(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147395
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】感震装置、回路遮断器及び分電盤
(51)【国際特許分類】
G01H 1/00 20060101AFI20241008BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20241008BHJP
G01V 1/01 20240101ALI20241008BHJP
H02H 5/00 20060101ALI20241008BHJP
G01P 15/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01H1/00 G
H02B1/40 A
G01V1/00 D
H02H5/00
G01P15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060368
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】322003732
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 史迅
(72)【発明者】
【氏名】陸野 慶人
【テーマコード(参考)】
2G064
2G105
5G211
【Fターム(参考)】
2G064AB02
2G064AB19
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE01
2G105NN02
5G211DD18
(57)【要約】
【課題】本開示の課題は、取付方向の誤設定を抑制することである。
【解決手段】感震装置A1は、加速度計測部10と、記憶部11と、判定部12と、遮断信号送出部13と、電源部14と、を備える。判定部12は、記憶部11に記憶している取付方向と、計測値における加速度の向きと、を比較することで傾きに関する異常の有無を判定する。判定部12は、電源部14による動作用の電源の供給が一時的に中断された場合、中断の前後の計測値における加速度の向きの差を所定のしきい値と比較する。判定部12は、差がしきい値以上であるときに異常なしと判定して取付方向を更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度の向き及び大きさを計測する加速度計測部と、
前記加速度計測部による前記加速度の向き及び大きさの計測値を記憶する記憶部と、
前記計測値に基づいて異常の有無を判定する判定部と、
前記判定部が異常有りと判定した場合、回路遮断器に遮断動作を行わせるための遮断信号を出力する遮断信号送出部と、
前記加速度計測部、前記記憶部、前記判定部及び前記遮断信号送出部に動作用の電源を供給する電源部と、
を備え、
前記判定部は、前記記憶部に記憶している取付方向と、前記計測値における前記加速度の向きと、を比較することで傾きに関する異常の有無を判定し、前記電源部による前記動作用の電源の供給が一時的に中断された場合、前記中断の前後の前記計測値における前記加速度の向きの差を所定のしきい値と比較し、前記差が前記しきい値以上であるときに異常なしと判定して前記取付方向を更新する、
感震装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記中断前の前記計測値から求められる振動の大きさが所定値以上であった場合に異常有りと判定する、
請求項1記載の感震装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記中断後の所定時間内に、前記中断の前後の前記計測値における前記加速度の向きの差と前記しきい値とを比較する、
請求項2記載の感震装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記所定時間内における前記計測値から求められる振動の大きさが前記所定値以上であった場合に異常有りと判定する、
請求項3記載の感震装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記中断前の前記計測値における前記加速度の向きと、前記所定時間内の前記計測値における前記加速度の向きの平均値との差を前記しきい値と比較する、
