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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147410
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】歪検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060401
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 史掘
(72)【発明者】
【氏名】上原 利範
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063CA11
2F063EC03
2F063EC14
2F063LA09
(57)【要約】
【課題】実施形態の課題は、検出時間の短縮を図ることが可能な歪検出装置を提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る歪検出装置は、間隔を空けて一列に並んで設けられた複数の歪ゲージと、それぞれ複数の歪ゲージの一端に接続された複数の電源線および複数の第1信号線と、それぞれ複数の歪ゲージの他端に接続された複数のグランド線および複数の第2信号線と、を具備するセンサシートと、センサシートを駆動するコントローラと、を備えている。コントローラは、電源線を介して複数の歪ゲージを順次スキャン駆動し、第1信号線および第2信号線を介して歪ゲージの一端の検出信号および他端の検出信号を順次読取るセレクタと、検出信号に基づいて曲率半径を算出する演算処理部と、曲率半径に基づいてスキャン駆動を停止するか継続するかを判定する判定部と、を具備している。
【選択図】 図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて一列に並んで設けられた複数の歪ゲージと、それぞれ前記複数の歪ゲージの一端に接続された複数の電源線および複数の第1信号線と、それぞれ前記複数の歪ゲージの他端に接続された複数のグランド線および複数の第2信号線と、を具備するセンサシートと、
前記複数の電源線を介して前記複数の歪ゲージを順次スキャン駆動し、前記第1信号線および第2信号線を介して前記歪ゲージの一端の検出信号および他端の検出信号を順次読取るセレクタと、前記検出信号に基づいて曲率半径を算出する演算処理部と、前記曲率半径に基づいて前記歪ゲージのスキャン駆動を停止するか継続するかを判定する判定部と、を具備するコントローラと、
を備える歪検出装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記歪ゲージの内の複数の歪ゲージを順次スキャン駆動し、各歪ゲージの検出値が所定の閾値よりも大きいか否かを判定し、前記閾値よりも小さい場合は他の複数の歪ゲージを順次スキャン駆動して検出値を取得し、前記閾値よりも大きい場合は歪ゲージのスキャン駆動を停止し、前記停止するまでに取得した検出値に基づいて曲面形態を算出する、請求項1に記載の歪検出装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記複数の歪ゲージを少なくとも2つのグループに分けてグループ毎に複数の前記歪ゲージを順次スキャン駆動し、各歪ゲージの検出値に基づいて曲率半径を算出し、算出された複数の曲率半径の全てが所定の閾値よりも大きい場合は、スキャン駆動を停止し、前記算出された複数の曲率半径に基づいて曲面形態を算出し、前記算出された複数の曲率半径の少なく1つが前記閾値よりも小さい場合は、他のグループの複数の前記歪ゲージを順次スキャン駆動し、各歪ゲージの検出値に基づいて曲率半径を算出する、請求項1に記載の歪検出装置。
【請求項4】
前記各グループの複数の歪ゲージは、歪ゲージ2つ分以上、互いに離間して位置している、請求項3に記載の歪検出装置。
【請求項5】
前記各グループの複数の歪ゲージは、互いに等間隔離間して位置している、請求項4に記載の歪検出装置。
【請求項6】
前記コントローラは、それぞれ連続する複数の歪ゲージを含む複数のブロックを設定し、各ブロックの歪ゲージをそれぞれ互いに離間した複数の歪ゲージを含む複数のグループに分け、前記ブロックの各々において、グループ毎に複数の前記歪ゲージを順次スキャン駆動し、各歪ゲージの検出値に基づいて曲率半径を算出し、算出された複数の曲率半径の全てが所定の閾値よりも大きい場合は、スキャン駆動を停止し、前記算出された複数の曲率半径に基づいて曲面形態を算出し、前記算出された複数の曲率半径の少なく1つが前記閾値よりも小さい場合は、他のグループの複数の前記歪ゲージを順次スキャン駆動し、各歪ゲージの検出値に基づいて曲率半径を算出する、請求項1に記載の歪検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、歪検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歪検出装置の一例として、フレキシブルなフィルム状あるいはシート状の歪ゲージセンサが知られている。歪ゲージセンサは、帯状のフレキシブルなシート基材の表面に並んで設けられた複数の歪ゲージと、これらの歪ゲージに通電するための複数本の信号線と、を有している。歪ゲージセンサを湾曲した被検体に巻き付け、各歪ゲージの抵抗変化を検出することにより、被検体の湾曲形状を検知することができる。
当該歪ゲージセンサでは、消費電力の低減や配線数を削減するため、複数の歪ゲージを時分割駆動する手法が提案されている。しかしながら、当該歪ゲージセンサでは、消費電力削減や配線数削減を図ることができる反面、一つの曲面情報を得るまでの検出時間が長くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-340695号公報
【特許文献2】特開2013-174514号公報
【特許文献3】特開昭60-67804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の実施形態の課題は、検出時間の短縮を図ることが可能な歪検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る歪検出装置は、間隔を空けて一列に並んで設けられた複数の歪ゲージと、それぞれ前記複数の歪ゲージの一端に接続された複数の電源線および複数の第1信号線と、それぞれ前記複数の歪ゲージの他端に接続された複数のグランド線および複数の第2信号線と、を具備するセンサシートと、
前記複数の電源線を介して前記複数の歪ゲージを順次スキャン駆動し、前記第1信号線および第2信号線を介して前記歪ゲージの一端の検出信号および他端の検出信号を順次読取るセレクタと、前記検出信号に基づいて曲率半径を算出する演算処理部と、前記曲率半径に基づいて前記歪ゲージのスキャン駆動を停止するか継続するかを判定する判定部と、を具備するコントローラと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る歪ゲージセンサ装置の斜視図。
