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特開2024-147523酸素熱ランスまたは溶融ランスを点火するための装置及び方法
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  • 特開-酸素熱ランスまたは溶融ランスを点火するための装置及び方法 図1
  • 特開-酸素熱ランスまたは溶融ランスを点火するための装置及び方法 図1b
  • 特開-酸素熱ランスまたは溶融ランスを点火するための装置及び方法 図2
  • 特開-酸素熱ランスまたは溶融ランスを点火するための装置及び方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147523
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】酸素熱ランスまたは溶融ランスを点火するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 7/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B23K7/00 W
B23K7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024058773
(22)【出願日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】102023000006375
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】523108670
【氏名又は名称】ビーエム グループ ホールディング ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ルッジェーロ フォレッリ
(72)【発明者】
【氏名】イオン ルス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア トニーニ
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ボッティーニ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための装置及び方法を提供する。
【解決手段】点火装置はサーマルランス(11)の作動端に結合され、前記ランスに点火することが意図された酸素(17)によって供給可能なカートリッジ(10)を備える。カートリッジ(10)は、高発熱量材料を含み、当該材料を燃焼させるように高温で短時間当該カートリッジ(10)を加熱するように適合された加熱器アセンブリ(16)と関連付けられている。ランス(11)はその後作動位置に移動されて、そこで、当該ランスの点火工程を開始するべく、燃焼された材料と接触するカートリッジに酸素(17)が供給される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための装置であって、
サーマルランス(11)の作動端に結合可能であって、前記ランスに点火することが意図された酸素(17)によって供給可能なカートリッジ(10)であって、高発熱量材料(15)を含むカートリッジ(10)と、
前記サーマルランス(11)を点火するために前記カートリッジ(10)内に酸素を供給する前に前記材料(15)が燃焼され得るように、前記カートリッジ(10)を加熱するように適合された誘導加熱器アセンブリ(16)と、
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記カートリッジ(10)は、前記サーマルランスの前記作動端に螺合可能なネジ穴(12)を第1端部において有している
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記高発熱量材料(15)は、カーボンまたは無煙炭である
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記誘導加熱器アセンブリ(16)は、ジェネレータ(18)と、前記カートリッジ(10)の周囲に配置されるように構成された巻きスパイラル(19)と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記カートリッジ(10)は、鋼鉄製であり、
前記カートリッジ(10)の第2端部は、酸素(17)を通すための1または複数の軸方向孔(14)を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
カートリッジ(10)であって、
サーマルランス(11)の作動端に結合されるように適合された第1端部と、
酸素(17)を通すための1または複数の軸方向孔(14)を有する第2端部と、
を備え、
当該カートリッジ(10)は、高発熱量材料で充填され、鋼鉄製である
ことを特徴とするカートリッジ(10)。
【請求項7】
