(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147522
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】海上船舶の推進を制御する方法
(51)【国際特許分類】
B63H 1/10 20060101AFI20241008BHJP
B63G 8/08 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
B63H1/10
B63G8/08
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024058768
(22)【出願日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】23166286
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミカ・ヌーティネン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】海上船舶の推進システムを制御するための方法が開示される。
【解決手段】制御装置が、少なくとも2つのフォイルの各々の角度可変偏心率とフォイルホイールの回転角とに基づいて、フォイルホイールに回転可能に取り付けられた少なくとも2つのフォイルのピッチ角に関するデータを形成する。この可変偏心率は、フォイルホイールの回転角の一部分において制限される。アクチュエータ装置が、制御装置からデータを受信し、このデータに基づいて、少なくとも2つのフォイルをピッチ角に設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上船舶の推進システムを制御するための方法であって、前記推進システムは、フォイルホイールと、前記フォイルホイールに回転可能に取り付けられた少なくとも2つのフォイルと、アクチュエータ装置と、制御装置と、を備え、前記方法は、
前記制御装置によって、少なくとも、前記少なくとも2つのフォイルの角度可変偏心率と前記フォイルホイールの回転角とに基づいて、前記少なくとも2つのフォイルのピッチ角に関するデータを形成することと、ここにおいて、前記可変偏心率は、前記フォイルホイールの前記回転角の一部分において制限され、
前記制御装置から前記データを受信する前記アクチュエータ装置によって、前記データに基づいて、前記少なくとも2つのフォイルを前記ピッチ角に設定することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つのフォイルは、個々に制御可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フォイルホイールの前記回転角の前記一部分は、第1の回転角付近に位置し、フォイルは、前記第1の回転角において最も高い負荷を受ける、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも制限振幅パラメータ及び急峻度パラメータを使用して、前記フォイルホイールの前記回転角の前記一部分を決定すること
を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の偏心率を決定することと、ここにおいて、前記第1の偏心率は、制限のないフォイルモータトルクについての最適な一定の偏心率であり、
第2の偏心率を決定することと、ここにおいて、前記第2の偏心率は、前記フォイルによって耐えられる最大の一定の偏心率であり、
前記第1の偏心率と前記第2の偏心率との間の偏差として、前記制限振幅パラメータを決定することと、
前記回転角に対する前記ピッチ角に関する前記データの一次導関数及び二次導関数が平滑であるように、前記急峻度パラメータを決定することと、
を更に備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フーリエ級数のパラメータを使用して、前記フォイルホイールの前記回転角の前記一部分を決定すること
を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
装置によって実行されると、前記装置に、少なくとも請求項1~3のいずれか一項に記載の方法を実行させるプログラム命令を備えるコンピュータ可読媒体。
【請求項8】
前記コンピュータ可読媒体は、非一時的なコンピュータ可読媒体である、請求項7に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
海上船舶のための推進システムであって、
フォイルホイールと、前記フォイルホイールに回転可能に取り付けられた少なくとも2つのフォイルと、アクチュエータ装置と、制御装置と、を備え、
前記制御装置は、コンピュータプログラムコードを含む1つ以上のメモリ及び1つ以上のプロセッサを備え、
