(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147414
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ダイオードおよび高周波デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/329 20060101AFI20241008BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L29/88 S
H01L29/06 601S
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060418
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】柴田 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】村山 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】本林 久良
(57)【要約】
【課題】高周波特性の劣化を抑制した微細な共鳴トンネルダイオードを提供する。
【解決手段】本開示によるダイオードは、導電層と、導電層に電気的に接続する第1面、第1面に対して反対側にある第2面、および、第1面と第2面との間にある側面を含む共鳴トンネルダイオード素子と、共鳴トンネルダイオード素子の側面に設けられた第1絶縁層であって、第1面に対して垂直方向の厚みが共鳴トンネルダイオード素子の厚みよりも厚い第1絶縁層と、共鳴トンネルダイオード素子の第2面上および第1絶縁層上に設けられた第1電極と、導電層に電気的に接続された第2電極とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層と、
前記導電層に電気的に接続する第1面と、前記第1面に対して反対側にある第2面と、前記第1面と前記第2面との間にある側面とを含む共鳴トンネルダイオード素子と、
前記共鳴トンネルダイオード素子の側面に設けられた第1絶縁層であって、前記第1面に対して垂直方向の厚みが前記共鳴トンネルダイオード素子の厚みよりも厚い第1絶縁層と、
前記共鳴トンネルダイオード素子の前記第2面上および前記第1絶縁層上に設けられた第1電極と、
前記導電層に電気的に接続された第2電極とを備える、ダイオード。
【請求項2】
前記第1絶縁層は、
前記第1面に対して垂直方向の厚みが前記共鳴トンネルダイオード素子の厚みとほぼ同じ下部絶縁層と、
前記下部絶縁層上に設けられた上部絶縁層とを含み、
前記第1電極は、前記共鳴トンネルダイオード素子の前記第2面上および前記上部絶縁層上に設けられている、請求項1に記載のダイオード。
【請求項3】
前記上部絶縁層の比誘電率は、前記下部絶縁層の比誘電率と同等か、それよりも低い、請求項2に記載のダイオード。
【請求項4】
前記第1絶縁層は、前記共鳴トンネルダイオード素子の周囲を囲む、請求項1に記載のダイオード。
【請求項5】
前記下部絶縁層は、前記共鳴トンネルダイオード素子の材料に不純物を導入した材料で構成されている、請求項2に記載のダイオード。
【請求項6】
前記不純物は、H、He、B、C、N、O、F、Neのいずれかである、請求項5に記載のダイオード。
【請求項7】
前記第1電極は、前記共鳴トンネルダイオード素子上において窪みを有する、請求項1に記載のダイオード。
【請求項8】
前記共鳴トンネルダイオード素子は、InN、InGaN、GaN、AlGaN、AlN、AlInN、AlInGaNおよびAlPNのいずれかの材料を含む、請求項1に記載のダイオード。
【請求項9】
前記導電層が上に設けられ、GaN、サファイア、SiおよびSiCのいずれかの材料を含む基板をさらに備える、請求項1に記載のダイオード。
【請求項10】
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記上部絶縁層の内側面は、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記下部絶縁層の内側面とほぼ面一である、請求項2に記載のダイオード。
【請求項11】
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記上部絶縁層の内側面は、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記下部絶縁層の内側面よりも前記共鳴トンネルダイオード素子から離間する方向にある、請求項2に記載のダイオード。
【請求項12】
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記上部絶縁層の内側面は、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記下部絶縁層の内側面よりも前記共鳴トンネルダイオード素子の中心側にある、請求項2に記載のダイオード。
【請求項13】
前記上部絶縁層は、前記第2電極を被覆する、請求項2に記載のダイオード。
【請求項14】
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記第1電極は、前記第2電極とは反対側の方向へ前記上部絶縁層上において延伸している、請求項13に記載のダイオード。
【請求項15】
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記第1電極は、前記第2電極の方向へ前記上部絶縁層上において延伸している、請求項13に記載のダイオード。
【請求項16】
導電層と、
前記導電層に電気的に接続する第1面と、前記第1面に対して反対側にある第2面と、前記第1面と前記第2面との間にある側面とを含む共鳴トンネルダイオード素子と、
