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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147436
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】投影装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/23 20240101AFI20241008BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20241008BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20241008BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G09G5/00 510Z
G09G5/00 550C
G09G5/37 200
G09G5/00 550B
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060452
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA36
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD13
5C182AA04
5C182AA05
5C182AB15
5C182AB25
5C182AB31
5C182BA14
5C182BA25
5C182BA29
5C182BA56
5C182CA21
5C182CA32
5C182CA34
5C182CB03
5C182CB41
5C182DA52
5C182DA65
(57)【要約】
【課題】投影装置による虚像表示の視認性を改善する。
【解決手段】車両8の前方位置の所定領域に、実際に存在する外景に重なるように虚像7を表示するヘッドアップディスプレイ装置2を制御する装置であり、虚像7として表示される情報映像を変更する表示制御部31を備え、表示制御部31は、外景を含む所定領域の撮像データの入力を受け、虚像7の背景となる領域(10)を区分した部分(10a)各々に関する撮像データの特性に基づいて、部分(10a)ごとに、虚像7の視認性が低下する状況であるか否かを判断し、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された部分(10a)の位置又は近傍位置に虚像7として表示される情報映像を視認性を向上させる加工が施された情報映像に変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の前方位置の所定領域に、実際に存在する外景に重なるように虚像を表示する投影装置を制御する装置であり、
前記虚像として表示される情報映像を変更する表示制御部を備え、
前記表示制御部は、
前記外景を含む前記所定領域の撮像データの入力を受け、
前記虚像の背景となる領域を区分した部分各々に関する前記撮像データの特性に基づいて、前記部分ごとに、前記虚像の視認性が低下する状況であるか否かを判断し、
前記虚像の視認性が低下する状況であると判断された前記部分の位置又は近傍位置に前記虚像として表示される前記情報映像を視認性向上加工が施された情報映像に変更する、
ことを特徴とする投影装置の制御装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記虚像として表示される前記情報映像を、前記虚像の視認性の低下の程度に応じて前記視認性向上加工の度合いが異なる情報映像に変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の投影装置の制御装置。
【請求項3】
前記視認性向上加工が、前記情報映像に対する縁取り加工であり、
前記表示制御部は、前記虚像として表示される前記情報映像を、前記虚像の視認性の低下の程度が大きいほど縁取りの幅が大きい情報映像に変更する、
ことを特徴とする請求項2に記載の投影装置の制御装置。
【請求項4】
前記視認性向上加工が、前記情報映像に対する縁取り加工であり、
前記表示制御部は、
前記虚像の視認性を前記虚像の背景となる領域の前記部分ごとの明るさに基づいて判断し、
前記虚像として表示される前記情報映像を、前記部分ごとの明るさが暗いほど縁取りの幅が大きい情報映像に変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の投影装置の制御装置。
【請求項5】
前記移動体の速度に応じて、前記視認性向上加工が施された情報映像への変更を行う際の待ち時間が設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の投影装置の制御装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記移動体の操舵角に基づいて右左折をしていると判断されるときは前記視認性向上加工が施された情報映像への変更を行わない、
ことを特徴とする請求項1に記載の投影装置の制御装置。
【請求項7】
前記視認性向上加工が施された情報映像への変更が行われた後に視認性向上加工が施されていない情報映像に戻す際の待ち時間が設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の投影装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置として、映像データを生成する映像データ生成部と、映像データ生成部によって生成された映像データに基づいた映像を含む光束を移動体のフロントガラス部に反射させて移動体に搭乗する観視者に向けて投影する映像投影部と、を備える表示装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-121401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヘッドアップディスプレイの表示において注意喚起の警告表示に赤色を使用することで運転者が危険を認識し易くなるものの、夜間渋滞時の密集走行時、前方車のブレーキランプ点灯時、また、夕暮れ時など、運転状況によっては情報の視認性が低下する、という問題がある。また、赤(R)、緑(G)、及び青(B)の3色光源の使用時に赤色光源の故障や劣化などによる出力低下が発生すると、運転者が警告内容を視認することができない場合がある、という問題がある。
【0005】
