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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147518
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】小型スイッチング機器
(51)【国際特許分類】
   H01H 31/28 20060101AFI20241008BHJP
   H02B 13/035 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01H31/28
H02B13/035 301H
H02B13/035 301G
H02B13/035 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024054687
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】2304942.2
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2312863.0
(32)【優先日】2023-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
【住所又は居所原語表記】30 Pembroke Road, Dublin 4 D04 Y0C2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディナン ハイラーシグ
【テーマコード(参考)】
5G017
【Fターム(参考)】
5G017BB01
5G017BB02
5G017FF01
(57)【要約】
【課題】 スイッチング機器及びスイッチングシステムを提供する。
【解決手段】 スイッチング機器は、ハウジング壁を含む絶縁ハウジングと;絶縁ハウジングの内部に配置され、ハウジング壁によって少なくとも部分的に囲まれる断路器と;絶縁ハウジングの外側に配置される絶縁分岐バスバーであって、ハウジング壁の一部が断路器と絶縁分岐バスバーとの間に配置される、絶縁分岐バスバーと;ハウジング壁を貫通し、断路器の第2の端部を絶縁分岐バスバーに接続する絶縁接続要素と;分岐バスバーに接続される絶縁相バスバーと;を含む。スイッチングシステムは、複数のスイッチング機器を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気中絶縁スイッチング機器であって、当該気中絶縁スイッチング機器は、
ハウジング壁を含む絶縁ハウジングと、
該絶縁ハウジングの内部に配置され、前記ハウジング壁によって少なくとも部分的に囲まれる断路器であって、該断路器は第1の端部及び第2の端部を有しており、前記断路器の前記第1の端部が電源から電力を受け取る、前記断路器と、
前記絶縁ハウジングの外側に配置される絶縁分岐バスバーであって、前記ハウジング壁の一部が前記断路器と前記絶縁分岐バスバーとの間に配置される、前記絶縁分岐バスバーと、
前記ハウジング壁を貫通し、前記断路器の前記第2の端部を前記絶縁分岐バスバーに接続する絶縁接続要素と、
前記絶縁分岐バスバーに接続される絶縁相バスバーと、を含む、
気中絶縁スイッチング機器。
【請求項2】
前記絶縁分岐バスバーは、全体が絶縁材料で囲まれた導電性バスバーから構成される、請求項1に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項3】
前記断路器は可動式導電要素を含み、該可動式導電要素は、前記可動式導電要素が閉位置にあるときに、前記断路器の前記第1の端部と前記第2の端部との間に導電路を形成し、前記可動式導電要素が開位置にあるときに、前記断路器の前記第1の端部と前記第2の端部とを遮断する、請求項1又は2に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項4】
前記絶縁ハウジング内に配置され、接地に電気的に接続される接地接点をさらに含み、前記断路器が前記開位置にあるときに、前記可動式導電要素の前記第2の端部が前記接地接点と接触する、請求項3に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項5】
前記断路器の前記第1の端部と前記電源との間に配置された回路遮断装置をさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項6】
前記回路遮断装置は真空断続器である、請求項5に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項7】
前記断路器の端部の周りに配置された少なくとも1つのシールド要素をさらに含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項8】