前記1つ以上のメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記1つ以上のプロセッサを用いて、少なくとも前記制御装置に、少なくとも、前記少なくとも2つのフォイルの角度可変偏心率と前記フォイルホイールの回転角とに基づいて、前記少なくとも2つのフォイルのピッチ角に関するデータを形成することと、ここにおいて、前記可変偏心率は、前記フォイルホイールの前記回転角の一部分において制限され、前記ピッチ角に関する前記データを前記アクチュエータ装置に通信することと、を行わせるように構成されており、
前記アクチュエータ装置は、前記データに基づいて、前記少なくとも2つのフォイルを前記ピッチ角に設定するように構成されている、推進システム。
【請求項10】
前記少なくとも2つのフォイルは、個々に制御可能である、請求項9に記載の推進システム。
【請求項11】
前記フォイルホイールの前記回転角の前記一部分は、第1の回転角付近に位置し、フォイルは、前記第1の回転角において最も高い負荷を受ける、請求項9に記載の推進システム。
【請求項12】
前記1つ以上のメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記制御装置に、少なくとも制限振幅パラメータ及び急峻度パラメータを使用して、前記フォイルホイールの前記回転角の前記一部分を決定することを更に行わせるように構成されている、請求項9~11のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項13】
前記1つ以上のメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記制御装置に、
第1の偏心率を決定することと、ここにおいて、前記第1の偏心率は、制限のないフォイルモータトルクについての最適な一定の偏心率であり、
第2の偏心率を決定することと、ここにおいて、前記第2の偏心率は、前記フォイルによって耐えられる最大の一定の偏心率であり、
前記第1の偏心率と前記第2の偏心率との間の偏差として、前記制限振幅パラメータを決定することと、
前記回転角に対する前記ピッチ角に関する前記データの一次導関数及び二次導関数が平滑であるように、前記急峻度パラメータを決定することと、
を更に行わせるように構成されている、請求項12に記載の推進システム。
【請求項14】
前記1つ以上のメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記1つ以上のプロセッサを用いて、前記制御装置に、フーリエ級数のパラメータを使用して、前記フォイルホイールの前記回転角の前記一部分を決定することを更に行わせるように構成されている、請求項9~11のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項15】
請求項9~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの推進システムを備える海上船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上船舶の推進システムを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海上船舶は、推進システムからの推力を用いて、その周囲の水に対して移動し得、推進システムは、ホイールから垂直に延在するフォイルを有する1つ以上の回転するフォイルホイールを含む。フォイルホイール推進システムは、中心を軸とした定点の回転と、フォイルの揺動との複合作用によって推力を生成する。個々のフォイルピッチ制御により、典型的な推進システムは、最高速度のトルク負荷に最適なトロコイドピッチ角で作動する。しかしながら、現実的に制限されたフォイルモータトルクを有するこのような推進システムは、ボラードプル状態では最適でない場合がある。
【0003】
従って、現実的に制限されたフォイルモータトルクの推進システムで改善されたボラードプル推力を有するピッチ角関数を見出すことが有益となる。
【発明の概要】
【0004】
一態様によれば、独立請求項の主題が提供される。従属請求項は、いくつかの実施形態を定義する。
【0005】
いつくかの例となる実施形態が、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】
図4は、例となる機能を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、例となる機能を例示するフローチャートである。
【
図8】
図8は、フォイルモータロータ角度曲線の例を例示する。
【
図9】