前記高発熱量材料は、化石燃料、好ましくは炭素または無煙炭、である
ことを特徴とする請求項6に記載のカートリッジ(10)。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の装置を備えた、酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するためのアセンブリ(200)であって、
当該点火アセンブリ(200)は、
-サーマルランス(11)であって、その作動端にカートリッジ(10)が結合されているサーマルランス(11)と、
-前記サーマルランス(11)を操作するように構成されたロボットアーム(20)と、
-前記サーマルランス(11)及び前記カートリッジ(10)と流体連通するように配置された酸素供給器(17)と、
を備えたことを特徴とするアセンブリ(200)。
【請求項9】
酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための方法であって、
-点火のための酸素(17)が供給されるように適合されたカートリッジ(10)を備えた、請求項1乃至5のいずれかに記載の装置を提供する工程であって、前記カートリッジ(10)は、サーマルランス(11)の作動端に結合されている工程と、
-前記材料(15)を燃焼させるために、前記誘導加熱器アセンブリ(16)を介して、所定温度で所定時間、前記カートリッジ(10)を誘導によって加熱する工程と、
-前記サーマルランス(11)を作動位置に移動させる工程と、
-前記カートリッジ(10)内に酸素(17)を供給し、燃焼された前記材料と接触させて、前記ランスに点火を開始する工程と、
を当該順序で備えたことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記カートリッジ(10)を所定温度で所定時間加熱する前記工程において、
前記所定温度は、少なくとも600℃に等しく、
前記所定時間は、少なくとも5秒に等しい
ことを特徴とする請求項9に記載の酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための方法。
【請求項11】
前記所定温度は、少なくとも1000℃に等しく、
前記所定時間は、5秒~10秒の間である
ことを特徴とする請求項10に記載の酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための方法。
【請求項12】
装置を提供する前記工程は、前記カートリッジ(10)を高発熱量材料(15)で充填するサブ工程を含む
ことを特徴とする請求項9に記載の酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための方法。
【請求項13】
酸素を供給する前記工程は、前記材料(15)を燃焼させた後にのみ実行される
ことを特徴とする請求項9に記載の酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための方法。
【請求項14】
前記サーマルランス(11)を作動位置に移動させる前記工程は、ロボットアーム(20)によって前記サーマルランス(11)を移動させることによって行われる
ことを特徴とする請求項9に記載の酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、酸素サーマルランスまたは溶融ランス(メルティングランス)に点火するための装置及び方法である。
【0002】
本発明の他の目的は、酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するためのカートリッジ及びアセンブリである。
【背景技術】
【0003】
酸素ランスまたは溶融ランスとしても知られるサーマルランスは、岩石からセメントまたは鋼鉄まで、高い溶融温度を有することで知られる複数の材料を切断または穿孔するために、様々な分野で使用される装置である。
【0004】
点火されて酸化性ガス(酸素)が供給されると、発熱反応が生じ、ランスの切断端が3500℃から5000℃を超える温度範囲にもたらされる。
【0005】
ランスの製造については、その形態及び使用される材料の元素組成の点で、時代と共に様々な構成技術が実装されてきた。
【0006】
最も典型的な形態では、サーマルランスは、軟鋼製であって長手方向に位置決めされた複数本のフィラメントで満たされた鋼管から構成される。
【0007】
外管と内側フィラメントとの両方について、直径は、基準プロセスに基づいて可変であり得るが、標準値としては、外管の直径が10~40mm、単一の内側フィラメントの直径が2mmである。
【0008】
後者の本数及び配置は、プロセス(処理)のタイプに依存する。なぜなら、反応における鋼材量と酸素との比率が、それに依存するからであり、作業温度と消費率とが、当該反応に由来するからである。
【0009】
ランスに点火して溶融発熱反応を開始することは、ランスの端部が1000℃より高い温度で加熱されること、及び、反応を開始するのに十分な酸素が流されること、を提供する。