前記共鳴トンネルダイオード素子の側面に設けられた第1絶縁層であって、前記第1面に対して垂直方向の厚みが前記共鳴トンネルダイオード素子の厚みよりも厚い第1絶縁層と、
前記共鳴トンネルダイオード素子の前記第2面上および前記第1絶縁層上に設けられた第1電極と、
前記導電層に電気的に接続された第2電極とを備える、高周波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダイオードおよび高周波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
GaN系材料を用いた共鳴トンネルダイオードが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-54771号公報
【特許文献2】特開2009-49692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウェットエッチング技術を用いてGaN系材料を加工することは困難である。また、ドライエッチングを用いてGaN系材料を加工すると、プラズマによるダメージによって共鳴トンネルダイオードの特性が劣化してしまう。また、ダメージの影響をさけるために共鳴トンネルダイオードのサイズを大きくすると、共鳴トンネルダイオードの寄生容量が増大し、高周波特性が劣化してしまう。
【0005】
そこで、本開示は、高周波特性の劣化を抑制した微細な共鳴トンネルダイオードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面のダイオードは、導電層と、導電層に電気的に接続する第1面、第1面に対して反対側にある第2面および第1面と第2面との間にある側面を含む共鳴トンネルダイオード素子と、共鳴トンネルダイオード素子の側面に設けられた第1絶縁層であって、第1面に対して垂直方向の厚みが共鳴トンネルダイオード素子の厚みよりも厚い第1絶縁層と、共鳴トンネルダイオード素子の第2面上および第1絶縁層上に設けられた第1電極と、導電層に電気的に接続された第2電極とを備える。
【0007】
第1絶縁層は、第1面に対して垂直方向の厚みが共鳴トンネルダイオード素子の厚みとほぼ同じ下部絶縁層と、下部絶縁層上に設けられた上部絶縁層とを含み、第1電極は、共鳴トンネルダイオード素子の第2面上および上部絶縁層上に設けられていてもよい。
【0008】
上部絶縁層の比誘電率は、下部絶縁層の比誘電率と同等か、それよりも低くてもよい。
【0009】
第1絶縁層は、共鳴トンネルダイオード素子の周囲を囲んでもよい。
【0010】
下部絶縁層は、共鳴トンネルダイオード素子の材料に不純物を導入した材料で構成されていてもよい。
【0011】
不純物は、H、He、B、C、N、O、F、Neのいずれかでよい。
【0012】
第1電極は、共鳴トンネルダイオード素子上において窪みを有してもよい。
【0013】
共鳴トンネルダイオード素子は、InN、InGaN、GaN、AlGaN、AlN、AlInN、AlInGaNおよびAlPNのいずれかの材料を含んでもよい。
【0014】
導電層が上に設けられ、GaN、サファイア、SiおよびSiCのいずれかの材料を含む基板をさらに備えてもよい。
【0015】
第1面に対して垂直方向の断面において、共鳴トンネルダイオード素子側にある上部絶縁層の内側面は、共鳴トンネルダイオード素子側にある下部絶縁層の内側面とほぼ面一であってもよい。
【0016】
第1面に対して垂直方向の断面において、共鳴トンネルダイオード素子側にある上部絶縁層の内側面は、共鳴トンネルダイオード素子側にある下部絶縁層の内側面よりも共鳴トンネルダイオード素子から離間する方向にあってもよい。
【0017】
第1面に対して垂直方向の断面において、共鳴トンネルダイオード素子側にある上部絶縁層の内側面は、共鳴トンネルダイオード素子側にある下部絶縁層の内側面よりも共鳴トンネルダイオード素子の中心側にあってもよい。
【0018】
上部絶縁層は、第2電極を被覆してもよい。
【0019】
第1面に対して垂直方向の断面において、第1電極は、第2電極とは反対側の方向へ上部絶縁層上において延伸してもよい。
【0020】
第1面に対して垂直方向の断面において、第1電極は、第2電極の方向へ上部絶縁層上において延伸してもよい。
【0021】
本開示の一側面の高周波デバイスは、導電層と、導電層に電気的に接続する第1面、第1面に対して反対側にある第2面、および、第1面と第2面との間にある側面を含む共鳴トンネルダイオード素子と、共鳴トンネルダイオード素子の側面に設けられた第1絶縁層であって、第1面に対して垂直方向の厚みが共鳴トンネルダイオード素子の厚みよりも厚い第1絶縁層と、共鳴トンネルダイオード素子の第2面上および第1絶縁層上に設けられた第1電極と、導電層に電気的に接続された第2電極とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態による共鳴トンネルダイオード素子を用いた発振器の構成を示す斜視図。
【
図4】上部電極と下部電極との間の容量を示す等価回路図。
【
図5A】絶縁層の膜厚と発振器の発振周波数との関係を示すグラフ。
【
図5B】絶縁層の膜厚と発振器の放射効率との関係を示すグラフ。
【
図6】第1実施形態によるダイオードの製造方法の一例を示す断面図。
【