図9は、フォイルモータトルク曲線の例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の実施形態は、例示的なものである。本明細書は、いくつかの箇所で、「一(an)」、「1つの(one)」、又は「いつくかの(some)」実施形態(複数可)に言及し得るが、これは、必ずしも、各そのような言及が、同じ実施形態(複数可)に対するものであること、又は特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを意味するものではない。異なる実施形態の単一の特徴はまた、他の実施形態を提供するために組み合わされ得る。更に、「備える(comprising)」及び「含む(including)」という語は、記載される実施形態/例を、言及されているそれらの特徴のみから成るように限定するものではないと理解されるべきであり、このような実施形態は、具体的に言及されていない特徴/構造も含み得る。更に、「第1」、「第2」、等のような序数詞を含む用語が、様々な要素を説明するために使用され得るが、構造要素は、これら用語によって限定されない。これら用語は、単に1つの要素を他の要素から区別することを目的として使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶこともできる。
【0008】
本明細書に記載される方法の実施形態及び例は、個々に制御可能なフォイルを有する任意のフォイルホイール推進システムにおいて実施され得る。
【0009】
図は様々な実施形態を例示するが、それらは、いくつかの構造及び/又は機能エンティティのみを示す簡略図であることに留意されたい。図に示される接続は、論理的又は物理的な接続を指し得る。記載される装置及び/又はシステムが、図及び本文に記載されるもの以外の機能及び構造も備え得ることは、当業者には明らかである。測定及び/又は制御に使用されるいくつかの機能、構造、及びシグナリングの詳細は、実際の発明には無関係であることを理解されたい。従って、それらは、本明細書でより詳細に説明される必要はない。
【0010】
図1は、1つ以上の推進サブシステム104、104’を備える推進システム102を有する海上船舶100(海上船舶は、
図1に部分的に示されている)の例を例示する。海上船舶は、輸送船及び客船を含み得、海上船舶(marine vehicle)又は船舶(marine vessel)という用語は、一般に、例えば、水上輸送用に設計された任意の船を指し得る。輸送船は、例えば、貨物船及びコンテナを含み得る。追加として、海上船舶は、漁船、タグボート及び補給船のようなサービス船、並びに軍艦を指し得る。更に、海上船舶は、フェリー及び潜水艦として使用され得る。当業者には、海上船舶が、例示されていない任意の数の図示された要素、他の機器、他の機能、及び他の構造を備えることが明らかである。それらは、使用されるプロトコルと同様に、当業者には周知であり、実際の発明には無関係である。従って、それらは、本明細書でより詳細に説明される必要はない。
【0011】
例示される例では、推進サブシステム104、104’は、プロペラの前進率に応じて、サイクロイドピッチ角とトロコイドピッチ角との両方を生成することが可能であり得るサイクロロータプロペラである。前進率は、プロペラの先端速度に対する自由流流体速度の比率として理解され得る。各例示的な推進サブシステム104、104’は、フォイルホイール106、106’を備える。フォイルホイール106、106’は、少なくとも2つのフォイル108、108’を備える。フォイル108、108’は、ホイール106、106’から、ホイール106、106’の回転面に対して垂直に延在し得るブレードである。フォイル108、108’は、フォイルホイール106、106’に回転可能に取り付けられている。フォイルホイール106、106’の全てのフォイル108、108’は、フォイルホイール106、106’に対して回転可能に個々に制御可能であり得、これにより、所望のピッチ角が、フォイル108、108’の各々について完全に独立して得られ得る。代替として、フォイル108、108’は、例えば、好適なジョイント及び/又はギアを通じて機械的に、共同で制御可能であり且つフォイルホイールに結合され得、これにより、所望のピッチ角が、フォイル108、108’の各々について得られ得る。例えば、フォイル108、108’は、個々のフォイルの回転の間の一定の位相差を達成するように結合され得る。
【0012】
図1の例に例示されるように、ホイールエンジンシステム120は、機械的動力伝達を通じて、複数の推進サブシステム104、104’に共通であり得る。代替として、推進サブシステム104、104’の各々又はいくつかは、別個のホイールエンジンシステム120を有し得る。
【0013】
