(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147477
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスク及びフォトマスク
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20241008BHJP
G03F 1/32 20120101ALI20241008BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20241008BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/32
G03F1/80
H01L21/302 105A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137275
(22)【出願日】2023-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2023-0043333
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0097936
(32)【優先日】2023-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514205126
【氏名又は名称】エスアンドエス テック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミン-クワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ミン-キュ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ミ-キュン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】チュル-キュ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-デ・キム
【テーマコード(参考)】
2H195
5F004
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BB03
2H195BC05
2H195BC20
2H195BC24
2H195CA01
2H195CA07
2H195CA15
2H195CA22
5F004DA04
5F004DA26
5F004DB12
5F004EB07
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ルテニウム(Ru)を含む位相反転膜を備えたブランクマスクにおいて、エッチング阻止膜と位相反転膜を含む積層構造全体における消滅係数(k)を上げ、屈折率(n)を下げることにより、薄い厚さ、低い相対反射率、低いDtC、及び高いNILSを具現する方案を提供することである。
【解決手段】EUVリソグラフィー用ブランクマスクは、基板上に形成された反射膜、ルテニウム(Ru)を含むキャッピング膜、タンタル(Ta)及びアンチモン(Sb)を含むエッチング阻止膜、及びルテニウム(Ru)を含む位相反転膜を有する。エッチング阻止膜は、タンタル(Ta):アンチモン(Sb)=3:7~7:3の含量比を有する。ルテニウム(Ru)を含む位相反転膜とタンタル(Ta)及びアンチモン(Sb)を含むエッチング阻止膜の積層構造によって、高い消滅係数(k)及び低い屈折率(n)が確保される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された反射膜と、
前記反射膜上に形成され、ルテニウム(Ru)を含むキャッピング膜と、
前記キャッピング膜上に形成され、タンタル(Ta)及びアンチモン(Sb)を含むエッチング阻止膜と、
前記エッチング阻止膜上に形成され、ルテニウム(Ru)を含む位相反転膜と、
を含むことを特徴とする極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項2】
前記エッチング阻止膜は、タンタル(Ta):アンチモン(Sb)=3:7~7:3の含量比を有することを特徴とする、請求項1に記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項3】
前記エッチング阻止膜は、アンチモン(Sb)の含量がタンタル(Ta)の含量よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項4】
前記エッチング阻止膜は、窒素(N)1~10at%をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項5】
前記エッチング阻止膜は、
前記キャッピング膜上に形成され、窒素(N)をさらに含む第1層と、
前記第1層上に形成され、酸素(O)をさらに含む第2層と
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項6】
前記第1層は、窒素(N)1~10at%を含み、
