(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147429
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】補間装置、補間方法、及び補間プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 17/17 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G06F17/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060442
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】生田 靖弘
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056GG01
(57)【要約】
【課題】時系列データの欠損部分を精度良く補間することができる補間装置、補間方法、及び補間プログラムを得る。
【解決手段】補間装置は、異なる複数の周期を有し、かつ欠損部分を有する時系列データのうちの欠損部分よりも前の期間の第1のデータ群、及び時系列データのうちの欠損部分よりも後の期間の第2のデータ群の少なくとも一方を複数の周期に従って多次元展開し、多次元展開した第1のデータ群及び第2のデータ群の少なくとも一方を用いて欠損部分を予測する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の周期を有し、かつ欠損部分を有する時系列データのうちの前記欠損部分よりも前の期間の第1のデータ群、及び前記時系列データのうちの前記欠損部分よりも後の期間の第2のデータ群の少なくとも一方を前記複数の周期に従って多次元展開する展開部と、
前記展開部より多次元展開された前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の少なくとも一方を用いて前記欠損部分を予測する予測部と、
を含む補間装置。
【請求項2】
前記展開部は、前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の双方を多次元展開し、
前記予測部は、前記展開部より多次元展開された前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の双方を用いて前記欠損部分を予測する
請求項1に記載の補間装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記展開部より多次元展開された前記第1のデータ群を用いて第1の欠損部分を予測し、
前記展開部より多次元展開された前記第2のデータ群を用いて第2の欠損部分を予測し、
前記第1の欠損部分及び前記第2の欠損部分を平均化することによって前記欠損部分を予測する
請求項2に記載の補間装置。
【請求項4】
前記予測部は、NPMRによって前記欠損部分を予測する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の補間装置。
【請求項5】
異なる複数の周期を有し、かつ欠損部分を有する時系列データのうちの前記欠損部分よりも前の期間の第1のデータ群、及び前記時系列データのうちの前記欠損部分よりも後の期間の第2のデータ群の少なくとも一方を前記複数の周期に従って多次元展開し、
多次元展開した前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の少なくとも一方を用いて前記欠損部分を予測する
処理をコンピュータが実行する補間方法。
【請求項6】
異なる複数の周期を有し、かつ欠損部分を有する時系列データのうちの前記欠損部分よりも前の期間の第1のデータ群、及び前記時系列データのうちの前記欠損部分よりも後の期間の第2のデータ群の少なくとも一方を前記複数の周期に従って多次元展開し、
多次元展開した前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の少なくとも一方を用いて前記欠損部分を予測する
処理をコンピュータに実行させるための補間プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補間装置、補間方法、及び補間プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、観測データが間欠的に取得される場合において、観測データの欠損部分がどこであっても、同一波形パターンに対してデータ補間処理を行った場合に、略同一の波形パターンが取得されるようにデータ補間処理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、同一波形パターンのデータ補間のみに対して適用可能なものであり、時系列データの欠損部分を精度良く補間できない場合がある。
【0005】
本開示は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、時系列データの欠損部分を精度良く補間することができる補間装置、補間方法、及び補間プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の補間装置は、異なる複数の周期を有し、かつ欠損部分を有する時系列データのうちの前記欠損部分よりも前の期間の第1のデータ群、及び前記時系列データのうちの前記欠損部分よりも後の期間の第2のデータ群の少なくとも一方を前記複数の周期に従って多次元展開する展開部と、前記展開部より多次元展開された前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の少なくとも一方を用いて前記欠損部分を予測する予測部と、を含む。
【0007】
第1の態様の補間装置によれば、異なる複数の周期を有し、かつ欠損部分を有する時系列データにおいて、多次元展開されたデータ群を用いて欠損部分が予測される。従って、時系列データの欠損部分を精度良く補間することができる。
【0008】
