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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147472
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ポンプ具
(51)【国際特許分類】
   F04B 9/14 20060101AFI20241008BHJP
   F16K 15/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F04B9/14 Z
F16K15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095029
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2023060022
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】397000067
【氏名又は名称】株式会社タイガーゴム
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩史
【テーマコード(参考)】
3H058
3H075
【Fターム(参考)】
3H058AA03
3H058BB03
3H058BB22
3H058BB29
3H058CA02
3H058CA03
3H058EE04
3H058EE13
3H058EE21
3H075AA18
3H075BB03
3H075BB04
3H075BB30
3H075CC08
3H075CC16
3H075DA09
3H075DB13
(57)【要約】
【課題】弁体が開閉回動動作しないで空気等の流体の流れを制御可能な逆止弁機構を備えたポンプ具を提供する。
【解決手段】ポンプ具1のポンプ具本体に設けられた吹出し部4に第1逆止弁機構10が設けられている。第1逆止弁機構10は吹出し部材11と円板状の第1弁体30とを具備する。第1弁体30は吹出し部材11の内側に形成された第1弁室18に移動自在に配置されている。第1逆止弁機構10は、第1弁室18において第1弁体30の一方の片面35が弁口22を閉鎖するように第1弁座部21に当接することにより流体の吸込み方向B1の流れが阻止されるとともに、第1弁体30が第1弁座部21との当接位置から第1規制部16側に移動することにより弁口22が開放されて流体の吹出し方向A1の流れが許容されるように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に流体室が形成されたポンプ具本体を備え、
前記ポンプ具本体の一部に、前記流体室から流体を吹き出す吹出し部が設けられるとともに、
前記ポンプ具本体の他の一部に、前記流体室に外部の流体を吸い込む吸込み部が設けられ、
前記吹出し部に、流体の吹出し方向の流れを許容し、流体の吸込み方向の流れを阻止する第1逆止弁機構が設けられており、
前記第1逆止弁機構は、前記吹出し部に前記流体室と連通して設けられた吹出し部材と、円板状の第1弁体とを具備し、
前記吹出し部材の先端側には前記流体室の流体を吹き出す吹出し口が形成されるとともに、
前記吹出し部材の内側には、前記流体室と連通する弁口が中央部に形成された第1弁座部と前記第1弁座部に対して流体の吹出し方向側に離間した位置に設けられた第1規制部との間の隙間からなる第1弁室が形成されており、
前記第1弁室に前記第1弁体が前記第1弁座部と前記第1規制部との間を流体の吹出し方向及び吸込み方向に対して略垂直な姿勢で流体の吹出し方向及び吸込み方向に移動自在に配置されており、
前記第1弁体に、前記流体室の流体が前記弁口を通って前記吹出し口から吹き出す際に通過する第1流体流通孔が流体の吹出し方向に貫通して設けられており、
前記第1逆止弁機構は、前記第1弁室において前記第1弁体の一方の片面が前記弁口を閉鎖するように前記第1弁座部に当接することにより流体の吸込み方向の流れが阻止されるとともに、前記第1弁体が前記第1弁座部との当接位置から前記第1規制部側に移動することにより前記弁口が開放されて流体の吹出し方向の流れが許容され、且つ、前記第1規制部側に移動した前記第1弁体が前記第1規制部に当接することにより、前記弁口が開放された状態で前記第1弁体の更なる移動が規制されるように構成されているポンプ具。
【請求項2】
前記吸込み部に、流体の吸込み方向の流れを許容し、流体の吹出し方向の流れを阻止する第2逆止弁機構が設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記流体室と連通し且つ外部の流体を吸い込む吸込み口が中央部に形成された第2弁座部を有するとともに前記吸込み部に設けられた弁箱部材と、円板状の第2弁体とを具備し、
前記弁箱部材の内側には、前記第2弁座部と前記第2弁座部に対して流体の吸込み方向側に離間した位置に設けられた第2規制部との間の隙間からなる第2弁室が形成されており、
前記第2弁室に前記第2弁体が前記第2弁座部と前記第2規制部との間を流体の吸込み方向及び吹出し方向に対して略垂直な姿勢で流体の吸込み方向及び吹出し方向に移動自在に配置されており、
前記第2弁体に、外部の空気が前記吸込み口から前記流体室に吸い込まれる際に通過する第2流体流通孔が流体の吸込み方向に貫通して設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記第2弁室において前記第2弁体の一方の片面が前記吸込み口を閉鎖するように前記第2弁座部に当接することにより流体の吹出し方向の流れが阻止されるとともに、前記第2弁体が前記第2弁座部との当接位置から前記第2規制部側に移動することにより前記吸込み口が開放されて流体の吸込み方向の流れが許容され、且つ、前記第2規制部側に移動した前記第2弁体が前記第2規制部に当接することにより、前記吸込み口が開放された状態で前記第2弁体の更なる移動が規制されるように構成されている請求項1記載のポンプ具。
【請求項3】
前記第1弁体の外周縁部がその周方向の全周に亘って円形状に形成されるとともに、
前記第1弁体の中央部よりも外周側で且つ前記外周縁部よりも内側位置に前記第1流体流通孔が複数、周方向に並んで設けられており、
前記第1弁体の前記一方の片面における前記複数の第1流体流通孔よりも中央部側の部分が、前記弁口を閉鎖するように前記第1弁座部に当接する第1閉鎖面部とされている請求項1又は2記載のポンプ具。
【請求項4】
前記第1弁体の前記複数の第1流体流通孔が互いに同一形状及び同一寸法であり且つ前記第1弁体の中心に対する一つ又は複数の同心円に沿ってその周方向の全周に亘って等間隔に配設されている請求項3記載のポンプ具。
【請求項5】
前記第2弁体は前記第1弁体と同一形状、同一寸法及び同一材料のものである請求項2記載のポンプ具。
【請求項6】
内側に流体室が形成されたポンプ具本体を備え、
前記ポンプ具本体の一部に、前記流体室から流体を吹き出す吹出し部が設けられるとともに、
前記ポンプ具本体の他の一部に、前記流体室に外部の流体を吸い込む吸込み部が設けられ、
前記吸込み部に、流体の吸込み方向の流れを許容し、流体の吹出し方向の流れを阻止する第2逆止弁機構が設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記流体室と連通し且つ外部の流体を吸い込む吸込み口が中央部に形成された第2弁座部を有するとともに前記吸込み部に設けられた弁箱部材と、円板状の第2弁体とを具備し、
前記弁箱部材の内側には、前記第2弁座部と前記第2弁座部に対して流体の吸込み方向側に離間した位置に設けられた第2規制部との間の隙間からなる第2弁室が形成されており、
前記第2弁室に前記第2弁体が前記第2弁座部と前記第2規制部との間を流体の吸込み方向及び吹出し方向に対して略垂直な姿勢で流体の吸込み方向及び吹出し方向に移動自在に配置されており、
前記第2弁体に、外部の空気が前記吸込み口から前記流体室に吸い込まれる際に通過する第2流体流通孔が流体の吸込み方向に貫通して設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記第2弁室において前記第2弁体の一方の片面が前記吸込み口を閉鎖するように前記第2弁座部に当接することにより流体の吹出し方向の流れが阻止されるとともに、前記第2弁体が前記第2弁座部との当接位置から前記第2規制部側に移動することにより前記吸込み口が開放されて流体の吸込み方向の流れが許容され、且つ、前記第2規制部側に移動した前記第2弁体が前記第2規制部に当接することにより、前記吸込み口が開放された状態で前記第2弁体の更なる移動が規制されるように構成されているポンプ具。
【請求項7】
前記第2弁体の外周縁部がその周方向の全周に亘って円形状に形成されるとともに、
前記第2弁体の中央部よりも外周側で且つ前記外周縁部よりも内側位置に前記第2流体流通孔が複数、周方向に並んで設けられており、
前記第2弁体の前記一方の片面における前記複数の第2流体流通孔よりも中央部側の部分が、前記吸込み口を閉鎖するように前記第2弁座部に当接する第2閉鎖面部とされている請求項6記載のポンプ具。
【請求項8】
口筒が口部に装着された風船を膨らますために用いられるものであり、
前記第1逆止弁機構は、前記吹出し部に前記流体室と連通して設けられた筒状の発射台部材を前記吹出し部材として具備し、
前記発射台部材の先端側には前記口筒が装着される口筒装着部が形成されるとともに、前記口筒装着部に前記吹出し口が形成されており、
前記発射台部材は、前記口筒装着部に装着された前記口筒を保持するために前記口筒を係脱自在に係止する係止片を備えている請求項1又は2記載のポンプ具。
【請求項9】
口筒が口部に装着された風船を膨らますために用いられるものであり、
前記吹出し部に前記流体室と連通して筒状の発射台部材が設けられ、
前記発射台部材の先端側には前記口筒が装着される口筒装着部が形成されるとともに、前記口筒装着部に前記吹出し口が形成されており、
前記発射台部材は、前記口筒装着部に装着された前記口筒を保持するために前記口筒を係脱自在に係止する係止片を備えている請求項6又は7記載のポンプ具。
【請求項10】
前記ポンプ具本体として、内側空間を前記流体室とする弾性的に圧縮変形可能な中空のポンプ球を備えており、
前記吹出し部は、前記ポンプ球の一部に設けられており且つ前記ポンプ球の圧縮変形により前記流体室から流体を吹き出し、
前記吸込み部は、前記ポンプ球の他の一部に設けられており且つ圧縮変形した前記ポンプ球の復元変形により前記流体室に外部の流体を吸い込む請求項1又は6記載のポンプ具。
【請求項11】
前記ポンプ具本体として、内側空間を前記流体室とするシリンダと前記シリンダ内に往復移動可能に装填されたピストンとを備えており、