そこで本発明は、1つの側面では、投影装置による虚像表示の視認性を改善することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る投影装置の制御装置は、移動体の前方位置の所定領域に、実際に存在する外景に重なるように虚像を表示する投影装置を制御する装置であり、前記虚像として表示される情報映像を変更する表示制御部を備え、前記表示制御部は、前記外景を含む前記所定領域の撮像データの入力を受け、前記虚像の背景となる領域を区分した部分各々に関する前記撮像データの特性に基づいて、前記部分ごとに、前記虚像の視認性が低下する状況であるか否かを判断し、前記虚像の視認性が低下する状況であると判断された前記部分の位置又は近傍位置に前記虚像として表示される前記情報映像を視認性向上加工が施された情報映像に変更する、ようにしてもよい。
【0007】
本発明に係る投影装置の制御装置について、前記表示制御部は、前記虚像として表示される前記情報映像を、前記虚像の視認性の低下の程度に応じて前記視認性向上加工の度合いが異なる情報映像に変更する、ようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る投影装置の制御装置は、前記視認性向上加工が、前記情報映像に対する縁取り加工であり、前記表示制御部は、前記虚像として表示される前記情報映像を、前記虚像の視認性の低下の程度が大きいほど縁取りの幅が大きい情報映像に変更する、ようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る投影装置の制御装置は、前記視認性向上加工が、前記情報映像に対する縁取り加工であり、前記表示制御部は、前記虚像の視認性を前記虚像の背景となる領域の前記部分ごとの明るさに基づいて判断し、前記虚像として表示される前記情報映像を、前記部分ごとの明るさが暗いほど縁取りの幅が大きい情報映像に変更する、ようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る投影装置の制御装置は、前記移動体の速度に応じて、前記視認性向上加工が施された情報映像への変更を行う際の待ち時間が設定される、ようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る投影装置の制御装置について、前記表示制御部は、前記移動体の操舵角に基づいて右左折をしていると判断されるときは前記視認性向上加工が施された情報映像への変更を行わない、ようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る投影装置の制御装置は、前記視認性向上加工が施された情報映像への変更が行われた後に視認性向上加工が施されていない情報映像に戻す際の待ち時間が設定される、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1つの側面では、投影装置による虚像表示の視認性を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置を含む、実施の形態における車両情報投影システムの構成を説明する図である。
図2】車両の乗員が運転席で視認する虚像を含む前景の例を説明する図である。
図3】車両の乗員が運転席で視認する虚像を含む前景の例を説明する図である。
図4】視認性向上加工の度合いを変化させる場合の虚像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。本発明の説明では、各図中に示すように3次元直交座標系の各軸に沿って、虚像7を視認する乗員9を基準として前後、左右、及び上下の各方向を定義するとともに、矢印の向きに従って前向き/後向き、右向き/左向き、及び上向き/下向きを定義する。なお、前向きが、虚像7を視認する乗員9の視線の向きである。
【0016】
(全体構成・機能構成)
図1は、本発明に係る投影装置の制御装置の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置3(単に「表示制御装置3」とも表記する)を含む、実施の形態における車両情報投影システム1の構成を説明する図である。図2及び図3は、車両8の乗員9が運転席で視認する虚像7を含む前景の例を説明する図である。
【0017】
車両情報投影システム1は、車両8の風防ガラスであるフロントガラス82に投影するアイコンや数値等の画像を生成する画像描画制御を備えた、車載用のヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置を含む投影システムである。
【0018】
車両情報投影システム1は、ヘッドアップディスプレイ装置2と、表示制御装置3と、情報取得部4と、を有し、車両8のダッシュボード81などに設置される。図に示す例では、ヘッドアップディスプレイ装置2は、車両8のダッシュボード81に入れ込まれて設置されている。ヘッドアップディスプレイ装置2、表示制御装置3、及び情報取得部4は、一体の物(具体的には、1個の筐体)として構成されてもよく、或いは、相互に別体の物(具体的には、2個以上の筐体)として構成されてもよい。
【0019】
ヘッドアップディスプレイ装置2は、虚像7を表す表示光21を車両8のフロントガラス82に投影し、車両8の運転者などの乗員9に虚像7を視認させる投影装置である。
【0020】
ヘッドアップディスプレイ装置2は、表示光21を生成して車両8のフロントガラス82へと向けて出射する。表示光21は、フロントガラス82で反射し、車両8の乗員9によって視認される。乗員9は、フロントガラス82の前方位置に(言い換えると、フロントガラス82よりも前方にあるかのように)、虚像7を視認する。虚像7は、車両8のフロントガラス82の前方位置の所定領域(尚、空間中の仮想的な領域である)に表示され、例えば、ステアリング83の上方を通して目視されるフロントガラス82の前方位置の所定領域に表示される。
【0021】
本発明におけるヘッドアップディスプレイ装置2の基本的な構造は従来と同様の周知の構造であってよいので詳しい説明は省略するが、概要としては、ヘッドアップディスプレイ装置2は、虚像7に係る表示光21を出射する投影手段と、投影手段から出射された表示光21を車両8のフロントガラス82の所定箇所へと向ける凹面鏡と、を備える。
【0022】
投影手段は、表示制御装置3から出力されて入力される信号に基づいて、所望の情報映像を表示する表示手段を有する。表示手段は、情報映像を表す表示光21を凹面鏡に向けて出射する。凹面鏡は、反射膜を有し、表示手段から出射された表示光21をフロントガラス82へと向けて反射する。そして、表示光21は、凹面鏡によりフロントガラス82の所定箇所に投影され、フロントガラス82の所定箇所において反射し、フロントガラス82の前方位置の所定領域において情報映像に係る虚像7を乗員9に視認させる。
【0023】
乗員9は、車両8のフロントガラス82の前方に実際に存在する外景を視認しつつ、ヘッドアップディスプレイ装置2によって生成されて表示される虚像7を視認する。乗員9は、すなわち、車両8のフロントガラス82の前方に実際に存在する外景を背景として、当該外景と、ヘッドアップディスプレイ装置2によって生成されて表示される虚像7と、の双方を同時に視認する。
