(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147431
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】検査不正防止システム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241008BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20241008BHJP
G01B 11/14 20060101ALI20241008BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G01B11/08 H
G01B11/14 H
E04G21/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060446
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】598123334
【氏名又は名称】ダットジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小山 一人
(72)【発明者】
【氏名】洞口 克彦
(72)【発明者】
【氏名】香川 明慧
【テーマコード(参考)】
2E174
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA13
2E174DA17
2F065AA21
2F065AA26
2F065BB27
2F065FF04
2F065FF61
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ23
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ26
2F065QQ31
2F065SS01
5L096BA03
5L096CA02
5L096EA16
5L096FA10
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】
構造物の建設などにおける配筋検査などの検査において計測用マーカによる不正を防止する検査不正防止システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
計測用マーカを用いた検査の不正を防止する検査不正防止システムであって、検査不正防止システムは、計測用マーカで用いる認証情報を発行する認証情報発行処理部と、検査箇所と、基準点と認証情報とが表示された計測用マーカとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部と、画像情報における計測用マーカの基準点を用いて、検査箇所の検査を行う検査処理部と、を有しており、画像情報における計測用マーカの認証情報と、認証情報発行処理部で発行した認証情報との比較の結果、条件を充足したことを示す情報を、画像情報と対応づけて記憶する、検査不正防止システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測用マーカを用いた検査の不正を防止する検査不正防止システムであって、
前記検査不正防止システムは、
前記計測用マーカで用いる認証情報を発行する認証情報発行処理部と、
検査箇所と、基準点と認証情報とが表示された計測用マーカとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部と、
前記画像情報における前記計測用マーカの基準点を用いて、前記検査箇所の検査を行う検査処理部と、を有しており、
前記画像情報における前記計測用マーカの前記認証情報と、前記認証情報発行処理部で発行した認証情報との比較の結果、条件を充足したことを示す情報を、前記画像情報と対応づけて記憶する、
ことを特徴とする検査不正防止システム。
【請求項2】
前記計測用マーカは、
前記認証情報発行処理部で発行された認証情報を受け付ける認証情報受付処理部と、
前記計測用マーカの表示部に、前記受け付けた認証情報を表示させる表示処理部と、
を有しており、
前記可搬型通信端末は、
前記認証情報発行処理部で発行された認証情報を記憶しており、
前記画像情報の前記計測用マーカの認証情報と、前記記憶した認証情報とを比較する判定処理部と、を有しており、
前記判定処理部は、
前記比較の結果、条件を充足していると判定した場合には、前記条件を充足したことを示す情報と、前記画像情報とを所定の記憶領域に記憶させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査不正防止システム。
【請求項3】
前記検査処理部は、
前記画像情報に写る前記計測用マーカにおける前記基準点を用いて仮想平面を推定し、
前記画像情報における座標値に対応する、前記推定した仮想平面上の座標値を算出することで、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の検査不正防止システム。
【請求項4】
前記検査処理部は、
前記画像情報に写る前記計測用マーカにおける前記基準点を用いて推定した仮想平面における前記画像情報の座標値を推定し、
前記計測用マーカ若しくは前記基準点を形成するマークの実際の大きさと、前記画像情報に写る計測用マーカ若しくは前記基準点を形成するマークの大きさとを用いて比率を算出し、
前記推定した座標値に基づく2点間の距離と前記比率とを用いて、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の検査不正防止システム。
【請求項5】
前記認証情報発行処理部は、
前記計測用マーカの識別情報、撮影箇所の識別情報、日時情報のいずれか一以上を用いて生成した情報である、
ことを特徴とする請求項2に記載の検査不正防止システム。
【請求項6】
前記認証情報発行処理部は、
角度情報を前記認証情報として発行し、
前記計測用マーカは、