前記第2層は、酸素(O)1~10at%を含むことを特徴とする、請求項5に記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項7】
前記エッチング阻止膜は、2~20nmの厚さを有することを特徴とする、請求項3に記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項8】
前記位相反転膜は、ルテニウム(Ru)70~99at%を含み、窒素(N)及び酸素(O)のいずれか一方を1~30at%含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項9】
前記位相反転膜は、ルテニウム(Ru)40~98at%、窒素(N)1~30at%、及び酸素(O)1~30at%を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項10】
前記位相反転膜上に形成されたハードマスク膜をさらに含み、
前記ハードマスク膜は、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項11】
前記ハードマスク膜は、
前記位相反転膜上に形成され、タンタル(Ta)及び窒素(N)を含む下層と、
前記下層上に形成され、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含む上層と
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項12】
前記下層は、タンタル(Ta)70~99at%及び窒素(N)1~30at%を含み、
前記上層は、タンタル(Ta)70~99at%及び酸素(O)1~30at%を含むことを特徴とする、請求項11に記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項13】
前記位相反転膜上に形成されたハードマスク膜をさらに含み、
前記ハードマスク膜は、クロム(Cr)及びニオビウム(Nb)を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項14】
前記ハードマスク膜は、クロム(Cr):ニオビウム(Nb)=3:7~6:4を含むことを特徴とする、請求項13に記載の極端紫外線リソグラフィー用ブランクマスク。
【請求項15】
請求項1に記載のブランクマスクを用いて製造された極端紫外線リソグラフィー用フォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランクマスク(Blankmask)及びフォトマスク(Photomask)に関し、ウエハー印刷(Wafer Printing)時に優れた解像度(Resolution)の具現のためにEUV露光光に対して位相を反転させる位相反転膜を備えた極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスク及びこれを用いて製造されるフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
EUVリソグラフィーに用いられるブランクマスクは、一般に、基板上にEUV光を反射する反射膜及びEUV光を吸収する吸収膜の2種の薄膜を含んでなる。最近では、このような吸収膜を備えたバイナリ形態のブランクマスクに比べてより高い解像度(Resolution)を具現できる位相反転ブランクマスクの開発が試みられている。位相反転ブランクマスクは、バイナリブランクマスクに比べて高いNILS(Normalized Image Log Slope)を有し、よって、ウエハー印刷時に、ショット雑音効果(Shot Noise Effect)による確率的欠陥(Stochastic Defect)を減らすことができる。また、位相反転ブランクマスクは、低いDtC(Dose to Clear)の具現が可能であり、半導体生産性を高めることができる。
【0003】
EUVリソグラフィー用位相反転ブランクマスクにおいて、位相反転膜は、フォトマスクの製造が容易であり、ウエハー印刷時に性能(Performance)に優れる材料を用いて製作されることが好ましい。このような点を考慮した位相反転膜の材質として、ルテニウム(Ru)が研究されている。
【0004】
図1は、ルテニウム(Ru)を含む位相反転膜を備えた極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクの構造を示す図である。
図1の構造は、本発明の技術的特徴を説明するために、本発明と対比される出願人の従来技術を示しているものであり、以下に説明される
図1の構造が本発明の出願前に公知されていることを意味するものではない。
【0005】
極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクは、基板102、基板102上に形成された反射膜104、反射膜104上に形成されたキャッピング膜105、キャッピング膜105上に形成されたエッチング阻止膜107、エッチング阻止膜107上に形成された位相反転膜108、位相反転膜108上に形成されたハードマスク膜109、及びハードマスク膜109上に形成されたレジスト膜110を含む。