前記吹出し部は、前記ピストンが往動作されることにより前記流体室から流体を吹き出し、
前記吸込み部は、前記ピストンが復動作されることにより前記流体室に外部の流体を吸い込む請求項1又は6記載のポンプ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風船を膨らます際に用いられるポンプ具に関する。
【0002】
さらに、本発明は風船、浮き具などの膨出対象物を膨らます際に用いられるポンプ具に関する。
【背景技術】
【0003】
この種のポンプ具として、特許文献1に開示されているように、内側空間を空気室とする弾性的に圧縮変形可能な中空のポンプ球を備えたポンプ具が知られている。
【0004】
ポンプ球はゴム球とか握り球などとも呼ばれているものであり、すなわち、ポンプ球は、一般に人の手で挟圧されて弾性的に圧縮変形されることにより空気室の容積が減少するとともに、圧縮変形したポンプ球が弾性復元力によって元の形状に復元変形することにより空気室の容量が元の容量に回復するものである。
【0005】
ポンプ球における互いに反対側の部分には、それぞれ、ポンプ球の圧縮変形時に空気室から空気を吹き出す吹出し部と、ポンプ球の復元変形時に空気室に外部の空気を吸い込む吸込み部とが設けられている。吹出し部には吹出しノズル部材が設けられており、風船を膨らます際には吹出しノズル部材の先端部側に形成されたノズル部が風船の口部内に挿入される。
【0006】
さらにポンプ球の吹出し部には、空気の吹出し方向の流れを許容し、空気の吸込み方向の流れを阻止する第1逆止弁機構が設けられており、またポンプ球の吸込み部には、空気の吸込み方向の流れを許容し、空気の吹出し方向の流れを阻止する第2逆止弁機構が設けられている。なお、上記特許文献1には各逆止弁機構の詳細な構成は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-329711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような逆止弁機構に用いられる弁体として、本発明者は図12に示した弁体部材500を試作し実際に使用してみた。
【0009】
同図の弁体部材500は円板状のものであり、弁体部材500の外周部501の内側近傍に馬蹄形(C字状)のスリット孔504が穿孔されることにより弁体部材500の中央部にその外周部501と一部繋がった弁片部502が形成されている。弁体部材500の外周部501は弁体部材500を位置固定するためにその厚さ方向に挟圧される部位である。
【0010】
この弁体部材500によれば、弁片部502が外周部501との繋がり部503で繋がった状態で弁口(図示せず)に対して開閉回動動作するものであり、弁体部材500は弁片部502が開閉回動動作するために柔軟な材料(例えば柔軟な樹脂又はゴム)で形成されている。したがって、弁体部材500を位置固定するためにその外周部501を挟圧すると、当該外周部501が弁片部502側に膨出して弁片部502の開閉回動動作に干渉し、弁片部502が弁口を閉鎖できなくなることがあった。
【0011】
また、この弁体部材500は風船用ポンプ具の逆止弁機構に用いられるものなので、一般に弁体部材500の直径は例えば約5~15mmといった比較的小径の大きさのものである。そのため、弁体部材500の外周部501が挟圧されて弁片部502側に膨出しても弁片部502の開閉回動動作に干渉しないようなスリット幅の広い馬蹄形のスリット孔504を穿孔することが困難であった。
【0012】
そこで本発明者は、この弁体部材500をインジェクション成形により製造することを試みた。しかしながら、この場合、弁体部材500が柔軟な材料からなるので、成形後に成形金型から弁体部材500を取り出す際に弁体部材500が金型に貼り付いてしまうという難点があった。
【0013】
さらに、弁体部材500が柔軟な材料からなることから、弁体部材500を長期間保管すると弁体部材500が塑性的に変形し易かった。弁体部材500が塑性変性すると、弁片部502の開閉回動動作に支障と来すという問題が発生する。一方、弁体部材500を硬質の材料で形成すると、弁片部502が開閉回動動作しにくいという問題が発生する。
【0014】
この問題は、風船以外の膨出対象物を膨らます際に用いられるポンプ具でも同様に発生する。
【0015】
本発明は上述した技術背景に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、弁体が開閉回動動作しないで流体の流れを制御可能な逆止弁機構を備えた風船用ポンプ具を提供することにある。
【0016】
さらに本発明の目的は、弁体が開閉回動動作しないで流体の流れを制御可能な逆止弁機構を備えたポンプ具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は以下の手段を提供する。
【0018】
1) 内側空間を流体室とする弾性的に圧縮変形可能な中空のポンプ球を備え、
前記ポンプ球の一部に、前記ポンプ球の圧縮変形により前記流体室から流体を吹き出す吹出し部が設けられるとともに、
前記ポンプ球の他の一部に、圧縮変形した前記ポンプ球の復元変形により前記流体室に外部の流体を吸い込む吸込み部が設けられ、
前記吹出し部に、流体の吹出し方向の流れを許容し、流体の吸込み方向の流れを阻止する第1逆止弁機構が設けられており、
前記第1逆止弁機構は、前記吹出し部に前記流体室と連通して設けられた吹出しノズル部材と、円板状の第1弁体とを具備し、
前記吹出しノズル部材の先端に前記流体室の流体を吹き出す吹出し口が形成されるとともに、
前記吹出しノズル部材の内側には、前記流体室と連通する弁口が中央部に形成された第1弁座部と前記第1弁座部に対して流体の吹出し方向側に離間した位置に設けられた第1規制部との間の隙間からなる第1弁室が形成されており、
前記第1弁室に前記第1弁体が前記第1弁座部と前記第1規制部との間を流体の吹出し方向及び吸込み方向に対して略垂直な姿勢で流体の吹出し方向及び吸込み方向に移動自在に配置されており、
前記第1弁体に、前記流体室の流体が前記弁口を通って前記吹出し口から吹き出す際に通過する第1流体流通孔が流体の吹出し方向に貫通して設けられており、
前記第1逆止弁機構は、前記第1弁室において前記第1弁体の一方の片面が前記弁口を閉鎖するように前記第1弁座部に当接することにより流体の吸込み方向の流れが阻止されるとともに、前記第1弁体が前記第1弁座部との当接位置から前記第1規制部側に移動することにより前記弁口が開放されて流体の吹出し方向の流れが許容され、且つ、前記第1規制部側に移動した前記第1弁体が前記第1規制部に当接することにより、前記弁口が開放された状態で前記第1弁体の更なる移動が規制されるように構成されている風船用ポンプ具。
【0019】
2) 前記吸込み部に、流体の吸込み方向の流れを許容し、流体の吹出し方向の流れを阻止する第2逆止弁機構が設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記流体室と連通し且つ外部の流体を吸い込む吸込み口が中央部に形成された第2弁座部を有するとともに前記吸込み部に設けられたキャップ状の弁箱部材と、円板状の第2弁体とを具備し、
前記弁箱部材の内側には、前記第2弁座部と前記第2弁座部に対して流体の吸込み方向側に離間した位置に設けられた第2規制部との間の隙間からなる第2弁室が形成されており、
前記第2弁室に前記第2弁体が前記第2弁座部と前記第2規制部との間を流体の吸込み方向及び吹出し方向に対して略垂直な姿勢で流体の吸込み方向及び吹出し方向に移動自在に配置されており、
前記第2弁体に、外部の空気が前記吸込み口から前記流体室に吸い込まれる際に通過する第2流体流通孔が流体の吸込み方向に貫通して設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記第2弁室において前記第2弁体の一方の片面が前記吸込み口を閉鎖するように前記第2弁座部に当接することにより流体の吹出し方向の流れが阻止されるとともに、前記第2弁体が前記第2弁座部との当接位置から前記第2規制部側に移動することにより前記吸込み口が開放されて流体の吸込み方向の流れが許容され、且つ、前記第2規制部側に移動した前記第2弁体が前記第2規制部に当接することにより、前記吸込み口が開放された状態で前記第2弁体の更なる移動が規制されるように構成されている前項1記載の風船用ポンプ具。
【0020】
3) 前記第1弁体の外周縁部がその周方向の全周に亘って円形状に形成されるとともに、
前記第1弁体の中央部よりも外周側で且つ前記外周縁部よりも内側位置に前記第1流体流通孔が複数、周方向に並んで設けられており、
前記第1弁体の前記一方の片面における前記複数の第1流体流通孔よりも中央部側の部分が、前記弁口を閉鎖するように前記第1弁座部に当接する第1閉鎖面部とされている前項1又は2記載の風船用ポンプ具。
【0021】
4) 前記第1弁体の前記複数の第1流体流通孔が互いに同一形状及び同一寸法であり且つ前記第1弁体の中心に対する一つ又は複数の同心円に沿ってその周方向の全周に亘って等間隔に配設されている前項3記載の風船用ポンプ具。
【0022】
5) 前記第2弁体は前記第1弁体と同一形状、同一寸法及び同一材料のものである前項2記載の風船用ポンプ具。
【0023】
6) 内側空間を流体室とする弾性的に圧縮変形可能な中空のポンプ球を備え、
前記ポンプ球の一部に、前記ポンプ球の圧縮変形により前記流体室から流体を吹き出す吹出し部が設けられるとともに、
前記ポンプ球の他の一部に、圧縮変形した前記ポンプ球の復元変形により前記流体室に外部の流体を吸い込む吸込み部が設けられ、
前記吸込み部に、流体の吸込み方向の流れを許容し、流体の吹出し方向の流れを阻止する第2逆止弁機構が設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記流体室と連通し且つ外部の流体を吸い込む吸込み口が中央部に形成された第2弁座部を有するとともに前記吸込み部に設けられたキャップ状の弁箱部材と、円板状の第2弁体とを具備し、
前記弁箱部材の内側には、前記第2弁座部と前記第2弁座部に対して流体の吸込み方向側に離間した位置に設けられた第2規制部との間の隙間からなる第2弁室が形成されており、
前記第2弁室に前記第2弁体が前記第2弁座部と前記第2規制部との間を流体の吸込み方向及び吹出し方向に対して略垂直な姿勢で流体の吸込み方向及び吹出し方向に移動自在に配置されており、
