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特開2024-14746ポリアミック酸樹脂及びこれを用いた透明なポリイミドフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014746
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ポリアミック酸樹脂及びこれを用いた透明なポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20240125BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240125BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08G73/10
C08J5/18 CFG
C08L79/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103286
(22)【出願日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2022-0089284
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】504408236
【氏名又は名称】ドゥーサン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン、キョンイル
(72)【発明者】
【氏名】キム、トンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】シム、ジェヒョン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC03
4F071AC12
4F071AC13
4F071AC19
4F071AE19
4F071AF20Y
4F071AF25Y
4F071AF30Y
4F071AF34Y
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH16
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4J002CM041
4J002GP00
4J002GQ00
4J043PA19
4J043QB41
4J043RA05
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA46
4J043SA47
4J043SA85
4J043SB02
4J043TB02
4J043UA022
4J043UA041
4J043UA131
4J043XA08
4J043YA06
4J043ZA32
4J043ZA52
4J043ZB11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有・無機ハイブリッドの形成によって、透明性、機械的特性、熱的特性などの諸物性に優れ、カバーウィンドウとして適用できる新規なポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも1種のジアミン;少なくとも1種の酸二無水物;及び、多面体シルセスキオキサン(POSS);を含んで共重合されたポリアミック酸樹脂であって、上記ジアミンと上記酸二無水物のうちの少なくとも1つは、脂環族化合物を含む、ポリアミック酸樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のジアミン;
少なくとも1種の酸二無水物;及び、
多面体シルセスキオキサン(POSS);
を含んで共重合されたポリアミック酸樹脂であって、
上記ジアミンと上記酸二無水物のうちの少なくとも1つは、脂環族化合物を含む、ポリアミック酸樹脂。
【請求項2】
透明なポリイミドフィルム形成用である、請求項1に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項3】
上記多面体シルセスキオキサンは、当該ポリアミック酸樹脂の全固形分100重量%に対して、0.1~15重量%の範囲で含まれる、請求項1に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項4】
上記多面体シルセスキオキサンは、下記化学式1で示される、請求項1に記載のポリアミック酸樹脂。
【化1】
(上記式中、
Aは、多面体シルセスキオキサンに由来する基であり、
Xは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、-CH-、-(CHC-、-SO-、-(CFC-、-CO-、及び-CONH-からなる群から選択され、
Yは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、C~C30のアリール基、及びC~C30のシクロアルキル基からなる群から選択され、又は、これらが互いに結合して縮合環を形成することができ、
上記アリール基及びシクロアルキル基は、それぞれ独立に、ハロゲン、-CF、及び-OHからなる群から選択される1種以上の置換基で置換されることができ、このとき、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一または異なっていても良く、
nは、0又は1の整数である。)
【請求項5】
上記多面体シルセスキオキサンは、当該ジアミン又は酸二無水物の100モル%に対して、0.1~7モル%の範囲で含まれる、請求項1に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項6】
上記脂環族化合物は、脂環族ジアミンと脂環族酸二無水物のうちの少なくとも1つを含み、
当該ジアミンと酸二無水物とを合わせた全モル%を基準として、10~100モル%の割合で含まれる、請求項1に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項7】
上記脂環族酸二無水物は、下記化4又は化5で示される化合物である、請求項6に記載のポリアミック酸樹脂。
【化2】
【化3】
(上記式中、
A、B、及びCは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、炭素数4~20の環状の脂環族有機基であり、
Xは、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-(CH-(但し、1≦p≦10)、-(CF-(但し、1≦q≦10)、-(CHC-、-(CFC-、及び-C(=OH)NH-からなる群から選択され、
nは、0~2である。)
【請求項8】
上記脂環族酸二無水物は、当該酸二無水物の全モル%を基準として、10~100モル%の割合で含まれる、請求項6に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項9】