図2は、推進システム102が、個々に制御可能なフォイル108を有する1つのフォイルホイール106を備える例を例示する。即ち、推進システム102は、推進サブシステム104、104’のうちの1つに対応し得る。追加として、例示的な推進システム102は、アクチュエータ装置(actuator arrangement)110と、制御装置112と、を備える。アクチュエータ装置110は、フォイル108に動作可能に結合され、フォイルを回転させるように構成されている。制御装置112は、推進サブシステム104、104’に共通であり得るか(
図1を参照)、又は制御装置112は、複数のサブ制御装置を備え得、推進サブシステム104、104’ごとに1つのサブ制御装置を備え得る(このような可能性が
図2に例示されているが、
図2の制御装置112は、複数のフォイルホイールのためにも存在し得る)。
【0014】
一実施形態によれば、制御装置112は、コンピュータプログラムコードを含む1つ以上のメモリ116及び1つ以上のプロセッサ114を備える。1つ以上のメモリ116及びコンピュータプログラムコードは、制御装置112に、1つ以上のプロセッサ114を用いて、少なくとも2つのフォイル108が機械的に接続されているフォイルホイール106の回転の角度θと、少なくとも2つのフォイル108の各々の角度可変偏心率(angularly variable eccentricity)r+とに基づいて、少なくとも2つのフォイル108のピッチ角γ(θ,r+)に関するデータを形成させる。これは、数学的には、次のように表され得る:γ(θ,r+)=J(θ,r+(θ))、ここで、Jは、少なくとも2つのフォイル108のピッチ角γ(θ,r+)をモデル化する関数又は演算であり、フォイルホイール106の回転の角度θ及び角度可変偏心率r+(θ)は、その引数である。フォイルのピッチ角γ(θ,r+)は、それがフォイルホイールの回転角θの関数であり、典型的に曲線を形成するので、フォイルピッチ軌道とも呼ばれ得る。角度可変偏心率r+は、フォイル108のピークトルクを制限するために、フォイルホイール106の回転角の一部分において制限される。
【0015】
一実施形態によれば、次いで、制御装置112は、ピッチ角γ(θ,r
+)に関するデータをアクチュエータ装置110に通信し、アクチュエータ装置110は、制御装置112によって形成されたデータに基づいて、少なくとも2つのフォイル108をピッチ角γ(θ,r
+)に設定する。データは、ピッチ角のパラメータ及び/又はピッチ角の少なくとも1つの値を含み得る。アクチュエータ装置110は、少なくとも2つのフォイル108の各々について電気モータ装置ARを備え得、電気モータ装置ARは、それぞれのフォイル108に動作可能に結合される。電気モータ装置ARは、
図2の例に例示されるように、それぞれのフォイル108を、フォイルの長手方向軸を中心に回転させるように構成され得る。電気モータ装置ARは、レギュレータと、電気モータ(フォイルモータ)と、を備え得、電気モータは、例えば、制御装置112からのピッチ角γ(θ,r
+)に従って、それが機械的に結合されたフォイルを回転させる。
図2で説明されたフォイルホイール106及び少なくとも2つのフォイル108の機能は、
図1のフォイルホイール106’及びフォイル108’にも同様に適用され得る。
【0016】
制御装置112はまた、ホイールエンジンシステム120の駆動装置118も制御し得る。ホイールエンジンシステム120は、エンジン(モータ)を備え得、これは、電気エンジン、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、又はガスエンジン等の燃焼エンジン、及び潜在的に機械式ギアボックスを備え得る。駆動装置118の構成は、エンジンのタイプに依存し得る。ホイールエンジンシステム120が1つ以上の電気エンジン(電気モータ)を備える場合、駆動装置118は、例えば、電気エンジン(複数可)を制御するように構成された電気駆動装置を備え得る。制御装置112は、駆動装置118にコマンドを送り得、次いで、駆動装置118は、ホイールエンジンシステム120のエンジンの回転速度及び/又は回転方向を制御し得る。ホイールエンジンシステム120は、例えば、直接的に又はギアボックスを通じて、フォイルホイール106を回転させ得る。しかしながら、ホイールエンジンシステムの詳細は、実際の発明には無関係であり、当業者は、様々なホイールエンジンシステム120自体に精通している。従って、それらは、本明細書でより詳細に説明される必要はない。
図2の例に例示されるように、推進サブシステム104、104’の各々は、それ自体のホイールエンジンシステム120を有し得る。
【0017】
一実施形態では、ピッチ角は、
【0018】
【0019】
と書かれ得、ここで、γは、x軸(現在の進行方向)に対するフォイルピッチ角であり、θは、負のy軸に対して反時計回りに測定されたフォイルホイール106の回転角であり、r
+は、偏心率であり、tan
-1は、逆正接関数(アークタンジェント関数としても知られる)である。フォイル108の座標系及び中心角の定義の例が