前記絶縁ハウジングは、プラスチック材料又はエポキシで形成される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項9】
前記絶縁接続要素はブッシングを含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項10】
前記絶縁分岐バスバーは、絶縁性の熱可塑性エラストマー材料によって囲まれる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項11】
前記絶縁ハウジングは、空気が前記絶縁ハウジングに流入及び流出するのを可能にする開口部を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の複数のスイッチング機器を含むスイッチングシステム。
【請求項13】
前記複数のスイッチング機器の各スイッチング機器の前記絶縁ハウジングは、全て同一の形状を有する、請求項12に記載のスイッチングシステム。
【請求項14】
前記複数のスイッチング機器の各スイッチング機器の前記絶縁分岐バスバーは、全ての形状が互いに異なる、請求項12又は請求項13に記載のスイッチングシステム。
【請求項15】
前記複数のスイッチング機器の各スイッチング機器の前記絶縁分岐バスバーは、互いに異なる方向に延びる、請求項12乃至14のいずれか一項に記載のスイッチングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中電圧及び高電圧用途に使用される気中絶縁(air-insulated)スイッチング機器に関する。
【背景技術】
【0002】
中電圧及び高電圧の配電機器では、異なる電位差にある要素同士の間の電流の流れを回避するコンパクトな装置を提供するために、SF等のガス絶縁が使用されることがよくある。SFに関連した環境への悪影響のため、ガス絶縁に依存しない配電コンポーネントを提供することが望まれている。
【0003】
ガス絶縁機器の代替は、米国特許出願公開第2006/0034037号明細書に開示されるスイッチ装置等の、高電圧及び中電圧のコンポーネントが空気で囲まれる気中絶縁機器である。このような機器では、SF絶縁ガスを使用するときに不具合イベントを防止する(効果的に防止できる)ように、追加の設計上の検討事項が必要になる。特に問題となるのは、空気の絶縁破壊により高電圧領域から接地へ電子が流れるフラッシュオーバー現象の発生である。これらのイベントは、典型的に、点灯又は過渡電圧サージ中等、システムに大きな電圧が印加されたときに発生する。このようなフラッシュオーバー現象を回避するために、気中絶縁電気機器には、要素同士の間の大きな分離距離又は絶縁材料の複雑な構成が含まれ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、電気フラッシュオーバー現象を回避する配電コンポーネントのコンパクトな配置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様では、スイッチング機器を提供する。スイッチング機器は、ハウジング壁を含む絶縁ハウジングと;絶縁ハウジングの内部に配置され、ハウジング壁によって少なくとも部分的に囲まれる断路器(disconnector)であって、断路器は第1の端部及び第2の端部を有しており、断路器の第1の端部が電源から電力を受け取る、断路器と;絶縁ハウジングの外側に配置される絶縁分岐バスバー(insulated branch busbar:絶縁された分岐バスバー)であって、ハウジング壁の一部が断路器と絶縁分岐バスバーとの間に配置される、絶縁分岐バスバーと;ハウジング壁を貫通し、断路器の第2の端部を絶縁分岐バスバーに接続する絶縁接続要素(insulated connection element:絶縁された接続要素)と;絶縁分岐バスバーに接続される絶縁相バスバー(insulated phase busbar:絶縁された相バスバー)と;を含む。
【0006】
いくつかの例では、断路器は可動式導電要素を含み、可動式導電要素は、可動式導電要素が閉位置にあるときに、断路器の第1の端部と第2の端部との間に導電路を形成し、可動式導電要素が開位置にあるときに、断路器の第1の端部と第2の端部とを遮断する。
【0007】
いくつかの例では、この機器は、絶縁ハウジング内に配置され、接地に電気的に接続された接地接点を含み、断路器が開位置にあるときに、可動式導電要素の第2の端部が接地接点と接触する。
【0008】
いくつかの例では、この機器は、断路器の第1の端部と電源との間に配置された回路遮断(circuit breaking)装置を含む。
【0009】
いくつかの例では、回路遮断装置は真空断続器(interrupter:遮断器)を含む。
【0010】
いくつかの例では、この機器は、断路器の端部の周りに配置された少なくとも1つのシールド要素を含む。
【0011】
いくつかの例では、ハウジングは、プラスチック材料又はエポキシで形成される。
【0012】
