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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147503
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電磁回転駆動装置及び遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20241008BHJP
   H02K 7/09 20060101ALI20241008BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20241008BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K7/09
H02K7/14 B
F04D29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024035463
(22)【出願日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】23166383
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】524008915
【氏名又は名称】レヴィトロニクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルス ヴィリ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ヘフリガー
(72)【発明者】
【氏名】ナターレ バーレッタ
【テーマコード(参考)】
3H130
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA32H
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607DD03
5H607FF06
5H609BB01
5H609BB14
5H609PP06
5H609QQ04
5H609QQ11
5H609RR37
5H609RR40
5H609RR42
(57)【要約】
【課題】効率的な放熱が確実に行われる、電磁回転駆動装置を提案すること。
【解決手段】電磁回転駆動装置は、リング状又はディスク状の磁気的に有効なコア31を有する回転子3と、支持及び駆動用固定子として設計された固定子2とを有し、回転子は、軸方向Aを画定する回転軸を中心として非接触で磁気的に駆動され得、且つ固定子に対して非接触で磁気的に浮上し得る。回転子は、軸方向Aに垂直な径方向の平面E内に能動的に磁気浮上され得る。固定子は、複数のコイル・コア25を有し、それぞれが、第1の端部から第2の端部まで軸方向Aに延在する長手方向脚部26と、第2の端部で長手方向脚部から径方向に延在する横方向脚部27とを有する。周方向において2つの隣接するコイル・コアの長手方向脚部間の間隙に配置された、軸方向Aに延在する少なくとも1つの冷却導管セクション80を有する第1の冷却導管8を有する冷却デバイス10が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプル・モータとして設計された電磁回転駆動装置であって、リング状又はディスク状の磁気的に有効なコア(31)を有する回転子(3)と、支持及び駆動用固定子として設計された固定子(2)とを有し、それにより、前記回転子(3)は、動作状態において、軸方向(A)を画定する所望の回転軸を中心として非接触で磁気的に駆動されることができ、また前記回転子(3)は、前記固定子(2)に対して非接触で磁気的に浮上させられることができ、
前記回転子(3)は、前記軸方向(A)に垂直な径方向の平面(E)内に能動的に磁気浮上させられ、
前記固定子(2)は、複数のコイル・コア(25)を有し、前記コイル・コア(25)のそれぞれが、第1の端部から第2の端部まで前記軸方向(A)に延在する長手方向脚部(26)と、前記長手方向脚部(26)の前記第2の端部に且つ前記径方向の平面(E)内に配置された横方向脚部(27)であって、前記長手方向脚部(26)から径方向に延在する横方向脚部(27)とを有し、
前記コイル・コア(25)は、前記磁気的に有効なコア(31)を中心にして周方向に配置され、また
少なくとも1つの集中巻線(61、61a、61b)が各長手方向脚部(26)に設けられ、前記集中巻線(61、61a、61b)は、前記それぞれの長手方向脚部(26)を取り囲んでいる、電磁回転駆動装置において、
冷却液が流れることができる第1の冷却導管(8)を有する冷却デバイス(10)が設けられ、前記第1の冷却導管(8)は、前記周方向において、2つの隣接するコイル・コア(25)の前記長手方向脚部(26)間の間隙に配置された少なくとも1つの冷却導管セクション(80)であって、前記軸方向(A)に延在する少なくとも1つの冷却導管セクション(80)を有することを特徴とする、電磁回転駆動装置。
【請求項2】
前記第1の冷却導管(8)は、少なくとも1つの冷却ループ(81)と、好ましくは複数の冷却ループ(81)とを有し、各冷却ループ(81)が、いずれの場合にも、前記周方向において、2つの隣接するコイル・コア(25)の前記長手方向脚部(26)間の間隙に配置され、また各冷却導管セクション(80)が、いずれの場合にも、前記冷却ループ(81)のうちの1つの一部である、請求項1に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項3】
前記第1の冷却導管(8)は、複数の冷却ループ(81)と、隣接する冷却ループ(81)を連結する連結セクション(82)とを有し、前記連結セクション(82)がそれぞれ、前記周方向に延在し、且つ前記コイル・コア(25)の前記長手方向脚部(26)の前記第1の端部に隣接して径方向外側に配置される、請求項2に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項4】
すべての長手方向脚部(26)の前記第1の端部が、磁束を誘導するためのバック・アイアン(22)によって連結され、前記第1の冷却導管(8)は、前記バック・アイアン(22)に隣接して隣接して領域的に延在している、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項5】
前記冷却デバイス(10)は、前記冷却液が流れることができる第2の冷却導管(9)を有し、前記第2の冷却導管(9)は、前記巻線(61、61a、61b)によって取り囲まれた内部空間に、前記巻線(61、61a、61b)に対して径方向内側に配置された内部空間ループ(90)を有し、前記内部空間ループ(90)は、好ましくは冷却スパイラル(91)として設計される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項6】
前記第1の冷却導管(8)と前記第2の冷却導管(9)とが直列に連結されている、請求項5に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項7】
電子部品を備えた第1の回路基板(71)が、前記軸方向(A)に関して、前記巻線(61、61b)と前記横方向脚部(27)の間に配置され、前記冷却デバイス(10)は第1のリング状導管(93)又は第2のリング状導管(94)を有し、前記第1のリング状導管(93)又は前記第2のリング状導管(94)のそれぞれを通して前記冷却液が流れることができ、前記第1のリング状導管(93)及び前記第2のリング状導管(94)がそれぞれ、前記コイル・コア(25)の前記長手方向脚部(26)に沿って径方向内側に、前記周方向に延在し、前記第1のリング状導管(93)は、前記軸方向(A)に関して、前記第1の回路基板(71)と前記横方向脚部(27)の間に配置され、前記第2のリング状導管(94)は、前記軸方向(A)に関して、前記第1の回路基板(71)と前記巻線(61、61b)の間に配置される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項8】
前記冷却デバイス(10)は、前記第1のリング状導管(93)及び前記第2のリング状導管(94)を有する、請求項7に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項9】
前記第1のリング状導管(93)及び/又は前記第2のリング状導管(94)は、前記第2の冷却導管(9)の一体部分であり、且つ前記内部空間ループ(90)及び前記冷却スパイラル(91)とそれぞれ直列に連結されている、請求項7又は8に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項10】
電子部品を備える第2の回路基板(72)が設けられ、前記第2の回路基板(72)は、前記軸方向(A)に関して、前記長手方向脚部(26)の前記第1の端部に隣接して、前記横方向脚部(27)とは反対を向いた側に配置され、前記冷却デバイス(10)は第3のリング状導管(83)又は第4のリング状導管(84)を有し、前記第3のリング状導管(83)又は前記第4のリング状導管(84)のそれぞれを通して前記冷却液が流れることができ、前記第3のリング状導管(83)及び前記第4のリング状導管(84)がそれぞれ前記周方向に延在し、前記第3のリング状導管(83)は、前記軸方向(A)に関して、前記第2の回路基板(72)と前記長手方向脚部(26)の前記第1の端部との間に配置され、前記第4のリング状導管(84)は、前記軸方向(A)に関して、前記第2の回路基板(72)が前記長手方向脚部(26)の前記第1の端部と前記第4のリング状導管(84)との間に位置するように配置される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項11】
前記第3のリング状導管(83)及び/又は前記第4のリング状導管(84)は、前記第1の冷却導管(8)の一体部品であり、前記少なくとも1つの冷却ループ(81)と直列に連結されている、請求項10に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項12】
2つの集中巻線(61a、61b)が、各長手方向脚部(26)に設けられ、前記2つの集中巻線(61a、61b)のそれぞれが、前記それぞれの長手方向脚部(26)を取り囲み、且つ前記軸方向(A)に関して、互いに隣接して配置される、請求項1から11までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項13】
複数の集中駆動コイル(61a)が設けられ、前記複数の集中駆動コイル(61a)のそれぞれが、いずれの場合にも、2つの隣接するコイル・コア(25)の前記長手方向脚部(26)の周りに配置され、それにより前記2つの長手方向脚部(26)が、前記径方向に関して、前記駆動コイル61aの内側に配置される、請求項1から11までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項14】
前記冷却導管セクション(80)のうちの少なくとも1つ、又は前記冷却ループ(81)のうちの1つが、前記径方向に関して、前記駆動コイル(61a)のうちの1つの内側に配置される、請求項13に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項15】
