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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147404
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】多層フィルム、及び、容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/022 20190101AFI20241008BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20241008BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241008BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241008BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B27/28 101
B32B27/28 102
B32B27/00 H
B65D65/40 D
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060391
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】竹田 啓人
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB03
3E086BB05
3E086BB23
3E086BB74
3E086CA01
4F100AK04A
4F100AK68B
4F100AK69C
4F100AK80A
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10D
4F100DG10D
4F100EJ53
4F100GB16
4F100JD03C
4F100JJ03
4F100JK07
4F100JL11B
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】予め立体的に成形された基材に対して熱溶着する際の孔あきの発生が少ない多層フィルムを実現する。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂材と接着可能な外層である第一層11と、予め立体的に成形された紙製の基材に熱溶着可能な内層である第二層17と、を備え、ポリエチレン系樹脂の比率が60重量%以上であり、MD方向における引張りモードでの動的粘弾性測定において、測定温度150℃での貯蔵弾性率が0.3MPa以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂材と接着可能な外層である第一層と、予め立体的に成形された紙製の基材に熱溶着可能な内層である第二層と、を備え、
ポリエチレン系樹脂の比率が60重量%以上であり、
MD方向における引張りモードでの動的粘弾性測定において、測定温度150℃での貯蔵弾性率が0.3MPa以上である、多層フィルム。
【請求項2】
前記動的粘弾性測定において、測定温度150℃での貯蔵弾性率が4MPa以下である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
全体の厚みが80μm以上、180μm以下である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記第一層と前記第二層との間に第一機能層を備えている、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記第一機能層が極性基を有するポリエチレン系樹脂である、請求項4に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記極性基を有するポリエチレン系樹脂がアイオノマーである、請求項5に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記第一層と前記第二層との間に酸素バリア層である中間層を備えている、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記中間層がエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む、請求項7に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記第二層が、エチレン酢酸ビニル共重合体を含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項10】
照射線量50kGy以上300kGy以下の条件で電子線照射されている、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項11】
予め立体的に成形された紙製の前記基材と、請求項1から10のいずれか一項に記載の多層フィルムと、を備え、前記多層フィルムが前記基材に熱溶着されている、容器。
【請求項12】