上記少なくとも1種の酸二無水物は、フッ素化芳香族第1の酸二無水物、非フッ素化芳香族第2の酸二無水物、及びスルホン系芳香族第3の酸二無水物からなる群から選択される1種以上の芳香族酸二無水物をさらに含む、請求項1に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項10】
上記少なくとも1種のジアミンは、芳香族ジアミン、脂環族ジアミン、又は芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項11】
上記芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとは、全ジアミン100モル%に対して、0~100:100~0モル%の割合で含まれる、請求項10に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項12】
上記芳香族ジアミンは、フッ素化第1のジアミン、スルホン系第2のジアミン、ヒドロキシ系第3のジアミン、エーテル系第4のジアミン、及び非フッ素系第5のジアミンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項10に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項13】
上記ジアミン(a)と上記酸二無水物(b)とのモル数の比率(a/b)は、0.7~1.3の範囲である、請求項1に記載のポリアミック酸樹脂。
【請求項14】
請求項1~13のうちのいずれか1項に記載のポリアミック酸樹脂を含んでイミド化した透明なポリイミドフィルム。
【請求項15】
フィルムの厚さ30~100μmにおいて、
波長550nmでの透過率が、85%以上であり、
黄色度が、5以下である、請求項14に記載の透明なポリイミドフィルム。
【請求項16】
ASTM D882に準拠して測定されたモジュラス(Young’s Modulus)が、3~8GPaであり、
鉛筆硬度が、2H~5Hである、請求項14に記載の透明なポリイミドフィルム。
【請求項17】
ディスプレイ装置のカバーウィンドウとして使用される、請求項14に記載のポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸樹脂及びこれを用いた透明なポリイミドフィルムに関するものであり、より詳しくは、多面体シルセスキオキサンをポリアミック酸組成物の構成成分として含むことで、有・無機ハイブリッド(hybrid)の形成によって、優れた光学特性及び機械的特性を同時に確保し、ディスプレイのカバーウィンドウとして使用できるポリアミック酸樹脂及びこれを用いた透明なポリイミドフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(Liquid Crystal Display、LCD)、有機電界発光表示装置(Organic Light Emitting Display、OLED)などのようなディスプレイ装置の表面には、パネルを保護するためのカバーウィンドウ(Cover Window)が適用されている。従来、カバーウィンドウの材質としては、平坦度、耐熱性、耐化学性、及び水分や気体に対するバリア性能に優れ、線膨張係数(CTE)が小さく、かつ高い光透過率を有する強化ガラスが主に使用されていた。
【0003】
近年、カーブドディスプレイや折り畳み式(in-folding)ディスプレイのようなフレキシブルディスプレイが開発されつつある。このようなフレキシブルディスプレイに適用するためには、カバーウィンドウもフレキシブル性を有する必要があるが、従来のガラス材からなるカバーウィンドウは、重くて割れ易く、また、フレキシブル性に欠けるため、フレキシブルディスプレイに適していない。
【0004】
上述のような問題点を解決するため、最近、成型自由度が比較的高いプラスチック材質を用いたカバーウィンドウが提案されている。プラスチック材を用いたカバーウィンドウは、軽くて割れ難く、多様なデザインが具現できるという長所を持っている。現在、カバーウィンドウ用プラスチック材料としては、透明性に優れたポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートなどが主に使用されている。このような材料は、透明性に優れているという長所があるが、ガラス転移温度(Tg)が150℃以下であって、耐熱特性が悪く、耐化学性及び機械的強度が低いため、その適用が制限されている。また、カバーウィンドウは、フレキシブルディスプレイ装置の最外郭に配置されるが、上述した材料が、外部紫外線に継続して晒されると、黄変現象が発生してディスプレイの視認性に悪影響を与えることになる。
【0005】
現在、カバーウィンドウ素材として、ポリイミド樹脂が適用されている。このようなポリイミド樹脂は、イミド鎖中のPi電子のCTC(Charge Transfer Complex)形成によって、濃茶色を呈して透明性の確保が難しいという限界があり、これを含むポリイミドフィルムは、表面が傷つき易く、耐スクラッチ性が非常に低いという短所を持っている。特に、ポリイミド系樹脂で構成されるカバーウィンドウは、ポリイミド材自体のフレキシブル性を持っているが、反復的な応力と変形による亀裂の発生及び伝播による疲労破壊から、素材の物性及び寿命をより向上させるための研究開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点を解決するために案出されたものであって、有・無機ハイブリッドの形成によって、透明性、機械的特性、熱的特性などの諸物性に優れ、カバーウィンドウとして適用できる新規なポリイミドフィルムを提供することを技術的課題としている。
【0007】
本発明の他の目的及び利点は、添付の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲に基づいて、より明確に説明されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のような技術的課題を達成するため、本発明は、少なくとも1種のジアミン;少なくとも1種の酸二無水物;及び、多面体シルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane, POSS);を含んで共重合されたポリアミック酸樹脂であって、上記ジアミンと上記酸二無水物のうちの少なくとも1つは、脂環族化合物を含む、ポリアミック酸樹脂を提供する。
【0009】
本発明の一実施例では、上記ポリアミック酸樹脂は、透明なポリイミドフィルム形成用として適用することができる。
【0010】
本発明の一実施例では、上記多面体シルセスキオキサンは、当該ポリアミック酸樹脂の全固形分100重量%に対して、0.1~15重量%の範囲で含まれる。
【0011】
本発明の一実施例では、上記多面体シルセスキオキサンは、当該ジアミン又は酸二無水物の100モル%に対して、0.1~7モル%の範囲で含まれる。
【0012】
本発明の一実施例では、上記脂環族化合物は、脂環族ジアミンと脂環族酸二無水物のうちの少なくとも1つを含み、当該ジアミンと酸二無水物とを合わせた全モル%を基準として、10~100モル%の割合で含まれる。