液体を搬送するための遠心ポンプであって、請求項1から14までのいずれか一項に従って設計された電磁回転駆動装置(1)を有し、前記電磁回転駆動装置(1)の前記回転子(3)が、前記遠心ポンプの前記回転子(3)として設計されていることを特徴とする、遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立特許請求項の前提部分による電磁回転駆動装置、及びそのような電磁回転駆動装置を有する遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ベアリングレス・モータの原理に従って設計され、動作する、電磁回転駆動装置が知られている。ベアリングレス・モータという用語は、回転子が固定子に対して完全に磁気的に浮上し、別個の磁気ベアリングが設けられていない電磁回転駆動装置を意味する。固定子は、この目的のために、電気駆動の固定子であり、磁気浮上の固定子でもある、支持用固定子及び駆動用固定子として設計されている。回転磁場は、固定子の電気巻線によって生成することができ、一方では回転子にトルクを加え、所望の回転軸を中心とする回転子の回転を生み出し、他方では任意に調整可能な横方向の力を回転子に加え、これにより回転子の径方向の位置を、能動的に制御又は調節することができる。したがって、回転子の3自由度、すなわち回転子の回転及び径方向の位置(2自由度)を、能動的に調節することができる。回転子は、別の3自由度、すなわち回転子の軸方向の位置及び所望の回転軸に垂直な径方向の平面に対する傾斜(2自由度)に関して、受動的に磁気抵抗力によって磁気浮上又は安定化される。すなわち、別の3自由度は制御することができない。回転子の完全な磁気浮上によって、別個の磁気ベアリングがないことが特質であり、これによりベアリングレス・モータの名前が与えられている。支持機能は、支持及び駆動用固定子では、駆動機能からは分離することができない。
【0003】
かかるベアリングレス・モータは、数多くの用途で実証されている。ベアリングレス・モータは、機械式ベアリングがないため、非常に影響を受けやすい物質が搬送されるポンプ移送、混合、若しくは攪拌デバイス(例えば血液ポンプ)、純度に関して非常に要求が高い、例えば製薬業界若しくは生物工学業界におけるポンプ移送、混合、若しくは攪拌デバイス、又は機械式ベアリングを非常に早く破壊することになる研磨性若しくは侵食性の高い(aggressive)物質が搬送されるポンプ移送、混合、若しくは攪拌デバイス(例えば半導体業界におけるスラリ、硫酸、リン酸、若しくは他の化学物質用ポンプ若しくはミキサ)に、特に好適である。
【0004】
ベアリングレス・モータの原理のさらなる利点は、電磁回転駆動装置の回転子であり、ポンプの回転子でもある、一体型回転子としての回転子の設計である。ここでの利点は、非接触の磁気浮上に加えて、非常に小型で省スペースの設計である。
【0005】
加えて、ベアリングレス・モータの原理により、例えば、回転子が固定子から非常に簡単に分離できる、遠心ポンプの設計も可能である。これは、非常に大きな利点である。というのは、例えば、このようにして、回転子又は回転子を有するポンプ・ユニットを、1回だけ使用する使い捨て部品として設計できるからである。今日、かかる使い捨てでの使用は、非常に高い純度要件のために、以前のプロセスにおいて、取り扱われるべき物質と接触するすべてのそうした構成要素を、入念な手法で、例えば蒸気滅菌を用いて、洗浄及び滅菌する必要があった、プロセスに取って代わることが多い。1回だけ使用するよう設計されている場合、取り扱われるべき物質と接触するそうした構成要素は、まさに1回しか使用されず、次いで、次の使用のために新しい、すなわち未使用の使い捨て部品と交換される。
【0006】
この点では、製薬業界及び生物工学業界を、実例として挙げることができる。ここでは、物質の注意深く穏やかな搬送を必要とする溶液及び懸濁液が、頻繁に生産される。
【0007】
ベアリングレス・モータの原理に従って設計できる、それ自体は電磁回転駆動装置として知られている有益な設計は、例えば、欧州特許第3232549A号に開示されている、テンプル・モータの設計である。本発明もまた、テンプル・モータの設計に関する。
【0008】
テンプル・モータ特有の特徴は、固定子が複数のコイル・コアを備え、コイル・コアのそれぞれが、軸方向に平行に延在する長手方向の脚部を有していることである。軸方向とは、回転子の所望の回転軸、すなわち回転子が、動作状態で、軸方向に垂直な径方向の平面において、固定子に対して中心且つ傾斜していない位置にあるときの、回転子がその回りを回転する回転軸によって画定される方向を指す。各長手方向脚部は、第1の端部から軸方向に、第2の端部まで延在している。各コイル・コアは、長手方向の脚部に加えて、いずれも長手方向の脚部の第2の端部に設けられ、径方向に内側へ、すなわち長手方向の脚部に対してほぼ直角に延在する、横方向脚部を有する。コイル・コアはそれぞれ、L字形状であり、横方向脚部は、L字の短い脚部をなす。回転子は、この場合、横方向脚部間に配置される。軸方向に延在する複数の長手方向の脚部が、寺院の柱を連想させることが、テンプル・モータの名前の由来である。
【0009】
テンプル・モータは、一設計では、例えば、回転子(内側の回転子)の周りに、円形且つ等距離に配置された、6つのコイル・コアを備える。長手方向脚部の第1の端部は、磁束を誘導するよう機能する、バック・アイアン(back iron;裏当て鉄片)によって周方向に連結されている。回転子は、磁気的に有効なコア、例えば、永久磁気ディスク又は永久磁気リングを有し、横方向脚部の径方向内側にある端部間に配置され、動作状態で軸方向を中心にして回転し、また回転子は、非接触で磁気的に駆動され、固定子に対して非接触で磁気的に浮上する。
【0010】
また、磁気的に有効なコアが、永久磁石のない手法で、すなわち永久磁石を使わずに設計されるような、テンプル・モータの設計も知られている。この場合、回転子の磁気的に有効なコアは、例えば、強磁性の手法で設計され、例えば、鉄、ニッケル鉄、コバルト鉄、シリコン鉄、ミューメタル、又は別の強磁性材料からなる。
【0011】
さらに、回転子の磁気的に有効なコアが、強磁性材料と永久磁性材料との両方を有する設計も可能である。例えば、永久磁石を、強磁性の基体内に配置又は挿入することができる。かかる設計は、例えば、永久磁性材料を節約することにより、大型回転子のコストを削減したい場合に有益である。
【0012】
長手方向脚部は、回転子の磁気駆動及び磁気支持に必要な電磁回転場を生成するために、巻線を担持している。巻線は、例えば、1つの集中巻線が、各長手方向脚部の周りに巻かれるように、すなわち、各集中巻線のコイル軸が、いずれも軸方向に延在するように、設計されている。ここで、集中巻線のコイル軸が、所望の回転軸と平行であり、集中巻線が、回転子又は回転子の磁気的に有効なコアが動作状態で浮上する、径方向の平面に配置されないのが、典型的なテンプル・モータである。
【0013】
かかる電磁回転駆動装置の動作における1つの問題は、動作中の発熱、例えば鉄損及び銅損による発熱の放散である。温度の上昇は、特に、回転駆動装置の電子部品に関して、耐用年数の短縮につながる。熱損失を放散することにより、モータ性能を向上させることもできる。回転駆動装置で、例えば、非常に高温の液体を搬送又は混合する場合、放熱の問題はさらに深刻となる。この場合、やはり熱が、液体から電磁回転駆動装置に伝達される。例えば、半導体産業では、搬送されるべき液体が200℃より高温、例えば最高220℃になる用途がある。加えてこれは、化学的に侵食性の物質、例えば硫酸又はリン酸であることが多い。
【0014】
動作することで発生する熱、又は回転駆動装置に液体によって伝わる熱を放散する、様々な措置が知られている。例えば、回転駆動装置の筐体に、熱を周囲に放散する、冷却フィンを設けることができる。
【0015】
回転駆動装置の筐体にファン又は送風機を設け、空気流によって回転駆動装置を冷却することも知られている。ただし、こうしたファンは、耐用年数が限定され、概して化学耐性があまり高くないため、例えば半導体産業での用途にはあまり適していない。
【0016】
また、例えば圧縮空気が吹き込まれる、筐体に取り付けられたフードを用いて、回転駆動装置の筐体での圧縮空気による冷却を可能にすることも知られている。しかし、圧縮空気は非常に高価であるため、プロセスの経済性の点でむしろ不利である。
【0017】
さらに、熱を放散するために、例えば冷却用流体が流れる冷却プレートを、回転駆動装置の筐体に取り付けることが知られている。しかし、かかる外部冷却プレートでは、多くの場合、十分な放熱を確実に行うことができないことがわかっている。この理由の1つは、例えば回転駆動装置の筐体の熱抵抗値が高く、そのため冷却プレートを用いても、筐体内部又は筐体内部に配置された構成要素から、十分に熱を放散できないためである。
【0018】
実際には、特に、搬送されるべき液体又は混合される液体の温度が、70℃を超える用途において、回転駆動装置の筐体でのかかる外部冷却では、満足のいく放熱を確実に行うことはできないことがわかっている。
【0019】
例えば、モータの筐体の壁に、モータの動作中に冷却用流体が流れる穴又は水路などの冷却構造が設けられた、米国特許第10,530,221号によるモータも知られている。筐体の壁のかかる冷却構造は、多くの費用をかけてフライス加工又は穿孔する必要があり、非常に複雑で、製造コストが高くなる。加えて、追加の密封機構が必要である。この場合、所望の化学耐性を確保するために、追加の塗装を施さなければならないことが多い。その結果、追加の熱抵抗が生じ、冷却性能が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許第3232549A号
【特許文献2】米国特許第10,530,221号
【特許文献3】欧州特許第4084304A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、この現況技術から始めて、テンプル・モータとして設計され、回転駆動装置から効率的な放熱が確実に行われる、電磁回転駆動装置を提案することが本発明の目的である。回転駆動装置は、特に、例えば最高200°C又はそれを超えることさえある、非常に高温の液体を搬送又は混合する用途にも適しているべきである。本発明の目的は、さらに、かかる回転駆動装置を有する遠心ポンプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
こうした目的を満たす本発明の主題は、独立特許請求項の特徴部分によって、特徴づけられる。
【0023】
したがって、本発明によれば、テンプル・モータとして設計される電磁回転駆動装置が提案され、電磁回転駆動装置は、回転子と固定子とを備え、回転子はリング状又はディスク状の磁気的に有効なコアを有し、固定子は支持及び駆動用固定子として設計され、回転子を、動作状態において非接触で、軸方向を画定する所望の回転軸を中心として磁気的に駆動でき、また回転子を、固定子に対して非接触で、磁気的に浮上させることができ、回転子は、軸方向に垂直な径方向の平面に能動的に磁気浮上し、固定子は、複数のコイル・コアを備え、コイル・コアのそれぞれが、第1の端部から第2の端部まで軸方向に延在する、長手方向脚部と、長手方向脚部の第2の端部で、径方向の平面に配置され、長手方向脚部から径方向に延在する、横方向脚部とを有し、コイル・コアは、磁気的に有効なコアを中心にして周方向に配置され、少なくとも1つの集中巻線が、各長手方向脚部に設けられ、それぞれの長手方向脚部を取り囲んでいる。冷却液を流すことができる、第1の冷却導管を有する冷却デバイスが設けられ、第1の冷却導管は、周方向に、隣り合う2つのコイル・コアの長手方向脚部間の間隙に配置され、軸方向に延在する、少なくとも1つの冷却導管セクションを備える。
