(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147496
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電気消費体の方向に電力を無線伝送するための装置の操作方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/90 20160101AFI20241008BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241008BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20241008BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
H02J50/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026634
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】23166371
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】597022218
【氏名又は名称】エーゲーオー エレクトロ・ゲレーテバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】エゲンター, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】パブロビッチ, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェシュテル, ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ドラーク, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ルロフス, クラース
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誘導結合によって電気消費体の方向に電力又は電気エネルギーを無線伝送するための装置を操作するための方法及びできるだけ信頼性がありかつフレキシブルな操作を可能にする対応システムを提供する。
【解決手段】方法は、電気消費体(200)がトランスミッターコイル(101)に誘導結合されていない間に、トランスミッターコイル(101)を含む発振回路(103)の第一特性周波数f
0_
1を決定し;電気消費体(200)がトランスミッターコイル(101)に誘導結合され、かつ電気消費体(200)の電気負荷(204)が不活性化されている間に、トランスミッターコイル(101)を含む発振回路(103)の第二特性周波数f
0_
2を決定し、周波数Δf
c=f
0_
1-f
0_
2に依存して装置(100)を操作することを含む。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導結合によって電気消費体(200)の方向に電力を無線伝送するための装置(100)を操作する方法であって、前記装置(100)が、
- 交番主電圧(UN)に基づいてDC電圧(US)を発生するための整流器(108)、
- DC電圧(US)によって供給され、かつパルス幅変調制御信号(AS)を発生するように適応されたインバータ(102)、及び
- パルス幅変調制御信号(AS)を供給され、かつ電気消費体(200)の方向に電力を無線伝送するために使用される交番磁界を発生するように適応されたトランスミッターコイル(101)
を含み、
前記方法が、
- 電気消費体(200)がトランスミッターコイル(101)に誘導結合されていない間に、トランスミッターコイル(101)を含む発振回路(103)の第一特性周波数f0_1を決定し、
- 電気消費体(200)がトランスミッターコイル(101)に誘導結合され、かつ電気消費体(200)の電気負荷(204)が不活性化されている間に、トランスミッターコイル(101)を含む発振回路(103)の第二特性周波数f0_2を決定し、
- 周波数差Δfc=f0_1-f0_2に依存して装置(100)を操作する
ことを含む、方法。
【請求項2】
電気消費体(200)がトランスミッターコイル(101)に誘導結合され、かつ電気消費体(200)の電気負荷(204)が活性化されている間に、トランスミッターコイル(101)を含む発振回路(103)の第三特性周波数f0_3を決定し、