【0006】
キャッピング膜105は、ルテニウム(Ru)を含む物質で形成され、位相反転膜108も、ルテニウム(Ru)を含む物質、具体的にはRuONで形成される。
【0007】
エッチング阻止膜107は、2層構造、すなわち、キャッピング膜105上の第1層107aと、第1層107a上の第2層107bで構成される。第1層107aはTaBNで形成され、第2層107bはTaBOで形成される。
【0008】
ハードマスク膜109はTaBOからなる。
【0009】
上記のような構成のブランクマスクを用いてフォトマスクを製造するために、まず、電子ビーム書き込み(e-beam Writing)後に現像(Develop)工程によってレジスト膜110のパターンを形成し、レジスト膜パターンをエッチングマスクとして用いてTaBOのハードマスク膜109をエッチングすることでハードマスク膜パターンを形成する。この時、エッチングガスとしてフッ素(F)系ガスを用いる。その後、レジスト膜パターンを除去した後、ハードマスク膜パターンをエッチングマスクとして用いて位相反転膜108を、酸素(O2)含有の塩素(Cl2)系ガスでエッチングする。
【0010】
一方、タンタル(Ta)は、塩素系ガスによってエッチングされるが、タンタル(Ta)に酸素(O)が追加される場合にはフッ素(F)系ガスによってエッチングされる。したがって、エッチング阻止膜107のエッチング工程では、まずTaBOの第2層107bがフッ素系ガスによってエッチングされ、この時、ハードマスク膜109のパターンが共にエッチングされて除去される。その後、酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系ガスを用いてエッチング阻止膜107の第1層107aをエッチングする。これで、位相反転フォトマスクの製造が完了する。
【0011】
上記のような構造の位相反転ブランクマスクにおいて、ルテニウム(Ru)を含む位相反転膜108は、塩素(Cl
2)系ガスを用いてエッチングされる。このとき、塩素(Cl
2)ガスのみを用いてエッチングする場合にはエッチング速度が非常に遅く、一定以上のエッチング速度を確保するために、酸素(O
2)含有の塩素(Cl
2)系ガスが用いられる。ところが、
図1の構造では、キャッピング膜105と位相反転膜108が共通にルテニウム(Ru)を含んでいる。このため、仮にエッチング阻止膜107がないと、位相反転膜108のパターニングのためのエッチング時に、エッチングガスに含まれた酸素(O
2)によってキャッピング膜105にダメージ(damage)が発生し、キャッピング膜105の反射率が減少する。エッチング阻止膜107は、酸素(O
2)含有の塩素(Cl
2)系ガスがキャッピング膜105と接することを防止することにより、キャッピング膜105のダメージ(damage)を防ぐ機能を有する。
【0012】
ところが、Ruを含む位相反転膜108を形成する場合には、エッチング阻止膜107が上記のように2層構造で形成されることが好ましい。仮にエッチング阻止膜107がTaBNの単一層で構成されると、TaBNは酸化に脆弱なため、RuONの位相反転膜108のエッチング時に酸素(O2)によってエッチング阻止膜107の表面に酸化が発生する。このような酸化はランダムに分布するため、エッチング阻止膜107の表面の欠陥(defect)を誘発し、その上、塩素(Cl2)系ガスを用いたエッチング時にエッチング率の低下を招く。また、塩素(Cl2)系ガスを用いたエッチングは主に化学的側面のエッチング(Chemical Etching)であり、フッ素(F)系ガスを用いたエッチングは主に物理的側面のエッチング(Physical Etching)である。このため、仮にエッチング阻止膜107がTaBOの単一層で構成されると、フッ素(F)系ガスを用いたエッチング時にキャッピング膜105が物理的ダメージを負ってしまう。このような点から、第1層107aをTaBNで形成し、第2層107bをTaBOで形成することにより、キャッピング膜105が酸素(O2)によるダメージ及びフッ素(F)系ガスによるダメージを負うことを防止する。
【0013】
上記のようなブランクマスクを用いて製造されたフォトマスクを用いてウエハーを露光する工程において、生産性を向上させるためには、DtCをより下げる必要があり、パターンのCD改善のためにはNILSをより上げる必要がある。DtCを下げるためには、位相反転膜108が高い消滅係数(k)を有することが好ましい。具体的には、露光工程においてサイドローブ(sidelobe)現象を防止するためには、位相反転膜108の相対反射率が15%以下であることが好ましく、相対反射率をこのように下げながらも位相反転膜108の厚さを薄くするためには消滅係数(k)が高いことが好ましい。NILSを上げるためには、位相反転膜108は低い屈折率(n)を有することが好ましい。しかし、ルテニウム(Ru)は屈折率(n)が低く、消滅係数(k)が低いため、このような2つの要求を同時に満たすことはできない。
【0014】
位相反転膜108の下部のエッチング阻止膜107は、位相反転膜108と一緒に位相反転(phase shift)機能を担う。したがって、エッチング阻止膜107が高い消滅係数(k)を有すると、実質的に位相反転膜として働く全体薄膜、すなわち、エッチング阻止膜107と位相反転膜108の積層構造全体の消滅係数(k)は高くなる。しかし、