レンジアップ耐性を有する、請求項11に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め立体的に成形された紙製の基材に熱溶着可能な多層フィルム及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
予め立体的に形成された紙製の基材に対して接着される多層フィルムが知られている。例えば特許文献1には、紙容器に対して接着される紙容器用ラミネートフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-146996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、予め立体的に成形された紙製の基材である紙コップに多層フィルムを加熱して接着している。ここで、予め立体的に成形された紙製の基材には、例えば平面の基材を立体的に成形すること等に起因して、基材が途切れている箇所が存在する場合がある。この基材が途切れている箇所は、多層フィルムを熱溶着することにより塞がれる。しかし、熱溶着時の温度が高くなる程、基材が途切れている箇所を塞いでいる部分の多層フィルムに孔あきが発生しやすくなるという問題があった。
【0005】
そこで、予め立体的に成形された基材に対して熱溶着する際の孔あきの発生が少ない多層フィルムの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、高温時の貯蔵弾性率を大きくすると予め立体的に成形された基材に多層フィルムを熱溶着する際の多層フィルムの孔あきが抑制されることを見出した。本発明は斯かる知見に基づいて為されたものである。
【0007】
本開示に係る多層フィルムは、ポリエチレン系樹脂材と接着可能な外層である第一層と、予め立体的に成形された紙製の基材に熱溶着可能な内層である第二層を備え、ポリエチレン系樹脂の比率が60重量%以上であり、MD方向における引張りモードでの動的粘弾性測定において、測定温度150℃での貯蔵弾性率が0.3MPa以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本開示に係る容器は、予め立体的に成形された紙製の前記基材と、上記の多層フィルムと、を備え、前記多層フィルムが前記基材に熱溶着されていることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、測定温度150℃での多層フィルムの貯蔵弾性率が0.3MPa以上であることにより、多層フィルムを予め立体的に成形された紙製の基材に熱溶着する際に、基材が途切れている箇所における孔あきの発生を抑制できる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
上記の多層フィルムは、一態様として、前記動的粘弾性測定において、測定温度150℃での貯蔵弾性率が4MPa以下であることが好ましい。
【0012】
上記の多層フィルムは、一態様として、全体の厚みが80μm以上、180μm以下であることが好ましい。
【0013】
上記の多層フィルムは、一態様として、前記第一層と前記第二層との間に第一機能層を備えていることが好ましい。
【0014】
上記の多層フィルムは、一態様として、前記第一機能層が極性基を有するポリエチレン系樹脂であることが好ましい。
【0015】
上記の多層フィルムは、一態様として、前記極性基を有するポリエチレン系樹脂がアイオノマーであることが好ましい。
【0016】
上記の多層フィルムは、一態様として、前記第一層と前記第二層との間に酸素バリア層である中間層を備えていることが好ましい。
【0017】
上記の多層フィルムは、一態様として、前記中間層がエチレン-ビニルアルコール共重合体を含むことが好ましい。
【0018】
上記の多層フィルムは、一態様として、前記第二層が、エチレン酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましい。
【0019】
上記の多層フィルムは、一態様として、照射線量20kGy以上300kGy以下の条件で電子線照射されていることが好ましい。
【0020】
上記の容器は、一態様として、レンジアップ耐性を有することが好ましい。
【0021】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】多層フィルムの層構成を示す断面模式図
図2】容器の構成を示す断面模式図
図3】穴あき発生率の傾向を示す図
図4】容器の製造方法を示すフローチャートを示す図
図5】貯蔵弾性率の測定結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、実施形態に係る多層フィルム10について、図面を参照して説明する。図1は、多層フィルム10の層構成を示す断面模式図である。図2は、容器20の構成を示す断面模式図である。多層フィルム10は、ポリエチレン系樹脂材に接着可能な外層である第一層11と、紙に接着可能な内層である第二層17と、を備えている。本実施形態では、多層フィルム10は、第一の面の側に設けられた第一層11と、中間層14と、第二の面の側に設けられた第二層17と、を記載の順に備えている。多層フィルム10の第二層17が予め立体的に成形された紙製の基材21に熱溶着されることで容器20となる。
【0024】