- 周波数fcalc=f0_3+Δfcに依存して装置(100)を操作する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周波数fcalcに依存してかつ電気消費体(200)の設計パラメータに依存して伝達関数P(f)の特性を推定し、伝達関数P(f)が、操作周波数に依存して装置(100)によって伝送可能な電力を特定し、電気消費体(200)の設計パラメータが、電気消費体(200)の電気特性及び/又は機械特性を特定することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
伝達関数P(f)の特性が、伝達関数P(f)が一つのピーク又は二つのピークを持つかどうかを特定することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
伝達関数P(f)の特性に依存して電力の伝送のためのパルス幅変調制御信号(AS)のデューティサイクル及び/又は周波数(f)を設定することを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
第三特性周波数f0_3のインピーダンスを決定し、パルス幅変調制御信号(AS)のデューティサイクル及び/又は周波数(f)が、第三特性周波数f0_3のインピーダンスに依存して電力の伝送のために設定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
パルス幅変調制御信号(AS)の周波数(f)が、第三特性周波数f0_3のインピーダンスに依存して第三特性周波数f0_3の周波数範囲で又は伝達関数P(f)の第二ピークの周波数より高い周波数範囲で設定されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第一特性周波数f0_1、第二特性周波数f0_2、及び第三特性周波数f0_3において、発振回路(103)に流れる電流(is)がパルス幅変調制御信号(AS)と同調していることを特徴とする請求項2~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第一特性周波数f0_1、第二特性周波数f0_2、及び第三特性周波数f0_3において、発振回路(103)に流れる電流(is)がその最大値を有することを特徴とする請求項2~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
発振回路(103)に予め決められた周波数スペクトルを有する刺激信号を付与し、第一特性周波数f0_1、第二特性周波数f0_2、及び第三特性周波数f0_3において、刺激信号によって起こされた発振回路(103)に流れる電流(is)の周波数スペクトルがその最大値を有することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第一特性周波数f0_1を決定し、第二特性周波数f0_2を決定し、第三特性周波数f0_3を決定することが、DC電圧(US)のレベルが120V未満、特に30V未満である間に実施されることを特徴とする請求項2~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
誘導結合によって電気消費体(200)の方向に電力を無線伝送するための装置(100)と、電気消費体(200)とを含むシステム(1000)であって、
前記装置(100)が、
- 交番主電圧(UN)に基づいてDC電圧(US)を発生するための整流器(108)、
- DC電圧(US)によって供給され、かつパルス幅変調制御信号(AS)を発生するように適応されたインバータ(102)、及び
- パルス幅変調制御信号(AS)を供給され、かつ電気消費体(200)の方向に電力を無線伝送するために使用される交番磁界を発生するように適応されたトランスミッターコイル(101)
を含み、
前記装置(100)と電気消費体(200)が、請求項1~11のいずれかに記載の方法を実施するように適応されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導結合によって電気消費体の方向に電力又は電気エネルギーを無線伝送するための装置を操作するための方法、及びできるだけ信頼性がありかつフレキシブルな操作を可能にする対応システムを提供する目的に基づく。