図1のエッチング阻止膜107は、EUV波長に対する消滅係数(k)が約0.04であるタンタル(Ta)を含んでいるため、位相反転機能を担う全体薄膜107,108が高い消滅係数(k)を有することができない。このような問題はエッチング阻止膜107の厚さを増加させることによって解決できるが、この場合、位相反転機能を担う全体薄膜107,108の厚さが増加するため、DtCが悪化し、3D効果(3D Effect)が大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、ルテニウム(Ru)を含む位相反転膜を備えたブランクマスクにおいて、エッチング阻止膜と位相反転膜を含む積層構造全体における消滅係数(k)を上げ、屈折率(n)を下げることにより、薄い厚さ、低い相対反射率、低いDtC、及び高いNILSを具現する方案を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るEUVリソグラフィー用ブランクマスクは、基板、前記基板上に形成された反射膜、前記反射膜上に形成され、ルテニウム(Ru)を含むキャッピング膜、前記キャッピング膜上に形成され、タンタル(Ta)及びアンチモン(Sb)を含むエッチング阻止膜、及び前記エッチング阻止膜上に形成され、ルテニウム(Ru)を含む位相反転膜を含むことを特徴とする。
【0017】
前記エッチング阻止膜は、タンタル(Ta):アンチモン(Sb)=3:7~7:3の含量比を有する。
【0018】
前記エッチング阻止膜は、アンチモン(Sb)の含量がタンタル(Ta)の含量よりも大きく構成されてよい。
【0019】
前記エッチング阻止膜は、窒素(N)をさらに含んでよい。前記エッチング阻止膜は窒素(N)1~10at%を含む。
【0020】
前記エッチング阻止膜は、前記キャッピング膜上に形成され、窒素(N)をさらに含む第1層、及び前記第1層上に形成され、酸素(O)をさらに含む第2層を含んでよい。前記第1層は窒素(N)1~10at%を含み、前記第2層は酸素(O)1~10at%を含む。
【0021】
前記エッチング阻止膜は、2~20nmの厚さを有する。
【0022】
前記位相反転膜は、窒素(N)をさらに含んでよい。前記位相反転膜は、ルテニウム(Ru)70~99at%、及び窒素(N)1~30at%を含む。
【0023】
前記位相反転膜は、酸素(O)をさらに含んでよい。前記位相反転膜は、ルテニウム(Ru)70~99at%、及び酸素(O)1~30at%を含む。
【0024】
前記位相反転膜は、窒素(N)及び酸素(O)をさらに含んでよい。前記位相反転膜は、ルテニウム(Ru)40~98at%、窒素(N)1~30at%、及び酸素(O)1~30at%を含む。
【0025】
前記位相反転膜は、25~40nmの厚さを有する。
【0026】
前記位相反転膜上にはハードマスク膜が形成されてよい。
【0027】
前記ハードマスク膜は、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含んでよい。
【0028】
前記ハードマスク膜は、前記位相反転膜上に形成され、タンタル(Ta)及び窒素(N)を含む下層、及び前記下層上に形成され、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含む上層を含んでよい。前記下層は、タンタル(Ta)70~99at%及び窒素(N)1~30at%を含み、前記上層は、タンタル(Ta)70~99at%及び酸素(O)1~30at%を含む。
【0029】
前記ハードマスク膜は、ボロン(B)をさらに含んでよい。
【0030】
前記ハードマスク膜は、クロム(Cr)及びニオビウム(Nb)を含んでよい。前記ハードマスク膜は、クロム(Cr):ニオビウム(Nb)=3:7~6:4を含む。
【0031】
前記ハードマスク膜は、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)のうち一つ以上をさらに含んでよい。
【0032】
前記ハードマスク膜は、2~4nmの厚さを有する。
【0033】
本発明の他の側面によれば、上記のような構成のブランクマスクを用いて製造された極端紫外線リソグラフィー用フォトマスクが提供される。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ルテニウム(Ru)を含む位相反転膜と、タンタル(Ta)及びアンチモン(Sb)を含むエッチング阻止膜との積層構造により、高い消滅係数(k)及び低い屈折率(n)が確保される。したがって、EUV用位相反転ブランクマスクに対して要求される特性、すなわち、ウエハー印刷時に、優れた解像度(Resolution)及びNILS(Normalized Image Log Slop)の具現が可能であり、低いDtC(Dose to Clear)の具現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクの構造を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施例に係る極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクを示す図である。
