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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147556
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ポリマーの抗酸化安定剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 97/02 20060101AFI20241008BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08L97/02 ZAB
C08L23/12
C08L97/02
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098519
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2020513529の分割
【原出願日】2018-09-07
(31)【優先権主張番号】62/555,642
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513271287
【氏名又は名称】レンマティックス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Renmatix,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オースティン,ジェレミー,ローランド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリマーまたはポリマー組成物、例えば熱可塑性物質、熱可塑性複合材料、熱硬化性物質、コーティング、フィルム、接着剤、パーソナルケア組成物、またはそれらの任意の組み合わせ中の抗酸化安定剤としての草本リグニンおよび/または広葉樹リグニンの用途を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリマーおよびバイオマスを含む組成物であって、前記バイオマスはリグニンを含み、前記リグニンは0.5重量%から1.5重量%の濃度で存在し、前記組成物は前記バイオマスの重量に対して20%以下の量のセルロースおよび/またはヘミセルロースを含む、組成物。前記リグニンは広葉樹リグニンであることが好ましく、草本リグニンであるであることがより好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーおよびバイオマスを含む組成物であって、前記バイオマスはリグニン
を含み、前記組成物は前記バイオマスの重量に対して20%以下の量のセルロースおよび
/またはヘミセルロースを含む、組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーは、約400℃未満の処理温度を有する、請求項1に記載の組成
物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせ
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記リグニンは広葉樹リグニンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記リグニンは草本リグニンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記リグニンは、グアヤシル単位およびシリンギル単位の混合物を含む、請求項1に記
載の組成物。
【請求項7】
約232℃~約250℃の酸化開始温度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記リグニンが約2マイクロメートル~約8マイクロメートルの平均粒子径を有する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記リグニンは超臨界加水分解によって調製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記リグニンは、バイオマスを約340℃~約400℃の温度および約225bar~
約250barの圧力を有する流体にさらすことにより調製される、請求項1に記載の組
成物。
【請求項11】
前記ポリマーはポリプロピレンであり、前記リグニンは約0.5重量%~約1.5重量
%の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1の組成物を含むコーティング組成物またはフィルム。
【請求項13】
請求項1の組成物を含むパーソナルケア組成物。
【請求項14】
請求項1の組成物を製造する方法であって、前記方法は、
(a)バイオマスを約340℃~約400℃の温度および約225bar~約250b
arの圧力を有する流体にさらすことによりリグニンを得る工程と、
(b)前記リグニンを前記熱可塑性ポリマーと混合する工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
前記熱可塑性ポリマーは、約400℃未満の処理温度を有する、請求項14に記載の方
法。
【請求項16】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせ
である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記リグニンは広葉樹リグニンである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記リグニンは草本リグニンである、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物は約232℃~約250℃の酸化開始温度を有する、請求項14に記載の方
法。
【請求項20】
前記リグニンは約2マイクロメートル~約8マイクロメートルの平均粒子径を有する、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月7日に出願された米国仮特許出願第62/555,642号
の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリマーまたはポリマー組成物中の抗酸化剤としての草本リグニンおよび/
または広葉樹リグニンの用途に関する。具体的には、ポリマーまたはポリマー組成物、例
えば熱可塑性物質、熱可塑性複合材料、熱硬化性物質、コーティング、フィルム、接着剤
、パーソナルケア組成物、またはそれらの任意の組み合わせ、中の抗酸化安定剤としての
草本リグニンおよび/または広葉樹リグニンの用途が本明細書に開示される。
【背景技術】
【0003】
熱と紫外線の直接または間接的な影響により、ほとんどのポリマー(例えば、熱可塑性
物質)が経時的に酸化分解の影響を受けやすいことが長い間認識されている。酸化分解は
、ポリマーの調合および処理の早い段階で発生する可能性があるが、特性の劣化がより明
確になり、変色、および強度、柔軟性、剛性、引っかき抵抗性、または光沢の低下を引き
起こす最終製品でより一般的に認識される。分解の詳細なメカニズムは複雑であるが、一
般的には自然界のフリーラジカルであると考えられており、開始工程、例えばポリマー鎖
からの水素原子(H.)の損失から始まり、反応性で不安定なポリマーフリーラジカル(
R.)を残す。フリーラジカル反応の伝播には、酸素分子とのポリマーフリーラジカル反
応を含む様々な反応が含まれ、ペルオキシラジカル(ROO・)を形成することでき、ペ
ルオキシラジカルは別のポリマー鎖から水素原子を移動させてヒドロペルオキシド(RO
OH)を形成、および別のポリマーフリーラジカル(R・)を生成することができる。そ
してヒドロペルオキシドは、2つの新しいフリーラジカル(RO・)および(・OH)に
分割される可能性があり、これらは、反応を他のポリマー分子に伝播し続けることになる
。隣接するポリマー鎖への別の反応により、分枝および架橋が生じる可能性がある。フリ
ーラジカルを化合させることにより、反応が自然に終了する場合があるが、この期間中に
ポリマーの著しい分解が発生する場合がある。当該技術は、分解プロセス中にフリーラジ
カルを「モップアップ」し、それによりラジカル反応の終了をより迅速にもたらすように
設計された添加剤の用途を開発した。このような添加剤は、通常、抗酸化安定剤と呼ばれ
る。安定化ポリマーには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、
ポリ酢酸ビニル(PVA)、塩素化ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブ
タジエン-スチレン(ABS)コポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、PVC/
ABSブレンド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリウレ
タン、アクリル、スチレン-アクリル、ポリアミド、ナイロン、エラストマー等を含むが
、これらに限定されない。
【0004】
既知の抗酸化安定剤には、金属、例えば鉛、バリウム、カドミウム、スズ、およびさら
に最近では亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムを含む重金属塩、有機金属化
合物、および錯体が含まれているが、これらのほとんどは、環境的および/または毒物学
的懸念のために段階的に廃止された(または廃止されている)。他の抗酸化安定剤には、
有機亜リン酸塩および有機ホスホナイト、立体障害フェノール、アミン、ならびにチオエ
ステルが含まれる。
【0005】
フリーラジカルの安定化(分解反応の終了)ならびに好ましい環境および毒物学的プロ
ファイルを有することに加えて、安定剤は、ポリマーとの良好な相溶性と、拡散または浸
出によるポリマーからの移行に対する耐性を示さなければならない。後者の問題(抗酸化
添加剤の移行およびブルーミング)は、特にポリマーとの相溶性が低い場合、低分子添加
剤にとって特に面倒である。市販の安定化添加剤の多くは、これらの特性のうちの1つま
たは複数が不足している。必要なのは、これらの全ての特性を提供する経済的な安定化添
加剤である。
【0006】
本発明の方法および組成物は、これらおよび他の重要な目的に向けられる。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーとバイオマスを含む組成物が提供され、バイオマス
はリグニンを含み、組成物はバイオマスの重量に対して20%以下の量のセルロースおよ