【発明の概要】
【0002】
この方法は、誘導結合によって電気消費体の方向に電力又は電気エネルギーを無線伝送するための装置を操作するために役立ち、無線電力伝送(WPT)とも称される。この方法はまた、上記装置及び電気消費体を含むシステムを操作するために役立つ。WPTに関する原理については、関連する技術文献を参照されたい。好ましくは、上記装置は、WPC(無線伝送コンソーシアム)Ki(コードレスキッチン)法に従って操作される。
【0003】
誘導結合によって電気消費体の方向にエネルギーを無線伝送するための装置は、トランスミッターとしても言及されることができ、電気消費体は、レシーバー又は無線機器として言及されることができる。
【0004】
この装置は、特に正弦波形の電力供給システム電圧又は交流主電圧からDC電圧を発生するための一般的な単相又は多相整流器を含む。
【0005】
この装置は、DC電圧から供給されるインバータを含む。インバータは、ハーフブリッジインバータ又はフルブリッジインバータであることができる。インバータは、特にパルス幅変調制御信号の形で、パルス幅変調制御又は駆動信号を発生するように構成される。
【0006】
この装置は、パルス幅変調制御信号を供給される一般的なトランスミッターコイルを含む。トランスミッターコイルは、パルス幅変調制御信号に基づいて交番磁界を発生するように適応され、交番磁界は、電気消費体の方向に電力を無線伝送するために使用される。
【0007】
この方法は、
- 電気消費体がトランスミッターコイルに誘導結合されていない間に、トランスミッターコイルを含む発振回路の第一特性周波数f0_1を決定し、
- 電気消費体がトランスミッターコイルに誘導結合され、かつ電気消費体の電気負荷が不活性化又は脱結合されている間に、トランスミッターコイルを含む発振回路の第二特性周波数f0_2を決定し、
- 周波数差Δfc=f0_1-f0_2に依存して装置を操作する
ことを含む。
電気消費体の電気負荷は、一般的に電気スイッチング手段によって、例えば半導体スイッチ、リレーなどの形で活性化/不活性化される。電気負荷は、例えば電気加熱素子、電気モータなどとして具体化されることができる。電気負荷は、特にレシーバーの一般に低い電力供給又は小さい電気負荷を、例えばレシーバーのユーザーインターフェース又はさらなる補助機能のために含まない。なぜならこれらの負荷は、一般的にオーム負荷であり、それは、伝達関数に関連して影響しないからである。
【0008】
一実施形態によれば、この方法は、電気消費体がトランスミッターコイルに誘導結合され、かつ電気消費体の電気負荷が活性化されている間に、トランスミッターコイルを含む発振回路の第三特性周波数f0_3を決定し、周波数fcalc=f0_3+Δfcに依存して装置を操作することを含む。
【0009】
一実施形態によれば、この方法は、周波数fcalcに依存してかつ電気消費体の設計パラメータに依存して伝達関数P(f)の特性を推定する。伝達関数P(f)は、装置の操作周波数に依存して装置によって伝送可能な電力を特定するか又は示す。電気消費体の設計パラメータは、電気消費体の電気特性及び/又は機械特性を特定する。
【0010】
電気消費体の設計パラメータは、例えばレシーバー負荷品質係数であるか、又はそれを含むことができる:
式中、f
Sは、電気消費体のレシーバー発振回路の共振周波数であり、L
Sは、レシーバー発振回路のインダクタンス、R
Lはレシーバー発振回路の抵抗である。
【0011】
一実施形態によれば、伝達関数P(f)の特性は、伝達関数P(f)が一つのピーク又は二つのピークを持つかどうかを特定するか又は示す。
【0012】
一実施形態によれば、この方法は、伝達関数P(f)の特性に依存して電力の伝送のためのパルス幅変調制御信号のデューティサイクル及び/又は周波数を設定することを含む。
【0013】
一実施形態によれば、この方法は、第三特性周波数f0_3のインピーダンスを決定することを含み、パルス幅変調制御信号のデューティサイクル及び/又は周波数は、第三特性周波数f0_3のインピーダンスに依存して電力の伝送のために設定される。
【0014】
一実施形態によれば、パルス幅変調制御信号の周波数は、第三特性周波数f0_3のインピーダンスに依存して第三特性周波数f0_3の周波数範囲で又は伝達関数P(f)の第二ピークの周波数より高い周波数範囲で設定される。
【0015】
一実施形態によれば、第一特性周波数f0_1、第二特性周波数f0_2、及び第三特性周波数f0_3は、発振回路に流れる電流がパルス幅変調制御信号と同調する周波数として決定される。