ここで、「ポリエチレン系樹脂材」とは、ポリエチレン系樹脂を含む部材である。ポリエチレン系樹脂材の例としては、ポリエチレン系樹脂製のフィルムや蓋等が挙げられる。また、「ポリエチレン系樹脂」とは、エチレンを少なくともモノマー単位として含む高分子である。「ポリエチレン系樹脂」の例としては、高密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、変性ポリエチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体等)、エチレン-ビニルアルコール系樹脂(例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体等)、エチレン-アクリル酸メチル系樹脂(例えば、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等)、エチレン-メタクリル酸系樹脂(例えば、エチレン-メタクリル酸共重合体等)、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸系樹脂、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル系樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0025】
また、「変性ポリエチレン系樹脂」の例としては、ポリエチレン、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0026】
また、「ポリオレフィン系樹脂」とは、オレフィンに由来する単位を含む高分子である。「ポリオレフィン系樹脂」の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体若しくは2種以上のオレフィン類の共重合体、又は1種以上のオレフィン類とオレフィン類以外の異種成分との共重合体等が挙げられる。
【0027】
また、「ポリプロピレン系樹脂」とは、プロピレンを少なくともモノマー単位として含む高分子である。「ポリプロピレン系樹脂」の例としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等が挙げられる。
【0028】
また、「変性ポリプロピレン系樹脂」の例としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体、プロピレンとエチレンとα-オレフィンとの3元共重合体等のポリプロピレン系樹脂に、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸又はその酸無水物を、グラフト共重合した変性重合体等が挙げられる。
【0029】
本実施形態における樹脂名の略称を以下に示す。
PE :ポリエチレン
HDPE :高密度ポリエチレン
MDPE :中密度ポリエチレン
LDPE :低密度ポリエチレン
LLDPE :直鎖状低密度ポリエチレン
ION :アイオノマー
EVA :エチレン-酢酸ビニル共重合体
EVOH :エチレン-ビニルアルコール共重合体
EMA :エチレン-アクリル酸メチル共重合体
EMAA :エチレン-メタクリル酸共重合体
MAA :メチルメタクリレート
PET :ポリエチレンテレフタラート
PO :ポリオレフィン
PP :ポリプロピレン
NY :ナイロン
【0030】
本実施形態では、多層フィルム10は、第一層11と第二層17との間に中間層14を備えている。また、多層フィルム10は、第一層11と第二層17との間に第一機能層12及び第二機能層16を備えている。図示の例では、多層フィルム10は、最外層である第一層11側から順に、第一機能層12、中間層14、第二機能層16、及び第二層17を備える。
【0031】
第一層11は、ポリエチレン系樹脂材と接着可能な外層である。本実施形態では、第一層11は、容器20の内容物と直接接する層であり各種の熱可塑性樹脂で構成されることが好ましい。第一層11は、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、及び熱可塑性エラストマー等で構成される。
【0032】
第一層11はポリエチレン系樹脂を含むことが望ましい。第一層11はポリエチレン系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいても良い。第一層11は、好適には、ポリエチレン系樹脂を60質量%以上含む。より好適には、ポリエチレン系樹脂を70質量%以上含む。更に好適には、ポリエチレン系樹脂を80質量%以上含む。
【0033】
第一層11がポリエチレン系樹脂を含む場合、多層フィルム10を第一層11側から電子線を照射して第一層11の架橋密度を向上させることができる。第一層11に含まれるポリエチレンは、好適には低密度ポリエチレン(LDPE)であり、更に好適には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。このようにすれば、多層フィルム10を第一層11側から電子線を照射した場合に、第一層11の架橋密度をより向上させることができる。
【0034】
第二層17は、予め立体的に成形された紙製の基材21に熱溶着可能な層である。第二層17は、一定の熱溶着性を発揮する公知の樹脂層で構成することができる。第二層17は、特に限定されないが、具体的には、例えばポリエチレン系樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン系共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体等)、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂を混合した混合物等で構成することができる。