前記角度情報を用いて前記計測用マーカの表示部または表示部で表示する情報を回転させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の検査不正防止システム。
【請求項7】
前記計測用マーカは、
第1部材と第2部材と表示部とを有しており、
前記第1部材と前記第2部材とがL字状に形成され、前記第1部材と前記第2部材の間に前記表示部を備え、
前記第1部材および前記第2部材にそれぞれ基準交点が示されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の配筋検査支援システム。
【請求項8】
計測用マーカを用いた検査の不正を防止する検査不正防止システムであって、
検査箇所と、基準点と認証情報とが表示された計測用マーカとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部と、
前記画像情報における前記計測用マーカの前記認証情報と、記憶する認証情報とを比較し、条件を充足したかを判定する判定処理部と、を有しており、
前記判定処理部は、
前記条件を充足したと判定した場合には、前記条件を充足をしたことを示す情報と、前記画像情報とを対応づけて所定の記憶領域に記憶させる、
ことを特徴とする検査不正防止システム。
【請求項9】
コンピュータを、
計測用マーカで用いる認証情報を発行する認証情報発行処理部、
検査箇所と、基準点と認証情報とが表示された計測用マーカとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部、
前記画像情報における前記計測用マーカの基準点を用いて、前記検査箇所の検査を行う検査処理部、として機能させる検査不正防止プログラムであって、
前記画像情報における前記計測用マーカの前記認証情報と、前記認証情報発行処理部で発行した認証情報との比較の結果、条件を充足したことを示す情報を、前記画像情報と対応づけて記憶させる、
ことを特徴とする検査不正防止プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
検査箇所と、基準点と認証情報とが表示された計測用マーカとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部、
前記画像情報における前記計測用マーカの前記認証情報と、記憶する認証情報とを比較し、条件を充足したかを判定する判定処理部、として機能させる検査不正防止プログラムであって、
前記判定処理部は、
前記条件を充足したと判定した場合には、前記条件を充足をしたことを示す情報と、前記画像情報とを対応づけて所定の記憶領域に記憶させる、
ことを特徴とする検査不正防止プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の建設などにおける配筋検査などの検査において計測用マーカによる不正を防止する検査不正防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物については法令で定められている基準にしたがって工事が行われているかを測定し、検査することが求められている。たとえば鉄筋コンクリート構造物の工事を行う際には、鉄筋が図面に従って正しく配置されているかを確認する配筋検査が行われている。
【0003】
このような検査は、従来は人が行うことが多く、非常に時間がかかる作業となっている。たとえば配筋検査の場合には、作業員が検測ロッドを使って鉄筋の間隔を測定し、それをカメラで撮影するなどの作業を行わなければならず、時間がかかる作業となっている。
【0004】
そこで、検査の際に、基準となる計測用のマーカ(以下、「基準マーカ」という)を一緒に写し込むことで、検査現場を撮影した画像情報から実寸値を測定することが知られている。たとえば、下記特許文献1では、縦および横の長さが既知の白板を基準マーカとして写し込み、画像から実寸値を計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の方法のように基準マーカを写し込むことで、簡便かつ精度よく寸法を計測することができる点で有益である。
【0007】
しかし、基準マーカの大きさ自体が変更されてしまうと、画像情報から測定する実寸値が変わるため、不正を行うことができてしまう。そのため、公的機関などにおける検査の証明に用いることができない。特許文献1に記載の方法であっても同様の課題があることは変わらない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に鑑み、検査において計測用のマーカを用いた不正を防止できる検査不正防止システムを発明した。
【0009】
第1の発明は、計測用マーカを用いた検査の不正を防止する検査不正防止システムであって、前記検査不正防止システムは、前記計測用マーカで用いる認証情報を発行する認証情報発行処理部と、検査箇所と、基準点と認証情報とが表示された計測用マーカとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部と、前記画像情報における前記計測用マーカの基準点を用いて、前記検査箇所の検査を行う検査処理部と、を有しており、前記画像情報における前記計測用マーカの前記認証情報と、前記認証情報発行処理部で発行した認証情報との比較の結果、条件を充足したことを示す情報を、前記画像情報と対応づけて記憶する、検査不正防止システムである。
【0010】
本発明を用いることで、計測用マーカに認証情報を発行し、その認証情報を写った画像情報を用いて処理を実行することで、計測用マーカによる不正を防止することができる。
【0011】
上述の発明において、前記計測用マーカは、前記認証情報発行処理部で発行された認証情報を受け付ける認証情報受付処理部と、前記計測用マーカの表示部に、前記受け付けた認証情報を表示させる表示処理部と、を有しており、前記可搬型通信端末は、前記認証情報発行処理部で発行された認証情報を記憶しており、前記画像情報の前記計測用マーカの認証情報と、前記記憶した認証情報とを比較する判定処理部と、を有しており、前記判定処理部は、前記比較の結果、条件を充足していると判定した場合には、前記条件を充足したことを示す情報と、前記画像情報とを所定の記憶領域に記憶させる、検査不正防止システムのように構成することができる。