【0013】
本発明の一実施例では、上記脂環族酸二無水物は、当該酸二無水物の全モル%を基準として、10~100モル%の割合で含まれる。
【0014】
本発明の一実施例では、上記少なくとも1種の酸二無水物は、フッ素化芳香族第1の酸二無水物、非フッ素化芳香族第2の酸二無水物、及びスルホン系芳香族第3の酸二無水物からなる群から選択される1種以上の芳香族酸二無水物をさらに含むことができる。
【0015】
本発明の一実施例では、上記少なくとも1種のジアミンは、芳香族ジアミン、脂環族ジアミン、又は芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとの組み合わせを含むことができる。
【0016】
本発明の一実施例では、上記芳香族ジアミンと脂環族ジアミンは、全ジアミン100モル%に対して、0~100:100~0モル%の割合で含まれる。
【0017】
本発明の一実施例では、上記芳香族ジアミンは、フッ素化第1のジアミン、スルホン系第2のジアミン、ヒドロキシ系第3のジアミン、エーテル系第4のジアミン、及び非フッ素系第5のジアミンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0018】
本発明の一実施例では、上記ジアミン(a)と上記酸二無水物(b)とのモル数の比率(a/b)は、0.7~1.3の範囲であることができる。
【0019】
また、本発明は、上記ポリアミック酸樹脂を含んでイミド化した透明なポリイミドフィルムを提供する。
【0020】
本発明の一実施例では、上記透明なポリイミドフィルムは、当該フィルム厚さ30~100μmにおいて、波長550nmでの透過率が85%以上であり、ASTM E313-73規格に準拠した黄色度(YI)が5以下であることができる。
【0021】
本発明の一実施例では、上記透明なポリイミドフィルムは、ASTM D882に準拠して測定されたモジュラス(Young’s Modulus)が3~8GPaであり、鉛筆硬度が2H~5Hであることができる。
【0022】
本発明の一実施例では、上記透明なポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置のカバーウィンドウとして使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施例によれば、多面体シルセスキオキサンを、ポリアミック酸樹脂を構成する反応物のうちの1つとして使用することで、有・無機ハイブリッドの形成によって、高い光透過度、低い黄色度、及び優れた機械的特性を同時に発揮することができる。
【0024】
これにより、上述のようなポリアミック酸樹脂を用いた透明なポリイミドフィルムは、フラットディスプレイパネルを始めとした当該分野におけるディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイなどのカバーウィンドウとして有用に使用でき、その他、周知のIT製品、電子製品、家電製品などにも適用可能である。
【0025】
本発明による効果は、上記で例示した内容に制限されず、より多様な効果が本明細書中に包含されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳述する。本発明の実施例は、当該技術分野で通常の知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものであり、後述の実施例は、種々に変更して実施することができ、本発明の範囲は、後述の実施例に限定されない。なお、本明細書全体にわたって、同一の参照符号は、同一の構造を指称する。
【0027】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語を含む全ての用語は、当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。また、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連分野の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、ここで明確に定義されない限り、理想的又は過度に形式的な意味と解釈されてはならない。
【0028】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。なお、明細書全体において、「上」又は「上方」とは、対象部分の上又は下に位置する場合だけでなく、その中間にまた別の部分がある場合も含むことを意味し、必ずしも重力方向を基準として上に位置することを意味するものではない。また、本願明細書において、「第1」、「第2」などの用語は、任意の順序又は重要度を示すのではなく、構成要素を互いに区別するために使用されている。
【0029】
<ポリアミック酸樹脂>
本発明の一実施例において、透明なポリイミドフィルムを製造するためのポリイミド前駆体[poly(amic acid)、PAA]高分子であって、具体的には、繰り返し単位中に多面体シルセスキオキサンを含むポリアミック酸樹脂である。
【0030】
より具体的に、上記ポリアミック酸樹脂は、少なくとも1種のジアミン;少なくとも1種の酸二無水物;及び、多面体シルセスキオキサン(POSS);を含んで共重合されるが、上記ジアミン及び酸二無水物のうちの少なくとも1つは、脂環族化合物を含んでなる。
【0031】
即ち、従来、ポリイミドの物性改善のため、シルセスキオキサンを加えることがあるが、このようなシルセスキオキサンは、ほとんどがフィラー(filler)形態で添加され、又は、重合が完了したポリアミック酸樹脂やポリイミド樹脂に添加されて混合された形態で使用されている。
【0032】
これに対し、本発明では、ポリアミック酸製造用組成物の反応物のうちの一成分として多面体シルセスキオキサンを使用している。具体的には、上記シルセスキオキサンは、末端に少なくとも一つ以上のアミノ基を含むが、このようなアミノ基は、ジアミンと酸二無水物との反応に関与して分子内に化学結合をさらに形成することになり、これによって、従来の線状構造を有するポリアミック酸に比べ、より堅固かつリジッド(rigid)であると共に高い分子量を有するポリアミック酸樹脂を生成することになる。このようなポリアミック酸樹脂は、熱や光によって分解されず、外部からの衝撃に対してより安定的であるため、これを用いて製造された透明なポリイミド樹脂の光学特性、熱的特性及び機械的特性(Modulus、Strength)などを有意に改善することができる。
【0033】
本発明に係るポリアミック酸樹脂に含まれる多面体シルセスキオキサンは、当該分野で公知の通常のシルセスキオキサン構成単位、例えば、M単位、D単位、T単位、及びQ単位のうちの少なくとも一つの構成単位を基本骨格中に含む。
【0034】
