(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147415
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】調理器用ガラストッププレート
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20241008BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20241008BHJP
C03C 17/22 20060101ALI20241008BHJP
C03C 17/23 20060101ALI20241008BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H05B6/12 305
G01J5/00 101Z
C03C17/22 Z
C03C17/23
H05B6/12 318
F24C15/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060420
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000244305
【氏名又は名称】鳴海製陶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 隆史
(72)【発明者】
【氏名】鏡味 恭英
【テーマコード(参考)】
2G066
3K151
4G059
【Fターム(参考)】
2G066AB06
2G066AC05
2G066AC07
2G066AC20
2G066CA16
3K151BA62
3K151BA93
4G059AA01
4G059AA08
4G059AB05
4G059AC07
4G059AC08
4G059EA07
4G059EA16
4G059EA18
4G059EB09
(57)【要約】
【課題】赤外線センサの温度検知精度を向上させると共に、装飾性を備えた調理器用ガラストッププレートを提供する。
【解決手段】赤外線センサ3を備えた調理器1の上部に配置する調理器用ガラストッププレート10であって、ガラス基板11と、ガラス基板11の裏面11B側に設けられるとともに、赤外線吸収剤および顔料を含む、赤外線吸収装飾層12と、を備え、ガラストッププレート10が調理器1に配置された状態で、赤外線吸収装飾層12には、ガラス基板11の厚さ方向について赤外線センサ3と重なる位置に、ガラス基板11が露出する赤外線吸収装飾層窓部14Aが形成されており、ガラス基板11の表面11A側から測定した、JIS 8781-4:2013に準拠して測定される明度L
*が50以上であり、ガラス基板11の表面11A側から測定した波長940nmの赤外線の反射率が25%未満である、調理器用ガラストッププレート10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサを備えた調理器の上部に配置する調理器用ガラストッププレートであって、
表面および裏面を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の前記裏面側に設けられるとともに、赤外線を吸収する赤外線吸収剤および顔料を含む、赤外線吸収装飾層と、を備え、
前記ガラストッププレートが前記調理器に配置された状態で、前記赤外線吸収装飾層には、前記ガラス基板の厚さ方向について前記赤外線センサと重なる位置に、前記ガラス基板が露出する赤外線吸収装飾層窓部が形成されており、
前記ガラス基板の前記表面側から測定した、JIS 8781-4:2013に準拠して測定される明度L*が50以上であり、
前記ガラス基板の前記表面側から測定した波長940nmの赤外線の反射率が25%未満である、調理器用ガラストッププレート。
【請求項2】
さらに、赤外線を吸収する赤外線吸収剤を含む赤外線吸収層を備え、
前記赤外線吸収層には、前記ガラス基板の厚さ方向について前記赤外線センサと重なる位置に、前記ガラス基板が露出する赤外線吸収層窓部が形成されている、請求項1に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項3】
赤外線センサを備えた調理器の上部に配置するための調理器用ガラストッププレートであって、
表面および裏面を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の前記裏面側に設けられるとともに、顔料を含む装飾層と、
赤外線を吸収する赤外線吸収剤を含む、少なくとも1つの赤外線吸収層と、を備え、
前記ガラストッププレートが前記調理器に配置された状態で、
前記装飾層には、前記ガラス基板の厚さ方向について前記赤外線センサと重なる位置に、前記ガラス基板が露出する装飾層窓部が形成されており、
前記赤外線吸収層には、前記ガラス基板の厚さ方向について前記赤外線センサと重なる位置に、前記ガラス基板が露出する赤外線吸収層窓部が形成されており、
前記ガラス基板の前記表面側から測定した、JIS 8781-4:2013に準拠して測定される明度L*が50以上であり、
前記ガラス基板の前記表面側から測定した波長940nmの赤外線の反射率が25%未満である、調理器用ガラストッププレート。
【請求項4】
前記赤外線吸収層は、前記ガラス基板の前記表面または前記裏面に設けられている、請求項2または3に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項5】
さらに、前記赤外線吸収装飾層の裏面側に、遮光性を有する遮光層を備え、
前記遮光層には、前記ガラス基板の厚さ方向について前記赤外線センサと重なる位置に、前記ガラス基板が露出する遮光層窓部が形成されている、請求項1に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項6】
さらに、前記装飾層の裏面側に、遮光性を有する遮光層を備え、
前記ガラストッププレートが前記調理器に配置された状態で、前記遮光層には、前記ガラス基板の厚さ方向について前記赤外線センサと重なる位置に、前記ガラス基板が露出する遮光層窓部が形成されている、請求項3に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項7】
前記赤外線吸収剤は、波長780nm~2μmの赤外線を吸収可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項8】
前記赤外線吸収剤は、金属六ホウ化物、またはタングステン酸塩から選ばれる一種または二種以上の化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項9】
前記赤外線吸収剤が、六ホウ化ランタンである、請求項8に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項10】
前記六ホウ化ランタンの含有量は、0.005[g/m2]以上である、請求項9に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項11】
前記赤外線吸収剤が、タングステン酸セシウムである、請求項8に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項12】
前記タングステン酸セシウムの含有量は、0.08[g/m2]である、請求項11に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項13】
前記明度L*が55以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項14】
前記ガラス基板の前記表面側から測定した波長940nmの赤外線の反射率が20%未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項15】
前記調理器が、誘導加熱調理器である、請求項1から3のいずれか一項に記載の調理器用ガラストッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器用ガラストッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理器において、鍋等の調理器具から出力される赤外線強度を赤外線センサで検知することにより、調理器具の温度を検知する技術が知られている(特許文献1参照)。この技術によれば、調理器具の底から放射される赤外線を直接検知することにより、熱応答性に優れた温度検知を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術において、照明器具等のように、調理器具と異なる部材から発せられる赤外線が、赤外線センサに入射する場合がある。例えば、調理器の上面に配置されたガラストッププレートに、照明器具から発せられた赤外線が入射し、この赤外線がガラストッププレート内で多重反射することにより、赤外線センサにまで到達してしまう場合がある。すると、調理器具から発せられる赤外線を正確に測定することができなくなる恐れがある。