前記第2弁体に、外部の空気が前記吸込み口から前記流体室に吸い込まれる際に通過する第2流体流通孔が流体の吸込み方向に貫通して設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記第2弁室において前記第2弁体の一方の片面が前記吸込み口を閉鎖するように前記第2弁座部に当接することにより流体の吹出し方向の流れが阻止されるとともに、前記第2弁体が前記第2弁座部との当接位置から前記第2規制部側に移動することにより前記吸込み口が開放されて流体の吸込み方向の流れが許容され、且つ、前記第2規制部側に移動した前記第2弁体が前記第2規制部に当接することにより、前記吸込み口が開放された状態で前記第2弁体の更なる移動が規制されるように構成されている風船用ポンプ具。
【0024】
7) 前記第2弁体の外周縁部がその周方向の全周に亘って円形状に形成されるとともに、
前記第2弁体の中央部よりも外周側で且つ前記外周縁部よりも内側位置に前記第2流体流通孔が複数、周方向に並んで設けられており、
前記第2弁体の前記一方の片面における前記複数の第2流体流通孔よりも中央部側の部分が、前記吸込み口を閉鎖するように前記第2弁座部に当接する第2閉鎖面部とされている前項6記載の風船用ポンプ具。
【0025】
さらに、本発明は以下の手段を提供する。
【0026】
1A) 内側に流体室が形成されたポンプ具本体を備え、
前記ポンプ具本体の一部に、前記流体室から流体を吹き出す吹出し部が設けられるとともに、
前記ポンプ具本体の他の一部に、前記流体室に外部の流体を吸い込む吸込み部が設けられ、
前記吹出し部に、流体の吹出し方向の流れを許容し、流体の吸込み方向の流れを阻止する第1逆止弁機構が設けられており、
前記第1逆止弁機構は、前記吹出し部に前記流体室と連通して設けられた吹出し部材と、円板状の第1弁体とを具備し、
前記吹出し部材の先端側には前記流体室の流体を吹き出す吹出し口が形成されるとともに、
前記吹出し部材の内側には、前記流体室と連通する弁口が中央部に形成された第1弁座部と前記第1弁座部に対して流体の吹出し方向側に離間した位置に設けられた第1規制部との間の隙間からなる第1弁室が形成されており、
前記第1弁室に前記第1弁体が前記第1弁座部と前記第1規制部との間を流体の吹出し方向及び吸込み方向に対して略垂直な姿勢で流体の吹出し方向及び吸込み方向に移動自在に配置されており、
前記第1弁体に、前記流体室の流体が前記弁口を通って前記吹出し口から吹き出す際に通過する第1流体流通孔が流体の吹出し方向に貫通して設けられており、
前記第1逆止弁機構は、前記第1弁室において前記第1弁体の一方の片面が前記弁口を閉鎖するように前記第1弁座部に当接することにより流体の吸込み方向の流れが阻止されるとともに、前記第1弁体が前記第1弁座部との当接位置から前記第1規制部側に移動することにより前記弁口が開放されて流体の吹出し方向の流れが許容され、且つ、前記第1規制部側に移動した前記第1弁体が前記第1規制部に当接することにより、前記弁口が開放された状態で前記第1弁体の更なる移動が規制されるように構成されているポンプ具。
【0027】
2A) 前記吸込み部に、流体の吸込み方向の流れを許容し、流体の吹出し方向の流れを阻止する第2逆止弁機構が設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記流体室と連通し且つ外部の流体を吸い込む吸込み口が中央部に形成された第2弁座部を有するとともに前記吸込み部に設けられた弁箱部材と、円板状の第2弁体とを具備し、
前記弁箱部材の内側には、前記第2弁座部と前記第2弁座部に対して流体の吸込み方向側に離間した位置に設けられた第2規制部との間の隙間からなる第2弁室が形成されており、
前記第2弁室に前記第2弁体が前記第2弁座部と前記第2規制部との間を流体の吸込み方向及び吹出し方向に対して略垂直な姿勢で流体の吸込み方向及び吹出し方向に移動自在に配置されており、
前記第2弁体に、外部の空気が前記吸込み口から前記流体室に吸い込まれる際に通過する第2流体流通孔が流体の吸込み方向に貫通して設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記第2弁室において前記第2弁体の一方の片面が前記吸込み口を閉鎖するように前記第2弁座部に当接することにより流体の吹出し方向の流れが阻止されるとともに、前記第2弁体が前記第2弁座部との当接位置から前記第2規制部側に移動することにより前記吸込み口が開放されて流体の吸込み方向の流れが許容され、且つ、前記第2規制部側に移動した前記第2弁体が前記第2規制部に当接することにより、前記吸込み口が開放された状態で前記第2弁体の更なる移動が規制されるように構成されている前項1A記載のポンプ具。
【0028】
3A) 前記第1弁体の外周縁部がその周方向の全周に亘って円形状に形成されるとともに、
前記第1弁体の中央部よりも外周側で且つ前記外周縁部よりも内側位置に前記第1流体流通孔が複数、周方向に並んで設けられており、
前記第1弁体の前記一方の片面における前記複数の第1流体流通孔よりも中央部側の部分が、前記弁口を閉鎖するように前記第1弁座部に当接する第1閉鎖面部とされている前項1A又は2A記載のポンプ具。
【0029】
4A) 前記第1弁体の前記複数の第1流体流通孔が互いに同一形状及び同一寸法であり且つ前記第1弁体の中心に対する一つ又は複数の同心円に沿ってその周方向の全周に亘って等間隔に配設されている前項3A記載のポンプ具。
【0030】
5A) 前記第2弁体は前記第1弁体と同一形状、同一寸法及び同一材料のものである前項2A記載のポンプ具。
【0031】
6A) 内側に流体室が形成されたポンプ具本体を備え、
前記ポンプ具本体の一部に、前記流体室から流体を吹き出す吹出し部が設けられるとともに、
前記ポンプ具本体の他の一部に、前記流体室に外部の流体を吸い込む吸込み部が設けられ、
前記吸込み部に、流体の吸込み方向の流れを許容し、流体の吹出し方向の流れを阻止する第2逆止弁機構が設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記流体室と連通し且つ外部の流体を吸い込む吸込み口が中央部に形成された第2弁座部を有するとともに前記吸込み部に設けられた弁箱部材と、円板状の第2弁体とを具備し、
前記弁箱部材の内側には、前記第2弁座部と前記第2弁座部に対して流体の吸込み方向側に離間した位置に設けられた第2規制部との間の隙間からなる第2弁室が形成されており、
前記第2弁室に前記第2弁体が前記第2弁座部と前記第2規制部との間を流体の吸込み方向及び吹出し方向に対して略垂直な姿勢で流体の吸込み方向及び吹出し方向に移動自在に配置されており、
前記第2弁体に、外部の空気が前記吸込み口から前記流体室に吸い込まれる際に通過する第2流体流通孔が流体の吸込み方向に貫通して設けられており、
前記第2逆止弁機構は、前記第2弁室において前記第2弁体の一方の片面が前記吸込み口を閉鎖するように前記第2弁座部に当接することにより流体の吹出し方向の流れが阻止されるとともに、前記第2弁体が前記第2弁座部との当接位置から前記第2規制部側に移動することにより前記吸込み口が開放されて流体の吸込み方向の流れが許容され、且つ、前記第2規制部側に移動した前記第2弁体が前記第2規制部に当接することにより、前記吸込み口が開放された状態で前記第2弁体の更なる移動が規制されるように構成されているポンプ具。
【0032】
7A) 前記第2弁体の外周縁部がその周方向の全周に亘って円形状に形成されるとともに、
前記第2弁体の中央部よりも外周側で且つ前記外周縁部よりも内側位置に前記第2流体流通孔が複数、周方向に並んで設けられており、
前記第2弁体の前記一方の片面における前記複数の第2流体流通孔よりも中央部側の部分が、前記吸込み口を閉鎖するように前記第2弁座部に当接する第2閉鎖面部とされている前項6A記載のポンプ具。
【0033】
8A) 口筒が口部に装着された風船を膨らますために用いられるものであり、
前記第1逆止弁機構は、前記吹出し部に前記流体室と連通して設けられた筒状の発射台部材を前記吹出し部材として具備し、
前記発射台部材の先端側には前記口筒が装着される口筒装着部が形成されるとともに前記口筒装着部に前記吹出し口が形成されており、
前記発射台部材は、前記口筒装着部に装着された前記口筒を保持するために前記口筒を係脱自在に係止する係止片を備えている前項1A~5Aのいずれかに記載のポンプ具。
【0034】
9A) 口筒が口部に装着された風船を膨らますために用いられるものであり、
前記吹出し部に前記流体室と連通して筒状の発射台部材が設けられ、
前記発射台部材の先端側には前記口筒が装着される口筒装着部が形成されるとともに、前記口筒装着部に前記吹出し口が形成されており、
前記発射台部材は、前記口筒装着部に装着された前記口筒を保持するために前記口筒を係脱自在に係止する係止片を備えている前項6A又は7A記載のポンプ具。
【0035】
10A) 前記ポンプ具本体として、内側空間を前記流体室とする弾性的に圧縮変形可能な中空のポンプ球を備えており、
前記吹出し部は、前記ポンプ球の一部に設けられており且つ前記ポンプ球の圧縮変形により前記流体室から流体を吹き出し、
前記吸込み部は、前記ポンプ球の他の一部に設けられており且つ圧縮変形した前記ポンプ球の復元変形により前記流体室に外部の流体を吸い込む前項1A~9Aのいずれかに記載のポンプ具。
【0036】
11A) 前記ポンプ具本体として、内側空間を前記流体室とするシリンダと前記シリンダ内に往復移動可能に装填されたピストンとを備えており、
前記吹出し部は、前記ピストンが往動作されることにより前記流体室から流体が吹き出し、
前記吸込み部は、前記ピストンが復動作されることにより前記流体室に外部の流体を吸い込む前項1A~9Aのいずれかに記載のポンプ具。
【発明の効果】
【0037】
本発明は以下の効果を奏する。
【0038】
前項1では、第1逆止弁機構の第1弁室に円板状の第1弁体が流体の吹出し方向及び吸込み方向に対して略垂直な姿勢で流体の吹出し方向及び吸込み方向に移動自在に配置されており、第1逆止弁機構は、第1弁室において第1弁体の一方の片面が弁口を閉鎖するように第1弁座部に当接することにより流体の吸込み方向の流れが阻止されるとともに、第1弁体が第1弁座部との当接位置から第1規制部側に移動することにより弁口が開放されて流体の吹出し方向の流れが許容され、且つ、第1規制部側に移動した第1弁体が第1規制部に当接することにより、弁口が開放された状態で第1弁体の更なる移動が規制されるように構成されている。
【0039】
したがって、第1逆止弁機構によれば、第1弁体が開閉回動動作しないで流体の流れを制御することができる。そのため、第1弁体を例えば硬質の材料で形成することができ、これにより、第1弁体を例えばインジェクション成形により製造する場合でも第1弁体の成形金型への貼り付きを抑制することができるし、第1弁体を長期間保管することによる第1弁体の塑性変形も抑制することができる。
【0040】
