(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014743
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】積層型電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240125BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 160
H01G4/30 517
H01G4/30 201C
H01G4/30 311D
H01G4/33 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100682
(22)【出願日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0090491
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セオ、チャン ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AH03
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC39
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE27
5E082EE37
5E082EE45
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG27
5E082GG10
5E082MM05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誘電体層及び内部電極の薄層化によって、小型・高容量化が実現された積層型電子部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111及び誘電体層を挟んで交互に積層される内部電極121,122を含む本体110と、本体に配置され内部電極と連結される外部電極200、300と、を含み、内部電極の少なくとも一つは端部142、151のいずれか一つに金属酸化物を含む。その製造方法は、誘電体層及び誘電体層を挟んで交互に積層される内部電極を含む本体を形成する段階と、内部電極の少なくとも一つにおいて、端部のいずれか一つの領域にレーザ照射によって露光させる段階と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層を挟んで交互に積層される内部電極を含む本体と、
前記本体に配置され前記内部電極と連結される外部電極とを含み、
前記内部電極の少なくとも一つは、端部のいずれか一つに金属酸化物を含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記金属酸化物は、内部電極に含まれた金属の酸化物である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記金属酸化物は、Ni酸化物またはCu酸化物である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記外部電極は、第1方向に対向する第1及び第2外部電極を含み、
内部電極は、第1及び第2外部電極とそれぞれ連結された第1及び第2内部電極を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
第1内部電極の一端部は第1外部電極と接触し、他端部には金属酸化物が形成された、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記他端部の金属酸化物は、第2外部電極と接触する、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記一端部の一部にも金属酸化物が形成された、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
第2内部電極の一端部は第2外部電極と接触し、他端部には金属酸化物が形成された、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記他端部の金属酸化物は第1外部電極と接触する、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記一端部の一部にも金属酸化物が形成された、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層及び前記内部電極は、蒸着法によって形成される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
誘電体層及び前記誘電体層を挟んで交互に積層される内部電極を含む本体を形成する段階と、
前記本体に配置され前記内部電極と連結される外部電極を形成する段階とを含み、
前記内部電極の少なくとも一つにおいて、端部のいずれか一つの領域にレーザ照射によって露光させる、積層型電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記誘電体層及び前記内部電極は蒸着法によって形成する、請求項12に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記レーザ照射は、閾値フルエンス(Fluence Threshold)が1J/cm2以下を満たすように行われる、請求項12又は13のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層型セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像器機、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。最近、電子装置の部品が小型化され、積層型セラミックキャパシタの小型化及び高容量化に対する要求も増加している。
【0004】
このような流れにより、積層型セラミックキャパシタのサイズが次第に小さくなり、小規模で高容量を実現するために、同一体積における誘電体の有効体積率が高まりながら、相対的に電極の厚さがさらに薄くなっている。