【0024】
車両8のフロントガラス82の所定箇所に表示光21が投影されて乗員9に視認される虚像7(言い換えると、情報映像)は、あくまで例として挙げると、例えば、案内経路映像7A、注意喚起映像7B、及び運行状態映像7Cを含む。
【0025】
案内経路映像7Aとして、例えば、乗員9などによって予め設定された目的地までの経路として探索された順路が、車両8の外界の車線(即ち、実際に存在する外景)に重畳して経路誘導として表示される。案内経路映像7Aとして、図に示す例では、右折案内マーク(アイコン)及び右折までの距離(数値)が表示されている。
【0026】
注意喚起映像7Bとして、例えば、前方状況取得部41によって認識された、車両8の車線上に在る物体(具体的には例えば、前方車両、障害物)に対する注意喚起が、当該物体(即ち、実際に存在する外景)の近傍に重畳して衝突警告として表示される。ただし、注意喚起映像7Bは、衝突警告には限定されない。注意喚起映像7Bとして、図に示す例では、注意喚起マーク(アイコン)及び注意喚起メッセージ(文字)が表示されている。
【0027】
運行状態映像7Cとして、例えば、車両8が現在走行している車線についての制限速度や、車両状況取得部42(具体的には、車速センサ)によって取得されて出力されたり車両ECU(Electronic Control Unit)5から出力されたりした車両8の現在の速度が、車両8の外界の車線(即ち、実際に存在する外景)に重畳して表示される。運行状態映像7Cとして、図に示す例では、制限速度標識マーク(アイコン)及び車両8の現在の速度(数値)が表示されている。
【0028】
表示制御装置3は、情報取得部4や車両ECU5から出力されて入力される情報などに基づいて、ヘッドアップディスプレイ装置2の表示を制御する。
【0029】
表示制御装置3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどを備える回路で構成されるMCU(Micro Controller Unit)であり、メモリに記憶されているプログラムをCPUが実行することによって種々の機能を実現する。
【0030】
表示制御装置3は、ヘッドアップディスプレイ装置2、情報取得部4、及び車両ECU5と、CAN(Controller Area Network)バス通信などの通信回線6を介して、信号の伝達が可能であるように接続される。
【0031】
表示制御装置3は、ヘッドアップディスプレイ装置2の投影手段などを制御し、フロントガラス82の所定箇所に表示光21を投影させる。表示制御装置3は、表示制御部31と、画像メモリ32と、記憶部33とを含む。
【0032】
表示制御部31は、情報取得部4や車両ECU5から出力されて入力される情報などに基づいて、画像メモリ32から映像データを読み出す。そして、表示制御部31は、ヘッドアップディスプレイ装置2の投影手段の表示手段に表示させる情報映像に係るデータ信号を生成し、生成した情報映像に係るデータ信号をヘッドアップディスプレイ装置2(具体的には、投影手段)に対して出力する。
【0033】
表示制御部31は、ヘッドアップディスプレイ装置2の投影手段の動作を制御し、投影手段の表示手段に所望の情報映像を表示させる。
【0034】
画像メモリ32には、虚像7として表示される情報映像が、表示制御部31によって読み出される映像データとして保存される。
【0035】
記憶部33には、表示制御部31による、虚像7として表示される情報映像の投影の制御において使用される、色に関する閾値や色に関する値の範囲などが予め記憶される。
【0036】
情報取得部4は、車両8に関する車両情報や車両8の周辺の車外状況などを取得する。情報取得部4は、前方状況取得部41と、車両状況取得部42と、を備える。
【0037】
前方状況取得部41は、車両8の前方の状況を把握し、把握した車両8の前方の状況を表示制御装置3に対して出力する。
【0038】
前方状況取得部41は、車両8の前方を撮像する撮像部411と、撮像部411で取得された撮像データを解析する画像解析部412と、車両8の前方の照度を計測する照度センサ413と、を備える。
【0039】
撮像部411は、例えばダッシュボード81の前面側やインナーミラー(図示していない)の前面側に取り付けられて、車両8が走行している道路を含む(また、虚像7が表示される、車両8のフロントガラス82の前方位置の所定領域を含む)前方領域を撮像する。撮像部411は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を含むデジタルカメラによって構成される。撮像部411は、ステレオカメラとして構成されてもよい。
【0040】
そして、撮像部411は、車両8の前方領域の撮像によって得られた撮像データを画像解析部412へと伝送し、画像解析部412は、撮像部411から伝送された撮像データを画像解析する。
【0041】
画像解析部412は、画像解析によって得られた車両8の前方領域の状況に関する解析データを表示制御装置3(具体的には、表示制御部31)に対して出力する。
【0042】
照度センサ413は、例えばダッシュボード81の前面側やインナーミラー(図示していない)の前面側に取り付けられて、車両8の前方(具体的には、虚像7が表示される、車両8のフロントガラス82の前方位置の所定領域)の照度を計測する。そして、照度センサ413は、車両8の前方の照度の計測によって得られた照度の情報を表示制御装置3(具体的には、表示制御部31)に対して出力する。
【0043】
車両状況取得部42は、車両8の状況を把握し、把握した車両8の状況を表示制御装置3に対して出力する。車両状況取得部42による車両8の状況の取得は、例えば、車両ECU5の制御のもと、車両ECU5に接続された各種のセンサなどの情報取得デバイスにより行われる。
【0044】
これらの情報取得デバイスとして、例えば、車速センサ、操舵角センサ、車内カメラなどのデバイスが挙げられる。
【0045】
車速センサは、車両8の速度を検出し、検出された車両8の速度の情報を車両状況取得部42に対して出力する。
【0046】
操舵角センサは、車両8の操舵角(即ち、車両8の操舵輪の角度)を検出し、検出された車両8の操舵角の情報を車両状況取得部42に対して出力する。操舵角センサは、ステアリング83の回転角度を検出して出力するようにしてもよい。
【0047】
車内カメラは、乗員9の顔を撮像して乗員9の顔の撮像データを取得し、取得した乗員9の顔の撮像データを車両状況取得部42に対して出力する。
【0048】
車両状況取得部42は、車速センサによって検出された車両8の速度の情報、操舵角センサによって検出された車両8の操舵角の情報、及び、車内カメラによって取得された乗員9の顔の撮像データを表示制御装置3(具体的には、表示制御部31)に対して出力する。
【0049】