図9】第2実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図10】第3実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図11】第4実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図12】第5実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図13】第6実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図14】第7実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図15】第8実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図16】第9実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図17】第10実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図18】第11実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図19】第12実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図20】第13実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図21】第14実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【
図22】第15実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による共鳴トンネルダイオード素子を用いた発振器の構成を示す斜視図である。
【0025】
発振器1は、共鳴トンネルダイオード素子を有するダイオード20に電圧を印加することによって発振し、スロットアンテナ30から高周波信号を出力する高周波デバイスである。発振器1は、例えば、ミリ波・テラヘルツ波発振器である。尚、本実施形態では、ダイオード20は、発振器1に適用されている。しかし、ダイオード20は、高周波信号をスロットアンテナ30で受信する受信器に適用することもできる。
【0026】
発振器1は、基板10と、ダイオード20と、スロットアンテナ30と、MIM40と、信号電極50と、基準電極60と、シャント抵抗70とを備えている。
【0027】
基板10は、例えば、GaN、サファイア、SiおよびSiCのいずれかの材料を含む基板である。基板10は、n型または半絶縁性でよい。尚、最終完成品において、必ずしも基板10を備えている必要はない。
【0028】
ダイオード20は、基板10上に設けられている。ダイオード20は、量子井戸構造を有する共鳴トンネルダイオード素子を備える。ダイオード20は、共鳴トンネルダイオード素子に電圧を印加することによって高周波数で発振する。ダイオード20のより詳細な構成については、後で説明する。
【0029】
スロットアンテナ30は、信号電極50および基準電極60等を構成する導電層に形成された開口部であり、ダイオード20からの高周波信号を外部へ送信する。
【0030】
MIM(Metal-Insulator-Metal)40は、IF(Intermediate Frequency)信号および直流信号をRF信号から分離するローパスフィルタとして機能する。MIM40は、例えば、
図2の上部電極51、絶縁層110および下部電極61を積層したキャパシタ構造を有する。
【0031】
信号電極50は、MIM40の上部電極およびダイオード20の上部電極に電気的に接続されている。例えば、信号電極50は、MIM40の上部電極およびダイオード20の上部電極と一体形成されている。信号電極50は、給電端子として、高周波信号をダイオード20の上部電極に伝達する。信号電極50は、基準電極60から電気的に分離されている。信号電極50には、例えば、金などの導電性金属材料が用いられる。
【0032】
基準電極60は、基準電圧源(例えば、グランド)とダイオード20の下部電極との間に接続されている。例えば、基準電極60は、ダイオード20の下部電極と一体形成されている。基準電極60は、給電端子として、ダイオード20の下部電極に基準電圧源の電圧(例えば、接地電圧)を伝達する。基準電極60には、例えば、金などの導電性金属材料が用いられる。
【0033】
シャント抵抗70は、信号電極50と基準電極60との間に接続されており、外部機器との接続による意図しない低周波での寄生発振 を抑制するために安定化抵抗として設けられている。シャント抵抗70は、信号電極50と基準電極60との間の電気的分離を維持可能な抵抗値を有する。
【0034】
図2は、ダイオードの構成例を示す斜視図である。
図3は、
図2の3-3線に沿った断面図である。
【0035】
図3に示すように、ダイオード20は、基板10と、導電層80と、下部電極61と、共鳴トンネルダイオード素子120と、不純物層90と、絶縁層100と、上部電極51と、絶縁層110とを備えている。
【0036】
導電層80は、基板10上に設けられている。導電層80は、半導体材料または金属材料で構成されている。導電層80は、例えば、n型GaNで構成されている。
【0037】
下部電極61は、導電層80上に設けられており、導電層80に電気的に接続されている。例えば、下部電極61は導電層80にオーミック接触している。下部電極61は、基準電極60と電気的に接続されている。下部電極61には、例えば、金などの導電性金属材料が用いられる。基準電極60および下部電極61は、一体の電極として構成されてもよい。
【0038】
共鳴トンネルダイオード(以下、RTD(Resonant Tunneling Diode)ともいう)素子120は、導電層80上に設けられている。RTD素子120には、例えば、InN、InGaN、GaN、AlGaN、AlN、AlInN、AlInGaNおよびAlPNのいずれかの材料が用いられている。
【0039】
RTD素子120は、導電層80に電気的に接続する第1面F1と、第1面に対して反対側にある第2面F2と、第1面F1と第2面F2との間にある側面F3とを含む。RTD素子120は、Z方向から見た平面視において、略円形の形状を有する。
【0040】
RTD素子120は、上部電極51と下部電極61との間において電圧が印加され、負性抵抗を有する共鳴トンネルダイオードとして機能する。
【0041】