図2図2は、前記歪ゲージセンサ装置の縦断面図。
図3図3は、前記歪ゲージセンサ装置の第1センサシートおよび第2センサシートのゲージパターンおよび配線パターンを模式的に示す展開図。
図4図4は、前記歪ゲージセンサ装置のコントローラのブロック図。
図5図5は、前記第1センサシートおよび第2センサシート、前記コントローラのセレクタおよびアナログフロントエンドを示すブロック図。
図6図6は、前記アナログフロントエンドにおける差分検出回路の回路図。
図7図7は、前記歪ゲージセンサ装置を被検体の表面に設置した状態を模式的に示す側面図。
図8図8は、歪ゲージをスキャン駆動する際のグループ分け、駆動順を示す図。
図9A図9Aは、前記歪ゲージセンサ装置の検出動作を示すフローチャート。
図9B図9Bは、前記歪ゲージセンサ装置の検出動作を示すフローチャート。
図10図10は、曲率半径が小さい場合の前記歪ゲージセンサ装置の検出動作時のタイミングチャート。
図11図11は、曲率半径が大きい場合の前記歪ゲージセンサ装置の検出動作時のタイミングチャート。
図12図12は、グループ1の歪ゲージをスキャン駆動した状態の前記歪ゲージセンサ装置を模式的に示す側面図。
図13図13は、被検体の表面に設置した状態の前記歪ゲージセンサ装置の一部を模式的に示す図。
図14図14は、前記第1センサシートおよび第2センサシートの等価回路図。
図15図15は、検出時のスキャン動作を示す前記歪ゲージセンサ装置の展開図。
図16図16は、グループ1、2の歪ゲージをスキャン駆動した状態の前記歪ゲージセンサ装置を模式的に示す側面図。
図17図17は、グループ1、2、3の歪ゲージをスキャン駆動した状態の前記歪ゲージセンサ装置を模式的に示す側面図。
図18図18は、グループ1―4の歪ゲージをスキャン駆動した状態の前記歪ゲージセンサ装置を模式的に示す側面図。
図19図19は、第1変形例に係る、歪ゲージをスキャン駆動する際のグループ分け、駆動順を示す図。
図20図20は、第2変形例に係る歪ゲージセンサ装置を模式的に示す側面図。
図21図21は、被検体の一例を示す側面図。
図22図22は、第2実施形態に係る歪ゲージセンサ装置を示す斜視図。
図23図23は、第2実施形態に係る歪ゲージセンサ装置のセンサシートおよびコントローラを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
(第1実施形態)
歪検出装置の一例として、実施形態に係る歪ゲージセンサ装置について詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る歪ゲージセンサ装置の斜視図である。
図示のように、歪ゲージセンサ装置10は、両面型の歪ゲージセンサを構成している。歪ゲージセンサ装置10は、基材として機能する細長い帯状のフレキシブルなベース基板44と、ベース基板44の第1主面(前面)に設けられた第1センサシート20Aと、ベース基板44の第2主面(背面)に設けられた第2センサシート20Bと、一対のフレキシブル配線板(FPC)14と、当該一対のフレキシブル配線板14を介して第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bに接続された中継基板(駆動回路基板)12と、を備えている。一例では、ベース基板44は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド等の樹脂で厚さ0.3~0.5mm程度に形成されている。
【0009】
第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの各々は、細長い帯状のフレキシブルなシート基材22とシート基材22の片面の側に設けられた導体パターンとを有している。導体パターンは、複数の歪ゲージG0~Gnを含んでいる。複数の歪ゲージG0~Gnは、シート基材22の長手方向Xの一端から他端に亘り所定の間隔を空けて長手方向Xに並んで設けられている。
なお、図において、センサシートの長手方向X、幅方向Yは、互いに直交する2方向を示している。これらの方向は、90度以外の角度で交差していてもよい。
【0010】
図2は、歪ゲージセンサ装置10の縦断面図である。
図2に示すように、ベース基板44は前面と背面とを有している。一例では、第1センサシート20Aは、導体パターン(G0~Gn)を備える面が透明粘着シート(OCA)などの接着層Adによりベース基板44の前面に貼付されている。第2センサシート20Bは、導体パターン(G0~Gn)を備える面が接着層Adによりベース基板44の背面に貼付されている。
中継基板12は、一方の面側に設けられた駆動回路40および複数の配線と、他方の面側に設けられた図示しない複数の配線と、を含んでいる。第1センサシート20Aの導体パターンは、FPC14を介して、中継基板12の上面側に設けられる配線に接続されている。同様に、第2センサシート20Bの導体パターンは、FPC14を介して、中継基板12の下面側に設けられる配線に接続されている。
なお、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bは、シート基材22の側を接着層Adによりベース基板44の前面および背面に貼付する構成としても良い。
【0011】
図3は、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bを展開した状態で、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの歪ゲージおよび配線パターンを模式的に示す平面図である。図示のように、本実施形態によれば、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bは、同一の形状、寸法、および導体パターンに構成されている。詳細には、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの各々は、フレキシブルな帯状のシート基材22と、シート基材22の片面側に設けられた導体パターンと、を有している。導体パターンは、複数の歪ゲージG0~Gnを有している。複数の歪ゲージG0~Gnは、シート基材22の長手方向Xの一端(先端)から他端(基端)まで長手方向Xに間隔を空けて一列に並んで設けられている。歪ゲージG0~Gnの各々は、幅方向Yに蛇腹状に延在し、幅方向Yの一端および他端を有している。各歪ゲージG0~Gnは、歪に応じた抵抗変化を生じる。
【0012】
導体パターンは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの列に沿って長手方向Xに延在している複数本の電源線VL0~VLn、複数本のグランド線GNL0~GNLn、複数本の第1信号線Sa0~San、および複数本の第2信号線Sb0~Sbnを有している。
電源線VL0~VLnは、歪ゲージG0~Gnの一端の側に位置している。電源線VL0~VLnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの一端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