車両ECU5は、車両8を総合的に制御するECUであり、車両8に搭載される様々なセンサ(図示していない)や機器などから出力されて入力される信号に基づいて、ヘッドアップディスプレイ装置2に投影させる情報映像の種別を決定する。車両ECU5は、決定した情報映像の種別の指示データを表示制御装置3に対して出力することで、表示制御装置3がヘッドアップディスプレイ装置2に所望の情報映像を投影させる。車両ECU5による情報映像の種別の決定の仕法は、従来と同様の周知の仕法であってよく、また、本発明においては特定の仕法には限定されないので詳しい説明は省略する。
【0050】
(制御内容)
実施の形態に係る表示制御装置3は、車両8の前方位置の所定領域に、実際に存在する外景に重なるように虚像7を表示するヘッドアップディスプレイ装置2を制御する装置であり、虚像7として表示される情報映像を変更する表示制御部31を備え、表示制御部31は、外景を含む所定領域の撮像データの入力を受け、虚像7の背景となる領域(10)を区分した部分(10a)各々に関する撮像データの特性に基づいて、部分(10a)ごとに、虚像7の視認性が低下する状況であるか否かを判断し、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された部分(10a)の位置又は近傍位置に虚像7として表示される情報映像を視認性を向上させる加工が施された情報映像に変更する、ようにしている。
【0051】
表示制御装置3の表示制御部31は、ヘッドアップディスプレイ装置2によって表示される虚像7(言い換えると、情報映像)が重畳される背景(即ち、実際に存在する外景)となる車両8の前方の状況に応じて、乗員9が虚像7を視認しづらい箇所、すなわち虚像7の視認性が低下する箇所を特定し、この箇所に重なって表示される虚像7の視認性が向上するように表示を制御する。なお、虚像7として表示される情報映像の種別は、車両ECU5から出力されて入力される情報映像の種別の指示データに基づいて決定され、本発明では所与のものとして扱う。
【0052】
表示制御部31は、例えば、先行車のテールランプ、ブレーキ灯、及び方向指示灯などの強い光や、朝焼け夕暮れの太陽光などの、虚像7の背景に含まれる光と、虚像7(情報映像)との明度の近似度合いや、虚像7の背景に含まれる光の色と、虚像7(情報映像)の色との近似度合いに基づいて、虚像7が表示される箇所の背景と虚像7との関係による、虚像7の表示領域おける少なくとも部分的な視認性の低下箇所を特定する。
【0053】
情報取得部4の前方状況取得部41の撮像部411は、車両8の前方領域(尚、虚像7が表示される、車両8のフロントガラス82の前方位置の所定領域を含む)を撮像し、撮像によって得られた車両8の前方領域の撮像データを画像解析部412へと伝送する。
【0054】
画像解析部412は、所定時間(例えば、0.05~1秒程度)ごとに、撮像部411から伝送された撮像データを画像解析し、画像解析によって得られた車両8の前方領域の状況に関する解析データを表示制御装置3の表示制御部31に対して出力する。
【0055】
画像解析部412は、具体的には、虚像7が表示される領域であって当該虚像7の背景となる領域(「背景領域10」と称する)を網の目状に区分(別言すると、分割)し、網の目10a各々に関する画像(撮像データ)の特性(言い換えると、虚像7の背景の特性)を計算する。図に示す例では、背景領域10を6行10列の合計60個の網の目10aに区分している。ただし、背景領域10の区分の仕方や網の目の個数は図に示す例に限定されるものではなく、行及び列の数や網の目の個数は任意である。
【0056】
網の目10a各々に関する画像(撮像データ)の特性として、例えば、撮像部411がCCDやCMOSなどの撮像素子を含むデジタルカメラによって構成される場合、網の目10a各々に対応する(言い換えると、網の目10a各々に含まれる)画素ごとの赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)、色相(Hue)、彩度(Saturation)、及び明度(Value)のうちの少なくとも1つの要素についての、網の目10aごとの平均値が計算されるようにしてよい。
【0057】
網の目10aごとの平均値は、画像(撮像データ)の特性としての赤(R)、緑(G)、青(B)、色相(H)、彩度(S)、及び明度(V)のうちのいずれか1つの要素についての平均値でもよく、或いは、赤(R)、緑(G)、青(B)、色相(H)、彩度(S)、及び明度(V)のうちの2つ以上の要素の組合せ(尚、2つ以上の要素を組み合わせて生成される要素、指標を含む)に関する平均値でもよい。例えば、色相(H)と彩度(S)との組合せである色度の平均値でもよい。
【0058】
赤(R)、緑(G)、青(B)、色相(H)、彩度(S)、及び明度(V)のうちの少なくとも1つの要素としていずれの要素を使用するかは予め決められ、予め決められた要素が使用されて表示制御装置3の表示制御部31による処理が行われる。予め決められて表示制御装置3の表示制御部31による処理において使用される1つ又は複数の要素(尚、複数の要素を組み合わせて生成される要素、指標を含む)のことを「視認性評価要素」と称する。
【0059】
画像解析部412は、視認性評価要素について網の目10aごとの平均値を計算し、計算された網の目10aごとの視認性評価要素の平均値を表示制御装置3の表示制御部31に対して出力する。網の目10a各々に関する画像(撮像データ)の特性として計算される指標は、平均値に限定されるものではなく、網の目10aごとの中央値や、所定ピッチの頻度分布としたときの最頻値でもよい。
【0060】
表示制御装置3の表示制御部31は、車両ECU5から出力されて入力される情報映像の種別の指示データにおいて指定されている情報映像の種別についての視認性評価要素の値を取得する。
【0061】
情報映像の種別ごとの視認性評価要素の値は、例えば、当該の情報映像の外縁部分についての視認性評価要素の平均値でもよく、或いは、当該の情報映像のうちの色彩が付与されている図形や文字などの絵柄部分についての視認性評価要素の平均値でもよく、或いは、当該の情報映像の全体についての視認性評価要素の平均値でもよい。
【0062】
情報映像の種別ごとの視認性評価要素の値は、情報映像の映像データとともに画像メモリ32に予め記憶されるようにしてもよく、或いは、情報映像の種類ごとに記憶部33に予め記憶されるようにしてもよい。
【0063】
表示制御装置3の表示制御部31は、網の目10aごとに、画像解析部412から出力されて入力された当該の網の目10aについての視認性評価要素の平均値と、車両ECU5から出力されて入力された情報映像の種別の指示データにおいて指定されている情報映像の種別についての視認性評価要素の値とを対比し、情報映像が虚像7として表示されたときの当該虚像7の視認性が低下する状況であるか否かを判断する。
【0064】
表示制御装置3の表示制御部31は、網の目10aについての視認性評価要素の平均値と情報映像の種別についての視認性評価要素の値とを対比する際に、記憶部33に予め記憶されている色に関する閾値又は色に関する値の範囲を読み出し、読み出した色に関する閾値や色に関する値の範囲を参照して、虚像7の視認性が低下する状況であるか否かを判断するようにしてよい。
