(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014752
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ソケット及び検査用ソケット
(51)【国際特許分類】
H01R 33/76 20060101AFI20240125BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240125BHJP
【FI】
H01R33/76 504Z
H01R33/76 505Z
G01R31/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105098
(22)【出願日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】10 2022 118 313.0
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂子田 智
【テーマコード(参考)】
2G003
5E024
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AC01
2G003AG01
2G003AG16
5E024CA15
5E024CA19
(57)【要約】
【課題】省スペースで小型化可能であり、電気部品の回転を確実に回避して電気部品を好適に位置決めする。
【解決手段】第1電気部品と第2電気部品とを電気的に接続するソケットであって、第1電気部品を配置する配置領域と、配置領域に対して進退移動自在に配置され、配置領域への進入方向に付勢される位置調整部材と、位置調整部材が第1電気部品を付勢した際、第1電気部品の移動を規制する規制部材と、を有し、位置調整部材は、少なくとも第1電気部品の側面中央部を付勢する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気部品と第2電気部品とを電気的に接続するソケットであって、
前記第1電気部品を配置する配置領域と、
前記配置領域に対して進退移動自在に配置され、前記配置領域への進入方向に付勢される位置調整部材と、
前記位置調整部材が前記第1電気部品を付勢した際、前記第1電気部品の移動を規制する規制部材と、を有し、
前記位置調整部材は、少なくとも前記第1電気部品の側面中央部を付勢する、
ソケット。
【請求項2】
前記第1電気部品を前記規制部材の固定位置に到達するまで押圧するよう前記位置調整部材を付勢する付勢部材をさらに有する、
請求項1記載のソケット。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記位置調整部材の下方に配置されている、
請求項2記載のソケット。
【請求項4】
前記位置調整部材は、前記進入方向に沿って長さを有する位置調整部材本体を有し、
前記付勢部材は、前記位置調整部材本体の下方で前記進入方向に沿って伸縮自在な弾性体である、
請求項3記載のソケット。
【請求項5】
前記配置領域には、上下動可能なフローティングが設けられており、
前記位置調整部材は、
前記フローティングに設けられた上側切欠部内で移動自在な位置調整部材本体と、
前記位置調整部材本体の先端部から下方に垂下する係合爪部と、を有し、
前記付勢部材は、前記フローティングの下方に配置された基部の下側切欠部内に配置され、可動端部が、前記係合爪部に係合する、
請求項3記載のソケット。
【請求項6】
前記配置領域に対して上下動自在に配置されたカバー部を有し、
前記カバー部の上方移動又は下方移動に連動して、前記第1電気部品を、押圧状態で保持し又は当該保持を解除するラッチ部をさらに有し、
前記規制部材は、前記第1電気部品が前記ラッチ部に保持される前に3箇所で挟持されるよう前記位置調整部材に移動を許容する、
請求項5記載のソケット。
【請求項7】
電気部品の電気的特性の検査に用いる検査用ソケットであって、
請求項1記載のソケットを備える、