【0024】
少なくとも1つの冷却導管セクションが、隣り合う2つの長手方向脚部間の間隙に、したがって2つの周方向に隣り合う巻線間の間隙にも配置されるという事実により、熱が、発生する場所から効率的に放散される。動作中に発生する熱のかなりの部分は、例えば長手方向脚部で発生する鉄損、及び巻線で発生する銅損から生じる。冷却導管セクションは、長手方向脚部及び長手方向脚部上に配置された巻線に、直に隣り合って配置されるので、2つの主な熱源がある場所を正確に冷却する。したがって、回転駆動装置による、非常に効率的な放熱が実現する。
【0025】
回転駆動装置は、典型的には、固定子が配置される固定子用筐体を有する。この場合、冷却導管セクションが固定子用筐体の内部空間に配置されるため、固定子用筐体の壁に、穴又は切欠きなどの複雑な冷却構造を設ける必要がない。冷却デバイスは、したがって、テンプル・モータの構成要素の設計を大幅に変更する必要なしに、テンプル・モータに容易に組み込むことができる。これは、構造上の観点から、非常に大きな利点である。
【0026】
冷却液は、流体、例えば水、蒸留水、又は好ましくは、脱塩水若しくは脱イオン水(DI水:deionized water)であることが好ましい。
【0027】
冷却導管セクションは、隣り合う2つの長手方向脚部の、長手方向脚部間の間隙のうちの1つに完全に配置されるか、又は複数の該間隙にわたって延在する、冷却ループの一部であることが好ましい。
【0028】
第1の冷却導管は、好ましい実施例では、少なくとも1つの冷却ループ、好ましくは複数の冷却ループを備え、各冷却ループはいずれも、周方向に、隣り合う2つのコイル・コアの長手方向脚部間の間隙に配置され、各冷却導管セクションはいずれも、冷却ループのうちの1つの一部である。複数の冷却ループを備えた第1の冷却導管の一実施例では、隣り合う冷却ループを連結するための、連結セクションが設けられることが好ましい。周方向に隣り合う2つの長手方向脚部間の各間隙のいずれにも、1つの冷却ループが設けられる実施例が可能である。この場合、冷却ループの数は、コイル・コアの数と等しいことが好ましい。
【0029】
しかし、冷却ループが、周方向に隣り合う2つの長手方向脚部間の各間隙に設けられない実施例も可能である。この場合、冷却ループの数は、コイル・コアの数よりも少ないことが好ましい。
【0030】
各冷却ループはいずれも、U字形に設計されており、U字の2つの脚部はそれぞれ、軸方向に延在し、したがってコイル・コアの長手方向脚部と平行であることが特に好ましい。U字の閉じた側は、長手方向脚部の第1の端部のより近くに配置されたU字の開いた側よりも、長手方向脚部の第2の端部のより近くに配置される。隣り合う冷却ループ間の連結セクションはそれぞれ、U字型冷却ループの一方の脚部を、周方向に隣り合うU字型冷却ループの脚部のうちの一方に連結する。
【0031】
第1の冷却導管は、すべての冷却ループ及びすべての連結セクションと一体に設計され、第1の冷却連結部から第2の冷却連結部まで延在することが好ましい。第1の冷却導管は、パイプを曲げることにより製造することが特に好ましい。例えば、元々真っ直ぐなパイプの断片を、間に連結セクションが配置された状態でU字形の冷却ループが形成されるように、曲げることによって形成される。
【0032】
第1の冷却管導管は、さらに、ステンレス鋼又は防錆鋼でできていることが好ましい。かかる鋼には、例えば、銅よりも耐食性が高いという利点もある。特に冷却液として、例えば、通常の水よりも侵食性の高いDI水が使用される場合、第1の冷却導管を、防錆鋼又はステンレス鋼で作ることは有益である。
【0033】
第1の冷却導管は、したがって、複数の冷却ループと、隣り合う冷却ループを連結する連結セクションとを備えることが好ましく、また連結セクションがそれぞれ、周方向に延在し、コイル・コアの長手方向脚部の第1の端部と隣り合って、径方向外側に配置されていることが好ましい。
【0034】
好ましい実施例では、すべての長手方向脚部の第1の端部が、磁束を誘導するためのバック・アイアンによって連結され、第1の冷却導管は、バック・アイアンに隣り合って領域的(region-wise)に延在している。ここで領域的とは、特に、バック・アイアン内に存在する熱、すなわち、特に鉄損による発熱が、発生箇所で効率的に吸収され放散されるように、連結セクションがバック・アイアンに沿って延在できることを意味する。
【0035】
さらに好ましい措置は、冷却デバイスが、冷却液を流すことができる第2の冷却導管を有することであり、第2の冷却導管は、巻線によって取り囲まれた内部空間に、巻線に対して径方向内側に配置された内部空間ループを備え、内部空間ループは、冷却スパイラルとして設計されることが好ましい。この内部空間ループ、すなわち冷却スパイラルによって、熱が、生じる場所又はそのすぐ近傍で吸収されるので、集中巻線による、すなわち、例えば銅損による発熱と、コイル・コア又はバック・アイアンの鉄損による発熱との両方を、効率的に放散することができる。
【0036】
第1の冷却導管と第2の冷却導管とは、互いに直列に連結されていることが好ましい。第1の冷却導管及び第2の冷却導管は、全体が一体に設計され、前後又は直列に配置される冷却導管は、パイプを曲げることによって製造されることが特に好ましい。例えば、元々真っ直ぐなパイプの断片を、間に連結セクションが配置された状態のU字形の冷却ループ、及び直列に配置された第2の冷却導管が形成されるように、曲げることによって形成される。
【0037】
好ましい実施例では、電子部品を備えた第1の回路基板が、軸方向に関して、巻線と横方向脚部との間に配置されており、冷却デバイスは、それぞれを通して冷却液を流すことができる、第1のリング状導管又は第2のリング状導管を有し、第1のリング状導管及び第2のリング状導管がそれぞれ、周方向に、コイル・コアの長手方向脚部に沿って径方向内側に延在し、第1のリング状導管は、軸方向に関して、第1の回路基板と横方向脚部との間に配置され、第2のリング状導管は、軸方向に関して、第1の回路基板と巻線との間に配置されている。この実施例では、第1の回路基板、例えば電子プリント又はPCB(プリント回路基板:Printed Circuit Board)は、(軸方向に関して)横方向脚部と隣り合って配置され、例えば、センサ、例えば位置センサ若しくは磁場センサの、制御若しくは動作用電子部品、又はセンサから供給される信号を評価するための構成要素を、収めることができる。
【0038】
電子プリント上に配置される電子部品は、通常、非常に影響を受けやすく、過度の熱が加えられると、損傷するか、故障するか、又は耐用年数が短くなる可能性があるので、過熱に対してとりわけ十分に保護すべきである。したがって、この領域が十分に冷却され、電子部品を備えた第1の回路基板が過熱から保護されるように、第1又は第2のリング状導管を、第1の回路基板に直に隣り合うよう配置することは有益である。特に、回転駆動装置が遠心ポンプとして設計されている場合、第1の回路基板は、回転子が配置されているポンプ筐体のすぐ近傍に位置する。非常に高温の、例えば、温度が200℃以上の液体を搬送する場合、かなりの量の熱が、搬送されるべき液体から回転駆動装置に、したがって第1の回路基板にも、伝達される。したがって、かかる用途では、熱が、第1の回路基板が配置されている領域から直に放散されるように、第1又は第2のリング状導管を設けることが、とりわけ有益である。
【0039】
特に、冷却デバイスが、第1のリング状導管及び第2のリング状導管を備える実施例も可能である。
【0040】
第1のリング状導管及び/又は第2のリング状導管は、第2の冷却導管に統合された一部(すなわち一体部分)であり、内部空間ループ及び冷却スパイラルと直列に連結されていることが好ましい。
【0041】
好ましい実施例では、電子部品を備え、軸方向に関して、長手方向脚部の第1の端部に隣り合って、横方向脚部とは反対側に向く側部に配置される、第2の回路基板が設けられ、冷却デバイスは、それぞれを通して冷却液を流すことができる、第3のリング状導管又は第4のリング状導管を有し、第3のリング状導管及び第4のリング状導管はそれぞれ、周方向に延在し、第3のリング状導管は、軸方向に関して、第2の回路基板と長手方向脚部の第1の端部との間に配置され、第4のリング状導管は、軸方向に関して、第2の回路基板が長手方向脚部の第1の端部と第4のリング状導管との間に位置するように配置される。
【0042】
脚部の第1の端部が下部と指定され、脚部の第2の端部が上部と指定される場合、第2の回路基板は、コイル・コアの下方に配置される。第3のリング状導管は、第2の回路基板と長手方向脚部の第1の端部との間に配置され、長手方向脚部の第1の端部は、通常、バック・アイアンを介して互いに連結されている。第4のリング状導管は、第2の回路基板の下方に配置される。第3のリング状導管及び/又は第4のリング状導管は、したがって、電子部品を備えた第2の回路基板を、過剰な熱の流入から効率的に保護し、バック・アイアンからの熱も、放散することができる。例えば、巻線に電力供給して制御するパワーエレクトロニクス回路は、第2の回路基板上に設けられる。
【0043】
第3のリング状導管と第4のリング状導管との両方が設けられる実施例、第3のリング状導管は設けられるが第4のリング状導管は設けられない実施例、又は第4のリング状導管は設けられるが第3のリング状導管は設けられない実施例が、可能である。
【0044】
第3のリング状導管及び/又は第4のリング状導管は、第1の冷却導管に統合された一部であり、少なくとも1つの冷却ループと直列に連結されていることが好ましい。したがって、必要となる冷却液用冷却連結部は2つだけであり、すなわち、これを通して冷却液が、第1の冷却導管及び直列に配置された第2の冷却導管に取り込まれる、第1の冷却連結部、並びにこれを通して冷却液が、第1及び第2の冷却導管を通って流れた後に排出される、第2の冷却連結部である。
【0045】
さらに好ましい実施例によれば、2つの集中巻線が、各長手方向脚部に設けられ、集中巻線のそれぞれが、それぞれの長手方向脚部を取り囲み、軸方向に互いに隣り合って配置されている。
【0046】
さらに好ましい実施例では、複数の集中駆動コイルが設けられ、集中駆動コイルのそれぞれがいずれも、隣り合う2つのコイル・コアの長手方向脚部の周りに配置され、この結果、2つの長手方向脚部が、径方向に、駆動コイル内に配置されている。こうした駆動コイルも、したがって、集中巻線として設計されているが、各駆動コイルはいずれも、隣り合う2つの長手方向脚部の周囲に巻かれ、これによりそれぞれの駆動コイルが、隣り合う2つの長手方向脚部間の間隙を囲い込む。
【0047】
この実施例では、冷却導管セクションのうちの少なくとも1つ、又は冷却ループのうちの1つが、径方向に関して、駆動コイルのうちの1つの内側に配置されることが好ましい。したがって、駆動コイルが、この冷却導管セクション又はこの冷却ループを取り囲むことにより、駆動コイル内に配置された冷却導管セクション又は駆動コイル内に配置された冷却ループは、駆動巻線による発熱を、とりわけ十分に放散することができる。