第1信号線Sa0~Sanは、歪ゲージG0~Gnの一端と電源線VL0~VLnとの間に位置している。第1信号線Sa0~Sanは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの一端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
【0013】
グランド線GNL0~GNLnは、歪ゲージG0~Gnの他端の側に位置している。グランド線GNL0~GNLnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの他端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
第2信号線Sb0~Sbnは、歪ゲージG0~Gnの他端とグランド線GNL0~GNLnとの間に位置している。第2信号線Sb0~Sbnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの他端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
【0014】
上記のように構成された第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bは、ベース基板44の前面および背面に貼付され、ベース基板44を挟んで互いに対向する。すなわち、第1センサシート20Aの歪ゲージG0~Gnは、ベース基板44を挟んで、第2センサシート20Bの歪ゲージG0~Gnにそれぞれ対向している。ここで、第1センサシートの各歪ゲージG0~Gnと第2センサシートの各歪ゲージG0~Gnとは、ベース基板44の表面に垂直な方向から見た平面視で互いに少なくとも一部が重畳していることが好ましい。或いは、これら各センサシート20A、20Bの歪ゲージG0~Gnは、少なくとも、長手方向Xへのずれを許容しつつも幅方向Yにはずれることなく重畳していることが好ましい。或いは、これら各センサシート20A、20Bの歪ゲージG0~Gnは、長手方向Xにも幅方向Yにもずれることなく重畳していることが好ましい。
【0015】
第1センサシート20Aのグランド線GNL0~GNLnは、FPC14を介して中継基板12の上面上まで延びている。第2センサシート20Bの電源線VL0~VLnは、FPC14を介して中継基板12の背面上まで延びている。本実施形態では、第1センサシート20Aのグランド線GNL0~GNLnは、それぞれ、中継基板12の位置で、第2センサシート20Bの電源線VL0~VLnに電気的に接続されている。図2に示すように、中継基板12に形成された接続線としてのメッキスルーホールSHにより、グランド線GNL0~GNLnと電源線VL0~VLnとが接続されている。
【0016】
なお、接続線は、メッキスルーホールSHに限らず、中継基板12上の配線パターン等を用いても良い。また、第2センサシート20Bの側のFPC14も中継基板12の上面側と接続することにより、メッキスルーホールではなく中継基板12上の配線を介してこれら第1センサシート20Aのグランド線GNL0~GNLnを第2センサシート20Bの電源線VL0~VLnにそれぞれ接続する構成を採用することも可能である。更には、第1センサシート20Aの側のFPC14及び第2センサシート20Bの側のFPC14を中継基板12の上面側に設けられる駆動回路40と接続し、当該駆動回路40内でこれら第1センサシート20Aのグランド線GNL1~GNLnを第2センサシート20Bの電源線VL1~VLnにそれぞれ接続する構成を採用することも可能である。
【0017】
次に、上記のように構成された第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bを駆動する駆動回路(コントローラ)について説明する。図4は、歪ゲージセンサ装置10の駆動回路を模式的に示すブロック図、図5は、第1センサシートおよび第2センサシート、コントローラのセレクタおよびアナログフロントエンドを示すブロック図である。
図4に示すように、中継基板(制御回路基板)12に設けられた駆動回路40は、セレクタSEL、アナログフロントエンド(AFE:信号調整回路)30、タイミングコントローラ34、通信インターフェース36などを有している。
【0018】
通信インターフェース36は、外部のホストコントローラ38に無線あるいは有線接続され、ホストコントローラ38から駆動信号(setting)を受けるとともに、検出データ(Data)をホストコントローラ38に送信する。
タイミングコントローラ34は、駆動信号(setting)に応じて、セレクタSELおよびアナログフロントエンド30に駆動信号を出力する。
セレクタSELは、複数のシフトレジスタ、マルチプレクタ等で構成される。セレクタSELは、タイミングコントローラ34からの駆動信号に応じて、第1センサシート20Aの電源線VL0~VLnを順次、電源に接続し、歪ゲージG0~Gnに順次電圧を印加する。これに同期して、セレクタSELは、第1信号線Sa0~San、第2信号線Sb0~Sbnを介して各歪ゲージG0~Gnの一端側および他端側の検出信号(電圧値)RXa0~RXan、RXb0~RXbnを順次読み取る。更に、セレクタSELは、上記読取りに同期して、第2センサシート20Bの第1信号線Sa0~San、第2信号線Sb0~Sbnを介して各歪ゲージG0~Gnの一端側および他端側の検出信号(電圧値)RXc0~RXcn、RXd0~RXdnを順次読み取る。
【0019】
図5に示すように、アナログフロントエンド30は、読み出し回路31、差分検出回路30a、30b、AD変換器32、デジタルフィルタ33、メモリ37等を含んでいる。図6は、差分検出回路の回路図である。図示のように、アナログフロントエンド30は、第1センサシート20Aの検出信号を処理する差分検出回路(減算回路)30a、および第2センサシート20Bの検出信号を処理する差分検出回路(減算回路)30bを含んでいる。アナログフロントエンド30は、駆動信号に応じて、セレクタSELから送られた各歪ゲージG0~Gnの検出信号RXa、RXbおよび検出信号RXc、RXdを信号調整(増幅、AD変換、フィルタリング)し、通信インターフェース36に出力する。この際、曲率半径の算出には各歪ゲージGの電圧降下値が必要となるため、差分検出回路30a、30bによりそれぞれの歪ゲージG0~Gnの検出値Rxa、Rxbの差分、および歪ゲージG0~Gnの検出値Rxc、Rxdの差分、を取って信号出力する。
【0020】
図4に示すように、ホストコントローラ38は、読取り回路38a、メモリ38b、演算処理部38c、判定部38dなどを含んでいる。読取り回路38aは、通信インターフェース36から送られた出力信号(差分データ)を読取り、メモリ38bに格納する。演算処理部38c、例えば、CPU、は、差分データに基づいてデータ成形、曲面計算等の演算処理を行い、第1および第2センサシート20A、20Bにより検出された被検体の歪(曲率半径)、曲面形態(曲面座標)等を算出する。判定部38dは、検出値に応じてスキャン駆動を継続するか停止するかを判定する。メモリ38bには、差分データ、算出され曲率半径、曲面形態が格納され、加えて、判定に用いる閾値、検出動作プログラムなどが格納されている。