ここで、「M単位」とは、シリコン原子及びこれに隣接する1個の酸素原子を含むシロキサン構成単位、例えば、RSiO1/2で示されるシロキサン単位を意味し、「D単位」とは、シリコン原子及びこれに隣接する2個の酸素原子を含むシロキサン構成単位(即ち、直鎖状シロキサン構成単位)、例えば、RSiO2/2で示されるシロキサン単位を意味する。 また、「T単位」とは、シリコン原子及びこれに隣接する3個の酸素原子を含むシロキサン構成単位、例えば、RSiO3/2で示されるシロキサン単位を意味し、「Q単位」とは、シリコン原子及びこれに隣接する4個の酸素原子を含むシロキサン構成単位、例えば、SiO4/2で示されるシロキサン単位を意味する。
【0035】
一具体例では、上記多面体シルセスキオキサンは、下記化学式1で示すことができる。
【化1】
【0036】
上記式中、
Aは、多面体シルセスキオキサンに由来する基であり、
Xは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、-CH-、-(CHC-、-SO-、-(CFC-、-CO-、及び-CONH-からなる群から選択され、
nは、0又は1の整数であり、
Yは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、C~C30のアリール基、及びC~C30のシクロアルキル基からなる群から選択され、又は、これらが互いに結合して縮合環を形成することができ、
上記アリール基及びシクロアルキル基は、それぞれ独立に、ハロゲン、-CF、及び-OHからなる群から選択される1種以上の置換基で置換されることができ、このとき、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一または異なっていても良い。
【0037】
一具体例では、上記多面体シルセスキオキサンは、下記化学式2で示すことができる。
【化2】
【0038】
上記式中、
複数のRは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、アミン基に置換されたC~C30のアリール基、及びC~C60のシクロアルキル基からなる群から選択され、又はこれらが互いに結合して縮合環を形成することができ、
上記アリール基及びシクロアルキル基は、それぞれ独立に、ハロゲン、-CF、-OH、及びアミン基からなる群から選択された1種以上の置換基で置換されることができ、このとき、上記置換基が複数である場合、これらは互いに同一または異なっていてもよい。
【0039】
本発明の一実施例によって化学式1中のA、X、Yをより具体化すると、下記化学式3で示される。
【化3】
【0040】
本発明に係る多面体シルセスキオキサンは、[RSiO3/2]のシルセスキオキサン構成単位(繰り返し単位、T単位)で構成され、その他、エポキシ基などの別の置換基を含んでいない。このようなT単位は、シリコン原子及びこれに隣接する3個の酸素原子を含むシルセスキオキサン構成単位を意味し、一例として、3官能性シラン化合物及び/又は3個の加水分解性基を有するシラン化合物の加水分解物の縮合物から誘導され得る。一例として、当該分野で公知の通常のアルキルトリアルコキシシラン、アリールトリアルコキシシラン、又はこれらの混合物を使用することができる。使用可能なアルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン又はエチルトリエトキシシラン、プロピルエチルトリメトキシシラン、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに制限されない。使用可能なアリールトリアルコキシシランとしては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシシラン、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに制限されない。
【0041】
一具体例では、上記多面体シルセスキオキサンは、[RSiO3/2]で示される構成単位(T単位)を90モル%の割合で含むT3体であることができ、具体的には、95~100モル%、より具体的には、98~100モル%であることができる。
【0042】
本発明において、多面体シルセスキオキサンの使用量は、特に制限されず、一例として、当該ジアミン又は酸二無水物の100モル%に対して、0.1~7モル%の範囲で含むことができ、具体的には、0.1~5モル%の範囲であり、好ましくは、0.5~5モル%であることができる。多面体シルセスキオキサンの含有量が上述の範囲内であると、より堅牢な化学構造と高い分子量を有するポリアミック酸樹脂が形成され、このような多面体シルセスキオキサンが上述の範囲から外れると、一定量以上のシルセスキオキサンがポリアミック酸樹脂との反応によって多重結合を形成し、これにより、ゲル化が生じる(下記表2を参照)。
【0043】
本発明に係るポリアミック酸樹脂は、当該分野で公知の少なくとも1種のジアミン及び少なくとも1種の酸二無水物を含むが、上記ジアミン及び上記酸二無水物のうちの少なくとも1つは、脂環族化合物(alicyclic compound)を含んで共重合されたものである。
【0044】
本発明において、脂環族化合物は、当該分野で公知の通常の脂環族ジアミン及び脂環族酸二無水物のうちの少なくとも一方を含むことができる。このような脂環族ジアミン、脂環族酸二無水物は、分子構造中に脂環族環を少なくとも1つ以上含むものであれば特に制限されず、例えば、後述のような脂環族ジアミン、脂環族酸二無水物の成分であることができる。具体的に、上記脂環族化合物は、脂環族酸二無水物であり、より具体的には、化学式4又は化学式5で示される脂環族酸二無水物を使用することが好ましい。このような脂環族化合物は、当該ジアミンと酸二無水物とを合わせた全モル%に対して、例えば、ジアミン100モル%と酸二無水物100モル%とを合わせた200モル%を基準として、10~100モル%の割合で含むことができ、具体的には、50~90モル%の割合であることができる。
【0045】
本発明のポリアミック酸樹脂を構成するジアミン(a)成分は、分子内にジアミン構造を有するものであれば特に制限されず、当該分野で公知の通常のジアミンを制限なく使用することができる。一例として、ジアミン構造を有している芳香族、脂環族、脂肪族の化合物、又はこれらの組み合わせなどを使用することができる。
【0046】
特に、本発明では、ポリイミドフィルムの低い反射率、高い光透過率(High Transmittance)、低いYIなどの光学特性を考慮して、少なくとも1種の脂環族ジアミンを単独で使用、又は少なくとも1種の芳香族ジアミンを使用、又は上記芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとを混用することができる。
【0047】
上述のような芳香族ジアミンの具体例として、フッ素化置換基を有するフッ素系、スルホン系(sulfone)系、ヒドロキシ(hydroxyl)系、エーテル(ether)系、非フッ素系などのジアミンを、それぞれ単独で使用、又は適宜組み合わせて1種以上混用することができる。これにより、本発明では、ジアミン化合物として、フッ素置換基が導入されたフッ素化芳香族第1のジアミン、スルホン系芳香族第2のジアミン、ヒドロキシ系芳香族第3のジアミン、エーテル系芳香族第4のジアミン、非フッ素系芳香族第5のジアミンを、それぞれ単独で使用、又はこれらの2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