【0005】
上記の課題を解決するために、ガラストッププレートの表面に、照明器具からの赤外線を遮光するための遮光層を設けることが考えられる。しかし、ガラストッププレートの表面に遮光層を設けると、ガラストッププレートの色調が暗くなってしまう。すると、例えば白色系の明るい色調の装飾を施すことができなくなる等、ガラストッププレートの装飾性が制約されてしまう。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、赤外線センサの温度検知精度を向上させると共に、装飾性を備えた調理器用ガラストッププレートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
赤外線センサを備えた調理器の上部に配置する調理器用ガラストッププレートであって、
表面および裏面を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の前記裏面側に設けられるとともに、赤外線を吸収する赤外線吸収剤および顔料を含む、赤外線吸収装飾層と、を備え、
前記ガラストッププレートが前記調理器に配置された状態で、前記赤外線吸収装飾層には、前記ガラス基板の厚さ方向について前記赤外線センサと重なる位置に、前記ガラス基板が露出する赤外線吸収装飾層窓部が形成されており、
前記ガラス基板の前記表面側から測定した、JIS 8781-4:2013に準拠して測定される明度L*が50以上であり、
前記ガラス基板の前記表面側から測定した波長940nmの赤外線の反射率が25%未満である、調理器用ガラストッププレートにある。
【0008】
本発明の他の態様は、
赤外線センサを備えた調理器の上部に配置するための調理器用ガラストッププレートであって、
表面および裏面を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の前記裏面側に設けられるとともに、顔料を含む装飾層と、
赤外線を吸収する赤外線吸収剤を含む、少なくとも1つの赤外線吸収層と、を備え、
前記ガラストッププレートが前記調理器に配置された状態で、
前記装飾層には、前記ガラス基板の厚さ方向について前記赤外線センサと重なる位置に、前記ガラス基板が露出する装飾層窓部が形成されており、
前記赤外線吸収層には、前記ガラス基板の厚さ方向について前記赤外線センサと重なる位置に、前記ガラス基板が露出する赤外線吸収層窓部が形成されており、
前記ガラス基板の前記表面側から測定した、JIS 8781-4:2013に準拠して測定される明度L*が50以上であり、
前記ガラス基板の前記表面側から測定した波長940nmの赤外線の反射率が25%未満である、調理器用ガラストッププレートにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様および他の態様によれば、ガラス基板の表面側から測定した、JIS 8781-4:2013に準拠して測定される明度L*が50以上であるので、ガラストッププレートに、白系顔料またはシルバー系顔料等の明るい色調の装飾を施すことができる。これにより、ガラストッププレートの装飾性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の一態様および他の態様によれば、ガラス基板の表面側から測定した波長940nmの赤外線の反射率が25%未満であるので、ガラストッププレートの外部から照射された赤外線を、ガラストッププレートの内部で多重反射する間に減衰させることができる。これにより、赤外線センサの検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の誘導加熱調理器を示す模式的断面図。
【
図2】従来技術の誘導加熱調理器を示す模式的断面図。
【
図3】実施例1および実施例2のガラストッププレートを示す図であって、(a)はガラストッププレートの模式的断面図、(b)は可視光および赤外線がガラストッププレート内で多重反射する状態を示す模式的断面図。
【
図4】外乱強度試験方法を説明するための、実施例1のガラストッププレートの模式的断面図。
【
図5】実施例1~実施例2および比較例1~比較例3のガラストッププレートの、反射分光スペクトルの測定結果を示すグラフ。
【
図6】アルミニウム製の金属板、およびSUS430製の金属板の、反射分光スペクトルの測定結果を示すグラフ。
【
図7】実施例1~実施例2および比較例1~比較例3のガラストッププレートの、SUS430製の金属板を用いた場合における外乱強度試験の結果を示すグラフ。
【
図8】実施例1~実施例2および比較例1~比較例3のガラストッププレートの、アルミニウム製の金属板を用いた場合における外乱強度試験の結果を示すグラフ。
【
図9】実施例3のガラストッププレートを示す図であって、(a)はガラストッププレートの模式的断面図、(b)は可視光および赤外線がガラストッププレート内で多重反射する状態を示す模式的断面図。
【
図10】実施例4のガラストッププレートを示す図であって、(a)はガラストッププレートの模式的断面図、(b)は可視光および赤外線がガラストッププレート内で多重反射する状態を示す模式的断面図。
【
図11】実施例3~実施例4および比較例4のガラストッププレートの、反射分光スペクトルの測定結果を示すグラフ。
【
図12】実施例3~実施例4および比較例4のガラストッププレートの、アルミニウム製の金属板を用いた場合における外乱強度試験の結果を示すグラフ。
【
図13】実施例5のガラストッププレートを示す図であって、(a)はガラストッププレートの模式的断面図、(b)は可視光および赤外線がガラストッププレート内で多重反射する状態を示す模式的断面図。
【
図14】実施例5および比較例4のガラストッププレートの、反射分光スペクトルの測定結果を示すグラフ。
【
図15】実施例5および比較例4のガラストッププレートの、アルミニウム製の金属板を用いた場合における外乱強度試験の結果を示すグラフ。
【
図16】他の実施形態の誘導加熱調理器を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
1.誘導加熱調理器1の概要
本発明の調理器用ガラストッププレート10を誘導加熱調理器1に適用した実施形態について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、誘導加熱調理器1は、加熱コイル2と、ガラストッププレート10と、赤外線センサ3と、を備える。加熱コイル2は、被加熱物を入れて加熱調理する、例えば鍋、フライパン等の調理器具4を加熱する。
【0013】
ガラストッププレート10は、加熱コイル2の上部に配置される。ガラストッププレート10には調理器具4が載置される。赤外線センサ3は、加熱コイル2の径方向の中心位置付近であって、ガラストッププレート10の下方の位置に配置されて、調理器具4から発せられた赤外線IR1を検知する。具体的には、調理器具4から発せられ、ガラストッププレート10を透過した赤外線IR1を検知する。赤外線センサ3は、検知した赤外線に対応する出力信号を、図示しない制御部に出力する。制御部は、赤外線センサ3から取得した出力信号に基づいて、調理器具4の温度を算出する。ただし、調理器としてガスバーナ(図示せず)を備えたガス調理器を採用しても良い。
【0014】
2.ガラストッププレート10の構成
ガラストッププレート10は、表面10Aと、裏面10Bと、を備える。鍋等の調理器具4を配置し、使用者が視認する側の面が表面10Aであり、表面10Aの反対面が裏面10Bである。裏面10Bは、ガラストッププレート10を誘導加熱調理器1上に配置したときに、加熱コイル2や赤外線センサ3と対向する面である。
【0015】
図1に示すように、本形態の調理器用ガラストッププレート10は、ガラス基板11と、赤外線吸収装飾層12と、遮光層13と、を備える。ただし、説明の便宜のため、ガラス基板11、赤外線吸収装飾層12および遮光層13の厚さ寸法は誇張して記載されている。詳細には言及しないが、他の図面においても、ガラストッププレート10を構成する部材の厚さ寸法は誇張して記載されている場合がある。