【0021】
次に、歪ゲージセンサ装置10の検出動作モードについて説明する。
図7は、歪ゲージセンサ装置を被検体の表面に設置した状態を模式的に示す図である。図示のように、一例では、被検体50は、波状あるいはサイン波状に湾曲した表面を有している。歪ゲージセンサ装置10は、被検体50の表面に設置され、被検体50の曲面形態を検出する。この場合、歪ゲージセンサ装置10は、第2センサシート20Bが被検体50の表面に接触した状態で設置される。また、一例では、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bは、それぞれ16個の歪ゲージG0~G15を備えているものとしている。隣合う歪ゲージ間の間隔Lは、例えば、5~20mm、より好ましくは、10~15mm程度としている。
【0022】
本実施形態によれば、歪ゲージセンサ装置10は、全歪ゲージG0~G15を2つ以上の複数のグループに分け、グループ毎に複数の歪ゲージをスキャン駆動(時分割駆動)して検出値を取得する、いわゆる、間引きスキャン動作モードにて曲面検出を実行する。
図8は、歪ゲージをスキャン駆動する際のグループ分け、駆動順を示す図である。図示のように、本実施形態では、16個の歪ゲージを4つのグループ1~4に分け、各グループは、4つの歪ゲージを含んでいる。これら4つの歪ゲージは、互いに等間隔、例えば、歪ゲージ4つ分(4L)の間隔、を空けて位置する歪ゲージである。
グループ1は、Unit0~3に対応する歪ゲージG0、G4、G8、G12を含んでいる。グループ2は、Unit4~7に対応する歪ゲージG1、G5、G9、G13を含んでいる。グループ3は、Unit8~11に対応する歪ゲージG2、G6、G10、G14を含んでいる。グループ4は、Unit12~15に対応する歪ゲージG3、G7、G11、G15を含んでいる。
【0023】
なお、分割するグループ数は、4つに限らず、2つ以上の任意の数に設定可能である。各グループにおける歪ゲージの数は、共通に限らず、グループ毎に相違していてもよい。各グループにおいて、歪ゲージ間の間隔は、最大限広い間隔に設定されていることが望ましく、また、歪ゲージ2つ分(2L)以上に設定されていることが望ましい。複数の歪ゲージ間の間隔は等間隔としているが、等間隔でなくても良い。
【0024】
図9A図9Bは、歪ゲージセンサ装置の検出動作を示すフローチャートである。図10は、被検体の曲率半径が小さい場合の歪ゲージセンサ装置の検出動作時のタイミングチャート、図11は、被検体の曲率半径が大きい場合の歪ゲージセンサ装置の検出動作時のタイミングチャートである。
図示のように、検出時、タイミングコントローラ34は、ホストコントローラ38からの指示に応じて、スタート信号VD、これに同期するクロック信号HDをセレクタSELに入力する。セレクタSELは、グループ1の歪ゲージG0(Unit0)、G4(Unit1)、G8(Unit2)、G12(Unit3)を順次スキャン駆動(setting)し、これらの歪ゲージの検出信号(電圧値)を順次読取る(処理1)。
【0025】
詳細には、図5に示したように、セレクタSELは、第1センサシート20Aの電源線VL0に電源電圧を印加し、歪ゲージG0に所望の電圧PW0を印加する。これにより、一定時間、歪ゲージG0に電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第1信号線Sa0および第2信号線Sb0を介して、歪ゲージG0の一端の検出信号(電圧値)RXa0および歪ゲージG0の他端の検出信号(電圧値)RXb0を読み取る。
第1センサシート20Aのグランド線GNL0は、第2センサシート20Bの電源線VL0に繋がっている。より具体的には、第1センサシート20Aの歪ゲージG0と第2センサシート20Bの歪ゲージG0とは、第1センサシート20Aのグランド線GNL0、接続線(メッキスルーホール)及び第2センサシート20Bの電源線VL0を介して直列に接続されている。そのため、第1センサシート20Aの歪ゲージG0をスキャン駆動すると第2センサシート20Bの歪ゲージG0が同期して駆動され、当該歪ゲージG0にも電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第2センサシート20Bの第1信号線Sa0および第2信号線Sb0を介して、歪ゲージG0の一端の検出信号(電圧値)RXc0および歪ゲージG0の他端の検出信号(電圧値)RXd0を取得する。
取得した検出信号RXa0、RXb0、RXc0、RXd0は、アナログフロントエンド30に送られ、ここで調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0026】
以後、上記と同様に、セレクタSELは、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの歪ゲージG4、G8、G12を順次スキャン駆動し、これら歪ゲージの検出信号(電圧値)RXa4、RXb4、RXc4、RXd4、RXa8、RXb8、RXc8、RXd8、RXa12、RXb12、RXc12、RXd12を順次取得する。取得した検出信号RXa、RXb、RXc、RXdは、アナログフロントエンド30に送られ、ここで調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0027】
上述したように、アナログフロントエンド30は、送られた検出信号RXa0~RXa12、RXb0~RXb12、および検出信号RXc0~RXc12、RXd0~RXd12を読み出し回路31により順次、読み出して電圧信号に変換し、更に、AD変換器32およびデジタルフィルタ33によりデジタルデータ(Data)とする。更に、アナログフロントエンド30は、差分検出回路30a、30bにより、検出信号RXa0~RXa12とRXb0~RXb12との差分、および検出信号RXc0~RXc12とRXd0~RXd12との差分を検出する。検出された差分データは、順次、メモリ37に格納される。アナログフロントエンド30は、グループ1の歪ゲージのスキャン駆動が完了した時点で、1フレーム分の差分データをメモリ37から読み出し、ホストコントローラ38に出力する。
【0028】
図12は、グループ1の歪ゲージG0、G4、G8、G12がスキャン駆動された状態の歪ゲージセンサ装置を模式的に示す図である。図9Aおよび図12に示すように、ホストコントローラ38の読取り回路38aは、送られた差分データを読取り演算処理部38cへ送る。演算処理部38cは、送られた差分データに基づいて、歪ゲージG0、G4、G8、G12により検出された部位の曲率半径r0、r1、r3,r4を算出する(処理2)。算出結果はメモリ38bに格納される。
【0029】
ここで、曲率半径の算出方法の一例を説明する。