使用可能なジアミンモノマー(a)としては、例えば、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2’-TFDB)、2,2’-ビス(トリフロオロメチル)-4,3’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフロオロメチル)-5,5’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノフェニルエーテル(6-FODA)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(6HMDA)、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-DDS)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3,3’-DDS)、又はこれらの1種又は2種以上の混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0049】
ポリイミドフィルムの高い透明性、高いガラス転移温度、及び低い黄色度を考慮して、フッ素化第1のジアミンとして、直線状高分子化を誘起し得る2,2’-ビス(トリフロオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2’-TFDB)、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(6-FAPB)を使用することができる。また、スルホン系第2のジアミンとして、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-DDS)、又は3,3’-DDSを使用することができる。また、ヒドロキシ系第3のジアミンとして、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BIS-AP-AF)を使用することができる。また、エーテル系第4のジアミンとして、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノフェニルエーテル(6-FODA)、又はオキシジアニリン(ODA)を使用することができる。また、非フッ素系第5のジアミンとして、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)-ヘキサフルオロプロパン(BIS-AT-AF)、m-トルイジン(m-tolidine)、又はp-フェニレンジアミン(p-PDA)を使用することができる。
【0050】
本発明のジアミンモノマー(a)において、上記フッ素化芳香族第1のジアミン、スルホン系芳香族第2のジアミン、ヒドロキシ系芳香族第3のジアミン、エーテル系第4のジアミン、非フッ素系芳香族第5のジアミン、脂環族ジアミンなどの含有量は、特に限定されず、それぞれ、全ジアミン100モル%に対して、0~100モル%であり、具体的には、10~90モル%、より具体的には、20~80モル%であることができる。但し、上記ジアミンのうちの少なくとも1つの含有量は、全ジアミン100モル%を満たすように残部に含まれる。
【0051】
使用可能な脂環族ジアミンとしては、例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(MACM)、4,4’-メチレンビシクロヘキシルアミン(PACM)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4-BAC)、シス-1,2-シクロヘキサンジメタンアミン、トランス-1,2-シクロヘキサンジメタンアミン、1,4-シクロヘキシルジアミン(CHDA)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)エーテル、又はこれらの混合物などを使用することができるが、これらに制限されない。
【0052】
上記ジアミンモノマー(a)において、芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとの混合割合は、全ジアミン100モル%に対して、0~100:100:~0モル%の割合であり、具体的には、10~90:90~10モル%の割合であることができる。
【0053】
本発明のポリアミック酸樹脂を構成する酸二無水物(b)モノマーは、分子内に酸二無水物構造を有する当該分野で周知の通常の化合物を制限なく使用することができる。一例として、酸二無水物(dianhydride)構造を有している芳香族、脂環族、脂肪族の化合物、又はこれらの組み合わせなどを使用することができ、具体的には、少なくとも1種の脂環族酸二無水物を使用し、又は少なくとも1種の芳香族酸二無水物を使用し、又は上記芳香族酸二無水物と脂環族酸二無水物とを混用することができる。
【0054】
脂環族酸二無水物としては、化合物中、芳香族環でない脂環族環を有し、かつ酸二無水物を有する化合物であれば、特に制限されない。具体的には、下記化学式4又は化学式5で示される脂環族酸二無水物を使用することが好ましい。
【化4】
【化5】
【0055】
上記式中、
A、B、及びCは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、炭素数4~20の環状の脂環族有機基であり、
Xは、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-(CH-(但し、1≦p≦10)、-(CF-(但し、1≦q≦10)、-(CHC-、-(CFC-、及び-C(=OH)NH-からなる群から選択され、
nは、0~2である。
【0056】
上記化学式4又は化学式5の好適な一例としては、A~Cは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、炭素数4~8の環状の脂環族有機基であることができ、Xは、-CH-、-(CHC-、-SO-、-(CFC-、-CO-、及び-CONH-からなる群から選択され、nは、0又は1である。
【0057】
使用可能な脂環族酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ビシクロ[2,2,2]-7-オクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BCDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(TDA)、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(H-BPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサン-テトラカルボン酸二無水物(H-PMDA)、シクロペンタノン ビス-スピロノルボルナン(cpODA)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸2,3:5,6-二無水物(7CI,8CI)、又はこれらの1種以上の混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。このような脂環族酸二無水物の含有量は、特に制限されず、当該ポリイミドフィルムの機械的特性と位相差特性を考慮して適宜調節することができる。一例として、脂環族酸二無水物の含有量は、当該酸二無水物の全モル%を基準として、10~100モル%の割合であり、具体的には、20~90モル%の割合、より具体的には、30~80モル%の割合であることができる。