いくつかの例では、絶縁接続要素はブッシングを含む。
【0013】
いくつかの例では、絶縁分岐バスバーは、絶縁性の熱可塑性エラストマー材料によって囲まれる。
【0014】
いくつかの例では、ハウジングは、空気がハウジングに流入及び流出するのを可能にする開口部を含む。
【0015】
本開示の別の態様では、スイッチングシステムを提供する。スイッチングシステムは、本開示の第1の態様による複数のスイッチング機器を含む。
【0016】
いくつかの例では、複数のスイッチング機器のそれぞれのスイッチング機器の絶縁ハウジングは、全て同じ形状を有する。
【0017】
いくつかの例では、複数のスイッチング機器の各スイッチング機器の絶縁分岐バスバーは、全て互いに異なる形状を有する。
【0018】
いくつかの例では、複数のスイッチング機器のそれぞれのスイッチング機器の絶縁分岐バスバーは、互いに異なる方向に延びる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態によるスイッチングシステムを含む機器の図である。
図2】実施形態によるスイッチングシステムの図である。
図3】実施形態によるスイッチングシステムの断面図である。
図4a】実施形態による断路器の可動式導電要素の断面図である。
図4b】実施形態による断路器の可動式導電要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明はスイッチング機器を提供する。スイッチング機器は、スイッチ装置等の高電圧及び中電圧配電用の気中絶縁スイッチングシステムの一部として使用することができる。
【0021】
図1図3は、本発明の実施形態による中電圧及び高電圧電源で使用するための3つのスイッチング機器101を含むスイッチングシステム100を示す。スイッチングシステム100は、電源ラインと三相バスバーシステムの相バスバー要素(又は相バスバー)との間の電気接続を提供する。スイッチングシステム100の1つ又は複数の要素を作動させると、電源を導電性バスバー要素から遮断することができる。以下の説明では、スイッチング機器101という用語は、電源を1相バスバー要素に接続するコンポーネントを表す。図示の実施形態では、そのような3つのスイッチング機器101が、スイッチングシステム100内に並べて配置され、三相電源システムの異なる相バスバー104への電気接続を提供する。スイッチングシステムの実施形態は、以下に説明するような単一のスイッチング機器101、又は別の数のスイッチング機器101を含み得ることを理解されたい。
【0022】
スイッチング機器101は、好ましくはプラスチック、エポキシ、又は他の非金属材料で作製された絶縁ハウジング102を含む。ハウジング102は、スイッチング機器101の要素を部分的に取り囲む。ケーブル接続105が、高電圧又は中電圧で電流を供給又は受け取るための電源ケーブルを受容するように構成される。ケーブル接続105は、真空断続器等の回路遮断装置106の第1の端部に電気的に接続される。回路遮断装置106の第2の端部は断路器107の第1の端部に電気的に接続される。このようにして、電源は、回路遮断装置106を介して断路器107の第1の端部に接続される。回路遮断装置106及び断路器107は、絶縁ハウジング102内に配置され、絶縁ハウジング102によって部分的に取り囲まれる。しかしながら、いくつかの実施態様では、回路遮断装置106がなく、電源が、必要に応じて、断路器107の第1の端部に直接接続される又は1つ又は複数の他の中間コンポーネント(図示せず)を介して接続される場合がある。
【0023】
断路器107の第2の端部は、ハウジングの壁を貫通する絶縁接続要素108に接続される。絶縁接続要素108は、例えば、ブッシングによって囲まれた導電性要素であってもよい。絶縁接続要素108は、絶縁分岐バスバー109を介して絶縁相バスバー104に接続される。そのため、絶縁分岐バスバー及び相バスバーは、ハウジング壁によってハウジング内の要素から分離される。相バスバー104及び分岐バスバー108は、銅又は別の適切な導体で形成され、導電性材料を完全に取り囲む熱可塑性エラストマー材料111で絶縁される。いくつかの実施形態では、相バスバー104及び分岐バスバー109は、別の適切な絶縁材料によって囲まれてもよい。換言すれば、絶縁分岐バスバーは、導電性の分岐バスバーの周囲を絶縁材料で取り囲むことによって形成したものである。いくつかの実施形態では、絶縁接続要素108の導電要素と絶縁分岐バスバー109の導電要素とを一体的に形成してもよい。
【0024】