検査用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置(以下「ICパッケージ」という)等の電気部品に電気的に接続されるソケット及び検査用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気部品としてのICパッケージ等が装着されるテスト用のソケットは、ソケット本体が配線基板の上に装着され、収容するICパッケージの端子と配線基板との電気的な接続を行う。このようなソケットとしては、例えば、収容したICパッケージと配線基板との電気的な接続を確実に行うため、ICパッケージが所定の位置からずれないようにICパッケージを位置決めするための位置決め機構を有するソケットが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の位置決め機構は、台座部上の固体撮像装置を、天面に平行なX方向で、固体撮像装置の対角線上の一方の角部から他方の角部に向けて押圧して位置決めする第1位置決め手段を有する。この第1位置決め手段は、付勢手段により固体撮像装置の天面に垂直なZ方向に付勢され、位置設定手段により、付勢手段による第1位置決め手段のZ方向への移動上限を設定して、固体撮像装置に対する第1位置決め手段のZ方向の位置が設定される。この構成により、第1位置決め手段は、例えば、基板を搭載した固体撮像装置をテストする場合に、固体撮像装置との接触位置を、基板搭載部分以外の部分に設定して位置決めできるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バーンイン試験等を行う際のヒータ等のように、配置領域に収容したICパッケージを上部から押圧して、ICパッケージの検査を行うICソケットが知られている。
【0006】
このICソケットではICパッケージを押圧した際にICパッケージが回転してしまうおそれがあり、この場合、好適に測定することができない。
【0007】
よって、この場合、特許文献1における位置決め機構を適用することが考えられるが、特許文献1の位置決め機構は、第1位置決め手段は、略L字型の板状部材の直角三角形状の切り欠き部同士で、対角上でテスト対象の固体撮像装置を位置決めしている。
【0008】
このため、固体撮像装置の対角方向外側に、第1位置決め手段と、その押圧を受ける部材とを配置する構造となるのでソケット自体が大きくなり、ICパッケージの小型化に対応した小型化の実現が困難となるという問題があった。また、従来の第1位置決め手段は、対角上のL字部分で位置決めするため、固体撮像装置の角部がずれた状態で、正確に位置決めされない状態で保持されるおそれがあるという問題がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、省スペースで小型化可能であり、電気部品の回転を確実に回避して電気部品を好適に位置決めできるソケット及び検査用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のソケットの一態様は、第1電気部品と第2電気部品とを電気的に接続するソケットであって、
前記第1電気部品を配置する配置領域と、
前記配置領域に対して進退移動自在に配置され、前記配置領域への進入方向に付勢される位置調整部材と、
前記位置調整部材が前記第1電気部品を付勢した際、前記第1電気部品の移動を規制する規制部材と、を有し、
前記位置調整部材は、少なくとも前記第1電気部品の側面中央部を付勢する構成を採る。
【0011】
本発明の検査用ソケットの一態様は、電気部品の電気的特性の検査に用いる検査用ソケットであって、
上記構成のソケットを備える構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、省スペースで小型化可能であり、電気部品の回転を確実に回避して電気部品を好適に位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係るソケットの平面図である。
【
図2】
図1で示すソケットのA-A線矢視断面斜視図である。
【
図3】
図1で示すソケットのB-B線矢視断面図である。
【
図4】
図2で示すソケットにおいてカバー部を外した状態のC-C線矢視断面図である。
【
図11】ICパッケージを収容可能な状態のソケットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本実施の形態では、ソケットの一例として、電気部品の電気的特性を検査する検査用のソケットを例示する。この検査では、検査対象の電気部品に対して、各種試験が行われる。例えば、電気部品の実際の使用環境と同じ環境、又は、実際の環境よりも負荷のかかる環境において、電気部品が適正に動作するかどうか等が調べられる。
【0016】