【0048】
さらに、液体を搬送する遠心ポンプが本発明で提案され、遠心ポンプは、本発明に従って設計された電磁回転駆動装置を有し、電磁回転駆動装置の回転子は、遠心ポンプの回転子として設計されている。
【0049】
遠心ポンプは、搬送されるべき液体用ポンプ入口及びポンプ出口を有する、ポンプ筐体を有し、回転子は、ポンプ筐体内に配置され、液体を搬送するための複数のベーンを有する。ポンプ筐体は、回転子の磁気的に有効なコアが、横方向脚部によって取り囲まれるように、固定子内に挿入できるよう設計されている。
【0050】
本発明のさらに有利な措置及び実施例は、従属請求項から明らかである。
【0051】
以下において、本発明を、実施例を参照しながら、また図面を参照しながら、より詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明による電磁回転駆動装置の、第1の実施例の斜視図である。
図2】第1の実施例の、冷却デバイスの斜視図である。
図3】本発明による電磁回転駆動装置の、第2の実施例の部分断面斜視図である。
図4】第2の実施例の、冷却デバイスの斜視図である。
図5】本発明による電磁回転駆動装置の、第3の実施例の部分断面斜視図である。
図6】第3の実施例の、冷却デバイスの斜視図である。
図7】第3の実施例の変形例の、部分断面斜視図である。
図8】本発明による電磁回転駆動装置の、第4の実施例の斜視図である。
図9】第4の実施例の、冷却デバイスの斜視図である。
図10】本発明による電磁回転駆動装置の、第5の実施例の部分断面斜視図である。
図11】第5の実施例の、冷却デバイスの分解斜視図である。
図12】本発明による遠心ポンプの、一実施例の斜視図である。
図13図12の実施例の、軸方向の断面の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、全体を参照符号1で示す、本発明による電磁回転駆動装置の第1の実施例の斜視面を示している。電磁回転駆動装置1は、テンプル・モータとして設計され、ここでは6つのコイル・コア25である、複数のコイル・コア25を備える固定子2を有し、コイル・コア25のそれぞれが、軸方向Aに延在する長手方向26と、長手方向脚部26に垂直に配置された、横方向脚部27とを有し、横方向脚部27は、径方向に延在し、端面211によって画定されている。コイル・コア25は、端面211が電磁回転駆動装置1の回転子3を取り囲むように、円形の線上に等距離に配置されている。2つの集中巻線61a、61bは、いずれも各長手方向脚部26に設けられ、集中巻線のそれぞれが、それぞれの長手方向脚部26を取り囲み、軸方向Aに互いに隣り合って配置されている。他の実施例では(例えば、図7参照)、きっちり1つの集中巻線61が、各長手方向脚部26に配置され、それぞれの長手方向脚部26を取り囲んでいる。
【0054】
長手方向脚部26はそれぞれ、棒状又はほぼ棒状に設計されている。長手方向脚部26は、特に、例えば欧州特許第4084304A1号の図3又は図5に示されているように、設計することもできる。
【0055】
回転子3は、固定子2に対して非接触で、磁気的に浮上する。回転子3はさらに、固定子2によって非接触で磁気的に駆動され、所望の回転軸を中心にして回転することができる。所望の回転軸とは、図1に示しているように、回転子3が動作状態で、固定子2に対して中心にあり、且つ傾斜していない位置にあるときの、回転子3が回転する軸を指す。この所望の回転軸は、軸方向Aを画定する。軸方向Aを画定する所望の回転軸は、通常、固定子2の中心軸に相当する。
【0056】
以下において、径方向とは、軸方向Aに対して垂直な方向を指す。
【0057】
6つのコイル・コア25の数は、単に一実例と理解すべきであることを理解されたい。もちろん、固定子2が6つ未満、例えば5つのコイル・コア25を備える実施例も、又は固定子2が6つを超える、例えば7つ若しくは8つのコイル・コア25を備える実施例(例えば図10参照)も、可能である。
【0058】
回転子3は、リング状又はディスク状に設計された、磁気的に有効なコア31を有する。磁気的に有効なコア31は、図1の図では、リングとして設計され、磁気中心面を画定する。磁気的に有効なコア31は、別法として、ディスクとして設計することもできる。原則として、ディスク状又はリング状の磁気的に有効なコア31において、磁気中心面は、軸方向Aに垂直な、回転子3の磁気的に有効なコア31の幾何学的中心面である。磁気的に有効なコア31は、動作状態では、軸方向Aに対して垂直な径方向の平面に浮上している。径方向の平面は、図1では、軸方向Aに対して垂直な線Eで示している。径方向の平面Eは、したがって、軸方向Aに対して垂直で、且つ線Eを含む平面である。
【0059】
径方向の平面Eは、動作状態において、回転子3の磁気的に有効なコア31が、固定子2の端面211間に能動的に磁気浮上する平面である。回転子3が傾斜しておらず、軸方向Aに偏っていない場合、磁気中心面は、径方向の平面Eに位置する。径方向の平面Eは、z軸が軸方向Aに延びる直交座標系の、x-y平面を画定する。
【0060】
磁気的に有効なコア31又は回転子3の径方向位置とは、径方向の平面Eにおける回転子3の位置を意味する。
【0061】
本発明を理解するのには十分なので、図面の、図1図3図5図7図8、及び図10のそれぞれには、回転子3の磁気的に有効なコア31しか示していない。回転子3は、もちろん、プラスチック、金属、合金、又はセラミック若しくはセラミック材料でできていることが好ましい、ジャケット又は封入物などの他の構成要素を、有することができることを理解されたい。回転子3は、さらに、液体を混合、攪拌、若しくはポンプ移送するためのベーン(例えば、図13参照)、又は他の構成要素を有してもよい。
【0062】
固定子2は、通常、固定子2を完全に収容する固定子用筐体20(図12参照)内に配置され、これにより、固定子2全体が固定子用筐体20の内部に配置される。理解を容易にするために、固定子用筐体20内に配置された固定子2の構成要素が見えるように、固定子用筐体20は、図1図3図5図7図8及び図10には示していない。
【0063】
固定子用筐体20は、固定子2を完全に封入する、密閉封止型固定子用筐体20として設計されることが特に好ましい。固定子用筐体20は、熱伝導性の鋳造成形材料、例えばエポキシ樹脂又はポリウレタンで充填され、これにより、固定子2及び場合によっては固定子用筐体20の内部に配置されるさらなる構成要素が、鋳造成形材料によって取り囲まれていることが好ましい。その結果、全体的な熱抵抗が減少し、振動が減衰する。
【0064】
回転子3、及び特に回転子3の磁気的に有効なコア31は、径方向外側に配置された、固定子2のコイル・コア25の横方向脚部27によって取り囲まれている。したがって、横方向脚部27は、複数の固定子の突極(pronounced stator pole)、ここでは6つの固定子極を形成する。コイル・コア25の長手方向脚部26はそれぞれ、軸方向Aに、図では下端である第1の端部から、図では上端である第2の端部まで延在する。横方向脚部27は、長手方向脚部26の上端、且つ径方向の平面E内に配置される。各横方向脚部27は、径方向に、回転子3に向かって延在する。
【0065】
回転子3の磁気的に有効なコア31が、動作中に、所望の位置にあるとき、磁気的に有効なコア31は、横方向脚部27の端面211間の中心に位置し、したがって径方向の平面E内に配置されている横方向脚部27はまた、磁気中心平面内にも位置している。集中巻線61a、61bは、図では、径方向の平面Eより下方に配置され、集中巻線のコイル軸が軸方向Aに延在するよう、一列に整列している。
【0066】
長手方向脚部26のすべての第1の端部、すなわち、図では下端は、バック・アイアン22によって互いに連結されている。バック・アイアン22は、リング状に設計されていることが好ましい。バック・アイアン22が、長手方向脚部26のすべての第1の端部に沿って、径方向内側に延在する実施例が可能である(図1参照)。しかし、バック・アイアン22がバック・アイアン22の周縁に沿って複数の窪みを持ち、窪みのそれぞれが、第1の端部のうちの1つを受容することも可能である。バック・アイアンはまた、他の実施例では、複数のリング状セクションを有することもでき、リング状セクションのそれぞれがいずれも、周方向に隣り合う2つのコイル・コア25間の、第1の端部の領域に配置される。
【0067】
回転子3の磁気駆動及び磁気浮上に必要な電磁回転場を生成するために、コイル・コア25の長手方向脚部26は、集中巻61a、61bとして設計された巻線を担持し、第1の実施例では、ちょうど2つの集中巻線61a、61bが、軸方向Aに隣り合って、各長手方向脚部26のいずれの周りにも配置される。動作状態において、これらの集中巻線61a、61bによって、そうした電磁回転場が生成され、集中巻線61a、61bは、回転子3にトルクをもたらし、また回転子3の径方向位置、すなわち軸方向Aに垂直な径方向の平面Eにおける回転子3の位置を、能動的に制御又は調節できるように、回転子3に任意の調整可能な横方向の力を、径方向に加えることができる。
【0068】
回転子3の「磁気的に有効なコア31」とは、トルク生成及び磁気浮上力生成のために、固定子2と磁気的に相互作用する回転子3の領域を指す。
【0069】
既に言及したように、この実施例では、磁気的に有効なコア31は、リング状に設計されている。磁気的に有効なコア31はさらに、永久磁石の手法で設計されている。磁気的に有効なコア31は、この目的のために、少なくとも1つの永久磁石を有することができるが、複数の永久磁石を有することもでき、又はここで説明している実施例と同様に、磁気的に有効なコア31が永久磁石となるように、完全に永久磁性材料で構成することもできる。磁気的に有効なコア31は、例えば、径方向に磁化されている。
【0070】
磁気的に硬い、すなわち保磁力が大きい、そうした強磁性材料又はフェリ磁性材料は、通常、永久磁石と呼ばれる。保磁力とは、材料を消磁するのに必要な磁場の強さである。永久磁石は、この適用例の枠組み内では、10,000A/m超まで達する保磁力、より正確には磁気分極の保磁力を持つ材料又は物質と理解されたい。
【0071】
また、磁気的に有効なコア31が、永久磁石のない手法で、すなわち永久磁石を使わずに設計される実施例も可能である。回転子3は、この場合、例えば磁気抵抗回転子として設計される。回転子3の磁気的に有効なコア31は、この場合、例えば軟磁性材料からなる。磁気的に有効なコア31に好適な軟磁性材料は、例えば強磁性材料又はフェリ磁性材料、すなわち、特に鉄、ニッケル鉄、コバルト鉄、シリコン鉄、ミューメタルである。
【0072】
さらに、回転子3の磁気的に有効なコア31が、強磁性材料と永久磁性材料との両方を有する実施例も可能である。例えば、永久磁石を、強磁性の基体内に配置又は挿入することができる。かかる実施例は、例えば、永久磁性材料を節約することによって、大型回転子のコストを削減する場合に有益である。
【0073】
回転子が、籠型回転子の原理に従って設計される実施例も可能である。
【0074】
固定子2の、リング状バック・アイアン22とコイル・コア25との両方はそれぞれ、磁束を誘導する磁束伝導要素として機能するので、軟磁性材料でできている。