【
図3】本発明の第2実施例に係る極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクを示す図である。
【
図4】本発明の第3実施例に係る極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクを示す図である。
【
図5】本発明の第4実施例に係る極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、図面を参照して本発明をより具体的に記述する。
【0037】
図2は、本発明の第1実施例に係る極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクを示す図である。
【0038】
本発明に係る極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクは、基板202、基板202上に形成された反射膜204、反射膜204上に形成されたキャッピング膜205、キャッピング膜205上に形成されたエッチング阻止膜207、エッチング阻止膜207上に形成された位相反転膜208、及び位相反転膜208上に形成されたレジスト膜210を備える。
【0039】
基板202は、EUV露光光を用いる反射型ブランクマスク用グラス基板として適合するように、露光時の熱によるパターンの変形及びストレスを防止するために0±1.0×10-7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有し、好ましくは、0±0.3×10-7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するLTEM(Low Thermal Expansion Material)基板で構成される。基板202の素材としては、SiO2-TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックなどを用いることができる。
【0040】
反射膜204は、EUV露光光を反射する機能を有し、各層の屈折率が互いに異なる多層膜構造を有する。具体的には、反射膜204は、Mo材質の層とSi材質の層を交互に40~60層積層して形成される。
【0041】
キャッピング膜205は、反射膜204の酸化膜形成を防止して反射膜204のEUV露光光に対する反射率を維持し、エッチング阻止膜207のパターニング進行時に反射膜204がエッチングされることを防ぐ役割を担う。一般に、キャッピング膜205は、ルテニウム(Ru)を含む材質で形成される。キャッピング膜205は、2~5nmの厚さで形成される。キャッピング膜205の厚さが2nm以下であれば、キャッピング膜205としての機能を発揮し難く、5nm以上であれば、EUV露光光に対する反射率が低下する問題がある。
【0042】
エッチング阻止膜207は、位相反転膜208のエッチング時にキャッピング膜205を保護する機能を担う。エッチング阻止膜207は、ハードマスク膜209と位相反転膜208のエッチング後に、ハードマスク膜209のパターン及び位相反転膜208のパターンをエッチングマスクとして用いてエッチングされ、この時、キャッピング膜205のダメージを防止するために、エッチング阻止膜207は酸素(O2)不含のガスによってエッチングされなければならない。
【0043】
エッチング阻止膜207は、また、位相反転膜208と一緒にEUV露光光に対する位相反転(phase shift)機能を担う。したがって、機能的側面では、エッチング阻止膜207と位相反転膜208との積層構造全体が位相反転機能を有する。以下では、エッチング阻止膜207と位相反転膜208との積層構造全体を「全体位相反転膜207,208」と称する。
【0044】
エッチング阻止膜207が全体位相反転膜207,208の一部として働くので、全体位相反転膜207,208の消滅係数(k)を高めるために、エッチング阻止膜207は、高い消滅係数(k)を有する物質で構成されることが好ましい。本発明において、エッチング阻止膜207は、タンタル(Ta)及びアンチモン(Sb)を含む。タンタル(Ta)とアンチモン(Sb)は、位相反転膜208の主な構成物質であるルテニウム(Ru)に比べて、EUV露光光に対する消滅係数(k)が高い。したがって、タンタル(Ta)とアンチモン(Sb)を含むエッチング阻止膜207によって全体位相反転膜207,208の消滅係数(k)を高めることができる。タンタル(Ta)とアンチモン(Sb)は、3:7~7:3の含量比を有してよい。
【0045】
エッチング阻止膜207は、消滅係数(k)が0.05以上、好ましくは0.06以上になるように構成される。タンタル(Ta)に比べてアンチモン(Sb)の消滅係数(k)が高いので、このような消滅係数(k)を確保するために、アンチモン(Sb)の含量がタンタル(Ta)に比べて高いことが好ましい。
【0046】