【0005】
かかる積層型セラミックキャパシタ(MLCC)が用いられる電子製品の高性能化及び小型化により、IT用のMLCCも高容量化及び小型化が進行されている。高容量かつ小型のMLCCを製作するためには、誘電体層及び電極層を薄層化して積層数を増加させる必要がある。既存の工法の場合、薄層化によりMLCCの製作難易度が持続的に上昇するようになる。薄層化されたシートの製作と、損傷のない積層及び圧着など工程別に要求される技術水準が高くなる。また、段差により発生する不良及び信頼性の低下といった問題も、設計の余裕のない小型チップでさらに顕著に発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の様々な目的の一つは、誘電体層及び内部電極の薄層化を実現することで、小型化及び高容量化が実現された積層型電子部品及びその製造方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の様々な目的の一つは、レーザの選択的照射により内部電極のパターンを形成することで、段差のない積層型電子部品及びその製造方法を提供することである。これにより、段差により発生する不良及び信頼性の低下の問題を防止しようとする。
【0008】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層を挟んで交互に積層される内部電極を含む本体と、上記本体に配置され上記内部電極と連結される外部電極とを含み、上記内部電極の少なくとも一つは、端部のいずれか一つに金属酸化物を含む、積層型電子部品を提供する。
【0010】
また、本発明のさらに他の一実施形態は、蒸着法によって、誘電体層及び上記誘電体層を挟んで交互に積層される内部電極を含む本体を形成する段階と、上記本体に配置され上記内部電極と連結される外部電極を形成する段階とを含み、上記内部電極の少なくとも一つにおいて、端部のいずれか一つの領域にレーザ照射によって露光させる、積層型電子部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の様々な効果の一つは、誘電体層及び内部電極の薄層化を実現することで、小型化及び高容量化が実現された積層型電子部品を提供することができる。
【0012】
また、本発明の様々な効果の一つは、レーザの選択的照射によって内部電極のパターンを形成することで、段差のない積層型電子部品及びその製造方法を提供することができる。これにより、段差によって発生する不良及び信頼性の低下の問題を防止することができる。
【0013】
但し、本発明の多様かつ有益な長所と効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'断面図を概略的に示したものである。
【
図3】
図1のII-II'断面図を概略的に示したものである。
【
図4】本発明の一実施形態による積層型電子部品の必須工程を模式的に示したものである。
【
図5】本発明の一実施形態によるレーザの選択的照射による電極の酸化を通じたパターンの形成過程を模式的に示したものである。
【
図6】本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造過程を模式的に示した模式図である。
【
図7】本発明のまた他の一実施形態による積層型電子部品の製造過程であって、別途のマージン部生成工程を含む製造過程を模式的に示した模式図である。
【
図8】通常のフォトリソグラフィ工程を積層型電子部品の製造に適用する場合に予想される製造過程を模式的に示した模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態による内部電極内の金属酸化物の検出方法を模式的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0016】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0017】
図面において、X方向は第1方向または長さ方向、Y方向は第2方向または幅方向、Z方向は第3方向、厚さ方向または積層方向と理解されることができるが、これに制限されるものではない。
【0018】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は、
図1のI-I'断面図を概略的に示したものであり、
図3は、
図1のII-II'断面図を概略的に示したものであり、
図4は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の必須工程を模式的に示したものであり、
図5は、本発明の一実施形態によるレーザの選択的照射による電極の酸化を通じたパターンの形成過程を模式的に示したものであり、
図6は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造過程を模式的に示した模式図であり、
図7は、本発明のまた他の一実施形態による積層型電子部品の製造過程であって、別途のマージン部生成工程を含む製造過程を模式的に示した模式図である。
【0019】
以下、
図1~
図7を参照して本発明の一実施形態による積層型電子部品及びその製造方法について詳しく説明する。
【0020】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層を挟んで交互に積層される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置され上記内部電極と連結される外部電極200、300とを含む(本願の
図1参照)。
【0021】
この時、本体110は、複数の誘電体層111及び上記複数の誘電体層の間に配置された複数の内部電極121、122を含む。上記本体において、誘電体層111及び内部電極121、122は交互に積層されている。
【0022】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、