図3に例示されており、ここで、X及びYは、進行方向に対するフォイルホイールの座標軸を表し、X’及びY’は、フォイルホイールに対するフォイルの座標軸を表す。隣接するフォイル間に72°の等しい角度を有して配置された5つのフォイル108が、フォイルホイール(
図3には図示せず)に取り付けられている。この場合、フォイルモータの角速度は、
【0020】
【0021】
と書かれ得、ここで、ωwheelは、フォイルホイール106の角速度である。フォイルモータの角加速度は、
【0022】
【0023】
と書かれ得、ここで、フォイルホイール106の角速度ωwheelは、一定であると仮定される。従って、ピッチ角γの一次導関数及び二次導関数の挙動は、それぞれ、フォイルモータの角速度及び角加速度の挙動を決定する。所要フォイルモータトルクは、ハイドロ負荷についての角速度と、慣性負荷についての角加速度とに依存する。角速度及び角加速度は、負のy軸に対して角度θ=180°付近でピークに達し、従って、フォイルは、その角度付近で最も高い負荷を受ける。
【0024】
制限されたトルクについての角度可変偏心率
【0025】
【0026】
もまた、回転角θの関数である。一例では、それは、
【0027】
【0028】
と書かれ得、ここで、
【0029】
【0030】
は、制限のないフォイルモータトルクで得られる最適な一定の偏心率であり、Aは、制限振幅パラメータであり、nは、急峻度パラメータである。制限振幅パラメータ及び急峻度パラメータは、フォイル108が最も高い負荷を受ける第1の回転角付近の回転角の一部分についての偏心率の下限値(lower values)を定義する。第1の回転角は、負のy軸線に対して角度θ=180°であり得る。制限振幅パラメータ及び急峻度パラメータは、所望に応じて選択され得る。制限振幅は、角度θ=180°付近の一部分の外側で使用される偏心率からどれだけ偏心率が減少するかを定義する。大きい急峻度パラメータは、(θに関して)狭い制限部分を生成し、一方、小さい急峻度パラメータは、より広い制限部分を生成する。
【0031】
別の例では、制限されたトルクについての角度可変偏心率
【0032】
【0033】
は、シンボル的(symbolically)に異なる関数、例えば、フーリエ級数(Fourier series)の部分和として書かれ得る。
【0034】
【0035】
図4を参照すると、少なくとも2つのフォイルのピッチ角に関するデータが、少なくとも、少なくとも2つのフォイルの各々の角度可変偏心率とフォイルホイールの回転角とに基づいて、制御装置によって、ブロック401において形成される。少なくとも2つのフォイルは、個々に制御可能であり、フォイルホイールに回転可能に取り付けられている。この可変偏心率は、フォイルホイールの回転角の一部分において制限される。少なくとも2つのフォイルは、制御装置からデータを受信したアクチュエータ装置によって、ブロック402において、データに基づいてピッチ角に設定される。
【0036】
図5は、制御方法の角度可変偏心率についてのパラメータを決定する例を例示する。
【0037】
図5を参照すると、ブロック501において、第1の偏心率が決定される。第1の偏心率は、制限のないトルクについての最適な一定の偏心率である。ブロック502において、第2の偏心率が決定される。第2の偏心率は、フォイルモータが耐え得る最大の一定の偏心率である。ブロック503において、制限振幅パラメータが、第1の偏心率と第2の偏心率との間の偏差として決定される。例えば、第1の偏心率が0.7であり、第2の偏心率が0.5である場合、制限振幅パラメータは0.2である。従って、制限振幅パラメータは正の定数である。ブロック504で、回転角に対するピッチ角に関するデータの一次導関数及び二次導関数が平滑であるように、急峻度パラメータが決定される。急峻度パラメータは、反復によって決定され得る。急峻度パラメータはまた、より高度な最適化方法によっても決定され得る。
【0038】
一次導関数の例が
図6に提示され、二次導関数の例が
図7に提示される。制限されたトルクの偏心率のピッチ関数の一次導関数及び二次導関数は、一定の偏心率のピッチ関数の一次導関数及び二次導関数と比較される。
【0039】
図6及び
図7を参照すると、破線は、一定の偏心率r
+=0.7を表し、一点鎖線は、一定の偏心率r
+=0.5を表し、実線は、トルク制限偏心率
【0040】
【0041】
を表す。
図6及び
図7における数値は、制限されたトルクの偏心率に関連した一次導関数及び二次導関数が、回転角θの大部分について一定の偏心率0.7によって得られる曲線の近くに導かれ得るが、θ=180°付近では、曲線は、フォイルモータへの高い負荷を回避するために、一定の偏心率0.5によって得られる曲線のより近くにシフトされ得ることを示すための例にすぎない。
【0042】
図8は、ステータに対するフォイルモータロータ角度の対応する例を例示し、これは、ピッチ角γから回転角θを減算すること、即ち、γ-θによって決定され得る。破線は、一定の偏心率r
