(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147407
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂
(51)【国際特許分類】
C08F 20/06 20060101AFI20241008BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20241008BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08F20/06
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060397
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北畑 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】松本 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】津留 加奈子
【テーマコード(参考)】
4G066
4J100
【Fターム(参考)】
4G066AA16D
4G066AA20D
4G066AA66D
4G066AB05D
4G066AB07D
4G066AC17B
4G066AC35B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA25
4G066BA28
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA12
4G066DA13
4G066EA05
4J100AE77Q
4J100AJ02P
4J100AK08P
4J100AL66Q
4J100AL67Q
4J100AM24Q
4J100AN13Q
4J100AP07Q
4J100AQ21Q
4J100BA08Q
4J100BA65Q
4J100BC54Q
4J100FA02
4J100FA03
4J100GC25
4J100GC32
4J100JA60
(57)【要約】
【課題】吸収体全面で効率良く液を吸収し、かつ吸収速度に優れることにより、吸水性樹脂及び透水性基材を備える吸収性物品の吸収面全面での液戻り量を低減し、液保持性に優れた吸水性樹脂を提供する。
【解決手段】粒子状のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂であって、SAP移動度が10質量%以上である、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂により、前記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂であって、
下記(1)~(4)の手順により決定されるSAP移動度が10質量%以上である、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂:
(1)45度に傾斜した面を有するアクリル樹脂製の傾斜台の傾斜面に、4cm×12cmの長方形に切り取った不織布を、その長手方向が前記傾斜台の幅方向に対して垂直になる向きに貼り付ける
ここで、前記不織布は、厚み3mm、目付量41g/m2であり、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートの混合物製のエアスルー不織布であり、ポリエチレンの繊維径及びポリプロピレンの繊維径は0.18mm、ポリエチレンテレフタレートの繊維径は0.27mmである;
(2)前記不織布の最上辺から1cm下であって、前記不織布の最上辺に垂直な辺から2cm内側の位置に印を付け、前記印に対して鉛直上向き1cmの高さから、前記吸水性樹脂1.0gを5秒かけて投下する;
(3)前記不織布上又は前記不織布内を移動して滑り落ち、前記傾斜台の最下部に設置した受け皿に落下した前記吸水性樹脂を回収し、その質量を計測する;
(4)下記式(1)に従い、SAP移動度を算出する
SAP移動度[質量%]=回収した吸水性樹脂の質量[g]/投下した吸水性樹脂の全質量[g]×100・・・式(1)。
【請求項2】
水不溶性無機微粒子を含む、請求項1に記載のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
【請求項3】
前記水不溶性無機微粒子の比表面積が100m2/g未満である、請求項2に記載のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
【請求項4】
ボルテックス法による吸水速度が35秒未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂に関する。より具体的には、本発明は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料には、体液吸収の観点から、その構成材に、吸水性樹脂が、吸水剤として幅広く利用されている。このような吸水性樹脂としては、例えば、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、(メタ)アクリル酸部分中和物重合体の架橋物等が知られている。これらの中でも、吸水性能の観点から、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を単量体の主成分として用いたポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、工業的に最も多く生産されている。
【0003】
かかるポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂に望まれる特性を示すパラメーターとしては、無加圧下吸水倍率(CRC)、加圧下吸水倍率(AAP)、吸水速度(FSR/vortex)、無加圧下通液性、加圧下通液性、耐衝撃性、耐尿性、流動性、ゲル強度、耐着色性、粒度等多くのパラメーターが知られている。更に、同じパラメーター、例えば、無加圧下吸水倍率の中でも種々の観点から、数多くのパラメーター測定法が提案されている。これら数多くの特性に着目して開発されてきた吸水性樹脂は、前記数多くの特性(例えば、「無加圧下吸水倍率(CRC)」や「加圧下吸水倍率(AAP)」等)をコントロールしても、未だ紙オムツ等の吸収体に用いて実使用した場合には、十分な性能を発揮しているとは言い難いという問題があった。
【0004】
紙オムツ等の吸収体に用いて実使用した場合にも、吸水性樹脂が優れた性能を発揮する技術として、例えば、特許文献1には、液を素早く吸収し、高い液拡散性を維持すると共に、単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能を示すという課題を解決する吸収剤組成物として、ポリアクリル酸塩の架橋重合体である吸水性樹脂を含む吸収剤組成物であって、吸水性樹脂に対して所定量の非晶質二酸化ケイ素、及び/又は所定量の重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm2の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸収剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような従来技術は、液を素早く吸収し、高い液拡散性を維持する吸収剤組成物を提供するものであるが、吸水性樹脂及び透水性基材を備える紙オムツ等の吸収性物品に使用した際、その効果は依然十分ではなく、特に、吸収性物品の吸収面全面での液戻り量の低減の観点において、改善の余地があった。
【0007】
本発明の一態様は、吸水性樹脂及び透水性基材を備える吸収性物品の吸収体全面で効率良く液を吸収できることにより、吸収性物品の吸収面全面での液戻り量を低減することができる吸水性樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、下記の吸水性樹脂を提供する。
【0009】
〔1〕粒子状のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂であって、
下記(1)~(4)の手順により決定されるSAP移動度が10質量%以上である、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂:
(1)45度に傾斜した面を有するアクリル樹脂製の傾斜台の傾斜面に、4cm×12cmの長方形に切り取った不織布を、その長手方向が前記傾斜台の幅方向に対して垂直になる向きに貼り付ける
ここで、前記不織布は、厚み3mm、目付量41g/m2であり、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートの混合物製のエアスルー不織布であり、ポリエチレンの繊維径及びポリプロピレンの繊維径は0.18mm、ポリエチレンテレフタレートの繊維径は0.27mmである;
(2)前記不織布の最上辺から1cm下であって、前記不織布の最上辺に垂直な辺から2cm内側の位置に印を付け、前記印に対して鉛直上向き1cmの高さから、前記吸水性樹脂1.0gを5秒かけて投下する;
(3)前記不織布上又は前記不織布内を移動して滑り落ち、前記傾斜台の最下部に設置した受け皿に落下した前記吸水性樹脂を回収し、その質量を計測する;
(4)下記式(1)に従い、SAP移動度を算出する
SAP移動度[質量%]=回収した吸水性樹脂の質量[g]/投下した吸水性樹脂の全質量[g]×100・・・式(1)。
【0010】
〔2〕水不溶性無機微粒子を含む、〔1〕に記載のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
【0011】
〔3〕前記水不溶性無機微粒子の比表面積が100m2/g未満である、〔2〕に記載のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
【0012】
〔4〕ボルテックス法による吸水速度が35秒未満である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、吸水性樹脂及び透水性基材を備える吸収性物品の吸収体全面で効率良く液を吸収できることにより、吸収性物品の吸収面全面での液戻り量を低減することができる吸水性樹脂を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】吸収体の液戻り量評価用の吸収体の作製手順を示す図であり、粘着テープに不織布を載せた状態を真上から見た図であり、1002は前記不織布に吸水性樹脂を散布した状態を真上から見た図であり、1003は評価用吸収体の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態において、粉砕工程で用いられるロール式粉砕装置の模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態において、粉砕工程で用いられるロール式粉砕装置の一対のロールを模式的に示す図であり、2001は、両方のロールの表面において溝が設けられている、一対のロールであり、2002は、一方のロールの表面において溝が設けられ、他方のロールの表面において溝が設けられていない、一対のロールである。