【0058】
また、芳香族酸二無水物の一具体例としては、フッ素化芳香族第1の酸二無水物、非フッ素化芳香族第2の酸二無水物、スルホン系芳香族第3の酸二無水物を、それぞれ単独で使用し、又はこれらの少なくとも2種を混合した組み合わせであることができる。
【0059】
上記フッ素化第1の酸二無水物モノマーは、フッ素置換基が導入された芳香族酸二無水物であれば、特に限定されない。使用可能なフッ素化第1の酸二無水物としては、例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6-FDA)、4-(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物(4-TFPMDA)などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。フッ素化酸二無水物のうち、6-FDAは、分子鎖間及び分子鎖内の電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)の形成を制限する特性が非常に高くて透明化するのに適した化合物である。
【0060】
また、非フッ素化第2の酸二無水物モノマーは、フッ素置換基が導入されていない非フッ素化芳香族酸二無水物であれば、特に限定されない。使用可能な非フッ素化第3の酸二無水物モノマーとしては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4-(4,4-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物(SiDA)などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又はこれらの2種以上を混合して使用することができる。
【0061】
また、スルホン系第3の酸二無水物モノマーとしては、スルホン基が導入された酸二無水物であれば特に限定されず、例えば、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、が挙げられる。これらは、単独で使用、又はこれらの2種以上を混合して使用することができる。
【0062】
本発明の酸二無水物モノマー(b)において、上記フッ素化芳香族第1の酸二無水物、非フッ素化芳香族第2の酸二無水物、スルホン系芳香族第3の酸二無水物などの含有量は、特に限定されない。一例として、これらは、それぞれ、全酸二無水物100モル%に対して、0~100モル%の範囲で含むことができ、具体的には、10~90モル%、より具体的には、20~80モル%であることができる。但し、上記第1の酸二無水物~第3の酸二無水物のうちの少なくとも1つの含有量は、全酸二無水物100モル%を満たすように残部に含まれる。
【0063】
本発明に係る酸二無水物モノマー(b)において、芳香族酸二無水物と脂環族酸二無水物との混合割合は、全酸二無水物100モル%に対して、0~90:10~100モル%の割合であり、具体的には、90~10:10~90モル%の割合であり、より具体的には、80~10:20~90モル%の割合であることができる。
【0064】
本発明のポリアミック酸樹脂を構成するポリアミック酸製造用組成物において、上記ジアミン成分(a)のモル数と上記酸二無水物成分(b)のモル数との比率(a/b)は、0.7~1.3であり、好ましくは、0.8~1.2、より好ましくは、0.9~1.1の範囲であることができる。
【0065】
また、本発明のポリアミック酸樹脂を構成するポリアミック酸製造用組成物は、上述したモノマーの溶液重合反応のための溶媒であって当該分野で公知の有機溶媒を制限なく使用することができる。使用可能な溶媒としては、例えば、m-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテート、及びジメチルフタレート(DMP)のうちから選択される1つ以上の極性溶媒を使用することができる。その他、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムのような低沸点溶液、又はγ-ブチロラクトンのような溶媒を使用することができる。このとき、溶媒(重合用第1の溶媒)の含有量は、特に制限されないが、適切なポリアミック酸組成物(ポリアミック酸溶液)の分子量と粘度を得るため、ポリアミック酸組成物の全重量に対して、50~95重量%が好ましく、より好ましくは、70~90重量%の範囲で含むことができる。
【0066】
本発明では、上述のようなジアンヒドリド、ジアミン、及び多面体シルセスキオキサンを溶媒に投入した後、反応させて透明なポリアミック酸組成物を製造することができる。一例として、化学式1の多面体シルセスキオキサン、少なくとも1種のジアミン成分、及び少なくとも1種のジアンヒドリドを含むが、ガラス転移温度及び黄色度の改善のため、ジアミン(a)とジアンヒドリド(b)とをおおよそ1:1の当量比で含むことで、透明なポリアミック酸組成物を形成することができる。
【0067】
上記ポリアミック酸組成物の組成は、特に制限されず、例えば、ポリアミック酸組成物の全100重量%に対して、ジアンヒドリド2.5~25.0重量%、ジアミン2.5~25.0重量%、及び組成物100重量%を満たすように残部の有機溶媒を含んで構成することができ、多面体シルセスキオキサンは、当該ポリアミック酸の全固形分100重量%に対して、0.1~15重量%の範囲で含むことができる。一例として、有機溶媒の含有量は、70~90重量%であることができる。
【0068】
上述のように構成されるポリアミック酸組成物は、約1,000~200,000cps、好ましくは、約5,000~50,000cpsの範囲の粘度を有することができる。ポリアミック酸組成物の粘度が上述の範囲内であると、ポリアミック酸組成物のコーティングの際に、厚さを調節し易く、コーティング表面が均一であるという効果が奏される。
【0069】
上記ポリアミック酸組成物は、必要に応じて、本発明の目的及び効果が害されない範囲内で、可塑剤、酸化防止剤、難燃化剤、分散剤、粘度調節剤、レベリング剤などの少なくとも1種の添加剤を少量含むことができる。
【0070】
<透明なポリイミドフィルム>
本発明の他の一実施例において、上述のようなポリアミック酸樹脂をイミド化して製造された透明なポリイミドフィルムであって、具体的には、多面体シルセスキオキサンを含むポリアミック酸組成物を溶液重合して形成されたポリアミック酸樹脂溶液を高温で閉環脱水させ、イミド化した透明なポリイミドフィルムである。