第2の態様の補間装置は、第1の態様の補間装置において、前記展開部は、前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の双方を多次元展開し、前記予測部は、前記展開部より多次元展開された前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の双方を用いて前記欠損部分を予測する。
【0009】
第2の態様の補間装置によれば、時系列データのうちの欠損部分よりも前の期間の第1のデータ群、及び時系列データのうちの欠損部分よりも後の期間の第2のデータ群の双方を用いて欠損部分が予測される。従って、時系列データの欠損部分を精度良く補間することができる。
【0010】
第3の態様の補間装置は、第2の態様の補間装置において、前記予測部は、前記展開部より多次元展開された前記第1のデータ群を用いて第1の欠損部分を予測し、前記展開部より多次元展開された前記第2のデータ群を用いて第2の欠損部分を予測し、前記第1の欠損部分及び前記第2の欠損部分を平均化することによって前記欠損部分を予測する。
【0011】
第3の態様の補間装置によれば、第1の欠損部分及び第2の欠損部分が平均化されることによって欠損部分が予測される。従って、時系列データの欠損部分を精度良く補間することができる。
【0012】
第4の態様の補間装置は、第1の態様から第3の態様の何れか1態様の補間装置において、前記予測部は、NPMRによって前記欠損部分を予測する。
【0013】
第4の態様の補間装置によれば、最適化計算等の計算コストが比較的高い計算を行わなくてもよい結果、計算コストを低減することができる。
【0014】
第5の態様の補間方法は、異なる複数の周期を有し、かつ欠損部分を有する時系列データのうちの前記欠損部分よりも前の期間の第1のデータ群、及び前記時系列データのうちの前記欠損部分よりも後の期間の第2のデータ群の少なくとも一方を前記複数の周期に従って多次元展開し、多次元展開した前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の少なくとも一方を用いて前記欠損部分を予測する処理をコンピュータが実行するものである。
【0015】
第6の態様の補間プログラムは、異なる複数の周期を有し、かつ欠損部分を有する時系列データのうちの前記欠損部分よりも前の期間の第1のデータ群、及び前記時系列データのうちの前記欠損部分よりも後の期間の第2のデータ群の少なくとも一方を前記複数の周期に従って多次元展開し、多次元展開した前記第1のデータ群及び前記第2のデータ群の少なくとも一方を用いて前記欠損部分を予測する処理をコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、時系列データの欠損部分を精度良く補間することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】補間装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】時系列データを説明するためのグラフである。
【
図3】時系列データを説明するためのグラフである。
【
図4】補間装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】データ補間処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る補間結果の一例を示すグラフである。
【
図9】比較例に係る補間結果の一例を示すグラフである。
【
図10】比較例に係る補間結果の一例を示すグラフである。
【
図11】比較例に係る補間結果の一例を示すグラフである。
【
図12】比較例に係る補間結果の一例を示すグラフである。
【
図13】比較例に係る補間結果の一例を示すグラフである。
【
図14】比較例に係る補間結果の一例を示すグラフである。
【
図15】比較例に係る補間結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0019】
次に、
図1を参照して、本実施形態に係る補間装置10のハードウェア構成を説明する。
図1に示すように、補間装置10は、CPU(Central Processing Unit)20、ROM(Read Only Memory)21、RAM(Random Access Memory)22、通信I/F(Interface)23、入力装置24、及び表示装置25を含む。CPU20、ROM21、RAM22、通信I/F23、入力装置24、及び表示装置25は、バス27を介して相互に通信可能に接続される。補間装置10の例としては、パーソナルコンピュータ又はサーバコンピュータ等のコンピュータが挙げられる。
【0020】
CPU20は、プロセッサの一例であり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20は、ROM21からプログラムを読み出し、RAM22を作業領域としてプログラムを実行する。
【0021】
記憶部としてのROM21には、補間プログラム30及び時系列データ32が記憶される。RAM22は、作業領域として一時的にプログラム及びデータを記憶する。通信I/F23は、外部システムと通信するためのインタフェースである。入力装置24は、例えば、キーボード及びマウスであり、ユーザが入力を行うための装置である。表示装置25は、例えば、液晶ディスプレイであり、CPU20による制御によって各種画面の表示を行う。
【0022】
図2及び
図3を参照して、本実施形態に係る時系列データ32について説明する。
図2に示すように、時系列データ32は、異なる複数の周期を有する。
図2に示す時系列データ32は、ある交通機関の1ヶ月毎の乗客数の時系列の推移を表している。
図2の例では、時系列データ32は、1年間の乗客数が線形に増加するという1年単位の周期と、1年のうちの特定の月において乗客数がピークに達するという1ヶ月単位の周期と、を有する。なお、時系列データ32が有する周期の数は2つに限定されず、例えば、1年単位、1ヶ月単位、及び1週間単位の3つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0023】
また、
図3に示すように、時系列データ32は、欠損部分を有する。
図3の例では、時系列データ32は、破線の矩形で示す1年分のデータが欠損している。時系列データ32は、データ群32A及びデータ群32Bにより構成される。データ群32Aは、時系列データ32のうちの欠損部分よりも前の期間の第1のデータ群である。データ群32Bは、時系列データ32のうちの欠損部分よりも後の期間の第2のデータ群である。