図1に示すように、本体110は六面体状またはこれと類似した形状からなることができる。製造過程中に本体110に含まれた材料の収縮などにより、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0023】
本体110は、厚さ方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、長さ方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、誘電体層111及び内部電極121、122は、蒸着法(すなわち、物理的あるいは化学的蒸着法を含む)によって形成されることができる。よって、従来の伝統的な方式で製造される積層型電子部品に比べて、本発明による積層型電子部品では、上記誘電体層及び内部電極が数ナノメートル~数十マイクロメートルの非常に薄い厚さで形成されることができる。
【0025】
一例として、本発明の一実施形態によると、誘電体層111の平均厚さは1nm~10μmであることができる。本発明によると、誘電体層を蒸着法によって形成するため、薄層の誘電体層の形成が可能となり、積層型電子部品の小型化及び集積化を実現することができる。
【0026】
この時、前述した誘電体層の平均厚さに対する測定方法については、特に限定しない。但し、一例として、本体110のY方向(幅方向)の中央部で切断したX及びZ方向(長さ及び厚さ方向)断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出された任意の1個の誘電体層111に対して、X方向(長さ方向)に等間隔である5個の地点における各誘電体層の厚さを測定した後、平均値を取得することで測定することができる。
【0027】
同様に、一例として、本発明の一実施形態によると、内部電極121、122の平均厚さは1nm~10μmであることができる。本発明によると、内部電極を蒸着法によって形成するため薄層の内部電極の形成が可能となり、積層型電子部品の小型化及び集積化を実現することができる。
【0028】
この時、前述した内部電極の平均厚さに対する測定方法については、特に限定しない。但し、一例として、本体110のY方向(幅方向)の中央部で切断したX及びZ方向(長さ及び厚さ方向)断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出された任意の1個の内部電極121、122に対して、X方向(長さ方向)に等間隔である5個の地点における各内部電極の厚さを測定した後、平均値を取得することで測定することができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。これらのうち、上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3またはBa(Ti1-yZry)O3などが挙げられる。この時、上記誘電体層111を形成する材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO3などのセラミック材料に加えて、本発明の目的に応じて蒸着法により誘電体層111を形成するのに適合に使用可能な多様な添加剤が添加されることができる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、内部電極121、122は、誘電体層111と厚さ方向(Z方向)に交互に配置されることができる。内部電極は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面及び第4面3、4に露出することができる。
【0031】
本発明者らは、誘電体層及び電極層の薄層化を通じた高性能化及び小型化を図ると同時に、段差によって発生する不良発生と信頼性の低下の問題を解決するために鋭意研究を重ねた。
【0032】
そこで、本発明者らは、成形、印刷、積層及び圧着などの工程を経る伝統的な積層型セラミックキャパシタ(MLCC)の製作方式ではなく、ウェーハ上に蒸着法を通じて誘電体層及び内部電極を形成することで積層型セラミックキャパシタ(MLCC)を製作する方式を採択した。
【0033】
具体的に、本発明者らは、蒸着法によって誘電体層及び内部電極を形成し、上記内部電極の少なくとも一つにおいて、端部のいずれか一つの領域にレーザ照射によって露光させて金属酸化物を形成することで、段差のない内部電極パターンを形成することができることを見出した。
【0034】
通常、レーザ照射を利用してパターンを形成するフォトリソグラフィ工程の場合、一つのパターンを形成するためには多数の細部工程が必要である。例えば、誘電体層蒸着及び内部電極蒸着工程以後、エッチングなどの環境にやさしくない化学工程が繰り返して行われなければならず、湿式工程の場合は、洗浄及び乾燥工程がさらに必要である。特に、MLCCの場合、数十~数千層の積層数が要求され、この時必要な工数も大きく増えて、前述した工程をMLCCの製作に適用させる場合、予想される工程図は
図8の通りである。
【0035】
しかし、
図8に示すように、このような製造工程によってMLCCを製作する場合、外部電極と連結される部位で発生する段差の解決難易度が上昇する。段差部分に不導体の追加蒸着が必要となるだけでなく、これは積層工程毎に繰り返して必要であるため、必要工数を増加させるようになるという問題がある。
【0036】
そこで、本発明では、内部電極の形成時に、長さ方向への端部のいずれか一つの領域に、レーザの選択的照射による露光を通じて選択的に酸化させることで内部電極のパターンを形成させることができ、これにより段差のないMLCCの製作が可能となることが分かった。
【0037】
レーザを利用してパターンを形成する方法は、大きく2つに分類することができるが、第一の方法は、レーザの直接的加工を利用したパターンの形成方法であって、この場合はレーザが照射された部位の材料を除去することでパターンを形成する。第二の方法は、レーザ照射を通じて物質の物性を変更する方法であって、例えば誘電体を導体に変更するか、誘電体の誘電率を増加させるなどの場合が該当する。この場合は、前述した第一の方法とは異なり、レーザが照射された部位の除去が不要である。
【0038】
一方、本発明の場合、レーザが照射された部位の除去がなくとも、蒸着法を通じて形成された内部電極に対して、一部の領域である特定位置に短時間レーザを選択的に照射することで、電極パターンを形成する(本願の