請求項3又は4記載の感震装置。
【請求項6】
加速度の向き及び大きさを計測する加速度計測部と、
前記加速度計測部による前記加速度の向き及び大きさの計測値を記憶する記憶部と、
前記計測値に基づいて異常の有無を判定する判定部と、
前記加速度計測部、前記記憶部及び前記判定部に動作用の電源を供給する電源部と、
一つ以上の接点部と、
前記接点部を開閉する開閉機構部と、
前記判定部が異常有りと判定したときに前記開閉機構部を駆動して前記接点部を開極する引外し部と、
を備え、
前記判定部は、前記記憶部に記憶している取付方向と、前記計測値における前記加速度の向きと、を比較することで傾きに関する異常の有無を判定し、前記電源部による前記動作用の電源の供給が一時的に中断された場合、前記中断の前後の前記計測値における前記加速度の向きの差を所定のしきい値と比較し、前記差が前記しきい値以上であるときに異常なしと判定して前記取付方向を更新する、
回路遮断器。
【請求項7】
請求項1-4のいずれかの感震装置を含む内部機器と、
前記内部機器を収容するボックスと、
を備える、
分電盤。
【請求項8】
請求項6の回路遮断器を含む内部機器と、
前記内部機器を収容するボックスと、
を備える、
分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感震装置、回路遮断器及び分電盤に関し、より詳細には、地震を感知して回路を遮断させる感震装置、同じく地震を感知して回路を遮断させる回路遮断器、及び当該感震装置又は当該回路遮断器を有する分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として特許文献1記載の感震装置を例示する。特許文献1記載の感震装置(以下、従来例という。)は、振動を検知する加速度センサを備えた加速度検出部と、ブレーカを遮断動作させるための遅延信号を出力する遮断信号出力部と、感震装置CPUと、を備える。
【0003】
感震装置CPUは、加速度検出部の出力信号から震度を判定し、所定の震度(例えば、震度5強)以上の震度であると判断したら、分電盤の主幹ブレーカを遮断させるための信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、加速度センサが検知する加速度には常に重力加速度が含まれている。そのため、従来例のような感震装置では、加速度センサが検知する重力加速度の向き、言い換えると、感震装置の取付方向を設定する必要がある。なお、この取付方向の設定は、通常、手動で行われる。
【0006】
しかしながら、設定後に感震装置の取付方向が変更になった場合、取付方向の再設定が行われずに誤った取付方向に設定されることで地震の検知が正常に実施できないおそれがある。
【0007】
本開示の目的は、取付方向の誤設定を抑制できる感震装置、回路遮断器及び分電盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る感震装置は、加速度計測部と、記憶部と、判定部と、遮断信号送出部と、電源部と、を備える。前記加速度計測部は、加速度の向き及び大きさを計測する。前記記憶部は、前記加速度計測部による前記加速度の向き及び大きさの計測値を記憶する。前記判定部は、前記計測値に基づいて異常の有無を判定する。前記遮断信号送出部は、前記判定部が異常有りと判定した場合、回路遮断器に遮断動作を行わせるための遮断信号を出力する。前記電源部は、前記加速度計測部、前記記憶部、前記判定部及び前記遮断信号送出部に動作用の電源を供給する。前記判定部は、前記記憶部に記憶している取付方向と、前記計測値における前記加速度の向きと、を比較することで傾きに関する異常の有無を判定する。前記判定部は、前記電源部による前記動作用の電源の供給が一時的に中断された場合、前記中断の前後の前記計測値における前記加速度の向きの差を所定のしきい値と比較し、前記差が前記しきい値以上であるときに異常なしと判定して前記取付方向を更新する。
【0009】