【0075】
コイル・コア25及びバック・アイアン22に好適な軟磁性材料は、例えば、強磁性材料又はフェリ磁性材料、すなわち、特に鉄、ニッケル鉄、コバルト鉄、シリコン鉄、又はミューメタルである。この場合、固定子2については、コイル・コア25及びバック・アイアン22が、板金で設計されている、すなわち、複数枚の積み重ねられた薄い板金要素からなる、固定子のシート積層体として設計されることが好ましい。
【0076】
コイル・コア25及びバック・アイアン22は、さらに、前述の材料の、プレスされ、続いて焼結された粒で作ることが可能である。金属粒は、金属粒が互いに少なくとも部分的に絶縁されるように、プラスチック母材に埋め込まれることが好ましく、これにより、渦電流損失を最小限に抑えることができる。したがって、電気的に絶縁され、圧縮された金属粒からなる軟磁性複合材料も、固定子に好適である。特に、SMC(軟磁性複合材料:Soft Magnetic Composite)とも称されるこうした軟磁性複合材料は、電気絶縁層で被覆された鉄粉粒で構成することができる。このSMCは、次いで、粉末冶金プロセスで所望の形状に成形される。
【0077】
回転子3の磁気的に有効なコア31は、電磁回転駆動装置1の動作中に、上記で説明した、回転子3を固定子2に対して、非接触で磁気的に駆動でき、非接触で磁気的に浮上させることができるベアリングレス・モータの原理に従って、固定子2と相互作用する。固定子2は、この目的のために、支持及び駆動用固定子として設計されており、これにより回転子3を、動作状態で、固定子2に対して、非接触で所望の回転軸を中心にして磁気的に駆動することができ、すなわち回転させることができ、また非接触で磁気的に浮上させることができる。回転子3の3自由度、すなわち、回転子3の径方向の平面Eにおける位置及び回転を、能動的に調節することができる。回転子3の磁気的に有効なコア31は、軸方向Aにおける、径方向の平面Eからのコア31の軸方向の偏りに関して、磁気抵抗力によって受動的に磁気安定化される。すなわち、コア31の軸方向の偏りを制御することはできない。回転子3の磁気的に有効なコア31はまた、残りの2自由度、すなわち、所望の回転軸に垂直な径方向の平面Eに対する傾斜に関しても同様に、受動的に磁気安定化される。回転子3は、したがって、磁気的に有効なコア31とコイル・コア25との相互作用により、軸方向Aにおいて、また傾斜に抗して(3自由度の全体)、受動的に磁気浮上するか、又は受動的に磁気安定化され、且つ径方向の平面に(2自由度)、能動的に磁気浮上する。
【0078】
能動的な磁気浮上は、一般的にそうであるように、この出願の枠組みにおいて、例えば集中巻線61a、61bによって生成される電磁回転場によって、能動的に制御又は調節できるものとも呼ばれる。受動的磁気浮上又は受動的磁気安定化は、制御又は調節できないものである。受動的磁気浮上又は受動的磁気安定化は、例えば、回転子3が所望の位置から偏った場合、例えば、回転子3が軸方向Aにおいてずれているか若しくは偏っている場合、又は回転子3が傾斜している場合に、回転子3を再び所望の位置に戻す磁気抵抗力に基づく。
【0079】
径方向の浮上又は径方向における浮上とは、回転子3の径方向の位置を安定させることができる回転子3の浮上、すなわち、径方向の平面Eに、したがって回転子3の径方向の位置に回転子3を浮上させるような、浮上を指す。
【0080】
軸方向の浮上又は軸方向における浮上、及び軸方向の安定化又は軸方向における安定化とは、それぞれ、一方ではこれによって、回転子3の位置が軸方向Aに安定化され、他方ではこれによって、回転子3が傾斜に抗して安定化される、回転子3の浮上又は安定化を指す。かかる傾斜は、2自由度を表し、回転子3の瞬間的な回転軸が、もはや軸方向Aに正確には向いておらず、所望の回転軸とゼロではない角度をなす、偏りを示す。したがって磁気中心平面Cは、傾斜している場合、もはや径方向の平面Eにないか、又は径方向の平面Eに平行ではなく、磁気中心平面Cは、径方向の平面Eとゼロではない角度をなす。
【0081】
ベアリングレス・モータでは、モータの磁気浮上及び磁気駆動は、従来の磁気ベアリングとは対照的に、電磁回転場によって実現される。ベアリングレス・モータでは、磁気駆動及び磁気浮上の機能は、典型的には、通常は駆動場及び制御場と称される、2つの回転磁場の重ね合わせによって生成される。固定子2の巻線によって生成されるこれら2つの回転場は、通常、1だけ異なる極対番号を持つ。例えば、駆動場が極対番号pを持つ場合、制御場は極対番号p+1又はp-1を持つ。この場合、径方向の平面での磁気的に有効なコア31に作用する接線力が、駆動場によって生成され、トルクを引き起こし、軸方向Aを中心とする回転を引き起こす。駆動場と制御場との重ね合わせにより、径方向の平面で磁気的に有効なコア31の位置を調節できる、任意に調整可能な横方向の力を、磁気的に有効なコア31に対して、径方向の平面で発生させることも可能である。したがって、集中巻線61a、61bによって生成される電磁束を、回転を駆動することだけを行う(電)磁束と、磁気浮上を実現するだけの(電)磁束とに分割することは不可能である。
【0082】
駆動場及び制御場を生成するために、一方では、図1に示しているように、2種類の相異なる巻線システムを使用すること、すなわち、一方が駆動場を生成し、もう一方が制御場を生成することが可能である。駆動場を生成するためのコイルは、この場合、通常、駆動コイル61aと呼ばれ、制御場を生成するためのコイルは、制御コイル61bと呼ばれる。
【0083】
したがって、例えば、集中巻線のうちの一方を、駆動コイル61aとして使用でき、一方駆動コイル61aと隣り合う他方の集中巻線は、制御コイル61bとして使用される。これらのコイルに印加される電流は、この場合、それぞれ、駆動電流及び制御電流と呼ばれる。電磁回転場である駆動場は、この場合、すべての駆動コイル61a全体によって生成され、一方、やはり電磁回転場である制御場は、制御コイル61b全体によって生成され、駆動場に重ね合わされる。この場合、駆動場と制御場との重ね合わせにより、回転子3に対する、回転を駆動するためのトルクを生み出す接線力ばかりでなく、径方向の平面における磁気的に有効なコア31の位置を能動的に調節できる、径方向の平面Eで任意に調整可能な横方向の力も、生成することができる。
【0084】
しかし、駆動機能及び浮上機能が、1つの単一巻線システムだけで生成され、したがって、駆動コイルと制御コイルとの区別がない実施例も可能である(例えば、図7参照)。これは、いずれも制御デバイスによって決定された駆動電流及び制御電流の値が、数学的に、すなわち、例えばソフトウェアによって、加算又は重ね合わされ、結果として得られた総電流が、それぞれの集中巻線61(図7参照)に印加されるようにすることで、実現することができる。この場合、もちろん、制御コイルと駆動コイルとを区別することは、もはや不可能であり、きっちり1つの集中巻線61(図7)が、各長手方向脚部26に設けられる。この場合、ただ1つの巻線システムしか存在せず、巻線システムの集中巻線61に、数学的に決定された駆動電流と制御電流との合計が印加される。
【0085】
別個の駆動コイル61a及び別個の制御コイル61bを備える実施例では、用途に応じて、電磁回転駆動装置1の制御又は調節を簡素化することができる。
【0086】
第1の実施例では、あまり詳細には示していない電子部品を備えた、第1の回路基板71も設けられる。第1の回路基板71は、電子プリント又はPCB(プリント回路基板)として設計されることが好ましい。例えば、センサ(図示せず)の制御及び/又はセンサによって判定された測定信号の評価に使用される構成要素を、第1の回路基板71上に設けてもよい。かかるセンサは、例えば、回転子2の現在位置を判定する、位置センサを有する。
【0087】
第1の回路基板71は、ほぼリング状に設計され、径方向の平面Eに平行に配置される。リング状の第1の回路基板71は、コイル・コア25に対して径方向内側に配置されることが好ましく、第1の回路基板71は、図1に見られるように、隣り合うコイル・コア25の長手方向脚部26間の間隙内に、延在することもできる。
【0088】
第1の回路基板71は、軸方向Aに関して、巻線61bとコイル・コア25の横方向脚部27との間に配置されている。第1の回路基板71は、したがって、図1の図では、回転子3の磁気的に有効なコア31の周囲に配置された、横方向脚部27の下方に、横方向脚部27と隣り合って配置される。
【0089】
電磁回転駆動装置1は、本発明によれば、冷却液を流すことができる、少なくとも第1の冷却導管8を有する、冷却デバイス10(図2)を有する。第1の冷却導管8は、周方向に関して、隣り合う2つのコイル・コア25の長手方向脚部26間の間隙に配置され、軸方向Aに延在する、少なくとも1つの冷却導管セクション80を備える。各冷却導管セクション80は、実質的に、長手方向脚部26のうちの1つに沿って延在し、長手方向脚部26のうちの1つと隣り合って配置される。
【0090】
図1及び図2に示している配置では、互いにほぼ平行に延在する2つの冷却導管セクション80は、いずれも、冷却ループ81を形成する湾曲した連結部によって連結され、これにより冷却液は、2つの冷却導管セクション80のうちの一方を、図による上向きに流れ、2つの冷却導管セクション80のうちの他方を、図による下向きに流れる。冷却導管セクション80のうちの2つをそれぞれに有する、各冷却ループ81は、周方向に関して、隣り合う2つのコイル・コア25の長手方向脚部26間の間隙のうちのきっちり1つに、配置される。
【0091】
他の実施例では、冷却ループ81のうちの少なくとも1つが、隣り合う2つのコイル・コア25の長手方向脚部26間の間隙のうちの2つ以上を通って、延在することも可能である。例えば、冷却ループ81の冷却導管セクション80のうちの一方が、間隙のうちの1つに配置されてもよく、同じ冷却ループ81の一部である他方の冷却導管セクション80が、別の間隙、例えば隣り合う間隙に配置される。これら2つの冷却導管セクション80間の湾曲した連結部は、この場合、例えば、これら2つの間隙を互いに分離する巻線61bの、図では上方に、配置することができる。
【0092】
図1に示している、隣り合う長手方向脚部26間の冷却ループ81の配置により、かなりの熱源が位置する領域で熱を吸収し、そこから放散することが可能である。すなわち、回転駆動装置の動作中、コイル・コア25が、鉄損により発熱し、長手方向脚部26の周囲に配置された集中巻線61a、61bが、銅損により発熱する。冷却ループ81は、隣り合う2つの長手方向脚部25間の間隙に配置され、したがって、これらの隣り合う長手方向脚部26を担持する集中巻線61a、61b間の間隙にも配置されているので、動作状態において、主熱源が位置する領域から熱が効率的に放散される。
【0093】
冷却液は、流体であることが好ましい。冷却液は、脱塩水又は脱イオン水(DI水)が特に好ましい。DI水は、一般的な冷却液であり、例えば、半導体産業の生産施設で使用されることが多い。
【0094】
冷却デバイス10の導管、すなわち、例えば冷却ループ81を備えた第1の冷却導管8は、防錆鋼又はステンレス鋼でできていることが好ましい。冷却デバイス10の導管を、用途に応じて、銅又はアルミニウムで作ることも可能である。しかし、特にDI水を冷却液として使用する場合、防錆鋼又はステンレス鋼が、例えば銅よりも耐食性が高いので、導管に好ましい。