び/またはヘミセルロースを含む。
【0008】
一実施形態では、広葉樹リグニン、針葉樹リグニン、および草本リグニンのうちの1つ
または複数を含むポリマーまたはポリマー組成物が提供される。特定の実施形態では、ポ
リマーまたはポリマー組成物は、アクリジンオレンジ(AO)をさらに含むことができる
。したがって、一実施形態では、広葉樹リグニンを含むポリマーまたはポリマー組成物が
提供される。別の一実施形態では、針葉樹リグニンを含むポリマーまたはポリマー組成物
が提供される。さらに別の一実施形態では、草本リグニンを含むポリマーまたはポリマー
組成物が提供される。
【0009】
特定の実施形態では、開示のポリマーまたはポリマー組成物を含む熱可塑性物質、熱硬
化性物質、複合材料、コーティング、フィルム、接着剤、パーソナルケア組成物、または
それらの任意の組み合わせが提供される。したがって、例えば、開示の熱可塑性物質、熱
硬化性物質、複合材、コーティング、フィルム、接着剤、パーソナルケア組成物、または
それらの組み合わせは、開示されたポリマーまたはポリマー組成物から形成され、または
、それらで作製されることができる。
【0010】
特定の実施形態では、草本リグニンを含むポリマーまたはポリマー組成物の酸化開始温
度は、草本リグニンの代わりにクラフトリグニンまたは広葉樹リグニンを含有する以外は
同一のポリマーまたはポリマー組成物よりも少なくとも10℃高い。
【0011】
特定の実施形態では、草本リグニンを含むポリマーまたはポリマー組成物は、約232
℃~約250℃の酸化開始温度を有する。このような一実施形態では、ポリマーはポリプ
ロピレンである。このような一実施形態では、草本リグニンはスイッチグラスリグニンで
ある。
【0012】
特定の実施形態では、ポリマーは熱可塑性物質である。
【0013】
特定の実施形態では、熱可塑性物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれら
の組み合わせを含む。
【0014】
特定の実施形態では、草本リグニンはスイッチグラスリグニンである。
【0015】
別の利点は、一部は以下の説明に記載され、一部はその説明から明らかであり、または
本発明の実施により習得されることができる。利点は、添付の特許請求の範囲で具体的に
指摘される要素および組み合わせによって実現および達成される。前述の一般的な説明お
よび以下の詳細な説明の両方は、例示および説明のみであり、請求項に記載の本発明を限
定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図は、いくつかの態様を例示し、説
明とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0017】
図1図1は、ポリプロピレンに添加された様々な抗酸化剤の各抗酸化剤添加濃度で得られた酸化開始温度、OOT、(℃)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、リグニン、特に熱可塑性物質、熱可塑性複合材料、熱硬化性物質、コーティ
ング、フィルム、接着剤、パーソナルケア組成物、またはそれらの任意の組み合わせにお
ける、具体的には、ポリマーもしくはポリマー複合体またはポリマー組成物における抗酸
化安定剤としての草本リグニン、の用途に関する。
【0019】
しかし、本発明は、ポリマーの抗酸化添加剤としてのリグニンの用途に限定されず、ポ
リマーまたはポリマー組成物(例えば、ポリマー複合材料)の充填剤としての草本リグニ
ンの用途を含むことができ、充填剤はさらにポリマー複合体に対する熱または光の作用に
よって生じる分解からの保護を提供する。
【0020】
本発明は、以下の詳細な説明、実施例、および特許請求の範囲、ならびにそれらの前述
および後述の説明を参照することにより、より容易に理解することができる。しかしなが
ら、本発明は、特に断りがない限り、開示された特定の組成物、物品、装置、システム、
および/または方法に限定されず、したがって、当然変化する可能性があることを理解さ
れたい。本発明の態様は、特定の法定分類、例えば組成物の法定分類で説明および主張さ
れることができるが、これは便宜上のためであり、当業者は、本発明の各態様を法定分類
で説明および主張されることができることを理解するであろう。
【0021】
本発明の以下の説明はまた、現在知られている最良の態様で本発明の教示を可能にする
として提供される。この目的のために、当業者は、本発明の有益な結果をさらに得ながら
、本明細書に記載の本発明の様々な態様に変更および修正を加えることができることを認
識および理解するであろう。また、本発明の利点のいくつかは、他の特徴を利用せずに本
発明の特徴のいくつかを選択することにより得られることができることは明らかであろう
。したがって、関連分野の当業者は、本発明に対する多くの修正および適合が可能であり
、特定の状況では望ましい場合もあり、したがって本発明の一部でもあることを認識する
であろう。
【0022】
本発明は様々な形態で実施されることができるが、以下のいくつかの実施形態の説明は
、本開示が本発明の例示と見なされるべきであることと、本発明を例示される特定の実施
形態に限定することを意図しないこととを理解して行われる。見出しは便宜のためにのみ
提供されており、いかなる形においても本発明を限定するものと解釈されるべきではない
