓刃3aの間で発生するトラッキング放電の放電電流との比は、実験により判明しており、その比率が記憶部26に記憶されている。
【0019】
上記の如く構成されたコンセント装置1は、トラッキング放電が発生すると以下のように動作する。
図2はトラッキング放電を検知した際の動作の流れを示すフローチャートであり、
図2を参照して説明する。
操作レバーがオン操作されて電源が投入されると(S1)、コンセント12が通電されてプラグ3に交流電源Pの電力が供給される。また、投入操作でコンセントCPU29がトラッキング放電の監視をスタートする。
【0020】
この状態で、コンセント12に接続されたプラグ3に塵等の付着により、栓刃3aの間でトラッキング放電が発生すると電極21aに放電電流が流れる。この電流がトラッキング電流検出部21で検出され、検出した電流値情報がコンセントCPU29に通知される。
電流値情報を受けたコンセントCPU29では、この電流値情報を基に実際の放電電流を換算して記憶部26が記憶している電流閾値(It:例えば、30mA)と比較する。比較した結果、電流閾値Itより大きければトラッキング放電発生と判断(S2でYES)する。It以下であれば、次のトラッキング放電発生を待つ(S2でNO)。
トラッキング放電発生と判断したら、タイマ部28を起動して予め設定した所定時間(例えば30秒)のカウントを開始する(S3)。
【0021】
その後、所定時間のカウント中に受刃の温度を検出する温度センサ27aが所定の温度変化量(例えば、15℃の上昇)を超える温度上昇を検知したら(S4でYES)、コンセントCPU29が遮断信号を出力し、更に報知部22に報知動作を実施させる(S6)。
遮断信号を受けた電源トリップ回路23は、電路遮断機構部11を遮断動作させて電路Lを遮断する。また、遮断信号を受けて報知部22が報知動作して警報を出力する(S6)。
尚、タイマ部28が所定時間のカウントを終了するまでに、所定の温度変化量を超える温度上昇が無ければ(S5でYES)、温度変化の監視を終了して次のトラッキング放電の発生を待つ。
【0022】
一方、コンセントCPU29は、遮断信号を出力して電路Lを遮断すると、記憶部26が記憶する遮断回数を1増やし、タイマ部28をリセットする(S7)。遮断回数のカウントを1増やすことで、遮断回数Nが所定回数(例えば、10回)を超えたら(S8でYES)、報知部22にコンセント装置1の交換を推奨する交換推奨報知を実施(S9)させて制御を終了する。例えば、表示部22aのLEDの発光を、S6での電路遮断時は赤の点灯、交換推奨の表示は赤の点滅として異なる表示を実施させる。また、ブザー22bの発報動作も異なる発報形態で発報させる。
そして、1を加算した遮断回数Nが引き続き所定回数以下であったら(S8でNO)、遮断された電路Lの電源投入(S1)を待つ。
【0023】
尚、遮断回数Nは、コンセント装置1の工場出荷時にゼロ(N=0)にセットされている。また、交換推奨報知に合わせて電路Lを遮断しても良い。また、制御部2の電源回路30は、電路遮断機構部11の電源側に配置されており、電路遮断後も制御部2は動作を継続し、報知部22の報知動作は継続される。
【0024】
このように、トラッキング放電による遮断動作が所定回数を超えたらコンセント装置1の交換を推奨する報知が成されるため、コンセント装置1の劣化を精度良く判断できるし、利用者はコンセント装置1の劣化が進んだと認識できる。また、トラッキング放電によるコンセント12の温度上昇を加味して電路Lの遮断を判断するため、小さなトラッキング放電では遮断する事が無く、頻繁な遮断動作を防止できる。
【0025】
尚、上記実施形態では、電路Lの遮断動作がトラッキング放電である場合、報知部22の報知により認識できる。しかしながら、遮断動作に至らないトラッキング放電の発生に関しては、報知動作しないため利用者はそれを認識できない。そのため、遮断に至らない場合もトラッキング放電が発生したら、報知部22を報知動作させても良い。例えば、
図2に示すフローチャートにおいて、所定時間のカウント開始(S3)と同時に、報知部22を報知動作させても良い。この報知動作により、利用者は電路Lが遮断されなくても報知動作によりトラッキング放電の発生を認識できる。
また、コンセントCPU29によるトラッキング放電発生の判断は、実際に発生したトラッキング放電の放電電流を算出して電流閾値と比較判断しているが、記憶部26が記憶する電流閾値を、トラッキング電流検出部21が検出する電流値に合わせた値としても良く、その場合は実際のトラッキング放電電流を算出する必要がない。
【符号の説明】
【0026】
1・・コンセント装置、2・・制御部、3・・プラグ、11・・電路遮断機構部、12・・コンセント、21・・トラッキング電流検出部、22・・報知部、22a・・表示部、22b・・ブザー、23・・電源トリップ回路、26・・記憶部、27・・温度検出部、27a・・温度センサ、28・・タイマ部、29・・コンセントCPU(遮断制御部、報知制御部)、L・・電路。