図5参照)。
【0039】
具体的に、
図5に示すように、レーザが照射された部位に対する加熱による熱拡散長さ(w)及び光浸透深さ(t)を考慮してレーザ処理条件を精密制御することで、以後の大気圧或いは酸化雰囲気における酸化反応を通じて内部電極において、端部のいずれか一つに金属酸化物を形成させる。これにより、本発明の一側面によると、少なくとも一つの内部電極において、
図5に示すように、端部のいずれか一つに金属酸化物が形成されることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、
図5に示すように、レーザ照射時の特定位置加熱による熱拡散長さ(w)及び光浸透深さ(t)を考慮して露光程度を制御することができる。よって、本発明の一実施形態による内部電極の端部のうち、金属酸化物の含まれた端部は、
図5に示すように、金属酸化物の幅が下部に行くほど(即ち、厚さ方向(第3方向或いはZ方向)に下部に行くほど)減る形態で形成されてもよい。これにより、内部電極が薄層の場合は、金属酸化物の幅が下部に行くほど減る形態が緩和されることができ、レーザ照射位置など工程変数を変更することで、金属酸化物の幅が下部に行くほど減る形態をさらに緩和可能である。
【0041】
従って、本発明によると、伝統的なフォトリソグラフィ工程におけるフォトレジスト(PR)の蒸着及び除去過程を省略し、露光工程だけでも電極パターンを形成することができる。よって、
図4に示すように、必須的な工数を大幅に減少させることができる。それだけでなく、材料の直接的な除去がないため、
図4に示した完成された本体の構造のように段差のないMLCCの製作が可能となる。
【0042】
前述した本発明による積層型電子部品の特徴的構造について、以下で具体的に説明する。すなわち、本発明による積層型電子部品において、内部電極121、122の少なくとも一つは、端部のいずれか一つに金属酸化物を含む。
【0043】
ここで、上記端部とは、いずれか一つの内部電極121、122を基準として、長さ方向(すなわち、第1方向またはX方向)に両端に位置した部分を意味する。よって、第1内部電極121の長さ方向(すなわち、第1方向またはX方向)に両端に位置した部分を第1内部電極121の端部141、142と称する。同様に、第2内部電極122の長さ方向(すなわち、第1方向またはX方向)に両端に位置した部分を第2内部電極122の端部151、152と称する。
【0044】
一方、本発明において、前述した内部電極に金属酸化物を含むか否かを測定する方法については特に限定しないが、一例としてその測定方法を
図9に示した。具体的に、MLCCを10ea準備する。次いで、外部電極が付着する方向が上部となるように露出させた後、エポキシモールディングを進行する。以後、全体厚さtを基準として、1/4tまでポリシングを進行して内部電極、誘電体層及びマージン部を露出させる。以後、露出した断面を基準として、内部電極及び内部電極の端部に対するEDS/XRD/XPSなどの成分分析装備を利用してBT(Bariμm Titanate)電極と、金属酸化物が検出されるかを確認する。
【0045】
本発明の一実施形態によると、
図2に示すように、第1内部電極121の一端部141は第1外部電極200と接触し、他端部142には金属酸化物が形成されることができる。この時、第1内部電極121の他端部142の金属酸化物は、第2外部電極300と接触することができる。また、第1内部電極121の一端部141の一部にも金属酸化物が形成されることができる。
【0046】
また、本発明の一実施形態によると、
図2に示すように、第2内部電極122の一端部152は第2外部電極300と接触し、他端部151には金属酸化物が形成されることができる。この時、第2内部電極122の他端部151の金属酸化物は、第1外部電極200と接触することができる。また、第2内部電極122の一端部152の一部にも金属酸化物が形成されることができる。
【0047】
一方、本発明の一実施形態によると、上記内部電極の少なくとも一つに含まれる金属酸化物は、物理的または化学的蒸着法によって形成された内部電極において、長さ方向(すなわち、第1方向またはX方向)の端部のいずれか一つの領域にレーザ照射によって露光させることで形成されることができる。
【0048】
このように、内部電極の端部のいずれか一つの領域のみにレーザを選択的に照射することで、電極パターンを生成することができる。この時、電極を生成するのではなく、電極が断線されるべき部分を生成することを目的とし、このような電極の断線は、直接的な除去の代わりに、電極の酸化を利用して達成することができる。また、前述した電極の酸化は、レーザ照射で発生する熱的影響を利用して達成することができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前述した方法を利用して、内部電極の少なくとも一つに金属酸化物を形成させることで、積層型電子部品の本体を形成する時に、通常のレーザ照射方式で要求されるエッチングなどの化学的工程及び湿式工程を最小化することができる。これを通じて、使用する化学薬品を最小化することで、環境にやさしい工程の進行が可能となり、副資材で消耗される費用を最小化することができる。それだけでなく、湿式工程も最小化することで、乾燥や洗浄工程の省略が可能となり、湿気により発生する不良の問題を最小化することができる。
【0050】
さらに、本発明の一実施形態によると、製造過程中に、フォトマスクの変更やレーザビーム径の設定などを通じて、多様な電極パターンを形成することができる。具体的に、マスクの交替やソフトウェアの変更を通じて一つの装備で多様なパターンを実現することができ、これを通じて多品種の少量生産に対応することができる。また、一つのチップを製作する時も、蒸着パターンを変更しながら進行することができ、これを通じてチップの上部/中心部/下部のパターンを異なって実現することも可能となる。結局、本発明によると、積層型電子部品の設計において多様な変形が可能となることにより、設計の自由度を大幅に向上させることができるようになる。
【0051】