断路器107は、機械的アクチュエータ112を使用して開閉できる、好ましくは銅で形成された可動式導電要素117を含む。可動式導電要素117が開いているときに、可動式導電要素117の第1の端部は回路遮断装置(回路遮断装置がない場合には電源)に接続されたままである一方、可動式導電要素117の第2の端部は、絶縁接続要素108から遮断される。完全に開いた位置では、断路器の可動式導電要素の第2の端部は、接地接点113に接続されており、これにより電気回路を接地することができる。いくつかの実施形態では、断路器は、断路器の可動式導電要素を接地接点又は絶縁接続要素108に接続することができない3位置スイッチとすることができる。従って、相バスバー104は、機械的アクチュエータ112を使用して断路器107を開くことによって電源から遮断することができる。接地接点113は、ハウジング壁が接地接点と分岐バスバー109との間に配置されるように、絶縁ハウジング102内に配置される。
【0025】
ディスク状の電場制御シールド114が、断路器107の可動式導電要素117の両側に取り付けられる。ディスク状のシールド114はそれぞれ、絶縁材料で作製されたホルダ内に位置付けされた金属ディスクを含む。シールド114は、断路器107の開放接点近傍の電場整形を担当し、フラッシュオーバー現象を引き起こす可能性のある過度に高い電場強度の領域を回避するように構成される。
【0026】
ハウジング102は、断路器107、機械的アクチュエータ112、接地接点113、シールド114、回路遮断装置106、及び絶縁接続要素108の一部を少なくとも部分的に取り囲む。分岐バスバー108及び相バスバー104はハウジング102の外側に配置される。ハウジング102は、略直方体であり、第1の方向D1に互いに離間した前面102a及び背面102bと、第1の方向に直交する第2の方向D2(これは、図3の断面図の紙面内にある)に互いに離間した2つの側面102cとを含むハウジング壁を含む。スイッチング機器101は気中絶縁されるため、ハウジングの上部及び底部は開放されており、空気がハウジングに出入りすることができる。絶縁分岐バスバーを使用することにより(例えば、自由電子のより多くの供給源となる可能性がある裸の分岐バスバーと比較して)、キャップを使用してハウジングを閉じる必要なく、フラッシュオーバーを低減することができる。ハウジング壁の前面102aは、断路器107と分岐バスバー109及び相バスバー104との間に配置される。ハウジングの前面102aには、ハウジングを貫通して形成された孔があり、絶縁接続要素108は、第1の方向にその孔を通過する。絶縁接続要素108は、分岐バスバー109を介して相バスバー104に接続される。
【0027】
図1及び図2に示されるように、三相スイッチングシステム100では、3つのスイッチング機器101が、隣接するスイッチング機器101のハウジングの側壁102cが互いに対向するように第2の方向に配置される。ハウジング102によって囲まれた要素、及び/又はハウジング102自体は、3つのスイッチング機器のそれぞれにおいて同一であってもよい。各スイッチング機器101は、それぞれの相バスバー104に接続される。相バスバー104は、第1及び第2の方向に直交する第3の方向D3(すなわち、図3の断面に示される垂直方向)に配置され、第2の方向に延びることができる。各スイッチング機器101は、それぞれの分岐バスバー109を介して異なる相バスバー104に接続される。図1図3に示されるように、1つのスイッチング機器101の分岐バスバー104は、実質的に第2の方向に延び得るが、他の2つのスイッチング機器101の分岐バスバー104は、それぞれ上向き及び下向きに屈曲して、それぞれの相バスバー109に接続され得る。換言すれば、分岐バスバー104は、全て互いに異なる形状を有しており、互いに異なる方向に延びる。
【0028】
絶縁分岐バスバー109が絶縁ハウジング102の外側に配置される図1図3のスイッチング機器の構成は、既知のスイッチ装置と比較して、電力周波数電圧又は点灯インパルス電圧条件におけるフラッシュオーバー現象による保護を改善する。
【0029】
スイッチング機器は、絶縁ハウジング102の内側と外側との両方に、フラッシュオーバー現象の可能性を低減するように組み合わされる条件を提供するように構成される。
【0030】
絶縁ハウジングの外側
絶縁ハウジング102の外側では、電場強度が比較的高い領域では導電体が完全に絶縁される。
【0031】
分岐バスバー109及び絶縁接続要素108の近傍の電場強度は、点灯インパルス及び電力周波数電圧条件中の空気の絶縁耐力(又は「耐圧レベル」)を超える可能性がある。この高い電場強度により自由電子が生成される可能性があり、その結果、望ましくないフラッシュオーバーが発生する可能性が高まる。この自由電子の生成は、分岐バスバー109及び絶縁接続要素108をハウジングの外側で完全に絶縁することによって防止することができる。
【0032】
絶縁ハウジングの内部
絶縁ハウジング102の内部では、適切な電場制御によって電場を許容可能なレベルまで低減することによって、自由電子の生成を低減又は回避することができる。絶縁ハウジング102内で完全に絶縁することは一般に不可能である。
【0033】
絶縁ハウジング内の殆どの領域で典型的に生成される比較的低い電場の近傍では、自由電子は生成されないため、望ましくないフラッシュオーバーは発生しない。
【0034】