。本開示の任意の見出しまたは任意の部分で例示される実施形態は、本開示の同じ見出し
または部分で、または本開示の任意の別の見出しあるいは別の部分で例示される実施形態
と組み合わせられることができる。
【0023】
本明細書で特に指示しない限り、あるいは文脈により明らかに矛盾しない限り、本明細
書に記載の要素のあらゆる可能な変形における任意の組み合わせは、本発明に含まれる。
【0024】
本明細書で言及される全ての刊行物は参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用
された関連する方法および/または材料を開示および説明する。
【0025】
本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明するためのものであり、限定する
ことを意図するものではないことを理解されたい。別段の定義がない限り、本明細書で使
用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一
般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および以下の特許請求の範囲では、本
明細書で定義されるいくつかの用語を参照する。
【0026】
A.定義
上記および本開示を通して使用する場合、以下の用語は、特に指示しない限り、以下の
意味を有すると理解されるものとする。
【0027】
明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、および
「the」は、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の指
示対象を含む。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「任意の」または「必要に応じて」は、後に説明される
事象、条件、構成要素、もしくは状況が発生する場合または発生しない場合があること、
ならびに説明には、前記事象、条件、構成要素、または状況が発生する場合、および発生
しない場合が含まれること、を意味する。
【0029】
本明細書で使用する場合、語句「に十分」(例えば、「に十分な条件」または「に十分
」)は、このような値または条件が表される機能または特性を実行できるこのような値ま
たは条件を指す。以下に指摘されるように、必要とされる正確な値または具体的な条件は
、認識される変数、例えば採用される材料および/または処理条件に応じて、実施形態ご
とに異なる場合がある。
【0030】
用語「重量による」は、成分と共に使用される場合、特に記載のない限り、成分が含ま
れる配合物または組成物の総重量に基づいている。例えば、組成物または物品中の特定の
元素または成分が8重量%の量で存在すると言われる場合、この割合は100%の総組成
割合に対してであることが理解される。場合によっては、成分の重量パーセントは、水を
含まない組成物の重量を示す「乾燥量基準に基づく」組成物の総重量に基づいている(例
えば、組成物の総重量に対して、重量で約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、
約0.05%未満、または約0%の水)。
【0031】
特に明記しない限り、本出願で指定される様々な定量値の数値の使用は、記載される範
囲内の最小値および最大値の両方の前に単語「約」が付くかのように、近似値として、別
の方法でさらに記載される。このようにして、記載される値からのわずかな偏差値を用い
て、記載される値と実質的に同じ結果を達成することができる。また、範囲の開示は、列
挙された最小値と最大値の間の全ての値、およびこのような値によって形成される可能性
のある全ての範囲を含む連続的な範囲として意図される。例えば、成分が2%~10%の
量で存在してもよいという開示は、中でも、2%~9%、2%~8%、3%~10%、3
%~9%、4%~5%などを含むことになる。また、本明細書では、ある記載された数値
で他の全ての記載された数値を割ることによって形成されることができるあらゆる全ての
比率(およびこのような比率の範囲)も開示される。したがって、当業者は、多くのこの
ような比、範囲、および比率の範囲は、本明細書に提示される数値から明確に得られるこ
とができ、全ての場合、このような比、範囲、および比率の範囲は本発明の様々な実施形
態を表すことを理解するであろう。
【0032】
ここで数値、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10を開示する場合、次の
文がこのような数値の後に続く場合がある。『前記の数字のそれぞれの前に用語「約」、
「少なくとも約」、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用い
て、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を
記載することができる。』この文は、前述の各番号を単独で使用できる(例えば、4)、
「約」という単語(例えば、約8)で始まり、語句「少なくとも約」(例えば、少なくと
も約2)で始まり、語句「約未満」(例えば、約7未満)で始まることができ、または、
範囲(例えば、2~9、約1~4、8~約9、約1~約10など)を定義するために、前