【0012】
計測用マーカによる不正の防止としては、本発明のような処理を用いることで実行することができる。
【0013】
上述の発明において、前記検査処理部は、前記画像情報に写る前記計測用マーカにおける前記基準点を用いて仮想平面を推定し、前記画像情報における座標値に対応する、前記推定した仮想平面上の座標値を算出することで、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出する、検査不正防止システムのように構成することができる。
【0014】
上述の発明において、前記検査処理部は、前記画像情報に写る前記計測用マーカにおける前記基準点を用いて推定した仮想平面における前記画像情報の座標値を推定し、前記計測用マーカ若しくは前記基準点を形成するマークの実際の大きさと、前記画像情報に写る計測用マーカ若しくは前記基準点を形成するマークの大きさとを用いて比率を算出し、前記推定した座標値に基づく2点間の距離と前記比率とを用いて、前記鉄筋の径、配置間隔のいずれか一以上の値を算出する、検査不正防止システムのように構成することができる。
【0015】
これらの発明の処理を実行することで、座標を精度よく推定できるので、測定をより正確に行うことができる。
【0016】
上述の発明において、前記認証情報発行処理部は、前記計測用マーカの識別情報、撮影箇所の識別情報、日時情報のいずれか一以上を用いて生成した情報である、検査不正防止システムである。
【0017】
本発明のように、計測用マーカ、撮影箇所、日時情報などを用いて認証情報を構成することで、認証情報自体から計測用マーカ、撮影箇所、日時情報などを特定することが可能となる。
【0018】
上述の発明において、前記認証情報発行処理部は、角度情報を前記認証情報として発行し、前記計測用マーカは、前記角度情報を用いて前記計測用マーカの表示部または表示部で表示する情報を回転させる、検査不正防止システムのように構成することができる。
【0019】
認証情報としては、本発明のように角度情報としてもよい。
【0020】
上述の発明において、前記計測用マーカは、第1部材と第2部材と表示部とを有しており、前記第1部材と前記第2部材とがL字状に形成され、前記第1部材と前記第2部材の間に前記表示部を備え、前記第1部材および前記第2部材にそれぞれ基準交点が示されている、配筋検査支援システムのように構成することができる。
【0021】
計測用マーカがL字形状に形成されることで、画像情報に占める計測用マーカの領域を減らすとともに、計測用マーカに表示される基準交点を分散することができるので、座標の推定の精度を上げることができる。
【0022】
第8の発明は、計測用マーカを用いた検査の不正を防止する検査不正防止システムであって、検査箇所と、基準点と認証情報とが表示された計測用マーカとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部と、前記画像情報における前記計測用マーカの前記認証情報と、記憶する認証情報とを比較し、条件を充足したかを判定する判定処理部と、を有しており、前記判定処理部は、前記条件を充足したと判定した場合には、前記条件を充足をしたことを示す情報と、前記画像情報とを対応づけて所定の記憶領域に記憶させる、検査不正防止システムである。
【0023】
本発明のように構成しても、第1の発明と同様の技術的効果を得ることができる。すなわち、検査において計測用マーカを利用した不正を防止することができる。
【0024】
第1の発明の検査不正防止システムは、本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち、コンピュータを、計測用マーカで用いる認証情報を発行する認証情報発行処理部、検査箇所と、基準点と認証情報とが表示された計測用マーカとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部、前記画像情報における前記計測用マーカの基準点を用いて、前記検査箇所の検査を行う検査処理部、として機能させる検査不正防止プログラムであって、前記画像情報における前記計測用マーカの前記認証情報と、前記認証情報発行処理部で発行した認証情報との比較の結果、条件を充足したことを示す情報を、前記画像情報と対応づけて記憶させる、検査不正防止プログラムである。
【0025】
第8の発明の検査防止システムは、本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち、コンピュータを、検査箇所と、基準点と認証情報とが表示された計測用マーカとが写る画像情報の入力を受け付ける画像情報入力受付処理部、前記画像情報における前記計測用マーカの前記認証情報と、記憶する認証情報とを比較し、条件を充足したかを判定する判定処理部、として機能させる検査不正防止プログラムであって、前記判定処理部は、前記条件を充足したと判定した場合には、前記条件を充足をしたことを示す情報と、前記画像情報とを対応づけて所定の記憶領域に記憶させる、検査不正防止プログラムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の検査不正防止システムを用いることで、検査における計測用マーカを用いた不正を防止できる。そのため検査の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の検査不正防止システムの概念の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の検査不正防止システムの全体の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の検査不正防止システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の検査不正防止システムにおける全体の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の検査不正防止システムにおける認証処理の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の検査不正防止システムにおける配筋検査の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図7】非矩形状の計測用マーカの一例を示す図である。