【0016】
一実施形態によれば、第一特性周波数f0_1、第二特性周波数f0_2、及び第三特性周波数f0_3は、他の周波数と比較して最大電流が発振回路に流れる周波数として決定される。第一特性周波数f0_1、第二特性周波数f0_2、及び第三特性周波数f0_3は、例えばそれぞれの結合条件下で発振回路の各共振周波数であることができる。
【0017】
一実施形態によれば、第一特性周波数f0_1を決定する工程、第二特性周波数f0_2を決定する工程、第三特性周波数f0_3を決定する工程は、DC電圧のレベルが120V未満、特に30V未満である間に実施される。
【0018】
一実施形態によれば、この方法は、発振回路に予め決められた周波数スペクトルを有する制御信号を付与することを含む。刺激信号は、例えば所定の周波数範囲にわたって幅広いほぼ一定の周波数スペクトルを有する短い電圧パルスとして形成されることができる。第一特性周波数f0_1、第二特性周波数f0_2、第三特性周波数f0_3において、発振回路に流れる生じた電流の周波数スペクトルは、その最大値を有する。周波数スペクトルは、例えば発振回路又はコイルに流れる電流のFFT分析によって決定されることができる。
【0019】
システムは、誘導結合によって電気消費体の方向に電力を無線伝送するための装置を含み、
前記装置は、
- 交番主電圧に基づいてDC電圧を発生するための整流器、
- DC電圧によって供給され、かつパルス幅変調制御信号を発生するように適応されたインバータ、及び
- パルス幅変調制御信号を供給されるトランスミッターコイル
を含む。
トランスミッターコイルは、電気消費体の方向に電力を無線伝送するために使用される交番磁界を発生するように適応される。このシステムは、電気消費体をさらに含む。前記装置と電気消費体は、請求項のいずれかに記載の方法を実施するようにそれぞれ適応されている。
【0020】
本発明は、台所器具のためのKi無線電力のために好適である。例えば、電力伝送を開始するとき、又は電力設定点を変える場合、インバータを駆動するために好適な操作パラメータを同定する電力制御のための方法が提供される。電気消費体又はレシーバーからの電気及び/又は機械設計パラメータは、前記装置に通信されることができる。
【0021】
本発明によれば、周波数差Δfc=f0_1-f0_2は、電気消費体の方への電力の伝達関数P(f)及びトランスミッター共振周波数に影響を与えるトランスミッターコイルの近くに置かれた電気消費体の磁気結合効果によって起こされる周波数シフトを考慮する。周波数差Δfcは、伝送される電力の要求される変化の後に電力を調整したり、及び/又は電力伝送を開始するための(操作)周波数f_op及び(操作)デューティサイクル(パルスデューティファクター)の適切な操作パラメータを決定するために使用される。
【0022】
本発明によれば、特性周波数は、様々な条件下で測定され、それらの条件は、少なくとも(1)トランスミッターコイルの上に電気消費体又は他の物体が存在しないこと、(2)電気負荷と接続されていないトランスミッターコイルの上に電気消費体が置かれていること、及び(3)電気負荷と接続されたトランスミッターコイルの上に電気消費体が置かれていることである。
【0023】
レシーバーのない測定(1)は、装置が操作状態に置かれた後又は製造時に校正としてなされることができる。測定(1)は、例えばある表面検出方法がトランスミッター表面上に電気物体又は磁気物体が置かれていないことを決定するときに実施されることができる。
【0024】
条件(1)~(3)のための特性周波数を決定又は測定するために、インバータ又はコンバータは、トランスミッターコイルを通る電流とインバータによって発生されるパルス幅変調制御信号の間で0℃に近い位相角で駆動されることができる。PLLは、トランスミッターコイルを通る電流をインバータによって発生されるパルス幅変調制御信号と強制的に同調させるために使用されることができる。代替的に又は追加的に、条件(1)~(3)のための特性周波数を決定又は測定するために、周波数掃引が、トランスミッターコイルを通るピーク電流を起こす特性周波数を見出すために実施されることができる。条件(1)~(3)のための特性周波数の測定は、交番主電圧のゼロ交差のまわりの低DC電圧で実施されることができる。
【0025】
次いで、周波数差Δfc=f0_1-f0_2は、補正係数として計算される。
【0026】