不純物層(下部絶縁層)90がRTD素子120の側面F3に隣接して設けられており、RTD120の周囲を囲むように設けられている。従って、不純物層90は、Z方向から見た平面視において、略円環形状を有する。不純物層90は、RTD素子120の第1面F1に対して垂直方向(Z方向)の厚みにおいて、RTD素子120の厚みとほぼ同じである。不純物層90は、RTD素子120の材料に不純物を導入した絶縁性材料で構成されている。不純物層90の不純物は、基板10に導入されたn型不純物とは異なる不純物である。不純物層90には、例えば、InN、InGaN、GaN、AlGaN、AlN、AlInN、AlInGaNおよびAlPNのいずれかの材料に、不純物として、例えば、ボロンを導入した絶縁性材料が用いられている。不純物層90の不純物濃度は、約1×1018cm-3以上であることが好ましい。尚、不純物層90に導入される不純物は、H、He、B、C、N、O、F、Ne等のいずれでもよい。
【0042】
絶縁層(上部絶縁層)100は、不純物層90上に設けられている。従って、絶縁層100も、RTD素子120と同様に、Z方向から見た平面視において、略円環形状を有する。絶縁層100には、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の絶縁性材料が用いられる。絶縁層100の比誘電率は、不純物層90の比誘電率と同等か、それよりも低いことが好ましい。これにより、絶縁層100上にある上部電極51の部分と導電層80との間の寄生容量を低減させることができる。絶縁層100は、プロセスの安定性および簡易性のために、不純物層90上だけでなく、下部電極61および/または導電層80等の他の構成要素も被覆してもよい。
【0043】
RTD素子120側にある絶縁層100の内側面F4は、Z方向の断面において、RTD素子120側にある不純物層90の内側面F5とほぼ面一である。
【0044】
不純物層90および絶縁層100は、いずれも絶縁層であり、不純物層90および絶縁層100の全体(第1絶縁層)のZ方向の厚みは、RTD素子120の厚みよりも厚くなっている。これにより、絶縁層100上にある上部電極51の部分と導電層80との間の寄生容量を低減させることができる。
【0045】
尚、不純物層90および絶縁層100は、二層の積層構造であるが、三層以上の積層構造であってもよい。
【0046】
上部電極51は、RTD素子120の第2面F2上および不純物層90上に設けられている。上部電極51は、RTD素子120の第2面F2上を被覆しつつ、絶縁層100上にも設けられている。不純物層90および絶縁層100の全体のZ方向の厚みは、RTD素子120の厚みよりも厚くなっているので、
図2に示すように、上部電極51は、RTD素子120上において窪み55を有する。窪み55は、絶縁層100の内側面F4に対応して略円形の形状を有する。上部電極51には、例えば、金などの導電性金属材料が用いられる。なおRTD素子の形状は、略円形に限定される必要はなく、楕円形や正方形、長方形などでも構わない。
【0047】
上部電極51の一部は、
図2に示すように、片側へ延伸しており、MIM40の上部電極を介して信号電極50に電気的に接続されている。信号電極50および上部電極51は、一体の電極として構成されてもよい。
【0048】
Z方向から見た平面視において、不純物層90、絶縁層100、上部電極51は、例えば、略円形の平面形状を有するが、特にこれに限定されない。
【0049】
絶縁層110は、上部電極51と下部電極61との間に設けられ、MIM40を構成する。
【0050】
このように、第1実施形態によるダイオード20は、メサ構造のRTD素子120と、その周囲に第1絶縁層90、100を備える。第1絶縁層90、100の全体の厚みは、RTD素子120の厚みよりも厚い。これにより、上部電極51は、RTD素子120の外側においては第1絶縁層90、100によって導電層80から離間し、寄生容量を低減させる。
【0051】
図4は、上部電極51と下部電極61との間の容量を示す等価回路図である。
図3の領域Raは、上部電極51と導電層80との間にRTD素子120が存在する領域である。領域Rbは、上部電極51と導電層80との間に第1絶縁層90または100が存在する領域である。
【0052】
領域Raにおける上部電極51と下部電極61との間の容量は、Crtdである。領域Rbにおける上部電極51と下部電極61との間の容量C90_100は、C90およびC100の合成容量である。合成容量C90_100は、C90・C100/(C90+C100)となる。容量C90は、上部電極51と導電層80との間における不純物層90の容量であり、容量C100は、上部電極51と導電層80との間における絶縁層100の容量である。上部電極51と下部電極61との間の総容量Callは、Crtd+C90_100となる。
【0053】
総容量Callは、スロットアンテナ30に並列接続され、発振器1の寄生容量として作用する。従って、総容量Callが大きいと、発振器1の高周波特性が低周波側にシフトする。このような周波数シフトによって、発振器1全体の発振周波数はスロットアンテナ30固有の動作周波数の範囲から外れ、発振器1全体としての高周波特性(放射効率、利得など)が劣化してしまう。
【0054】
一方、RTD素子120の材質および厚み、平面レイアウトの面積は、発振器1の特性に関わるので一定とする。この場合、容量Crtdは、RTD素子120の固有値となる。従って、総容量Callを低減させて発振器1の高周波特性を改善するためには、合成容量C90_100を低減させる必要がある。
【0055】
例えば、
図5Aは、絶縁層100の膜厚と発振器の発振周波数との関係を示すグラフである。横軸が絶縁層100のZ方向の厚みを示す。縦軸が発振器1の発振周波数を示す。絶縁層100の厚みが薄くなると、総容量C
allが大きくなり、発振器1の発振周波数が劣化することがわかる。例えば、絶縁層100の膜厚がゼロである場合、発振周波数は、188GHzである。絶縁層100が厚くなると、総容量C