また、本実施の形態に係るソケットは、第1電気部品と第2電気部品との電気的接続を行うものであれば、他の用途の場合にも適用可能である。この適用例では、ソケットは、第2電気部品である外部の配線基板上に半田付けされ、その後に、第1電気部品であるICチップ(例えば、シリコン基板上で相互接続されたトランジスタ、抵抗、コンデンサ及びインダクタを含む、電子回路)を、ソケット内部に挿入して収容する。これにより、ICチップを半田付け時の熱による損傷から保護することができる。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係るソケットの平面図であり、
図2は、
図1で示すソケットのA-A線矢視断面斜視図であり、
図3は、
図1で示すソケットのB-B線矢視断面図である。
【0018】
(本実施の形態に係るICソケットの構成)
ICソケット1は、第1電気部品であるICパッケージPを配置する配置領域21を有するソケット本体2上に、配置領域21を囲む枠状のカバー部5が上下動自在に設けられている。
【0019】
カバー部5をソケット本体2に近接させた状態で、ICパッケージPを配置領域21内に配置できる。配置領域21にICパッケージPを配置した後、カバー部5をソケット本体2から上方に離間させることにより、ラッチ部26が、ICパッケージPを上面側から押圧してICパッケージPを保持する。これにより、ICパッケージPは、第2電気部品に電気的に接続され、特性の測定が可能な状態で、ラッチ部26により保持される。
【0020】
本実施の形態のICソケット1では、ラッチ部26によりICパッケージPが保持される前に、位置調整部材3により、ICパッケージPを付勢して、好適な電気的接続位置である所定位置で回転不能に位置決めする。
【0021】
カバー部5は、外形が矩形に形成され、中央付近に上下方向に貫通する貫通穴51が形成された枠状の部材であり、上下動でラッチ部26がICパッケージPを所定位置で保持或いは保持解放させる。
【0022】
(ソケット本体)
ソケット本体2では、配置領域21は上方に開口する凹状に形成される。ソケット本体2は、基部22と基部22を囲むように配置される周壁部24と、フローティング部25と、ラッチ部26と、カバー部付勢部材27と、位置調整部材3と、付勢部材33と、ガイド部40と、を有する。
【0023】
配置領域21は、基部22上に配置されたフローティング部25に、周壁部24の内周面で囲まれ、上方に開口する凹状に構成されている。
【0024】
本実施の形態では、基部22と周壁部24とが別々の部材となっているが、基部22と周壁部24とは一体的に形成されていてもよい。配置領域21は、ICパッケージPを収容可能な構成であればよく、フローティング部25が無い構成であれば、基部22の上面に構成されてもよく、ソケット本体2に構成されていればよい。
【0025】
基部22は、厚さを有する例えば平面状に形成され、ソケット本体2の配置領域21を構成する。基部22は、平板状の下プレート222と上プレート224を積層して構成されている。基部22の上面、つまり上プレート224の上面には、基部22の上面から所定の範囲内で接離方向に移動自在なフローティング部25が配置されている。
【0026】
フローティング部25の上面が配置領域21、つまり、載置面21aとなる。このフローティング部25が無い構成の場合、基部22の上面を配置領域、つまり載置面としてもよい。また、本実施の形態では、基部22の厚さ方向を上下方向と呼び、以降において、「上」及び「下」は、この上下方向における上及び下のことを示す。フローティング部25についての詳細は後述する。なお、下プレート222及び上プレート224には、双方に亘って、付勢部材33が配設される下側切欠部228が形成されている。付勢部材33は、位置調整部材3を付勢する。
【0027】
また、基部22、つまり上下プレート224、222には、上下方向に貫通する貫通孔が複数設けられており、これらの貫通孔にコンタクトピンが上下プレート222、224に亘ってそれぞれ挿通されている。コンタクトピンは、基部22の下方で検査機器としての基板の回路と電気的に接続され、フローティング部25を介してICパッケージPの端子と回路基板とを電気的に接続する。
【0028】
具体的には、配置領域21に収容され、所定位置に位置決めされたICパッケージPは、ラッチ部26に押圧される。この押圧により、コンタクトピンの上方及び下方の先端がそれぞれ、フローティング部25を介してICパッケージPの端子及び回路基板の端子と圧接することで、確実な電気的接続が形成される。なお、基部22は、貫通孔に挿通されたコンタクトピンを、脱落しないように保持する。貫通孔におけるコンタクトピンの保持には公知の技術を適用可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0029】