【0071】
このような透明なポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置に組み込むことができ、より具体的には、フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウ(Cover Window)として使用することができる。ここで、カバーウィンドウとは、フレキシブルディスプレイ装置の最外郭に配置されてディスプレイ装置を保護するフィルムを指称する。このようなカバーウィンドウは、ウィンドウフィルム単独で、又は光学的に透明な樹脂からなる別の基材(substrate)フィルム上に接着剤層とウィンドウコーティング層とが設けられたフィルムであることができる。
【0072】
なお、本発明に係る透明なポリイミドフィルムを、移動体通信端末やタブレットパソコンなどのカバーウィンドウに使用するためには、上述のような高い透明度及び光透過率などに優れた光学特性及び機械的特性を同時に有することが好ましい。
【0073】
具体的に、本発明のポリアミック酸樹脂及びポリイミドフィルムは、少なくとも1種のジアミン、少なくとも1種の酸二無水物、及び多面体シルセスキオキサンを含むが、少なくとも1つの脂環族ジアミン又は脂環族酸二無水物を含んで得られる繰り返し単位を含み、上記繰り返し単位中に含まれた多面体シルセスキオキサンは、当該ポリアミック酸樹脂の全固形分100重量%に対して、0.1~15重量%の範囲で含むことができる。このような脂環族ジアミン/酸二無水物から得られた所定の脂環族繰り返し単位を含むことで、優れた視認性と機械的特性を確保することができるとともに、上記繰り返し単位中に含まれたシルセスキオキサンモイエティによって、高強度、高硬度などの優れた機械的特性を顕著に向上させて最適化することができる。
【0074】
一具体例では、上記ポリイミドフィルムは、厚さ30~100μmにおいて、波長550nmでの光透過率が85%以上であり、具体的には、89%以上、より具体的には、90%~99%であることができる。また、ASTM E313規格に準拠した黄色度(YI)が5以下であり、具体的には、4.7以下、より具体的には、4.5以下であることができる。このような光学特性は、当該ポリイミドフィルムの厚さ30~100μm、具体的には、30~80μm、具体的には、40±5μmの条件下で測定したものを基準としている。
【0075】
他の一具体例では、上記ポリイミドフィルムは、3~8GPaのヤングモジュラス(Young’s Modulus)を有することができ、具体的には、3~6GPaであることができる。機械的硬度と優れた柔軟性とを同時に示すという点から、4~6GPaであることができる。ここで、ヤングモジュラス(Young’s Modulus)とは、種々のモジュラスのうちの1つであって、材料が弾性限度内で荷重を受ける時における関係比を示し、具体的には、ASTM D882に準拠して測定した値を意味する。上記モジュラスの値が上述の数値より小さい値である場合は、硬度を十分に発揮し難く、上述の数値より大きい値である場合は、柔軟性が低下して折り畳み性が低下することがある。
【0076】
また他の一具体例では、上記ポリイミドフィルムは、厚さ30~100μmにおいて、50~250℃で測定した平均線膨張係数(CTE)が、100ppm/℃以下であり、具体的には、70ppm/℃以下、より具体的には、30~65ppm/℃以下であることができる。
【0077】
本発明に係るポリイミド樹脂フィルムは、当該分野で周知の常法で製造することができ、一例として、上述のようなポリアミック酸組成物を、基材(substrate)、例えば、ガラス基板上にコーティング(キャスティング)した後、30~350℃の範囲で、徐々に昇温させながら、0.5~8時間、イミド閉環反応(imidazation)を誘導して製造することができる。
【0078】
このとき、コーティング方法としては、当業界で周知の常法を制限なく使用することができ、例えば、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、溶媒キャスティング(solvent casting)、スロットダイコーティング(slot die coating)、及びスプレーコーティング法からなる群から選択される少なくとも1種以上の方法によって行うことができる。上記無色透明なポリイミド樹脂層の厚さは、数百nmから数十μmとなるように、ポリアミック酸組成物のコーティングを少なくとも1回以上行うことができる。
【0079】
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法において、重合されたポリアミック酸を支持体にキャスティングしてイミド化するステップに適用されるイミド化法は、熱イミド化法、化学イミド化法、又は熱イミド化法と化学イミド化法とを併用して行うことができる。
【0080】
熱イミド化法とは、ポリアミック酸組成物(ポリアミック酸溶液)を、支持体上にキャスティングして30~400℃の温度範囲で徐々に昇温させながら、1~10時間加熱してポリイミドフィルムを得る方法である。
【0081】
また、化学イミド化法とは、ポリアミック酸組成物に、酢酸無水物などの酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどのアミン類などに代表されるイミド化触媒とを投入する方法である。このような化学イミド化法に、熱イミド化法を併用する場合、ポリアミック酸組成物の加熱条件は、ポリアミック酸組成物の種類、製造されるポリイミドフィルムの厚さなどによって変化することができる。
【0082】
上記熱イミド化法と化学イミド化法とを併用する場合について詳述すると、ポリアミック酸組成物に、脱水剤及びイミド化触媒を投入して支持体上にキャスティングした後、80~300℃、好ましくは、150~250℃で加熱して脱水剤及びイミド化触媒を活性化することにより、部分的に硬化及び乾燥した後、ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0083】
このように形成されたポリイミド樹脂は、イミド環を含有する高分子物質であって、イミド環の化学的安定性に基づいて、耐熱性、耐化学性、耐摩耗性及び電気的特性に優れている。上記ポリイミド樹脂は、ランダム共重合体(random copolymer)やブロック共重合体(block copolymer)形態であることができる。上記ポリイミドフィルムの厚さは、特に制限されず、適用分野によって適宜調節することができる。例えば、10~15μmの範囲であり、好ましくは、30~100μmであることができる。
【0084】
上述のように製造された本発明のポリアミック酸樹脂、ポリイミドフィルム、及びその変形例は、高透過率、黄色度などの優れた光学特性、高モジュラスなどの機械的特性が要求される種々の分野で有用に使用することができる。特に、ディスプレイ装置のカバーウィンドウに適用することで、高い硬度と強度によって、表面の傷付きを防止し、フレキシブルディスプレイ装置に、優れた視認性と高い信頼性を付与することができる。このようなディスプレイ装置は、当該分野で公知のディスプレイ装置に制限なく適用することができ、特に、イン-フォールディング(in-folding)、アウト-フォールディング(out-folding)型フォールダブルディスプレイ(foldable display)であることができる。