【
図4】SAP移動度評価用の装置を、傾斜台に貼りつけた不織布の長手方向中心線を含み水平面に対して垂直な面で切断した断面図である。
【
図5】SAP移動度評価用の装置における、不織布を貼り付けた傾斜台の外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0016】
〔1〕用語の定義
(1-1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、以下の物性を満たすものをいう。即ち、「水膨潤性」として、ERT441.2-02で規定されるCRCが5g/g以上、かつ、「水不溶性」として、ERT470.2-02で規定されるExtが50重量%以下の物性を満たす高分子ゲル化剤を指す。
【0017】
前記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜、設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、前記吸水性樹脂は、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、前記物性(CRC、Ext)を満足する範囲内で、添加剤等を含んだ吸水性樹脂組成物であってもよい。更に、本発明における前記吸水性樹脂は、最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂、表面架橋後の吸水性樹脂、造粒後の吸水性樹脂等)を指す場合もあり、前記吸水性樹脂組成物と合わせて、これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。なお、吸水性樹脂の形状については特に限定されず、シート状、繊維状、フィルム状、及び粒子状等が挙げられるが、本発明では粒子状の吸水性樹脂が好ましい。
【0018】
(1-2)「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂」
本発明における「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、任意にグラフト成分を含み、繰り返し単位として、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩(以下、「(メタ)アクリル酸(塩)」と称する)に由来する構成単位を主成分とする吸水性樹脂を意味する。前記ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)に対し、(メタ)アクリル酸(塩)を、好ましくは50~100モル%、より好ましくは70~100モル%、更に好ましくは90~100モル%、特に好ましくは実質100モル%含む吸水性樹脂である。
【0019】
(1-3)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定/公知文献)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0020】
(1-4)「透水性基材」
本発明における「透水性基材」とは、紙オムツ等の吸収性物品に用いられる吸収体において、投入された液体を透過及び/又は拡散する機能を有し、吸水性樹脂に直接接触する部材を指す。具体的には、親水性繊維(例えば、パルプ繊維等)、親水性繊維の積繊体、親水性繊維を構成繊維として含む親水性不織布、合成繊維を構成繊維として含む不織布等が挙げられる。
【0021】
(1-5)その他
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。本明細書において、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。本明細書において、特記しない限り、「ppm」は、「質量ppm」を意味する。本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。本明細書において、体積の単位「リットル」を「l」又は「L」と表記する場合がある。
【0022】
〔2〕吸水性樹脂
(2-1)SAP移動度
本発明者らは、吸水性樹脂及び透水性基材を備える吸収性物品において、透水性基材の繊維間又は繊維上を移動しやすい吸水性樹脂を使用することにより、吸収体全面に吸水性樹脂を分布させることができること、及び、吸収面全面での液戻り量を低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明において、吸水性樹脂の「SAP移動度」とは、45度に傾斜した面を有する傾斜台の傾斜面上に設置した透水性基材の上端付近から吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent polymer)を落下させた時に、落下させた吸水性樹脂全質量に対する、傾斜台の下まで滑り落ちた吸水性樹脂の質量の割合を意味する。具体的には、SAP移動度は、実施例に記載の方法によって測定された測定値を用いて、下記式(1)によって算出される。
SAP移動度[質量%]=回収した吸水性樹脂の質量[g]/投下した吸水性樹脂の全質量[g]×100・・・式(1)
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂のSAP移動度は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上である。また、SAP移動度の上限は特に限定されるものではないが、好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。前記吸水性樹脂のSAP移動度が10質量%以上であれば、吸水性樹脂及び透水性基材を備える吸収性物品に用いたときに、吸水性樹脂が透水性基材の繊維間又は繊維上を移動しやすいため、吸収体全面に均等に吸水性樹脂を分布させることができる。それゆえ、吸収体全面で効率よく液が吸収されるため、吸収面全面での液戻り量を低減できる。これに対して、吸収体全面に均等に吸水性樹脂が分布していない場合(偏析している場合)は、吸水性樹脂が存在しない部分に存在する液が、液戻りするため、液戻り量が多くなる。また、前記吸水性樹脂のSAP移動度が50質量%以下であれば、吸水性樹脂及び透水性基材を備える吸収性物品の製造時に歩留まりが優れるため好ましい。
【0023】
具体的には、吸収性物品の製造工程において、透水性基材上に吸水性樹脂を散布するときに、吸水性樹脂を均一に散布できた場合、後の工程において、トップシートで挟持されるか、又は、コアラップシートで包装されることにより、吸水性樹脂の分布状態が固定されるため、均一のまま維持される。一方、吸水性樹脂の散布工程において偏析が生じた場合、従来の吸水性樹脂では不均一な分布状態が解消されないが、SAP移動度が有意に高い本発明の吸水性樹脂であれば、トップシートやコアラップシートで固定されるまでの間に振動を付与する等の操作により、透水性基材上の吸水性樹脂の分散を均一化することが可能となる。
【0024】
(2-2)吸水性樹脂の形状
本発明の一実施形態において、吸水性樹脂の形状は粒子状であることが好ましく、具体的には、不定形破砕状粒子、球状粒子、フットボール状粒子、凝集体状粒子又は造粒体状粒子等の形状が挙げられる。ここで、球状とは、真球に限定されるものではなく、アスペクト比が1.0~1.2である略球状のものも含む。これらの中でも、透水性基材の繊維間又は繊維上を移動しやすいとの観点から、球状粒子、球状の凝集体状粒子又は球状の造粒体状粒子であることがより好ましい。
【0025】
(2-3)添加剤
本発明の一実施形態において、吸水性樹脂は、種々の機能を発現するために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、水不溶性無機微粒子、有機粉末(例えば、金属石鹸等)、消臭剤、抗菌剤、パルプ、熱可塑性繊維等が挙げられる。
【0026】
前記水不溶性無機微粒子としては、例えば、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩);カオリン;タルク;クレー;ベントナイト;リン酸カルシウム;リン酸バリウム;珪酸又はその塩;粘土;珪藻土;シリカゲル;ゼオライト;ヒドロキシアパタイト;ハイドロタルサイト;バーミキュライト;パーライト;イソライト;活性白土;ケイ砂;ケイ石;ストロンチウム鉱石;蛍石;ボーキサイト;シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン等の金属酸化物;亜鉛と珪素、又は、亜鉛とアルミニウムとを含む複合含水酸化物(例えば、国際公開第2005/010102号に例示)等が挙げられる。本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、これら水不溶性無機微粒子の中でも、特に、ハイドロタルサイト;カオリン、タルク、ゼオライト等の粘土鉱物;リン酸カルシウム;リン酸バリウム;珪酸(塩)等を含むことがより好ましい。これらの水不溶性無機微粒子を含む吸水素樹脂を、吸収性物品に使用した場合に、吸水性樹脂粒子と透水性基材との間に生じる摩擦を低減して滑り性をよくすることができるため、吸水性樹脂が透水性基材の繊維上又は繊維間を移動し易くなるため、好ましい。
【0027】
前記水不溶性無機微粒子の含有量は、吸水性樹脂と透水性基材との間に生じる摩擦を低減するとの観点から、吸水性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01~5.00重量部であり、より好ましくは0.05~3.00重量部であり、さらに好ましくは0.10~1.00重量部であり、特に好ましくは0.20~0.50重量部である。
【0028】
前記水不溶性無機微粒子は、吸水性樹脂の粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。水不溶性無機微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01~50.00μmであり、0.10~30.00μm、又は、1.00~20.00μmであってもよい。ここで、平均粒子径は、粒子の特性に応じて、細孔電気抵抗法又はレーザー回折・散乱法によって測定することができる。
【0029】