【0016】
ガラス基板11は表面11Aおよび裏面11Bを備える。ガラス基板11の裏面11Bには赤外線吸収装飾層12が積層されている。赤外線吸収装飾層12のうちガラス基板11と反対側の面には、遮光層13が積層されている。ただし、ガラス基板11は、裏面11Bに積層された赤外線吸収層22と、赤外線吸収層22に積層された装飾層32と、装飾層32に積層された遮光層13と、を備える構成としてもよい(
図9参照)。また、ガラス基板11は、表面11Aに積層された赤外線吸収層22と、裏面11Bに積層された装飾層32と、装飾層32に積層された遮光層13と、を備える構成としても良い(
図13参照)。
【0017】
詳細には図示しないが、ガラス基板11の表面11Aに、ガラス基板11を保護するためのコーティング層が形成される構成としても良い。また、ガラス基板11の表面11Aに赤外線吸収層22が積層された場合に、赤外線吸収層22の表面にコーティング層が形成される構成としても良い。ただし、コーティング層は、ガラス基板11の厚み方向について、後述する裏側窓部14および表側窓部15に重なる位置には形成されていない構成としても良い。
【0018】
ガラス基板11は、透明の低膨張ガラスセラミックスからなることが好ましい。透明の低膨張ガラスセラミックスは、透光性で膨張率が低いものがよい。例えば、主結晶相にβ-石英固溶体を析出したものがある。β-石英固溶体を析出した低膨張ガラスセラミックスの体積結晶化度は、約70%であり、結晶の大きさは0.1μm以下である。β-石英固溶体は負の膨張特性を示し、残存ガラス相の正の膨張特性と打ち消し合って熱膨張率がほぼゼロになる。屈折率(nD)は1.541であり、β-石英固溶体の析出結晶の大きさは0.1μm以下で可視光の波長より小さく、結晶相と残存ガラス相の屈折率もほぼ同程度であるため、光の散乱がなく、外観的には透明であり、可視光域から赤外域の光をよく透過する。
【0019】
ガラス基板11の厚さ寸法は、0.5mm~8mmが好ましく、3mm~5mmがより好ましい。
【0020】
赤外線吸収装飾層12は、顔料と、シリコーンレジンと、増粘用樹脂と、有機溶剤と、赤外線吸収剤と、を混練した後、対象物に塗工した後に焼成することにより形成される。赤外線吸収装飾層12は、顔料を含むので、着色されるとともに、不透明性を有する。赤外線吸収装飾層12の厚さ寸法は、0.1μm~20μmが好ましく、5μm~15μmがより好ましい。
【0021】
装飾層32は、顔料と、シリコーンレジンと、増粘用樹脂と、有機溶剤と、を混練した後、対象物に塗工した後に焼成することにより形成される。装飾層32は、顔料を含むので、着色されるとともに、不透明性を有する。装飾層32の厚さ寸法は、0.1μm~20μmが好ましく、5μm~15μmがより好ましい。
【0022】
赤外線吸収装飾層12または装飾層32に含まれる顔料は特に限定されず、白系顔料、シルバー系、またはゴールド系顔料を好適に用いることができる。この場合には、調理器用ガラストッププレート10は、白系、シルバー系、またはゴールド系の高級感のある意匠性を示すことができる。ただし、顔料は、黒系顔料、灰色系顔料等の暗い色調のものを含む構成としても良い。
【0023】
また、顔料は、パール調顔料を好適に用いることができる。この場合には、調理器用ガラストッププレート10は、光沢感のあるパール調の色調を示し、より優れた意匠性を発揮することができる。パール調顔料としては、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び酸化鉄から選ばれる少なくとも1種により無機顔料を被覆してなるものを用いることができる。即ち、パール調顔料は、例えば無機顔料と、該無機顔料を被覆するパール調皮膜とからなるものを用いることができる。被覆対象の無機顔料としては、例えばカオリン、タルク、セリサイト、ピロフェライト、天然雲母、合成雲母、酸化アルミニウム等がある。パール調顔料としては、市販品を利用することもできる。
【0024】
シリコーンレジンは、シロキサン結合を主骨格とする有機珪素化合物の重合体をいう。シリコーンレジンとしては、例えばストレートシリコーンワニスKR282(信越化学工業(株)製)、ストレートシリコーンワニスKR271(同社製)、ストレートシリコーンワニスKR311(同社製)、変性シリコーンワニスKR211(同社製)、シリコーンアルキッドワニス(同社製)、シリコーンエポキシワニスES100N(同社製)等の市販品を利用することができる。
【0025】
増粘用樹脂は、シリカ形成材料よりも燃焼し易く、シリカ形成材料と相溶性がある樹脂を好適に用いることができる。増粘用樹脂により、赤外線吸収装飾層12を形成するための絵具塗料の粘度を調整することが可能になり、焼付け時に絵具塗料をガラス基板11に塗布し易くなる。
【0026】
絵具塗料は、さらに有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、シリカ形成材料が溶解しうる溶剤を用いることができる。有機バインダ及び有機溶剤の添加量は絵具塗料の粘度などを考慮して適宜調整することができる。なお、有機バインダ、有機溶剤等、絵具塗料に含まれる有機成分は、絵具塗料の焼付け時に消失させることができる。
【0027】
絵具塗料は、赤外線吸収剤を含有することができる。赤外線吸収剤としては、六ホウ化カルシウム、六ホウ化ストロンチウム、六ホウ化バリウム、六ホウ化ランタン等の、金属六ホウ化物の一種または二種以上を用いることが可能であり、六ホウ化ランタンが好ましい。
【0028】
また、赤外線吸収剤としては、タングステン酸カルシウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸マグネシウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸セシウム等、タングステン酸塩の一種または二種以上を用いることが可能であり、タングステン酸セシウムが好ましい。
【0029】
また、赤外線吸収剤としては、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジチオレート系金属錯体、スクアリウム化合物、キノン系化合物、ジインモニウム化合物の一種または二種以上を用いることが可能である。
【0030】
赤外線吸収装飾層12または装飾層32が形成されたガラストッププレート10を表側から計測したときの明度L*は、50以上が好ましく、55以上がより好ましい。明度L*は、日本産業規格(旧日本工業規格;以下、JISと記載する)Z8781-4:2013に準拠して測定された明度L*である。
【0031】
遮光層13は、光を透過させない黒色系の膜により構成することができる。遮光層13は、黒色系の耐熱性の膜であれば様々なものを用いることができ、2層以上の積層体であってもよい。遮光層13の厚さ寸法は、1μm~20μmが好ましく、5μm~15μmがより好ましい。
【0032】
遮光層13としては、例えば黒色系の金属光沢膜を形成することができる。金属光沢膜は、貴金属及び/又は金属酸化物によって構成することができる。貴金属、及び金属酸化物の金属成分としては、例えばAu、Pt、Pd、Rh、Ru、Bi、Sn、Ni、Fe、Cr、Ti、Ca、Si、Ba、Sr、Mg、Ag、Zr、In、Mn等がある。金属光沢膜は、これらの貴金属、金属、金属酸化物のいずれか又はこれらの組み合わせから構成することができる。金属光沢膜を形成する場合には、コストの増大を防止するために、その厚みは2μm以下であることが好ましい。また、遮光性を得ることができれば、金属光沢膜の厚みは可能な限り小さくすることが好ましい。
【0033】
金属光沢膜は、上述のAu、Pt、Pd、Rh、Ru、Bi、Sn、Ni、Fe、Cr、Ti、Ca、Si、Ba、Sr、Mg、Ag、Zr、In、Mn等の金属の有機金属化合物の希釈溶液を焼き付けることにより形成することができる。これらの有機金属化合物の希釈溶液は、単体で用いても良いし、任意の割合で複数混合することもできる。有機金属化合物の希釈溶液の焼き付け温度は、例えば600~900℃にすることができる。
【0034】