【
図8】非矩形状の計測用マーカで認証情報を表示した状態の一例を示す図である。
【
図9】矩形状の計測用マーカの一例を示す図である。
【
図10】基準点が近く、推定する点から離れている場合の座標値の推定を示す図である。
【
図11】基準点が分散しており、推定する点から近い場合の座標値の推定を示す図である。
【
図16】計測用マーカを設置した配筋検査箇所を可搬型通信端末で撮像する状態の一例を示す図である。
【
図23】実施例2における計測用マーカの一例を示す図である。
【
図24】実施例2において表示部を回転させた状態の計測用マーカの一例を示す図である。
【
図25】実施例2において表示部に表示する情報を回転させた状態の計測用マーカの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の検査不正防止システム1の概念の一例を
図1に、全体のシステム構成の一例を
図2に示す。また、検査不正防止システム1で用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を
図3に示す。本発明の検査不正防止システム1で用いる計測用のマーカを、単に、計測用マーカ4という。
【0029】
検査不正防止システム1は、計測用マーカ4と可搬型通信端末3と管理端末2とを用いる。可搬型通信端末3は、スマートフォンやタブレット型コンピュータなどの持ち運びが可能な通信端末であって、後述する計測用マーカ4を撮影するカメラなどの撮影装置を備えている。たとえば可搬型通信端末3の撮影装置を用いて、建設現場で配筋検査を行う箇所の写真を撮影する。
【0030】
計測用マーカ4は、検査の際に用いる長さの基準となる基準マーカであって、配筋検査などの際には、撮影対象とする検査の対象物とともに写し込む器具である。計測用マーカ4の一例を
図7に示す。計測用マーカ4は、非矩形であることが好ましく、たとえば
図7に示すように、L字型とすることがよい。ただし、L字型に限るものではなく、撮影領域に基準交点110を満遍なく配置できる計測用マーカ4であればよい。たとえばコの字型、ロの字型、S字型、T字型などであってもよい。
【0031】
図7に示す計測用マーカ4は、所定の大きさの正方形が連続した格子模様(市松模様)が非矩形状、たとえばL字状に形成されており、金属、プラスチック、樹脂、木材など任意の素材により、薄い平板状に形成されている。強度が確保できる程度の厚さであることが好ましく、たとえば1cm以下であることがよいが、それに限定するものではない。計測用マーカ4は、第1部材1001と第2部材1002と表示部1003とを有しており、第1部材1001と第2部材1002とは直交するように形成されている。第1部材1001と第2部材1002の格子の大きさは同じである。第1部材1001の上下端部のいずれかの辺若しくはその延長線上の位置に第2部材1002の上下端部のいずれかの辺が位置する。
図7の場合、第1部材1001の上辺の延長線上の位置に第2部材1002の下辺が位置しており、第1部材1001の上辺と第2部材1002の下辺とが同一直線上に位置している。また第1部材1001の左右端部のいずれかの辺若しくはその延長線上の位置に第2部材1002の左右端部のいずれかの辺が位置する。
図7の場合、第1部材1001の右辺の延長線上に、第2部材1002の左辺が位置しており、第1部材1001の右辺と第2部材1002の左辺とが同一直線上に位置している。また計測用マーカ4の第1部材1001、第2部材1002の大きさ、格子の大きさはあらかじめ記憶されている。
【0032】
計測用マーカ4に備える表示部1003は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーなど任意の表示装置72を用いることができる。表示部1003は、好ましくは、計測用マーカ4の第1部材1001と第2部材1002との間に設けられているが、その場所に限定されるものではない。表示部1003は、可搬型通信端末3から受け付けた認証情報1004を表示する。表示部1003は、また、計測用マーカ4は、可搬型通信端末3とBluetooth(登録商標)またはWi-Fiなどの無線通信が可能な通信装置(図示せず)、計測用マーカ4の表示装置72、通信装置74などを駆動させるための電源装置(図示せず)、記憶装置(図示せず)などを備えている。
【0033】
計測用マーカ4の第1部材1001、第2部材1002には、所定の大きさの正方形が連続した格子模様が形成されている場合を示しているが、それに限定されるものではなく、所定の間隔で配置された基準交点110があれば格子模様に限定するものではない。また、格子模様以外にも、三角形、平行四辺形、台形、菱型、丸型などであってもよいし、基準交点110のみであってもよい。すなわち、所定の基準交点110のパターンが計測用マーカ4に表示されていればよい。なお、単に基準点のみが配置されている場合であってもよい。基準点には基準交点110も含まれる。
【0034】
管理端末2は、可搬型通信端末3で撮影した画像情報を用いて、所定の検査、たとえば配筋検査の処理を実行するコンピュータである。
【0035】