+=0.7を表し、一点鎖線は、一定の偏心率r
+=0.5を表し、実線は、トルク制限偏心率
【0043】
【0044】
を表す。
図8における数値は、制限されたトルクの偏心率に関連したロータ角度が、回転角θの大部分について一定の偏心率0.7によって得られる曲線の近くに導かれ得るが、θ=180°付近では、曲線は、フォイルモータへの高い負荷を回避するために、一定の偏心率0.5によって得られる曲線のより近くにシフトされ得ることを示すための例にすぎない。
【0045】
角度可変偏心率の関数としてのフォイル軌道のピッチ角の形成の利点は、最大フォイルモータトルクが幾分低減され得る一方で、より高いボラードプル推力を得ることであり得る。フォイルに関しての偏心率調整(foil-wise eccentricity adjustment)は、個々に制御可能なフォイルによって可能になる。提示された方法は、選択されたフォイルモータトルク仕様に適切であるようにピッチ関数を最適化するために、又は、所要ボラードプル推力のためのフォイルモータを、それらを過大寸法にすることなく選択するために、使用され得る。
【0046】
フォイルホイールボラードプル性能シミュレーションの一例を表1に示す。55RPMの速度がシミュレーションにおいて使用される。一定の偏心率r+=0.5がフォイルモータトルク限界にあると考えられる場合、即ち、ボラードプル推力を、一定の偏心率を増大させることによって増大させることができない場合、角度可変トルク制限偏心率
【0047】
【0048】
に変更することは、33%高いボラードプル推力を生じさせ得、一方、最大フォイルモータトルクは、61kNmから56kNmに低減する。
【0049】
【0050】
図9は、結果として生じるフォイルモータトルクの対応する例を例示する。細い実線は、一定の偏心率r
+=0.7を表し、丸印実線は、一定の偏心率r
+=0.5を表し、太い実線は、トルク制限偏心率
【0051】
【0052】
を表す。
図9における数値は、制限されたトルク偏心率に関連する最大フォイルモータトルクが、一定の偏心率0.5によって得られるトルクよりも更に小さいことを示すための例にすぎない。
【0053】
図4及び
図5の上述されたブロック及び関連する機能は、絶対的な時系列順になく、ブロックのうちのいくつかは、同時に、又は所定の順序とは異なる順序で実行され得る。他の機能もまた、ブロック間又はブロック内で実行され得る。ブロックのいくつか又はブロックの一部はまた、除外され得るか、又は対応するブロック又はブロックの一部によって置き換えられ得、例えば、第1の偏心率及び第2の偏心率を決定することは、除外され得るか、又は互いに置き換えられ得る。
【0054】
本明細書で説明された技法は、様々な手段によって実装され得、これにより、例えば、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって、実施形態/例を用いて上述された1つ以上の機能/動作を実装する装置が、先行技術の手段だけでなく、例えば、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって、実施形態を用いて説明された対応する機能の1つ以上の機能/動作を実装するための手段も備え、それは、各別個の機能/動作についての別個の手段を備え得るか、又は手段は、2つ以上の機能/動作を実行するように構成され得る。例えば、上述された1つ以上の機能/動作のための手段のうちの1つ以上は、ソフトウェア及び/若しくはソフトウェア-ハードウェア及び/若しくはハードウェア及び/若しくはファームウェアコンポーネント(読取り専用メモリ等の媒体上に消えないように記録されるか、又はハードワイヤードコンピュータ回路において具現化される)であり得るか、又はこれらの組合せであり得る。ソフトウェアコードは、任意の好適なプロセッサ/コンピュータ可読データ記憶媒体(複数可)又はメモリユニット(複数可)又は製造品(複数可)に記憶され、1つ以上のプロセッサ/コンピュータ、ハードウェア(1つ以上の装置)、ファームウェア(1つ以上の装置)、ソフトウェア(1つ以上のモジュール)、又はこれらの組合せによって実行され得る。ファームウェア又はソフトウェアの場合、実装は、本明細書で説明された機能を実行するモジュール(例えば、プロシージャ、関数、等)を通じて行われ得る。
【0055】
図10は、例えば、
図1~
図5及びそれらの任意の組合せによって、海上船舶の推進を制御するための上述された少なくともいくつかの機能を実行するように構成された装置(デバイス、機器)1000のためのいくつかのユニットを例示する簡略ブロック図である。例示された例では、装置1000は、1つ以上のユーザインターフェース等の、1つ以上のインターフェース(IF)エンティティ1001と、様々なインターフェースエンティティ1001及び1つ以上のメモリ1003に接続された1つ以上の処理エンティティ1002と、を備える。