例えば特定の位置に電気消費体を置いた後に電気消費体から装置に通信される、電気消費体の設計パラメータとともに、特定の周波数fcalc=f0_3+Δfcは、伝達関数が一つ又は二つのピークを有するなら結合係数の形で、そして第二ピーク(もしあれば)の周波数f1の形で伝達関数の特性を推定するために使用される。
【0027】
周波数f0_3の電流及び/又はインピーダンスが測定されることができる。伝達関数の推定された特性とともに、周波数f0_3の電流及び/又はインピーダンス、及び伝送される希望の電力レベル(即ち、電力レベル設定点)に基づいて、第一共振周波数又は第二ピーク周波数(もしあれば)で/その近くで操作周波数を設定することが決定されることができる。さらに、伝達関数の推定された特性とともに、周波数f0_3の電流及び/又はインピーダンス、及び伝送される希望の電力レベルに基づいて、伝送される希望の電力レベルのための開始(操作)周波数f_op及び開始デューティサイクルDC_opを計算することができる。
【0028】
本発明は、変動可能な条件下で特性(共振)周波数を少なくとも3回測定し、例えば実際の伝達関数の関連点の良好な近似を達成するために電気消費体のスタートアップメッセージにおいて、受けとった電気消費体の設計についての情報を測定結果と組み合わせ、電力伝送を開始するための適切な操作点を決定することを提案する。
【0029】
第一及び第二の特性周波数f0_1及びf0_2の測定は、レシーバーフェライト(磁束コンセントレータ)からトランスミッターコイルへの影響を補償することを可能にする。第三特性周波数f0_3の測定は、特性共振周波数を示す。周波数fcalc=f0_3+Δfcは、伝達関数の関連特性を決定するために使用される。
【0030】
周波数fcalcは、fcalcが実際の結合についての情報を含むとき、伝達関数が二つのピーク(f0及びf1)又は一つのピーク(f0)を有するかどうかを示す。さらに、周波数fcalcは、より高い周波数での第二共振f1に対する近似を与える。
【0031】
は、電気消費体によって受け取られたデータから計算されることができ、測定されたf
0_
3の調整を可能にする。さらに、Q_PRxは、f
1での達成可能な電力を示す。
【0032】
電流(及び電圧)は、インピーダンスZ(f0_3)が計算されることができるように特性周波数の測定中に測定されることができる。インピーダンスZ(f0_3)は、50%のデューティサイクルに基づいて伝送可能な電力P(f0_3)を決定する。第一のP(f0_3)は、伝送される希望の電力レベルのための操作周波数fopがf0_3の周波数範囲又はf1の周波数範囲であるかどうかの決定を行なうためにP(f1)とともに使用されることができる。さらに、インピーダンスZ(f0_3)は、伝送される希望の電力レベル及びP(f0_3)及びP(f1)を考慮して適切な割り当てとして開始デューティサイクルを推定することを可能にする。
【0033】
本発明によれば、トランスミッターとレシーバーの間でそれらのフェライトの接近によって起こされる交差効果が決定される。トランスミッター誘電率は、レシーバーフェライトがトランスミッター磁界の操作容積中にあるならレシーバーフェライトによって増大される。同じ効果は、トランスミッターフェライトの接近によって起こされたレシーバー誘電率の増加とともに反対方向に起こる。この交差効果は、効果的な伝達関数をより低い周波数にシフトさせる。交差効果は、フェライトの距離、ミスアライメント、サイズ、及び位置によって影響され、伝達関数は、有意に影響を受けうる。第一に、ピーク周波数がシフトされ、レシーバーの方への高い電力伝送が可能である。さらに、伝達関数の結合及び特性は、一つのピークから二つのピークの特性に変えることができる。本発明は、トランスミッター誘電率に対するレシーバーフェライトによって起こされる交差効果を決定することを可能にする。決定された交差効果は、レシーバーの電気的設計についての既知のパラメータとともに、トランスミッターとレシーバーのコイルの間の効果的な結合、伝達関数の第二共振ピークの存在、及びその周波数f1についての良好な推定を完結することを可能にする。本発明は、希望の電力レベルに対する高速の効果的な設定を保証するための操作のために好ましい開始周波数を決定するための決定基準を与える。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、図面を参照にして以下において詳細に記載される。
【0035】
【
図1】