図13は、前述した被検体50の表面50aに設置された歪ゲージセンサ装置の一部を模式的に示す図である。図示のように、表面50a上に設置した状態において、ベース基板44の中立面は、表面50aと同一の曲率半径rで湾曲している。ここで、中立面とは、当該歪ゲージセンサ装置の湾曲前後において伸長(引張り)も収縮(圧縮)も生じない(すなわち湾曲後もひずみがゼロ)面である。本実施形態においては、中立面は、ベース基板44の厚さ方向の中央(厚さ×1/2)となる位置に設けられている。
外周側に位置する第1センサシート20Aの歪ゲージGaと内周側に位置する第2センサシート20Bの歪ゲージGbとは、径方向に対向しているとともに、互いに異なる曲率半径で湾曲している。
【0030】
図13および以下に示す数式において、W0:歪ゲージの初期幅、Wa:外周側の歪ゲージ幅、Wb:内周側の歪ゲージ幅、ΔW:歪ゲージの変化幅、d:基材厚さ、θ:歪ゲージ開き角、r:中立面の曲率半径、k:ゲージ率、R0:歪ゲージ基準抵抗、ΔR:歪ゲージ抵抗変化をそれぞれ示している。
【0031】
ベース基板44の中立面での歪ゲージGの幅を歪ゲージの初期幅W0とすると、W0=rθとなる。外周側の歪ゲージGaは、湾曲することにより延びた状態に変形し、そのゲージ幅Waは、
【数1】

となる。
内周側の歪ゲージGbは、湾曲することにより縮んだ状態に変形し、そのゲージ幅Wbは、
【数2】

となる。変化幅ΔWは、ΔW=dθ/2であり、中立面(被検体の表面50aに相当)の曲率半径rは、
【数3】

となる。
【0032】
図14は、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの等価回路を模式的に示す図である。
図示のように、本実施形態によれば、第1センサシート20Aのグランド線GNLは、第2センサシート20Bの電源線VLに繋がっている、すなわち、短絡している。これにより、外周側の歪ゲージGaと内周側の歪ゲージGbとが直列に接続されている。歪検出時、各歪ゲージGa、Gbの一端および他端で電圧降下を測定する。
【0033】
各歪ゲージGa、Gbの変形前の初期抵抗値をR0、変形後の外周側の歪ゲージGaの抵抗値をRa、変形後の内周側の歪ゲージGbの抵抗値をRb、外周側の歪ゲージGaの一端および他端における電圧値をV1、V2、内周側の歪ゲージGbの一端および他端における電圧値をV3、V4、歪ゲージの抵抗変化をΔR、各歪ゲージGa、Gbに流れる電流をI、とすると、歪ゲージGaの一端と他端との間の電圧降下V12、および歪ゲージGbの一端と他端との間の電圧降下V34は、
【数4】

となる。上式を下式で除算すると、
【数5】

の関係となり、歪ゲージ抵抗の変化を用いて表すと以下の式となる。
【数6】

上式より、歪ゲージ抵抗の変化率は、以下の式で算出される。
【数7】
【0034】
上記の関係式を前述した曲率半径rの計算式(1)に当てはめると、以下の通りとなる。
【数8】

ホストコントローラ38の演算処理部38cは、取得した差分値(V12、V34)と上記式(2)とにより、検出部位の曲率半径rを算出することができる。
【0035】
図9Aに示すように、曲率半径r0、r1,r2,r3を算出した後、ホストコントローラ38の判定部38dは、算出した曲率半径r0、r1、r3、r4の絶対値の各々と所定の閾値th0とを比較し、大小関係に応じてスキャン駆動を継続するか停止するかを判定する(処理2)。一例では、曲率半径r0、r1、r3、r4の絶対値の少なくとも1つが閾値th0よりも小さい場合、ホストコントローラ38は、次のグループ2の歪ゲージを順次スキャン駆動するように駆動回路40に指示する。また、全ての曲率半径r0、r1、r3、r4の絶対値が閾値th0よりも大きい場合、演算処理部38cは、曲率半径r0、r1、r3、r4に基づいて、被検体50の表面全体の曲面形態(曲面座標)を算出する。より具体的には、上記式(2)によって得られる各曲率半径r0、r1、r3、r4の絶対値及び正負符号、さらには歪ゲート間の間隔Lを用いて各歪ゲージ間の回転角を得る(図12中θ0~θ2参照)。その後、当該算出結果をメモリ38bに格納する(ST3)。
【0036】
次いで、ホストコントローラ38は、ユーザの操作等に起因した停止コマンドを受け取っているか否かを確認し、センシング(検出動作)を停止するか否かを判定する(ST4)。停止コマンドを受け取っている場合は、ホストコントローラ38は、駆動回路40の電源をオフとして検出動作を終了する(ST5)。また、停止コマンドを受け取っていない場合は、ホストコントローラ38は、前述した処理1に戻り、検出動作を再開する。
以上のように、検出した4箇所の曲率半径が比較的大きい場合、歪ゲージセンサ装置10は、グループ1の歪ゲージによる間引きスキャン検出動作のみにより、被検体50の曲面形態を検出する。
【0037】
次に、検出動作を継続する場合の動作モードについて説明する。
図9A図9B図11に示したように、前述した処理2において、曲率半径r0、r1、r3、r4の絶対値の少なくとも1つが閾値th0よりも小さい場合、ホストコントローラ38は、グループ2の歪ゲージを順次スキャン駆動するように駆動回路40に指示する。セレクタSELは、グループ2の歪ゲージG1(Unit4)、G5(Unit5)、G9(Unit6)、G13(Unit7)を順次スキャン駆動(setting)し、これらの歪ゲージの検出信号(電圧値)を順次読取る(処理3)。
【0038】
詳細には、図15に示したように、セレクタSELは、第1センサシート20Aの電源線VL1に所望の電圧PW1を印加する。これにより、一定時間、歪ゲージG1に電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第1信号線Sa1および第2信号線Sb1を介して、歪ゲージG1の一端の検出信号(電圧値)RXa1および歪ゲージG1の他端の検出信号(電圧値)RXb1を読み取る。
第1センサシート20Aの歪ゲージG1と第2センサシート20Bの歪ゲージG1とは、第1センサシート20Aのグランド線GNL1、接続線(メッキスルーホール)及び第2センサシート20Bの電源線VL1を介して直列に接続されている。そのため、第1センサシート20Aの歪ゲージG1をスキャン駆動すると第2センサシート20Bの歪ゲージG1が同期して駆動され、当該歪ゲージG1にも電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第2センサシート20Bの第1信号線Sa1および第2信号線Sb1を介して、歪ゲージG1の一端の検出信号(電圧値)RXc1および歪ゲージG1の他端の検出信号(電圧値)RXd1を取得する。
取得した検出信号RXa1、RXb1、RXc1、RXd1は、アナログフロントエンド30に送られ、ここで調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0039】