【0065】
色に関する閾値や色に関する値の範囲は、視認性評価要素に応じて、虚像7の視認性が低下する状況を判断しうるように予め設定される。
【0066】
例えば、視認性評価要素として色度が使用される場合は、色に関する閾値として色度の差に関する閾値が設定される。そして、表示制御部31は、網の目10aごとに、当該の網の目10aについての色度の平均値と情報映像についての色度の値との差(絶対値)を計算し、計算された差が色度の差に関する閾値よりも小さいとき、当該の網の目10aについて、情報映像が虚像7として表示されたときの当該虚像7の視認性が低下する状況であると判断するようにしてよい。
【0067】
また、視認性評価要素として明度(V)が使用される場合は、色に関する閾値として明度(V)の差に関する閾値が設定される。そして、表示制御部31は、網の目10aごとに、当該の網の目10aについての明度(V)の平均値と情報映像についての明度(V)の値との差(絶対値)を計算し、計算された差が明度(V)の差に関する閾値よりも小さいとき、当該の網の目10aについて、情報映像が虚像7として表示されたときの当該虚像7の視認性が低下する状況であると判断するようにしてよい。
【0068】
あるいは、視認性評価要素として明度(V)が使用される場合に、色に関する値の範囲として明度(V)に関する値の範囲が設定されるようにしてもよい。そして、表示制御部31は、網の目10aごとに、当該の網の目10aについての明度(V)の平均値が明度(V)に関する値の範囲に入っていないとき、当該の網の目10aについて、情報映像が虚像7として表示されたときの当該虚像7の視認性が低下する状況であると判断するようにしてよい。この場合は、すなわち、情報映像の特性(具体的には、情報映像についての視認性評価要素の値)に関係なく、背景領域10が明るすぎたり暗すぎたりする場合は虚像7の視認性が低下するとの考え方に基づき、背景領域10の網の目10aごとの明度(V)のみに基づいて、虚像7の視認性が低下する状況であるか否かが判断される。
【0069】
表示制御部31は、1つの視認性評価要素に関する条件が設定されて当該1つの視認性評価要素に関する条件が満たされるときに虚像7の視認性が低下する状況であると判断するようにしてもよく、或いは、複数の視認性評価要素に関する条件が設定されてこれら複数の視認性評価要素に関する条件のうちの少なくとも1つが満たされるときに虚像7の視認性が低下する状況であると判断するようにしてもよく、或いは、複数の視認性評価要素に関する条件が設定されてこれら複数の視認性評価要素に関する条件のすべてが満たされるときに虚像7の視認性が低下する状況であると判断するようにしてもよい。
【0070】
表示制御装置3の画像メモリ32には、表示制御部31によって読み出される映像データ(即ち、虚像7として表示される情報映像のデータ)として、表示制御部31が虚像7の視認性が低下する状況ではないと判断した場合に読み出される映像データ(「通常映像データ」と称する)と、表示制御部31が虚像7の視認性が低下する状況であると判断した場合に読み出される映像データ(「強調映像データ」と称する)と、が保存されている。画像メモリ32には、すなわち、情報映像の種別それぞれについて、通常映像データと強調映像データとの組合せが保存される。
【0071】
強調映像データは、通常映像データと比べて背景領域10との差異を大きくして情報映像が虚像7として表示されたときの当該虚像7の視認性が向上するように通常映像データが加工(「視認性向上加工」と称する)された情報映像のデータである。
【0072】
強調映像データとして、例えば、下記のア乃至ウのような視認性向上加工が施された情報映像のデータが挙げられる。
ア)通常映像データに対して縁取り加工が施された情報映像のデータ。
イ)通常映像データに対して色を変更する加工が施された情報映像のデータ。
ウ)通常映像データに対して色を変更する加工及び縁取り加工が施された情報映像のデータ。
【0073】
通常映像データに対する縁取り加工は、例えば、所定の色で通常映像データの図形や文字など(絵柄部分)が縁取られることによって行われるようにしてもよく、或いは、通常映像データの図形や文字などのもとの色(つまり、縁取りを行う部分の色)と同じ色で通常映像データの図形や文字などが縁取られることによって行われる(言い換えると、通常映像データの図形や文字などのもとの色と同じ色の太線や太字で表示される)ようにしてもよい。縁取り加工が所定の色で行われる場合の色は、特定の色には限定されないものの、例えば、白色が用いられてもよく、或いは、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された背景領域10の網の目10aの色(例えば、網の目10aについての色度の平均値)と補色の関係にある色又は補色の関係に近い色が用いられてもよい(この場合、情報映像の種別それぞれについて、強調映像データとして、縁取りの色が相互に異なる複数の映像データが画像メモリ32に保存される)。
【0074】
通常映像データに対する縁取り加工は、また、通常映像データ(即ち、情報映像のデータ)単位で一様に行われるようにしてもよく、或いは、背景領域10の網の目10aごとの虚像7の視認性の変化の態様に合わせて、言い換えると、虚像7の視認性の変化の向きに沿って、縁取り加工の度合いである例えば縁取りの太さが段階的に変化する(即ち、グラデーション)ようにしてもよい。この場合、情報映像の種別それぞれについて、強調映像データとして、段階的な変化(グラデーション)の向きごとに、縁取り加工の度合いが段階的に変化する複数の映像データが画像メモリ32に保存される。
【0075】
通常映像データに対する色を変更する加工は、例えば、通常映像データの図形や文字などのもとの色が、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された背景領域10の網の目10aの色(例えば、網の目10aについての色度の平均値)と補色の関係にある色又は補色の関係に近い色へと変更されることによって行われるようにしてもよい。この場合、情報映像の種別それぞれについて、強調映像データとして、図形や文字などの色が相互に異なる複数の映像データが画像メモリ32に保存される。通常映像データに対する色を変更する加工は、また、通常映像データの明るさの度合いを変えることによって行われるようにしてもよい。この場合、情報映像の種別それぞれについて、強調映像データとして、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された背景領域10の網の目10aの明るさ(例えば、網の目10aについての明度(V)の平均値)に応じて明るさの度合いが適当な映像データが強調映像データとして選択されるように、明るさの度合いが相互に異なる複数の映像データが画像メモリ32に保存される。