前項2では、第2逆止弁機構の第2弁室に円板状の第2弁体が流体の吸込み方向及び吹出し方向に対して略垂直な姿勢で流体の吸込み方向及び吹出し方向に移動自在に配置されており、第2逆止弁機構は、第2弁室において第2弁体の一方の片面が吸込み口を閉鎖するように第2弁座部に当接することにより流体の吹出し方向の流れが阻止されるとともに、第2弁体が第2弁座部との当接位置から第2規制部側に移動することにより吸込み口が開放されて流体の吸込み方向の流れが許容され、且つ、第2規制部側に移動した第2弁体が第2規制部に当接することにより第2弁体の更なる移動が規制されるように構成されている。
【0041】
したがって、第2逆止弁機構でも、第2弁体が開閉回動動作しないで流体の流れを制御することができる。そのため、第2弁体を例えば硬質の材料で形成することができ、これにより、第2弁体を例えばインジェクション成形により製造する場合でも第2弁体の成形金型への貼り付きを抑制することができるし、第2弁体を長期間保管することによる第2弁体の塑性変形も抑制することができる。
【0042】
前項3では、第1弁体の外周縁部がその周方向の全周に亘って円形状に形成されているので、第1逆止弁機構を構成させるために第1弁体を第1弁室に組み込む際に第1弁体の外周縁部が第1弁室の近傍の周辺部位に引っ掛からない。そのため、第1弁体を第1弁室に組み込み易い。
【0043】
前項4では、第1弁体の複数の第1流体流通孔が互いに同一形状及び同一寸法であり且つ第1弁体の中心に対する一つ又は複数の同心円に沿ってその周方向の全周に亘って等間隔に配設されていることにより、流体が第1弁体の第1流体流通孔を通過する際に第1弁体が受ける粘性摩擦力が第1弁体の周方向において均等に分配される。そのため、第1弁体が第1弁室にて移動する際において流体の吹出し方向及び吸込み方向に対する第1弁体の姿勢が確実に略垂直に維持される。これにより、第1弁体が確実に移動動作して弁口を確実に閉鎖及び開放することができる。
【0044】
前項5では、第2弁体は第1弁体と同一形状、同一寸法及び同一材料のものであることから、第2弁体は前項3の利点と同じ利点を有する。さらに、第1弁体と第2弁体を区別しないで保管することができるし、両方の弁体を第1及び第2逆止弁機構用の共通の弁体として用いることができる。さらに、両方の弁体をそれぞれ個別に製造する必要がないため、弁体の製造コストを引き下げることができる。
【0045】
前項6では、第2逆止弁機構は前項2の利点と同じ利点を有する。
【0046】
前項7では、第2弁体は前項3の利点と同じ利点を有する。
【0047】
前項1A~7Aでは、それぞれ前項1~7と同じ効果を奏する。
【0048】
前項8A及び9Aでは、口部に口筒が装着された風船を膨らます際に口筒をポンプ具の口筒装着部に装着して係止片を口筒に係止することにより、口筒を口筒装着部に保持できる。これにより、風船をポンプ具により容易に膨らますことができる。さらに、膨らました風船を飛ばす際には、係止片を口筒から離脱させることにより風船が口筒からの流体噴射により飛び出すので、風船を容易に発射することができる。
【0049】
前項10A及び11Aでは、それぞれ簡素な構成の人力ポンプ具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る風船用ポンプ具の平面図である。
図2図2は同ポンプ具の側面図である。
図3図3は同ポンプ具の分解平面図である。
図4図4は同ポンプ具のポンプ球が圧縮変形される途中の状態を示す同ポンプ具の部分切欠き平面図である。
図5図5は圧縮変形した同ポンプ球が復元変形する途中の状態を示す同ポンプ具の部分切欠き平面図である。
図6図6において(a)は吹出しノズル部材の斜視図、(b)はその断面図である。
図7図7において(a)は弁座部材の斜視図、(b)はその断面図である。
図8図8において(a)は第1弁体の平面図、(b)は(a)中のA-A線断面図、(c)は第1弁体の斜視図である。
図9図9において(a)は弁箱部材の斜視図、(b)はその断面図である。
図10図10において(a)は規制部材の斜視図、(b)はその断面図である。
図11図11において(a)は第2弁体の平面図、(b)は(a)中のA-A線断面図、(c)は第2弁体の斜視図である。
図12図12は本発明の参考形態に係る弁体部材の斜視図である。
図13図13は本発明の第2実施形態に係るポンプ具を用いて膨らます風船の正面図である。
図14図14は同風船の口部及び口筒の斜視図である。
図15図15は同ポンプ具の斜視図である。
図16図16は同ポンプ具の平面図である。
図17図17は同ポンプ具の受け筒(口筒装着部)に口筒が装着された状態の斜視図である。
図18図18は同ポンプ具の部分切欠き分解図である。
図19図19は同ポンプ具におけるピストンの往動作時の部分切欠き側面図である。
図20図20は同ポンプ具におけるピストンの復動作時の部分切欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0052】
なお、本実施形態を以下では第1実施形態ともいう。
【0053】
図1及び2に示すように、本発明の一実施形態に係る風船用ポンプ具1は、ゴム製風船(図1中に二線鎖線で示す)70内にその口部71から流体を充填(注入)することにより風船70を膨らますために用いられるものであり、図3に示すように内側空間を流体室3とする弾性的に圧縮変形可能な中空のポンプ球2を備えている。
【0054】
ポンプ球2は、人の手でポンプ球2が挟圧されて弾性的に圧縮変形されることにより流体室3の容積が減少するとともに、圧縮変形したポンプ球2に蓄積された弾性復元力によりポンプ球2が元の形状に復元変形することにより流体室3の容量が元の容量に回復するものである。本第1実施形態では、ポンプ球2の流体室3に入る流体、即ち風船70に充填(注入)される流体は気体であり詳述すると空気である。
【0055】
このポンプ具1は、上述のポンプ球を内側に流体室が形成されたポンプ具本体として備えており、したがってこのポンプ具1は人力ポンプ具(詳述すると手動ポンプ具)の一種である。
【0056】
ポンプ球2の構成を以下に説明する。
【0057】
図1~3に示すように、ポンプ球2は扁球殻状であり、弾性及び透光性(詳述すると半透光性)を有する樹脂(エチレン酢酸ビニル(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)(リニアポリエチレンを含む)など)製のものである。なお本発明では、ポンプ球2の材料は樹脂に限定されるものではなく、その他に例えばゴム(シリコーンゴムを含む)であってもよい。なお図3では、ポンプ球2はその流体室3を示すために一部が切り欠かれて図示されている。
【0058】
ポンプ球2の表面には滑り止め及び/又は外観向上のための複数の幅狭の凸条部2aがポンプ球2の経線方向及び緯線方向に延びて形成されている。なお、図4及び5では凸条部2aは図示省略されている。
【0059】
ポンプ球2の一部には、ポンプ球2の弾性的な圧縮変形により流体室3から流体を吹き出す吹出し部4が設けられている。また、ポンプ球2における吹出し部4とは反対側の部分には、圧縮変形したポンプ球2の復元変形により流体室3に外部の流体を吸い込む吸込み部6が設けられている。
【0060】
図3に示すように、ポンプ球2の吹出し部4には、流体の吹出し方向A1の流れを許容し、流体の吸込み方向B1の流れを阻止する第1逆止弁機構10が設けられている。またポンプ球2の吸込み部6には、流体の吸込み方向B2の流れを許容し、流体の吹出し方向A2の流れを阻止する第2逆止弁機構40が設けられている。
【0061】
ここで、第1逆止弁機構10において、流体の吹出し方向A1とは流体室3から流体が吹き出す方向を意味し、流体の吸込み方向B1とは流体室3に流体が吸い込まれる方向を意味する。流体の吹出し方向A1及び吸込み方向B1は互いに反対向きである。
【0062】
また、第2逆止弁機構40において、流体の吹出し方向A2とは流体室3から流体が吹き出す方向を意味し、流体の吸込み方向B2とは流体室3に流体が吸い込まれる方向を意味する。流体の吹出し方向A2及び吸込み方向B2は互いに反対向きである。
【0063】
第1逆止弁機構10の構成を以下に説明する。
【0064】
第1逆止弁機構10は、図3に示すように、ポンプ球2の流体室3の流体を吹出し部4を介して吹き出す吹出し部材としての吹出しノズル部材11と、円板状の第1弁体30と、略円筒状の弁座部材20とを具備している。
【0065】
吹出しノズル部材11は例えば硬質の樹脂(高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)など)製であり、ポンプ球2の吹出し部4に流体室3と連通して且つ分離可能に取り付けられている。
【0066】
すなわち、ポンプ球2の吹出し部4には流体室3と連通した略円筒状の第1雄ねじ筒部5がポンプ球2に対して外方突出状に一体形成されている。第1雄ねじ筒部5の外周面には雄ねじ部5aが螺旋状に形成されている。
【0067】
吹出しノズル部材11は、図6に示すように、吹出しノズル部材11の基端部側に形成された第1雌ねじ筒部12と、吹出しノズル部材11の先端部側に形成されるとともに風船70の膨らまし時に風船70の口部71内に挿入される先細筒状のノズル部13と、第1雌ねじ筒部12とノズル部13との間に形成された第1中間筒部15とを一体に備えている。第1雌ねじ筒部12の内周面には第1雄ねじ筒部5の雄ねじ部5aに対応する雌ねじ部12aが螺旋状に形成されている。第1中間筒部15の内径は吹出しノズル部材11の長さ方向(即ち流体の吹出し方向A1)において一定である。
【0068】
吹出しノズル部材11の内周面における第1雌ねじ筒部12と第1中間筒部15との境界部にはその周方向の全周に亘って第1係合溝部17が形成されている。
【0069】
吹出しノズル部材11のノズル部13の先端には流体室3の流体を吹き出す断面円形状の吹出し口14が形成されるとともに、吹出しノズル部材11の内側には流体室3の流体が吹き出す際に通過する吹出し流路19が吹出し口14から吹出しノズル部材11の基端部(即ち第1雌ねじ筒部12)側に向かって吹出しノズル部材11の中心軸線に沿って吹出しノズル部材11の長さ方向の全体に亘って形成されている。
【0070】
そして、図4に示すように、吹出しノズル部材11は、第1雌ねじ筒部12が第1雄ねじ筒部5に外嵌め状に且つ分離可能に螺合することによりポンプ球2の吹出し部4に流体室3と連通して且つ分離可能に取り付けられている(螺着されている)。
【0071】
弁座部材20は、図7に示すように、例えば硬質の樹脂(HDPE、PPなど)製であり、弁座部材20の基端部側に形成された略円筒状の第1補強筒部24と、中央部に断面円形状の弁口22が設けられ且つ弁座部材20の先端部側に形成された第1弁座部21と、第1補強筒部24と第1弁座部21との境界部の外周部にその周方向の全周に亘って外方突出状に形成された第1鍔部25とを一体に備えている。