図1は、誘導結合によって電気消費体の方向に電力を無線伝送するための装置、及び電気消費体を含むシステムのブロック図を示す。
【0036】
【
図2A】
図2Aは、電気消費体がトランスミッターコイルに誘導結合されていない間に周波数に依存して装置のトランスミッターコイルに流れる電流を描く第一曲線を示し、そして電気消費体がトランスミッターコイルに誘導結合され、かつ電気消費体の電気負荷が不活性化されている間に周波数に依存して装置のトランスミッターコイルに流れる電流を描く第二曲線を示す。
【0037】
【
図2B】
図2Bは、電気消費体がトランスミッターコイルに誘導結合され、かつ電気消費体の電気負荷が活性化されている間に周波数に依存して電気消費体の方へ装置によって伝送可能な電力を特定する伝達関数P(f)を示す。
【0038】
【
図3】
図3は、装置と電気消費体の間の異なる結合係数のための特定の周波数f
calcに依存してレシーバー負荷品質係数Q_PRxを特定する一組の曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、誘導結合によって電気消費体200の方向に電力を無線伝送するための装置100、及び電気消費体200を含むシステム1000のブロック図を示す。
【0040】
装置100は、AC電圧グリッド300の通常のグリッド電圧UNからDC電圧USを発生するための整流器108を含む。
【0041】
装置100は、スイッチング手段109及び110を含むDC電圧USから供給されるインバータ102をさらに含み、それは、調整可能な周波数f及び調整可能なデューティサイクルを有するパルス幅変調制御信号ASを発生するように設計されている。
【0042】
装置100は、整流器108又はDC電圧USの出力末端間でそれぞれ直列に接続されるコンデンサー104,105をさらに含む。
【0043】
装置100は、パルス幅変調制御信号ASを供給されるトランスミッターコイル101をさらに含み、コンデンサー104,105及びトランスミッターコイル101は、それらが共振回路103を形成するように相互接続されている。この目的のため、トランスミッターコイル101の一つの末端は、インバータ102の半導体スイッチング手段109,110の接続ノードに電気的に接続され、トランスミッターコイル101の別の末端は、コンデンサー104,105の接続ノードに接続される。
【0044】
示されたインバータ及び共振回路の形態は例示にすぎないことは明らかである。例えば、フルブリッジを有するインバータが本発明の範囲内で使用されることができ、異なるやり方で相互接続された直列又は並列の共振回路などが使用されることができる。
【0045】
エネルギーを伝送するための交番磁界は、トランスミッターコイル101によって発生される。
【0046】
装置100は、通信ユニット111をさらに含み、それは、装置100の通信コイル112に結合される。通信ユニット111は、通信コイル112と結合して、電気消費体200の双方向データ交換のために使用される。特に、電気消費体200の設計パラメータは、双方向データ交換によって装置100に通信される。
【0047】
装置100は、制御ユニット116をさらに含み、それは、インバータ102によって伝送された電力を予め決定可能な設定値に制御するように設計され、制御信号ASのデューティサイクル及び/又は周波数fは、操作変数として使用される。
【0048】
電気消費体200は、フェライトを有するレシーバーコイル201、及び下流に接続された受動型LC共振回路202を含む。
【0049】
電気消費体200は、電気負荷204を活性化又は不活性化する(即ち、受動型LC共振回路202へ電気負荷204を接続又は接続解除する)ためのスイッチングユニット203をさらに含む。電気消費体200の電気負荷204は、例えば活性化又は不活性化(即ち、スイッチオン又はオフ)されることができる電気負荷として示される。電気負荷204はまた、モータ負荷などを駆動するために電圧平均化のための手段及び整流器を含むことができる。
【0050】
電気消費体200は、通信ユニット206をさらに含み、それは、通信コイル207に接続されている。通信ユニット206は、通信コイル207と結合して、装置100との双方向データ交換のために使用される。
【0051】
電気消費体200は、制御ユニット208をさらに含み、それは、電気消費体200の操作を制御する。制御ユニット208は、スイッチングユニット203及び通信ユニット206へのデータ接続を有する。制御ユニット208は、特にスイッチユニット203の好適な作動、及び装置100との通信によって電気負荷204の活性化又は不活性化を制御する。