コンピュータは、プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と、情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と、ディスプレイなどの表示装置72と、情報の入力を行う入力装置73と、演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報を通信する通信装置74とを有している。なお、コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは、たとえばタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末3などで利用されることが多いが、それに限定するものではない。
【0036】
タッチパネルディスプレイは、そのディスプレイ上で、直接、所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で、表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0037】
なお、可搬型通信端末3においても、演算装置70、記憶装置71、表示装置72、入力装置73、通信装置74を備えている。
【0038】
また、管理端末2は、一台のコンピュータによって実現されていてもよいが、その一部または全部の機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして、たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0039】
本発明の検査不正防止システム1における各手段は、その機能が論理的に区別されているのみであって、物理上あるいは事実上は同一の領域を為していてもよい。
【0040】
検査不正防止システム1における管理端末2は、検査情報入力受付処理部20と検査情報記憶部21と認証情報発行処理部22と認証情報記憶部23と画像情報入力受付処理部24と検査処理部25とを有する。なお、以下の説明では検査として配筋検査の場合を説明するが、本発明は、検査対象に、計測用マーカ4を写し込み撮影をする検査であれば、配筋検査以外の各種の検査に用いることができる。
【0041】
検査情報入力受付処理部20は、検査に関する情報(検査情報)、たとえば配筋検査に関する情報(配筋検査情報)を所定のコンピュータから入力を受け付け、後述する検査情報記憶部21に記憶させる。検査情報、たとえば配筋検査情報としては、紙の図面またはデジタル化された図面から、検査対象の場所、鉄筋の本数、鉄筋の径、鉄筋の配置間隔などの情報を抽出し、所定のデータ形式とした上で、検査情報記憶部21に記憶させる。検査対象の場所としては、工事、建物やフロア、検査箇所などの情報が該当する。検査箇所については、デジタル化された図面から指定可能となっていてもよい。紙の図面の場合には、所定のデータ形式でデジタル化した図面に変換したうえで処理を実行する。
【0042】
検査情報記憶部21は、検査情報入力受付処理部20で入力を受け付けた検査情報、たとえば配筋検査情報を記憶する。検査対象の場所、鉄筋の本数、鉄筋の径、鉄筋の配置間隔などを記憶する。
【0043】
認証情報発行処理部22は、可搬型通信端末3からの認証情報の発行要求を受け付けて、認証情報を発行する処理を実行する。この際に発行する認証情報としては、一意に発行された文字数字記号などのワンタイムパスワードや、それらをコード化した情報などが該当する。認証情報には、計測用マーカ4を識別する情報、撮影箇所を識別する情報(緯度、経度などの位置情報など)を含むか、あるいはそれらを用いて生成した情報であってもよい。発行した認証情報は、認証情報記憶部23に記憶させる。
【0044】
また、認証情報発行処理部22は、発行した認証情報を、発行要求を送った可搬型通信端末3を介して計測用マーカ4に送る。可搬型通信端末3を介さずに、計測用マーカ4に対して認証情報を直接送るように構成してもよい。
【0045】
認証情報記憶部23は、認証情報発行処理部22が発行した認証情報を記憶する。
【0046】
画像情報入力受付処理部24は、可搬型通信端末3で撮影した検査、たとえば配筋検査を行う箇所の画像情報の入力を受け付ける。画像情報の入力を受け付けた後、その画像情報に対して、所定の画像補正処理、たとえばレンズ歪みや射影変換などの所定の画像変換処理を実行してもよい。画像変換処理を実行した後の画像情報を、検査処理部25における処理で用いる。
【0047】
検査処理部25は、画像情報入力受付処理部24で入力を受け付けた画像情報に対して、配筋検査の処理を実行する。検査処理部25は、画像情報入力受付処理部24で入力を受け付けた画像情報のうち、配筋検査を行う画像情報の選択を受け付け、その画像情報から輪郭を検出し、検出した輪郭のうち、鉄筋箇所について物体検出処理によって検出する。また、画像情報におけるマーカ箇所を検出し、鉄筋箇所とマーカ箇所の重なった箇所を計測箇所として特定し、その両端の2座標を推定する。そして、この2座標間の距離を算出することで、鉄筋の径を算出する。鉄筋の配置間隔については、各鉄筋の端部同士の座標に基づいて距離を算出することで算出できる。鉄筋の本数については、鉄筋箇所から特定することができる。
【0048】
検査処理部25は、以上のようにして算出した鉄筋の本数、鉄筋の径、鉄筋の配置間隔と、検査情報入力受付処理部20における配筋検査情報とを比較することで、合否判定を行う。判定結果は、検査情報記憶部21に、当該配筋検査情報に対応づけて、配筋検査の結果の情報として記憶させればよい。
【0049】
また検査処理部25は、画像情報入力受付処理部24で入力を受け付けた画像情報と合わせて、可搬型通信端末3から、後述する認証情報の判定結果が条件を充足したことを示す場合に算出されるハッシュ値と当該画像情報とを受け付けて、検査結果の情報と記憶させる。
【0050】
可搬型通信端末3は、認証情報処理部30と判定処理部31とを有する。
【0051】
認証情報処理部30は、管理端末2に対して認証情報の発行要求を行い、また管理端末2で発行した認証情報を受け付けて、計測用マーカ4に送る。また受け付けた認証情報を記憶する。
【0052】