【0010】
米国特許第11420295号(US11420295B2)は、一端部において、前述のフィラメントと、「点火燃料」(鉄ウールまたはその類似物)及び「点火促進剤」(マグネシウムまたはその類似物)と呼ばれる1組の材料を含むケースからなるカートリッジと、を備えたランスを開示している。米国特許第11420295号によって提案されるランスの点火は、電気アークまたはその類似物による材料の第1の点火と、同時に、ランス内に十分な酸素を吹き込んでランスの完全燃焼に点火すること、を必要とする。
【0011】
ランスのタイプと用途に基づいて、点火システムは、内蔵式と外付け式とがあり得る。
【0012】
内蔵式のシステムは、ランスと切断対象物とによって規定される2極間の短絡による電気アークを通じて点火を提供するが、切断対象物を物理的に接地できないという動作条件の問題、並びに、ランス自体の複雑さ及びそれによるコストの問題から、常に使用可能とは限らない。
【0013】
その代わりに、外付け式のシステムは、例えば溶接トーチまたは同様の加熱システムなどの、ランスから分離された装置を使用することからなる。
【0014】
その代わりに、この技術の問題点は、第1に、外部の自動化されていない装置を使用する必要性にあり、従って、ランスは、主として、オペレータによって手動で点火されることによって使用される。
【0015】
更に、当該点火は、ランスの着火自体と同時に生じるため、ランスは切断/穿孔ポイントに直ちに位置決めされる必要がある。
【0016】
この作業は、典型的には2人(ランスオペレータと点火オペレータ)で実施されるが、サーマルランスが一旦点火されると、液体鋼の飛散の量のため、彼らが怪我をする危険性がある。
【0017】
従って、前述の2つの技術(内蔵式のシステムと外付け式のシステムとによる点火)の欠点に対する解決策は、自動的に遠隔で安全な点火を許容し、且つ、内蔵式の点火装置が使用不可であるプロセスでも使用できるような、ハイブリッドシステムに見出され得る。
【0018】
実際、鉄鋼分野において、関連する点火システムを備えたサーマルランスだけでなく、特に作業環境(の全体)の作業安全性が主要課題の一つである。従って、最新の安全基準の目的は、危険な領域(金属溶解の領域)における人間の介入を、完全には排除しないまでも、最小限に抑えることである。
【0019】
この前提条件から出発して、サーマルランスによる閉塞ノズルの洗浄及び開放のための最新のシステムは、サーマルランスの操作及び移動に関して完全に自動化されており、ロボットアームまたは同様のハンドラーを提供し、遠隔操作室からのオペレータによる操作の完全な制御を伴う。
【0020】
これは、点火から酸素流量の制御を経て消火に至るまで、サーマルランスを使用する全工程が、如何なる種類の調整または準備のためにも人間の介入を必要としないで、十分に信頼できるものである必要があることを意味する。
【0021】
例えば、欧州特許出願公開第0334009号公報(EP0334009A1)に記載されて公知となったサーマルランスは、酸素流を開放した後で摩擦により自己点火されるカートリッジシステムを提案している。
【0022】
この点火は、鉄テルミットまたは他の類似の火工品材料の使用により行われ得る。しかしながら、これらの材料を使用することは、サーマルランスを不活性な物体から爆発のリスクを伴う危険な物体へと変化させるものであるから、輸送(例えば、典型的には許容されない航空輸送など)や保管に特別な精度を必要とし、鉄鋼環境とはしばしば相容れない。
【0023】
この欠点に対する部分的な解決策が、国際公開第0250396号公報(WO0250396A1)に提案されており、そこでは、火工材料が、十分な量の酸素の存在下で点火(発火)する能力を有する発火性材料(例えばジルコンやチタン)で置換されている。
【0024】
この解決策は、以前使用されていた物質による引火性のリスクを低下させるが、これを完全に除去できるわけではない。ジルコンダストは発火性物質であるため、最新の基準によればF(易燃性)に分類され、特に注意が必要である。
【0025】
更に、これらの物質は、例えばR15(それによれば、水との接触が極端に可燃性である気体を放出し得る)など、他の危険の指標も伴っている。このことは、欧州特許出願公開第0334009号公報(EP0334009A1)で提案されたシステムと同様に、輸送や保管に影響を及ぼし得て、また、使用や取り扱いにも一定の注意を必要とし得る。
【0026】
この解決策の更なる問題点は、動作条件に対する依存性である。実際、正しい機能が保証されないことがあり得るし、湿度、温度または使用酸素の品質などの境界条件の変動が、その信頼性を低下させ得るし、時には、ランスの点火中でなければ使用前に如何なる態様でもチェックされ得ないような動作しないカートリッジを交換するために、人間の介入を必要としてしまうことがあり得る。
【0027】
国際公開第202030269号公報(WO202030269A1)は、圧力によって点火を制御するボタンシステムを有し、従来のものより良好な効率と信頼性とを目的としている。提案されている用途は、ロボットシステムを通してのサーマルランスの操作である。