【0072】
弁座部材20の内側空間は流体室3の流体が吹き出す際に通過する吹出し流路23とされており、吹出し流路23は弁口22から弁座部材20の基端部(即ち第1補強筒部24)側に向かって弁座部材20の中心軸線に沿って弁座部材20の長さ方向の全体に亘って形成されている。第1弁座部21の直径は吹出しノズル部材11の第1中間筒部15の内径と略等しい。
【0073】
そして、図4に示すように、弁座部材20は、第1弁座部21が吹出しノズル部材11の第1中間筒部15内に嵌合し且つ第1鍔部25が第1係合溝部17に係脱自在に係合した状態で吹出しノズル部材11の内側に配置されている。
【0074】
このように吹出しノズル部材11の内側に弁座部材20が配置された状態において、吹出しノズル部材11の第1中間筒部15の内周面における、弁座部材20の第1弁座部21に対して流体の吹出し方向A1側に離間した位置に、第1弁座部21の直径よりも小径の段差部からなる第1規制部16(図6(b)参照)が周方向の全周に亘って形成されており、吹出しノズル部材11の第1中間筒部15の内側における第1弁座部21と第1規制部16との間に当該隙間からなる第1弁室18が形成されている。
【0075】
第1弁室18の断面形状は円形状であり、その直径は吹出しノズル部材11の長さ方向(即ち流体の吹出し方向A1)において一定である。
【0076】
さらに、吹出しノズル部材11の第1雌ねじ筒部12がポンプ球2の第1雄ねじ筒部5に螺合した状態(即ち、吹出しノズル部材11が吹出し部4に取り付けられた状態)において、弁座部材20の第1補強筒部24がポンプ球2の第1雄ねじ筒部5内に内嵌め状に嵌脱自在に嵌合されている。これにより、第1雄ねじ筒部5は第1雌ねじ筒部12との螺合力を受けて内側へ変形しないように第1補強筒部24により補強されるとともに、弁座部材20の吹出し流路23と吹出しノズル部材11の吹出し流路19とが弁口22を介して流体の吹出し方向A1に連通している。
【0077】
第1弁体30は、図8に示すように硬質の樹脂(HDPE、PPなど)製であり、上述したように円板状に形成されており、インジェクション成形により製造されたものである。吹出しノズル部材11の第1中間筒部15の内径(即ち第1弁室18の直径)及び弁座部材20の第1弁座部21の直径は、この第1弁体30の直径と略等しくなるように設定されている。
【0078】
第1弁体30の外周縁部31はその周方向の全周に亘って円形状に形成されている。さらに、第1弁体30の中央部よりも外周側であって外周縁部31よりも内側位置には、流体室3の流体が弁口22を通って吹出し口14から吹き出す際に通過する複数の第1流体流通孔34が流体の吹出し方向A1(即ち第1弁体30の厚さ方向)に貫通して且つ周方向に並んで設けられている。本第1実施形態では第1流体流通孔34の数は6個である。
【0079】
これらの第1流体流通孔34は互いに同一形状及び同一寸法であり且つ第1弁体30の中心P1に対する一つの同心円C1に沿って一列に並んでその周方向の全周に亘って等間隔に配設されている。各第1流体流通孔34は同心円C1に沿って略円弧状に延びた長孔からなる。
【0080】
なお本発明では、これらの第1流体流通孔34は一つの同心円C1に沿って一列に並んで配設されることに限定されるものではなく、第1弁体30の中心P1に対する複数の同心円に沿って複数列に並んで配設されていてもよい。
【0081】
さらに本発明では、第1流体流通孔34の数は6個であることに限定されるものではなく、例えば2個~8個であってもよい。また各第1流体流通孔34の大きさは限定されるものではなくその数などに応じて設定されるものである。例えば第1流体流通孔34が本第1実施形態のように6個である場合、各第1流体流通孔34の長さは例えば1.5mm~3mmの範囲に設定され、その幅は例えば0.5mm~1.5mmの範囲に設定される。
【0082】
第1弁体30の直径及び厚さは限定されるものではなく、風船70及び口部71のサイズなどに応じて設定されるものであり、第1弁体30の直径は例えば5~15mmの範囲に設定され、その厚さは例えば0.5~3mmの範囲に設定される。
【0083】
そして、図4及び5に示すように、第1弁体30は、吹出しノズル部材11の上述した第1弁室18に第1弁座部21と第1規制部16との間を流体の吹出し方向A1及び吸込み方向B1に対して略垂直な姿勢で流体の吹出し方向A1及び吸込み方向B1に移動自在に配置されている。
【0084】
さらに、図8に示すように、第1弁体30の厚さ方向の両面32、33のうち第1弁座部21側に向いた一方の片面32における、複数の第1流体流通孔34が設けられていない部分として、複数の第1流体流通孔34よりも中央部側の部分は、弁口22を閉鎖するように第1弁座部21に面接触状態に当接する第1閉鎖面部35とされている。
【0085】
第1閉鎖面部35は、第1弁体30の一方の片面32における第1閉鎖面部35よりも外周側の部分よりも第1弁体30の厚さ方向の一方側に僅かに突出して且つ平坦状に形成されている。これにより、第1閉鎖面部35が第1弁座部21に当接した際に弁口22を第1閉鎖面部35で確実に閉鎖できるようになっている。第1弁体30の他方の片面33における第1閉鎖面部35の反対側の部分も、同じように第1弁体30の厚さ方向の他方側に僅かに突出して且つ平坦状に形成されている。詳述すると、第1弁体30はその中心軸線に対して垂直な横断面を対称面とした略対称形状に形成されており、第1弁体30を反転させてもその形状は略変わらないようになっている。
【0086】
そして、上述した第1逆止弁機構10は、図5に示すように、第1弁室18において第1弁体30の第1閉鎖面部35が弁口22を閉鎖するように第1弁座部21に面接触状態に当接することにより流体の吸込み方向B1の流れが阻止されるとともに、第1弁体30が第1弁座部21との当接位置(即ち弁口22の閉鎖位置)から第1規制部16側に移動することにより弁口22が開放されて流体の吹出し方向A1の流れが許容され、且つ、第1規制部16側に移動した第1弁体30の他方の片面33側の外周縁部31が第1規制部16に当接することにより、図4に示すように弁口22が開放された状態で第1弁体30の更なる移動が規制されるように構成されている。
【0087】
第1弁室18における第1弁体30の移動ストローク幅S1(図4参照)は限定されるものではないが、ストローク幅S1が小さすぎると流体が第1弁室18を通過する際の抵抗が大きくなりすぎてポンプ球2を圧縮変形させにくくなり、一方、ストローク幅S1が大きすぎると第1弁体30が第1規制部16から第1弁座部21側に移動する途中で流体が弁口22を通って流体室3に吸い込まれる量が多くなりすぎてポンプ効率が低下する傾向にある。したがって、第1弁体30の移動ストローク幅S1は1mm~3mmの範囲であることが好ましい。
【0088】
第2逆止弁機構40の構成を以下に説明する。
【0089】
第2逆止弁機構40は、図3に示すように、ポンプ球2の吸込み部6に設けられた円筒キャップ状の弁箱部材41と、円板状の第2弁体60と、略円筒状の規制部材50とを具備している。
【0090】
弁箱部材41は例えば硬質の樹脂(HDPE、PPなど)製であり、ポンプ球2の吸込み部6に流体室3と連通して且つ分離可能に取り付けられている。
【0091】
すなわち、ポンプ球2の吸込み部6には流体室3と連通した略円筒状の第2雄ねじ筒部7がポンプ球2に対して外方突出状に一体形成されている。第2雄ねじ筒部7の外周面には雄ねじ部7aが螺旋状に形成されている。
【0092】
弁箱部材41は、図9に示すように、弁箱部材41の基端部側に形成された第2雌ねじ筒部42と、弁箱部材41の円板状の底板部からなる第2弁座部43と、第2雌ねじ筒部42と第2弁座部43との間に形成された第2中間筒部45とを一体に備えている。第2雌ねじ筒部42の内周面には第2雄ねじ筒部7の雄ねじ部7aに対応する雌ねじ部42aが螺旋状に形成されている。第2中間筒部45の内径は弁箱部材41の長さ方向(即ち流体の吸込み方向B2)において一定である。
【0093】
弁箱部材41の内周面における第2雌ねじ筒部42と第2中間筒部45との境界部にはその周方向の全周に亘って第2係合溝部47が形成されている。
【0094】
第2弁座部43の中央部には流体室3と連通し且つ外部の流体を吸い込む断面円形状の吸込み口44が流体の吸込み方向B2(即ち第2弁座部43の厚さ方向)に貫通して設けられている。
【0095】
そして、図4に示すように、弁箱部材41は、第2雌ねじ筒部42が第2雄ねじ筒部7に外嵌め状に且つ分離可能に螺合することによりポンプ球2の吸込み部6に流体室3と連通して且つ分離可能に取り付けられている(螺着されている)。
【0096】
規制部材50は、図10に示すように、例えば硬質の樹脂(HDPE、PPなど)製であり、規制部材50の基端部側に形成された略円筒状の第2補強筒部54と、規制部材50の先端部側に形成された略円筒状の第2規制部51と、第2補強筒部54と第2規制部51との境界部の外周部にその周方向の全周に亘って外方突出状に形成された第2鍔部55とを一体に備えている。
【0097】
規制部材50の内側空間は流体室3に外部の流体が吸い込まれる際に通過する吸込み流路53とされており、吸込み流路53は第2規制部51の先端開口から規制部材50の基端部(即ち第2補強筒部54)側に向かって規制部材50の中心軸線に沿って規制部材50の長さ方向の全体に亘って形成されている。第2規制部51の外径は弁箱部材41の第2中間筒部45の内径と略等しい。また、第2規制部51の先端部には、先端側に開いた複数の略コ字状の流体通過用切欠き部52が周方向に等間隔に配設されている。
【0098】
そして、図4に示すように、規制部材50は、第2規制部51が弁箱部材41の第2中間筒部45内に嵌合し且つ第2鍔部55が第2係合溝部47に係脱自在に係合した状態で弁箱部材41の内側に配置されている。第2規制部51は弁箱部材41の内側において第2弁座部43に対して流体の吸込み方向B2側に離間して位置している。
【0099】
このように弁箱部材41の内側に規制部材50が配置された状態において、弁箱部材41の第2中間筒部45の内側における、第2弁座部43と第2規制部51との間に当該隙間からなる第2弁室48が形成されている。
【0100】
第2弁室48の断面形状は円形状であり、その直径は弁箱部材41の長さ方向(即ち流体の吸込み方向B2)において一定である。
【0101】