以後、上記と同様に、セレクタSELは、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの歪ゲージG5、G9、G13を順次スキャン駆動し、これら歪ゲージの検出信号(電圧値)RXa5、RXb5、RXc5、RXd5、RXa9、RXb9、RXc9、RXd9、RXa13、RXb13、RXc13、RXd13を順次取得する。取得した検出信号RXa、RXb、RXc、RXdは、アナログフロントエンド30に送られ、ここで調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0040】
アナログフロントエンド30は、グループ2の歪ゲージのスキャン駆動が完了した時点で、1フレーム分の差分データをメモリ37から読み出し、ホストコントローラ38に出力する。図16は、グループ1の歪ゲージG0、G4、G8、G12およびグループ2の歪ゲージG1、G5、G9、G13がスキャン駆動された状態の歪ゲージセンサ装置を模式的に示す図である。図9Aおよび図16に示すように、ホストコントローラ38の読取り回路38aは、送られた差分データを読取り演算処理部38cへ送る。演算処理部38cは、送られた差分データに基づいて、歪ゲージG1、G5、G9、G13により検出された部位の曲率半径r4、r5、r6,r7を算出する(処理4)。算出結果はメモリ38bに格納される。
【0041】
次いで、ホストコントローラ38の判定部38dは、算出した曲率半径r4、r5、r6,r7の絶対値の各々と所定の閾値th1とを比較し、大小関係に応じてスキャン駆動を継続するか停止するかを判定する(処理4)。一例では、曲率半径r4、r5、r6,r7の絶対値の少なくとも1つが閾値th1よりも小さい場合、ホストコントローラ38は、次のグループ3の歪ゲージを順次スキャン駆動するように駆動回路40に指示する。また、全ての曲率半径r4、r5、r6,r7の絶対値が閾値th1よりも大きい場合、演算処理部38cは、算出済みの曲率半径r0~r7に基づいて、被検体50の表面全体の曲面形態(曲面座標)を算出する。より具体的には、上記式(2)によって得られる各曲率半径r4、r5、r6、r7の絶対値及び正負符号、さらには歪ゲート間の間隔Lを用いて各歪ゲージ間の回転角を得る。当該回転角は、グループ2で得られた曲率半径に基づいて演算するのみならず、グループ1及びグループ2で得られた曲率半径に基づいて演算する(図16中のθ3~θ9参照)。その後、当該算出結果をメモリ38bに格納する(ST6)。
【0042】
次いで、ホストコントローラ38は、停止コマンドを受け取っているか否かを確認し、センシング(検出動作)を停止するか否かを判定する(ST7)。停止コマンドを受け取っている場合は、ホストコントローラ38は駆動回路40の電源をオフとして検出動作を終了する(ST8)。また、停止コマンドを受けっていない場合は、ホストコントローラ38は前述した処理1に戻り、検出動作を再開する。
以上のように、検出した4箇所の曲率半径r4、r5、r6,r7の絶対値が比較的大きい場合、歪ゲージセンサ装置10は、グループ1およびグループ2の歪ゲージによる間引きスキャン検出動作により、被検体50の曲面形態を検出する。
【0043】
図11図9A図9Bに示したように、前述した処理4において、曲率半径r4、r5、r6、r7の絶対値の少なくとも1つが閾値th1よりも小さい場合、ホストコントローラ38は、グループ3の歪ゲージを順次スキャン駆動するように駆動回路40に指示する。セレクタSELは、グループ3の歪ゲージG2(Unit8)、G6(Unit9)、G10(Unit10)、G14(Unit11)を順次スキャン駆動(setting)し、これらの歪ゲージの検出信号(電圧値)を順次読取る(処理5)。取得した検出信号RXa、RXb、RXc、RXdは、アナログフロントエンド30に送られ、ここで調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0044】
図17は、グループ1の歪ゲージG0、G4、G8、G12、グループ2の歪ゲージG1、G5、G9、G13、およびグループ3の歪ゲージG2、G6、G10、G14がスキャン駆動された状態の歪ゲージセンサ装置を模式的に示す図である。図9Bおよび図17に示すように、ホストコントローラ38の読取り回路38aは、送られた差分データを読取り演算処理部38cへ送る。演算処理部38cは、送られた差分データに基づいて、歪ゲージG2、G6、G10、G14により検出された部位の曲率半径r8、r9、r10,r11を算出する(処理6)。算出結果はメモリ38bに格納される。
【0045】
次いで、ホストコントローラ38の判定部38dは、算出した曲率半径r4、r5、r6,r7の絶対値の各々と所定の閾値th2とを比較し、大小関係に応じてスキャン駆動を継続するか停止するかを判定する(処理6)。一例では、曲率半径r8、r9、r10,r11の絶対値の少なくとも1つが閾値th2よりも小さい場合、ホストコントローラ38は、次のグループ4の歪ゲージを順次スキャン駆動するように駆動回路40に指示する。また、全ての曲率半径r8、r9、r10,r11の絶対値が閾値th2よりも大きい場合、演算処理部38cは、検出済みの曲率半径r0~r11に基づいて、被検体50の表面全体の曲面形態(曲面座標)を算出する。具体的には、上記式(2)によって得られる各曲率半径r8、r9、r10、r11の絶対値及び正負符号、さらには歪ゲート間の間隔Lを用いて各歪ゲージ間の回転角を得る。上記と同様、当該回転角は、グループ3で得られた曲率半径に基づいて演算するのみならず、グループ1~3で得られた曲率半径に基づいて演算する(図17中θ10~θ20参照)。その後、当該算出結果をメモリ38bに格納する(ST9)。
【0046】
次いで、ホストコントローラ38は、センシング(検出動作)を停止するか否かを判定し(ST10)、停止コマンドを受け取っている場合は、駆動回路40の電源をオフとして検出動作を終了する(ST11)。また、停止コマンドを受け取っていない場合は、ホストコントローラ38は前述した処理1に戻り、検出動作を再開する。
このように、検出した4箇所の曲率半径r8、r9、r10,r11が比較的大きい場合、歪ゲージセンサ装置10は、グループ1、2、3の歪ゲージによる間引きスキャン検出動作により、被検体50の曲面形態を検出する。
【0047】
図9Bに示したように、前述した処理6において、曲率半径r8、r9、r10,r11の絶対値の少なくとも1つが閾値th2よりも小さい場合、ホストコントローラ38は、グループ4の歪ゲージを順次スキャン駆動するように駆動回路40に指示する。セレクタSELは、グループ4の歪ゲージG3(Unit12)、G7(Unit13)、G11(Unit14)、G15(Unit15)を順次スキャン駆動(setting)し、これらの歪ゲージの検出信号(電圧値)を順次読取る(処理7)。取得した検出信号RXa、RXb、RXc、RXdは、アナログフロントエンド30に送られ、ここで調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0048】