【0052】
図2Aは、電気消費体200がトランスミッターコイル101に誘導結合されていない間に周波数fに依存してトランスミッターコイル101に流れる電流i
Sを描く第一曲線#1を示す。
図2Aは、電気消費体200がトランスミッターコイル101に誘導結合され、かつ電気消費体200の電気負荷204が不活性化されている間に周波数fに依存してトランスミッターコイル101に流れる電流i
Sを描く第二曲線#2をさらに示す。
図2Aは、電気消費体200がトランスミッターコイル101に誘導結合されていない間にパルス幅変調制御信号A
Sとトランスミッターコイル101に流れる電流i
Sの間の位相角を描く第三曲線#3をさらに示す。
図2Aは、電気消費体200がトランスミッターコイル101に誘導結合され、電気消費体200の電気負荷204が不活性化されている間にパルス幅変調制御信号A
Sとトランスミッターコイル101に流れる電流i
Sの間の位相角を描く第四曲線#4をさらに示す。位相角は、位相ゼロ交差が0°~360°のビッグステップとして容易に示されることができるように、0°~360°で調整される。
【0053】
描かれているように、第一特性周波数f0_1では、電気消費体200がトランスミッターコイル101に誘導結合されていない間にトランスミッターコイル101又は発振回路103に最大電流iSが流れる。第二特性周波数f0_2では、電気消費体200がトランスミッターコイルに誘導結合され、かつ電気消費体200の電気負荷204が不活性化されている間にトランスミッターコイル101又は発振回路103に最大電流iSが流れる。描かれるように、第一特性周波数f0_1及び第二特性周波数f0_2では、電流iSは、パルス幅変調制御信号ASと同調している。
【0054】
全ての曲線#1~#4に対して、レシーバーインピーダンスは、電気消費体200がトランスミッターコイル101に誘導結合されていない間は無限であり、又は電気消費体200がトランスミッターコイル101に誘導結合され、かつ電気消費体200の電気負荷204が不活性化されている間は少なくとも高度に抵抗性であり、従ってレシーバーコイル101を通って電流は全く流れないか(又は流れても少なくとも極めて低い)。それでもなお、電気消費体200がトランスミッターコイル101に誘導結合されている間、レシーバーフェライトは、トランスミッター誘電率に影響を与え、従って特性周波数f0_2は、特性周波数f0_1より低い。
【0055】
図2Bは、電気消費体200がトランスミッターコイル101に誘導結合され、かつ電気消費体200の電気負荷204が活性化されている間に周波数fに依存して電気消費体200の方へ装置100によって伝送可能な電力を特定する伝達関数P(f)#5及び#6を示す。さらに、曲線#7及び#8は、トランスミッターコイル101に流れる電流i
Sとパルス幅変調制御信号A
Sの間の対応する位相角を描く。同一のレシーバー又は電気消費体200は、曲線#5及び#6の両方のために使用されるが、曲線#5は、装置100と電気消費体200の間の交差効果を考慮して実際の又は測定された伝達関数P(f)を示し、曲線#6は、交差効果なしで計算され、それは、装置100と電気消費体200の誘導率値が装置100と電気消費体200の間の結合効果を考慮せずに計算で使用されることを意味する。
【0056】
コイル101及び201の誘電率値は知られている。それでもなお、コイル101と201の間の交差効果が近接時にのみ起こるような効果的な誘電率値は知られておらず、異なる操作条件に対して距離、アライメント、さらには幾何学的又は設計パラメータで有意に変化しうる。
【0057】
曲線#5と#6の間の共振周波数におけるシフトは、曲線#1と#2の間の共振周波数におけるシフトに対応する。なぜなら低い周波数f0についての優位な効果は、トランスミッター誘導率によって起こされ、高い共振周波数f1は、同様の関連する態様でレシーバー誘電率に対してトランスミッターフェライトからの反対の交差効果によってより多く影響されるからである。
【0058】
描かれているように、伝達関数#5は、第三特性周波数f0_3及びさらなる特定の周波数f1_3を有する。第三特性周波数f0_3及び周波数f1_3では、電流isは、パルス幅変調制御信号ASと同調している。
【0059】