【0035】
第二層17は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含むことが望ましい。第二層17は、好適には、エチレン酢酸ビニル共重合体を50質量%以上含む。より好適には、エチレン酢酸ビニル共重合体を60質量%以上含む。更に好適には、エチレン酢酸ビニル共重合体を70質量%以上含む。また、第二層17は、極性基を有する変性ポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。第二層17が変性ポリオレフィン系樹脂を含むことによって、紙製の基材21との接着性に優れる。変性ポリオレフィン系樹脂は、カルボキシ基、又は2個のカルボキシ基が無水物化された基、を有するモノマーから誘導された構成単位を有することが好ましい。
【0036】
変性ポリオレフィン系樹脂としては、変性ポリプロピレン系樹脂、変性ポリエチレン系樹脂が好ましい。第二層17は、変性ポリオレフィン系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいても良い。また、第二層17は、変性ポリオレフィン系樹脂単独であってもよいし、変性ポリオレフィン系樹脂と他の材料との混合物により構成されていてもよい。前記他の材料は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択され得る。
【0037】
本実施形態では、多層フィルム10は第一層11と第二層17との間に中間層14を備えている。中間層14の機能は特に限定されないが、好適には、ガスバリア性を多層フィルム10に付与する。「ガスバリア性」とは、ガスの透過しにくさのことを指す。中間層14は、例えば、炭酸ガス(CO)、窒素ガス(N)、酸素ガス(O)に対するガスバリア性を多層フィルム10に付与する。
【0038】
本実施形態では、中間層14は酸素バリア層である。また、中間層14がエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含む。ここで、エチレン-ビニルアルコール共重合体として、エチレン含有率が38mol%以下のものを用いると、ガスバリア性が特に高くなるため好ましい。なお、エチレン-ビニルアルコール共重合体の他に、中間層14に含まれる材料としては、ポリアミドMXD6、ポリ塩化ビニリデンなどが好適である。また、中間層14に、ガスバリア性を有する添加剤(マイカ、粘土など)が配合されていてもよい。中間層14は、好適には、ポリエチレン系樹脂を70質量%以上含む。より好適には、ポリエチレン系樹脂を80質量%以上含む。更に好適には、ポリエチレン系樹脂を90質量%以上含む。中間層14は、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を50質量%以上含む。
【0039】
中間層14の材料及び厚さは、多層フィルム10のガスバリア性に対して大きく影響するため、要求されるガスバリア性を発現する範囲で中間層14の材料及び厚さが選択される必要がある。中間層14の材料及び厚さは、当該材料を当該厚さに成形したフィルムについてJIS K 7126-2:2006(等圧法)により測定した酸素透過度が、5.0ml/m・day・atm以下であるように決定される。例えば、中間層14をエチレン含有率が38mol%以下のエチレン-ビニルアルコール共重合体により構成し、その厚さを6μm以上とすると、酸素透過度5.0ml/m・day・atm以下の基準を達成しやすい。なお、中間層14の材料及び厚さは、当該材料を当該厚さに成形したフィルムの酸素透過度が3.0ml/m・day・atm以下であるように決定されることがより好ましく、1.0ml/m・day・atm以下であるように決定されることが更に好ましい。
【0040】
本実地形態では、多層フィルム10は中間層14と第一層11との間に第一接着層13を備えている。また、多層フィルム10は中間層14と第二層17との間に第二接着層15を備えている。第一接着層13及び第二接着層15は、それぞれの両側に隣接する層同士を接着させる機能を有する。第一接着層13は、好適には中間層14に隣接する。第二接着層15は、好適には中間層14に隣接する。第一接着層13及び第二接着層15を構成する材料としては、それぞれが接着させるべき二層の組み合わせに応じて使用する材料が選択されるが、例えば、公知の接着性ポリマーが用いられる。
【0041】
本実施形態では、第一層11と第二層17との間に第一機能層12を備えている。また、本実施形態では、第一層11と第二層17との間に第二機能層16を備えている。第一機能層12及び第二機能層16の機能は特に限定されないが、好適には、耐熱性、耐冷凍性等を多層フィルム10に付与する。
【0042】
第一機能層12は、ポリエチレン系樹脂であることが好ましい。好適には、第一機能層12は極性基を有するポリエチレン系樹脂であることが好ましい。更に好適には、第一機能層12である極性基を有するポリエチレン系樹脂はアイオノマー(ION)であることが好ましい。第一機能層12は、好適にはポリエチレンを80質量%以上含む。より好適にはポリエチレンを90質量%以上含む。更に好適にはポリエチレンを100質量%以上含む。図1に示す例では、第一機能層12は第一層11と第一接着層13との間に配置されている。