周壁部24は、基部22上の配置領域21を包囲するように配置され上方に突出するように設けられている。周壁部24には、カバー部5を上方に付勢するカバー部付勢部材27と、ラッチ部26の移動を案内する案内カム部245(
図4参照)とが配設されている。
【0030】
なお、カバー部付勢部材27は、カバー本体52と周壁部24との間に設けられ、カバー本体52を周壁部24に対して、基部22から離れる方向に向けて付勢する部材である。カバー部付勢部材27は、圧縮コイルバネであり、例えば、コイルバネである。
【0031】
周壁部24は、カバー部5の上方向への移動を案内するとともに、カバー部付勢部材27の付勢力に抗してカバー部5の下方向への移動を案内する。周壁部24は、カバー部5を基部22に対して接離方向、つまり上下方向に移動自在に支持している。周壁部24は、基部22に対してカバー部5を上下方向に移動自在に案内するよう構成されている。
【0032】
周壁部24には、カバー部5の上下動に連動して、上下動するとともに揺動し、先端部26aでICパッケージPを保持又は解放するラッチ部26が設けられている。
【0033】
案内カム部245は、湾曲面で、開閉動作するラッチ部26の摺動部266が摺動自在に配置されている。案内カム部245は、ラッチ部26の回動を案内し、その先端部26aを、保持位置(閉状態)と、解放位置(開状態)とに変位させる。
【0034】
具体的には、周壁部24において対向する壁部のそれぞれに上下方向に延在する長穴がそれぞれ形成され、この長穴内に、ラッチ部26の基端部26bにおいて上下方向と直交する方向に突出する軸部264の両端部が、挿入されている。
【0035】
軸部264は、例えば、周壁部24の一対の対向壁部に沿って延在し、配置領域21を挟む位置で左右対称に配置され、ラッチ部26の基端部26bに挿通されている。なお、軸部264と基端部26bとは一体に形成されていてもよい。
【0036】
図4に示すラッチ部26は、配置領域21に収容されるICパッケージPを配置領域21で保持する。ラッチ部26は、先端部26aが揺動して配置領域21に収容されるICパッケージPを上方から押圧して配置領域21に固定した状態で保持する。
【0037】
ラッチ部26は、基端部26bがラッチ付勢部材29により上方に付勢された状態で取り付けられている。ラッチ部26は、上方位置にあるとき、図示しないばねにより先端部26aでICパッケージPを押圧するように付勢されている。ラッチ部26は、基端部26bを中心に揺動自在に設けられ、揺動により先端部26aが配置領域21の上方の位置からその位置から外れた位置に退避自在である。
【0038】
具体的には、ラッチ部26は、ラッチ付勢部材29の付勢力に抗して軸部264が下方に移動すると、摺動部266と案内カム部245とが摺動しつつ、基端部26bは、下方に移動する。これにより、ラッチ部26の先端部26aは、上方に変位し、配置領域21を、ICパッケージPを収容可能な開状態(
図11参照)にする。
【0039】
レバー部28が回動することにより、ラッチ部26が連動して配置領域21に収容されたICパッケージPの保持、保持解放を行う。
【0040】
レバー部28では、基端部284は周壁部24に回動自在に取り付けられ、自由端部である先端部282は、カバー部5に設けられた切り欠き案内部56を摺動するよう配置されている。先端部282は、カバー部5の上下動に伴い移動する切り欠き案内部56により案内されて、軸部(図示省略、基端部284に位置する)を中心に揺動し、上下に変位する。
【0041】
レバー部28は、レバー部28自体の回動により、変位してラッチ部26に作用する突起部286を有する。
【0042】
突起部286は、レバー部28の基端部284側で、レバー部28の上面側に突設され、先端部282の揺動により先端部282と逆方向に移動する。すなわち、先端部282が下方に移動すると上方に変位し、先端部282が上方に移動すると、突起部286は変位して、下部で当接するラッチ部26の軸部264を下方に押圧する。
【0043】
レバー部28は、カバー部5が上方に移動した際に、ラッチ部26にICパッケージPを保持させ、カバー部5が下方に移動した際にラッチ部26にICパッケージPの保持状態を解放させるように構成されてもよい。なお、ラッチ部26は、下方に移動することでICパッケージPを保持し、上方移動することでICパッケージPを解除するようにしてもよい。
【0044】
これにより、ラッチ部26は、カバー部5が下方に移動すると、レバー部28の先端部282が下方に押圧され、レバー部28は回動し、突起部286によるラッチ部26(軸部264)への下方の押圧を解除する。
【0045】