また、低コストで作製できると共に、耐熱性及び遮光性に優れるという観点から、遮光層13は、黒色系無機顔料が分散されたシリカ膜又は耐熱樹脂膜からなることが好ましい。黒色系無機顔料が分散されたシリカ膜を形成する場合には、上記シリカ形成材料と、黒色系無機顔料とを含有する遮光層13用の塗料を焼き付けることができる。シリカ形成材料としては、上述の装飾層32と同様に、シリコーンレジン及び/又はシリカゾルを用いることができる。また、黒色系無機顔料としては、例えば、Cr-Fe系酸化物、Cu-Cr-Mn系酸化物、Co-Mn-Cr-Fe系酸化物、Co-Ni-Cr-Fe系酸化物、Co-Ni-Cr-Fe-Mn系酸化物等を用いることができる。黒色系無機顔料としては、具体的には市販品を用いることができ、その配合割合は遮光層13の遮光性等に応じて適宜調整することができる。また、これらの黒色系無機顔料は、一般に球形又は球形に近い形状の粒子からなるため、黒色系無機顔料を含む遮光層13は装飾層32に対する密着性が低くなるおそれがある。そこで、遮光層13には、黒色系顔料と共に、マイカ等の鱗片状の粒子からなる添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、マイカ等の鉱物の他、例えば上述のパール調顔料を用いることもできる。遮光層13用の塗料には、その他に、有機溶剤や有機バインダ等を添加することができる。
【0035】
また、遮光層13として、黒色系無機顔料が分散された耐熱樹脂膜を形成する場合には、焼き付け時の加熱により硬化して耐熱樹脂を生成する耐熱樹脂原料と、黒色系無機顔料とを少なくとも含有する遮光塗料を焼き付けることができる。耐熱樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、又はこれらの複合体を用いることができる。黒色系無機顔料は、上述のものを用いることができ、その配合割合は、遮光層13の遮光性等に応じて適宜調整することができる。
【0036】
図1に示すように、ガラストッププレート10が誘導加熱調理器1の上部に配置された状態で、ガラストッププレート10の裏面10Bには、ガラス基板11の厚み方向について赤外線センサ3と重なる位置に、赤外線吸収装飾層12および遮光層13が塗布されることなく、ガラス基板11の裏面11Bが露出する裏側窓部14が形成されている。赤外線センサ3は裏側窓部14を介してガラス基板11の裏面11Bと対向している。調理器具4から発せられた赤外線IR1は、ガラス基板11を透過して赤外線センサ3に検知される構成となっている。裏側窓部14の内形状は、三角形状、四角形状等の多角形状でもよいし、円形状、長円形状でもよく、任意の形状を適宜に選択できる。本形態では、裏側窓部14の内形状は円形状に形成されている。裏側窓部14の内径寸法は、1mm~30mmが好ましく、5mm~20mmがより好ましい。本形態においては、裏側窓部14の内径寸法は10mmに形成されている。
【0037】
図1に示すように、ガラストッププレート10の裏面10Bに、赤外線吸収装飾層12および遮光層13が形成されている場合、裏側窓部14は、赤外線吸収装飾層12に形成された赤外線吸収装飾層窓部14Aと、遮光層13に形成された遮光層窓部14Bと、によって構成される。この場合、裏側窓部14は、ガラス基板11の裏面11Bに、裏側窓部14に相当する部分を除いて、赤外線吸収装飾層12および遮光層13を形成することにより形成される。
【0038】
赤外線吸収装飾層窓部14Aおよび遮光層窓部14Bは、ガラストッププレート10が誘導加熱調理器1に配置された状態で、赤外線吸収装飾層12のうち、ガラス基板11の厚み方向について赤外線センサ3と重なる位置に形成されている。
【0039】
また、
図9(a)および
図9(b)に示すように、ガラストッププレート10の裏面10Bに、赤外線吸収層22、装飾層32および遮光層13が形成されている場合、裏側窓部14は、赤外線吸収層22に形成された赤外線吸収層窓部14Cと、装飾層32に形成された装飾層窓部14Dと、遮光層13に形成された遮光層窓部14Bと、によって構成される。この場合、裏側窓部14は、ガラス基板11の裏面11Bに、裏側窓部14に相当する部分を除いて、赤外線吸収層22、装飾層32および遮光層13を形成することにより形成される。
【0040】
赤外線吸収層窓部14C、装飾層窓部14Dおよび遮光層窓部14Bは、ガラストッププレート10が誘導加熱調理器1に配置された状態で、赤外線吸収装飾層12のうち、ガラス基板11の厚み方向について赤外線センサ3と重なる位置に形成されている。
【0041】
ガラス基板11の裏面11Bに形成された赤外線吸収層22の厚さ寸法は、0.1μm~20μmが好ましく、5μm~15μmがより好ましい。
【0042】
なお、
図13(a)および
図13(b)に示すように、ガラストッププレート10の表面10Aに、赤外線吸収層22が形成されている場合には、ガラストッププレート10の表面10Aに形成された赤外線吸収層22に、ガラス基板11の表面11Aが露出する表側窓部15が形成されている。表側窓部15は、赤外線吸収層22に形成された赤外線吸収層窓部15Aにより構成される。この場合、表側窓部15(赤外線吸収層窓部15A)は、ガラス基板11の表面11Aに、表側窓部15に相当する部分を除いて赤外線吸収層22を形成することにより形成される。表側窓部15と、裏側窓部14とは、ガラス基板11の厚み方向に重なる位置に形成されている。表側窓部15の内径寸法と裏側窓部14の内径寸法とは、略同じに形成されている。略同じとは、同じである場合を含むとともに、同じでない場合であっても実質的に同じと認定しうる場合を含む。
【0043】
ガラス基板11の表面11Aに形成された赤外線吸収層22の厚さ寸法は、0.1μm~20μmが好ましく、5μm~15μmがより好ましい。
【0044】
本形態のガラストッププレート10は、ガラス基板11の表面11A側から測定した波長940nmの赤外線の反射率が25%未満であることが好ましく、20%未満であることがより好ましい。波長940nmの赤外線は、特開2007-115420に記載の発明において利用される波長の範囲に入っており、特開2022-32748に記載の反射型フォトインタラプタで使用される波長に近いことから、ガラストッププレート10の赤外線の反射率を測定に好適に用いることができる。
【0045】
3.従来技術の課題
図2を参照して、従来技術の課題について説明する。
図2に示すように、従来技術に係る誘導加熱調理器51は、加熱コイル2と、ガラストッププレート50と、赤外線センサ3と、を備える。従来技術の調理器用ガラストッププレート50は、ガラス基板11と、ガラス基板11の裏面11B側に積層された装飾層32と、装飾層32に積層された遮光層13と、を備える。従来技術のガラストッププレート50は、赤外線吸収装飾層12を有しない点で、本形態と異なる。本形態と同一の構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0046】
図2に示すように、誘導加熱調理器51の外部の照明器具5から放射された赤外線IR2は、ガラストッププレート10の表面10Aに入射する。ガラストッププレート10に入射した赤外線IR2は、ガラス基板11の裏面11Bにおいて、装飾層32によって反射される。反射された赤外線IR2は、ガラス基板11の表面11Aにおいてさらに反射する。このように、ガラストッププレート10に入射した赤外線IR2がガラス基板11の表面11Aと裏面11Bとの間で多重反射して、裏側窓部14に到達する。裏側窓部14に到達した赤外線IR2は、赤外線センサ3によって検知される。すると、赤外線センサ3には、加熱された調理器具4から発せられ、ガラス基板11を透過した赤外線IR1と、外部の照明器具5から発せられた後にガラス基板11内を多重反射した赤外線IR2と、が検知される。この結果、調理器具4の温度を正確に測定することができない恐れがある。
【0047】
4.本形態の作用効果
図1に示すように、本形態のガラストッププレート10は、ガラス基板11の裏面11Bに、赤外線吸収装飾層12を備える。ガラストッププレート10の表面10Aから入射した赤外線IR2は、ガラストッププレート10の内部で多重反射する。このとき、ガラス基板11の裏面11Bにおいて、赤外線吸収装飾層12によって一部が吸収され、他の部分が反射される。これにより、ガラストッププレート10に入射した赤外線IR2の強度は小さくなる。ガラストッププレート10の内部で赤外線IR2が多重反射を繰返す過程で、赤外線IR2が赤外線吸収装飾層12に到達すると、赤外線吸収装飾層12によって一部が吸収される。このようにガラス基板11の内部で赤外線IR2が多重反射を繰り返すたびに、赤外線IR2が赤外線吸収装飾層12に吸収されることにより、赤外線IR2の強度が小さくなる。これにより、外部からガラストッププレート10の表面10Aに入射した赤外線IR2が、赤外線センサ3に到達することが抑制される。これにより、外部の照明器具5からの影響を減少させることができるので、調理器具4から発せられた赤外線IR1を検知しやすくなり、調理器具4の温度測定の精度を向上させることができる。