前記水不溶性無機微粒子の比表面積は、好ましくは100m2/g未満であり、より好ましくは95m2/g未満であり、さらに好ましくは90m2/g未満、80m2/g未満であり、特に好ましくは50m2/g未満である。また、前記水不溶性無機微粒子の比表面積の下限は特に限定されないが、好ましくは0.1m2/g以上であり、より好ましくは1.0m2/g以上であってもよい。ここで、比表面積は、BET法によって測定することができる。前記水不溶性無機微粒子の比表面積が、100m2/g未満であれば、吸水性樹脂と透水性基材との間に生じる摩擦を低減できるため好ましい。
【0030】
(2-4)CRC
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下での吸水倍率を意味する。本明細書においては、CRCは、EDANA法(ERT441.2-02)に準拠して測定される。
【0031】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂のCRCは、衛生材料に用いた際の吸水特性の観点から、好ましくは15g/g以上、より好ましくは20g/g以上、更に好ましくは25g/g以上である。又、前記吸水性樹脂のCRCの上限は、特に制限されないが、好ましくは50g/g以下である。
【0032】
(2-5)Ext
「Ext」は、Extractables(水可溶分)の略称であり、吸水性樹脂から抽出される可溶分量を意味する。本明細書において、Extは、EDANA法(ERT470.2-02)に準拠して測定される。
【0033】
(2-6)AAP
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下における吸水倍率を意味する。本発明においては、AAPは、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更する以外は、EDANA法(ERT442.2-02)に準拠して測定される。具体的には、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を用い、吸水性樹脂0.9gを1時間、4.83kPaの加圧下で膨潤させた後、AAP(加圧下吸水倍率)(単位:g/g)を測定する。
【0034】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂のAAPは、衛生材料に用いた際の吸水特性の観点から、好ましくは15g/g以上、より好ましくは18g/g以上、更に好ましくは20g/g以上である。又、前記吸水性樹脂のAAPの上限は、特に制限されないが、好ましくは40g/g以下である。
【0035】
(2-7)含水率
「含水率」は、試料量を1.0g、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更する以外は、EDANA法(ERT430.2-02)に準拠して測定される。
【0036】
(2-8)質量平均粒子径(D50)
「質量平均粒子径(D50)」は、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された「(3)Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」に準拠して測定される。
【0037】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50)は、吸収性物品における透水性基材の繊維間又は繊維上を吸水性樹脂が移動し易いとの観点から、好ましくは250μm~800μm、より好ましくは300μm~700μm、更に好ましくは310μm~600μm、特に好ましくは320μm~500μmである。また、粒子径が150μm未満の粒子の割合、すなわち、目開き150μmのJIS標準篩を通過する粒子の割合は、吸収性物品における透水性基材の繊維間又は繊維上に付着して留まる細粒が少ない方が好ましいとの観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。前記質量平均粒子径が250μm以上であれば、吸収性物品における透水性基材の繊維間又は繊維上を吸水性樹脂が移動し易く、更に粉塵が少なく取り扱い性がよいという利点を有する。また、前記質量平均粒子径が800μm以下であれば、体液(例えば、尿及び血液等)等を吸収する速度の低下が防止され、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適する。
【0038】
(2-9)嵩比重
「嵩比重」は、EDANA法(ERT460.2-02)に準拠して測定される。
【0039】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の嵩比重は、好ましくは0.60g/mL~1.00g/mL、より好ましくは0.62g/mL~0.90g/mL、さらに好ましくは0.64g/mL~0.80g/mLである。前記嵩比重が0.60~1.00g/mLであれば、吸水性樹脂における体液(例えば、尿及び血液等)等の吸収速度の低下が防止され、吸水性樹脂は、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適する。
【0040】
(2-10)吸水速度
本発明において、吸水性樹脂の「吸水速度」とは、「ボルテックス法(Vortex)による吸水速度」を意図する。「ボルテックス法による吸水速度」とは、スターラーチップによって600rpmで攪拌された0.9質量%塩化ナトリウム水溶液50g中に、吸水性樹脂2.0gを添加し、該スターラーチップが試験液に覆われるまでの時間を意味する。
【0041】
「吸水速度」に優れる吸水性樹脂は、吸収性物品として使用した場合において、即座に液を取り込み、液戻り量を低減することができるため好ましい。本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の吸水速度は、好ましくは45秒未満、より好ましくは40秒未満、更に好ましくは35秒未満、特に好ましくは30秒未満である。吸収速度の下限は特に制限されないが、10秒以上、或いは15秒以上であり、20秒以上であってもよい。前記吸水性樹脂の吸収速度が45秒未満であれば、透水性基材が拡散させた液を素早く取り込むことができるため、液保持性に優れ、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適する。
【0042】
本発明者らは、吸水性樹脂及び透水性基材を備える吸収性物品において、所定のSAP移動度を有する吸水性樹脂を使用することにより、吸収体全面に吸水性樹脂を分布させることができること、及び、吸収面全面での液戻り量を低減できることを見出したが、さらに、同程度のSAP移動度を有する吸水性樹脂であっても、吸水速度により優れる吸水性樹脂を使用する場合、吸収面全面での液戻り量をさらに低減できることを見出した。特に、前記吸水性樹脂の吸収速度が35秒未満であれば、吸収面全面での液戻り量をさらに低減できるため好ましい。
【0043】
〔3〕吸水性樹脂の製造方法
以下に、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造工程を示す。
【0044】
(3-1)単量体水溶液調製工程
本工程は、(メタ)アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を調製する工程である。なお、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下しない範囲で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本項では便宜上、単量体水溶液について説明を行う。
【0045】
また、前記「主成分」とは、(メタ)アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、吸水性樹脂の重合反応に供される単量体(内部架橋剤を除く)全体に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることをいう。
【0046】
((メタ)アクリル酸(塩))
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法では、得られる吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、単量体として(メタ)アクリル酸(塩)が用いられる。
【0047】
前記「(メタ)アクリル酸」としては、公知の(メタ)アクリル酸であればよく、重合禁止剤として、好ましくはメトキシフェノール類、より好ましくはp-メトキシフェノールを、(メタ)アクリル酸の重合性及び吸水性樹脂の色調の観点から、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10~160ppm、更に好ましくは20~100ppm含んでいてもよい。また、(メタ)アクリル酸中の不純物については、米国特許出願公開第2008/0161512号に記載された化合物が本発明にも適用される。
【0048】
前記「(メタ)アクリル酸塩」は、前記(メタ)アクリル酸を下記塩基性組成物で中和して得られた中和物である。該(メタ)アクリル酸塩としては、市販の(メタ)アクリル酸塩(例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウム等)を用いてもよいし、吸水性樹脂の製造プラント内で中和して得られたものを用いてもよい。
【0049】
(塩基性組成物)
本発明の一実施形態において、「塩基性組成物」とは、塩基性化合物を含有する組成物を意味する。塩基性組成物としては、例えば、市販の水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。
【0050】
前記塩基性化合物として、具体的には、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。これらの中でも、得られる吸水性樹脂の物性の観点から、前記塩基性化合物は強塩基性であることが好ましい。即ち、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0051】
(中和)
本発明の一実施形態において、中和として、(メタ)アクリル酸に対する中和(重合前)及び(メタ)アクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体に対する中和(重合後)(以下、「後中和」と称する)の何れかを選択又は併用することができる。これら中和の方法は、連続式でもバッチ式でもよく、特に限定されないが、生産効率等の観点から、連続式が好ましい。
【0052】
中和装置、中和温度、滞留時間等の条件については、国際公開第2009/123197号や米国特許出願公開第2008/0194863号に記載された条件が適用される。
【0053】