したがって、本発明の一実施形態によると、上記金属酸化物は、内部電極に含まれた金属に対する酸化物であることができる。よって、内部電極の材料としてニッケル(Ni)または銅(Cu)などの金属が使用されることができるため、上記内部電極の端部のいずれか一つに含まれる金属酸化物は、ニッケル(Ni)酸化物または銅(Cu)酸化物であることができる。
【0052】
具体的に、上記内部電極がニッケル(Ni)金属で形成された場合は、内部電極の端部のいずれか一つに含まれる金属酸化物は、ニッケル(Ni)酸化物になることができる。同様に、上記内部電極が銅(Cu)金属で形成された場合は、内部電極の端部のいずれか一つに含まれる金属酸化物は、銅(Cu)酸化物になることができる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、
図2に示すように、内部電極121、122において、金属酸化物が形成されている端部142、151を除いたものを基準としてみると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を通じて露出することができる。同様に、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を通じて露出することができる。
【0054】
但し、第1内部電極121中に金属酸化物が形成されている端部142は、第4面4を通じて露出することができる。同様に、第2内部電極122中に金属酸化物が形成されている端部151は、第3面3を通じて露出することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によると、第1及び第2内部電極121、122は、金属酸化物が形成されている端部142、151を除いたものを基準としてみると、それぞれ本体の長さ方向(すなわち、第1方向またはX方向)の両端面である第3面3及び第4面4に交番に露出し、第1及び第2外部電極200、300にそれぞれ露出することができる。
【0056】
すなわち、本発明の一実施形態によると、金属酸化物が形成されている端部142、151を除いたものを基準としてみると、第1内部電極121は第2外部電極300とは連結(または、電気的に連結)されず、第1外部電極200と連結(または、電気的に連結)される。同様に、第2内部電極122は、第1外部電極200とは連結(または、電気的に連結)されず、第2外部電極300と連結(または、電気的に連結)される。
【0057】
したがって、金属酸化物が形成されている端部142、151を除いたものを基準としてみると、第1内部電極121は、第4面4で一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3で一定距離離隔して形成される。
【0058】
この時、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111により互いに電気的に分離することができる。
【0059】
前述したように、本発明によると、内部電極121、122において絶縁が必要な部分を除去せず、レーザの選択的照射による露光によって酸化物が含まれた端部142、151を形成することができる。これにより、段差のないMLCCの製作が可能となるため、段差から起因する不良を根絶することが可能であることが期待される。
【0060】
積層型電子部品100は、本体110に配置され、内部電極121、122と連結される外部電極200、300を含む。具体的に、上記外部電極は、長さ方向(すなわち、第1方向またはX方向)に対向する第1及び第2外部電極200、300を含む。この時、内部電極は、第1及び第2外部電極200、300とそれぞれ連結される(あるいは、電気的に連結される)第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。
【0061】
本実施形態では、積層型電子部品100が2個の外部電極200、300を有する構造を説明しているが、外部電極200、300の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0062】
一方、外部電極200、300は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、ある物質を用いて形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決められることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0063】
例えば、外部電極200、300は、本体110に配置される電極層131a、131b及び上記電極層上に形成されためっき層132a、132bを含むことができる。一例として、電極層131a、131bは、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0064】
あるいは、電極層131a、131bは、本体上に樹脂系電極が順次に形成された形態であることができる。また、電極層131a、131bは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0065】
電極層131a、131bに含まれる導電性金属として電気伝導性に優れた材料を使用することができ、特に限定しない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金の一つ以上であることができる。
【0066】
めっき層132a、132bは実装特性を向上させる役割をする。めっき層132a、132bの種類は特に限定せず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0067】
めっき層132a、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層132a、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、特にSnめっき層であることができる。あるいは、めっき層132a、132bは、前述した電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であることができる。また、めっき層132a、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0068】