さらに、弁箱部材41の第2雌ねじ筒部42がポンプ球2の第2雄ねじ筒部7に螺合した状態(即ち、弁箱部材41が吸込み部6に取り付けられた状態)において、規制部材50の第2補強筒部54がポンプ球2の第2雄ねじ筒部7内に内嵌め状に嵌脱自在に嵌合されている。これにより、第2雄ねじ筒部7は第2雌ねじ筒部42との螺合力を受けて内側へ変形しないように第2補強筒部54により補強されるとともに、弁箱部材41の吸込み口44と規制部材50の吸込み流路53とが流体の吸込み方向B2に連通している。
【0102】
第2弁体60は、図11に示すように、上述した第1弁体30と同一形状、同一寸法及び同一材料のものである。
【0103】
すなわち、第2弁体60は、上述したように円板状に形成されており、インジェクション成形により製造されたものである。弁箱部材41の第2中間筒部45の内径(即ち第2弁室48の直径)及び規制部材50の第2規制部51の外径は、この第2弁体60の直径と略等しくなるように設定されている。
【0104】
第2弁体60の外周縁部61はその周方向の全周に亘って円形状に形成されている。さらに、第2弁体60の中央部よりも外周側であって外周縁部61よりも内側位置には、外部の流体が吸込み口44から流体室3に吸い込まれる際に通過する複数の第2流体流通孔64が流体の吸込み方向B2(即ち第2弁体60の厚さ方向)に貫通して且つ周方向に並んで設けられている。
【0105】
これらの第2流体流通孔64は互いに同一形状及び同一寸法であり且つ第2弁体60の中心P2に対する一つの同心円C2に沿って一列に並んでその周方向の全周に亘って等間隔に配設されている。各第2流体流通孔64は同心円に沿って略円弧状に延びた長孔からなる。
【0106】
なお本発明では、これらの第2流体流通孔64は一つの同心円C2に沿って一列に並んで配設されることに限定されるものではなく、第2弁体60の中心P2に対する複数の同心円に沿って複数列に並んで配設されていてもよい。
【0107】
そして、図4及び5に示すように、第2弁体60は、弁箱部材41の上述した第2弁室48に第2弁座部43と第2規制部51との間を流体の吸込み方向B2及び吹出し方向A2に対して略垂直な姿勢で流体の吸込み方向B2及び吹出し方向A2に移動自在に配置されている。
【0108】
さらに、図11に示すように、第2弁体60の厚さ方向の両面62、63のうち第2弁座部43側に向いた一方の片面62における、複数の第2流体流通孔64が設けられていない部分として、複数の第2流体流通孔64よりも中央部側の部分は、吸込み口44を閉鎖するように第2弁座部43に当接する第2閉鎖面部65とされている。
【0109】
第2弁体60は上述したように第1弁体30と同一形状及び同一寸法であるため、第2弁体60の形状の詳細な説明は省略する。
【0110】
そして、上述した第2逆止弁機構40は、図4に示すように、第2弁室48において第2弁体60の第2閉鎖面部65が吸込み口44を閉鎖するように第2弁座部43に面接触状態に当接することにより流体の吹出し方向A2の流れが阻止されるとともに、第2弁体60が第2弁座部43との当接位置(即ち吸込み口44の閉鎖位置)から第2規制部51側に移動することにより吸込み口44が開放されて流体の吸込み方向B2の流れが許容され、且つ、第2規制部51側に移動した第2弁体60の他方の片面63の外周縁部61及びその近傍(詳述すると、外周縁部61から第2流体流通孔64までの外周部)が第2規制部51(詳述すると第2規制部51の先端)に当接することにより、図5に示すように吸込み口44が開放された状態で第2弁体60の更なる移動が規制されるように構成されている。
【0111】
第2弁室48における第2弁体60の移動ストローク幅S2(図4参照)は限定されるものではないが、第1弁室18における第1弁体30の移動ストローク幅S1についての好ましい範囲を設定した上述の理由と同様の理由により、1mm~3mmの範囲であることが好ましい。
【0112】
次に、本第1実施形態のポンプ具1の動作をその使用方法と共に以下に説明する。
【0113】
図1に示すように、風船70の口部71内にポンプ具1の吹出しノズル部材11のノズル部13を挿入し、口部71とノズル部13の外周面との間の隙間から流体が漏出しないように一方の手指(図示せず)で口部71を押さえて隙間を塞ぐ。そして、図4に示すように、ポンプ球2を他方の手(図示せず)で挟圧して弾性的に圧縮変形させる。
【0114】
すると、第1逆止弁機構10では、第1弁室18において第1弁体30がポンプ球2の流体室3から吹出し方向A1の流体圧を受けることで流体の吹出し方向A1に対して略垂直な姿勢で第1規制部16側に移動して第1弁体30の他方の片面33(図8参照)の外周縁部31が第1規制部16に衝当(当接)し、これにより、弁口22が開放された状態で第1弁体30の更なる移動が規制される。そのため、第1逆止弁機構10において流体の吹出し方向A1の流れが許容され、流体室3の流体が弁口22及び第1流体流通孔34を順次通ってノズル部13の吹出し口14から吹き出されて風船70内に充填(注入)される。
【0115】
第2逆止弁機構40では、第2弁室48において第2弁体60がポンプ球2の流体室3から吹出し方向A2の流体圧を受けることで流体の吹出し方向A2に対して略垂直な姿勢で第2弁座部43側に移動して第2弁体60の第2閉鎖面部65が吸込み口44を閉鎖するように第2弁座部43に面接触状態に衝当(当接)し、これにより、吸込み口44が第2閉鎖面部65で閉鎖された状態で第2弁体60の更なる移動が規制される。そのため、第2逆止弁機構40において流体の吹出し方向A2の流れが阻止される。
【0116】
次いで、図5に示すように、他方の手によるポンプ球2への挟圧力を緩めると、圧縮変形したポンプ球2が自己の弾性復元力により弾性的に復元変形する。
【0117】
すると、第1逆止弁機構10では、流体室3が減圧されて第1弁体30が吸込み方向B1の流体圧を受けることで更には風船70からの流体圧(流体噴射圧)を受けることで第1規制部16との当接位置(即ち第1規制部16による規制位置)から流体の吸込み方向B1に対して略垂直な姿勢で第1弁座部21側に移動して第1弁体30の第1閉鎖面部35が弁口22を閉鎖するように第1弁座部21に面接触状態に衝当(当接)し、これにより、弁口22が第1閉鎖面部35で閉鎖された状態で第1弁体30の更なる移動が規制される。そのため、第1逆止弁機構10において流体の吸込み方向B1の流れが阻止される。
【0118】
第2逆止弁機構40では、流体室3が減圧されて第2弁体60が吸込み方向B2の流体圧を受けることで第2弁座部43との当接位置(即ち吸込み口44の閉鎖位置)から流体の吸込み方向B2に対して略垂直な姿勢で第2規制部51側に移動して第2弁体60の他方の片面63(図11参照)の外周縁部61及びその近傍が第2規制部51に衝当(当接)し、これにより、吸込み口44が開放された状態で第2弁体60の更なる移動が規制される。そのため、第2逆止弁機構40において流体の吸込み方向B2の流れが許容され、外部の流体が吸込み口44から第2流体流通孔64及び吸込み流路53を順次通って流体室3に吸い込まれる。
【0119】
このように、本第1実施形態のポンプ具1によれば、ポンプ球2の圧縮変形によって流体室3の流体が弁口22を通って吹出し口14から吹き出されるとともに吸込み口44が閉鎖され、一方、ポンプ球2の復元変形によって弁口22が閉鎖されるとともに外部の流体が吸込み口44から流体室3に吸い込まれる。したがって、ポンプ球2の圧縮変形及び復元変形を繰り返し行うことにより、風船70内に多量の流体を充填(注入)させることができて風船70を大きく膨らますことができる。
【0120】
風船70が所望する大きさに膨らんだら、風船70の口部71内からノズル部13を抜出し、風船70内の流体が口部71から漏出しないように口部71を結ぶ。これにより、ポンプ具1を用いた風船70の膨らまし作業が終了する。
【0121】
本第1実施形態のポンプ具1には次のような利点がある。
【0122】
すなわち、第1逆止弁機構10によれば、第1弁体30が開閉回動動作しないで流体の流れを制御することができる。そのため、第1弁体30を硬質の材料で形成することができ、これにより、第1弁体30をインジェクション成形により製造する場合でも第1弁体30の成形金型への貼り付きを抑制することができるし、第1弁体30を長期間保管することによる第1弁体30の塑性変形も抑制することができる。
【0123】
さらに、第2逆止弁機構40でも、第2弁体60が開閉回動動作しないで流体の流れを制御することができる。そのため、第2逆止弁機構40についても第1逆止弁機構10の上述した利点と同様の利点を有している。
【0124】
さらに、第1弁体30の外周縁部31がその周方向の全周に亘って円形状に形成されているので、第1逆止弁機構10を構成させるために第1弁体30を第1弁室18に組み込む際に第1弁体30の外周縁部31が第1弁室18の近傍の周辺部位(例えば、吹出しノズル部材11の第1雌ねじ筒部12の雌ねじ部12a、第1係合溝部17)に引っ掛からない。そのため、第1弁体30の外周縁部31が凹凸形状等の非円形状に形成されているものに比べて、第1弁体30を第1弁室18に組み込み易い。
【0125】
さらに、第1弁体30の複数の第1流体流通孔34が互いに同一形状及び同一寸法であり且つ第1弁体30の中心P1に対する一つの同心円C1に沿ってその周方向の全周に亘って等間隔に配設されていることにより、流体が第1弁体30の第1流体流通孔34を通過する際に第1弁体30が受ける粘性摩擦力が第1弁体30の周方向において均等に分配される。そのため、第1弁体30が第1弁室18にて移動する際において流体の吹出し方向A1及び吸込み方向B1に対する第1弁体30の姿勢が確実に略垂直に維持される。これにより、第1弁体30が確実に移動動作して弁口22を確実に閉鎖及び開放することができる。
【0126】
さらに、第1弁体30はその中心軸線に対して垂直な横断面を対称面とした略対称形状に形成されているため、第1弁体30の一方の片面32と他方の片面33とを入れ替えて第1弁室18に組み込んでも第1弁体30の上述した作用は損なわれない。したがって、第1弁体30を第1弁室18に組み込む際に第1弁体30の各片面32、33の向きに留意する必要がなく、そのため第1弁体30の第1弁室18への組み込み作業を更に容易に行うことができる。
【0127】
第2弁体60は第1弁体30と同一形状、同一寸法及び同一材料のものであることから、第2弁体60は第1弁体30の上述した利点と同様の利点を有する。さらに、第1弁体30と第2弁体60を区別しないで保管することができるし、両方の弁体30、60を第1及び第2逆止弁機構10、40用の共通の弁体として用いることができる。さらに、両方の弁体30、60をそれぞれ個別に製造する必要がないため、弁体の製造コストを引き下げることができる。
【0128】