エッチング阻止膜207は、窒素(N)をさらに含んでよい。窒素(N)をさらに含む場合に、窒素(N)の含量調節によってエッチング阻止膜207の消滅係数(k)と屈折率(n)を調節することができる。このとき、窒素(N)の含量は1~10at%が好ましい。TaSbNで構成されたエッチング阻止膜207は、酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系エッチングガスによってエッチングされる。
【0047】
エッチング阻止膜207は、2~20nmの厚さを有する。
【0048】
位相反転膜208は、露光光の位相を反転させて反射させることにより、反射膜204によって反射される露光光を相殺干渉させる。位相反転膜208は、ルテニウム(Ru)を含む。位相反転膜208は、塩素(Cl2)系ガスによってエッチングされ、特にエッチング速度を確保するために、酸素(O2)含有の塩素(Cl2)系ガスによってエッチングされる。
【0049】
位相反転膜208は、窒素(N)をさらに含んでよい。窒素(N)を含む場合に、位相反転膜208の屈折率(n)制御がし易いので、要求される位相反転量の具現が容易である。これにより、NILSが改善され、要求される位相反転量を具現しながらも位相反転膜208の厚さを減少させることができる。窒素(N)が含まれる場合に、位相反転膜208の屈折率(n)が増加するため、窒素(N)の含量は適切に選択されなければならない。位相反転膜208がRuNで構成される場合に、窒素(N)の含量は30at%以下が好ましい。具体的には、位相反転膜208は、ルテニウム(Ru)70~99at%及び窒素(N)1~30at%を含む。
【0050】
位相反転膜208は、酸素(O)をさらに含んでよい。酸素(O)が含まれる場合に、位相反転膜208のDUV波長に対する反射率が低くなり、DUV検査光を用いた位相反転膜208の検査が効果的に行われ得る。位相反転膜208がRuOで構成される場合に、酸素(O)の含量は30at%以下が好ましい。具体的には、位相反転膜208は、ルテニウム(Ru)70~99at%及び酸素(O)1~30at%を含む。
【0051】
位相反転膜208は、窒素(N)及び酸素(O)をさらに含んでよい。窒素(N)及び酸素(O)の両方を含む場合には、その含量比の調節によって、上記のような窒素(N)含有時の効果と酸素(O)含有時の効果の両方を得ることができる。位相反転膜208がRuONで構成される場合に、窒素(N)と酸素(O)の含量はそれぞれ30at%以下が好ましい。具体的には、位相反転膜208は、ルテニウム(Ru)40~98at%、窒素(N)1~30at%、及び酸素(O)1~30at%を含む。
【0052】
位相反転膜208は、25~40nmの厚さを有する。
【0053】
13.5nm波長の露光光において全体位相反転膜207,208の相対反射率は6~15%である。ここで、相対反射率は、反射膜204とキャッピング膜205との積層構造における反射率に対する全体位相反転膜207,208における反射率の比率を意味する。また、全体位相反転膜207,208は、180~220゜、好ましくは185~220゜の位相反転量を有する。
【0054】
ハードマスク膜209は、位相反転膜208のエッチング時にエッチングマスクとして用いられ、そのために、ハードマスク膜209は位相反転膜208に対してエッチング選択比を有する物質で形成される。
【0055】
ハードマスク膜209が単一層で構成される場合に、ハードマスク膜209は、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含んでよい。タンタル(Ta)を含むハードマスク膜209は、酸素(O)をさらに含む場合に、フッ素(F)系エッチングガスによってエッチングされ、酸素(O)を含まない場合に、塩素(Cl2)系エッチングガスによってエッチングされる。したがって、タンタル(Ta)と酸素(O)を含む単一層のハードマスク膜209は、フッ素(F)系エッチングガスによってエッチングされる。
【0056】
ハードマスク膜209は、
図2のように2層構造を有してよい。具体的には、ハードマスク膜209は、位相反転膜208上に形成された下層209a、及び下層209a上に形成された上層209bを含む。下層209aは、窒素(N)をさらに含み、上層209bは、酸素(O)をさらに含む。したがって、下層209aは塩素(Cl
2)系エッチングガスによってエッチングされ、上層209bはフッ素(F)系エッチングガスによってエッチングされる。下層209aは、タンタル(Ta)70~99at%及び窒素(N)1~30at%を含み、上層209bは、タンタル(Ta)70~99at%及び酸素(O)1~30at%を含む。仮にハードマスク膜209が、タンタル(Ta)と酸素(O)を含む単一層で構成され、フッ素(F)系エッチングガスによってエッチングされる場合には、エッチング過程でフッ素(F)ガスが位相反転膜208にダメージを与える。しかしながら、ハードマスク膜209をこのような2層構造で形成することにより、上層209bがフッ素(F)系ガスでエッチングされた後、下層209aが酸素(O
2)不含の塩素(Cl
2)系ガスでエッチングされ、よって、上記のようなダメージが防止される。
【0057】