本発明の一実施形態によると、
図3に示すように、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み容量が形成される容量形成部Aと、容量形成部Aの上部及び下部に形成されたカバー部112、113を含むことができる。容量形成部Aはキャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返して積層して形成されることができる。
【0069】
本発明の一実施形態によると、上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2個以上の(複数の)誘電体層を容量形成部Aの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割をすることができる。
【0070】
本発明の一実施形態によると、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0071】
すなわち、本発明の一実施形態によると、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。この時、カバー部112、113の厚さ(tp)は特に限定する必要はない。
【0072】
また、本発明の一実施形態によると、上記容量形成部Aの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0073】
本発明の一実施形態によると、マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と第5面5に配置されたマージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向(第2方向またはY方向)の両側面に配置されることができる。
【0074】
本発明の一実施形態によると、マージン部114、115は、
図3に示すように、上記本体110を幅-厚さ(Y-Z)方向に切った断面において第1及び第2内部電極121、122の両末端と本体110の境界面間の領域を意味することができる。
【0075】
本発明の一実施形態によると、マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割をすることができる。
【0076】
本発明の一実施形態によると、マージン部114、115は、誘電体層と内部電極の積層工程、内部電極の露光工程、及び積層体の切断工程と同時に、マージン部を生成させるか否かによって二つの製作法があり得る。
【0077】
具体的に、本発明の一実施形態による製造過程によると、
図6及び
図7に示すように、目的の設計厚さまたは設計層数に到逹するまで、誘電体層の積層、内部電極の積層、及び上記内部電極にレーザを選択的に照射して露光することで電極パターンを形成する過程を繰り返して積層体を形成する。前述したレーザ照射による露光を通じた電極パターンの形成過程では、露光に使用するレーザを準備した後、マスク投映法、ラインビームとステージ、またはビームスキャナなどの目的に合う光学系を準備する。以後のレーザビームの照射を通じて酸化パターンを形成する。次いで、上記積層体をダイシングソー、レーザ、EDMまたは化学的エッチングなどの方法で切断することでチップを製造する。
【0078】
この時、
図6の(8)及び(9)ステップのように、露光された部分がチップの切断面に位置するように制御することで、別途の生成工程なくマージン部114、115を形成することができる。
【0079】
あるいは、
図7の(10)ステップのように、積層体の形成以後、内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、複数の誘電体層を容量形成部Aの両側面に幅方向(すなわち、第2方向またはY方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0080】
一方、以下では、本発明のまた他の一実施形態である積層型電子部品の製造方法について説明する。
【0081】
本発明のまた他の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、蒸着法によって、誘電体層及び上記誘電体層を挟んで交互に積層される内部電極を含む本体を形成する段階と、上記本体に配置され上記内部電極と連結される外部電極を形成する段階とを含み、上記内部電極の少なくとも一つにおいて、端部のいずれか一つの領域にレーザ照射によって露光させることができる。
【0082】
この時、上記蒸着法、誘電体層、内部電極、本体及び外部電極に対する前述した説明を上記積層型電子部品の製造方法にも同一に適用することができる。
【0083】
また、本発明の一実施形態によると、上記レーザ照射は、閾値フルエンス(Fluence Threshold)が1J/cm2以下を満たすように行われることができる。
【0084】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。
【0085】
したがって、製造誤差、外部電極の大きさなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.44mm以下で、幅が0.22mm以下の場合、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは積層型電子部品100の第2方向最大大きさを意味し、積層型電子部品100の幅は積層型電子部品100の第3方向最大大きさを意味することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0087】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112:上部カバー部
113:下部カバー部
114、115:マージン部
A:容量形成部
121、122:内部電極
131a、131b:電極層
132a、132b:めっき層
141、142:第1内部電極121の端部
151、152:第2内部電極122の端部
200、300:外部電極