【0076】
通常映像データに対する色を変更する加工は、また、通常映像データ(即ち、情報映像のデータ)単位で一様に行われるようにしてもよく、或いは、背景領域10の網の目10aごとの明度(V)の変化の態様に合わせて、言い換えると、明度(V)の変化の向きに沿って、映像の明るさの度合いが段階的に変化する(即ち、グラデーション)ようにしてもよい。この場合は、情報映像の種別それぞれについて、強調映像データとして、段階的な変化(グラデーション)の向きごとに、映像の明るさの度合いが段階的に変化する複数の映像データが画像メモリ32に保存される。
【0077】
そして、表示制御部31は、虚像7の視認性が低下する状況ではないと判断した場合には、画像メモリ32から通常映像データを読み出す。これにより、通常映像データに基づく虚像7が表示される(図2(A)参照)。図2(B)は、背景領域10の網の目10a各々の虚像7の視認性の低下の有無(及び程度)を表し、「-」は虚像7の視認性が低下する状況ではないことを表している。なお、図2(A)中の符号11は道路上の白線(即ち、実際に存在する外景)である。また、図2(A)中の背景領域10の範囲及び区分(即ち、網の目10a)を示す破線は、説明のための仮想線であり、実際には表示されない。
【0078】
一方、表示制御部31は、虚像7の視認性が低下する状況であると判断した場合には、画像メモリ32から強調映像データを読み出す。これにより、強調映像データに基づく虚像7が表示される(図3(A)参照)。なお、図3(A)中の符号11は道路上の白線(即ち、実際に存在する外景)である。また、図3(A)中の背景領域10の範囲及び区分(即ち、網の目10a)を示す破線は、説明のための仮想線であり、実際には表示されない。
【0079】
このとき、表示制御部31は、背景領域10のうち虚像7の視認性が低下する状況であると判断された網の目10aの位置又は近傍位置に虚像7として表示される情報映像について、強調映像データを読み出すようにする。虚像7の視認性が低下する状況であると判断された網の目10aの近傍位置は、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された網の目10aの重心位置から予め定められた所定距離の範囲内に含まれる位置である。
【0080】
図3に示す例では、車両8の前方左側を走行している車両のテールランプ12(即ち、実際に存在する外景)が点灯して、背景領域10のうちの左上の網の目10aを中心として虚像7の視認性が低下する状況になっている。同図(B)は、背景領域10の網の目10a各々の虚像7の視認性の低下の有無及び程度を表し、「大」は虚像7の視認性の低下の程度が大きいことを表し、「小」は虚像7の視認性の低下の程度が小さいことを表し、「-」は虚像7の視認性が低下する状況ではないことを表している。
【0081】
図3に示す例では、同図(B)をふまえ、背景領域10のうち虚像7の視認性の低下の程度が大きい網の目10aの位置又は近傍位置である左部分に表示される注意喚起映像7Bが強調映像データに基づく虚像となっている一方で、背景領域10のうち虚像7の視認性の低下の程度が小さい又は視認性が低下する状況ではない網の目10aの位置又は近傍位置である中央部分に表示される案内経路映像7A及び右部分に表示される運行状態映像7Cは通常映像データに基づく虚像となっている。
【0082】
視認性の低下の程度に応じて、情報映像の強調の度合い、言い換えると情報映像の視認性向上加工の度合いが変化するようにしてもよい。例えば、図3に示す例において、同図(B)に従い、背景領域10のうち虚像7の視認性の低下の程度が大きい網の目10aの位置又は近傍位置である左部分に虚像7として表示される注意喚起映像7Bは、視認性向上加工の度合いが大きい(具体的には、縁取りの幅が大きい)強調映像データに基づく虚像(図4(C)の注意喚起映像7B参照)とされ、また、背景領域10のうち虚像7の視認性の低下の程度が小さい網の目10aの位置又は近傍位置である中央部分に虚像7として表示される案内経路映像7Aは、視認性向上加工の度合いが小さい(具体的には、縁取りの幅が小さい)強調映像データに基づく虚像とされ、さらに、背景領域10のうち虚像7の視認性が低下する状況ではない網の目10aの位置又は近傍位置である右部分に虚像7として表示される運行状態映像7Cは、通常映像データに基づく虚像(図4(A)の運行状態映像7C参照)とされるようにしてもよい。
【0083】
また、背景領域10の網の目10aごとの明度(V)のみに基づいて虚像7の視認性が低下する状況であるか否かを判断する場合などには、背景領域10が暗いほど、情報映像の強調の度合い、言い換えると情報映像の視認性向上加工の度合いが大きくなるようにしてもよい。例えば、背景領域10のうち非常に暗い網の目10aの位置又は近傍位置に虚像7として表示される情報映像は、視認性向上加工の度合いが大きい(具体的には、縁取りの幅が大きい)強調映像データに基づく虚像(図4(C)参照)とされ、また、背景領域10のうちやや暗い網の目10aの位置又は近傍位置に虚像7として表示される情報映像は、視認性向上加工の度合いが小さい(具体的には、縁取りの幅が小さい)強調映像データに基づく虚像(図4(B)参照)とされ、さらに、背景領域10のうち明るさが確保されている網の目10aの位置又は近傍位置に虚像7として表示される情報映像は、通常映像データに基づく虚像(図4(A)参照)とされるようにしてもよい。
【0084】
(選択的な構成1)
車両8の前方(具体的には、虚像7が表示される、車両8のフロントガラス82の前方位置の所定領域)の照度に基づいて、記憶部33から読み出された色に関する閾値や色に関する値の範囲が調節されるようにしてもよい。
【0085】
この場合は、表示制御装置3の表示制御部31に、所定時間(例えば、0.05~1秒程度)ごとに、情報取得部4の前方状況取得部41の照度センサ413から、当該照度センサ413によって計測された車両8の前方の照度の情報が入力される。
【0086】
表示制御部31は、例えば、照度センサ413から出力されて入力される車両8の前方の照度の情報に基づいて、車両8の前方(つまり、背景領域10)が明るいほど、虚像7の視認性が低下する状況であると判断する際の条件(具体的には例えば、色に関する閾値や色に関する値の範囲)を緩くして、強調映像データに基づく虚像7が表示され易くし、また、車両8の前方が暗いほど、虚像7の視認性が低下する状況であると判断する際の条件を厳しくして、強調映像データに基づく虚像7が表示され難くするようにしてもよい。
【0087】
(選択的な構成2)