突起部286が、基端部26bの下方への押圧を解除すると、突起部286は、ラッチ付勢部材29の付勢力により上方に移動する。と同時に、案内カム部245に沿って摺動部266が摺動する。これにより、案内カム部245をラッチ部26の摺動部266が摺動して、ラッチ部26の先端部26aは、配置領域21から離間する。これにより、配置領域21にICパッケージPが収容できる。
【0046】
ラッチ部26では、カバー部5が上方に移動するとレバー部28の先端部282が上方に移動する。これにより、突起部286は、軸部264を下方に押圧する。これにより、案内カム部245にラッチ部26の摺動部266が摺動し、ラッチ部26の先端部26aを閉じる方向に移動する。
【0047】
なお、本実施の形態では、下方に押圧されることにより下面側の第2電気部品と接続される第1電気部品としては、PGA(Pin grid array)タイプ、BGA(Ball Grid Array)タイプのIC等、どのようなタイプのものでもよい。
【0048】
(フローティング部)
フローティング部25は、平面視が矩形の板状部材であり、基部22上、具体的には、上プレート224上に配置される。
【0049】
フローティング部25は、上プレート224に対して、双方の間に配置されたコイルバネ等の付勢部材を介して離間して配置され、接離方向で移動自在である。フローティング部25は、例えば、絶縁性を有する樹脂で形成される。
【0050】
図5はフローティング部の平面図であり、この図では、フローティング部とともに基部22の上プレート224を示す。
【0051】
フローティング部25は、上プレート224の上に配置され、付勢部材により離間する方向に付勢されている。フローティング部25は、矩形板状である。フローティング部25には、その上面にガイド部40が配置され、ガイド部40の一部に至るように凹状の上側切欠部252が形成されている。この上側切欠部252には、駒部(位置調整部材とも称する)3が、上側切欠部252の延在方向に移動自在に配置されている。
【0052】
ガイド部(案内部)40は、装着されるICパッケージPを囲むように配置される。ガイド部40は、載置面21aに載置されるICパッケージPを所定位置に案内するためのものである。
【0053】
ガイド部40は、ICパッケージPの配置領域の四辺P-1~P-4の夫々の中央部を空けて、四辺P-1~P-4の両端部の夫々でICパッケージPの角部に対面するよう配置領域(載置面)に固定された複数の壁部、例えば、L字型の角状壁部を有する。ガイド部40は、ICパッケージPを配置領域としての所定位置に案内する。
【0054】
第1辺P-1は、壁部411、412を有し、第1辺P-1に対向する第2辺P-2は、壁部421、422を有する。第2辺P-2には、第1壁部421、第2壁部422が分離固定されている。第1辺P-1~P-4のそれぞれの両端部は、それぞれ角状壁部が配置されている。
【0055】
角状壁部の内面に傾斜が付けられており、4辺P-1~P-4、つまり、4つの角状壁部で囲む矩形状の領域が下方につれて小さくなるよう構成されている。
【0056】
またこれら角状壁部を構成する分離固定された壁部どうしの接合部分である入り隅部分には切り欠きが形成され、ICパッケージPの角部が入り込んでその姿勢を修正可能となっている。なお、角状壁部は、内側に配置されるICパッケージPとの間に隙間があくように形成されている。
【0057】
載置面21a内では、ICパッケージPは、四辺P-1~P-4のうちの第1辺P-1の中央部を介して第1辺P-1から配置領域へ進入移動する位置調整部材3と、第2辺P-2の両端部に分離固定された第1壁部421及び第2壁部422と、からなる3箇所で、挟持される。これによりICパッケージPは、配置領域で、回転不能に位置決めされる。このように、壁部のうち、位置調整部材がICパッケージを付勢した際、ICパッケージの移動を規制する壁部を規制部材とする。
【0058】
ICパッケージPが装着される位置である所定位置は、配置領域21の底面、つまり載置面21a内の領域であり、コンタクトピンを介して、ICパッケージPと基部22の下方の第2電気部品である回路基板とが好適に電気的に接続される位置である。
【0059】
フローティング部25には、載置面21aに載置されるICパッケージPを一側方向から押圧可能な位置調整部材3が移動自在に配置される上側切欠部252が形成されている。
【0060】
上側切欠部252は、ガイド部40の一辺の内側に至る位置まで延在し、ガイド部40内からガイド部40外まで、位置調整部材3は移動可能である。
【0061】