【0095】
図2は、より良く理解するために、第1の実施例の冷却デバイス10の斜視図を示している。冷却デバイス10は、第1の冷却導管8、並びに2つの冷却連結部11、12、すなわち、第1の冷却連結部11及び第2の冷却連結部12を有し、これらを通して冷却液を、第1の冷却導管8へ取り込むか、又は第1の冷却導管8から取り出すことができる。冷却連結部11、12はそれぞれ、詳細には示していないが、固定子用筐体20(図12)を貫く貫通連結部を有し、これにより冷却液を、例えば第1の冷却連結部11を用いて、固定子用筐体20の壁を通して、固定子用筐体20の外側から第1の冷却導管8に供給でき、また、第2の冷却連結部12を用いて、固定子用筐体20の壁を通して、再び排出することができる。
【0096】
第1の冷却導管8は、第1の実施例では、複数の冷却ループ81、この場合はすなわち、5つの冷却ループ81を有し、冷却ループ81のそれぞれが、いずれも、周方向に、隣り合う2つのコイル・コア25間の間隙に配置され、各間隙には、最大でも1つの冷却ループ81が設けられる。すべての冷却ループ81は、直列に、すなわち前後に配置されている。第1の冷却導管8は、さらに、隣り合う冷却ループ81を連結して、冷却連結部11、12に連結する、複数の連結セクション82を有する。
【0097】
冷却ループ81のそれぞれは、U字形に設計されており、U字の閉じた側は、いずれも、長手方向脚部26の第2の端部に隣り合って、すなわち、図(図1)では上部に配置され、U字の開いた側は、長手方向の脚部26の第1の端部に隣り合って、すなわち、図では下部に配置される。U字の2つの脚部はそれぞれ、軸方向Aに、したがって、コイル・コア25の長手方向脚部26と平行に延在する。各U字形冷却ループ81の2つの脚部の距離は、冷却ループ81がそれぞれ、2つの周方向に隣り合う巻線61a及び61b間の間隙に収まるような寸法に、設定されている。
【0098】
連結セクション82のうちの1つは、いずれも、周方向に隣り合う2つの冷却ループ81間に配置され、U字の開いた側にあるU字型冷却ループ81の脚部のうちの1つを、隣り合うU字型冷却ループ81の隣り合う脚部に連結し、これにより、すべての冷却ループ81が、流れが直列になるよう配置される。
【0099】
隣り合う冷却ループ81間、又は冷却連結部11、12と冷却ループ81との間の、連結セクション82はそれぞれ、周方向に弓状に延在し、長手方向脚部25の第1の端部及びバック・アイアン22の径方向外側に、これらと隣り合って配置される。連結セクション82は、軸方向に関して、バック・アイアン22と同じ高さに配置されるため、連結セクション82は実質的に、バック・アイアン22の経路の径方向外側を辿る。これにより、バック・アイアン22の領域から、とりわけ効率的に放熱もされる。
【0100】
冷却ループ81及び連結セクション82を備える第1の冷却導管8は、全体として、特に図2で明確に確認できるように、円形の経路を持ち、固定子2全体の周囲に、周方向に延在する。2つの冷却連結部11、12は、互いに隣り合って配置され、それぞれが軸方向Aに、すなわち互いに平行に延在する。各冷却連結部11、12は、いずれも、固定子用筐体20(図12)の内部空間から、固定子用筐体20の壁を貫いて外側まで延在する。第1の冷却導管8は、第1の冷却連結部11から周方向に、固定子2の周囲で径方向外側にバック・アイアン22と隣り合って、第2の冷却連結部12まで延在し、U字型冷却ループ81は、隣り合うコイル・コア25間に設けられ、それぞれが、コイル・コア25の長手方向脚部26と平行に、図では上方へ、例えば、集中巻線61bの軸方向上端又は第1の回路基板71の直下まで、延在する。
【0101】
既に言及したように、第1の実施例では、例示的な性質を持つ、ちょうど6つのコイル・コア25及びちょうど5つの冷却ループ81が設けられている。6つのコイル・コア25が円形線上に配置された状態で、それぞれ周方向に隣り合うコイル・コア25間には、合計6つの間隙がある。冷却ループ81のうちの1つは、いずれも、これらの間隙のうちの5つに設けられ、互いに平行に配置された2つの冷却連結部11、12は、冷却ループ81が設けられていない間隙の、図では軸方向Aの下方に配置される。
【0102】
したがって、第1の実施例では、冷却ループ81の数は、周方向に隣り合うコイル・コア25間の間隙の数よりも1つだけ少ない。しかし、冷却ループ81のうちの1つが、間隙のそれぞれにいずれも配置される実施例も可能である。周方向に隣り合うコイル・コア25間の間隙の数と、冷却ループ81の数との差が、1よりも大きい実施例も可能である。例えば、冷却ループ81が、1間隙おきにしか設けられない実施例も可能であり、その結果、周方向に見て、冷却ループ81が配置される2つの間隙間に、いずれも、冷却ループのない間隙が存在する。
【0103】
冷却ループ81の数、及び第1の冷却導管8の経路もまた、用途に応じて適合させることができる。ここで重要な要素は、回転駆動装置1のサイズ、固定子2内で利用可能な空間、及び必要な冷却能力である。例えば、回転駆動装置1が遠心ポンプとして設計されており、例えば70°Cを超える非常に高温の液体を搬送する必要がある場合、搬送されるべき液体も固定子2に熱を伝達するため、より多く放熱するほど有利であることを考慮しなければならない。
【0104】
第1の冷却導管8は、冷却ループ81及び連結セクション82と一体に設計されることが、特に好ましい。第1の冷却導管8は、パイプを曲げることにより、製造することが特に好ましい。これは、例えば、元は真っ直ぐなパイプ、例えばステンレス鋼パイプを、冷却ループ81及び連結セクション82を形成するよう曲げることによって、形成するように実行することができる。図2に示している第1の冷却導管8の形状は、元は真っ直ぐなパイプを曲げることにより、製造できることがわかる。
【0105】
図3は、本発明による回転駆動装置1の、第2の実施例の斜視図を示している。図3では、固定子2の一部分を切り出しているため、コイル・コア25によって取り囲まれた空間の内部が確認できる。図4は、より良く理解するために、第2の実施例の冷却デバイス10を、斜視図で示している。
【0106】
以下では、第1の実施例との相違点だけを、見ていくことにする。第2の実施例と同じ部品、又は第2の実施例と機能が同等の部品は、第1の実施例と同じ参照符号で示している。参照符号は、特に、第1の実施例に関連して既に説明したものと、同じ意味を持つ。第1の実施例の、以前のすべての説明は、同様に又は類似して、第2の実施例にも当てはまることを理解されたい。
【0107】
第1の冷却導管8は、第2の実施例では、4つの冷却ループ81を備え、冷却ループ81のそれぞれが、隣り合うコイル・コア25の長手方向脚部26間の間隙のうちの1つに配置され、各冷却ループ81は、相異なる間隙に配置される。したがって、1つの冷却ループ81が、いずれも6つの間隙のうちの4つに配置され、残りの2つの間隙は、冷却ループ81なしで設計されている。
【0108】
冷却デバイス10は、さらに、冷却液を流すことができる、第2の冷却導管9をさらに有する。第2の冷却導管9は、巻線61a、61bによって取り囲まれた内部空間に、巻線61a、61bに対して径方向内側に配置される、内部空間ループ90を備える。内部空間ループ90は、図3及び図4に示しているように、冷却スパイラル91として設計されることが好ましい。
【0109】
冷却スパイラル91は、巻線61a、61bが冷却スパイラル91の周囲に配置されるように、集中巻線61a、61bに対して径方向内側に配置される。冷却スパイラル91は、コイル・コア25又は巻線61a、61bで取り囲まれた空間に配置され、これにより、この領域の熱を効率よく放散することができる。この領域の熱はまた、特に、巻線61a、61bでの銅損によって発生する熱である。
【0110】
冷却スパイラル91の軸は、軸方向Aに延びている。冷却スパイラル91は、それ自体は既知の手法で、軸方向Aに隣り合って配置された複数のターンを有し、すべてのターンが同じ直径である。第2の冷却導管9は、したがって、冷却スパイラル91の領域では、螺旋状に設計されている。
【0111】
冷却スパイラル91は、図では上端である第1の端部911から、図では下端である第2の端部912まで延在する。冷却スパイラル91の外径は、冷却スパイラル91のターンが径方向に関して、巻線61a、61bに直に隣り合って配置されるように、巻線61a、61bによって囲い込まれた空間の内径よりもごくわずかに小さい寸法に、設定されていることが好ましい。第2の冷却導管9は、したがって、冷却コイル91の領域では、第1の端部911から巻線61a、61bの径方向内側の表面に沿って第2の端部912まで、螺旋状に延びている。
【0112】
冷却スパイラル91の第1の端部911は、第2の冷却導管9の連結セクション92を介して、第2の冷却連結部12に連結される。冷却スパイラル91の第2の端部912は、第2の冷却導管9の連結セクション92を介して、連結要素98に連結され、連結要素98は、第2の冷却導管9を第1の冷却導管8に連結し、したがって、第1の冷却導管8と第2の冷却導管9とは、直列に連結されている。第1の冷却導管8は、連結要素98から第1の冷却連結部11まで延在する。
【0113】
冷却スパイラル91を、第2の冷却連結部12及び連結要素98にそれぞれ連結する、第2の冷却導管9の2つの連結セクション92が、隣り合うコイル・コア25の長手方向脚部26間の間隙のうちの、冷却ループ81が設けられていないそれぞれ1つを通って延びるように、配置されていることが好ましい。
【0114】
第2の冷却導管9も、防錆鋼又はステンレス鋼でできていることが好ましい。
【0115】
冷却液は、2つの冷却連結部11、12のうちの一方を通して、例えば第1の冷却連結部11を通して供給され、冷却ループ81を備える第1の冷却導管8を通って流れ、次いで、連結要素98を通って第2の冷却導管9に流入し、第2の冷却導管9を通って流れた後、第2の冷却連結部12を通って流出する。
【0116】
第2の冷却導管9は、冷却スパイラル91及び連結セクション92と一体に設計されることが、特に好ましい。第2の冷却導管9は、パイプを曲げることにより、製造することが特に好ましい。これは、例えば、元は真っ直ぐなパイプ、例えばステンレス鋼パイプを、冷却スパイラル91及び連結セクション92を形成するよう曲げることによって、形成するように実行することができる。図4に示している第2の冷却導管9の形状は、元は真っ直ぐなパイプを曲げることにより、製造できることがわかる。
【0117】
構造上の理由から、第1の冷却導管8及び第2の冷却導管9は、最初に別々に、パイプを曲げることによってそれぞれ一体に作られ、次いで、連結要素98を用いて互いに連結され、これにより、流れが直列になるよう配置されることが好ましい。
【0118】
第1の冷却導管8を第2の冷却導管9に連結する連結要素98は、可撓な連結要素98として設計されることが好ましく、これにより、第1の冷却導管8と第2の冷却導管9との接合も簡素化される。連結要素98は、例えば、チューブ~締付け金具型連結部(tube-clamp connection)として設計され、好適な長さのチューブ片と2つの締付け金具とを有することができる。チューブ片は、締付け金具を用いて、一方は第1の冷却導管8に、他方は第2の冷却導管9に固定される。2イヤー・クランプ又は2イヤー・クリップは、締付け金具としてとりわけ好適であり、第1の冷却導管8と第2の冷却導管9との間の連結部で、確実に全周を封止する。