【0043】
本実施形態では、後述の電子線照射は、第一層11側から行われる。このようにすれば、食品等の内容物と接する面である第一層11の耐熱性を効果的に高めることができる。また、紙製の基材に熱溶着する第二層17の接着力の低下を抑制することができる。
【0044】
第二機能層16は、ポリエチレン系樹脂であることが好ましい。好適には、第二機能層16は極性基を有するポリエチレン系樹脂であることが好ましい。更に好適には、第二機能層16である極性基を有するポリエチレン系樹脂は、アイオノマー(ION)であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂である第二機能層16は、好適にはポリエチレンを80質量%以上含む。より好適にはポリエチレンを90質量%以上含む。更に好適にはポリエチレンを100質量%以上含む。図1に示す例では、第二機能層16は第二接着層15と第二層17との間に配置されている。
【0045】
図3は、各種のパラメータに対する、熱溶着時の穴あき発生率(%)及び多層フィルム10の熱溶着後の熱収縮率(%)の傾向を示す図である。上段は、後述のラミネート工程S14における温度、すなわち、多層フィルム10を基材21に熱溶着する時の熱溶着温度(℃)に対する、熱溶着時の穴あき発生率(%)及び多層フィルム10の熱溶着後の熱収縮率(%)の傾向を示す図である。中段は、多層フィルム10への電子線照射時の照射線量(KGy)に対する、熱溶着時の穴あき発生率(%)及び多層フィルム10の熱溶着後の熱収縮率(%)の傾向を示す図である。下段は、多層フィルム10のアイオノマー比率(%)に対する、熱溶着時の穴あき発生率(%)及び多層フィルム10の熱溶着後の熱収縮率(%)の傾向を示す図である。
【0046】
この熱収縮率が高い場合、多層フィルム10が基材21に熱溶着された容器20を例えば電子レンジを用いて加熱した時に容器20の形状がくずれ易くなる。図3に示すように、熱溶着温度(℃)を上げると熱収縮率を下げることができるが、穴あき発生率が上昇する。また、照射線量を上げると穴あき発生率を下げることができるが、熱収縮率が上昇する。アイオノマー比率を上げると穴あき発生率と熱収縮率とを下げることができる。
【0047】
好適には、多層フィルム10は、照射線量300kGy以下の条件で電子線照射されたものである。より好適には、照射線量250kGy以下の条件で電子線照射されたものである。更に好適には、照射線量200kGy以下の条件で電子線照射されたものである。電子線照射の照射線量がこの範囲にあることにより、多層フィルム10の熱収縮率の上昇が抑制される。
【0048】
好適には、多層フィルム10は、照射線量50kGy以上の条件で電子線照射されたものである。より好適には、照射線量55kGy以上の条件で電子線照射されたものである。更に好適には、照射線量60kGy以上の条件で電子線照射されたものである。電子線照射の照射線量がこの範囲にあることにより、多層フィルム10に高い耐熱性を付与することが可能となり孔あきを抑制できる。
【0049】
電子線照射により多層フィルム10の架橋密度が向上する理由は定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、多層フィルム10に電子線が照射されると、多層フィルム10の第一層11のポリエチレン中の炭素-水素結合が切断され、切断された結合末端にラジカルが発生する。発生したラジカルは、分子鎖の分子運動により、他のポリエチレン分子鎖に接触し、水素原子を引き抜いてポリエチレン分子鎖中の炭素原子と結合し、その結果、架橋構造が形成されるものと考えられる。第一機能層12や中間層14でも同様の現象が起きているものと推測される。但し、上述したメカニズムはあくまで推測であり、その真偽によって本発明の範囲が影響を受ける訳ではない。
【0050】
多層フィルム10全体の厚さは、特に限定されないが、好適には200μm以下である。好適には、多層フィルム10の全体の厚みは、40μm以上、180μm以下である。更に好適には80μm以上140μm以下である。多層フィルム10の厚さが200μmを超えると、第二層17を基材21に熱成形(熱溶着)させる際に接着面に熱が伝わりにくくなり、熱成形(熱溶着)不良が生じやすくなる場合がある。多層フィルム10の厚さが40μm未満であると、中間層14が薄くなり、ガスバリア性が必要とされる水準に満たない場合がある。また、多層フィルム10の厚さが40μm未満であると、多層フィルム10を製造する際の歩留まりが低くなる可能性がある。
【0051】
本実施形態では、多層フィルム10のポリエチレン系樹脂の比率が60重量%以上である。好適には、多層フィルム10のポリエチレン系樹脂の比率が70重量%以上である。更に好適には、多層フィルム10のポリエチレン系樹脂の比率が80重量%以上である。多層フィルム10のポリエチレン系樹脂の比率は、各層のポリエチレン系樹脂の重量の合計を多層フィルム10全体の重量で割ることで算出した値である。
【0052】
本実施形態では、MD方向(Machine Direction)における引張りモードでの動的粘弾性測定において、測定温度150℃での多層フィルム10の貯蔵弾性率は、0.3MPa以上である。好適には、貯蔵弾性率は、0.4MPa以上である。より好適には、貯蔵弾性率は、0.5MPa以上である。更に好適には、貯蔵弾性率は、0.6MPa以上である。