allが小さくなり、発振器1の発振周波数が高くなる。例えば、絶縁層100の膜厚が800nmである場合、発振周波数は、280GHzまで増大した。よって、絶縁層100を厚くすることによって、発振器1の高周波特性が向上することがわかる。なお、
図5Aの基準値Refは、ダイオード20の影響を受けないときの理想的なアンテナの発振周波数を示す。
【0056】
例えば、
図5Bは、絶縁層100の膜厚と発振器の放射効率との関係を示すグラフである。横軸が絶縁層100のZ方向の厚みを示す。縦軸が発振器1の放射効率を示す。絶縁層100の厚みが薄くなると、総容量C
allが大きくなり、発振器1の放射効率が劣化することがわかる。例えば、絶縁層100の膜厚がゼロである場合、放射効率は、0%である。例えば、絶縁層100の膜厚が800nmである場合、放射効率は、78%まで増大した。よって、絶縁層100を厚くすることによって、発振器1の放射効率が向上することがわかる。
図5Aの基準値Refは、ダイオード20の影響を受けないときの理想的なアンテナの発振周波数を示す。
【0057】
このように、絶縁層100の膜厚を厚くすることによって、発振器1の発振周波数および放射効率を向上させることができる。
【0058】
そこで、本実施形態による発振器1では、不純物層90の上に絶縁層100を設け、第1絶縁層90、100の全体の厚みを厚くしている。これにより、
図3の領域Rbにおいて、上部電極51と導電層80との間の距離が離れ、上部電極51と下部電極61との間の電気長が長くなる。よって、合成容量C
90_100が低下する。合成容量C
90_100を低下させることによって、総容量C
allを低下させることができる。その結果、発振器1の高周波特性を改善させることができる。
【0059】
絶縁層100を低誘電体材料(Low-k材料)で形成することによって、容量C90_100をさらに低下させ、発振器1の高周波特性をさらに改善させることができる。低誘電体材料は、例えば、空洞やポーラスを含むシリコン酸化膜等でもよい。
【0060】
また、本実施形態によれば、絶縁層100の比誘電率または膜厚を調節することによって、総容量Callを変化させ、発振器1の発振周波数を制御することができる。
【0061】
尚、合成容量C90_100は、直列接続される複数の容量のうち小さい容量に漸近する。不純物層90は、RTD素子120の材料に不純物を導入した材料で形成されているため、材料および厚みを変更することが困難である。一方、絶縁層100の材料および膜厚を変更することは容易である。従って、絶縁層100の比誘電率を低くし、および/または、絶縁層100の厚みを厚くすることによって、容量C100を容量C90よりも小さくすれば、絶縁層100の容量C100に応じて合成容量C90_100を小さくすることができる。即ち、絶縁層100の容量C100で合成容量C90_100を制御するために、容量C100は容量C90よりも小さいことが好ましい。
【0062】
次に、本実施形態によるダイオード20の製造方法を説明する。
【0063】
図6~
図8は、第1実施形態によるダイオードの製造方法の一例を示す断面図である。
【0064】
まず、基板10(例えば、GaN)の表面にn型GaNをエピタキシャル成長させることによって導電層80を形成する。
【0065】
次に、導電層80上にRTD素子120の材料を形成する。例えば、RTD素子120の材料(例えば、InN、InGaN、GaN、AlGaN、AlN、AlInN、AlInGaNまたはAlPN)を導電層80上にエピタキシャル成長させる。これにより、
図6に示す構造が得られる。
【0066】
次に、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、RTD素子120の材料を略円形状のメサ構造に加工する。次に、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、RTD素子120の周囲に不純物(例えば、ボロン)をイオン注入する。これにより、
図7に示すように、RTD素子120の周囲を囲むように不純物層90が略円環状に形成される。不純物層90は、RTD素子120の側面F3に隣接し接触している。
【0067】
このように、本実施形態によれば、RTD素子120は、エッチング技術を用いることなく、RTD素子120の材料の一部に不純物をイオン注入することによって形成される。例えば、RTD素子120の周囲にボロンをイオン注入することによって、絶縁性の不純物層90を形成し、RTD素子120を電流狭窄する。これにより、不純物層90が形成されるとともに、RTD素子120の範囲も決定される。エッチング技術を用いて形成されたメサ構造の端部は、RTD素子120には含まれず、不純物層90の端部となる。従って、ドライエッチング法等により生じるプラズマダメージはRTD素子120に含まれない。さらに、メサ構造よりも小さなRTD素子120を形成することができる。その結果、良好な特性を有する微細なRTD素子120を形成することができる。
【0068】
次に、不純物層90上に絶縁層100の材料を堆積する。リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁層100の材料を加工する。これにより、
図8に示すように、絶縁層100が不純物層90上に形成される。その結果、第1絶縁層90、100の全体の厚みが厚くなり、容量C
90_100が低下し、総容量C
allを低下させることができる。絶縁層100は、不純物層90上に形成されるので、容量Crtdを変更することなく、合成容量C
90_100を低下させることができる。
【0069】
次に、リソグラフィ技術および真空成膜技術を用いて、上部電極51および下部電極61の材料を絶縁層100上に形成する。これにより、
図3に示すように、上部電極51および下部電極61がRTD素子120の第2面F2上および絶縁層100上に形成される。上部電極51および下部電極61はこのように同一工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。