【0119】
さらに好ましい措置は、冷却デバイス10内で望ましからざる電流、電荷、又は閃落が発生しないように、冷却導管8、9を、絶縁箔によって、又は絶縁テープ、例えば接着絶縁テープによって、電気部品又は電子部品から保護することである。
【0120】
動作上の安全性をさらに高めるために有益な措置は、第1の冷却導管8及び/又は第2の冷却導管9を接地することである。これは、例えば、接地ケーブルを、一方は第1の冷却導管8及び/又は第2の冷却導管9に接続し、他方は接地電位に接続するにより、実現することができる。
【0121】
内部空間ループ90は、以前に説明した冷却スパイラル91とは相異なる形状に設計されてもよい。内部空間ループ90は、例えば、設計上、例えばうねりの山が長手方向脚部26の第2の端部と隣り合って配置され、うねりの谷が長手方向脚部26の第1の端部と隣り合って配置される、蛇行又は波状であってもよい。
【0122】
図5は、本発明による回転駆動装置1の、第3の実施例の斜視図を示している。図5では、固定子2の一部分を切り出し、コイル・コア25によって取り囲まれた空間の内部が確認できるようにしている。図6は、より良く理解するために、第3の実施例の冷却デバイス10を、斜視図で示している。
【0123】
以下では、第1及び第2の実施例との相違点だけを、見ていくことにする。第3の実施例と同じ部品、又は第3の実施例と機能が同等の部品は、第1及び第2の実施例と同じ参照符号で示している。参照符号は、特に、第1及び第2の実施例に関連して既に説明したものと、同じ意味を持つ。第1及び第2の実施例の、以前のすべての説明は、同様に又は類似して、第3の実施例にも当てはまることを理解されたい。
【0124】
冷却デバイス10は、第3の実施例では、冷却液を流すことができる第1のリング状導管93を有し、第1のリング状導管93は、周方向に、コイル・コア25の長手方向脚部26に沿って径方向内側に延在し、また第1のリング状導管93は、軸方向Aに関して、第1の回路基板71と横方向脚部27との間に配置される。第1のリング状導管93は、したがって、図(図5)では第1の回路基板71の上方に配置される。
【0125】
第1のリング状導管93は、ほぼ円形に設計されており、径方向の平面Eに平行な平面内に延びている。第1のリング状導管93によって、特に、電子部品を備えた第1の回路基板71が配置されている領域から、熱を放散することができる。この熱は、例えば、回転駆動装置1の動作中に、第1の回路基板71に電流が流れることにより、また、回転駆動装置1の銅損及び鉄損により発生する。
【0126】
さらに、回転駆動装置1で、非常に高温の液体が搬送又は混合される用途では、追加で、熱が液体から電磁回転駆動装置に伝わる。第1の回路基板71は、回転子3の近傍に位置するので、非常に高温の液体を搬送又は混合する場合に、液体から第1の回路基板71に入り込む、かなりの熱が生じる可能性がある。第1のリング状導管93は、かかる用途では、第1の回路基板71が配置されている領域から、選択的に放熱するために使用できるので、特に有益である。
【0127】
第1のリング状導管93は、第2の冷却導管に統合された一部であり、冷却スパイラル91と直列に配置されることが好ましい。第3の実施例では、したがって、第2の実施例とは対照的に、第2の冷却導管9が、第1のリング状導管93を追加で有する。
【0128】
第1のリング状導管93は、流れに関して、冷却スパイラル91の第1の端部911と第2の冷却連結部12との間に、配置されることが好ましい。第2の冷却連結部12は、第2の冷却導管9の連結セクション92を介して、第1のリング状導管93の一方の端部に連結されている。第1のリング状導管93の他方の端部は、第2の冷却導管9の別の連結セクション92を介して、冷却スパイラル9の第1の端部911に連結されている。
【0129】
冷却液は、動作状態では、2つの冷却連結部11、12のうちの一方を通して、例えば第1の冷却連結部11を通して供給され、冷却ループ81を備える第1の冷却導管8を通って流れ、次いで、連結要素98を通って第2の冷却導管9に流入し、冷却スパイラル91を通り、その後、第1のリング状導管93を通って流れ、第2の冷却導管9を通って流れた後、第2の冷却連結部12を通って流出する。
【0130】
第1のリング状導管93の代替として、又は第1のリング状導管93に加えて、冷却液を流すことができる第2のリング状導管94(図11)を、設けることもでき、第2のリング状導管94も、周方向に、コイル・コア25の長手方向脚部26に沿って径方向内側に延在し、また第2のリング状導管94は、軸方向に関して、第1の回路基板71と巻線61bとの間に配置される。第2のリング状導管94は、図5には示していないが、図11に関連して説明するように、類似したやり方で設計及び配置することができる。
【0131】
図5の図では、第2のリング状導管94(図示せず)は、この場合、第1の回路基板71の下方に、第1の回路基板71に直に隣り合って配置される。第2のリング状導管94は、ほぼ円形に設計されており、径方向の平面Eに平行な平面内に延びている。
【0132】
第2のリング状導管94は、第2の冷却導管9に統合された一部であり、冷却スパイラル91と直列に配置されることが好ましい。
【0133】
第1のリング状導管93又は第2のリング状導管94のいずれか一方が設けられる、実施例が可能であるが、冷却デバイス10が第1のリング状導管93と第2のリング状導管94とを備える、実施例も可能である。
【0134】
図7は、第3の実施例の変形例を、図5と同様の斜視図で示している。この変形例では、駆動機能及び支持機能は、ただ1つの単一巻線システム、すなわち集中巻線61によって生成されるため、駆動用コイルと制御用コイルとの区別はない。
【0135】
巻線システムは、きっちり1つの集中巻線61が、いずれも、各長手方向脚部26の周囲に巻かれるよう設計されている。その電磁回転場は、動作状態において、この集中巻線61によって生成され、これにより回転子3に対するトルクを生み出し、またこれにより、回転子3の径方向位置、すなわち軸方向Aに垂直な径方向の平面Eにおける回転子3の位置が、能動的に制御又は調節できるように、任意の調整可能な横方向の力を、径方向に、回転子3に加えることができる。これは、いずれも制御デバイスによって決定された駆動電流及び制御電流の値が、数学的に、すなわち、例えばソフトウェアによって、加算又は重ね合わされ、結果として得られた総電流が、それぞれの集中巻線61に印加されることで、実現することができる。もちろん、この場合、制御コイルと駆動コイルとを区別することは、もはや不可能である。図7に示している変形例では、固定子2の駆動コイルと制御コイルとの区別はなく、いずれについてもただ1種類の巻線システムしかなく、巻線システムの6つの集中巻線61に、数学的に決定された駆動電流と制御電流との合計が印加される。
【0136】
第1の実施例(図1)及び第2の実施例(図3)は、図7に示している変形例に類似したやり方で、すなわち、各長手方向脚部26に、別個の駆動コイル61a及び別個の制御コイル61bではなく、きっちり1つの集中巻線61を備えるようにも設計できることが理解されよう。
【0137】
図8は、本発明による回転駆動装置1の、第4の実施例の斜視図を示している。図9は、より良く理解するために、第4の実施例の冷却デバイス10を、斜視図で示している。
【0138】
以下では、以前に説明した実施例との相違点だけを、見ていくことにする。第4の実施例と同じ部品、又は第4の実施例と機能が同等の部品は、以前に説明した実施例と同じ参照符号で示している。参照符号は、特に、以前に説明した実施例及び変形例に関連して既に説明したものと同じ意味を持つ。実施例及び変形例の、以前のすべての説明はまた、同様に又は類似して、第4の実施例にも当てはまることを理解されたい。
【0139】
冷却デバイス10は、第4の実施例では、冷却液を流すことができ、主として、電子部品を備える第2の回路基板72を冷却するよう機能する、第3のリング状導管83を有する。電子部品は、図8には示していない。第2の回路基板72は、電子プリント又はPCB(プリント回路基板)として設計されることが好ましい。
【0140】
第2の回路基板72は、ほぼディスク状に設計され、径方向の平面Eに平行に配置される。第2の回路基板72は、軸方向Aに関して、長手方向脚部26の第1の端部に隣り合って、横方向脚部27とは反対側に向く第1の端部の側に配置される。第2の回路基板は、図8の図では、長手方向脚部26の第1の端部の下方にあり、したがってバック・アイアン22のやはり下方にある。
【0141】
回転駆動装置1の制御デバイスは、例えば、第2の回路基板72上に配置でき、第2の回路基板72は、巻線61又は61a、61bを制御し、電磁場を生成する、パワーエレクトロニクス回路、回転子の駆動及び浮上用制御デバイス、並びに必要に応じてセンサ又は評価ユニットを有することができる。第2の回路基板72は、固定子用筐体20内に配置され、固定子用筐体20に完全に収容されている。
【0142】
第3のリング状導管83は、周方向に、長手方向脚部26の第1の端部に沿って延在し、軸方向Aに関して、第2の回路基板72と、長手方向脚部26の第1の端部又はバック・アイアン22との間に配置される。第3のリング状導管83は、したがって、図(図8)では、第2の回路基板72の上方に配置される。
【0143】
第3のリング状導管83の代替として、又は第3のリング状導管83に加えて、第4のリング状導管84を備えることもできるが、これは図8では破線でしか示されていない。冷却液は、第4のリング状導管84を通って流れることもできる。第4のリング状導管84は、周方向に延在し、径方向の平面Eに平行に配置される。第4のリング状導管84は、軸方向Aに関しては、第2の回路基板72が、軸方向Aに関して、長手方向脚部26の第1の端部と第4のリング状導管84との間に位置するように配置される。第4のリング状導管84は、図8の図を参照すると、第2の回路基板72の下方に配置されている。
【0144】
第3のリング状導管83又は第4のリング状導管84のいずれか一方が設けられる、実施例が可能であるが、冷却デバイス10が第3のリング状導管83と第4のリング状導管84とを備える、実施例も可能である。
【0145】
第3リング状導管83及び第4リング状導管82はそれぞれ、ほぼ円形に設計されており、それぞれが、径方向の平面Eに平行な、且つバック・アイアン22に平行な平面内に、それぞれに延在する。
【0146】
第3のリング状導管83及び/又は第4のリング状導管84は、第1の冷却導管8に統合された一部であり、それぞれ、冷却ループ81と直列に配置されることが好ましい。したがって、以前に説明した実施例とは対照的に、第4の実施例では、第1の冷却導管8は、第3のリング状導管83及び/又は第4のリング状導管84を追加的に有する。
【0147】
第3のリング状導管83と第4のリング状導管84との両方が設けられる実施例では、第3のリング状導管83及び第4のリング状導管84は、直列に、すなわち前後に配置されることが好ましい。
【0148】