本開示の一態様に係る回路遮断器は、加速度計測部と、記憶部と、判定部と、電源部と、一つ以上の接点部と、前記接点部を開閉する開閉機構部と、引外し部と、を備える。前記加速度計測部は、加速度の向き及び大きさを計測する。前記記憶部は、前記加速度計測部による前記加速度の向き及び大きさの計測値を記憶する。前記判定部は、前記計測値に基づいて異常の有無を判定する。前記電源部は、前記加速度計測部、前記記憶部及び前記判定部に動作用の電源を供給する。前記引外し部は、前記判定部が異常有りと判定したときに前記開閉機構部を駆動して前記接点部を開極する。前記判定部は、前記記憶部に記憶している取付方向と、前記計測値における前記加速度の向きと、を比較することで傾きに関する異常の有無を判定する。前記判定部は、前記電源部による前記動作用の電源の供給が一時的に中断された場合、前記中断の前後の前記計測値における前記加速度の向きの差を所定のしきい値と比較する。前記判定部は、前記差が前記しきい値以上であるときに異常なしと判定して前記取付方向を更新する。
【0010】
本開示の一態様に係る分電盤は、前記感震装置を含む内部機器と、前記内部機器を収容するボックスと、を備える。
【0011】
本開示の一態様に係る分電盤は、前記回路遮断器を含む内部機器と、前記内部機器を収容するボックスと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の感震装置、回路遮断器及び分電盤は、取付方向の誤設定を抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る感震装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る分電盤の正面図である。
【
図3】
図3は、同上の感震装置の動作説明用のフローチャートである。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る回路遮断器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態に係る感震装置、回路遮断器及び分電盤について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0015】
(1)概要
実施形態に係る感震装置A1は、
図1に示すように、加速度計測部10と、記憶部11と、判定部12と、遮断信号送出部13と、電源部14と、を備える。
【0016】
加速度計測部10は、加速度の向き及び大きさを計測する。加速度計測部10は、例えば、3軸方向の加速度を検出可能な半導体加速度センサを有する。半導体加速度センサは、半導体基板が加速度によって変形するときの変形量及び変形方向に基づいて、各軸方向の加速度の大きさ及び向きを計測するように構成される。ただし、加速度計測部10は、半導体加速度センサ以外の加速度センサを有しても構わない。
【0017】
記憶部11は、加速度計測部10による加速度の向き及び大きさの計測値(デジタルデータ)を記憶する。記憶部11は、電気的に書換可能な不揮発性の半導体メモリ(例えば、フラッシュメモリなど)を有する。ただし、記憶部11は、メモリカード、SSD(ソリッドステートドライブ)などの書換可能な非一時的記憶媒体でも構わない。
【0018】
判定部12は、加速度計測部10の計測値(記憶部11に記憶された計測値を含む)に基づいて異常の有無を判定する。判定部12は、マイクロコントローラを有する。判定部12は、計測値(デジタルデータ)をマイクロコントローラで処理することにより、異常の有無を判定する。なお、実施形態における「異常」とは、震度5強以上の地震、及び15度以上の傾きを含む。
【0019】
遮断信号送出部13は、判定部12が異常有りと判定した場合、回路遮断器に遮断動作を行わせるための遮断信号を送出する。回路遮断器は、例えば、漏電遮断器である。遮断信号送出部13は、回路遮断器(漏電遮断器)の中性極に遮断信号(擬似漏電電流)を流すことで回路遮断器(漏電遮断器)を強制的に開極させる。
【0020】
電源部14は、加速度計測部10、記憶部11、判定部12及び遮断信号送出部13に動作用の電源を供給する。電源部14は、電力系統から供給される交流電圧から動作用の電源(例えば、3V-5V程度の直流電圧)を得るように構成される。つまり、電源部14は、地震などの影響で電力系統が停電した場合、動作用の電源の供給を停止する。
【0021】
判定部12は、記憶部11に記憶している取付方向と、計測値における加速度の向きと、を比較することで傾きに関する異常の有無を判定する。後述するように実施形態に係る感震装置A1は、通常、分電盤C1のボックス31に収容されており、ボックス31は、住宅などの建物の壁に固定される(