【0070】
このようにして、ダイオード20が完成する。
【0071】
本実施形態によれば、不純物層90の上に絶縁層100を設け、第1絶縁層90、100の全体の厚みを厚くしている。これにより、
図3の領域Rbにおいて、上部電極51と下部電極61との間の電気長が長くなる。よって、容量C
90_100が低下し、総容量C
allを低下させることができる。その結果、発振器1の高周波特性を改善させることができる。
【0072】
また、不純物層90は、RTD素子120の材料に不純物をイオン注入して形成されている。従って、RTD素子120と不純物層90との境界には、プラズマダメージが少なく、RTD素子120の特性劣化が抑制される。
【0073】
もし、エッチングで加工されたメサ構造全体がRTD素子120である場合、エッチングでメサ構造の面積を調整することによって、発振器1の周波数調整を行う。しかし、RTD素子120の材料を微細なメサ構造に高精度にエッチングすることは困難であり、プロセスばらつきも大きい。
【0074】
これに対し、本実施形態によれば、不純物層90は、RTD素子120の材料に不純物をイオン注入して形成されている。従って、RTD素子120のレイアウト面積は、イオン注入工程によって決まる。この場合、RTD素子120の高周波特性の劣化は抑制され、安定している。また、RTD素子120の微細化も容易である。
【0075】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第2実施形態では、Z方向から見た平面視において、絶縁層100の内径の幅が第1絶縁層90の内径の幅よりも広い。即ち、第1面F1に対して垂直方向の断面において、RTD素子120側にある上部絶縁層100の内側面F4は、RTD素子120側にある下部絶縁層90の内側面F5よりもRTD素子120から離間する方向にある。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0076】
このような形態であっても、部分的に不純物層90の上に絶縁層100を設け、第1絶縁層90、100の全体の厚みを厚くしている。これにより、総容量Callを低下させることができる。その結果、発振器1の高周波特性を改善させることができる。
【0077】
また、Z方向から見た平面視において、上部絶縁層100の内側面F4と下部絶縁層90の内側面F5とを一致させる必要がないので、上部絶縁層100の形成工程におけるリソグラフィの位置合わせが容易になる。
【0078】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第3実施形態では、Z方向から見た平面視において、絶縁層100の内径の幅が第1絶縁層90の内径の幅よりも狭い。即ち、第1面F1に対して垂直方向の断面において、上部絶縁層100の内側面F4は、下部絶縁層90の内側面F5よりもRTD素子120の中心側にある。第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0079】
第3実施形態によれば、絶縁層100が不純物層90上だけでなく、RTD素子120の一部の上にも設けられている。これにより、総容量Callをさらに低下させることができる。その結果、発振器1の高周波特性をより効果的に改善させることができる。
【0080】
また、Z方向から見た平面視において、上部絶縁層100の内側面F4と下部絶縁層90の内側面F5とを一致させる必要がないので、上部絶縁層100の形成工程におけるリソグラフィの位置合わせが容易になる。
【0081】
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第4実施形態では、絶縁層100が下部電極61側へ延伸しており、下部電極61を被覆している。即ち、絶縁層100は、不純物層90上だけでなく、下部電極61および導電層80の全体の上にも設けられる。第4実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0082】
第4実施形態によれば、絶縁層100が不純物層90上だけでなく、下部電極61および導電層80の全体の上に設けられる。これにより、第1実施形態よりも総容量Callをさらに低下させることができる。その結果、発振器1の高周波特性をより効果的に改善させることができる。
【0083】
(第5実施形態)
図12は、第5実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第5実施形態では、絶縁層100が下部電極61側へ延伸しており、下部電極61を被覆している。即ち、絶縁層100は、不純物層90上だけでなく、下部電極61および導電層80の全体の上にも設けられる。第5実施形態のその他の構成は、第2実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0084】
第5実施形態によれば、絶縁層100が不純物層90上だけでなく、下部電極61および導電層80の全体の上に設けられる。これにより、第2実施形態よりも総容量Callをさらに低下させることができる。その結果、発振器1の高周波特性をより効果的に改善させることができる。
【0085】
(第6実施形態)
図13は、第6実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第6実施形態では、絶縁層100が下部電極61側へ延伸しており、下部電極61を被覆している。即ち、絶縁層100は、不純物層90上だけでなく、下部電極61および導電層80の全体の上にも設けられる。第5実施形態のその他の構成は、第3実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0086】