【0028】
しかしながら、このシステムの動作条件は、切断または穿孔の対象物に対してランスを接触させて押し付けることである。この条件は、障害のある流路を開放する工程(そこでは、穿孔対象の障害物があり、それに対してカートリッジが押し付けられ得る)では存在するが、鉄鋼分野で典型的に必要とされる洗浄作業では不可能である。
【0029】
実際、洗浄を行うためには、カートリッジとの外部接触なしで点火が生じることが要求される。なぜなら、カートリッジが押し付けられ得るような穿孔対象の材料が存在しないからである。更に、この解決策は、カートリッジ内の燃焼チャージの使用を示唆しており、輸送、保管及び操作の安全性という観点で、前述の問題に立ち戻ることになる。
【0030】
英国特許出願公開第17605号公報(GB17605A)は、酸素ランス切断プロセスを開示しており、ランスに点火するための幾つかの手動方法を提案しており、それは、例えば、ランスと切断対象材料との間に予め白熱させた木炭片を位置決めする工程と、酸素の流れを開始する工程と、を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の目的は、サーマルランスの点火システムの前述の従来技術から出発して、以下の特徴を有する革新的な点火プロセスを提案することである。
-ロボットシステムによって自動的に実施可能であること。
-特殊な輸送/保管基準を必要としないこと。
-自然の発火/爆発の危険性がないこと。
-点火自体に例えば圧力や摩擦などの外部作用を必要としないこと。
-安全な環境で典型的に使用される作動ポイントに近づく工程において、光によって切
断/穿孔ポイントの識別を容易化すること。
-既知のシステムよりも高い信頼性を提供すること。
-より高いプロセス制御性とより高い操作安全性とのため、酸素流無しでのランスの点
火を許容すること。
【課題を解決するための手段】
【0032】
以下でよりよく理解されるであろうこれらの目的及び更なる目的のため、本発明は、請求項1による酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための装置、請求項6によるカートリッジ、請求項8による酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するためのアセンブリ、及び、請求項9による酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための方法、を提案する。
【0033】
以下、本発明は、好適であるが非限定的な実施形態について、添付図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による点火用装置の一部を示す。
図1b図1の点火用装置の一部を断面で示す。
【0035】
図2】サーマルランス及びその点火用装置に関連付けられたアセンブリを示す。
【0036】
図3図2の細部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明による酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火する装置は、カートリッジ10と、カートリッジ10を加熱するように適合された誘導加熱器アセンブリ16と、を備えている。
【0038】
本発明によれば、カートリッジ10は、既知のタイプのサーマルランス11上に挿入されている。特に、カートリッジ10は、サーマルランス11の作動端に連結可能であり、当該ランスに点火することが意図された酸素17を供給可能である。
【0039】
カートリッジ10は、鋼製であり、好ましくは軟鋼製である。また、好ましくは、カートリッジ10は、第1端部において、サーマルランス11上に係止されるためのシステム(特徴部)を有している。それは、有利には(限定的ではないが)、サーマルランス11の対応するネジ端部13上にカートリッジ10を螺合する(ネジ込む)ためのネジ穴12からなる。
【0040】
換言すれば、カートリッジ10は、サーマルランス11の作動端に螺合可能であるために、ネジ穴12を有する。
【0041】
カートリッジ10の第2端部は、酸素の通過を許容するための1または複数の孔14を有する。このような孔14は、好ましくは軸方向である。
【0042】
カートリッジ10は、高発熱量材料15を含む。換言すれば、カートリッジ10はケースである。
【0043】
カートリッジ10の内部には、例えば炭素や無煙炭のような、少量の高発熱量材料15がある。当該材料15の重量は、選択される粒度、従って当該材料の密度、に依存する。高発熱量物質とは、化石燃料を意味する。このような材料15は、サーマルランス11に点火するためにカートリッジ10内に酸素を供給する前に、誘導加熱工程で燃焼されるように適合されている。
【0044】