第3のリング状導管83及び/又は第4のリング状導管84は、流れに関して、第1の冷却連結部11と冷却ループ81との間に配置されることが好ましい。第1の冷却連結部11は、第1の冷却導管8の連結セクション82を介して、第3のリング状導管83又は第4のリング状導管84のうちの一方の端部に連結されている。第3のリング状導管83の第2の端部は、第1の冷却導管8の別の連結セクション82を介して、冷却ループ81のうちの1つに連結されている。
【0149】
冷却液は、動作状態では、2つの冷却連結部11、12のうちの一方を通して、例えば第1の冷却連結部11を通して供給され、最初に第4のリング状導管84及び/又は第3のリング状導管83を通り、次いで、第1の冷却導管8の冷却ループ81を通って流れ、その後、連結要素98を通って第2の冷却導管9に流入し、冷却スパイラル91及び第1のリング状導管93を通って流れ、第2の冷却導管9を通って流れた後、第2の冷却連結部12を通って流出する。
【0150】
図10は、本発明による回転駆動装置1の、第5の実施例の斜視図を示している。図10では、固定子2の一部分を切り出し、コイル・コア25によって取り囲まれた空間の内部が認識できるようにしている。図11は、第5の実施例の冷却デバイス10を、斜視図で示している。図11は、より良く理解するために、冷却デバイス10を、分解図で示している。
【0151】
以下では、以前に説明した実施例との相違点だけを、見ていくことにする。第5の実施例と同じ部品、又は第5の実施例と機能が同等の部品は、以前に説明した実施例と同じ参照符号で示している。参照符号は、特に、以前に説明した実施例及び変形例に関連して既に説明したものと同じ意味を持つ。実施例及び変形例の、以前のすべての説明はまた、同様に又は類似して、第5の実施例にも当てはまることを理解されたい。
【0152】
第5の実施例では、電磁回転駆動装置1の固定子2は、回転子3の周りに、円形且つ等間隔に配置された、8つのコイル・コア25を備えている。第5の実施例では、コイル・コア25の長手方向脚部26に、別個の駆動コイル61a及び別個の制御コイル61bが設けられている。
【0153】
固定子2は、複数の集中駆動コイル61a、この場合はすなわち4つの駆動コイル61aを有し、駆動コイル61aのそれぞれは、いずれも、隣り合う2つのコイル・コア25の長手方向脚部26の周りに配置され、この結果、これら2つの長手方向脚部26は、径方向に関して、駆動コイル61a内に配置されている。各駆動コイル61aは、したがっていずれも、ちょうど2つの長手方向脚部26の周囲に巻かれており、この結果、両方の長手方向脚部26が、この駆動コイル61aの内側に配置されている。
【0154】
さらに、長手方向脚部26のそれぞれに、いずれも、きっちり1つの制御コイル61bが設けられ、それぞれの長手方向脚部26の周囲に配置されている。制御コイル61bは、軸方向Aに関して、駆動コイル61aに隣り合って、すなわちここ(図10)では、図では駆動コイルの上方に配置されている。
【0155】
冷却デバイス10は、第5の実施例では、第1の冷却導管8及び第2の冷却導管9を有する。
【0156】
第1の冷却導管8は、4つの冷却ループ81及び連結セクション82を有する。2つの冷却ループ81を互いに連結する連結セクション82は、径方向内側へ向けられ、周方向に、隣り合う2つの長手方向脚部26の第1の端部間に配置された、湾入部821を備えることができる。湾入部821は主に、第1の冷却導管8をバック・アイアン22により近づけるよう機能し、これにより放熱をさらに向上させる。
【0157】
冷却ループ81のそれぞれは、径方向に関して、駆動コイル61aのうちの1つの内側に配置されている。冷却ループ81をいずれも、駆動コイルのうちの1つの内部空間に配置する利点は、特に銅損による発熱を、とりわけ効率的に放散できることである。
【0158】
第5の実施例では、第4の実施例について説明したものと類似して、第1の冷却導管8が、第2の回路基板72を冷却するための、第3のリング状導管83を追加で有する変形例も可能である。
【0159】
第2の冷却導管9は、冷却スパイラル91、軸方向Aに関して第1の回路基板71と横方向脚部27との間に配置される、第1のリング状導管93、並びに軸方向Aに関して第1の回路基板71と巻線61bとの間に配置される、第2のリング状導管94を有する。第2の冷却導管9は、この実施例ではしたがって、図(図10)では第1の回路基板71の上方に設けられる第1のリング状導管93と、図では第1のプリント回路基板71の下方に配置される第2のリング状導管94との両方を有する。
【0160】
第5の実施例では、第1のリング状導管93が設けられるが、第2のリング状導管94が設けられない変形例、第2のリング状導管94が設けられるが、第1のリング状導管93は設けられない変形例、又は第2の冷却導管9が、第1のリング状導管93も第2のリング状導管94も備えていない変形例も、可能であることを理解されたい。
【0161】
冷却デバイス10では、第1の冷却導管8は、一体に設計されることが好ましい。構造上の理由から、図11に示しているように、一方の個別部品が、冷却スパイラル91及び第2のリング状導管94を有し、他方の個別部品が、第1のリング状導管93を有する、2つの個別部品から第2の冷却導管9を組み立てることが、有利となる可能性がある。これらの2つの個別部品を、次いで、連結要素98を介して互いに連結することができ、連結要素は、第2の実施例(図3図4)に関連して説明したものと類似の手法で、設計することができる。
【0162】
第2の冷却導管9は、次に、連結要素98を介して、第1の冷却導管8に連結される。連結要素98は、図11が分解図であるため、いずれも参照符号98を付した破線でしか示していない。
【0163】
冷却液は、動作状態では、2つの冷却連結部11、12のうちの一方を通して、例えば第1の冷却連結部11を通して供給され、最初に第1の冷却導管8の冷却ループ81を通って流れ、その後連結要素98を通って第2の冷却導管9に流入し、第1のリング状導管93を、次いで冷却スパイラル91及び第2のリング状導管94を通って流れ、第2の冷却導管9を通って流れた後、第2の冷却連結部12を通って流出する。
【0164】
流れに関して、冷却スパイラル91はしたがって、第2の冷却導導管において、第1のリング状導管93と第2のリング状導管94との間に配置される。
【0165】
さらに、液体を搬送する遠心ポンプ100が本発明で提案され、遠心ポンプ100は、本発明に従って設計された電磁回転駆動装置1を有し、電磁回転駆動装置1の回転子3が、遠心ポンプ100の回転子3として設計されていることを特徴とする。
【0166】
図12は、本発明による遠心ポンプの実施例を斜視図で示しており、遠心ポンプ全体を、参照記号100で示している。図13は、より良く理解するために、図12の実施例の、軸方向Aの断面における概略断面図を示している。図13では、より良く理解するために、固定子用筐体20及び冷却デバイス11は示していない。
【0167】
遠心ポンプ100は、搬送されるべき液体用入口52及び出口53を有するポンプ筐体51を備えた、ポンプ・ユニット50を有し、回転子3は、ポンプ筐体51内に配置され、液体を搬送するための複数のベーン54を有する。ポンプ・ユニット50は、回転子3の磁気的に有効なコア31が、横方向脚部27の端面211によって取り囲まれるように、ポンプ・ユニット50を固定子2内に挿入できるよう設計されている。
【0168】
回転子3が、一体型回転子として設計されていることは、有利な態様である。というのは、回転子3が、電磁回転駆動デバイス1の回転子3であり、且つ流体が搬送される遠心ポンプ100の回転子3でもあるからである。回転子3はしたがって、1つで合計3つの機能を果たす。すなわち、回転子3は、電磁駆動デバイス1の回転子3であり、磁気浮上の回転子3であり、また1種類又は複数の液体に作用する羽根車である。一体型回転子であるこの設計は、非常に小型で省スペース設計の利点を提供する。
【0169】
固定子2は、固定子用筐体20内に配置され、固定子用筐体は、密閉封止された固定子用筐体20として設計されていることが好ましく、固定子2を封入する。回転駆動装置1が、第1の回路基板71を備えて設計されている場合、第1の回路基板も、固定子用筐体20内に配置される。回転駆動装置1が、第2の回路基板72を備えて設計されている場合、第2の回路基板も、固定子用筐体20内に配置されることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。固定子用筐体20は、鋳造成形材料、例えばエポキシ樹脂又はポリウレタンで充填され、これにより、固定子2、及び場合によっては固定子用筐体20の内部に配置されているさらなる構成要素が、鋳造成形材料によって取り囲まれることが好ましい。
【0170】
また、固定子用筐体20には、固定子用筐体のポンプ・ユニット50に面する端部に窪みがあり、ポンプ・ユニット50を、この窪み内に挿入することができる。次いで、ポンプ筐体51内に備えられる回転子3が、固定子用筐体20のこの窪みに収容され、回転子3の磁気的に有効なコア31は、コイル・コア26の横方向脚部27間に配置される。
【0171】
ポンプ筐体51は、固定子用筐体20に、複数のネジ511を用いて固定されることが好ましい。
【0172】
冷却連結部11、12は、固定子用筐体20の、ポンプ・ユニット50とは反対側に向く側部に設けられていることが好ましく、したがって、図12では認識することができない。
【0173】
回転子3は、液体を搬送するための複数のベーン54を有する。ここで説明している実施例では、例えば、合計4つのベーン54が設けられており、この数は、例示的な性質のものである。回転子3は、回転子3の磁気的に有効なコア31を収容し、回転子3の磁気的に有効なコア31を、搬送されるべき液体と接触しないように密閉封入することが好ましい、ジャケット38をさらに有する。すべてのベーン54が、ジャケット38上に配置され、回転子3の周方向に等距離に配置されている。各ベーン54は、径方向外側に延在し、トルクに耐えるようにジャケット38に連結されている。ベーン54は、この場合、ジャケット38に固定される別個の構成要素であってもよい。もちろん、ベーン54のすべてが、ジャケット38に統合された一部であること、すなわち、ジャケット38を、ベーン54のすべてと一体に設計することも可能である。ベーン54を備えた回転子3は、1種類又は複数の液体に作用する、遠心ポンプ100のホイール又は羽根車を形成する。
【0174】
ポンプ・ユニット50のポンプ筐体51ばかりでなくジャケット38及びベーン54が、用途に応じて、1種類又は複数のプラスチックでできていることが好ましい。好適なプラスチックは、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又はシリコンである。多くの用途では、テフロンの商標名で知られている材料である、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びパーフルオロアルコキシポリマー(PFA)も、プラスチックとして好適である。
【0175】
本発明による電磁回転駆動装置は、遠心ポンプ以外のデバイス用、例えば、流動性物質を混合する混合デバイス用、例えばタンク内の液体を混合する撹拌デバイス用、送風機用、又は例えば半導体製造における、ウェハを搬送し回転させるデバイス用にも、やはり好適であることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】