置きの単語または語句のいずれかの有無にかかわらず、任意の組み合わせで使用できる、
ことを意味する。さらに、範囲が「約X以下」(Xは数字)と記載される場合、この語句
は、代わりに「約X」と「約X未満」とを組み合わせた範囲と同じである。例えば、「約
10以下」は「約10、または約10未満」と同じである。本明細書では、このような交
換可能な範囲の説明が考えられる。本明細書では他の範囲形式が開示されるが、形式の違
いは、実体に違いがあることを意味すると解釈すべきではない。
【0033】
本明細書で使用する用語「実質的に含まない」は、組成物の総重量に対して、約1重量
%未満、例えば約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、また
は約0.01重量%未満の記載された材料を有する組成物を指す。
【0034】
(語句「実質的に含まない」としては使用されない場合)本明細書で使用する用語「実
質的に」は、組成に関連して使用する場合、組成物の総重量に対して、少なくとも約60
重量%、例えば少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なく
とも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なく
とも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なく
とも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または
約100%の特定の特性または成分を指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、「連続」は、プロセス期間中断されない、またはその期間に
対して一時的にのみ、中断される、休止される、もしくは停止されるプロセスを示す。出
発材料(セルロース含有複合材料)が中断なしに、または実質的な中断なしに装置内に供
給される場合、または複合材料の処理がバッチプロセスで行われない場合、プロセスは「
連続」である。
【0036】
超臨界流体とは、その臨界温度を超える温度、およびその臨界圧力を超える圧力におけ
る流体である。超臨界流体は、その「臨界点」、つまり液相および蒸気(気)相が互いに
平衡状態で存在できる最高温度および圧力の点以上で存在する。臨界圧力または臨界温度
以上では、液相と気相との区別がなくなる。超臨界流体は、液体の溶媒特性と同時に気体
の浸透特性をほぼ備えている。したがって、超臨界流体抽出には、高い浸透性および良好
な溶媒和作用という利点がある。
【0037】
報告される臨界温度および圧力は、純水の場合、臨界温度は約374.2℃、および臨
界圧力は約221barであり、二酸化炭素の場合、臨界温度は約31℃、および臨界圧
力は約72.9気圧(約1072psig)である。近臨界水は、約300℃以上、水の
臨界温度(374.2℃)未満の温度、および確実に全ての流体が液相であるのに十分に
高い圧力を有する。亜臨界水は、約300℃未満の温度、および確実に全ての流体が液相
であるのに十分高い圧力を有する。亜臨界水温度は、約250℃より高く、約300℃未
満であることができ、多くの場合、亜臨界水は約250℃~約280℃の温度を有する。
用語「高温高圧水」は、本明細書において近臨界水もしくは亜臨界水として、または少な
くとも約50℃の任意の温度(好ましくは、少なくとも約100℃、少なくとも約150
℃、少なくとも約200℃、少なくとも約250℃、少なくとも約300℃、または少な
くとも約350℃)で、しかし超臨界未満(例えば、約374℃未満)で、水(例えば、
全ての水)が液体状態にある圧力、で定義される。
【0038】
本明細書で使用する場合、「超臨界」である流体(例えば、超臨界水、超臨界CO
ど)は、ある温度および圧力条件下で純粋な形態で存在する場合、超臨界である流体を示
す。例えば、水が純水であろうと、混合物(例えば、水とエタノールとの、水とCO
の、)など)として存在しようと、「超臨界水」は、少なくとも約374.2℃の温度お
よび少なくとも約221barの圧力で存在する水を指す。したがって、例えば「亜臨界
水と超臨界二酸化炭素との混合物」は、任意の超臨界相が水を含むかどうかにかかわらず
、および水相が任意の二酸化炭素を含むかどうかにかかわらず、二酸化炭素の臨界点より
高いが、水の臨界点より低い温度および圧力において、水と二酸化炭素との混合物を示す
。例えば、亜臨界水と超臨界COとの混合物は、約250℃~約280℃の温度および
少なくとも約225barの圧力を有することができる。
【0039】
用語「超臨界加水分解」は、超臨界条件下で1つまたは複数の流体(すなわち、超臨界
流体)によってもたらされる加水分解反応を指す。
【0040】
文脈により明らかに矛盾しない限り、本明細書に開示の圧力は全てゲージ圧である。
【0041】
本明細書において、「流体」は、蒸気もしくは液体または両方を意味する。
【0042】
本明細書において、「スラリー」とは、不溶性の、または部分的に可溶性の固体と、流
体との流動性を有するまたはポンプ輸送可能な混合物、例えば水中の懸濁片またはバイオ
マスの粒子を指す。
【0043】
本明細書において、「草本リグニン」は、草本系バイオマスに由来するリグニンである