本発明の一実施形態における中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10~90モル%、より好ましくは40~85モル%、更に好ましくは50~80モル%、特に好ましくは60~75モル%である。該中和率が10モル%未満の場合、吸水倍率が著しく低下することがある。一方、該中和率が90モル%を超える場合、加圧下吸水倍率の高い吸水性樹脂が得られないことがある。
【0054】
前記中和率は、重合前の中和でも、後中和の場合でも同様である。又、最終製品としての吸水性樹脂の中和率についても、前記中和率が適用される。なお、中和率75モル%とは、(メタ)アクリル酸25モル%及び(メタ)アクリル酸塩75モル%の混合物を意味する。又、該混合物を(メタ)アクリル酸部分中和物と称する場合もある。
【0055】
(他の単量体)
本明細書において、「他の単量体」とは、前記(メタ)アクリル酸(塩)以外の単量体を意味する。該他の単量体は、(メタ)アクリル酸(塩)と併用して、吸水性樹脂を製造することができる。
【0056】
前記他の単量体としては、水溶性の不飽和単量体又は疎水性の不飽和単量体が挙げられる。具体的には、米国特許出願公開第2005/0215734に記載された化合物(但し、(メタ)アクリル酸は除く)が本発明にも適用される。
【0057】
(内部架橋剤)
本発明で使用される内部架橋剤としては、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。前記内部架橋剤は、反応性の観点から、1種又は2種以上を選択することができる。
【0058】
得られる吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、前記内部架橋剤としては、重合性不飽和基を2個以上有する化合物が好ましく、後述する乾燥温度で熱分解性を有する重合性不飽和基を2個以上有する化合物がより好ましく、(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有する重合性不飽和基を2個以上有する化合物が更に好ましい。
【0059】
前記重合性不飽和基としては、好ましくはアリル基、(メタ)アクリレート基が挙げられる。この中でも、吸水性能の観点から、(メタ)アクリレート基がより好ましい。前記(ポリ)アルキレングリコール構造単位としては、吸水性能の観点から、ポリエチレングリコールが好ましい。前記(ポリ)アルキレングリコール構造単位のn数としては、好ましくは1~100、より好ましくは6~50である。
【0060】
前記内部架橋剤の使用量は、単量体全体に対して、好ましくは0.0001~10モル%、より好ましくは0.001~1モル%である。該使用量を前記範囲内とすることで、所望する吸水性樹脂が得られる。なお、該使用量が0.0001モル%以上である場合、ゲル強度が増加し水可溶分が低下する傾向にあり、該使用量が10モル%以下である場合、吸水倍率が増加する傾向にあるため、好ましい。
【0061】
本発明の一実施形態において、内部架橋剤を添加する方法は特に限定されないが、予め単量体水溶液に内部架橋剤を添加し、重合と同時に架橋反応を起こさせる方法、重合中又は重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル架橋する方法、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を用いて放射線架橋する方法等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、予め単量体水溶液に内部架橋剤を添加し、重合と同時に架橋反応を起こさせる方法が好ましい。前記方法は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜これらを併用してもよい。
【0062】
(その他、単量体水溶液に添加される物質)
本発明の一実施形態において、得られる吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記の物質を単量体水溶液の調製時に添加することもできる。
【0063】
具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子を、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下(下限は0重量%)添加してもよい。
【0064】
更に、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等を、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)に対して、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下(下限は0重量%)添加してもよい。
【0065】
前記物質の添加の形態は、単量体水溶液に添加される形態であってもよく、重合途中で添加される形態であってもよい。前記添加の形態は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜これらを併用してもよい。
【0066】
なお、親水性高分子として水溶性樹脂又は吸水性樹脂を使用する場合には、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉-アクリル酸重合体、PVA-アクリル酸重合体等)が得られる。これらの重合体、吸水性樹脂組成物も本発明の吸水性樹脂の範疇である。
【0067】
(単量体成分の濃度)
本工程において、単量体水溶液を調製する際に、前記の各物質が添加される。該単量体水溶液中の単量体成分の濃度としては特に限定されないが、吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは10~80重量%、より好ましくは20~75重量%、更に好ましくは30~70重量%である。
【0068】
水溶液重合又は逆相懸濁重合を採用する場合、水以外の溶媒を必要に応じて併用することもできる。この場合、溶媒の種類は特に限定されない。
【0069】
前記「単量体成分の濃度」とは、下記式(2)で求められる値であり、単量体水溶液の重量には、親水性高分子のグラフト成分(例えば、澱粉等)や、再利用のために添加される製造工程から発生した吸水性樹脂の微粉、逆相懸濁重合における疎水性溶媒の重量は含めない。
【0070】
単量体成分の濃度(重量%)={(単量体成分の重量)/(単量体水溶液の重量)}×100・・・式(2)。
【0071】
(3-2)重合工程
本工程は、前記単量体水溶液の調製工程で得られた単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
【0072】
(重合開始剤)
本発明の一実施形態において使用される重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、又はこれらの重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許第7265190号に開示された重合開始剤のうち、1種又は2種以上が用いられる。なお、重合開始剤の取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは過酸化物又はアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が使用される。
【0073】
前記重合開始剤の使用量は、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.001~0.5モル%である。また、前記還元剤の使用量は、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.0001~0.02モル%である。
【0074】
なお、前記重合開始剤に代えて、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合反応を実施してもよく、これらの活性エネルギー線と重合開始剤を併用してもよい。
【0075】
(重合形態)
本発明の一実施形態においてに適用される重合形態としては、特に限定されないが、水溶液重合、逆相懸濁重合、液滴重合、バルク重合、沈殿重合等が挙げられる。これらの中でも、良好な吸水特性の確保や重合制御の容易性等の観点から、水溶液重合又は逆相懸濁重合が好ましい。
【0076】
逆相懸濁重合を用いる場合は、球形度の高い粒子を製造することができるため、透水性基材の繊維間又は繊維上を移動しやすい吸水性樹脂を好適に製造することができる。また、水溶液重合により製造される吸水性樹脂は、不定形な形状を有する傾向があるが、その後の工程において、研磨することにより、角が取れて表面が滑らかな粒子とすることができるため、透水性基材との摩擦力が小さく繊維間又は繊維上を移動しやすい吸水性樹脂を好適に製造することができる。
【0077】
(3-3)ゲル粉砕工程
本工程は、前記重合工程で得られた含水ゲルを、ゲル粉砕機(例えば、ニーダー、ミートチョッパー等のスクリュー押出し機、カッターミル等)でゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。なお、前記重合工程がニーダー重合の場合には、重合工程及びゲル粉砕工程は同時に実施される。液滴重合や逆相懸濁重合等、粒子状含水ゲルが重合過程で直接得られる場合には、該ゲル粉砕工程が実施されないこともある。
【0078】
前記以外のゲル粉砕条件や形態については、国際公開第2011/126079号に開示される内容が、本発明に好ましく適用される。
【0079】
(3-4)乾燥工程
本工程は、前記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを、所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。該樹脂固形分は、乾燥減量(吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の重量変化)から求められ、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85~99重量%、更に好ましくは90~98重量%である。
【0080】
前記粒子状含水ゲルの乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、攪拌乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等が挙げられる。中でも、乾燥効率と形状保持の観点から、攪拌乾燥が好ましい。
【0081】
(3-5)粉砕工程
粉砕工程は、前記乾燥工程を経て得られた粒子状の乾燥重合体を粉砕し、所望の粒子径及び粒子形状に調整する工程である。
【0082】
本発明の一実施形態においては、この粉砕工程において、粉砕条件を精密に制御することが重要である。
【0083】
(粉砕装置)