(位置調整部材)
図6は位置調整部材3の後方斜視図である。位置調整部材3は、四辺P-1~P-4のうちの第1辺P-1の中央部に、載置面21aに対して進退移動自在に配置され、載置面21aへの進入方向に付勢されている。位置調整部材3は、付勢部材33によりICパッケージP側に付勢されている。すなわち、ICパッケージPを平面視した場合の一辺における中央部(側面中央部)が、位置調整部材3により付勢される。このICパッケージPにおける付勢される位置は、少なくとも中央部を含めばよく、その他の位置を付勢することを排除するものではない。
【0062】
位置調整部材3は、フローティング部25の上側切欠部252に遊嵌する遊嵌部313を有し、上側切欠部252の延在方向に沿って移動可能な位置調整部材本体(駒本体)312と、摺動規制部314と、係合爪部316、後端掛止部318とを有する。
【0063】
位置調整部材本体312は、前記進入方向に沿って長さを有する。位置調整部材本体312は、下側切欠部228上で、且つ、上側切欠部252を移動することにより、ガイド部40に対して、つまり収容されるICパッケージPに対して接離方向に移動可能である。中央部に係合孔としての摺動規制部314が設けられ、ICパッケージP側の面(先端面)を、ICパッケージPに当接する押圧面315とする。また位置調整部材本体312は、進入方向に沿って長さを有し付勢部材33は、位置調整部材本体312の下方で進入方向に沿って伸縮自在な弾性体であるので、ソケットの外周を著しく小さくして小型化を図ることができる。
【0064】
位置調整部材本体312は、フローティング部25の上側切欠部252内で、上プレート224上をスライド自在に配置される。後端掛止部318は、上プレート224の基端部側の縁部に掛止し、ガイド部40から離間する方向への移動が規制されている。
摺動規制部314に、カバー部5に設けられた移動規制部55が挿入して係合されることにより、位置調整部材本体312自体の移動が規制される。
【0065】
摺動規制部314は、移動規制部55を誘い込み挿通させるように構成される孔部であり、孔部の内周面には基端側の内周面に下り勾配が付けられている。移動規制部55が、この下り勾配(傾斜面314aに相当)を摺動することにより、位置調整部材本体312は付勢力に抗して、ICパッケージP側への移動を規制し、基端部側へ移動する。また、この傾斜面314aを摺動する移動規制部55が上方に移動すると、傾斜面314aとの係合位置が、ICパッケージP側に移動していく。これにより、位置調整部材本体312は、付勢部材33の付勢力により、先端側、つまり、ICパッケージP側に移動していき、ICパッケージPに当接して押圧する。
【0066】
このように、摺動規制部314に挿入される移動規制部55が上下動することにより、摺動規制部314の下り勾配の基端側の内周面を、摺動する。内周面との係合状態により、位置調整部材3はICパッケージPに向かって移動自在可能となっている。
【0067】
係合爪部316は、位置調整部材本体312の先端部から下方に垂下し、この係合爪部316には、フローティング部25の下方に配置された基部22の下側切欠部228内に配置された付勢部材33の可動端部が係合する。
これにより、フローティング部25を有するソケットにおいても、位置調整部材3のICパッケージPに対する付勢力を確実に伝達することができる。
【0068】
(付勢部材)
付勢部材33は、上プレート224及び下プレート222に形成された溝状の下側切欠部228内に配置され、上側切欠部252に沿って移動する駒部(位置調整部材)3をICパッケージP側に付勢している。付勢部材33は、位置調整部材本体312の進入方向に沿って伸縮自在な弾性体である。
【0069】
付勢部材33は、ICパッケージPを第1壁部421及び第2壁部422の固定位置に到達するまで押圧するよう位置調整部材3を付勢する。これにより、位置調整部材3と、第1壁部421、第2壁部422とを含む3か所でICパッケージPを強固に挟持できる。
【0070】
付勢部材33は、付勢部材収容空間の一面と、その一面に対向して配置され接離動自在な係合爪部316が係合している。また、付勢部材33は、位置調整部材3の下方に配置されているので、ソケット自体の外周を小型化できる。
【0071】
(カバー部)
カバー部5は、ソケット本体2を覆う部材である。カバー部5は、カバー本体52と、移動規制部55と、切り欠き案内部56と、を有する。
【0072】
カバー本体52は、中央に矩形の開口部を有する矩形枠状体であり、周壁部24に対して上下方向に移動自在に被覆するように設けられている。