本発明によれば、特性周波数f0_1,f0_2及びf0_3が測定される。周波数f0_1,f0_2及びf0_3を測定するために、位相同期回路(PLL)を使用して発振回路103又はトランスミッターコイル101に流れる電流isを強制的にパルス幅変調制御信号ASと同調させることができる。タイミング遅延によれば、実際には、電圧ステップASは、決定された電流isのゼロ交差後に短い遅延を持つことができる。生じた同期周波数は、次いでそれぞれ周波数f0_1,f0_2又はf0_3であるように決定される。周波数f0_1,f0_2及びf0_3はまた、周波数掃引によって測定されることができ、第一特性周波数f0_1、第二特性周波数f0_2、及び第三特性周波数f0_3において、最大電流isが発振回路103中に流れる。第一特性周波数f0_1を決定する工程、第二特性周波数f0_2を決定する工程、及び第三特性周波数f0_3を決定する工程は、DC電圧USのレベル中、例えば30V未満で実施されることができる。
【0060】
次いで、特定周波数fcalc=f0_3+Δfcが計算され、但し、Δfc=f0_1-f0_2
【0061】
レシーバー負荷品質係数Q_PRxのような設計パラメータ、又はレシーバー負荷品質係数Q_PRxを計算するために必要な値は、電気消費体200から装置100に通信されることができる。
【0062】
図3を参照されたい。
図3は、装置100と電気消費体200の間の異なる結合係数kに対するX軸上の特定周波数f
calcに依存してY軸上のレシーバー負荷品質係数Q_PRxを特定する一組の曲線を示す。
【0063】
Q_PRxは、例えば操作前に、装置100に電気消費体200によって通信される電気パラメータに基づいて計算される。周波数f
calcは、上記のように決定される。実際の結合は、
図3を使用して決定されることができ、それは、例えば装置100の開発段階中に計算又は測定される。もしf
calc=f
0_
3+Δf
cの代わりにf
0_
3が関連操作パラメータを計算するために使用されるなら、
図3に描かれた曲線は、様々な結合状況において変化する交差効果のために大きな許容度を有するだろう。
【0064】
図3は、二つのピーク特性を有する伝達関数P(f)が位置される上方領域と、単一のピーク特性を有する伝達関数P(f)が位置される下方領域との間の境界線をさらに描く。二つのピーク間の周波数距離は、これらの伝達関数が伝送された電力についてほとんど変化なしでより幅広い周波数範囲を有するように、境界線に近くの伝達関数に対して減少する。
【0065】
実際には、結合分析は、逆で行なわれ、それは、Q_PRxが操作前にトランスミッター100にレシーバー200によって通信される電気パラメータに基づいて計算されることを意味する。周波数f
calcは、記載された方法に従って決定され、次いで実際の結合は、
図3を使用して調べることができ、それは、トランスミッター100の開発段階時に作られ、実施されることができる。
【0066】
図3の結果を説明するため、1.6のQ_PRxを有する電気消費体200が、様々な決定されたf
calcに対して評価される。もしf
calcが24.8kHzに等しいなら、そのとき装置100と電気消費体200の間の結合係数kは、約0.4であり、得られた伝達関数は、単一のピークを有する。もし代わりにf
calcが例えば1.6の同じQ_PRxに対して22.3kHzに等しいなら、結合係数kは、約0.75であり、伝達関数は、二つのピークを有する。もしf
calcが23.6kHz付近で決定されるなら、そのとき伝達関数は、ほぼ一定の電力で幾らか大きい周波数範囲を有する。
【0067】
さらに、第三特性周波数f0_3におけるインピーダンスが測定される。f0_3の測定は、インピーダンスが測定された電流isを使用して計算されることができるように、電圧ASの既知の電圧レベルを使用して実施される。これは、USについて主電圧レベルでインバータ102を駆動するときに50%のデューティサイクルで周波数f0_3の出力レベルの推定を可能にする。次の工程では、制御ユニット116は、ある要求される電力レベルに対して適切なデューティサイクルを計算することができる。
【0068】
高い電流は、第三特性周波数f0_3における低いインピーダンスを示す。予め決められた電流しきい値の上では、電力伝送は、第三特性周波数f0_3では開始されない。代わりに、高い共振周波数f1に等しいか又はそれより高い開始周波数が、極めて高いスイッチング電流を有する低いデューティサイクル操作によるスイッチング要素109,110についての高い損失を避けるために使用される。