図2参照)。したがって、「傾きに関する異常」は、ボックス31が固定された壁(建物)の傾き、及びボックス31の少なくとも一部が壁から外れることによる傾き、の少なくとも2種類の異常を含む。
【0022】
さらに、判定部12は、電源部14による動作用の電源の供給が一時的に中断された場合、中断の前後の計測値における加速度の向きの差を所定のしきい値と比較する。ここで、電源部14による動作用の電源の供給が一時的に中断される場合として、電力系統の停電の他、メンテナンス作業の実施などが想定される。そして、メンテナンス作業において、実施形態に係る感震装置A1の取付方向が変更されることがある。なお、分電盤C1のボックス31内においては、通常、実施形態に係る感震装置A1の取付方向が180度の角度で反転される。一方、電力系統の停電の原因が地震であった場合、中断の前後において取付方向は変化しないか、あるいは、変化したとしても精々数度から十数度程度(壁からボックス31の一部が外れた場合)であると考えられる。
【0023】
したがって、判定部12は、中断の前後の計測値における加速度の向きの差がしきい値(例えば、60度)以上であれば、メンテナンス作業によって取付方向が変更されたと推定されるので、異常なしと判定して取付方向を更新する。
【0024】
しかして、実施形態に係る感震装置A1は、取付方向が変更されたか否かを判定部12で判定し、変更された場合は取付方向を変更後の取付方向に更新するので、取付方向の誤設定を抑制できる。
【0025】
なお、実施形態に係る回路遮断器は、実施形態に係る感震装置A1の構成要素(加速度計測部10、記憶部11、判定部12及び電源部14)を備えている。しかして、実施形態に係る回路遮断器は、実施形態に係る感震装置A1と同様に、取付方向が変更されたか否かを判定部12で判定し、変更された場合は取付方向を変更後の取付方向に更新するので、取付方向の誤設定を抑制できる。
【0026】
(2)詳細
実施形態に係る感震装置A1(以下、感震装置A1と略す。)は、実施形態に係る分電盤C1(以下、分電盤C1と略す。)の内部機器に含まれる(
図2参照)。
【0027】
分電盤C1は、例えば、交流50Hz又は60Hzの単相3線式100/200Vの電路において、主に住宅などの引込口装置として用いられる住宅用分電盤(住宅盤と略される場合がある。)である。ただし、本開示の分電盤は、住宅用分電盤に限定されない。分電盤C1は、主幹ブレーカB1と、複数の内部機器30(感震装置A1及び複数の分岐ブレーカ)と、主幹ブレーカB1及び複数の内部機器30を収容するボックス31と、を備える。
【0028】
主幹ブレーカB1は、回路遮断器である。より詳しくは、主幹ブレーカB1は、中性線欠相保護機能付の漏電遮断器である。漏電遮断器は、零相変流器によって不平衡電流(漏電電流)を計測し、不平衡電流の計測値が上限値を超えたときに引外し装置によって開閉機構を引き外して接点を強制的に開極するように構成される。
【0029】
複数の内部機器30のうち、感震装置A1以外の内部機器30は、分岐ブレーカと呼ばれる配線用遮断器(回路遮断器)である。分岐ブレーカに用いられる配線用遮断器は、過負荷電流及び短絡電流が流れたときに接点を強制的に開極して分岐回路を保護するように構成される。
【0030】
ボックス31は、電気絶縁性を有する合成樹脂材料によって四角形の箱状に形成される。ボックス31は、例えば、住宅内の壁に設置される。ボックス31内の横方向の一端部(左端部)に主幹ブレーカB1が収容されている。また、ボックス31内において、主幹ブレーカB1の隣(右隣)に、複数の内部機器30(分岐ブレーカ及び感震装置A1)が上下2段に分かれて収容されている。ただし、感震装置A1は、通常、下段の右端に収容される(
図2参照)。
【0031】
主幹ブレーカB1と複数の内部機器30は、複数の母線を介して電気的に接続されている。複数の母線は、帯板状の導体(導電バーと呼ばれる場合がある。)で構成されている。複数の母線は、単相3線式電路の二つの電圧側線に対応する二つの母線(電圧側線の導電バー)と、単相3線式電路の一つの中性線に対応する一つの母線(中性線の導電バー)と、を含んでいる。複数の内部機器30のうち、母線から100Vの分岐回路を分岐する内部機器30(分岐ブレーカ及び感震装置A1)は、一つの電圧側線の導電バーと中性線の導電バーに電気的に接続される。また、複数の内部機器30のうち、母線から200Vの分岐回路を分岐する内部機器30(分岐ブレーカ)は、二つの電圧側線の導電バーに電気的に接続される。