カバー本体52は、周壁部24との間に介設されたカバー部付勢部材27を介して、上側位置と下側位置との間で上方に付勢された状態で配置される。
【0073】
移動規制部55は、位置調整部材3の摺動規制部314に挿入して係合することにより、付勢部材33の付勢力に抗して、ICパッケージP側に付勢される位置調整部材3の移動を規制する。言い換えれば、移動規制部55は、摺動規制部314への係合度合い、つまり、接触度合いによって、位置調整部材3の移動を制御する。
【0074】
具体的には、移動規制部55は、位置調整部材3の上方から位置調整部材3に向かって上下動自在に垂設されており、位置調整部材3の摺動規制部314の傾斜面314aを摺動し、位置調整部材3自体の移動を規制する。
【0075】
移動規制部55は、上下動することにより、摺動規制部314の傾斜面314aを摺動或いは離脱する。移動規制部55が最下端に位置する場合、摺動規制部314を挿通し、傾斜面314aの先端が係合して、位置調整部材3は、ICパッケージPから退避した位置に位置する。また、移動規制部55が最上端に位置する場合、摺動規制部314から離脱するか或いは位置調整部材3の最も基端部に近い位置で係合し、位置調整部材3自体の移動の規制を解放した状態にする。
【0076】
切り欠き案内部56は、カバー本体52の上下動により、レバー部28の先端部282に当接して摺動する。切り欠き案内部56は、カバー本体52の天面部分522に設けられている。切り欠き案内部56が下方に移動すると、レバー部28の先端部282と係合して、先端部282は、摺動して下方に移動する。これにより、レバー部28が回動し、突起部286は上方に移動して、軸部264を介したラッチ部26への下方の押圧を解除する。
【0077】
切り欠き案内部56が上方に移動すると、レバー部28の先端部282との係合状態が解除され、先端部282が摺動して上方に移動し、レバー部28が回動し、突起部286は下方に移動して、ラッチ部26の基端部26bを下方に押圧する。
【0078】
案内カム部245は、カバー本体52の上下動により、ラッチ部26の摺動部266が摺動し、ラッチ部26が開状態、閉状態となるようにラッチ部26を案内する。カバー本体52が上側位置にある場合、ラッチ部26は、案内カム部245に案内される摺動部266を介して、閉位置、つまり、ラッチ爪部が、ICパッケージPを保持する閉位置に位置する。
【0079】
案内カム部245は、カバー本体52が下側位置にある場合、摺動部266の摺動により、ラッチ部26を開位置に位置、つまり、先端部26aが、ICパッケージPを着脱可能な開位置に位置させる。
【0080】
なお、カバー本体52は、ソケット本体2に引っ掛かる爪(不図示)を有する。爪がソケット本体2に引っ掛かることにより、カバー本体52はソケット本体2に固定される。また、爪のソケット本体2への引っ掛かりが解除されることにより、カバー本体52のソケット本体2への固定が解除される。
【0081】
(位置調整部材の挙動)
次に、フローティング部25の配置領域21にICパッケージPを収容して、ICパッケージPをソケット本体2に固定する際の、ソケット1の挙動、具体的には、位置調整部材3の挙動について説明する。
【0082】
本実施の形態では、カバー部5が下方に位置する場合、移動規制部55(詳細にはその先端部)が最下端位置に位置し、摺動規制部314内に挿入される。移動規制部55の先端が摺動規制部314の下側開口部に至るとき、位置調整部材3を最も第1壁部421及び第2壁部422から離れた位置で保持する。この状態を
図7に示す。このとき、位置調整部材3は、第1辺P-1の中央部に位置している。
【0083】
図7に示すように、位置調整部材3の摺動規制部314に移動規制部55が挿入されている状態では、位置調整部材3は、第2辺、つまり、第1壁部421及び第2壁部422への移動が規制されている。この状態のソケットの平面図を
図11に示す。
【0084】
図11に示すように、ガイド部40で囲まれた配置領域21に、貫通穴51を介してICパッケージPを収容可能となっている。
【0085】
配置領域21に検査対象となるICパッケージPを収容して、カバー部5を基部22から上方に離間する方向に移動させる。
【0086】
すると
図8に示すように、カバー部5の上昇により、移動規制部55が、位置調整部材3の摺動規制部314から上方に抜ける方向に移動する。
【0087】
位置調整部材3、つまり、摺動規制部314は、第1壁部421及び第2壁部422側に押圧されているので、移動規制部55は、摺動規制部314の傾斜面314aを摺動しつつ上方に、摺動規制部314から離間する方向に移動する。これにより位置調整部材3は、第1壁部421及び第2壁部422側に移動する。