【0085】
本発明において、ディスプレイ装置とは、画像を表示するフレキシブルディスプレイ装置又は非フレキシブルディスプレイ装置を指称し、フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display、FPD)装置だけでなく、カーブドディスプレイ装置(Curved Display Device)、フォールダブルディスプレイ装置(Foldable Display Device)、フレキシブルディスプレイ装置(Flexible Display Device)、フォールダブルフォン、スマートフォン、移動体通信端末、タブレットパソコンなどが挙げられる。具体的に、上記ディスプレイ装置としては、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、電気泳動ディスプレイ(Electrophoretic Display)、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Display)、無機ELディスプレイ(Inorganic Light Emitting Display)、電界放出ディスプレイ(Field Emission Diplay)、表面伝導型電子放出ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display)、プラズマディスプレイ(Plasma Display)、陰極線管ディスプレイ(Cathode Ray Display)、電子ペーパーなどが挙げられる。一具体例では、LCD、PDP、OLEDなどのフラットディスプレイパネルであることができる。上述した用途に限定されず、本発明のポリイミドフィルムは、当該分野で公知の通常のディスプレイ装置に使用することができ、その他、フレキシブルディスプレイ用基板や保護膜として活用することもできる。
【0086】
上記ポリイミドフィルムを備えたディスプレイ装置の一具体例において、ディスプレイ部、偏光板、タッチスクリーンパネル、カバーウィンドウ、及び保護フィルムを含み、上記カバーウィンドウは、本発明の一実施例に係るポリイミドフィルムを含むことができる。なお、ディスプレイ装置を構成する各構成要素は、特に制限されず、当該分野で公知の通常の構成要素を含むことができる。
【実施例0087】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳述する。後述の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲は、これらの例によって限定されるものではない。
【0088】
[実施例1~16:ポリイミドフィルムの製造]
下記表1に記載のジアミン、酸二無水物、化学式3の多面体シルセスキオキサン(OAPS)を含む組成を用いて、ポリアミック酸組成物を製造した。
【0089】
上記ポリアミック酸組成物を、LCD用ガラスにスピンコーティングした後、窒素雰囲気のコンベクションオーブン内で、80℃で30分間、150℃で30分間、200℃で1時間、300℃で1時間、段階的に徐々に昇温させながら、乾燥及びイミド閉鎖反応(imidization)を行った。これにより、イミド化率が85%以上である膜厚さ40μmのポリイミドフィルムを製造した。その後、ガラスからポリイミドフィルムを剥離して取り除いた。
【0090】
【表1】
【0091】
[比較例1~8:ポリイミドフィルムの製造]
上記表1に記載の組成を使用した以外は、上記実施例1~16と同様にして比較例1~8のポリイミドフィルムをそれぞれ製造した。
【0092】
[比較例9:ポリイミドフィルムの製造]
上記表1に記載のジアミンと酸二無水物とを重合してポリアミック酸樹脂を製造し、次に、製造されたポリアミック酸樹脂に、化学式3の多面体シルセスキオキサン(OAPS)を加えた後、12時間撹拌してポリアミック酸組成物を製造した。
【0093】
上記ポリアミック酸組成物を、LCD用ガラスにスピンコーティングした後、窒素雰囲気のコンベクションオーブン内で、80℃で30分間、150℃で30分間、200℃で1時間、300℃で1時間、段階的に徐々に昇温させながら、乾燥及びイミド閉鎖反応(imidization)を行った。これにより、イミド化率が85%以上である膜厚さ40μmのポリイミドフィルムを製造した。その後、ガラスからポリイミドフィルムを剥離して取り除いた。
【0094】
[実験例:物性評価]
実施例1~16及び比較例1~9で製造されたポリイミドフィルムの物性を、次のような方法で評価し、その結果を下記表2に示す。なお、下記表2中の各物性は、ポリイミドフィルムの厚さ50μmを基準としている。
【0095】
<物性評価方法>
1)光透過度の測定
波長550nmにおいて、UV-Vis NIRスペクトロフォトメーター(Shimadzu社製、型番:uv-3150)を用いて測定した。
【0096】
2)黄色度の測定
分光測色計(コニカミノルタ社製、型番:CM-3700d)を用いて、550nmにおける黄色度を、ASTM E313-73規格に準拠して測定した。
【0097】
3)厚さの測定
膜厚計(ミツトヨ社製、型番:293-140)を用いて、フィルムの厚さを測定した。
【0098】
4)モジュラスの測定
UTM(インストロン社製、型番:5942)を用いて、ASTM D882規格に準拠してモジュラス(GPa)を測定した。
【0099】
5)鉛筆硬度の測定
鉛筆硬度試験器を用いて、ISO 15184規格に準拠して、荷重750gで鉛筆硬度を測定した。
【0100】
【表2】
【0101】
上記表2に示されるように、多面体シルセスキオキサンを含む本発明のポリイミドフィルムは、比較例に比べて、優れた光学特性及び機械的特性を有することが示された。特に、多面体シルセスキオキサンの含有量が増加すると、モジュラス特性が向上する傾向にある反面、上記多面体シルセスキオキサンの含有量が、それぞれ、10モル%、7.5モル%である比較例2、4、6,及び8では、過量の多面体シルセスキオキサンがポリアミック酸樹脂と反応してゲル化が起こり、フィルム自体が形成されなかった。
【0102】
また、ポリアミック酸樹脂を先に製造した後、多面体シルセスキオキサンを加えて製造された比較例9のポリイミドフィルムでは、同一の組成を有する実施例4に比べて、光学特性と機械的特性が低調となった。これは、多面体シルセスキオキサンがポリアミック酸樹脂の反応物の1つとして使用される場合、より堅牢でかつリジッドであるとともに高分子量を有するポリアミック酸樹脂が生成でき、これにより、ポリイミド樹脂の光学特性及び機械的特性を有意に改善していると判断される。
【0103】
従って、本発明のポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置のカバーウィンドウとして有用に使用できることが確認された。