ハードマスク膜209は、ボロン(B)をさらに含んでよい。ハードマスク膜209のボロン(B)含量は、20at%以下、好ましくは15at%以下である。この場合、下層207aはTaBNで構成され、上層207bはTaBOで構成される。
【0058】
ハードマスク膜209は、5nm以下、好ましくは2~4nmの厚さを有する。ハードマスク膜209が2層構造を有する場合に、上層209bと下層209aはそれぞれ3nm以下の厚さを有することが好ましい。
【0059】
レジスト膜210は、化学増幅型レジスト(CAR:Chemically Amplified Resist)で構成される。レジスト膜210は、40~100nm、好ましくは40~80nmの厚さを有する。
【0060】
上記のような本発明のブランクマスクは、エッチング阻止膜207が高い消滅係数(k)を有するので、全体位相反転膜207,208の消滅係数(k)が高くなる。また、全体位相反転膜207,208の屈折率(n)が低いため、40nm以下の少ない厚さでも要求される位相反転量の確保が可能である。したがって、DtCを低くして生産性を増加させることができ、NILSを高めてパターンの精密度を向上させることができる。
【0061】
上記のような構成のブランクマスクを用いてフォトマスクを製造する工程は、下記の通りである。
【0062】
まず、電子ビーム書き込み(e-beam Writing)及び現像(Develop)工程によってレジスト膜210のパターンを形成した後、レジスト膜パターンをエッチングマスクとして用いてハードマスク膜209をエッチングする。TaBOの単一層構造のハードマスク膜209のエッチングにはフッ素(F)系エッチングガスが用いられる。TaBO/TaBNの2層構造のハードマスク膜209のエッチング時には、フッ素(F)系エッチングガスを用いて上層209bをエッチングした後、酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系エッチングガスで下層209aをエッチングする。
【0063】
レジスト膜パターンを除去し、ハードマスク膜209のパターンをエッチングマスクとして用いて位相反転膜208をエッチングする。位相反転膜208のエッチングには、酸素(O2)含有の塩素(Cl2)系エッチングガスが用いられる。
【0064】
ハードマスク膜209のパターン及び位相反転膜208のパターンをエッチングマスクとして用いてエッチング阻止膜207をエッチングする。エッチング阻止膜207のエッチングには、酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系エッチングガスが用いられる。具体的には、酸素(O2)含有の塩素(Cl2)系ガスによる位相反転膜208のエッチング終点を、EPD(End Point Detection)装備を用いて確認した後、酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系ガスを用いてエッチング阻止膜207をエッチングする。
【0065】
ハードマスク膜209がTaBOの単一層で構成される場合には、エッチング阻止膜207のエッチング後に、ハードマスク膜209がフッ素(F)系エッチングガスによってエッチングされて除去される。ハードマスク膜209がTaBOの上層209bとTaBNの下層209aを備える場合には、上層209bがフッ素(F)系エッチングガスによってエッチングされて除去された後、下層209aが酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系エッチングガスによってエッチングされて除去される。この時、エッチング阻止膜207のエッチング工程とハードマスク膜209の下層209aの除去工程は同時に行われてよい。そのためには、ハードマスク膜209の上層209bの除去工程がエッチング阻止膜207のエッチング工程よりも先に行われなければならない。
【0066】
図3は、本発明の第2実施例に係る極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクを示す図である。
図2の第1実施例と対比して、
図3の第2実施例のブランクマスクはエッチング阻止膜207のみが異なるだけで、残りの構成は同一である。以下の実施例に関する説明及び図面において、上述した実施例の構成要素と対応する構成要素には、図示及び説明の便宜上、同一の参照符号を付する。
【0067】
第2実施例において、エッチング阻止膜207は、キャッピング膜205上に形成された第1層207a、及び第1層207a上に形成された第2層207bを含む。第1層207aは窒素(N)をさらに含み、第2層207bは酸素(O)をさらに含む。これにより、第1層207aはTaSbNで構成され、第2層207bはTaSbOで構成される。第1層207aは窒素(N)1~30at%を含み、第2層207bは酸素(O)1~30at%を含む。
【0068】