また、本第1実施形態のポンプ具1において、第1逆止弁機構10は、ノズル部13の外径、テーパ角及び長さのうち少なくとも一つの寸法が相異する複数の吹出しノズル部材(図示せず)を備えている。したがって、これらの吹出しノズル部材の中から風船70の口部71の内径、長さなどに適合するノズル部13を有する吹出しノズル部材を選択し、これをポンプ球2の吹出し部4(詳述すると第1雄ねじ筒部5)に付け替えることにより、風船70内に流体を充填(注入)する際に口部71とノズル部13の外周面との間の隙間からの流体の漏出を容易に抑制することができる。
【0129】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記第1実施形態に示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0130】
上記第1実施形態では、ポンプ球2の流体室3に入る流体は空気等の気体であるが、本発明では流体は気体であることに限定されるものではなく、その他に、水等の液体であってもよいし気体と液体との混合流体などであってもよい。また本発明に係るポンプ具は、風船として風船ヨーヨーを膨らます際に用いられるものであってもよい。
【0131】
さらに、上記第1実施形態では、吹出しノズル部材(吹出し部材)11及び弁座部材20はポンプ球(ポンプ具本体)2に対してそれぞれ別体に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他に例えば吹出しノズル部材(吹出し部材)及び弁座部材の少なくとも一方がポンプ球(例:ポンプ球の吹出し部)に一体形成されていてもよいし、吹出しノズル部材に弁座部材が一体形成されていてもよい。
【0132】
さらに、上記第1実施形態では、弁箱部材41及び規制部材50はポンプ球(ポンプ具本体)2に対してそれぞれ別体に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他に例えば弁箱部材及び規制部材の少なくとも一方がポンプ球(例:ポンプ球の吸込み部)に一体形成されていてもよいし、弁箱部材に規制部材が一体形成されていてもよい。
【0133】
次に、本発明のもう一つの実施形態について以下に説明する。本実施形態を以下では第2実施形態ともいう。
【0134】
図13~20は本第2実施形態のポンプ具を説明する図である。これらの図において、上記第1実施形態のポンプ具1の要素と同じ作用を奏する要素には100を加算した符号が付されている。以下、本第2実施形態のポンプ具101について上記第1実施形態のポンプ具1との相異点を中心に以下に説明する。
【0135】
本第2実施形態のポンプ具101は、風船、浮き具などの膨出対象物の内部に膨出対象物に設けられた注入部から流体を注入することにより膨出対象物を膨らますために用いられるものである。本第2実施形態では膨出対象物は図13に示すようにゴム製風船170であり、また風船170内に注入される流体は気体であり詳述すると空気である。
【0136】
同図に示すように、風船170は、風船170内部からの流体噴射によって空中を飛行するジェット風船を呼ばれているものである。このジェット風船170は、例えば、野球、サッカー等のスポーツ観戦時の応援グッズとして用いられており、風船170の口部171には略短円筒状の合成樹脂(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等)製の口筒200が装着されている。
【0137】
なお同図に示すように、風船170の上下方向について、説明の便宜上、風船170の口部171側に進む方向を風船170の下方向、その反対方向を風船170の上方向とする。
【0138】
図14に示すように、口筒200の下面204の中央部には風船170の注入部としての断面円形状の注入口207が風船170の内部と連通して設けられており、風船170を膨らます場合はこの注入口207から流体(空気)を吹き込んで風船170内に注入する。さらに、口筒200は、風船170の飛行時に風船170内の流体が注入口207から噴射することにより吹鳴音が発するように構成されている。
【0139】
口筒200は、口筒200の外周壁203の外側において外周壁203と口筒200を咥える人の口(図示せず)との間に呼気抜け隙間Sを形成するスペーサ部220を備えている。呼気抜け隙間Sとは、風船170を膨らますために人が口(詳述すると口唇)に口筒200を咥えて人の呼気(息)を風船170内に吹き込む際に呼気が抜ける隙間を意味する。
【0140】
口筒200は、上下方向の長さ(高さ)が例えば約5mm~15mmの範囲で、外径が例えば約15mm~30mmの範囲のものである。口筒200の下面204及び注入口207は外周壁203の下端位置と略同じ高さに位置している。
【0141】
また、口筒200の下端部208は若干小径に形成されており、当該下端部208の外径が例えば約13mm~27mmの範囲に設定されている。
【0142】
図14及び15に示すように、口筒200は、口筒200の外周壁203から外側に突出するとともに外周壁203の周方向に離間して設けられた2個の薄肉のリブ片部221、221と両リブ片部221、221の突出端部を連結するとともに外周壁203に対して外側に離間して外周壁203の周方向に延びた薄肉の周片部223とからなる呼気抜け枠部230を、上述したスペーサ部220として、1つ又は複数、備えている。本第2実施形態では呼気抜け枠部230の数は2個である。両呼気抜け枠部230、230は互いに同一形状及び同一寸法である。
【0143】
外周壁203から外側へのリブ片部221の突出長さは例えば約1mm~10mmの範囲である。リブ片部221及び周片部223の肉厚は例えば約0.5mm~1.5mmの範囲である。
【0144】
両呼気抜け枠部230、230は、外周壁203の周方向の全周に亘って等間隔に離間して配設されている。そして、外周壁203における隣り合う呼気抜け枠部230、230間の部分の上端面203aが後述するポンプ具101の係止片310が係脱自在に係止する被係止部xとされている。
【0145】
さらに、呼気抜け隙間Sは、外周壁203の外側において呼気抜け枠部230の内側空間231と外周壁203の周方向に隣り合う呼気抜け枠部230、230間の空間232とからなる。したがって、本第2実施形態の口筒200では、呼気抜け隙間Sは2個の呼気抜け枠部230の内側空間231と2個の呼気抜け枠部230間の空間232とからなる。
【0146】
呼気抜け枠部230のリブ片部221及び周片部223は、外周壁203の外側の位置から下方向に口筒200の下面204及び注入口207と同じ高さ位置か又は若干上側の高さ位置まで延びている。
【0147】
なお本発明では、リブ片部221及び周片部223は、口筒200の下面204及び注入口207と同じ高さ位置か又は若干上側の高さ位置まで延びていることに限定されるものではなく、その他に口筒200の下面204及び注入口207の高さ位置よりも下側に延出していてもよい。
【0148】
次に、ポンプ具101の構成を以下に説明する。
【0149】
図15~18に示すように、ポンプ具101は、内側空間を流体室103とする断面略長円形状の合成樹脂(PP、PE等)製のシリンダ102aと、シリンダ102a内に往復移動可能に装填された合成樹脂(PP、PE等)製のピストン102dとを、内側に流体室が形成されたポンプ具本体102として備えている。ピストン102dから横断面十字状の合成樹脂(PP、PE等)製のピストンロッド102eがシリンダ102aの後壁102cよりも後方へ突出しており、ピストンロッド102eの後端部に把持部102fが一体形成されている。
【0150】
シリンダ102aの前壁102bには、ピストン102dの往移動により流体室103から流体を吹き出す吹出し部104と、ピストン102dの復移動により流体室103に外部の流体(外部の空気)を吸い込む吸込み部106とがそれぞれ流体室103と連通して互いに離間して並設されている。
【0151】
吹出し部104には、流体の吹出し方向A1の流れを許容し、流体の吸込み方向B1の流れを阻止する第1逆止弁機構110が設けられている。また、吸込み部106には、流体の吸込み方向B2の流れを許容し、流体の吹出し方向A2の流れを阻止する第2逆止弁機構140が設けられている。
【0152】
第2逆止弁機構140の構成を以下に説明する。
【0153】
図18~20に示すように、第2逆止弁機構140は上記第1実施形態の第2逆止弁機構40と同じ構成である。すなわち、第2逆止弁機構140は、弁箱部材141、第2弁体160及び規制部材150を具備しており、吸込み部106には流体室103と連通した略円筒状の第2雄ねじ筒部107がシリンダ102aの前壁102bに対して前方突出状に一体形成されている。第2逆止弁機構140は上記第1実施形態の第2逆止弁機構40と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0154】
第1逆止弁機構110の構成を以下に説明する。
【0155】
第1逆止弁機構110は、吹出し部104に流体室103と連通して設けられた略円筒状の合成樹脂(PP、PE等)製の発射台部材111Aを吹出し部材として具備している。
【0156】
発射台部材111Aの基端部には第1雌ねじ筒部112が一体形成されている。吹出し部104には流体室103と連通した略円筒状の雄ねじ筒部105がシリンダ102aの前壁102bに対して前方突出状に一体形成されている。そして、発射台部材111Aは、第1雌ねじ筒部112が第1雄ねじ筒部105に外嵌め状に且つ分離可能に螺合することにより、吹出し部104に流体室103と連通して且つ分離可能に取り付けられている(螺着されている)。
【0157】
図15及び16に示すように、発射台部材111Aの先端部には、風船170の口筒200の下端部208が略密封状(即ち略気密及び液密)に嵌入装着される口筒装着部としての受け筒300が設けられており、この受け筒300の内側開口が、受け筒300に嵌入装着された風船170の口筒200(詳述すると口筒200の注入口207)内に流体室103の流体を吹き出す吹出し口114とされている。また、発射台部材111Aにおける第1雌ねじ筒部112と受け筒300との間に第1中間筒部115が形成されている。
【0158】
第1中間筒部115の内側には、上記第1実施形態の吹出しノズル部材11の第1中間筒部15と同じように第1弁室(図示せず)が形成されており、この第1弁室に第1弁体(図示せず)が第1弁座部(図示せず)と第1規制部(図示せず)との間を流体の吹出し方向A1及び吸込み方向B1に対して略垂直な姿勢で流体の吹出し方向A1及び吸込み方向B1に移動自在に配置されている。そして、第1逆止弁機構110は上記第1実施形態の第1逆止弁機構10と同じように構成されている。したがって、第1弁体は第2弁体160と同一形状、同一寸法及び同一材料のものである。