【0032】
(2-1)感震装置の構成
感震装置A1は、(1)概要で説明したように、加速度計測部10と、記憶部11と、判定部12と、遮断信号送出部13と、電源部14と、を備える(
図1参照)。
【0033】
(2-1-1)加速度計測部
加速度計測部10は、(1)概要で説明したように、半導体加速度センサを有し、直交する3軸(x軸、y軸及びz軸)の各方向の加速度の大きさを計測するように構成される。加速度計測部10は、3軸の各方向の加速度の大きさ(計測値)を、アナログ値からデジタル値に変換し、変換したデジタルの計測値(計測値データ)を判定部12に出力する。ただし、加速度計測部10は、いずれか一つの軸方向(取付方向)を鉛直方向に一致させることが好ましい。加速度計測部10の一つの軸方向(取付方向)が鉛直方向に一致していれば、判定部12における傾きの判定に要する処理(計算)の負担を軽減できる。
【0034】
(2-1-2)記憶部
記憶部11は、(1)概要で説明したように、フラッシュメモリなどの電気的に書換可能な不揮発性の半導体メモリを有する。記憶部11は、加速度計測部10の計測値データを記憶する。なお、記憶部11に対する計測値データの書き込み及び読出しは、判定部12が有するマイクロコントローラによって実行される。
【0035】
(2-1-3)判定部
判定部12は、(1)概要で説明したように、マイクロコントローラを有する。マイクロコントローラは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有する。判定部12は、メモリに記憶したプログラムをプロセッサに実行させることにより、異常の有無の判定等の処理を行う。なお、判定部12が行う処理の具体的な内容は後述する。
【0036】
(2-1-4)遮断信号送出部
遮断信号送出部13は、(1)概要で説明したように、判定部12が異常有りと判定した場合、主幹ブレーカB1に遮断信号(擬似漏電電流)を送出する。遮断信号送出部13は、例えば、定電流回路を有する。遮断信号送出部13は、電源部14から供給される直流電流を定電流回路で定電流化した遮断信号(擬似漏電電流)を、主幹ブレーカB1の中性極に流す。主幹ブレーカB1は、中性極に遮断信号(擬似漏電電流)が流れることにより、零相変流器で計測される不平衡電流の計測値が上限値を超えるため、引外し装置によって開閉機構を引き外して接点を強制的に開極する。
【0037】
(2-1-5)電源部
電源部14は、(1)概要で説明したように、加速度計測部10、記憶部11、判定部12及び遮断信号送出部13に動作用の電源を供給する。電源部14は、例えば、半導体スイッチング素子を用いたスイッチング電源回路を有し、交流電圧から動作用の電源(例えば、3V-5V程度の直流電圧)を得るように構成される。ゆえに、電源部14は、電力系統の停電に連動して動作用の電源の供給を停止する。
【0038】
(2-2)感震装置の動作
次に、感震装置A1の動作を詳細に説明する。なお、以下の説明においては、住宅の壁に設置された分電盤C1(住宅盤)のボックス31において、下段の右端の位置に感震装置A1が収容されることを想定する。
【0039】
(2-2-1)初期設定
分電盤C1の設置又は設置済みの分電盤C1への感震装置A1の取付けの施工完了後に、感震装置A1の取付方向の初期設定が実施される。
【0040】
感震装置A1において、施工完了後に主幹ブレーカB1が投入されることで電源部14が動作用の電源の供給を開始する。判定部12(マイクロコントローラ)は、動作用の電源が供給されることで起動する。判定部12は、メモリに記憶されている初期設定用のプログラムをプロセッサで実行することにより、初期設定の処理を開始する。
【0041】
判定部12は、加速度計測部10の3軸の各計測値データを取得する。感震装置A1が振動していなければ、加速度計測部10の3軸の各計測値データから求められる加速度の向き及び大きさは重力加速度の向き(鉛直方向)及び大きさ(9.8m/s2)と略一致するはずである。しかして、判定部12は、起動直後の数秒間に計測された計測値データの平均値から求めた加速度の向きを、取付方向の初期値として記憶部11に記憶し、初期設定の処理を完了する。