第2層207bは、フッ素(F)系エッチングガスによってエッチングされ、第1層207aは、酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系エッチングガスによってエッチングされる。したがって、第2実施例の構成によれば、エッチング阻止膜207の第2層207bがエッチングされる間に、ハードマスク膜209の上層209bが共にエッチングされて除去され、エッチング阻止膜207の第1層207aがエッチングされる間に、ハードマスク膜209の下層209aが共にエッチングされて除去される。したがって、ハードマスク膜209の除去のための別個の工程が不要である。
【0069】
図4は、本発明の第3実施例に係る極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクを示す図である。
図2の第1実施例と対比して、
図4の第3実施例のブランクマスクはハードマスク膜209のみが異なるだけで、残りの構成は同一である。
【0070】
ハードマスク膜209は、クロム(Cr)及びニオビウム(Nb)を含む。このようなハードマスク膜209は、塩素(Cl2)系エッチングガスによってエッチングされ、特に、酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系エッチングガスによってエッチングされる。ハードマスク膜209は、Cr:Nb=3:7~6:4のat%の比率で含有するように構成されることが好ましい。Nbの含量がこのような比率よりも低い場合には、酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系ガスによるエッチング速度が相対的に遅いため、レジスト膜210の薄膜化が難しく、Nbの含量がこの比率よりも高い場合には、レジスト膜210との接着力が低下する問題点がある。
【0071】
ハードマスク膜209は、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)のうち一つ以上の軽元素物質をさらに含んでよい。このとき、軽元素物質は1~30at%の含量を有することが好ましい。具体的には、ハードマスク膜209は、Cr 30~60at%、Nb 20~40at%、C 0~10at%、O 0~30at%、N 0~30at%の組成を有する。
【0072】
前述した第1実施例及び第2実施例では、ハードマスク膜209が2層構造を備えている。このような2層構造は、TaBOの単一層構造のハードマスク膜209のエッチング時に発生する、フッ素(F)系エッチングガスによる位相反転膜208のダメージを減らす機能を有する。しかし、このような2層構造のハードマスク膜209は、下層209aをオーバーエッチング(overetching)する場合に、上層209bに比べて下層209aが側方に深くエッチングされ、下層209aと上層209bのパターンプロファイルが悪くなる。そのため、CD再現性が低下する問題点が発生し得る。しかし、本実施例ではハードマスク膜209が単一層で構成されるため、このような問題が発生しない。
【0073】
また、本実施例によれば、ハードマスク膜209のエッチング時に酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系ガスが用いられるので、その下部の位相反転膜208に酸素(O2)によるダメージが発生しない。なお、ハードマスク膜209がエッチング阻止膜207のエッチング時に酸素(O2)不含の塩素(Cl2)系ガスによって共にエッチングされて除去されるので、フォトマスクの製造工程が簡素化する。
【0074】
図5は、本発明の第4実施例に係る極端紫外線リソグラフィー用位相反転ブランクマスクを示す図である。
図4の第3実施例と対比して、
図5の第4実施例のブランクマスクはエッチング阻止膜207のみが異なるだけで、残りの構成は同一である。エッチング阻止膜207の構成は、
図3の第2実施例の構成と同一である。
【0075】
本実施例では、エッチング阻止膜207の第1層207aがエッチングされる間にハードマスク膜209が共にエッチングされて除去される。
【0076】
以上では、図面を参照して本発明の実施例を用いて本発明を具体的に説明したが、実施例は、単に、本発明の例示及び説明をするための目的で挙げられただけで、意味限定や特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するためのものではない。したがって、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、実施例から様々な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点が理解できよう。したがって、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲の技術的事項によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0077】
102 基板
104 反射膜
105 キャッピング膜
107 エッチング阻止膜
107a 第1層
107b 第2層
108 位相反転膜
109 ハードマスク膜
110 レジスト膜
202 基板
204 反射膜
205 キャッピング膜
207 エッチング阻止膜
207a 第1層、下層
207b 第2層、上層
208 位相反転膜
209 ハードマスク膜
209a 下層
209b 上層
210 レジスト膜