【0056】
1つ以上のインターフェースエンティティ1001は、1つ以上の通信プロトコルに従って通信接続性を実現するための、又はデータの記憶及びフェッチを実現するための、又は
図1によって例示された例の説明において上述されたような1つ以上のユーザインターフェースを介してユーザ対話を提供するためのハードウェア及び/又はソフトウェアを備える通信インターフェース等の、情報を受信及び送信するためのエンティティである。
【0057】
処理エンティティ1002は、計算を実行することができ、メモリ1003に記憶された対応するアルゴリズム1004を用いて、例えば、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって、上述された機能/動作の少なくとも一部を実装するように構成されている。エンティティ1002は、例えば、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって、上述された実施形態/例/実装形態又は動作を実行するように構成可能である、1つ以上のプロセッサ、制御装置、制御ユニット、マイクロ制御装置、等を含み得る。一般に、プロセッサは、中央処理ユニットであるが、プロセッサエンティティ1002は、追加の演算プロセッサ又はマルチコアプロセッサ又はマイクロプロセッサであり得る。
【0058】
メモリ1003は、例えば、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって、上述された1つ以上の機能/動作に必要なコンピュータプログラムコード、即ち、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって上述された機能/動作を実装するためのアルゴリズム1004を記憶するために使用可能である。メモリ1003はまた、例えば、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって、上述された1つ以上の機能/動作に必要な他の可能な情報を少なくとも一時的に記憶するためにも使用可能であり得る。メモリ1003は、例えば、ユーザ入力として受信された測定データ及び/又は情報を、少なくとも一時的に記憶し得るデータバッファを備え得る。
【0059】
要約すると、例えば、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって、本明細書で説明された方法は、少なくとも、算術演算のために使用される記憶領域を提供するためのメモリ及び算術演算を実行するための演算プロセッサを含む、コンピュータ若しくはプロセッサ、若しくはシングルチップコンピュータ素子等のマイクロプロセッサとして、又はチップセット若しくは1つ以上の論理ゲートとして構成され得る。例えば、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって、上述された機能/動作のためのアルゴリズムの各々又はいくつか又は1つは、1つ以上の実施形態/例の、1つ以上の機能を実行するように、コンピュータプログラムコード(1つ以上のアルゴリズム)をダウンロードすることによってプログラムされることになる及び/又はプログラムされた、1つ以上のコンピュータプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、グラフィックス処理ユニット(GPU)及び/又は他のハードウェアコンポーネントに含まれ得る。
【0060】
一実施形態は、1つ以上のプロセッサ/コンピュータによって実行可能なプログラム命令を備える、任意のクライアント可読配布/データ記憶媒体又はメモリユニット(複数可)又は製造品(複数可)上に具現化されたコンピュータプログラムを提供し、この命令は、装置(デバイス、機器)にロードされると、対応する機能又は対応する機能の少なくとも一部を提供するエンティティを構成する。ソフトウェアルーチン、「プログラムライブラリ」を構成するプログラム断片、アプレット、及びマクロを含む、プログラム製品とも呼ばれるプログラムは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含む任意の媒体に記憶され得、装置にダウンロードされ得る。換言すれば、例えば、
図1~
図5のいずれか及びそれらの任意の組合せによって、上述された1つ以上の機能/動作のためのアルゴリズムの各々又はいくつか又は1つは、1つ以上の算術論理演算ユニット、いくつかの特殊レジスタ及び制御回路を備える要素に含まれ得る。
【0061】
技術が進歩するにつれて、本発明の概念が様々な方法で実装され得ることは、当業者には明らかであろう。本発明及びその実施形態は、上述された例に限定されず、特許請求の範囲内で変更がなされ得る。
【外国語明細書】