図18は、グループ1~4の歪ゲージG0~G15がスキャン駆動された状態の歪ゲージセンサ装置を模式的に示す図である。図9Bおよび図18に示すように、ホストコントローラ38の読取り回路38aは、送られた差分データを読取り演算処理部38cへ送る。演算処理部38cは、送られた差分データに基づいて、歪ゲージG3、G7、G11、G15により検出された部位の曲率半径r12、r13、r14,r15を算出し、更に、算出済みの曲率半径r0~r15に基づいて、被検体50の表面全体の曲面形態(曲面座標)を算出する。具体的には、ここまでで得られた各曲率半径r0~r15の絶対値及び正負符号、さらには歪ゲート間の間隔Lを用いて各歪ゲージ間の回転角を得る。その後、当該算出結果をメモリ38bに格納する(処理8)。
【0049】
次いで、ホストコントローラ38は、センシング(検出動作)を停止するか否かを判定し、停止コマンドを受け取っている場合は、駆動回路40の電源をオフとして検出動作を終了する(処理8)。また、停止コマンドを受け取っていない場合は、ホストコントローラ38は前述した処理1に戻り、検出動作を継続する。
このように、曲率半径の小さい曲面を測定する場合、歪ゲージセンサ装置10は、グループ1、2、3、4の歪ゲージ、すなわち、全ての歪ゲージG0~G15をスキャン駆動することにより被検体50の曲面形態を検出する。
なお、上述した検出動作モードにおいて、曲率半径の大小を判定するための閾値th0、th1、th2は、任意の値に設定可能である。例えば、閾値th0、th3、th2は、同じ値であっても異なる値であっても構わない。すなわち、閾値th0=閾値th1=閾値th2=でも構わないし、閾値th0>閾値th1>閾値th2でも構わないし、閾値th0<閾値th1<閾値th2でも構わない。これら閾値のいずれか2つのみが同じでも構わない。
【0050】
以上のように構成された第1実施形態に係る歪ゲージセンサ装置10によれば、全歪ゲージの数よりも少ない数の歪ゲージにより間引きスキャン検出を行い、1回の間引きスキャン検出毎に次の間引きスキャン検出を継続するか停止するかを判定している。比較的曲率半径の大きい被検体の曲面検出動作においては、少ない回数の間引きスキャン検出にて被検体の曲面形態を検出することが可能となる。これにより、本実施形態によれば、検出時間の短縮および消費電力の低減を図ることが可能な歪ゲージセンサ装置を得ることができる。
【0051】
なお、上述した第1実施形態において、センサシートにおける歪ゲージの数は、16個に限らず、必要に応じて適宜増減可能である。間引きスキャン駆動するグループ数は、4つに限らず、2つ以上の任意の数に設定可能である。各グループにおける歪ゲージ数は、共通に限らず、グループ毎に相違していてもよい。各グループにおける歪ゲージの組合せは、第1実施形態に限らず、種々選択可能である。
【0052】
(第1変形例)
図19は、第1変形例における、歪ゲージをスキャン駆動する際のグループ分け、駆動順を示す図である。図示のように、第1変形例では、16個の歪ゲージを4つのグループ1~4に分け、各グループは、4つの歪ゲージを含んでいる。これら4つの歪ゲージは、互いに等間隔、例えば、歪ゲージ4つ分(4L)の間隔、を空けて位置する歪ゲージである。
グループ1は、Unit0~3に対応する歪ゲージG0、G4、G8、G12を含んでいる。グループ2は、Unit4~7に対応する歪ゲージG2、G6、G10、G14を含んでいる。グループ3は、Unit8~11に対応する歪ゲージG1、G5、G9、G13を含んでいる。グループ4は、Unit12~15に対応する歪ゲージG3、G7、G11、G15を含んでいる。
【0053】
第1変形例によれば、グループ1の歪ゲージとグループ2の歪ゲージとの間隔を歪ゲージ2つ分の2Lと広く設定している。そのため、グループ1の間引きスキャン検出およびグループ2の間引きスキャン検出を実行することにより、長手方向Xのより広い領域に亘って歪検出を行うことができる。その他、変形例1においても、前述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
(第2変形例)
図20は、第2変形例に係る歪ゲージセンサ装置を模式的に示す側面図、図21は、被検体の一例を示す断面図である。
図20に示すように、第2変形例では、歪ゲージセンサ装置10は、全歪ゲージを複数のブロックに分け、更に、各ブロックの歪ゲージを複数のグループに分けて、グループ毎に間引きスキャン駆動する構成としている。詳細には、歪ゲージセンサ装置10のセンサシートは、一列に並んで設けられた64個の歪ゲージG0~G63を有している。歪ゲージをスキャン駆動する際、64個の歪ゲージを複数、例えば、4つのブロック1~4に分け、更に、各ブロックの歪ゲージを複数、例えば、4つのグループ1~4に分け、ブロック毎に、各グループの間引きスキャン検出動作を実行する。
【0055】
一例では、ブロック1は、連続する16個の歪ゲージG0~G15を含んでいる。ブロック2は、連続する16個の歪ゲージG16~G31を含んでいる。ブロック3は、連続する16個の歪ゲージG32~G47を含んでいる。ブロック4は、連続する16個の歪ゲージG48~G63を含んでいる。
ブロック1~4の各々は、例えば、前述した第1実施形態と同様に、4つのグループに分けられ、各グループは、4つの歪ゲージを含んでいる。これら4つの歪ゲージは、互いに等間隔、例えば、歪ゲージ4つ分(4L)の間隔、を空けて位置している。
【0056】
上記の歪ゲージセンサ装置10では、ブロック1~4毎に、前述した第1実施形態と同様の間引きスキャン検出動作を実行する。例えば、図21に示すような、局部的に曲げ角度が大きいヘアピン形状の被検体50について、歪ゲージセンサ装置10により曲面形態を検出する場合を想定する。この場合、歪ゲージセンサ装置10のブロック1およびブロック4の領域はそれぞれ被検体50の曲率半径の大きい直線状部分の上に設置され、ブロック2およびブロック3の一部が曲率半径の小さい湾曲部分50bの上に設置される。この状態で、ブロック毎に間引きスキャン検出動作を実行する。曲率半径の大きい領域に設置されているブロック1およびブロック4では、1つ、あるいは2つのグループによる間引きスキャン検出動作によりこの領域の曲面形態が検出される。曲率半径の小さい領域に設置されているブロック2およびブロック3では、3つ以上の複数グループによる間引きスキャン検出動作を継続することにより、この領域の曲面形態を検出する。
【0057】
上記第2変形例によれば、曲率半径の小さい曲面領域を検出するブロックのみ、間引きスキャン検出動作を複数回継続し、曲率半径の大きい曲面領域を検出するブロックについては間引きスキャン検出動作を1回程度で打ち切ることが可能となる。これにより、歪ゲージセンサ装置全体の検出時間の短縮を図ることができ、同時に、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0058】
次に、第2実施形態に係る歪ゲージセンサ装置について説明する。以下に述べる第2実施形態において、前述した第1実施形態と同一の部分には第1実施形態と同一の参照符号を付して、その詳細な説明を簡略化あるいは省略する場合がある。
(第2実施形態)