判定処理部31は、検査対象箇所を、計測用マーカ4を写し込むように写した画像情報から、計測用マーカ4の表示部1003に写る認証情報1004を読み取り、管理端末2から受け付けた認証情報と比較してそれらの認証情報が一致するかを判定する。一致している場合には、前記画像情報または認証情報を用いて、一致していること(条件を充足していること)を示す情報、たとえばハッシュ値を所定の方法により算出する。そして、可搬型通信端末3の撮影装置で撮影した画像情報と、一致していること(条件を充足していること)を示す情報、たとえばハッシュ値とを対応づけて管理端末2に送る。なお、この一致には、同一であるほか、所定の類似度の範囲に含まれるなど、認証情報の比較の結果、一致するなどの所定の条件を充足していればよい。
【0053】
計測用マーカ4は、認証情報受付処理部40と表示処理部41とを有する。
【0054】
認証情報受付処理部40は、可搬型通信端末3または管理端末2から受け付けた認証情報を受け付ける。
【0055】
表示処理部41は、認証情報受付処理部40で受け付けた認証情報1004を、計測用マーカ4の表示部1003に表示させる。
【0056】
表示部1003は、計測用マーカ4の任意の場所に設けることができるが、計測用マーカ4がL字状の場合にはその交点付近、三角形、平行四辺形、台形、菱型、丸型などの場合にはその中心付近に設けてもよい。
【実施例0057】
つぎに本発明の検査不正防止システム1を用いた検査を実行する場合を
図4乃至
図6のフローチャートを用いて説明する。以下の説明では、検査として建築現場の配筋検査の場合を例に説明するが、それに限定するものではなく、計測用マーカ4を用いて検査対象物の太さ、間隔等を検査する場合であれば如何なる検査であっても適用できる。
【0058】
まず建築を施工する施工会社などの担当者は、紙の図面またはデジタル化された図面を、所定のコンピュータから入力を受け付け、その図面データから、検査対象の場所、鉄筋の本数、鉄筋の径、鉄筋の配置間隔などの情報を抽出し、配筋検査情報として検査情報記憶部21に記憶させる(S100)。配筋検査情報を登録する処理については、各種の公知技術を用いることができる。
【0059】
つぎに配筋検査を行う場合、
図7に示すような非矩形型計測用マーカ4(以下、「計測用マーカ4」)を用いる。
図7に示す本発明の計測用マーカ4の場合、第1部材1001は縦3、横10の30個の基準交点110、第2部材1002は縦7、横3の21個の基準交点110で,合計で51個の基準交点110を有している。
【0060】
本発明における非矩形状の計測用マーカ4を用いて、実空間における座標を推定する処理は、各種の技術を用いることができる。たとえば、画像情報に写った計測用マーカ4の各基準交点110の座標値(
図7の場合、51個の基準交点110の座標値)から、この各基準交点110が同一平面上に位置するような仮想平面を推定することで、実空間(仮想平面)上における計測用マーカ4の各基準交点110の座標値が推定できる。仮想平面の推定によって、画像情報に写った任意の座標値から、実空間(仮想平面)における対応する座標値へ変換するための射影変換行列が算出できる。この射影変換行列を用いて、画像情報における任意の座標値を、実空間(仮想平面)における対応する座標値を算出(推定)することができる。
【0061】
そして、非矩形状の計測用マーカ4が、従来の
図9に示すような長方形のマーカよりも座標推定の精度が良くなるのは、以下のような理由による。
【0062】
計測用マーカ4が写った画像情報がある場合、実空間(3次元空間)内で計測用マーカ4がどのように位置しているかという情報(3次元座標値)を与えると、計測用マーカ4の姿勢を演算することができる。具体的には、実空間内の座標値(3次元空間の座標値)と、画像上(2次元空間)の座標値(2次元座標値)を対応づけて、その3次元-2次元の対応付けを満たす姿勢(回転と平行移動)を演算する問題となる。
【0063】
3次元-2次元の対応付けを行う場合には4点以上の座標値が必要となり、3次元-2次元の対応点から離れた領域の推定座標は誤差が大きくなるため、3次元-2次元の対応点は、画像情報上に満遍なく配置されていることが精度に影響を与える。そして、本発明の検査不正防止システム1の適用場面である配筋検査の計測用マーカ4のように実空間でも平板状の場合には、すべての3次元-2次元の対応点は同一平面に存在することとなるため、結果、すべての対応点を含む平面を求める問題になる。すなわち、当てはめる平面と各対応点との誤差が最小となる問題を解くこととなる。
【0064】
たとえば、基準点として3つの点が与えられており、この3点を通る直線を推定して、x=10の座標値を推定する。このとき、
図10に示すように、基準点となるx=1、2、3の3点の座標値から直線を推定してx=10の座標値を推定するよりも、
図11に示すように、基準点となるx=1、4、8の3点の座標値から直線を推定してx=10の座標値を推定した方が、精度よくx=10の座標値を推定できる。なぜならば、
図10の場合、基準点と推定する点の位置との間に距離があるため、基準点の座標の誤差がより大きく位置推定に影響を与えるためである。そのため、
図11のように、基準点が満遍なく配置されている方が直線の推定の精度が上がり、その結果、推定するx=10の点の座標値の精度が上がることとなる。
図10、
図11はわかりやすさのため直線の推定で示したが、本発明の計測用マーカ4の基準交点110からの平面(仮想平面)の推定でも同様である。
【0065】
以上のように、非矩形状の計測用マーカ4のほうが基準交点110を、従来の矩形状の計測用マーカ4よりも満遍なく配置することができるため、仮想平面の推定が精度よく行えるので、その結果、仮想平面における座標値の推定も精度よく行うことができる。
【0066】