【0048】
なお、ガラス基板11が、裏面側に積層された赤外線吸収層22と、赤外線吸収層22に積層された装飾層32と、装飾層32に積層された遮光層13と、を備える構成、および、ガラス基板11が、表面側に積層された赤外線吸収層22と、裏面側に積層された装飾層32と、装飾層32に積層された遮光層13と、を備える構成については、後に詳述する。
【0049】
5.実施例および比較例
5-1.ガラス基板11の裏面11Bに赤外線吸収装飾層12を有する構成
(実施例1)
図3(a)を参照して、実施例1のガラストッププレート10について説明する。実施例1のガラストッププレート10は、ガラス基板11と、ガラス基板11の裏面11Bに形成された赤外線吸収装飾層12と、赤外線吸収装飾層12のうちガラス基板11と反対側の面に形成された遮光層13と、を備える。なお、
図3(a)においては、加熱コイル2、調理器具4および照明器具5は、説明の便宜のために省略した。以降の図においても、加熱コイル2、調理器具4および照明器具5を省略して記載する場合がある。
【0050】
パール調顔料40質量部と、シリコーンレジン30質量部と、増粘用樹脂10質量部と、有機溶剤10質量部と、六ホウ化ランタン10質量部と、を混練して、ペースト状の絵具塗料1を調製した。ただし、シリコーンレジンは有機溶剤を50質量%含む。また、六ホウ化ランタンは、住友金属鉱山社製の六ホウ化ランタン分散液(六ホウ化ランタンとして約4質量%含有)である。絵具塗料1の配合組成を表1に記載した。
【0051】
300メッシュのスクリーンを使用したスクリーン印刷により、透光性低膨張ガラスセラミックス(N-0)からなる厚み4mmのガラス基板11の裏面11Bのうち、裏側窓部14を除いた全面にペースト状の絵具塗料1を塗布した。その後、温度300℃で加熱して硬化させることにより、赤外線吸収装飾層12を形成した。赤外線吸収装飾層12の厚みを膜厚計で測定したところ、7μmであった。赤外線吸収装飾層12における、単位面積当たりの六ホウ化ランタンの含有量は、0.08g/m2であった。
【0052】
次に、市販の黒色無機顔料40質量部と、シリコーンレジン原料50質量部と、有機溶剤10質量部と、を混練して、ペースト状の遮光塗料を調製した。スクリーン印刷により、ガラス基板11の裏面11Bに形成した赤外線吸収装飾層12のうち、裏側窓部14を除いた全面に、遮光塗料を塗布した。その後、温度300℃で加熱して硬化させることにより、赤外線吸収装飾層12に積層して、遮光層13を形成した。遮光層13の厚みを膜厚計で測定したところ、10μmであった。実施例1の裏側窓部14の内径寸法は、10mmであった。このようにして実施例1のガラストッププレート10を作成した。
【0053】
(実施例2)
実施例1の六ホウ化ランタン分散液10質量部の代わりに、タングステン酸セシウム分散液(タングステン酸セシウムとして約25質量%含有)10質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして絵具塗料2を調製した。また、絵具塗料2を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のガラストッププレート10を作成した。絵具塗料2の配合組成を表1に記載した。実施例2の赤外線吸収装飾層12における、単位面積当たりのタングステン酸セシウムの含有量は、0.7g/m2であった。
【0054】
【0055】
(比較例1)
比較例1として、Panasonic社製、KZ-YP76Sのガラストッププレート10を用いた。比較例1のガラストッププレート10は、ガラス基板11と、ガラス基板11の裏面11Bに積層された装飾層32と、装飾層32のうちガラス基板11と反対側の面に積層された遮光層13と、を備える。ガラス基板11の裏面11Bには、裏側窓部14が形成されている。装飾層32を形成する顔料の組成、および遮光層13を形成する顔料の組成については、不明である。
【0056】
(比較例2)
比較例2として、Panasonic社製、KZ-K32ESTのガラストッププレート10を用いた。比較例2のガラストッププレート10は、ガラス基板11と、ガラス基板11の裏面11Bに積層された装飾層32と、装飾層32のうちガラス基板11と反対側の面に積層された遮光層13と、を備える。ガラス基板11の裏面11Bには、裏側窓部14が形成されている。装飾層32を形成する顔料の組成、および遮光層13を形成する顔料の組成については、不明である。
【0057】
(比較例3)
比較例3として、Panasonic社製、KZ-YP77Kのガラストッププレート10を用いた。比較例3のガラストッププレート10は、ガラス基板11と、ガラス基板11の裏面11Bに積層された装飾層32と、装飾層32のうちガラス基板11と反対側の面に積層された遮光層13と、を備える。ガラス基板11の裏面11Bには、裏側窓部14が形成されている。装飾層32を形成する顔料の組成、および遮光層13を形成する顔料の組成については、不明である。
【0058】
(明度測定)
実施例1~2、および比較例1~3のガラストッププレート10について、積分球分光測色計(X-rite社製SP-60)を用いて、L*値を測定した。積分球はJIS Z8722の幾何条件cに該当する。測定条件は、イルミナントD65(JIS Z8781-2)、10°視野(JIS Z87891-1のCIE1964標準観察者)、正反射含む(JIS8722記載の鏡面反射成分含む)。測定結果を表2にまとめた。
【0059】
(赤外線の反射分光スペクトル測定)
実施例1~2、および比較例1~3のガラストッププレート10について、日本分光株式会社製の分光計で、波長340nm~2500nmの赤外線IR反射スペクトルを測定した。測定条件としては、積分球ユニットを使用した。測定結果を
図5に示すとともに、表2にまとめた。
【0060】
(外乱強度試験)
外部の照明器具5からガラストッププレート10に入射した赤外線IR2が多重反射したときに、赤外線センサ3に検知される赤外線IR2の強度を、下記のように測定した。すなわち、外部の照明器具5からの赤外線IR2を外乱とした場合において、外乱強度を測定した。
【0061】
ガラストッププレート10の裏側窓部14の下方であって、ガラストッププレート10の厚み方向に重なる位置に、赤外線センサ3を配置する。赤外線センサ3として、InGaAsフォトダイオードセンサモジュールを用いた。赤外線センサ3は、裏側窓部14内に進入した赤外線IR2の光量を電圧値に変換する。
【0062】
図4に示すように、ガラストッププレート10の上面に、長方形状の金属板6を載置する。金属板6としては、アルミニウム製の金属板6、およびSUS430製の金属板6のいずれか一方を用いた。アルミニウム製の金属板6はアルミニウム製の鍋等の調理器具4のモデルであり、SUS430製の金属板6は、ステンレス製の鍋等の調理器具4のモデルである。金属板6は、ガラストッププレート10の厚み方向について、ガラストッププレート10の裏側窓部14に重なる位置に配置する。金属板6の端縁に、波長940nmの赤外線を発する光源を配置する。光源は、秋月電子通商製投光器キット(改)であり、消費電力は2Wである。この光源が、外乱に相当する照明器具5のモデルである。
【0063】
光源に対して金属板6を相対的に移動させることにより、赤外線センサ3の軸線Pから金属板6の端縁までの距離Xを変えて、距離X毎に、赤外線センサ3によって検知された電圧を測定した。検出電圧の結果を、
図7および
図8に示す。また、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが5cmであるときの検出電圧を、表2にまとめた。
【0064】
図6に、実験に使用したアルミニウム製の金属板6と、SUS430製の金属板6の、反射分光スペクトルを示す。測定条件は、ガラストッププレート10と同じなので、詳細な説明を省略する。
【0065】
【0066】
(測定結果)
表2に示すように、実施例1のガラストッププレート10の明度L*は60.4であり、実施例2のガラストッププレート10の明度L*は60.3であった。このように、実施例1および実施例2のガラストッププレート10は、白色系等の明るい色調の装飾が可能となっており、装飾の自由度が高い。
【0067】