断路器の可動式導電要素117は、裸の断路器107近傍の電場強度が比較的低くなるように形成される。特に、可動式導電要素117は、その表面の不連続性を避けるために滑らかな形状である。好ましくは、プロファイル(profile:断面)で見ると(すなわち、図3に示される実施形態では第2の方向に沿って)、可動式導電要素117は、図4aに示されるように、角が滑らかに丸い長方形の断面を有する。好ましくは、正面から見ると(すなわち、図3に示される実施形態では第1の方向に沿って)、可動式導電要素は、図4bに示されるように、実質的に楕円形の断面を有する。可動式導電要素に鋭いエッジが存在すると、電場強度の集中が高くなる可能性があり、滑らかな表面を有する可動式導電要素117を提供することにより、電場の最高ピークと平均値との間の比が減少する。可動式導電要素117は、裸の断路器107近傍の電場強度が、所定の点灯インパルス及び電力周波数電圧条件中に空気の絶縁耐力よりも小さくなるような形状であることが好ましい。
【0035】
断路器107の可動式導電要素117の両端における幾何学的形状の不連続性は、電場集中を引き起こす可能性がある。断路器107の端部の電場強度を空気の絶縁耐力よりも低くするために、断路器の両端にディスク状の電場制御シールド114が設けられる。ディスク状の電場制御シールド114は、断路器107の端部を部分的に取り囲み、断路器107の両端における電場強度を低減する。絶縁ハウジング102の内部では、電場は、自由電子の生成を避けるのに十分に低く、絶縁破壊にはつながらない。
【0036】
絶縁ハウジングの内側と外側の条件の相互作用
プラスチック製絶縁ハウジング102は、絶縁ハウジング102の外側の領域(自由電子の生成を防ぐために完全な絶縁及び高電場を有する)を、ハウジング102の内側の領域(自由電子の生成を回避するのに十分に低い低減した電場及び裸の導体を有する)から分離する。ハウジングの外側では、電場が一部の領域で空気の絶縁破壊電圧よりも大きくなる可能性があり、自由電子が利用可能な場合には絶縁破壊が発生する可能性がある。しかしながら、開示する実施形態では、自由電子の生成がハウジングの外側で(絶縁によって)防止され、ハウジングの内側で生成された自由電子が、絶縁ハウジングによってハウジングの外側の他の高電場強度領域から分離されるため、この絶縁破壊は回避され、こうして、ハウジング内で生成された自由電子がハウジングの外側になだれ現象を形成するのを防ぐ。上でより詳細に説明したように、電場強度の高い領域を避けることにより、ハウジング内での自由電子の生成が可能な限り低減される。
【0037】
分岐バスバー109及び絶縁接続要素108を絶縁することによって、これらの要素での自由電子生成に必要な電場強度は、裸の導電要素と比較して増加する。特に、自由電子は、電場レベル>30kV/cmで、裸の導体を使用する場合に生成されるが、本発明は相バスバーを絶縁することによって自由電子の生成を低減する。
【0038】
自由電子の生成は、導電性材料、絶縁性材料、空気が接する三重接合(triple junctions)近傍でより低い電場強度で発生する。図1図3の実施形態は、導電性分岐バスバーを空気充填ハウジング内の絶縁表面上に取り付けるのではなく、導電性分岐バスバー109を絶縁材料で完全に取り囲む(絶縁された分岐バスバーを形成する)ことによって、既知の装置と比較して三重接合の出現率(prevalence)が低い構成を提供する。この構成により、既知の装置と比較して自由電子の生成がさらに回避され、それによりフラッシュオーバー現象の可能性が減少する。さらに、分岐バスバー109を絶縁ハウジング102の外側に設けることにより、分岐バスバー109での自由電子の生成点と、接地接点113又は他の要素等の絶縁ハウジング内の接地要素又は低電圧の導電要素との間の経路長が増大する。この経路長の増大により、分岐バスバー109における電場強度が自由電子の生成を引き起こすのに十分な条件下であっても、フラッシュオーバー現象の可能性がさらに低減される。フラッシュオーバー現象を低減するために、ハウジング102内の構成要素を完全に絶縁するのではなく、自由電子の経路を遮断するだけでよいため、より薄いプラスチック壁を気中絶縁ハウジングに使用することができる。いくつかの実施形態では、プラスチック壁は、厚さ3mm未満、できれば厚さ1mm未満にすることができる。
【0039】
分岐バスバー109を絶縁ハウジング102の外側に配置することにより、分岐バスバー109が絶縁ハウジング102内に配置される機器と比較して、よりコンパクトなハウジング設計が提供される。多相スイッチングシステムでは、各分岐バスバー109は、断路器107からそれぞれの相バスバー104に異なる方向に延びる。分岐バスバー109が絶縁ハウジング102の外側に配置されるスイッチング装置101を提供することによって、ハウジング102及びハウジング102内の要素は、スイッチングシステム100の3つの相全てについて同一であり得る。これにより、ハウジングが相毎に異なる構造を有する多相スイッチングシステムと比較して、製造プロセスが大幅に簡素化された多相スイッチングシステム101の提供が可能になる。