したがって、後述する検査処理部25における検査処理において、画像上における第1部材1001、第2部材1002の各基準交点110を用いて推定した仮想平面への射影変換行列を用いることで、画像情報における任意の点の実空間(仮想平面)での座標を推定できる。また、計測用マーカ4の実際の大きさと、画像上での計測用マーカ4の大きさ(画素数)とを用いて、実際の距離と画像情報の単位距離(たとえば一画素)の大きさとの比率を算出できる。そして、特定した座標間の距離と、比率とを用いて、鉄筋の径、配置間隔を算出できる。
【0067】
なお、本発明では非矩形状の計測用マーカ4を用いることが好ましいが、従来の矩形型の計測用マーカ4に表示部1003を備えた場合であっても適用可能である。
【0068】
そこで、配筋検査を行う建設現場では、配筋検査を行う箇所に、本発明の計測用マーカ4を設置する(S110)。そして、撮影を行う者は、可搬型通信端末3から所定の操作を行うことで、
図12に示す工事選択画面から工事を選択し、また
図13に示すフロア選択画面からフロアを選択する。また、
図14に示す検査箇所選択画面から検査箇所を選択し、
図15に示す検査項目選択画面から検査項目を選択する。そして
図15の検査項目選択画面から、所定の撮影を行う画面を行うことで、可搬型通信端末3の可搬型通信端末3が起動するので、計測用マーカ4を含み、配筋検査箇所を可搬型通信端末3で撮影する撮影処理を実行する(S120)。
【0069】
撮影処理は、たとえば以下のように実行をする。
【0070】
可搬型通信端末3と計測用マーカ4とは所定の操作を行うことで、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fiなどの所定の通信方法、たとえば近距離無線通信によって、通信の接続を確立する(S200)。この際に、計測用マーカ4の識別情報を受け付けてもよい。
【0071】
可搬型通信端末3と計測用マーカ4との間で通信の接続が確立後、可搬型通信端末3はインターネットなどを介して管理端末2に対して、認証情報の発行要求を送る(S210)。この際に計測用マーカ4の識別情報、可搬型通信端末3に備えた位置測位装置(GPS装置)などで測位した位置情報、可搬型通信端末3に備えた計時装置(時計機能)などで取得した日時情報などの一部または全部を合わせて送ってもよい。
【0072】
認証情報の発行要求を受け付けた管理端末2の認証情報発行処理部22は、認証情報を生成する(S220)。この際の認証情報としては一意な情報であることが好ましく、計測用マーカ4の識別情報、位置情報、日時情報などを用いて生成した認証情報であってもよい。また認証情報はコード化されていてもよい。認証情報発行処理部22は、生成した認証情報を認証情報記憶部23に記憶させる。また、当該可搬型通信端末3に生成した認証情報を送る。なお、この際に、計測用マーカ4に直接、認証情報を送っていてもよい。
【0073】
管理端末2からの認証情報を受け付けた可搬型通信端末3の認証情報処理部30は、受け付けた認証情報を計測用マーカ4に送る(S230)。
【0074】
計測用マーカ4は、管理端末2または可搬型通信端末3から送られた認証情報を認証情報受付処理部40で受け付けると、表示処理部41が受け付けた認証情報1004を表示部1003に表示させる。認証情報1004を表示部1003に表示した状態の計測用マーカ4の一例を
図8に示す。
【0075】
そして可搬型通信端末3の保有者は、計測用マーカ4を含めて配筋検査箇所を、当該可搬型通信端末3で撮影する(S240)。撮影する状態の一例を
図16に示す。
【0076】
可搬型通信端末3の撮影装置で、計測用マーカ4を含めて配筋検査箇所を撮影すると、判定処理部31は、撮影した画像情報から計測用マーカ4の表示部1003に写る認証情報1004を読み取り、管理端末2から受け付けた認証情報と一致するかを判定する(S250)。
【0077】
認証情報と一致していない場合には、可搬型通信端末3において、たとえば「認証情報が一致していません」などのエラーを通知し(S270)、再度、計測用マーカ4を撮影するように促してもよい。また、かかる不一致を判定した場合、あるいは複数回連続して判定した場合には、判定処理部31は、管理端末2に対して、正常に計測用マーカ4の撮影が行われていないことを通知して、管理端末2の管理者側で異常の発生を認識可能としてもよい。
【0078】
また、かかる通知を管理端末2で受け付けると、管理端末2の認証情報発行処理部22が、再度、異なる認証情報を自動的に発行し、可搬型通信端末3または計測用マーカ4に対して送り、異なる認証情報1004で撮影を行うように促してもよい。この場合には、上述のS220以降の処理を再度実行すればよい。
【0079】
一方、S250において撮影した画像情報に写る計測用マーカ4の表示部1003に写る認証情報1004と、管理端末2から受け付けた認証情報とが一致することを判定した場合には、認証情報を用いて所定の方法で算出した識別情報、たとえばハッシュ値と、可搬型通信端末3で撮影した画像情報とを管理端末2に送る(S130、S260)。
【0080】
可搬型通信端末3で撮影した画像情報とハッシュ値は、所定の操作によって、所定の記憶領域、たとえば認証情報記憶部23にアップロードされ、発行した認証情報に対応づけて記憶される。上述の流れによって、撮影した画像情報は、工事、フロア、検査箇所、検査項目と特定されているので、どの検査箇所の検査項目かを対応づけて、記憶させることができる。アップロードされた画像情報は、管理端末2の画像情報入力受付処理部24で入力を受け付け、レンズ歪み、射影変換などの所定の画像変換処理を実行し、画像情報を正対した位置となるように画像補正処理を実行しておくとよい。画像補正処理を実行するタイミングは画像情報を用いて検査処理を行う前であればどのようなタイミングであってもよい。
【0081】
以上のようにして配筋検査箇所の画像情報がアップロードされることで、所定の担当者、好ましくは、建設現場ではない建設会社の担当者が配筋検査処理を実行することができる(S140)。
【0082】
配筋検査を行う担当者は、所定のタイミングで、所定のコンピュータから管理端末2にアクセスをして
図17に示すような工事選択画面から工事を選択する。そして
図18に示すフロア選択画面からフロアを選択し、