【0088】
そして、更にカバー部5の上昇に伴い、移動規制部55が上方に移動すると、位置調整部材3は、
図9に示すように、第1壁部421及び第2壁部422側に接近し、ICパッケージPの側面に当接する。このとき、位置調整部材3は、ICパッケージPの一側辺部の略中央部(側面中央部)に対して押圧面315で、線或いは面接触する(
図5の想像線で示すICパッケージP参照)。
【0089】
そして、さらに、カバー部5が上昇し、移動規制部55と摺動規制部314との摺動関係が解除されると、移動規制部55による位置調整部材3のICパッケージP側への移動の規制が解放される。これにより位置調整部材3は、付勢部材33により付勢され、ICパッケージPを押圧する。位置調整部材3は、フローティング部25において、第1辺P-1側から配置領域である載置面21aの配置領域へ進入移動する。位置調整部材3は、位置調整部材3のICパッケージ付勢面と、第1辺P-1に対向する第2辺P-2に分離固定された第1壁部421及び第2壁部422と、の3箇所で、ICパッケージPを挟持する。具体的には、位置調整部材3は、ICパッケージPを付勢して第1壁部421及び第2壁部422の第2辺P-2に押し付けることで、ICパッケージPの回転を抑制できる。
【0090】
本実施の形態のソケット1では、配置領域21に対して上下動自在に配置されたカバー部5を有し、カバー部5は、カバー部5の上方移動又は下方移動に連動して、位置調整部材3の移動を許容又は規制する移動規制部55を有する。この構成によりカバー部5の上下動だけでICパッケージPの回転することのない好適な電気的接続及び解放を行うことができ利便性の向上を図ることができる。また、カバー部5の上方移動又は下方移動に連動して、ICパッケージPを、底部であるフローティング部25に押し付けた状態で保持し又は当該保持を解除するラッチ部26をさらに有する。移動規制部55は、ICパッケージPがラッチ部26に保持される前に3箇所で挟持されるよう位置調整部材3に移動を許容する。
【0091】
ソケット1では、所謂、片寄ではなく、対向する2辺のうちの1辺P-1の中央から、他の1辺P-2に押し付けて、ICパッケージPの回転を防止しており、また、位置調整部材3の下方に、位置調整部材3を付勢する付勢部材33が配置されている。
【0092】
よって、ICパッケージ等の電気部品の電気的特性の検査を行うソケットとして、電気部品の四方に電気部品に対し接離方向に移動自在に配置した位置決め部材で、センタリングする構造のソケットよりも小型化を図ることができる。また、部品点数を少なくできるので、コストの削減を図ることができる。さらに、テスト対象となる電気部品を、その四方から位置決め部材によって、その中央に位置させる、つまり、センタリングによる位置決めの思想とは、異なる簡易な方法で電気部品の回転防止を行うことができる。
このように、ソケット1によれば、省スペースで小型化可能であり、且つ、電気部品の回転を確実に回避する好適な電気部品位置決めを行うことができる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記ソケットの構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係るソケットは、省スペースで小型化可能であり、電気部品の回転を確実に回避して好適に位置決めできる効果を有し、検査用のソケットとしても有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 ICソケット
2 ソケット本体
3 位置調整部材
5 カバー部
21 配置領域
21a 載置面
22 基部
24 周壁部
25 フローティング部
26 ラッチ部
26a 先端部
26b 基端部
27 カバー部付勢部材
28 レバー部
29 ラッチ付勢部材
33 付勢部材
40 ガイド部
52 カバー本体
55 移動規制部
56 切り欠き案内部
245 案内カム部
222 下プレート
224 上プレート
228 下側切欠部
252 上側切欠部
264 軸部
266 摺動部
282 先端部
284 基端部
286 突起部
312 位置調整部材本体
313 遊嵌部
314 摺動規制部
314a 傾斜面
315 押圧面
316 係合爪部
318 後端掛止部
411、412 壁部
421 第1壁部
422 第2壁部
522 天面部分
P ICパッケージ
P-1 第1辺
P-2 第2辺
P-3 第3辺
P-4 第4辺