【0053】
また、本実施形態では、MD方向における引張りモードでの動的粘弾性測定において、測定温度150℃での多層フィルム10の貯蔵弾性率は、4MPa以下である。好適には、貯蔵弾性率は3.7MPa以下である。より好適には、貯蔵弾性率は、3.3MPa以下である。更に好適には、貯蔵弾性率は3.0MPa以下である。このようにすれば、多層フィルム10の熱収縮率の上昇が抑制される。
【0054】
容器20は、予め立体的に成形された紙製の基材21と、多層フィルム10と、を備え、多層フィルム10が基材21に熱溶着されている。本実施形態では、容器20は更に蓋材22を備えている。容器20には、内容物として例えば食品や薬品等が収容される。蓋材22としては、例えばポリエチレン系樹脂材で構成されたトップシール包装用のトップフィルムや、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂材で構成されたスキンパック包装用のスキンフィルムが用いられる。「トップシール包装」とは、器に内容物を充填し、トップフィルムを器に熱溶着して好適には密封する包装である。「スキンパック包装」とは、トレー、台紙、エアキャップ、或いはフィルム等の器に製品を置き、加熱したスキンフィルムを上から被せ、同時に下方から空気を抜き、スキンフィルムを食品と器の表面に密着させて好適には密封する包装方法である。図示の例では、予め立体的に成形された基材21は紙容器であってトップシール包装用の器であり、蓋材22はトップフィルムである。
【0055】
第一層11がポリエチレン系樹脂を含む場合は、第一層11が耐油性を有するので、食品等が有する油分によって基材21が損傷することを回避できる。また、第一層11は電子線架橋により耐熱性が付与されていることから、例えば電子レンジで加熱された食品に対して十分な耐熱性を有する。好適には、多層フィルム10は、レンジアップ食品に用いることができるレンジアップ食品用多層フィルムである。ここで、レンジアップ食品とは電子レンジで加熱調理する食品を意味する。また、好適には、容器20は、レンジアップ耐性を有する。レンジアップ耐性を有するとは、食品を電子レンジで加熱調理可能であることを意味する。好適には、レンジアップ耐性を有するとは、JIS S2029:2002に規定された「電子レンジ高周波適正性試験」及び「電子レンジ耐久性試験」に適合することを意味する。容器20がレンジアップ耐性を有することにより、レンジアップ食品に容器20を好適に使用できる。
【0056】
第一層11は、蓋材22に熱溶着される。このため、多層フィルム10と蓋材22とにより画定される空間に食品等を密封することが可能である。例えば、多層フィルム10は中間層14に由来する高いガスバリア性(特に酸素バリア性であり、酸素透過度5.0ml/m・day・atm以下である。)を有する。蓋材22が同様に高いガスバリア性を有することにより、食品等を高いガスバリア性を有する部材により密封することができるので、食品等の劣化を抑制できる。
【0057】
容器20の製造方法は、図4に示すように、基材成形工程S11と、多層フィルム形成工程S12と、加熱軟化工程S13と、ラミネート工程S14とを含む。
【0058】
基材成形工程S11は、平面状の紙製材料から立体的な形状を有する基材21を成形する工程である。基材成形工程S11としては、公知の成形方法を用いることができる。かかる成形方法としては、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチフォーミング成形、プレス成形などの方法が例示される。紙製材料としては、古紙パルプやバージンパルプ、これらを適宜混合したパルプ等が用いられてもよい。容器20は、板紙を所望の形状となるように切込みを入れて組み立てることで立体的な形状に成形されたものであってもよく、型により成形されたものであってもよい。
【0059】
多層フィルム形成工程S12は、第一層11と、中間層14と、第二層17とを記載の順に備える多層フィルム10を形成する工程である。多層フィルム形成工程S12としては、例えば共押出成形が用いられる。すなわち、第一層11、第一機能層12、中間層14、第二機能層16、及び第二層17を構成する各材料を押出機から押し出して、これをtダイから吐出させることによって、上記の構成の多層フィルム10が形成される。他の形成方法として、層ごとにフィルム状に成形した第一層11、第一機能層12、中間層14、第二機能層16、及び第二層17を互いに熱溶着させる方法によって多層フィルム10が形成されてもよい。また、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法及びウェットラミネート法のいずれかによって接着剤を用いて貼り合わせることにより、多層フィルム10が形成されてもよい。図示の例では、基材成形工程S11の次に多層フィルム形成工程S12が行われるが、逆の順番でもよいし並行して行われてもよい。
【0060】
加熱軟化工程S13は多層フィルム10を加熱して軟化させる工程である。本実施形態では、基材21を成形型の下型に配置し、成形型の上型である熱板30に多層フィルム10を第二層17側が基材21に相対するように配置して120℃~150℃で加熱軟化させる。
【0061】