図19に示す検査箇所選択画面から検査箇所を選択する。また
図20に示す検査項目選択画面から検査項目を選択して所定の操作を行うことで、その操作を管理端末2の検査処理部25で受け付けて、検査処理を実行する。すなわち、配筋検査を行う検査箇所の画像情報の選択を受け付け(S300)、その画像情報を用いた検査処理を検査処理部25が実行する。選択された画像情報の一例を
図21に示す。
【0083】
検査処理部25は、S300で選択された画像情報において、計測対象とする少なくとも2点の特定を受け付ける(S310)。計測対象の2点は、たとえば担当者が計測対象とする鉄筋の幅方向の両端(径)、鉄筋間隔を計測するための隣接する鉄筋の隣り合う端同士(配置間隔)を特定し、その入力を受け付ける。たとえば計測箇所とする2点をわかりやすくするため、2点に直線を引き計測箇所を明確にしてもよい。
【0084】
そして検査処理部25は、上述のように、画像情報における計測用マーカ4の各基準交点110から推定した実空間(仮想平面)に座標変換するための射影変換行列を用いて、S310で特定を受け付けた計測箇所の2箇所、たとえば鉄筋の幅方向の両端(径)の実空間(仮想平面)における座標値を推定する(S320)。そして推定した2箇所の座標値を用いて、検査処理部25は鉄筋に関する計測を実行する(S330)。たとえば、この2座標間の距離を算出することで、鉄筋の径を算出する。また各鉄筋の端部同士、たとえば隣り合う鉄筋の右端部の座標と、左端部の座標との距離を算出することで、鉄筋の配置間隔を算出する。これを模式的に示すのが
図22の画面である。
【0085】
そして検査処理部25は、S330で計測した結果と、検査情報記憶部21に記憶した配筋検査情報とを比較し、それが許容値内であるかを比較して、合否判定を行う(S340)。合否判定は、検査処理部25が自動的に行ってもよいし、S330の計測結果と、検査情報記憶部21に記憶した配筋検査情報とを画面上に表示させることで、人間が合否判定を行い、その結果の入力を受け付けてもよい。合否判定の結果は、検査情報記憶部21に、当該配筋検査情報に対応づけて、配筋検査の結果の情報として記憶させる。
【0086】
なお、検査処理部25における検査処理、とくに計測用マーカ4を用いて計測箇所の計測を行う処理は、各種の公知技術を用いることができる。
【0087】
検査処理部25は、計測対象とする少なくとも2点の特定について、担当者から入力を受け付けるほか、自動的に特定をしてもよい。たとえば、画像情報を入力値とし、機械学習した学習モデルに入力することで計測対象とする少なくとも2点を特定してもよい。この場合、中間層が多数の層からなるニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化された学習モデルに対して、S300で選択された画像情報を入力し、出力値として計測対象とする2点を出力するように構成してもよい。また学習モデルとしては、さまざまな画像情報から、計測対象とする少なくとも2点を特定した画像情報を正解データ(学習データ)として与えたものを用いることができる。
【0088】
検査処理部25は、担当者が特定した、または自動的に特定をした計測対象とする少なくとも2点の計測について、画像情報を入力値とし、機械学習した学習モデルに入力することで計測対象の2点間の幅や距離などの計測を行ってもよい。この場合、中間層が多数の層からなるニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化された学習モデルに対して、S300で選択された画像情報と計測対象となる少なくとも2点を入力し、出力値として計測対象とする2点の幅や距離などの計測値を出力するように構成してもよい。また学習モデルとしては、計測用マーカ4が写り込んださまざまな画像情報から、計測対象とする少なくとも2点の幅や距離などを正解データ(学習データ)として与えたものを用いることができる。検査処理部25は、計測対象とする少なくとも2点と、その幅や距離などの計測について、一連の処理として自動的に実行してもよい。
【0089】
以上のような処理を実行することで、配筋検査を容易に行うことができる。また、計測用マーカ4の表示部1003に認証情報1004が表示され、それが画像情報に写し込まれており、認証情報を用いたハッシュ値などの所定の識別情報が、配筋検査箇所を写した画像情報と対応づけて記憶されているので、計測用マーカ4自体に対する不正も行いにくい。そのため、計測用マーカ4を用いた配筋検査に対する信頼性を確保することもできる。
表示部1005は、表示部1003の基板1003aと、回転機構1003b、1003cとを備えており、回転機構1003b、1003cを介して計測用マーカ4に設置されている。回転機構1003bは計測用マーカ4の第1部材1001に固定的に取り付けられている。回転機構1003cは表示部1003の基板1003aの背面側において固定的に取り付けられている。また回転機構1003b、1003cは任意の角度で表示部1003を回転し保持する機構であって、たとえば1度ごと、5度ごと、10度ごとなど任意の角度ごとの凹部、凸部を備え、それらがかみ合うことで任意の角度に表示部1003の基板1003aを回転させることができる。
計測用マーカ4では自動的に表示部1003を回転させてもよい。すなわち認証情報受付処理部40で可搬型通信端末3から認証情報としての角度を受け付けると、表示処理部41が回転機構1003b、1003cを受け付けた角度に自動的に回転させる。
実施例1と同様に検査対象箇所で表示部1003が回転された計測用マーカ4を写し込むように画像情報が撮影され、判定処理部31はその画像情報に基づいて、表示部1003の回転角度を判定する。この角度が管理端末2から受け付けた認証情報としての角度であるかを判定し、認証情報の一致、不一致を判定してもよい。
本実施例のように、異なる認証情報を表示するのではなく、角度を認証情報としてもよい。また、実施例1と実施例2とを組み合わせ、認証情報を発行し、表示部1003で表示する認証情報1004の表示角度を変更してもよい。