【0159】
さらに、発射台部材111Aは、受け筒300に嵌入装着された口筒200を保持するために口筒200を係脱自在に係止する一対の係止片310、310を備えている。
【0160】
一対の係止片310、310は、受け筒300の外側にて互いに略平行状に対向して且つ両係止片2310、310の先端部が受け筒300の前側位置にて近接離間可能になるように、各係止片310の長さ方向中間部及び基端部312からそれぞれ内側に延びた弾性支脚部313、313を介して発射台部材111Aに一体的に設けられている。各係止片310の先端部には受け筒300の前側位置にて受け筒300の外周面位置よりも内方に突出した係止爪311が形成されている。
【0161】
口筒200の下端部208が受け筒300に嵌入装着された状態において、口筒200の外周壁203の外周面は受け筒300の外周面に略面一に連なっており、係止片310(詳述すると係止片310の係止爪311)が係止する口筒200の被係止部xは上述したように口筒200の外周壁203における隣り合う呼気抜け枠部230、230(スペーサ部220、220)間の部分の上端面203aである(図17参照)。
【0162】
このポンプ具101を用いて風船170を膨らます場合は、図15に示すように、ポンプ具101の発射台部材111Aの受け筒300内にその前側から風船170の口筒200の下端部208を略密封状に嵌入装着する。その途中で口筒200の外周壁203が両係止爪311、311に前方から当接して両係止片310、210の先端部が互いに離間方向に移動するように支脚部313が弾性的に変形し、そして口筒200の下端部208が受け筒300内に完全に嵌入装着されたとき、支脚部313の弾性復元力により両係止片310、310の先端部が元の位置へ互いに近接方向に移動して両係止爪311、311が口筒200の被係止部x、xを係止する。これにより、図17に示すように口筒200が受け筒300に装着された状態が保持される。
【0163】
なお図17では、ポンプ具101の係止片310による口筒200への係止状態を理解し易くするため、風船170において口筒200は図示されているが風船本体は図示省略されている。
【0164】
次いで、シリンダ102aを一方の片手で把持するとともにピストンロッド102eの把持部102fを他方の片手で把持してピストン102dを往移動(その方向D1)させる。
【0165】
すると、図19に示すように第2逆止弁機構140では、上記第1実施形態のポンプ具1の第2逆止弁機構40と同じように第2弁体160が第2弁座部143側に移動して流体の吹出し方向A2の流れが阻止されるとともに、第1逆止弁機構110では、上記第1実施形態のポンプ具1の第1逆止弁機構10と同じように第1弁体が第1規制部側に移動して流体の吹出し方向A1の流れが許容される。これにより、流体室103の流体が発射台部材111Aの受け筒300の吹出し口114から吹き出されるようになるため、当該流体が受け筒300に装着された口筒200の注入口207から風船170内に注入される。
【0166】
次いで、往移動したピストン102dを復移動(その方向D2)させる。すると、図20に示すように第1逆止弁機構110では、上記第1実施形態のポンプ具1の第1逆止弁機構10と同じように第1弁体が第1弁座部側に移動して流体の吸込み方向B1の流れが阻止されるとともに、第2逆止弁機構140では、上記第1実施形態のポンプ具1の第2逆止弁機構40と同じように第2弁体160が第2規制部151側に移動して流体の吸込み方向B2の流れが許容される。そのため、外部の流体が吸込み口144から流体室103に吸い込まれる。
【0167】
このようなピストン102dの往復移動を繰り返し行うことにより、風船170内に多量の流体を注入し得て風船170を大きく膨らますことができる。
【0168】
膨らました風船170を飛ばす場合は、図17に示すように、ポンプ具101のシリンダ102aの前壁102b側を上方向に向け、両係止片310、310の基端部312、312を手指で同時に内側に押圧することにより、両係止爪311、311が口筒200の被係止部xから同時に離脱して口筒200の受け筒300への装着状態の保持が解除される。これにより、風船170が口筒200の注入口207からの流体噴射により空中へ飛び出す(発射する)。
【0169】
したがって、このポンプ具101を用いることにより風船170を容易に膨らますことができるし、膨らました風船170を容易に発射させることができる。
【0170】
このポンプ具101は上記第1実施形態のポンプ具1と同様の利点を有している。
【0171】
さらに、風船170の口筒200は呼気抜け隙間Sを形成するスペーサ部220を備えているので、次のような利点がある。
【0172】
すなわち、近年、新型コロナウィルス、インフルエンザウィルスなどの各種ウィルスに対する感染対策のため、人の呼気を避ける傾向にあるが、従来の風船では、風船の口筒の注入口から噴射される流体(空気)は人の呼気であるため、感染対策に不安がある。
【0173】
しかるに、風船170の口筒200は呼気抜け隙間Sを形成するスペーサ部220を備えていることから、人が口に口筒200を咥えて風船170を膨らまそうとしても人の呼気(息)が呼気抜け隙間Sから抜けるため、口で風船170を膨らませにくくすることができる。したがって、風船170の口筒200の注入口207から噴射される空気による人へのウィルス感染を抑制することができる。
【0174】
さらに、ポンプ具101は、口筒装着部としての受け筒300に装着された口筒200を保持するために係脱自在に係止する係止片310を備えており、係止片310は口筒200の外周壁203におけるスペーサ部220間の部分に形成された被係止部xを係止するものであるから、口筒200がスペーサ部220を備えているものであっても当該口筒200を受け筒300に装着した状態に保持することができる。これにより、風船170を容易に膨らますことができる。
【0175】
ここで本発明では、ポンプ具101の吹出し部104に設けられる第1逆止弁機構110は上記第1実施形態の第1逆止弁機構10と同じように構成されていることが好ましいが、これに限定されるものではなく、その他の逆止弁機構で構成されていてもよい。
【0176】
その他の逆止弁機構としては、従来の風船用ポンプ具に設けられた逆止弁機構によく用いられている公知の逆止弁機構であってもよく、具体的には例えば特開2010-154910号公報に開示された風船発射装置に用いられた逆止弁機構であってもよい。この逆止弁機構では基本的には弁体として図12に示した弁体部材が用いられている。
【0177】
すなわち、例えば、発射台部材111Aにおける第1中間筒部115と受け筒300との境界部の内側に、流体室103と連通した弁口と、当該弁口に対して開閉回動動作する弁片部を有する弁体部材とが配設されており、流体室の流体を吹き出す際に弁体部材の弁片部が流体の吹出し方向A1の流体圧を受けて弁口に対して開回動動作して弁口が開放されることで流体の吹出し方向A1の流れが許容される一方、外部の流体を吸い込む際に弁片部が流体の吸込み方向B1の流体圧を受けて弁口に対して閉回動動作して弁口が弁片部で閉鎖されることで流体の吸込み方向B1の流れが阻止されるように逆止弁機構が構成される。
【0178】
以上で本発明の幾つかの実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0179】
上記第2実施形態では、ポンプ具本体102の流体室103に入る流体は空気等の気体であるが、本発明では流体は気体であることに限定されるものではなく、その他に、水等の液体であってもよいし気体と液体との混合流体などであってもよい。また本発明に係るポンプ具は、風船として風船ヨーヨーを膨らます際に用いられるものであってもよい。
【0180】
また、本発明に係るポンプ具は風船を膨らますために用いられるものであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、風船をはじめ浮き具(例:浮き輪)などの様々な膨出対象物を膨らますために用いることができ、例えば、風船、ボール等の玩具を膨らますために用いられる玩具用ポンプ具であってもよい。
【0181】
さらに、上記第2実施形態では、発射台部材(吹出し部材)111Aはポンプ具本体102に対して別体に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他に発射台部材(吹出し部材)はポンプ具本体(例:ポンプ具本体の吹出し部)に一体形成されていてもよい。
【0182】
さらに、上記第2実施形態では、弁箱部材141及び規制部材150はポンプ具本体102に対してそれぞれ別体に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他に例えば弁箱部材及び規制部材の少なくとも一方がポンプ具本体(例:ポンプ具本体の吸込み部)に一体形成されていてもよいし、弁箱部材に規制部材が一体形成されていてよい。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は風船を膨らます際に用いられるポンプ具に利用可能である。
【0184】
さらに本発明は、風船、浮き具などの膨出対象物を膨らます際に用いられるポンプ具に利用可能である。
【符号の説明】
【0185】
1:ポンプ具 2:ポンプ球(ポンプ具本体)
3:流体室 4:吹出し部
6:吸込み部 10:第1逆止弁機構
11:吹出しノズル部材(吹出し部材) 14:吹出し口
16:第1規制部 18:第1弁室
20:弁座部材 21:第1弁座部
22:弁口 30:第1弁体
31:第1弁体の外周縁部 34:第1流体流通孔
35:第1閉鎖面部 40:第2逆止弁機構
41:弁箱部材 43:第2弁座部
44:吸込み口 48:第2弁室
50:規制部材 51:第2規制部
60:第2弁体 61:第2弁体の外周縁部
64:第2流体流通孔 65:第2閉鎖面部
101:ポンプ具 102:ポンプ具本体
103:流体室 104:吹出し部
106:吸込み部 110:第1逆止弁機構
111A:発射台部材(吹出し部材) 114:吹出し口
140:第2逆止弁機構 141:弁箱部材
143:第2弁座部 144:吸込み口
148:第2弁室 150:規制部材
151:第2規制部 160:第2弁体
164:第2流体流通孔 165:第2閉鎖面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図16
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図19
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