車両8の速度が遅い場合は、速度が速い場合と比べて情報映像の見易さが安全性に与える影響は小さいと考えられ、速度が遅い場合に虚像7の強調を即時に行うと余計な視線誘導などを招いて煩わしさの原因ともなりうる。また、車両8の速度が速い場合は、車両8の前方の状況(つまり、背景領域10の状況)が頻繁に変化することにより、虚像7の視認性が一時的に低下することが頻繁に起こることも考えられる。そこで、車両8の速度に応じて、虚像7の視認性の低下への対応としての、通常映像データに基づく虚像7から強調映像データに基づく虚像7へと表示変更(「虚像7の強調表示」と称する)を行う際の待ち時間が設定されるようにしてもよい。虚像7の強調表示は、虚像7として表示される情報映像を、通常映像データから、視認性向上加工が施された強調映像データへと変更することでもある。
【0088】
この場合は、例えば、車両8の速度に関する低速閾値と高速閾値とが設定されて記憶部33に予め記憶される。
【0089】
また、表示制御装置3の表示制御部31に、所定時間(例えば、0.05~1秒程度)ごとに、情報取得部4の車両状況取得部42から、車速センサによって検出された車両8の速度の情報が入力される。
【0090】
そして、表示制御部31は、記憶部33に記憶されている車両8の速度に関する低速閾値を読み出し、読み出した低速閾値と入力された車両8の速度とを比較する。そして、虚像7の視認性が低下する状況であると判断されたときに、車両8の速度が低速閾値以上であれば虚像7の強調表示を即時に行い、一方で、車両8の速度が低速閾値よりも小さければ所定時間だけ待ってから虚像7の強調表示を行うようにしてもよい。このとき、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された原因となった、虚像7の視認性が低下する理由が所定時間の間に解消された場合は、虚像7の強調表示は行われない。
【0091】
表示制御部31は、また、記憶部33に記憶されている車両8の速度に関する高速閾値を読み出し、読み出した高速閾値と入力された車両8の速度とを比較する。そして、虚像7の視認性が低下する状況であると判断されたときに、車両8の速度が高速閾値以下であれば虚像7の強調表示を即時に行い、一方で、車両8の速度が高速閾値よりも大きければ所定時間だけ待ってから虚像7の強調表示を行うようにしてもよい。このとき、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された原因となった、虚像7の視認性が低下する理由が所定時間の間に解消された場合は、虚像7の強調表示は行われない。
【0092】
虚像7の強調表示の待ち時間としての所定時間は、特定の時間長さに限定されるものではなく、例えば車両8の速度が遅い状況において虚像7の強調表示を行わなくても安全性への影響が小さいと考えられる時間長さが考慮されるなどしたうえで、適当な時間長さに適宜設定される。虚像7の強調表示の待ち時間としての所定時間は、車両8の速度に応じて変化するようにしてもよく、例えば、車両8の速度が遅いほど長くなるようにしてもよい。
【0093】
(選択的な構成3)
車両8が右折・左折をする場合は、車両8の前方の状況(つまり、背景領域10の状況)が頻繁に大きく変化することにより、虚像7の視認性が一時的に低下することが頻繁に起こることも考えられる。そこで、車両8が右折・左折をする場合は、虚像7の強調表示が禁止されたり、虚像7の強調表示を行う際の待ち時間が設定されたりするようにしてもよい。
【0094】
この場合は、例えば、車両8の操舵角に関する閾値が設定されて記憶部33に予め記憶される。
【0095】
また、表示制御装置3の表示制御部31に、所定時間(例えば、0.05~1秒程度)ごとに、情報取得部4の車両状況取得部42から、操舵角センサによって検出された車両8の操舵角の情報が入力される。
【0096】
そして、表示制御部31は、記憶部33に記憶されている車両8の操舵角に関する閾値を読み出し、読み出した操舵角に関する閾値と入力された車両8の操舵角とを比較する。そして、虚像7の視認性が低下する状況であると判断されたときに、車両8の操舵角が操舵角に関する閾値以上であれば右折・左折をしていると判断して虚像7の強調表示は行わず、一方で、車両8の操舵角が操舵角に関する閾値よりも小さければ虚像7の強調表示を行うようにしてもよい。
【0097】
表示制御部31は、あるいは、記憶部33に記憶されている車両8の操舵角に関する閾値を読み出し、読み出した操舵角に関する閾値と入力された車両8の操舵角とを比較する。そして、虚像7の視認性が低下する状況であると判断されたときに、車両8の操舵角が操舵角に関する閾値以上であれば所定時間だけ待ってから虚像7の強調表示を行い、一方で、車両8の操舵角が操舵角に関する閾値よりも小さければ虚像7の強調表示を即時に行うようにしてもよい。このとき、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された原因となった、虚像7の視認性が低下する理由が所定時間の間に解消された場合は、虚像7の強調表示は行われない。
【0098】
虚像7の強調表示の待ち時間としての所定時間は、特定の時間長さに限定されるものではなく、例えば車両8が右折・左折を行う状況において虚像7の強調表示を行わなくても安全性への影響が小さいと考えられる時間長さが考慮されるなどしたうえで、適当な時間長さに適宜設定される。虚像7の強調表示の待ち時間としての所定時間は、車両8の操舵角に応じて変化するようにしてもよく、例えば、車両8の操舵角が大きいほど長くなるようにしてもよい。
【0099】
(選択的な構成4)
乗員9の視点(視線方向)に応じて、虚像7が表示される(言い換えると、視認される)、車両8のフロントガラス82の前方位置の所定領域の空間位置が変わる。そこで、乗員9の視点(視線方向)に基づいて、当該の乗員9の視点(視線方向)の場合の、車両8のフロントガラス82の前方位置における背景領域10の範囲を特定し、特定された背景領域10の範囲のうち虚像7の視認性が低下する状況になっている網の目10aの位置又は近傍位置に虚像7が重なる場合に、虚像7の視認性の低下への対応としての、通常映像データに基づく虚像7から強調映像データに基づく虚像7へと表示変更(即ち、虚像7の強調表示)が行われるようにしてもよい。
【0100】
この場合は、表示制御装置3の表示制御部31に、情報取得部4の車両状況取得部42から、車内カメラによって取得された乗員9の顔の撮像データが入力される。
【0101】
表示制御部31は、入力された乗員9の顔の撮像データに基づいて、乗員9の視点(視線方向)を計算する。表示制御部31は、例えば、乗員9の顔の方向及び注視位置に基づいて、乗員9の視点(視線方向)を計算する。
【0102】
そして、表示制御部31は、計算された乗員9の視点(視線方向)に対応する、車両8のフロントガラス82の前方位置における背景領域10の範囲を特定し、特定された背景領域10の範囲のうち虚像7の視認性が低下する状況になっている網の目10aの位置又は近傍位置に虚像7として表示される情報映像について、画像メモリ32から強調映像データを読み出す。これにより、強調映像データに基づく虚像7が表示される。
【0103】
(選択的な構成5)