より簡単な構成及び保管のために、当該材料は、酸素を通過させるための孔14(約4~5mm)よりも大きい粒状またはペレット状、すなわち、孔14から逃げない十分なサイズを有する粒状またはペレット状、並びに、炭素ダストを圧縮することによって構成される炭素ディスクの形態、の両方で挿入され得る。これらは、このことによって、分離することがなく、カートリッジ10の孔14から落ちることがない。
【0045】
第2の解決策は、カートリッジ10と炭素ディスクとを別箇に輸送することを許容するが、サーマルランス11に組み付ける時には、後者がカートリッジ10内に挿入される必要がある。
【0046】
代替的に、カートリッジ10は、細かく混合された粒状の高発熱量材料15で充填され得て、予めカートリッジ10の孔14においてストッパとして機能する量の紙を挿入し得て当該材料15が孔14から漏れないようにし得る。
【0047】
あるいは、一般にプラスチック製の袋であって、予め高発熱量材料15(粒度は問わない)で充填された袋が、カートリッジ10内に挿入され得る。
【0048】
このタイプのカートリッジ10は、自然発火や火災の危険性がなく、例えば、微粉状(ファインダスト)ではなく粒状(グレイン)の炭素を使用し得て、これは、鉄鋼産業で広く使用されている。
【0049】
本発明の第2の構成要素は、加熱器アセンブリ16である。これによって、カートリッジ10が加熱され得て、短時間(加熱器アセンブリの出力に依存し、10秒未満の場合もあり得る)で所定温度(例えば1000℃より高い温度)にもたらされ得て、典型的には600/700℃より高い温度で燃焼する高発熱量材料15に点火し得る。
【0050】
加熱器アセンブリ16は、ジェネレータ18と、カートリッジ10の周囲に配置されるように構成された巻きスパイラル19と、を有する。特に、カートリッジ10がスパイラル19内に収容される時、それは誘導によって加熱され得て、カートリッジ10自体の内部の材料15を燃焼させ得る。
【0051】
カートリッジ10の内部に存在する材料15は燃焼して、提案された割合で、少なくとも60秒間、カートリッジ10を必要な温度に保つ。
【0052】
この時間は、サーマルランスを穿孔/洗浄領域にもたらし、その正確な自動位置決めを確実にして、酸素17(の供給)を開始する、のに概ね十分である。酸素17は、サーマルランス11の端部に接続されたカートリッジ10内に挿入された高発熱量材料15と出会うことによって、燃焼剤として作用し、発熱反応が引き起こされる温度である1000℃をカートリッジ10が超えるまでその燃焼を促進し、サーマルランスの点火をもたらす。換言すれば、カートリッジ10が所定温度(例えば1000℃)に加熱されてから数十秒後、一般には20秒~40秒(ランス11を作動位置に移動させるのに概ね十分な時間)後、カートリッジ10は冷却され得る。もっとも、その後に酸素を供給して燃焼された材料15に接触させると、発熱反応が起こり、その結果、カートリッジ10の温度が所定温度(例えば1000℃超)を超えて上昇し、サーマルランス11が点火される。
【0053】
従って、このシステムでは、他の外部点火方式に関して、点火動作が2つの工程に分割され得る。
【0054】
第1工程は、酸素の流れ無しで、従って実際にランス11に点火すること無しで(公知のシステムとは異なる)、ランス11の端部を加熱して、ランス11が安全に移動されることを許容し、更に、ランス11が早期に排気することを防止する。その代わりに、ランス11が所定位置にある時に実行される第2工程は、酸素の流れを開放することによる実際の点火で構成され、当該酸素の流れは、加熱されたカートリッジ10とその中に挿入されたそれぞれの高発熱量材料15とに接触して、発熱反応とランス11の実際の点火とを開始する。
【0055】
有利なことに、それ自体によって照らされるカートリッジ10は、更なる安全要素を表し、正確な作動点に向かう自動ガイドを容易化し得る。典型的には、カメラの支援によって、オペレータによって遠隔で確認され得る。
【0056】
加熱器アセンブリ16は、有利なことに、ジェネレータ18と、カートリッジ10に適して寸法決めされ(直径、長さ、コイル数)銅19で製造された1または複数のスパイラル19と、からなる誘導ヒータで構成される。
【0057】
公知であるように、誘導式の鍛造/加熱システムにおいて、ジェネレータ18は、中周波数の交流電流を生成する電子変換器からなり、当該交流電流は、コイル19内を循環しながら、磁界を貫いて、コイル間に位置決めされた金属物体(この場合はカートリッジ10)の内部に渦電流を誘導して、接触無しで、完全に制御された方法で、炎を発すること無しで、それを迅速に加熱させる。
【0058】
従って、加熱工程の間、ハンドラーまたはロボットアーム20が、カートリッジ10をスパイラル19内に位置決めして、カートリッジ10を1000℃より高い温度にもたらすのに十分に長い時間、誘導加熱サイクルを開始する。
【0059】
従って、前述された参照機能に関して、この解決策では、プロセスの全体が自動的に制御可能である。例えば、サーマルランス11は、カートリッジ10を誘導器のスパイラル内に位置決めするという目的と、サーマルランス11を移動させて鋳造チャネルの洗浄作業または穿孔作業のための点火位置に位置決めするという目的と、の両方を有するロボットアーム20によって操作され得る。