【0040】
上記の開示は、既知の気中絶縁スイッチング装置と比較して、点灯インパルス条件におけるフラッシュオーバー現象の可能性を低減する、コンパクトな設計及び簡素化した製造プロセスを含むスイッチング機器及びシステムを提供する。特に、分岐バスバーを絶縁することによって、分岐バスバーでの自由電子の生成が減少し、分岐バスバーをスイッチング装置の単一の絶縁相ハウジングの外側に配置することによって、絶縁相ハウジングが高電場にもかかわらず自由電子に対する障壁を形成するため、分岐バスバーでの自由電子生成と接地要素又は低電圧の要素との間の経路が増大する。分岐バスバーでの自由電子生成の減少と、分岐バスバーでの自由電子生成と接地要素との間の経路長の増大との組合せにより、フラッシュオーバー現象の可能性が減少する。
図1
図2
図3
図4a
図4b
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気中絶縁スイッチング機器であって、当該気中絶縁スイッチング機器は、
ハウジング壁を含む絶縁ハウジングと、
該絶縁ハウジングの内部に配置され、前記ハウジング壁によって少なくとも部分的に囲まれる断路器であって、該断路器は第1の端部及び第2の端部を有しており、前記断路器の前記第1の端部が電源から電力を受け取る、前記断路器と、
前記絶縁ハウジングの外側に配置される絶縁分岐バスバーであって、前記ハウジング壁の一部が前記断路器と前記絶縁分岐バスバーとの間に配置される、前記絶縁分岐バスバーと、
前記ハウジング壁を貫通し、前記断路器の前記第2の端部を前記絶縁分岐バスバーに接続する絶縁接続要素と、
前記絶縁分岐バスバーに接続される絶縁相バスバーと、を含む、
気中絶縁スイッチング機器。
【請求項2】
前記絶縁分岐バスバーは、全体が絶縁材料で囲まれた導電性バスバーから構成される、請求項1に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項3】
前記断路器は可動式導電要素を含み、該可動式導電要素は、前記可動式導電要素が閉位置にあるときに、前記断路器の前記第1の端部と前記第2の端部との間に導電路を形成し、前記可動式導電要素が開位置にあるときに、前記断路器の前記第1の端部と前記第2の端部とを遮断する、請求項1に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項4】
前記絶縁ハウジング内に配置され、接地に電気的に接続される接地接点をさらに含み、前記断路器が前記開位置にあるときに、前記可動式導電要素の前記第2の端部が前記接地接点と接触する、請求項3に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項5】
前記断路器の前記第1の端部と前記電源との間に配置された回路遮断装置をさらに含む、請求項1に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項6】
前記回路遮断装置は真空断続器である、請求項5に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項7】
前記断路器の端部の周りに配置された少なくとも1つのシールド要素をさらに含む、請求項1に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項8】
前記絶縁ハウジングは、プラスチック材料又はエポキシで形成される、請求項1に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項9】
前記絶縁接続要素はブッシングを含む、請求項1に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項10】
前記絶縁分岐バスバーは、絶縁性の熱可塑性エラストマー材料によって囲まれる、請求項1に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項11】
前記絶縁ハウジングは、空気が前記絶縁ハウジングに流入及び流出するのを可能にする開口部を含む、請求項1に記載の気中絶縁スイッチング機器。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の複数のスイッチング機器を含むスイッチングシステム。
【請求項13】
前記複数のスイッチング機器の各スイッチング機器の前記絶縁ハウジングは、全て同一の形状を有する、請求項12に記載のスイッチングシステム。
【請求項14】
前記複数のスイッチング機器の各スイッチング機器の前記絶縁分岐バスバーは、全ての形状が互いに異なる、請求項12に記載のスイッチングシステム。
【請求項15】
前記複数のスイッチング機器の各スイッチング機器の前記絶縁分岐バスバーは、互いに異なる方向に延びる、請求項12に記載のスイッチングシステム。
【外国語明細書】