【0042】
(2-2-2)通常動作
判定部12は、初期設定の処理を完了した後、メモリに記憶されている通常動作用のプログラムをプロセッサで実行することにより、通常動作の処理を開始する。
【0043】
判定部12は、加速度計測部10で計測される3軸の計測値データから地震の揺れ(加速度)の大きさを計算する。判定部12は、計測値データから計算した揺れの大きさが規定値(震度5強に相当する揺れの大きさ)以上であれば、異常有りと判定するとともに、異常有りの判定結果を、判定した日時とともに記憶部11に記憶する。
【0044】
判定部12は、異常有りと判定した時点から所定の待機期間(例えば、3分)が経過した時点で停電していない場合、遮断信号送出部13から遮断信号を送出させる。ただし、判定部12は、待機期間の経過を待たずに、異常有りと判定した時点で遮断信号送出部13から遮断信号を送出させても構わない。なお、待機期間中に停電した場合、判定部12は、次回の復電時に遮断信号送出部13から遮断信号を送出させる。
【0045】
また、判定部12は、加速度計測部10で計測される3軸の計測値データから重力加速度の方向を計算し、記憶部11に記憶している取付方向の初期値との差、すなわち、感震装置A1の傾き角度を求め、求めた傾き角度を所定のしきい値(例えば、15度)と比較する。判定部12は、傾き角度がしきい値以上であれば、傾きに関する異常有りと判定するとともに、傾きに関する異常有りの判定結果を、判定した日時とともに記憶部11に記憶する。さらに判定部12は、傾きに関する異常有りと判定した時点から所定の待機期間(例えば、10秒)が経過した時点で停電していない場合、遮断信号送出部13から遮断信号を送出させる。一方、待機期間中に停電した場合、判定部12は、次回の復電時に遮断信号送出部13から遮断信号を送出させる。
【0046】
しかして、感震装置A1は、通常動作において震度5強に相当する揺れ又は15度以上の傾きを感知した場合に遮断信号を送出し、主幹ブレーカB1によって接点を強制的に開極させる。
【0047】
(2-2-3)再起動時の動作
次に、
図3のフローチャートを参照して再起動時の感震装置A1の動作を説明する。なお、「再起動時」とは、既に通常動作を行っている感震装置A1において、電源部14から動作用の電源の供給が中断した後に動作用の電源の供給が再開されたときを意味する。
【0048】
感震装置A1の判定部12が中断後に再起動すると(ステップS1)、メモリに記憶されている再起動時用のプログラムをプロセッサで実行することにより、再起動時の処理を開始する。
【0049】
まず、判定部12は、電源断(中断)の直前に地震感知があったか否か、すなわち、異常有りの判定結果が記憶部11に記憶されているか否かを判断する(ステップS2)。判定部12は、電源断直前の異常有りの判定結果が記憶部11に記憶されていると判断すれば、通常動作に移行し(ステップS7)、遮断信号送出部13から遮断信号を送出させる。
【0050】
判定部12は、電源断直前の異常有りの判定結果が記憶部11に記憶されていないと判断すれば、起動から所定時間(例えば、15秒)が経過しているか否かを判断する(ステップS3)。判定部12は、起動から所定時間内であれば、現在の地震感知の有無、すなわち、加速度計測部10の計測値データから計算される揺れの大きさが規定値以上か否かを判定する(ステップS4)。判定部12は、揺れの大きさが規定値以上であると判定すれば、通常動作に移行し(ステップS7)、遮断信号送出部13から遮断信号を送出させる。一方、判定部12は、揺れの大きさが規定値未満であると判定した場合、取付方向を変更したか否か、言い換えると、取付方向変更の条件を満たすか否かを判断する(ステップS5)。
【0051】
例えば、ボックス31に収容されている感震装置A1の取付位置が下段から上段に変更された場合、感震装置A1の取付方向が反転する(取付方向が180度変化する)。そのため、判定部12は、中断前の計測値における加速度の向きと、中断後の計測値における加速度の向き(傾き角度)の平均値(例えば、10秒間の平均値)との差を求め、その差を所定のしきい値(例えば、60度)と比較する。判定部12は、差がしきい値以上であるときに異常なし、すなわち、取付方向が変更されたと判定する。判定部12は、異常なしと判定すれば、中断後の加速度の向き(傾き角度)によって、記憶部11に記憶している取付方向を更新する(ステップS6)。判定部12は、取付方向を更新した後、再起動時の処理を終了して通常動作の処理を開始する(ステップS7)。