比較例1のガラストッププレート10の明度L*は69.3であり、比較例2のガラストッププレート10の明度L*は62.6であった。比較例1および比較例2のガラストッププレート10も、白色系の明るい色調の装飾が可能となっている。一方、比較例3のガラストッププレート10の明度L*は28.3であった。このため、比較例3のガラストッププレート10については、白色系の明るい色調の装飾は不可能であり、暗い色調の装飾に限定されるため、装飾性が制約される。
【0068】
図5に、実施例1~2、および比較例1~3のガラストッププレート10の、反射分光スペクトルを示す。表2に示すように、波長940nmの赤外線IR2の反射率は、実施例1が18.2%であり、実施例2が18.8%であった。これに対して、比較例1の反射率は31.1%であり、比較例2の反射率は27.2%と、高い反射率を示した。これは、比較例1および比較例2の明度L
*が高いことと、比較例1および比較例2は赤外線吸収剤を含有していないことに基づくと考えられる。また、比較例3の反射率は7.9%と低い値を示した。これは、比較例3のガラストッププレート10は明度L
*が28.3と低いため、赤外線IR2が吸収されたためと考えられる。
【0069】
図7に、外乱強度試験における、赤外線センサ3の軸線PからSUS430製の金属板6の端縁までの距離Xに対する、赤外線センサ3の出力電圧のグラフを示す。縦軸に示す赤外線センサ3の出力電圧が小さいほど、外部の照明器具5の影響が小さいことを意味するので、好ましい。
【0070】
実施例1および実施例2の出力電圧は、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが3cm~7cmにおいて、比較例1および比較例2よりも小さい。つまり、実施例1および実施例2のガラストッププレート10は、比較例1および比較例2に比べて、外部の照明器具5の影響を受けにくくなっている。これにより、赤外線センサ3の精度を向上させることができる。
【0071】
実施例1および実施例2の出力電圧は、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが3cm~4cmにおいて、比較例3よりも小さい。つまり、実施例1および実施例2は、比較例3に比べて赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが3cm~4cmにおいては、外部の照明器具5の影響を受けにくくなっている。
【0072】
なお、実施例1および実施例2の出力電圧は、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが5cm~7cmにおいて、比較例3と同じになっている。つまり、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが5cm~7cmにおいて、外部の照明器具5の影響については、実施例1および実施例2は、比較例3と、同程度である。しかし、上記したように、実施例1の明度L*が60.4であり、実施例2の明度L*がで60.3であるのに対して、比較例3の明度L*が28.3であることから、比較例3の装飾の自由度は、実施例1および実施例2に比べて低い。
【0073】
図8に、外乱強度試験における、赤外線センサ3の軸線Pからアルミニウム製の金属板6の端縁までの距離Xに対する、赤外線センサ3の出力電圧のグラフを示す。なお、
図6に示すように、波長940nmの赤外線IRの反射率は、アルミニウム製の金属板6の方が、SUS430製の金属板6よりも高い。
【0074】
図8に戻って、実施例1および実施例2の出力電圧は、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが3cm~7cmにおいて、比較例1および比較例2よりも小さい。つまり、実施例1および実施例2は、比較例1および比較例2に比べて、外部の照明器具5の影響を受けにくくなっている。これにより、赤外線センサ3の精度を向上させることができる。
【0075】
実施例1および実施例2の出力電圧は、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが3cm~6cmにおいて、比較例3よりも小さい。つまり、実施例1および実施例2は、比較例3に比べて赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが3cm~6cmにおいては、外部の照明器具5の影響を受けにくくなっている。
【0076】
なお、実施例1の出力電圧は、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが7cmにおいて、比較例3と同じになっている。つまり、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが7cmにおいて、外部の照明器具5の影響については、実施例1は、比較例3と、同程度である。しかし、上記したように、実施例1の明度L*が60.4であるのに対して、比較例3の明度L*が28.3であることから、比較例3の装飾の自由度は、実施例1に劣る。
【0077】
また、実施例2の出力電圧は、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが7cmにおいても、比較例3よりも小さい。つまり、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが7cmにおいても、外部の照明器具5の影響については、実施例2は、比較例3よりも小さい。
【0078】
図3(b)を参照して、実施例1および実施例2の作用効果について考察する。ガラストッププレート10に可視光Vが照射され、ガラス基板11を透過して赤外線吸収装飾層12に可視光Vが到達すると、可視光Vの一部は赤外線吸収装飾層12に反射され、他の大部分は赤外線吸収装飾層12に進入する。可視光Vは、赤外線吸収装飾層12に含まれる顔料により反射されて、ガラス基板11に進入し、ガラス基板11を透過する。これにより、実施例1および実施例2のガラストッププレート10においては、明度L
*が比較的に大きくなっており、ガラストッププレート10の装飾性に資する。
【0079】
一方、ガラストッププレート10に赤外線IR2が照射され、ガラス基板11を透過して赤外線吸収装飾層12に赤外線IR2が到達すると、赤外線IR2の一部は赤外線吸収装飾層12に反射され、他の大部分は赤外線吸収装飾層12に進入する。赤外線IR2は、赤外線吸収装飾層12に含まれる赤外線吸収剤により吸収されて、減衰する。赤外線吸収装飾層12に進入した赤外線IR2の一部は顔料に反射される。顔料に反射された赤外線IR2は、赤外線吸収装飾層12内を進む際に、さらに赤外線吸収剤に吸収されて減衰する。ガラス基板11に到達した赤外線IR2は微弱になっている。さらに赤外線IR2がガラストッププレート10内を多重反射すると、赤外線IR2が赤外線吸収装飾層12に到達する際に減衰する。これにより、赤外線センサ3に到達する赤外線IR2の強度を十分に小さくすることができる。このようにして、実施例1および実施例2のガラストッププレート10においては、ガラストッププレート10に照射された赤外線IR2を減衰させることができる。
【0080】
5-2.ガラス基板11の裏面11Bに赤外線吸収層22を有する構成
(実施例3)
図9(a)を参照して、実施例3のガラストッププレート10について説明する。本実施例のガラストッププレート10は、ガラス基板11と、ガラス基板11の裏面11Bに形成された赤外線吸収層22と、赤外線吸収層22に積層された装飾層32と、装飾層32に積層された遮光層13と、を備える。
【0081】
展色剤(帝国インキ製造社製、GLS-001)100質量部と、有機溶剤(帝国インキ製造社製、Z-705)5質量部と、硬化剤(帝国インキ製造社製、GLS用補強剤)0.5質量部と、タングステン酸セシウム(住友金属鉱山社製のタングステン酸セシウム分散液(タングステン酸セシウムとして約25質量%)10質量部と、を混練して、透光性を有し、且つ、ペースト状の透光塗料を調製した。透光塗料の配合組成を表3に記載した。
【0082】
400メッシュのスクリーンを使用したスクリーン印刷により、透光性低膨張ガラスセラミックス(N-0)からなる厚み4mmのガラス基板11の裏面11Bに、裏側窓部14を除く全面にペースト状の透光塗料を塗布した。その後、温度160℃で加熱して硬化させることにより、赤外線吸収層22を形成した。赤外線吸収層22の厚みを膜厚計で測定したところ、4μmであった。赤外線吸収層22における、単位面積当たりのタングステン酸セシウムの含有量は0.5g/m2であった。