強調映像データに基づく虚像7から通常映像データに基づく虚像7へと表示変更(つまり、虚像7の強調表示の解除)を行う際の応答性を、虚像7の強調表示を行う際の応答性と同等とすると、背景領域10が頻繁に変わる状況では虚像7の強調表示と当該強調表示の解除との切替えが頻繁に発生する。そこで、虚像7の強調表示の解除を行う際の待ち時間が設定されるようにしてもよい。
【0104】
表示制御部31は、虚像7の強調表示が行われた後に、当該の強調表示を行う原因となった、虚像7の視認性が低下する理由が解消されて当該の強調表示を解除する(即ち、視認性向上加工が施されていない通常映像データに戻す)際に、所定時間だけ待ってから、強調映像データに基づく虚像7から通常映像データに基づく虚像7へと表示変更を行う。このとき、いったん解消した虚像7の視認性が低下する理由が所定時間の間にあらためて発生した場合は、強調映像データに基づく虚像7から通常映像データに基づく虚像7への表示変更(つまり、虚像7の強調表示の解除)は行われず、虚像7の強調表示が維持される。
【0105】
(作用効果)
実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置3によれば、虚像7の視認性が低下する状況であると判断された網の目10aの位置又は近傍位置に虚像7として表示される情報映像を視認性向上加工が施された情報映像(強調映像データ)に変更するようにしているので、ヘッドアップディスプレイ装置2の虚像7と運転席から見た背景領域10との色合いが近いと虚像7の視認性が低下するところ、縁取りにより境界をはっきりさせるなどの強調表示をすることで虚像7の視認性を改善することができ、投影装置による虚像表示の視認性を改善することが可能となる。そして、背景領域10のうち虚像7の視認性が低下する状況であると判断された網の目10aの位置又は近傍位置に表示される虚像7のみについて通常映像データに基づく虚像7から強調映像データに基づく虚像7への表示変更を行うようにしているので、すなわち、必要な箇所だけ部分的に表示変更を行うようにしているので、過度な強調表示が行われないようにすることができ、特に暗所での運転時に明るすぎる表示が運転の妨げとなることを防ぐことが可能となる。
【0106】
実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置3によれば、運転席から見える背景領域10は一様ではなく、ヘッドアップディスプレイ装置2による虚像7の表示位置や表示内容によって視認性への影響が変わるので、背景領域10の網の目10aごとに影響度を判定することで、乗員9が必要としている領域における視認性を改善することが可能となる。
【0107】
実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置3によれば、また、視認性への影響度に応じて縁取り画像の幅を変えることで、視認性改善に最適な縁取り幅で表示することが可能となる。
【0108】
実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置3によれば、また、暗い環境で縁取り幅を明るい環境より多めに取ることで大きさ変化の認識に繋がるため、明るい環境と同じように視認性を向上することが可能となる。
【0109】
実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置3によれば、また、車速が遅い場合では、交差点の右折・左折で連続的に背景が変わる場合や、交差点で停車時に目の前を車が横切る場合など、一瞬だけ背景が変わるケースがあるものの、そのたびに表示変更しても安全性への効果は小さく、運転者が煩わしさを感じるため、表示変更までの時間に猶予を持たせることで運転者が求めていない不要な表示変更を避けることが可能となる。
【0110】
実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置3によれば、また、右折・左折時には連続的に背景が変わるものの、その場合の虚像7の強調表示が不要と判断することができ、頻繁な表示変更によってチラついてしまい余計な視線誘導などの発生を防いで煩わしさを低減させることが可能となる。
【0111】
実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置3によれば、また、虚像7の視認性を向上させることが目的であるところ、虚像7の視認性の低下に対する表示変更(即ち、虚像7の強調表示)の応答性は速い方が好ましい一方で、虚像7の強調表示の解除を同じように速めると、背景領域10が頻繁に変わる状況では虚像7の強調表示とその解除との切替えが頻繁に発生してしまうので、応答性に差をつけることで激しい変化を避けることが可能となる。
【0112】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成態様は上記の実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態に、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変形や変更などが加えられた形態も本発明に含まれる。
【0113】
例えば、上記の実施の形態ではヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置3が車両8に設置されるヘッドアップディスプレイ装置2を制御するようにしているが、本発明が適用されうる対象は車両8に設置されるヘッドアップディスプレイ装置2の制御に限定されるものではなく、本発明は、例えば鉄道、船舶、航空機など種々の移動体に設置されて風防ガラスなどにアイコンや数値等の画像を投影する投影装置の制御に適用されうる。
【0114】
また、上記の実施の形態では情報映像の種別それぞれについて通常映像データと強調映像データとの組合せが画像メモリ32に保存されるようにしているが、情報映像の種別それぞれについて通常映像データのみが画像メモリ32に保存されて、表示制御装置3の表示制御部31が通常映像データを用いて強調映像データを生成するようにしてもよい。この場合はすなわち、表示制御部31は、強調映像データを生成したうえで、通常映像データに基づく虚像7から強調映像データに基づく虚像7へと表示変更を行う。
【符号の説明】
【0115】
1 車両情報投影システム
2 ヘッドアップディスプレイ装置
21 表示光
3 ヘッドアップディスプレイ装置の表示制御装置(投影装置の制御装置)
31 表示制御部
32 画像メモリ
33 記憶部
4 情報取得部
41 前方状況取得部
411 撮像部
412 画像解析部
413 照度センサ
42 車両状況取得部
5 車両ECU
6 通信回線
7 虚像
7A 案内経路映像
7B 注意喚起映像
7C 運行状態映像
8 車両
81 ダッシュボード
82 フロントガラス
83 ステアリング
9 乗員
10 背景領域
10a 網の目
図1
図2
図3
図4