図22は、第2実施形態に係る歪ゲージセンサ装置の斜視図である。
図示のように、第2実施形態によれば、歪ゲージセンサ装置10は、片面型の歪ゲージセンサを構成している。歪ゲージセンサ装置10は、細長い帯状のフレキシブルなベース基板44と、ベース基板44の片面に貼付されたセンサシート20と、フレキシブル配線板(FPC)14を介してセンサシート20に接続された中継基板(駆動回路基板)12と、を備えている。
センサシート20は、前述した第1実施形態における第1センサシートあるいは第2センサシートと同様に構成されている。すなわち、センサシート20は、細長い帯状のフレキシブルなシート基材22とシート基材22の片面の側に設けられた導体パターンとを有している。導体パターンは、複数の歪ゲージG0~Gnを含んでいる。複数の歪ゲージG0~Gnは、シート基材22の長手方向Xの一端から他端に亘り所定の間隔を置いて長手方向Xに一列に並んで設けられている。
【0059】
図23は、センサシート20の歪ゲージおよび配線パターン、並びに、歪ゲージセンサ装置10のコントローラを模式的に示す図である。
図示のように、センサシート20の複数の歪ゲージG0~Gnは、センサシート20の長手方向Xに間隔を空けて一列に並んで設けられている。歪ゲージG0~Gnの各々は、幅方向Yに蛇腹状に延在し、幅方向Yの一端および他端を有している。各歪ゲージG0~Gnは、歪に応じた抵抗変化を生じる。導体パターンは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの列に沿って長手方向Xに延在している複数本の電源線VL0~VLn、複数本のグランド線GNL0~GNLn、複数本の第1信号線Sa0~San、および複数本の第2信号線Sb0~Sbnを有している。
【0060】
電源線VL0~VLnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの一端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。第1信号線Sa0~Sanは、歪ゲージG0~Gnの一端と電源線VL0~VLnとの間に位置している。第1信号線Sa0~Sanは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの一端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
【0061】
グランド線GNL0~GNLnは、歪ゲージG0~Gnの他端の側に位置している。グランド線GNL0~GNLnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの他端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
第2信号線Sb0~Sbnは、歪ゲージG0~Gnの他端とグランド線GNL0~GNLnとの間に位置している。第2信号線Sb0~Sbnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの他端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
【0062】
センサシート20を駆動する駆動回路(コントローラ)40は、セレクタSEL、アナログフロントエンド(AFE:信号調整回路)30、タイミングコントローラ34、通信インターフェース36などを有している。通信インターフェース36は、外部のホストコントローラ38に無線あるいは有線接続され、ホストコントローラ38から駆動信号(setting)を受けるとともに、検出データ(Data)をホストコントローラ38に送信する。駆動回路40の各部の構成およびホストコントローラ38の構成は、前述した第1実施形態における駆動回路およびホストコントローラとほぼ同一である。
【0063】
本実施形態によれば、歪ゲージセンサ装置10は、全歪ゲージG0~G15を2つ以上の複数のグループに分け、グループ毎に複数の歪ゲージをスキャン駆動(時分割駆動)して検出値を取得する、いわゆる、間引きスキャン動作モードにて曲面検出を実行する。歪ゲージのグループ分けは、前述した第1実施形態と同一でも良いし、あるいは、異なるグループ分けとしてもよい。ホストコントローラ38は、1グループの歪ゲージを間引きスキャン駆動する毎に、検出部位の曲率半径を算出し、閾値と比較することにより、スキャン駆動を継続するか打ち切り停止するか判断する。算出した各部位の曲率半径が閾値よりも大きい場合、ホストコントローラ38は、スキャン検出動作を停止し、算出済みの曲率半径に基づいて被検体の曲面形態を算出する。その他、歪ゲージセンサ装置10は、第1実施形態と同様のスキャン検出動作にて歪検出を実行する。
【0064】
以上のように構成された第2実施形態に係る片面型の歪ゲージセンサ装置10においても、前述した第1実施形態に係る歪ゲージセンサ装置と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、第2実施形態においても、検出時間の短縮および消費電力の低減を図ることが可能な歪ゲージセンサ装置を得ることができる。
【0065】
なお、本発明の実施形態および変形例を説明したが、これら実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合せを行うことができる。実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本発明の実施形態として上述した各構成を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての構成も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0066】
例えば、歪ゲージをスキャン駆動する方向は、先端側の歪ゲージG0から基端側の歪ゲージGnに向う方向に限らず、逆向きで、基端側の歪ゲージGnから先端側の歪ゲージG0に向う方向としても良い。また、センサシートにおける歪ゲージの配列数は、上述した実施形態に限らず、任意に選択可能である。前述したように、歪ゲージのグループ分け、ブロック分けは、上述した実施形態に限らず、種々選択可能である。センサシートの構成材料、寸法、および形状は、前述した実施形態に限定されることなく、適宜、変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…歪ゲージセンサ装置、12…中継基板、20センサシート、
20A…第1センサシート、20B…第2センサシート、22…シート基材、
30…アナログフロントエンド、30a、30b…差分検出回路、
38…ホストコントローラ、38c…演算処理部、38d…判定部、
40…駆動回路(コントローラ)、44…ベース基板、G0~Gn…歪ゲージ、
VL…電源線、GNL…グランド線、Sa…第1信号線、Sb…第2信号線、
SEL…セレクタ
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