本工程で用いられる粉砕装置としては、種々の粉砕装置が挙げられるが、本発明の一実施形態においては、粒子状の乾燥重合体を最適な形状に調整しやすいことから、特定のロール式粉砕装置を使用することが好ましい。前記特定のロール式粉砕装置としては、例えば、2本一対のロールから構成されており、一対のロールのうち少なくとも一方のロールの表面に、ロール回転方向に対して平行に延びる溝(縦溝)が設けられているロール式粉砕装置が用いられる。この特定のロール式粉砕装置に備えられた一対のロール間のクリアランスに粒子状の乾燥重合体を通すことによって、当該粒子状の乾燥重合体は、ロール間で圧縮、せん断又は圧密されて、これにより、当該粒子状の乾燥重合体が粉砕される。このような特定のロール式粉砕装置としては、例えば、ロールグラニュレーター(日本グラニュレーター株式会社製)、ロールグラニュレーター(株式会社栗本鐵工所製)、GRAN-U-LIZER(MPE社製)等が挙げられる。この特定のロール式粉砕装置を使用すれば、粉砕力がマイルドであることから、吸水性樹脂を破砕してしまうことが抑えられるため、丸みを帯びた球形度が高い粉砕物を得ることができる。また、微粉の発生も抑えられる。それゆえ、透水性基材の繊維間又は繊維上を移動しやすい吸水性樹脂を好適に製造することができる。
【0084】
一方、前記一対のロールにおいて、両方のロールの表面に溝が無いもの、溝を有していてもロール回転方向に対して垂直に延びる溝が設けられているもの等は、ダメージが強いことから、丸みのない破砕物や微粉が多く生じるため、好ましくない。
【0085】
本発明の一実施形態において粉砕工程で用いられる、前記特定のロール式粉砕装置の模式図を
図2に示す。
図2に示すように、ロール式粉砕装置200は、粒子状の乾燥重合体を装置200に供給するための配管201と、当該乾燥重合体を装置200内に供給する投入口202と、供給された乾燥重合体を粉砕する一対のロール203と、を備えている。これらは、この順に上方から下方に向かう方向に配置されている。なお、当該「上方から下方に向かう方向」は鉛直方向に限らず、斜め方向も含み得る概念である。一対のロール203は、2本のロール203a、203bにより構成されている。なお、ロール式粉砕装置において、ロールは、少なくとも一対(2本)備えられていればよく、例えば、二対(4本)以上のロールが上下方向に並べて備えられていてもよい。例えば、二対のロールが上下方向に並べて配置された場合、乾燥重合体は、上に位置する一対のロール間を通過して粉砕された後、更に、下に位置する一対のロール間を通過して粉砕される。
【0086】
ロール203間に投入された乾燥重合体20aは、一対のロール203のロール203aとロール203bとの間を通過し、乾燥重合体の粉砕物である吸水性樹脂20bとされる。なお、図示していないが、ロール式粉砕装置200は、投入口202と一対のロール203との間に、定量的に供給するフィーダを備えていてもよい。
【0087】
前記特定のロール式粉砕装置は、一対のロールのうち少なくともひとつのロール表面に溝(凹凸パターン)を有する。溝とは、ロール表面上の凹凸を意味し、本発明においては、溝が縞模様状に並んだものを意味する。溝は、ロール幅方向(ロールの回転軸方向)に複数並んで設けられる。即ち、ロール式粉砕装置において、一対のロールのうち少なくとも一方のロール表面には、ロール回転方向に対して平行に延びる溝(縦溝)が、ロール幅方向に複数並んで設けられている。よって、ロール表面には、凹凸(凹部及び凸部)がロール回転方向に対して平行に延びて形成されている。これにより、一対のロール間のクリアランスが、ロール幅方向の任意の位置において、ロールの回転により実質的に変化しない。ロール幅方向の任意の位置においてロール間のクリアランスが変化しないため、ロール間を通過する乾燥重合体に適切な力を付与することができ、得られる粉砕物の粒子径が揃い、シャープな粒度分布を有する粉砕物が得られると推定される。なお、ロール間のクリアランスとは、対向する一対のロール間の距離を意味する。
【0088】
本発明の製造方法において好ましい実施形態としては、溝が、一対のロールの2つのロール表面にそれぞれ設けられる。この場合、2つのロールのロール表面に設けられた対応する凹凸が噛み合うことにより、ロール幅方向のどの位置においてもロール間のクリアランスを一定とすることができ、これにより粉砕される乾燥物に対して一定の力を付与することができると考えられる。よって、特に、球状粒子の粉砕において、得られる粉砕物の粒子径がより一層揃いやすく、より一層シャープな粒度分布を有する粉砕物が得られると推定される。一対のロールは同一形状(溝の形状、直径)でも異形状でもよいが、好ましくは同一形状(対称関係を含む)のロールが使用される。
【0089】
例えば、一実施形態において、ロール式粉砕装置200は、一対のロール203のうち両方のロール表面において、ロール回転方向に対して平行に延びる溝(凹部及び凸部)が設けられている。即ち、
図3の2001に示すように、一対のロール203の両方(ロール203a、203b)は、そのロール表面にロールの回転軸Aのロール回転方向に対して平行に延びる凹部と凸部とを有している。そうして、一対のロールの一方のロール表面に設けられた凸部が、一対のロールの他方のロール表面に設けられた凹部と、回転により噛み合うように構成されている。
【0090】
また、一実施形態において、
図3の2002示すように、一対のロール203のうち一方(例えば、ロール203a)は、ロール表面にロールの回転軸Aのロール回転方向に対して平行に延びる溝を有し、一対のロールのうち他方(例えば、ロール203b)は、ロール表面に溝がない滑面(平滑面)を有する。
【0091】
ここで、ロール間のクリアランスについて、
図3の2001及び
図3の2002に基づいて説明する。
図3の2001に示すように、2つのロール203a、203bの表面において溝が設けられている場合、そのクリアランスdは、ロール幅方向の任意の位置において、一定の値dとなっている。又、
図3の2002に示すように、一方のロール203aの表面において溝が設けられ、他方のロール203bの表面において溝が設けられていない場合、そのクリアランスdは、ロール幅方向の位置により最大値(dmax)と最小値(dmin)とを有する。
図3の2001、
図3の2002のいずれの形態においても、ロールに設けられた溝はロール回転方向に対して平行に延びて形成されているため、ロールの回転により実質的に変化しない。
【0092】
なお、縦溝構造において、ロールの製造上の事情等により、ロールの一部に横溝(ロール幅方向に延びる溝)又はロール幅方向に延びる凸部が形成される場合がある。このような溝又は凸部により、ロールの縦溝の一部に切り欠き部分が生じる。この場合、ロールの縦溝において形成された一部の切り欠き部分の存在により、ロール幅方向の任意の位置において、クリアランスの変化が生じてしまう。ここで、「ロールの回転により実質的に変化しない」とは、「ロールが1回転するうちの70%以上の長さ範囲で、好ましくは80%以上の長さ範囲で、より好ましくは90%以上の長さ範囲で、更に好ましくは95%以上の長さ範囲でクリアランスが変化しない」ことを包含する。よって、ロールの縦溝の一部に切り欠き部分が存在する場合であっても、前記規定を満たしている場合は、「ロールの回転により実質的に変化しない」とみなされる。
【0093】
ここで、
図3の2001の形態では、ロール幅方向のどの位置においても、クリアランスdは同じであるのに対して、
図3の2002の形態では、ロール幅方向の位置によってクリアランスdが異なる。本発明では、ロール幅方向の位置によってクリアランスdが異なっていたとしても、任意の位置において、そのクリアランスdが、ロールの回転により実質的に変化しなければよい。
【0094】
なお、
図3の2001及び2002に示すロールでは、溝は、ロール回転方向に対して、実質的に平行(0度)に延びた形状で設けられている。実質的に平行とは、ロール回転方向に対し±1°未満で傾斜した溝は、本発明の構成に含まれることを意味する。当該傾斜角は、ロール回転方向に対してプラス方向又はマイナス方向のいずれでもよい。
【0095】
ロール間のクリアランス最小値dminは、適宜決定することができ、特に限定されないが、好ましくは0を超えて3mm以下である。ロール間のクリアランス最小値dminは、より好ましくは0.05~3mm、更に好ましくは0.05~2.5mm、更により好ましくは0.1~2mm、特に好ましくは0.1~1.5mm、最も好ましくは0.2~1mmである。ロール間のクリアランス最小値dminが前記範囲であるように一対のロールが配置されることにより、粉砕された粒子の低減効果が更に発揮できる。なお、クリアランス最小値dminとクリアランス最大値dmaxとが同じである場合(即ち、
図3の2001の場合)、クリアランスdがクリアランス最小値dminとみなされる。粉砕工程で二対以上のロールを用いる場合は、各ロール間で設けられたクリアランス最小値の中で最小の値が前記範囲であればよい。
【0096】
又、
図3の2002のように、ロール幅方向の位置によってクリアランスdが異なる場合、各位置でのクリアランスdを算出し、その最大のクリアランスdmaxと最小のクリアランスdminとの差を「クリアランス差」と称する。クリアランス差は、特に限定されないが、好ましくは0~0.2mm、より好ましくは0~0.1mm、更に好ましくは0~0.05mmである。
【0097】
ロールに設けられた溝のピッチ(間隔)は粉砕する粒子のサイズに合わせて適宜決定することができる。粉砕粒子サイズが大きい場合は溝のピッチも大きいものを、小さい場合は溝のピッチも小さいものを選定するのが好ましい。溝のピッチは、特に限定されないが、好ましくは0.1~2mm、より好ましくは0.2~1.5mm、更に好ましくは0.3~1.2mmの間隔で溝が設けられる。ここで、溝のピッチpとしては、
図3の2001に示すように、任意の溝の山部分と、それに隣接する溝の山部分との間隔、又は任意の溝の谷部分と、それに隣接する溝の谷部分との間隔を意味する。例えば、溝の山部分及び谷部分との間に周方向に平行な面(以下、「平坦部分」と称する)が設けられている場合、平坦部分を含め、隣接する溝の山部分と山部分との間隔又は隣接する溝の谷部分と谷部分の間隔を意味する。当該溝のピッチは、一つのロール上で異なっていても良いが、ロール幅全体に亘って一定であることが好ましく、一対のロールの両方に溝が設けられている場合は当該一対のロール全体に亘って一定であることが好ましい。
【0098】
溝の高さは、適宜決定することができ、特に限定されないが、好ましくは0.1~2mm、より好ましくは0.2~1.5mm、更に好ましくは0.3~1mmの高さで溝が設けられる。ここで、溝の高さとしては、
図3の2001に示すように、任意の溝の山部分の頂点と、その溝の谷部分の底との高低差を意味する。
【0099】
(粉砕工程前の吸水性樹脂)