【0052】
(3)実施形態に係る回路遮断器の構成
実施形態に係る回路遮断器(主幹ブレーカB1)は、単相3線式電路に挿入される接点部20と、接点部20を開閉する開閉機構部21と、開閉機構部21を引き外して接点部20を開極させる引外し部22と、を備える(
図4参照)。さらに、主幹ブレーカB1は、感震装置A1と同一の構成要素である、加速度計測部10、記憶部11、判定部12及び電源部14を備える。判定部12は、異常有りと判定した場合、引外し部22を制御し、開閉機構部21を引き外して接点部20を開極させる。
【0053】
なお、実施形態に係る回路遮断器(主幹ブレーカB1)の動作については、上述した感震装置A1の動作と共通であるので、説明を省略する。
【0054】
(4)実施形態の利点
上述のように感震装置A1は、取付方向が変更されたか否かを判定部12で判定し、変更された場合は取付方向を変更後の取付方向に更新するので、取付方向の誤設定を抑制できる。
【0055】
また、感震装置A1の判定部12は、中断前の計測値から求められる振動(加速度)の大きさが所定値以上であった場合に異常有りと判定する。そのため、感震装置A1は、例えば、地震による停電から復電した際、主幹ブレーカB1によって接点を強制的に開極させるので、復電後の不具合の発生を抑制できる。
【0056】
さらに、感震装置A1の判定部12は、中断後の所定時間(例えば、15秒)内に、中断の前後の計測値における加速度の向きの差としきい値とを比較する。しかして、感震装置A1は、中断後の所定時間内で傾きに関する異常の有無を判定することにより、傾きに関する異常の見逃しを回避できる。
【0057】
また、判定部12は、中断後の所定時間内における計測値から求められる振動(加速度)の大きさが所定値以上であった場合に異常有りと判定する。しかして、感震装置A1は、再起動時の処理の実行中においても地震感知を行うので、誤った取付方向の更新を防ぐとともに異常(地震)の発生を確実に判定できる。
【0058】
さらに、判定部12は、中断前の計測値における加速度の向きと、所定時間内の計測値における加速度の向きの平均値との差をしきい値と比較する。しかして、感震装置A1は、中断前の計測値における加速度の向きと、所定時間内の計測値における加速度の向きの平均値との差を、判定部12にしきい値と比較させるので、取付方向の更新の要否をより確実に判定できる。
【0059】
(5)まとめ
本開示の第1の態様に係る感震装置(A1)は、加速度計測部(10)と、記憶部(11)と、判定部(12)と、遮断信号送出部(13)と、電源部(14)と、を備える。加速度計測部(10)は、加速度の向き及び大きさを計測する。記憶部(11)は、加速度計測部(10)による加速度の向き及び大きさの計測値を記憶する。判定部(12)は、計測値に基づいて異常の有無を判定する。遮断信号送出部(13)は、判定部(12)が異常有りと判定した場合、回路遮断器に遮断動作を行わせるための遮断信号を出力する。電源部(14)は、加速度計測部(10)、記憶部(11)、判定部(12)及び遮断信号送出部(13)に動作用の電源を供給する。判定部(12)は、記憶部(11)に記憶している取付方向と、計測値における加速度の向きと、を比較することで傾きに関する異常の有無を判定する。判定部(12)は、電源部(14)による動作用の電源の供給が一時的に中断された場合、中断の前後の計測値における加速度の向きの差を所定のしきい値と比較する。判定部(12)は、差がしきい値以上であるときに異常なしと判定して取付方向を更新する。
【0060】
第1の態様に係る感震装置(A1)は、取付方向が変更されたか否かを判定部(12)で判定し、変更された場合は取付方向を変更後の取付方向に更新するので、取付方向の誤設定を抑制できる。
【0061】
本開示の第2の態様に係る感震装置(A1)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様に係る感震装置(A1)において、判定部(12)は、中断前の計測値から求められる振動の大きさが所定値以上であった場合に異常有りと判定することが好ましい。