【0024】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る補間装置10の機能的な構成について説明する。
図4に示すように、補間装置10は、展開部40及び予測部42を含む。CPU20が補間プログラム30を実行することにより、展開部40及び予測部42として機能する。
【0025】
展開部40は、データ群32A及びデータ群32Bの双方を複数の周期に従って多次元展開する。一例として
図5に示すように、本実施形態では、時系列データ32は2つの周期を有するため、展開部40は、データ群32A及びデータ群32Bの双方を2つの周期に従って2次元展開する。
【0026】
予測部42は、展開部40により多次元展開されたデータ群32A及びデータ群32Bの双方を用いて欠損部分を予測する。本実施形態に係る予測部42は、NPMR(Non-parametric Multiplicative Regression)によって欠損部分を予測する。なお、予測部42は、欠損部分の予測に、NPMR以外の公知の予測アルゴリズムを用いてもよい。
【0027】
具体的には、
図6に示すように、予測部42は、展開部40により多次元展開されたデータ群32Aを用いて、以下の(1)式に従って、第1の欠損部分を予測する。
【0028】
【0029】
また、
図6に示すように、予測部42は、展開部40により多次元展開されたデータ群32Bを用いて、以下の(2)式に従って、第2の欠損部分を予測する。
【0030】
【0031】
なお、(1)式及び(2)式におけるWijは重みであり、以下の(3)式で表される。
【0032】
【0033】
そして、予測部42は、以下の(4)式に従って、第1の欠損部分及び第2の欠損部分を平均化することによって時系列データ32の欠損部分を予測する。なお、予測部42は、例えば、加重平均等の単純平均以外の手法によって、第1の欠損部分及び第2の欠損部分から時系列データ32の欠損部分を予測してもよい。
【0034】
【0035】
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る補間装置10の作用を説明する。
図7に示すデータ補間処理は、例えば、ユーザにより実行開始の指示が入力された場合等に実行される。
【0036】
図7のステップS10で、展開部40は、データ群32A及びデータ群32Bの双方を複数の周期に従って多次元展開する。ステップS12で、予測部42は、ステップS10で多次元展開されたデータ群32Aを用いて、(1)式に従って、第1の欠損部分を予測する。
【0037】
ステップS14で、予測部42は、ステップS10で多次元展開されたデータ群32Bを用いて、(2)式に従って、第2の欠損部分を予測する。ステップS16で、予測部42は、(4)式に従って、ステップS12で予測された第1の欠損部分及びステップS14で予測された第2の欠損部分を平均化することによって時系列データ32の欠損部分を予測する。ステップS16の処理が終了すると、データ補間処理が終了する。
【0038】
図8に、本実施形態に係る補間装置10による補間結果の一例を示し、
図9~
図15に比較例に係る補間結果の一例を示す。
図8~
図15のいずれも破線部分が欠損部分の正解データを表し、欠損部分の期間の実線が補間結果を示す。
図9は、LOCF(Last Observation Carried Forward)法による補間結果を示す。
図10は、平均値代入法による補間結果を示す。
図11は、中央値代入法による補間結果を示す。
図12は、線形補間法による補間結果を示す。
図13は、スプライン補間法による補間結果を示す。
図14は、移動平均補間法による補間結果を示す。
図15は、カルマン平滑化補間法による補間結果を示す。
【0039】
本実施形態では、複数の周期を有し、かつ欠損部分を有する時系列データ32が、複数の周期に従って多次元展開されたうえで、欠損部分が予測される。従って、時系列データ32の周期構造を保ったまま、欠損部分が補間される。これに対し、比較例では、時系列データ32の周期構造は保たれずに欠損部分が補間される。従って、本実施形態によれば、時系列データ32の欠損部分を精度良く補間することができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、展開部40は、データ群32A及びデータ群32Bの双方を複数の周期に従って多次元展開する場合を例に説明したが、開示の技術はこの態様に限定されない。展開部40は、データ群32A及びデータ群32Bの何れか一方を複数の周期に従って多次元展開してもよい。この場合、予測部42は、展開部40により多次元展開されたデータ群32A及びデータ群32Bの何れか一方を用いて欠損部分を予測する。
【0041】
また、上記実施形態において、補間装置10の各種の処理を実行する機能部をCPU以外のプロセッサにより実現してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、補間装置10の各機能部を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実現してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実現してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0042】
また、上記実施形態では、補間プログラム30がROM21に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。補間プログラム30は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、補間プログラム30は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 補間装置
20 CPU
21 ROM
22 RAM
23 通信I/F
24 入力装置
25 表示装置
27 バス
30 補間プログラム
32 時系列データ
32A データ群
32B データ群
40 展開部
42 予測部