【0060】
このように設計されたカートリッジ10は、火工品ダストや発火性ダストを有しないため、輸送や保管の観点で起こりうる安全上の問題から解放される。更に、ケース(カートリッジ)が鋼鉄製で、カートリッジ10内の粒が一般的な炭素であるため、前述の従来技術に記載されているシステムで典型的に採用されている高価な材料とは異なり、消耗材料のコストが顕著に低減される。
【0061】
また、実際の点火工程が、例えばカートリッジ10の圧力や摩擦などの、更なる外部動作を必要としない。
【0062】
特に、点火工程は、酸素17によって実行され、当該酸素17は、加熱されたカートリッジ10及びその中に含まれる燃焼材料15に接触して、発熱反応及びサーマルランス11の点火を開始する。
【0063】
以下に説明される工程を備えた酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するための方法(プロセス)は、本発明の一部を形成する。
【0064】
本発明による当該方法(プロセス)は、点火用の酸素17が供給されるように適合されたカートリッジ10がサーマルランス11の作動端に結合された、前述のような装置を提供する第1工程を備える。
【0065】
当該方法(プロセス)は、前記装置を提供する工程に続いて、誘導加熱工程を備える。当該加熱工程は、材料15を(十分に)燃焼させるまで、加熱器アセンブリ16を介してカートリッジ10について所定温度で所定時間実行される。
【0066】
材料15を燃焼させた後、当該方法は、サーマルランス11を作動位置に移動させる工程を備える。
【0067】
当該方法(プロセス)は、また、ランス11に点火する工程を開始するために、カートリッジ10内に酸素17を供給して燃焼された材料に接触させる工程を備える。酸素17を供給するこのような工程は、サーマルランス11を作動位置に移動させた後に実行される。
【0068】
好ましくは、カートリッジ10を所定温度で所定時間加熱する工程において、所定温度は少なくとも600℃に等しく、所定時間は少なくとも5秒に等しく、好ましくは5秒~10秒の間である。
【0069】
具体的には、カートリッジ10が加熱される所定温度は、カートリッジ10内に収容された高発熱量材料15の燃焼温度に等しいかまたはそれ以上である。
【0070】
好ましくは、前記所定温度は、少なくとも1000℃に等しい。
【0071】
好ましくは、前記装置を提供する工程は、カートリッジ10を高発熱量材料で充填するサブ工程を含む。高発熱量材料15の形状について前述された内容を参照して、カートリッジ10を充填するこのような工程は、カートリッジ10を製造/生産する工程において、または、サーマルランス11を使用する時であって前記加熱工程の直前の時間に、実行され得る。
【0072】
本発明によれば、酸素17を供給する工程は、材料15を燃焼させた後にのみ実行される。換言すれば、材料15を燃焼させるまでの前記加熱工程は、酸素17無しで実行される。
【0073】
好ましくは、サーマルランス11を動作位置に移動させる工程は、ロボットアーム20によってサーマルランス11を移動させることによって実行される。
【0074】
サーマルランス10の作動端に結合されるように適合された第1端部と、酸素17を通過させるための1または複数の、好ましくは軸方向の、孔14を有する第2端部と、を有するカートリッジ10もまた、本発明の一部を形成する。カートリッジ10は、高発熱量材料、すなわち、例えば炭素または無煙炭のような化石燃料材料、で充填される。
【0075】
カートリッジ10は、誘導加熱されるように適合されている。特に、カートリッジ10は、鋼鉄製であり、好ましくは軟鋼製である。
【0076】
前述のような装置を備えた酸素サーマルランスまたは溶融ランスに点火するためのアセンブリ200が、最終的に、本発明の一部を形成する。
【0077】
特に図2に図示される点火アセンブリ200は、カートリッジ10及び加熱器アセンブリ16に加えて、サーマルランス11を備える。サーマルランス11は、カートリッジ10に結合される作動端を有する。
【0078】
点火アセンブリ200は、サーマルランス11を操作するように構成されたロボットアーム20を備える。点火アセンブリ200は、サーマルランス11及びカートリッジ10と流体連通するように配置された酸素17の供給用の供給器を更に備える。酸素17の供給用の供給器は、ランス11に点火するために、酸素17を当該ランス11及びカートリッジ10に供給するように適合されている。
【0079】
最後に、このシステムでは、プロセスの信頼性と再現性の点で、顕著な利点がある。点火は、発熱反応、すなわち、高温の鋼材と十分な酸素の流れ、という基本原理に基づいている。例えば酸素とジルコンダストとの間の発火反応などの更なるトリガ反応を必要としないため、酸素の流れの時間厳守の制御が、良好な点火のための束縛パラメータではない。従って、プロセスは、より良好に制御され、より高い成功率を伴う。
図1
図1b
図2
図3
【外国語明細書】