【0062】
第2の態様に係る感震装置(A1)は、例えば、地震による停電から復電した際、回路遮断器によって接点を強制的に開極させるので、復電後の不具合の発生を抑制できる。
【0063】
本開示の第3の態様に係る感震装置(A1)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様に係る感震装置(A1)において、判定部(12)は、中断後の所定時間内に、中断の前後の計測値における加速度の向きの差としきい値とを比較することが好ましい。
【0064】
第3の態様に係る感震装置(A1)は、中断後の所定時間内で傾きに関する異常の有無を判定することにより、傾きに関する異常の見逃しを回避できる。
【0065】
本開示の第4の態様に係る感震装置(A1)は、第3の態様との組合せにより実現され得る。第4の態様に係る感震装置(A1)において、判定部(12)は、所定時間内における計測値から求められる振動の大きさが所定値以上であった場合に異常有りと判定することが好ましい。
【0066】
第4の態様に係る感震装置(A1)は、誤った取付方向の更新を防ぐとともに異常の発生を確実に判定できる。
【0067】
本開示の第5の態様に係る感震装置(A1)は、第3又は第4の態様との組合せにより実現され得る。第5の態様に係る感震装置において、判定部(12)は、中断前の計測値における加速度の向きと、所定時間内の計測値における加速度の向きの平均値との差をしきい値と比較することが好ましい。
【0068】
第5の態様に係る感震装置(A1)は、取付方向の更新の要否をより確実に判定できる。
【0069】
本開示の第6の態様に係る回路遮断器(主幹ブレーカB1)は、加速度計測部(10)と、記憶部(11)と、判定部(12)と、電源部(14)と、一つ以上の接点部(20)と、接点部(20)を開閉する開閉機構部(21)と、引外し部(22)と、を備える。加速度計測部(10)は、加速度の向き及び大きさを計測する。記憶部(11)は、加速度計測部(10)による加速度の向き及び大きさの計測値を記憶する。判定部(12)は、計測値に基づいて異常の有無を判定する。電源部(14)は、加速度計測部(10)、記憶部(11)及び判定部(12)に動作用の電源を供給する。引外し部(22)は、判定部(12)が異常有りと判定したときに開閉機構部(21)を駆動して接点部(20)を開極する。判定部(12)は、記憶部(11)に記憶している取付方向と、計測値における加速度の向きと、を比較することで傾きに関する異常の有無を判定する。判定部(12)は、電源部(14)による動作用の電源の供給が一時的に中断された場合、中断の前後の計測値における加速度の向きの差を所定のしきい値と比較する。判定部(12)は、差がしきい値以上であるときに異常なしと判定して取付方向を更新する。
【0070】
第6の態様に係る回路遮断器は、取付方向が変更されたか否かを判定部(12)で判定し、変更された場合は取付方向を変更後の取付方向に更新するので、取付方向の誤設定を抑制できる。
【0071】
本開示の第7の態様に係る分電盤(C1)は、第1-第5のいずれかの態様に係る感震装置(A1)を含む内部機器(30)と、内部機器(30)を収容するボックス(31)と、を備える。
【0072】
第7の態様に係る分電盤(C1)は、取付方向が変更されたか否かを感震装置(A1)の判定部(12)で判定し、変更された場合は取付方向を変更後の取付方向に更新するので、取付方向の誤設定を抑制できる。
【0073】
本開示の第8の態様に係る分電盤(C1)は、第6の態様に係る回路遮断器(主幹ブレーカB1)を含む内部機器(30)と、内部機器(30)を収容するボックス(31)と、を備える。
【0074】
第8の態様に係る分電盤(C1)は、取付方向が変更されたか否かを回路遮断器の判定部(12)で判定し、変更された場合は取付方向を変更後の取付方向に更新するので、取付方向の誤設定を抑制できる。
【符号の説明】
【0075】
A1 感震装置
B1 主幹ブレーカ(回路遮断器)
C1 分電盤
10 加速度計測部
11 記憶部
12 判定部
13 遮断信号送出部
14 電源部
20 接点部
21 開閉機構部
22 引外し部
30 内部機器
31 ボックス