本発明の一実施形態において、乾燥工程等で得られ、粉砕工程に供される乾燥重合体は、そのまま全量を粉砕装置、好ましくは前記特定のロール式粉砕装置で粉砕してもよいが、乾燥重合体の形状に応じて、粉砕装置で粉砕する前に、別の工程、例えば、粗解砕工程に供してもよく、更に分級工程に供してもよい。なお、「粗解砕工程」とは凝集粒子を解す(ほぐす)工程をいう。したがって、乾燥重合体がブロック状等に凝集している場合、粉砕装置、好ましくは前記特定のロール式粉砕装置での粉砕を効率よく行うため、予め乾燥重合体を粗解砕しておくこともできる。
【0100】
本発明の一実施形態において、粉砕装置、好ましくは前記特定のロール式粉砕装置に投入される乾燥重合体の粒度分布としては、粒子径850μm以上の割合(目開き粒子径850μmの篩を通過しなかった粒子の割合)は、乾燥重合体100質量%中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。また、乾燥重合体100質量%中の粒子径1400μm以上の割合(目開き粒子径1400μmの篩を通過しなかった粒子の割合)は好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0101】
本発明の一実施形態において、粉砕工程に供される乾燥重合体の樹脂固形分は、例えば、好ましくは80.0~99.5質量%、より好ましくは90.0~99.0質量%、更に好ましくは95.0~98.5質量%である。即ち、本発明の乾燥重合体の含水率は、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1.0~10質量%、更に好ましくは1.5~5質量%である。乾燥重合体の固形分率を前記範囲とすることにより、乾燥重合体の硬さを、粉砕工程における粉砕に適したものへと調整することができ、得られる粉砕物において、丸みを帯びた球形度が高い粉砕物を得ることができる。なお、乾燥重合体の樹脂固形分の決定方法は、「(3-4)乾燥工程」で説明したとおりである。
【0102】
本発明一実施形態において、一対のロールのロール間のクリアランスと、ロール式粉砕装置に供される乾燥重合体の質量平均粒子径とは、1:0.3~1:10の関係であることが好ましい。この場合、吸水性樹脂を破砕してしまうことが抑えられる適度な圧力が、粉砕される際に乾燥重合体に付与され、丸みを帯びた球形度が高い粉砕物を得ることができる。一対のロールのロール間のクリアランスと、ロール式粉砕装置に供される乾燥重合体の質量平均粒子径とは、より好ましくは1:0.5~1:5であり、更に好ましくは1:0.9~1:3である。
【0103】
(3-6)分級工程
前記粉砕工程を経て得られる吸水性樹脂(例えば吸水性樹脂粉末)は、必要に応じて、更に分級工程に供される。本発明の一実施形態において、分級工程での粒度調整方法としては、特に限定されないが、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。
【0104】
(3-7)表面架橋工程
前記粉砕工程(及びその後の任意の工程)を経て得られる吸水性樹脂(例えば、吸水性樹脂粉末)は、表面架橋剤によって表面架橋されることが好ましい。該表面架橋は、吸水性樹脂の表面層(吸水性樹脂の表面から数10μm内部までの領域)に架橋密度の高い部分を設ける処理である。表面架橋処理を行うことで各種吸水特性を向上させることができる。本明細書において、吸水性樹脂には、表面架橋された吸水性樹脂も含まれる。
【0105】
(表面架橋剤)
本工程で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、有機又は無機の表面架橋剤が挙げられる。中でも、吸水性樹脂の物性や表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤が好ましい。例えば、米国特許7183456号に開示される1種又は2種以上の表面架橋剤が挙げられる。具体的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物又はそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物、環状尿素化合物等が挙げられる。
【0106】
(3-8)造粒工程
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、一次粒子の凝集体を得るための造粒工程を含み得る。例えば、逆相懸濁重合の場合は、多段階の逆相懸濁重合、重合後の一次粒子のゲルに凝集剤を加えること等により、一次粒子の凝集体を得ることができる。したがってこれらの工程は、造粒工程であるといえる。水溶液重合の場合は、造粒工程としては、150μmの目開きのJIS標準篩を通過する吸水性樹脂の微粒子に水性液を添加して攪拌・混合することが挙げられる。
【0107】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、造粒工程を含むとともに、造粒工程で得られた吸水性樹脂を、前述の特定のロール式粉砕装置を使用して粉砕する粉砕工程を含んでもよい。
【0108】
(3-9)研磨工程
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、前記粉砕工程で得られる吸水性樹脂(例えば吸水性樹脂粉末)の表面を研磨処理する工程を含んでもよい。特に、重合形態として、水溶液重合を用いる場合は、前記粉砕工程を経て得られる吸水性樹脂(例えば吸水性樹脂粉末)の球形度が、逆相懸濁重合の場合と比べて低い傾向にあるため、必要に応じて研磨処理を行うことが好ましい。
【0109】
研磨処理を行う方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、吸水性樹脂(例えば吸水性樹脂粉末)をガラスビーズと共に容器に入れて振盪させる方法、ホモジナイザーやピンミル等の公知の攪拌装置に供する方法等を挙げることができる。
【0110】
(3-10)添加剤添加工程
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂に種々の機能を付加させるために添加剤を添加する工程を含んでいることがより好ましい。前記添加剤としては、「(2-2)添加剤」に記載の使用することができる。
【0111】
前記添加剤を添加する方法及び添加時期も特に限定されるものではなく、添加する添加剤に応じて適宜選択すればよい。
【0112】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂粒子と透水性基材との間に生じる摩擦を低減して滑り性を良くして、吸水性樹脂が透水性基材の繊維上又は繊維間を移動し易くなるとの観点から、水不溶性無機微粒子を添加する工程を含むことがより好ましい。ここで、水不溶性無機微粒子とは、「(2-2)添加剤」で説明したとおりである。また、前述したとおり、水不溶性無機微粒子の中でも、特に、ハイドロタルサイト;カオリン、タルク、ゼオライト等の粘土鉱物;リン酸カルシウム;リン酸バリウム等を添加することがより好ましい。
【0113】
前記水不溶性無機微粒子を添加する時期も特に限定されるものではないが、例えば、前記粉砕工程後又は前記表面架橋工程後、或いは、前記粉砕工程後又は前記表面架橋工程後にさらに、分級工程、研磨工程、造粒工程、含水(水添加)工程、整粒工程等を経た後に添加することが好ましい。また、前記水不溶性無機微粒子を添加する方法も特に限定されるものではないが、吸水性樹脂(例えば吸水性樹脂粉末)とドライブレンドする方法、分散液として吸水性樹脂(例えば吸水性樹脂粉末)に添加して混合する方法等を挙げることができる。
【0114】
(3-11)その他の工程
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、上述した各工程以外に、必要に応じて、含水(再湿潤)工程、その他の添加剤添加工程、整粒工程、及び微粉再利用工程を含んでいてもよい。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等を更に含んでいてもよい。
【0115】
(再湿潤工程)
任意に実施される本工程は、前記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂(例えば、吸水性樹脂粒子)に、多価金属塩、カチオン性ポリマー、キレート剤、無機還元剤、α-ヒドロキシカルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を添加する工程である。
【0116】
前記の添加剤は、水溶液又は分散液(スラリー)として吸水性樹脂(例えば、吸水性樹脂粒子)に添加することが好ましい。なお、当該添加剤は上述した表面架橋剤溶液と同時に添加・混合してもよい。
【0117】
具体的には、国際特許公開第2015/053372号「(2-7)再湿潤工程」記載の方法が、本発明にも適用される。
【0118】
(整粒工程)
「整粒工程」とは、前記表面架橋工程を経て緩く凝集した吸水性樹脂をほぐして粒子径を整える工程を意味する。なお、この整粒工程は、表面架橋工程以降の微粉除去工程及び分級工程を含むものとする。整粒工程は吸水性樹脂の粒子径を整え、安定した吸水物性を得る観点から、実施されることが好ましい。
【0119】
(微粉再利用工程)
「微粉再利用工程」とは、前記各工程で篩分級等により発生した微粉を、そのまま又は微粉を造粒した後に、いずれかの工程に供給する工程を意味する。微粉再利用工程は、吸水性樹脂の生産ロスを低減する観点から、実施されることが好ましい。
【0120】
〔4〕吸水性樹脂の用途
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の用途は、特に限定されないが、紙オムツ(幼児用、成人用)、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体用途が好ましい。特に、吸水性樹脂及び透水性基材を備える、紙オムツの吸収体として好適に使用することができる。その他の吸収性物品としては、例えば、土壌保水剤、育苗用シート、種子コーティング材、結露防止シート、ドリップ吸収材、鮮度保持材、使い捨てカイロ、冷却用バンダナ、保冷剤、医療用廃液固化剤、残土固化材、水損防止廃液ゲル化剤、吸水土のう、災害用簡易トイレ、湿布材、化粧品用増粘剤、電気・電子材料通信ケーブル用止水材、ガスケットパッキング、肥料用徐放剤、各種徐放剤(空間除菌剤、芳香剤等)、ペットシート、ネコ砂、創傷保護用ドレッシング材、結露防止用建築資材、油中水分除去剤、塗料、接着剤、樹脂用添加剤(アンチブロッキング剤、光拡散剤、艶消し剤、化粧板用添加剤、人工大理石用添加剤、トナー用添加剤等)等が挙げられる。
【実施例0121】
以下に示す実施例及び比較例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定解釈されるものではなく、各実施例に記載された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれることとする。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。又、特記しない限り、各操作は、室温(23℃±2℃)、相対湿度40~50%RH下で行われる。なお、実施例及び比較例で使用する電気機器(吸水性樹脂の物性測定も含む)は、特に注釈のない限り、200V又は100V、60Hzの条件で電源を使用した。