【0083】
次に、白色顔料を含むガラス用白色インキ98.3質量部(帝国インキ製造社製、GLS-619)と、黒色顔料を含むガラス用黒色インキ(帝国インキ製造社製、GLS-919)1.7質量部と、有機溶剤(帝国インキ製造社製、Z-705)5質量部と、硬化剤(帝国インキ製造社製、GLS用補強剤)0.5質量部と、を混練して、ペースト状の絵具塗料3を調製した。絵具塗料3の配合組成を表3に記載した。
【0084】
300メッシュのスクリーンを使用したスクリーン印刷により、ガラス基板11の裏面11Bに形成した赤外線吸収層22のうち、裏側窓部14を除いた全面にペースト状の絵具塗料3を塗布した。その後、温度160℃で加熱して硬化させることにより、装飾層32を形成した。装飾層32の厚みを膜厚計で測定したところ、7μmであった。
【0085】
次に、黒色顔料を含むガラス用黒色インキ(帝国インキ製造社製、GLS-919)100質量部と、有機溶剤(帝国インキ製造社製、Z-705)5質量部と、硬化剤(帝国インキ製造社製、GLS用補強剤)0.5質量部と、を混練して、ペースト状の遮光塗料2を調製した。300メッシュのスクリーンを使用したスクリーン印刷により、ガラス基板11の裏面11Bに形成した装飾層32のうち、裏側窓部14を除いた全面に、遮光塗料2を塗布した。その後、温度160℃で加熱して硬化させることにより、装飾層32に積層して、遮光層13を形成した。赤外線吸収層22、装飾層32および遮光層13の厚みを膜厚計で測定したところ、18μmであった。実施例3の裏側窓部14の内径寸法は、10mmであった。このようにして実施例3のガラストッププレート10を作成した。
【0086】
(実施例4)
図10(a)を参照して、実施例4のガラストッププレート10について説明する。本実施例のガラストッププレート10は、ガラス基板11と、ガラス基板11の裏面11Bに形成された赤外線吸収層22と、赤外線吸収層22に積層された赤外線吸収装飾層12と、赤外線吸収装飾層12に積層された遮光層13と、を備える。
【0087】
実施例4のガラストッププレート10については、まず、実施例3と同様にして、ガラス基板11の裏面11Bに赤外線吸収層22を形成した。
【0088】
白色顔料を含むガラス用白色インキ98.3質量部(帝国インキ製造社製、GLS-619)と、黒色顔料を含むガラス用黒色インキ(帝国インキ製造社製、GLS-919)1.7質量部と、有機溶剤(帝国インキ製造社製、Z-705)5質量部と、硬化剤(帝国インキ製造社製、GLS用補強剤)0.5質量部と、タングステン酸セシウム(住友金属鉱山社製のタングステン酸セシウム分散液(タングステン酸セシウムとして約25質量%)10質量部と、混練して、ペースト状の絵具塗料4を調製した。絵具塗料4の配合組成を表3に記載した。
【0089】
300メッシュのスクリーンを使用したスクリーン印刷により、ガラス基板11の裏面11Bに形成した赤外線吸収層22のうち、裏側窓部14を除いた全面にペースト状の絵具塗料4を塗布した。その後、温度160℃で加熱して硬化させることにより、赤外線吸収装飾層12を形成した。赤外線吸収装飾層12の厚みを膜厚計で測定したところ、7μmであった。
【0090】
その後、実施形態3と同様にして遮光層13を形成することにより、実施例4のガラストッププレート10を作成した。
【0091】
【0092】
(比較例4)
比較例4として、Panasonic社製、KZ-L32ASTのガラストッププレート10を用いた。比較例4のガラストッププレート10は、ガラス基板11と、ガラス基板11の裏面11Bに積層された装飾層32と、装飾層32のうちガラス基板11と反対側の面に積層された遮光層13と、を備える。ガラス基板11の裏面11Bには、裏側窓部14が形成されている。装飾層32を形成する顔料の組成、および遮光層13を形成する顔料の組成については、不明である。
【0093】
(各種測定)
実施例3、実施例4および比較例4について、実施例1~2および比較例1~3と同様にして、明度測定、赤外線の反射分光スペクトル測定および外乱強度試験を行った。ただし、外乱強度試験においては、アルミニウム製の金属板6のみを使用し、SUS430製の金属板6を用いた試験は実施しなかった。結果を、表4、および
図11~
図12にまとめた。なお、表4には、赤外線センサ3の軸線Pから金属板6の端縁までの距離Xが5cmのときの、赤外線センサ3の検出電圧を記載した。
【0094】
【0095】
(測定結果)
表4に示すように、実施例3のガラストッププレート10の明度L*は55.1であり、実施例4のガラストッププレート10の明度L*は54.2であった。このように、実施例1および実施例2のガラストッププレート10は、白色系等の明るい色調の装飾が可能となっており、装飾性の自由度が高い。
【0096】
比較例4の明度L*は62.6であった。比較例4のガラストッププレート10も、白色系の明るい色調の装飾が可能となっている。
【0097】
図11に、実施例3~4、および比較例4のガラストッププレート10の、反射分光スペクトルを示す。表4に示すように、波長940nmの赤外線の反射率は、実施例3が13.0%であり、実施例4が10.5%であった。これは、実施例3は、赤外線吸収層22に加えて、赤外線吸収装飾層12も備えていることから、赤外線の吸収能力に優れているためと考えられる。
【0098】
これに対して、比較例4の反射率は26.3%であり、高い反射率を示した。これは、比較例4の明度L*が高いことと、比較例4は赤外線吸収剤を含有していないことに基づくと考えられる。
【0099】
図12に示すように、実施例3および実施例4の出力電圧は、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが3cm~7cmにおいて、比較例4よりも小さい。つまり、実施例3および実施例4は、比較例4に比べて、外部の照明器具5の影響を受けにくくなっている。これにより、赤外線センサ3の精度を向上させることができる。
【0100】
実施例3および4においては、明度L*が50以上ある状態で、波長940nmの赤外線IRの反射率は、比較例4に比べて半分以下となっている。表4に示すように、外乱強度試験においても、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが5cmのときの検出電圧について、実施例3の検出電圧(2mV)および実施例4の検出電圧(1mV)は、比較例4の検出電圧(7mV)の30%未満であった。
【0101】
図9(b)を参照して、実施例3の作用効果について考察する。ガラストッププレート10に可視光Vが照射され、ガラス基板11を透過して赤外線吸収層22に到達する。可視光Vの一部は赤外線吸収層22で反射してガラス基板11から外部に出射する。実施例3の赤外線吸収層22は透光性を有するので、可視光Vの大部分は赤外線吸収層22を透過して装飾層32に到達する。装飾層32に可視光Vが到達すると、可視光Vは装飾層32に反射されて、その後、赤外線吸収層22およびガラス基板11を透過して外部に出射する。これにより、実施例3のガラストッププレート10においては、明度L
*が比較的に大きくなっており、ガラストッププレート10の装飾性に資する。
【0102】
一方、ガラストッププレート10に赤外線IR2が照射され、ガラス基板11を透過して赤外線吸収層22に赤外線IR2が到達すると、赤外線IRの一部は赤外線吸収層22に反射され、他の大部分は赤外線吸収層22に進入する。赤外線IR2は、赤外線吸収層22に含まれる赤外線吸収剤により吸収されて、減衰する。装飾層32に赤外線IR2が到達すると、赤外線IR2は装飾層32に反射されて、赤外線吸収層22を透過する。このとき、赤外線IR2は、赤外線吸収層22に含まれる赤外線吸収剤によって吸収されるので、赤外線IR2はさらに減衰する。赤外線IR2がガラス基板11に到達するまでに、赤外線IR2は減衰して微弱になっている。赤外線IR2がガラストッププレート10内を多重反射する間に、赤外線IR2が赤外線吸収層22に到達するたびに、赤外線IR2は減衰する。これにより、赤外線センサ3に検知される赤外線IR2を減少させることができる。このように、実施例3のガラストッププレート10においては、ガラストッププレート10に照射された赤外線IR2を減衰させることができる。
【0103】
図10(b)を参照して、実施例4の作用効果について考察する。可視光Vについては、実施形態3と同様なので、重複する記載を省略する。
【0104】