第6実施形態によれば、絶縁層100が不純物層90上だけでなく、下部電極61および導電層80の全体の上に設けられる。これにより、第3実施形態よりも総容量Callをさらに低下させることができる。その結果、発振器1の高周波特性をより効果的に改善させることができる。
【0087】
(第7実施形態)
図14は、第7実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第7実施形態では、上部電極51が下部電極61とは反対側の方向へ絶縁層100上において延伸している。上部電極51の延伸部分は、
図1のMIM40の上部電極に接続される部分である。
【0088】
上部電極51の延伸部分によって、上部電極51とMIM40および信号電極50との間を電気的に接続することができる。第7実施形態のその他の構成は、第4実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第7実施形態は、第4実施形態と同様の効果も得ることができる。尚、第7実施形態は第1実施形態と組み合わせてもよい。
【0089】
(第8実施形態)
図15は、第8実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第8実施形態では、上部電極51が下部電極61とは反対側の方向へ絶縁層100上において延伸している。上部電極51の延伸部分は、
図1のMIM40の上部電極に接続される部分である。
【0090】
上部電極51の延伸部分によって、上部電極51とMIM40および信号電極50との間を電気的に接続することができる。第8実施形態のその他の構成は、第5実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第8実施形態は、第5実施形態と同様の効果も得ることができる。尚、第8実施形態は第2実施形態と組み合わせてもよい。
【0091】
(第9実施形態)
図16は、第9実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第9実施形態では、上部電極51が下部電極61とは反対側の方向へ絶縁層100上において延伸している。上部電極51の延伸部分は、
図1のMIM40の上部電極に接続される部分である。
【0092】
上部電極51の延伸部分によって、上部電極51とMIM40および信号電極50との間を電気的に接続することができる。第9実施形態のその他の構成は、第6実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第9実施形態は、第6実施形態と同様の効果も得ることができる。尚、第9実施形態は第3実施形態と組み合わせてもよい。
【0093】
(第10実施形態)
図17は、第10実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第10実施形態では、上部電極51が下部電極61側の方向へ絶縁層100上において延伸している。上部電極51の延伸部分は、
図1のMIM40の上部電極に接続される部分である。
【0094】
上部電極51の延伸部分によって、上部電極51とMIM40および信号電極50との間を電気的に接続することができる。第10実施形態のその他の構成は、第4実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第10実施形態は、第4実施形態と同様の効果も得ることができる。
【0095】
(第11実施形態)
図18は、第11実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第11実施形態では、上部電極51が下部電極61側の方向へ絶縁層100上において延伸している。上部電極51の延伸部分は、
図1のMIM40の上部電極に接続される部分である。
【0096】
上部電極51の延伸部分によって、上部電極51とMIM40および信号電極50との間を電気的に接続することができる。第11実施形態のその他の構成は、第5実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第11実施形態は、第5実施形態と同様の効果も得ることができる。
【0097】
(第12実施形態)
図19は、第12実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第12実施形態では、上部電極51が下部電極61側の方向へ絶縁層100上において延伸している。上部電極51の延伸部分は、
図1のMIM40の上部電極に接続される部分である。
【0098】
上部電極51の延伸部分によって、上部電極51とMIM40および信号電極50との間を電気的に接続することができる。第12実施形態のその他の構成は、第6実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第12実施形態は、第6実施形態と同様の効果も得ることができる。
【0099】
(第13実施形態)
図20は、第13実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第13実施形態は、第7実施形態と第10実施形態の組み合わせである。従って、第13実施形態では、上部電極51が下部電極61側の方向と下部電極61とは反対側の方向の両方へ延伸している。上部電極51の延伸部分の一部は、
図1のMIM40の上部電極に接続される部分である。第13実施形態のその他の構成は、第7または第10実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第13実施形態は、第7または第10実施形態と同様の効果も得ることができる。
【0100】
(第14実施形態)
図21は、第14実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第14実施形態は、第8実施形態と第11実施形態の組み合わせである。従って、第14実施形態では、上部電極51が下部電極61側の方向と下部電極61とは反対側の方向の両方へ延伸している。上部電極51の延伸部分の一部は、