ラミネート工程S14は、加熱軟化工程S13により軟化した多層フィルム10を、基材21に第二層17が接する状態で密着させることにより熱溶着させる工程である。本実施形態では、多層フィルム10が配置された上型を降下させて、下型に配置された基材21に多層フィルム10の第二層17を密着させて圧力1.0kgf~2.5kgf、好ましくは、1.5kgf~2.0kgfで加圧して、その状態で1~5秒間保持することにより、多層フィルム10と基材21とを熱溶着させる。
【0062】
〔その他の実施形態〕
本発明に係る多層フィルム10、容器20のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0063】
上記の実施形態では、多層フィルム10が、第一層11、第一機能層12、第一接着層13、中間層14、第二接着層15、第二機能層16、及び第二層17を備える構成を例として説明した。しかし、本発明に係る多層フィルム10において、第一機能層12及び第二機能層16の存否はそれぞれ任意である。また、例えば第一機能層12及び第二機能層16が積層方向において中間層14の片側に集約されて設けられても良い。また、例えば中間層14と異なる機能を有する2つの層が積層方向において中間層14の両側に、当該中間層14に対して対称に更に設けられてもよい。
【0064】
本発明に係る多層フィルム10を構成する各層に用いられる高分子材料には、公知の添加剤が添加されてもよい。かかる添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、撥水材、撥油材などが例示される。
【0065】
上記の実施形態では、基材成形工程S11と、多層フィルム形成工程S12と、加熱軟化工程S13と、ラミネート工程S14とを含む容器製造方法が例示されていたが、他の工程があってもよい。例えば、蓋材成形工程やグラビア印刷工程等が更に設けられていてもよい。
【0066】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【0067】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0068】
下記の試料1~8の多層フィルムを製造後、動的粘弾性測定(DMA)及び穴あき検査を行った。
【0069】
試料1~8を構成する樹脂は以下の通りである。
(試料1)
第一層 :PE 厚み20μm
(製番:ユメリット4040FC:宇部丸膳ポリエチレン株式会社製)
第一機能層:EVA 厚み24μm
(製番:エバフレックスV5714C:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
第一接着層:PE 厚み 8μm
中間層 :EVOH 厚み20μm
(製番:エバールXEP-1393B:株式会社クラレ製)
第二接着層:PE 厚み 8μm
(製番:アドマーNF536:三井化学株式会社製)
第二層 :EVA 厚み20μm
(製番:エバフレックスV5714C:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
(試料2)
第一層 :PE 厚み20μm
(製番:ユメリット4040FC:宇部丸膳ポリエチレン株式会社製)
第一機能層:EVA 厚み24μm
(製番:エバフレックスV5716RC:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
第一接着層:PE 厚み 8μm
中間層 :EVOH 厚み20μm
(製番:エバールXEP-1393B:株式会社クラレ製)
第二接着層:PE 厚み 8μm
(製番:アドマーNF536:三井化学株式会社製)
第二層 :EVA 厚み20μm
(製番:エバフレックスV5714C:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
(試料3)
第一層 :PE 厚み20μm
(製番:ユメリット4040FC:宇部丸膳ポリエチレン株式会社製)
第一機能層:ION 厚み24μm
(製番:ハイミラン1601:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
第一接着層:PE 厚み 8μm
中間層 :EVOH 厚み20μm
(製番:エバールXEP-1393B:株式会社クラレ製)
第二接着層:PE 厚み 8μm
(製番:アドマーNF536:三井化学株式会社製)
第二層 :EVA 厚み20μm
(製番:エバフレックスV5714C:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
(試料4)
第一層 :PE 厚み20μm
(製番:ユメリット4040FC:宇部丸膳ポリエチレン株式会社製)
第一機能層:ION 厚み24μm
(製番:ハイミラン1855:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
第一接着層:PE 厚み 8μm
中間層 :EVOH 厚み20μm
(製番:エバールXEP-1393B:株式会社クラレ製)
第二接着層:PE 厚み 8μm
(製番:アドマーNF536:三井化学株式会社製)
第二層 :EVA 厚み20μm
(製番:エバフレックスV5714C:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
(試料5)