一方、ガラストッププレート10に赤外線IR2が照射され、ガラス基板11を透過して赤外線吸収層22に赤外線IR2が到達すると、赤外線IR2の一部は赤外線吸収装飾層12に反射され、他の大部分は赤外線吸収層22に進入する。赤外線IR2は、赤外線吸収層22に含まれる赤外線吸収剤により吸収されて、減衰する。赤外線吸収装飾層12に赤外線IR2が到達すると、赤外線IR2の一部は赤外線吸収装飾層12に反射されて、赤外線吸収層22を透過する。このとき、赤外線IR2は赤外線吸収剤によって吸収されるので、赤外線IR2はさらに減衰する。一方、赤外線吸収装飾層12に進入した赤外線IR2は、赤外線吸収装飾層12に含まれる赤外線吸収剤によって吸収される。遮光層13に到達した赤外線IR2は、遮光層13によって反射されて赤外線吸収装飾層12内を進むときに、赤外線吸収剤によってさらに吸収される。赤外線IR2がガラストッププレート10内を多重反射する間、赤外線IRが赤外線吸収層22および赤外線吸収装飾層12に到達すると、赤外線IR2は減衰し、赤外線センサ3に検知される赤外線IR2を減少させることができる。このように、実施例4のガラストッププレート10においては、ガラストッププレート10に照射された赤外線IR2を効果的に減衰させることができると考えられる。
【0105】
5-3.ガラス基板11の表面11Aに赤外線吸収層22を有する構成
(実施例5)
図13(a)を参照して、実施例5のガラストッププレート10について説明する。本実施例のガラストッププレート10は、ガラス基板11と、ガラス基板11の表面11Aに形成された赤外線吸収層22と、ガラス基板11の裏面11Bに形成された装飾層32と、装飾層32に形成された遮光層13と、を備える。
【0106】
300メッシュのスクリーンを使用したスクリーン印刷により、比較例4で使用したガラストッププレート10の表面10Aのうち、表側窓部15を除いた全面に、表3に記載された透光塗料を塗布した。その後、160℃で加熱して硬化させることにより、赤外線吸収層22を形成した。赤外線吸収層22の厚みを膜厚計で測定したところ、7.5μmであった。実施例5の表側窓部15の内径寸法は、10mmであった。このようにして実施例5のガラストッププレート10を作製した。
【0107】
(各種測定)
実施例5および比較例4について、実施例1~2および比較例1~3と同様にして、明度測定、赤外線の反射分光スペクトル測定および外乱強度試験を行った。ただし、外乱強度試験においては、アルミニウム製の金属板6のみを使用し、SUS430製の金属板6を用いた試験は実施しなかった。結果を、
図14および
図15に示すとともに、表5にまとめた。なお、表5には、赤外線センサ3の軸線Pから金属板6の端縁までの距離Xが5cmのときの、赤外線センサ3の検出電圧を記載した。
【0108】
【0109】
(測定結果)
表5に示すように、実施例5のガラストッププレート10の明度L*は58.7であった。このように、実施例5のガラストッププレート10は、白色系の明るい色調の装飾が可能となっている。比較例4のガラストッププレート10の明度L*が62.6であることと比較して、赤外線吸収層22が形成された分だけ、実施例5の明度L*が3.9低下したと考えられる。
【0110】
図14に、実施例5、および比較例4のガラストッププレート10の、反射分光スペクトルを示す。表5に示すように、波長940nmの赤外線の反射率は、実施例5が15.1%であった。これは、実施例5が、赤外線吸収層22を備えていることによると考えられる。
【0111】
これに対して、比較例4の反射率は26.3%であり、高い反射率を示した。これは、比較例4の明度L*が高いことと、比較例4は赤外線吸収剤を含有していないことによると考えられる。
【0112】
図15に示すように、実施例5の出力電圧は、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが3cm~7cmにおいて、比較例4よりも小さい。つまり、実施例5は、比較例4に比べて、外部の照明器具5の影響を受けにくくなっている。これにより、赤外線センサ3の精度を向上させることができる。
【0113】
また、表5に示すように、赤外線センサ3の軸線Pからの距離Xが5cmであるときの、赤外線センサ3の出力電圧は、実施例5が1mVであるのに対し、比較例4は7mVであった。すなわち、実施例5における出力電圧は、比較例4に比べて14%まで減少している。このように、実施例5は、比較例4に比べて、外部の照明器具5の影響を受けにくくなっているので、赤外線センサ3の精度を向上させることができる。
【0114】
図13(b)を参照して、実施例5の作用効果について考察する。ガラストッププレート10に可視光Vが照射され、ガラス基板11の表面11Aに形成された赤外線吸収層22に到達すると、可視光Vの一部は赤外線吸収層22に反射される。可視光Vの大部分は赤外線吸収層22に進行する。赤外線吸収層22は透明性を有するので、可視光Vは赤外線吸収層22を透過してガラス基板11に到達する。ガラス基板11に到達した可視光Vの一部は、ガラス基板11の表面11Aで反射して、赤外線吸収層22と透過して外部に出射する。可視光Vの大部分はガラス基板11に進入する。ガラス基板11に進入した可視光Vは、装飾層32に到達する。装飾層32に到達した可視光Vは装飾層32で反射して、ガラス基板11、赤外線吸収層22を透過して外部に出射する。これにより、実施例5のガラストッププレート10においては、明度L
*が比較的に大きくなっており、ガラストッププレート10の装飾性に資する。
【0115】
一方、ガラストッププレート10に赤外線IR2が照射されると、赤外線IRの一部は、ガラス基板11の表面11Aに形成された赤外線吸収層22に反射される。赤外線吸収層22に反射されなかった赤外線IR2は、赤外線吸収層22に進入する。赤外線吸収層22に進入した赤外線IR2は、赤外線吸収層22に含まれる赤外線吸収剤により吸収されて、減衰する。赤外線IRがガラス基板11の表面11Aに到達すると、赤外線IR2はガラス基板11の表面11Aに反射されて、赤外線吸収層22の内部を進行する。すると、赤外線IR2は赤外線吸収層22の赤外線吸収剤に吸収されて、さらに減衰して、外部に出射される。赤外線IRのうちガラス基板11の表面11Aで反射しなかったものは、ガラス基板11の内部に進入する。赤外線IR2は装飾層32に到達し、装飾層32で反射する。装飾層32で反射した赤外線IR2は、ガラス基板11を透過し、赤外線吸収層22に到達する。赤外線吸収層22に到達した赤外線IRは、赤外線吸収層22の赤外線吸収剤にほとんど吸収される。赤外線IR2がガラストッププレート10内を多重反射して赤外線吸収層22に到達すると、赤外線IR2は減衰し、赤外線センサ3に検知される赤外線IR2を減少させることができる。このように、実施例5のガラストッププレート10においては、ガラストッププレート10に照射された赤外線IR2を効果的に減衰させることができる。
【0116】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0117】
本形態においては、調理器具4と異なる部材の例として照明器具5を例示したが、これに限定されない。
図16に、他の実施形態を示す。他の実施形態においては、誘導加熱調理器1は、加熱コイル2の他に、ラジエントヒータに例示される第二加熱手段7を備える。ガラストッププレート10の裏面10Bには、ガラス基板11の厚み方向について、第二加熱手段7に重なる位置に、第二裏側窓部16が形成されている。第二裏側窓部16からは、ガラス基板11の裏面11Bが露出している。第二裏側窓部16は、赤外線吸収装飾層12に形成された第二赤外線吸収装飾層窓部16Aおよび遮光層13に形成された第二遮光層窓部16Bにより構成されている。
【0118】
第二加熱手段7は、調理器具4と異なる部材であり、赤外線IR3を発する。この場合、第二加熱手段7から発せられた赤外線IR3が、ガラストッププレート10に入射することが考えられる。この場合でも、ガラストッププレート10に入射した赤外線IR3は、赤外線吸収装飾層12によって吸収されるので、赤外線センサ3に到達することが抑制される。これにより、赤外線センサ3の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0119】
1:誘導加熱調理器、3:赤外線センサ、10:ガラストッププレート、10A:ガラストッププレートの表面、10B:ガラストッププレートの裏面、11:ガラス基板、11A:ガラス基板の表面、11B:ガラス基板の裏面、12:赤外線吸収装飾層、13:遮光層、22:赤外線吸収層、32:装飾層