【0122】
〔1.評価方法〕
〔1-1〕遠心分離機保持容量(CRC)
吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)は、EDANA法(ERT441.2-02)に準拠して測定した。
【0123】
具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で3分間、水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)を求めた。
【0124】
〔1-2〕加圧下吸収倍率(AAP)
吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)は、EDANA法(ERT442.2-02)に準拠して測定した。なお、荷重条件は4.83kPa(0.7psi)に変更した。
【0125】
〔1-3〕含水率
吸水性樹脂の含水率は、EDANA法(ERT430.2-02)に準拠して測定した。なお、測定に際し、試料(吸水性樹脂)の質量を1.0gに、乾燥温度を180℃に、乾燥時間を3時間にそれぞれ変更した。
【0126】
具体的には、底面の直径が50mmのアルミカップに、試料(吸水性樹脂又は吸水性樹脂粉末)1.0gを投入した後、前記試料及びアルミカップの総質量W1(g)を正確に秤量した。
【0127】
次に、前記試料をアルミカップに投入した状態で、雰囲気温度180℃に設定されたオーブン内に静置した。3時間経過後、該試料をアルミカップとともに前記オーブンから取り出し、乾燥後の試料及びアルミカップの総質量W2(g)を正確に秤量した。本測定に供された試料(吸水性樹脂)の質量をM(1.0g)としたときに、下記式(3)にしたがって、試料の含水率(質量%)を算出した:
含水率(質量%)={(W1-W2)/M}×100・・・式(3)。
【0128】
〔1-4〕質量平均粒子径(D50)
吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50)は、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された「(3)Mass-Average Particle Diameter(D50) and Logarithmic Standard Deviation(σζ) of Particle Diameter Distribution」に記載の方法に従って測定した。
【0129】
〔1-5〕嵩比重
吸水性樹脂の嵩比重は、EDANA法(ERT460.2-02)に準拠して測定した。
【0130】
〔1-6〕表面張力
吸水性樹脂の表面張力は、WO2015/129917の段落0244に記載の方法で測定した。
【0131】
具体的には、十分に洗浄された100mlのビーカーに、20℃に調整された0.90質量%塩化ナトリウム水溶液50mlを入れ、表面張力計(KRUSS社製、K11自動表面張力計)を用いて0.90質量%塩化ナトリウム水溶液の表面張力を測定した。この測定において、表面張力の値は71~75[mN/m]の範囲でなくてはならない。
【0132】
次に、20℃に調整した表面張力測定後の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を含んだビーカーに、十分に洗浄された長さ25mmの円筒型攪拌子及び吸水性樹脂0.500gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌した。4分後、攪拌を止め、含水した吸水性樹脂が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定した。なお、表面張力の測定においては、白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、かつガスバーナーで加熱洗浄して使用した。
【0133】
〔1-7〕SAP移動度
吸水性樹脂のSAP移動度は、下記に示す手順にて測定した。
【0134】
図4及び5に示すように、平らで水平な台上に、水平面に対して45度に傾斜した面を有するアクリル樹脂製の傾斜台10を設置し、傾斜台10の傾斜面に、4cm×12cmの長方形に切り取った不織布11(厚みが3mmで、目付量が41g/m
2の、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートの混合物製のエアスルー不織布であり、ポリエチレンの繊維径及びポリプロピレンの繊維径は0.18mm、ポリエチレンテレフタレートの繊維径は0.27mmである。)を、その長手方向が傾斜台10の幅方向に対して垂直になる向きに、両面テープを用いて貼り付けた。傾斜台10の最下部に受け皿12を置いた。不織布11の最上辺から1cm下であって、不織布11の最上辺に垂直な辺から2cm内側の位置に印13を付け、印13に対して鉛直上向き1cmの高さから、吸水性樹脂1.0gを5秒かけて投下した。吸水性樹脂は不織布11上、又は不織布11内を移動して滑り落ち、受け皿12まで落下した。落下した吸水性樹脂を回収し、その質量を計量した後、下記式(1)に従って、SAP移動度を算出した。なお、不織布11内を移動するとは、不織布内に入った吸水性樹脂が、不織布の繊維間を移動することを意図する。
【0135】
SAP移動度[質量%]=回収した吸水性樹脂の質量[g]/投下した吸水性樹脂の全質量[g]×100・・・式(1)
〔1-8〕吸水速度(ボルテックス法)
0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1000質量部に、食品添加物である食用青色1号を0.02質量部添加し、液温30℃に調整した。その生理食塩水50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mmで、長さ方向に垂直な断面の直径8mmの円筒形のスターラーチップ及びマグネチックスターラーを用いて600rpmで攪拌しながら、吸水性樹脂2.0gを一度に投入した。吸水性樹脂が生理食塩水を吸液してスターラーチップを覆うまでの時間を吸収速度(秒)として測定した。
【0136】
〔1-9〕吸収体の液戻り量
(1)吸収体の作製
ポリスチレン製の直方体のケース(底面6cm×9cm、深さ1cm(いずれもケース内面の寸法))の底面に、6cm×9cmにカットした粘着テープ100(NITTO DENKO製ビニールテープNo.21S)を、粘着面が上面になるように設置し、
図1の1001に示すように、該粘着テープ100の粘着面の、四辺の端部からそれぞれ1cmずつ内側に位置する四辺に囲まれた領域に、4cm×7cmに切り取った不織布11(厚みが3mmで、目付量が41g/m
2の、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンテレフタレートの混合物製のエアスルー不織布であり、ポリエチレンの繊維径及びポリプロピレンの繊維径は0.18mm、ポリエチレンテレフタレートの繊維径は0.27mmである。)を載せた。当該不織布として、前述の〔1-7〕SAP移動度の測定にて使用した不織布と同じ不織布を使用した。不織布11の上に、
図1の1002に示すように、不織布11の一方の短辺の中点から他方の短辺の中点まで、不織布11の長手方向に沿って、幅1cmの帯状に吸水性樹脂10を散布した。その後、ケースを平らで水平な台上に置き、水平方向であって、且つ、不織布11の長手方向と垂直な方向(
図1の1002中、矢印で示す方向)に6cmの距離を1秒間で往復させる操作を10回行うことにより、帯状に散布した吸水性樹脂10を不織布11上に拡散させた。続いて、
図1の1003に示すように、吸水性樹脂10を拡散させた不織布11上に、6cm×9cmの液透過性不織布110(エアレイド不織布、目付量46.6g/m
2)を載せ、四辺の粘着面と貼り合わせて、評価用吸収体1を作製した。
【0137】
(2)液戻り量の測定
評価用吸収体を、液透過性不織布を上面として平らで水平な台上に設置した。50mLガラスビーカーに、20℃の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液12gを秤量し、10秒間かけて評価用吸収体の吸収面全体に対して液添加を行った。液添加の開始から30秒後に、評価用吸収体の上に、6cm×9cmに切り取り24枚重ねにした総質量K1(g)のキッチンペーパー(王子ネピア株式会社製キッチンタオル)、6cm×9cm、質量22gのアクリル板、の順に同時に置いた。キッチンペーパー及びアクリル板を載せてから10秒後に、キッチンペーパー及びアクリル板を取り除いて、24枚重ねにしたキッチンペーパーの総質量K2(g)を測定し、下記式(4)に基づいて、評価用吸収体の液戻り量を算出した:
液戻り量(g)=K2-K1・・・式(4)。
【0138】
〔1-10〕吸収体内における吸水性樹脂の分散の様子
評価用吸収体内における吸水性樹脂の分散の様子を、目視で観察した。
【0139】
〔1-11〕不織布の厚み測定
不織布の厚みは、ダイヤルシックネスゲージ 大型タイプ(厚み測定器)(株式会社尾崎製作所製、型番:J-B、測定子:アンビル上下φ50mm)を用い、厚み測定器の上部測定子を不織布から2~3mmの高さ位置まで近づけた後、不織布に圧力が出来るだけかからないよう、ハンドルからゆっくりと手を離し、不織布の厚みを測定した。
【0140】
〔実施例1〕
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、及び滴下ロートを付した2000mLの四つ口セパラブルフラスコにn-へプタン800gを取り、分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(商品名:ハイワックス(登録商標)HW2203A、三井化学株式会社製)0.88gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
【0141】
これとは別に、フラスコ中で、アクリル酸ナトリウム127g、アクリル酸36g、及びポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)0.077g、ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.008g、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース0.67g、及びイオン交換水215gよりなる単量体水溶液(1)を調製し、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する溶存酸素を追い出した。
【0142】