第一層 :PP 厚み44μm
(製番:ノーブレンWF836DG3:住友化学株式会社製)
第一接着層:PP 厚み 8μm
(製番:アドマーQF551:三井化学株式会社製)
中間層 :EVOH 厚み20μm
(製番:エバールXEP-1393B:株式会社クラレ製)
第二接着層:PE 厚み 8μm
(製番:アドマーNF536:三井化学株式会社製)
第二層 :EVA 厚み20μm
(製番:エバフレックスV5714C:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
(試料6)
第一層 :PP 厚み20μm
(製番:ノーブレンWF836DG3:住友化学株式会社製)
第一接着層:PP 厚み 8μm
(製番:アドマーQF551:三井化学株式会社製)
第一機能層:NY 厚み24μm
(製番:ウルトラミッドB40L09:BASFジャパン株式会社製)
中間層 :EVOH 厚み20μm
(製番:エバールXEP-1393B:株式会社クラレ製)
第二接着層:PE 厚み 8μm
(製番:アドマーNF536:三井化学株式会社製)
第二層 :EVA 厚み20μm
(製番:エバフレックスV5714C:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
(試料7)
第一層 :PE 厚み20μm
(製番:ユメリット4040FC:宇部丸膳ポリエチレン株式会社製)
第一接着層:PE 厚み 8μm
(製番:アドマーNF536:三井化学株式会社製)
第一機能層:NY 厚み24μm
(製番:ウルトラミッドB40L09:BASFジャパン株式会社製)
中間層 :EVOH 厚み20μm
(製番:エバールXEP-1393B:株式会社クラレ製)
第二接着層:PE 厚み 8μm
(製番:アドマーNF536:三井化学株式会社製)
第二層 :EVA 厚み20μm
(製番:エバフレックスV5714C:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
(試料8)
第一層 :PET 厚み20μm
(製番:BR8040:SKChemicals製)
第一接着層:変性PO 厚み 8μm
(製番:アドマーSF728:三井化学株式会社製)
第一機能層:NY 厚み24μm
(製番:ウルトラミッドB40L09:BASFジャパン株式会社製)
中間層 :EVOH 厚み20μm
(製番:エバールXEP-1393B:株式会社クラレ製)
第二接着層:PE 厚み 8μm
(製番:アドマーNF536:三井化学株式会社製)
第二層 :EVA 厚み20μm
(製番:エバフレックスV5714C:三井・ダウポリケミカル株式会社製)
【0070】
「動的粘弾性測定」
貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)により測定した。DMAの測定条件を以下に示す。
【0071】
(測定条件)
・多層フィルムの形状:長さ20mm、幅4mm、厚み100μm
・試験装置の型式 :DMA7100(株式会社日立ハイテクフィールディング製)
・測定温度 :200℃
・測定モード :引張り
・周波数 :10Hz
・最小張力 :50mN
・張力ゲイン :1.2
・力振幅初期値 :50mN
【0072】
図5に、試料1~8について測定温度(23℃から200℃)に対する貯蔵弾性率(MPa)の測定結果のグラフを示す。試料5、6、7の測定結果について200℃に至るまでにグラフが途切れているのは測定中に多層フィルムが破断してしまったためである。
【0073】
「穴あき検査」
試料1~8の多層フィルムを平面の基材から立体的に成形した紙製の容器に熱溶着して試験片を作成し、穴あき検査を行った。以下に穴あき検査における試験片(紙製の容器)の形状及び判定方法を示す。
【0074】
(紙製の容器の形状)
・縦130mm、横90mm、深さ40mmの略直方体の容器
【0075】
(判定方法)
エージレスシールチェック(三菱ガス化学株式会社製)を容器の多層フィルム表層に吹きかけ、1時間経過した後の容器の裏面からの漏出有無を目視で検査した。下記の表1では、穴あき判定の項目において、漏出無しの場合を「〇」、漏出有りの場合を「×」で示している。
【0076】
試料1~8の構成の概略、及び、動的粘弾性測定、穴あき検査のそれぞれの結果を下記の表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、ポリエチレン系樹脂の比率が60重量%以上であって、測定温度150℃での貯蔵弾性率が0.3MPa以上かつ4MPa以下である試料5~8について穴あき判定の結果が良好だった。孔あきの発生を抑制できる理由としては、あくまで推測であるが、高温時の貯蔵弾性率が小さくなり過ぎないことで、温度上昇時の多層フィルムの伸びが抑制され、紙製の基材が途切れている箇所に多層フィルムが留まりやすくなると考えられる。また、高温時の貯蔵弾性率が大きくなり過ぎないことで、温度上昇時の多層フィルムの伸びが十分となり、多層フィルムがちぎれにくくなると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、たとえば食品包装の用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10:多層フィルム
11:第一層
12:第一機能層
14:中間層
17:第二層
20:容器
21:基材
図1
図2
図3
図4
図5