図1のMIM40の上部電極に接続される部分である。第14実施形態のその他の構成は、第8または第11実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第14実施形態は、第8または第11実施形態と同様の効果も得ることができる。
【0101】
(第15実施形態)
図22は、第15実施形態によるダイオードの構成例を示す断面図である。第15実施形態は、第9実施形態と第12実施形態の組み合わせである。従って、第15実施形態では、上部電極51が下部電極61側の方向と下部電極61とは反対側の方向の両方へ延伸している。上部電極51の延伸部分の一部は、
図1のMIM40の上部電極に接続される部分である。第15実施形態のその他の構成は、第9または第12実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第15実施形態は、第9または第12実施形態と同様の効果も得ることができる。
【0102】
なお、本技術は、以下のような構成をとることができる。
(1)
導電層と、
前記導電層に電気的に接続する第1面と、前記第1面に対して反対側にある第2面と、前記第1面と前記第2面との間にある側面とを含む共鳴トンネルダイオード素子と、
前記共鳴トンネルダイオード素子の側面に設けられた第1絶縁層であって、前記第1面に対して垂直方向の厚みが前記共鳴トンネルダイオード素子の厚みよりも厚い第1絶縁層と、
前記共鳴トンネルダイオード素子の前記第2面上および前記第1絶縁層上に設けられた第1電極と、
前記導電層に電気的に接続された第2電極とを備える、ダイオード。
(2)
前記第1絶縁層は、
前記第1面に対して垂直方向の厚みが前記共鳴トンネルダイオード素子の厚みとほぼ同じ下部絶縁層と、
前記下部絶縁層上に設けられた上部絶縁層とを含み、
前記第1電極は、前記共鳴トンネルダイオード素子の前記第2面上および前記上部絶縁層上に設けられている、(1)に記載のダイオード。
(3)
前記上部絶縁層の比誘電率は、前記下部絶縁層の比誘電率と同等か、それよりも低い、(2)に記載のダイオード。
(4)
前記第1絶縁層は、前記共鳴トンネルダイオード素子の周囲を囲む、(1)から(3)のいずれか一項に記載のダイオード。
(5)
前記下部絶縁層は、前記共鳴トンネルダイオード素子の材料に不純物を導入した材料で構成されている、(2)または(3)に記載のダイオード。
(6)
前記不純物は、H、He、B、C、N、O、F、Neのいずれかである、(5)に記載のダイオード。
(7)
前記第1電極は、前記共鳴トンネルダイオード素子上において窪みを有する、(1)から(6)のいずれか一項に記載のダイオード。
(8)
前記共鳴トンネルダイオード素子は、InN、InGaN、GaN、AlGaN、AlN、AlInN、AlInGaNおよびAlPNのいずれかの材料を含む、(1)から(7)のいずれか一項に記載のダイオード。
(9)
前記導電層が上に設けられ、GaN、サファイア、SiおよびSiCのいずれかの材料を含む基板をさらに備える、(1)から(8)のいずれか一項に記載のダイオード。
(10)
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記上部絶縁層の内側面は、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記下部絶縁層の内側面とほぼ面一である、(2)から(9)のいずれか一項に記載のダイオード。
(11)
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記上部絶縁層の内側面は、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記下部絶縁層の内側面よりも前記共鳴トンネルダイオード素子から離間する方向にある、(2)から(9)のいずれか一項に記載のダイオード。
(12)
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記上部絶縁層の内側面は、前記共鳴トンネルダイオード素子側にある前記下部絶縁層の内側面よりも前記共鳴トンネルダイオード素子の中心側にある、(2)から(9)のいずれか一項に記載のダイオード。
(13)
前記上部絶縁層は、前記第2電極を被覆する、(2)から(9)のいずれか一項に記載のダイオード。
(14)
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記第1電極は、前記第2電極とは反対側の方向へ前記上部絶縁層上において延伸している、(13)に記載のダイオード。
(15)
前記第1面に対して垂直方向の断面において、前記第1電極は、前記第2電極の方向へ前記上部絶縁層上において延伸している、(13)に記載のダイオード。
(16)
導電層と、
前記導電層に電気的に接続する第1面と、前記第1面に対して反対側にある第2面と、前記第1面と前記第2面との間にある側面とを含む共鳴トンネルダイオード素子と、
前記共鳴トンネルダイオード素子の側面に設けられた第1絶縁層であって、前記第1面に対して垂直方向の厚みが前記共鳴トンネルダイオード素子の厚みよりも厚い第1絶縁層と、
前記共鳴トンネルダイオード素子の前記第2面上および前記第1絶縁層上に設けられた第1電極と、
前記導電層に電気的に接続された第2電極とを備える、高周波デバイス。
【0103】
尚、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 発振器
10 基板
20 ダイオード
30 スロットアンテナ
40 MIM
50 信号電極
51 上部電極
60 基準電極
61 下部電極
70 シャント抵抗
80 導電層
90 不純物層
100 絶縁層
120 共鳴トンネルダイオード素子