次いで、このフラスコ内の単量体水溶液(1)に過硫酸ナトリウムの15%水溶液1.2gを加えた後、全量を前記セパラブルフラスコに加えて、210rpmで攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させ、2時間この浴温60℃を保持した後、吸引濾過により有機溶剤を濾別し、残渣を一晩室温で風乾させることで含水ゲル状架橋重合体(1)を得た。
【0143】
続いて、円筒容器回転型乾燥機を用いて含水ゲル状架橋重合体(1)を乾燥した。具体的には、温度200℃の雰囲気下で、円筒容器回転型乾燥機が備える回転容器を75rpmにて回転させ、含水ゲル重合体(1)を円筒容器回転型乾燥機に供給して、含水率が10質量%になるまで乾燥し、乾燥重合体(1)を得た。
【0144】
続いて、乾燥重合体(1)を、粉砕装置としてロールグラニュレーター(日本グラニュレーター株式会社製、ロールサイズ:直径115mm×長さ100mm)を使用して粉砕し、さらに目開き150μmのJIS標準篩を用いて分級し、前記篩を通過した微粉末を除くことにより、吸水性樹脂粉末(1)を得た。ここで、前記ロールグラニュレーターにおいて、一対のロールを一段目に設置し、一段粉砕とした。なお、一対のロールとしては、いずれのロールのロール表面にも、ロール回転方向に対して平行方向に断面V字形状の溝が設けられているものを用いた(クリアランス差:0)。具体的には、溝は、ロール表面の全周にわたって、かつ、複数の溝がロールの一方の端から他方の端まで等間隔で連続して並んで設けられていた。一対のロールの溝のピッチ(間隔)は、それぞれのロールにおいてどちらも同じとした。また、それぞれのロールにおける溝は、
図3の2001のように、一方のロールの溝の山部分と、他方のロールの溝の谷部分とが、ロールの軸方向に同じ位置となるように設けられており、ロール間のクリアランスは一定であった。なお、ロール間のクリアランスとは、前述したとおり、2つのロール間の距離を意味する。
【0145】
・ロール回転数:565/462rpm(内回り)
・溝の高さ(溝の傾斜角):1.0mm(45°)
・溝のピッチ:1.2mm
・ロール間のクリアランス:0.6mm。
【0146】
吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、エチレンカーボネート0.385質量部、プロピレングリコール0.644質量部、及びイオン交換水2.6質量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、195℃で25分間加熱処理を行った。その後、粉温を60℃まで強制的に冷却することで、表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)を得た。
【0147】
表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、水10.0質量部を均一に混合し、目開き1000μm及び150μmのJIS標準篩を用いて分級し、目開き1000μmのJIS標準篩を通過し、150μmのJIS標準篩上に残存した整粒物を得た。その後、さらに該整粒物100質量部に対して、ハイドロタルサイト(製品名:DHT-6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、比表面積=16m2/g)0.3質量部を均一に混合して、吸水性樹脂(1)を得た。吸水性樹脂(1)の物性を表1に示す。
【0148】
〔実施例2〕
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)7.5gを溶解し、単量体水溶液(2)を調製した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、単量体水溶液(2)を供給し、液温を30℃に保ちながら系を窒素ガスで置換して溶存酸素を除いた。
【0149】
続いて、単量体水溶液(2)を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液29.8g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体(2)を取り出した。
【0150】
含水ゲル状架橋重合体(2)を、ダイス孔径9.5mmを有するダイスを備え付けたミートチョッパー(No.32型、株式会社平賀製作所製)を用いてゲル粉砕し、含水ゲル状架橋重合体粒子(2)を得た。当該ゲル粉砕は、該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル状架橋重合体(2)を2.4kg/min、水蒸気を5.0kg/hの供給量でミートチョッパーに投入することで行った。
【0151】
続いて、実施例1と同じ円筒容器回転型乾燥機を用いて、得られた含水ゲル状架橋重合体粒子(2)を乾燥した。実施例1と同じ温度及び回転数に設定した円筒容器回転型乾燥機に供給して、含水率が1質量%になるまで乾燥し、乾燥重合体(2)を得た。
【0152】
続いて、粉砕装置としてロールグラニュレーター(日本グラニュレーター株式会社製、ロールサイズ:直径115mm×長さ100mm)を使用して、溝のピッチを2.0mm、クリアランスを1mmに変更した以外は実施例1における乾燥重合体(1)の粉砕と同じ粉砕条件で乾燥重合体(2)を粉砕し、目開きが850μmのJIS標準篩を通過させ、質量平均粒子径(D50)が360μmの吸水性樹脂粉末(2)を得た。
【0153】
その後、吸水性樹脂粉末(2)30gと、直径6mmのガラスビーズ10gとを、直径6cm、高さ11cmの蓋つきのガラス製容器に入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所;製品No.488)に取り付け、800Cycle/min(CPM)で30分間、振盪することで、表面が研磨処理された吸水性樹脂粉末(2)を得た。
【0154】
表面が研磨処理された吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1質量部、プロピレングリコール0.3質量部、及び水0.3質量部とからなる表面架橋剤水溶液0.7質量部を均一に混合し、210℃で20分間加熱処理した。その後、粉温を60℃まで強制的に冷却し、目開き850μmのJIS標準篩を通過させることにより整粒し、表面架橋された吸水性樹脂粉末(2)を得た。
【0155】
表面架橋された吸水性樹脂粉末(2)100質量部に、ハイドロタルサイト(製品名:DHT-6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、比表面積=16m2/g)0.3質量部を均一に混合して、吸水性樹脂(2)を得た。吸水性樹脂(2)の物性を表1に示す。
【0156】
〔比較例1〕
実施例1において、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)の使用量を0.097gに変更した以外は、実施例1における単量体水溶液(1)の重合反応と同じ条件で重合反応を実施した後、吸引濾過により有機溶剤を濾別し、残渣を一晩室温で風乾させることで比較含水ゲル状架橋重合体(1)を得た。
【0157】
続いて、実施例1と同じ円筒容器回転型乾燥機を用いて比較含水ゲル状架橋重合体(1)を乾燥した。具体的には、実施例1と同じ温度及び回転数に設定した円筒容器回転型乾燥機に、比較含水ゲル状架橋重合体(1)を供給して、含水率が10質量%になるまで乾燥し、比較乾燥重合体(1)を得た。
【0158】
続いて、粉砕装置としてロールミル(WML型ロール粉砕機、井ノ口技研製)を用いて比較乾燥重合体(1)を粉砕し、比較吸水性樹脂粉末(1)を得た。ここで、前記ロールミルにおいては、一対のロールを一段目に設置し、一段粉砕とした。なお、一対のロールとしては、いずれのロールのロール表面にも、ロール回転方向に対してほぼ垂直方向に断面V字形状の溝が設けられているものを用いた。具体的には、ロール表面において、1つの溝がロールの一方の端から他方の端まで連続して(すなわち、ロール幅方向において連続して)設けられ、かつ、複数の溝が全周にわたって等間隔で連続して並んで設けられている。一対のロールのロール溝(溝の歯形)は、どちらも同じとした。
【0159】
・ロール回転数:480/200rpm
・溝のピッチ:1.15mm
・ロール間のクリアランス:1.0mm。
【0160】
比較吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1質量部、イソプロピルアルコール1.0質量部及びイオン交換水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で40分間加熱処理した。粉温を60℃まで強制的に冷却することにより、表面架橋された比較吸水性樹脂粉末(1)を得た。
【0161】
表面架橋された比較吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、水5.0質量部を均一に混合し、目開き300μmのJIS標準篩を通過させることで整粒した。その後、さらに該整粒物100質量部に対して、ハイドロタルサイト(製品名:DHT-6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、比表面積=16m2/g)0.3質量部を均一に混合して、比較吸水性樹脂(1)を得た。比較吸水性樹脂(1)の物性を表1に示す。
【0162】
〔比較例2〕
実施例1において、ハイドロタルサイトに代えて微粒子状のシリカ(商品名:アエロジル(登録商標)200、日本アエロジル株式会社製、比表面積=200±25m2/g)0.3質量部を均一に混合した以外は、実施例1と同様にして、比較吸水性樹脂(2)を得た。比較吸水性樹脂(2)の物性を表1に示す。
【0163】
〔比較例3〕
比較例1において、ハイドロタルサイトに代えて微粒子状のシリカ(商品名:アエロジル(登録商標)200、日本アエロジル株式会社製、比表面積=200±25m2/g)0.3質量部を均一に混合した以外は、比較例1と同様にして、比較吸水性樹脂(3)を得た。比較吸水性樹脂(3)の物性を表1に示す。
【0164】
【0165】
実施例及び比較例の対比より、SAP移動度が高い吸水性樹脂は、吸水性樹脂が吸収体内で均一に分散しており、評価用吸収体の液戻り量、すなわち、吸収体の吸収面全面での液戻り量が低減されていることが分かる。また、SAP移動度が高く、吸水速度に優れる吸水性樹脂は、評価用吸収体の液戻り量が低減されていることも示された。
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂によれば、吸水性樹脂及び透水性基材を備える吸収性物品の吸収体全面で効率良く液を吸収できることにより、吸収性物品の吸収面全面での液戻り量を低減することができる吸水性樹脂を提供することができる。したがって、紙オムツ、生理用ナプキン、成人向け失禁用製品(失禁パッド)、ペット用シート等の衛生材料(衛生用品)等において好適に利用することができる。