。草本系バイオマスには、スイッチグラス、ススキ(シルバーグラス)、芝草、観賞用の
草、および穀物、例えばモロコシ、大麦、小麦などが含まれる。草本リグニンは3つのモ
ノリグノール(リグニンシリンギル-S、リグニングアイアシル-G、およびリグニンヒ
ドロキシフェニル-Hサブユニット)で構成され、通常は非草木よりも多くのHサブユニ
ット(より多くのクマリル誘導体)を有する。草本リグニンは、リグニンにエーテル結合
する大量のヒドロキシケイ皮酸ユニット、例えばフェルラ酸およびp-クマル酸によって
さらに区別される。
【0044】
本明細書において「複合材」とは、構成成分が異なる物理的または化学的特性を有する
2つ以上の構成成分から作られる物品または材料である。本明細書で使用される用語「複
合材」は、リグニン含有複合材、例えばポリマー-リグニン複合材を含む。
【0045】
「合成ポリマー」とは、天然のポリマーではなく、代わりに人為的に作られるポリマー
を指し、例えば、それらは人工または機械製である。合成ポリマーの例としては、ホモポ
リマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど、およびコポリマー、例えばエチレン
ビニルアセテート、スチレン-ブタジエンなどが挙げられる。本明細書で使用する用語、
合成ポリマーには、様々なタイプのポリマー、例えば熱硬化性ポリマーおよび熱可塑性ポ
リマー、または合成ポリマーの構造形態(例えば、アイソタクチック、シンジオタクチッ
ク、アタクチック)、ならびに高密度ポリマーまたは低密度ポリマーとして区別されるポ
リマー(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)のいずれかまたは全て
が含まれる。
【0046】
本明細書で使用する用語「ポリマー-リグニン複合体」は、ポリマーとリグニンを含む
複合体を意味し、これらの各成分は、乾燥複合物の重量に対して0重量%を超え、最大で
100重量%未満の範囲の量で存在する。本明細書で使用する用語「ポリマー-リグニン
複合体」は、天然に存在する複合体、例えば木材、リグノセルロース系バイオマス、セル
ロース-ヘミセルロース複合体、または木材もしくはリグノセルロース系バイオマスから
なる構成物を含まない。セルロースもしくはヘミセルロース、または木材でさえも、(ポ
リマー成分およびリグニン成分に加えて)追加の成分として存在する場合がある。ポリマ
ー-リグニン複合体の具体例は、本明細書の他の場所に記載されており、本明細書で使用
される「セルロース-ポリマー複合体」の意味を代表する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「粉砕」は、固体のサイズを縮小するための任意の機械的手
法、例えば粉砕、すりつぶし、衝突粉砕などを意味する。
【0048】
本明細書で使用する用語「周囲温度」および「周囲圧力」は、通常の(通常、必ずしも
そうではないが、未調整の)室温および室内圧力を指す。このような条件は変化する可能
性があるため、用語はおおよその温度およびおおよその圧力を伝えるためにのみ使用され
る。本明細書では、周囲温度は、20℃±5℃の温度を意味すると解釈され、周囲圧力は
、1bar(1気圧)±0.2bar(0.2気圧)の圧力を意味すると解釈される。
【0049】
本明細書で使用する用語「ガラス転移温度」またはTgは、ガラス状ポリマーがポリマ
ー鎖のセグメント運動を受ける温度以上の温度(および「ガラス状」状態から溶融または
ゴム状状態への遷移)を指し、本明細書で使用する場合、10℃/分の加熱速度を用いて
示差走査熱量測定(DSC)によって測定される測定Tgを指し、熱流対温度遷移の中間
点をTg値として採用する。
【0050】
本明細書で使用する場合、「C1-05アルコール」は、1~5個の炭素原子を含むア
ルコールを示す。C1-05アルコールの例としては、メタノール、エタノール、n-プ
ロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、i
-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-
1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチ
ル-2-ブタノール、および2,2-ジメチル-1-プロパノールが挙げられるが、これ
らに限定されない。これらのアルコールの1つまたは複数の混合物を使用してもよい。
【0051】
B.ポリマーおよびポリマー組成物
一実施形態では、熱可塑性ポリマーとバイオマスを含む組成物が開示され、バイオマス
はリグニンを含み、組成物はバイオマスの重量に対して20%以下の量のセルロースおよ
び/またはヘミセルロースを含む。
【0052】
本発明は、リグニン、例えば、広葉樹リグニン、針葉樹リグニン、草本リグニン、また
はそれらの組み合わせを含むポリマーまたはポリマー組成物を提供する。特定の実施形態
では、ポリマーまたはポリマー組成物は、アクリジンオレンジ(AO)をさらに含むこと
ができる。特定の実施形態では、広葉樹リグニン、針葉樹リグニン、および/または草本
リグニンは、開示されたプロセスによって調製される。
【0053】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、リグニンの組成物は種ごとに
異なる。簡潔に述べると、3つのモノリグノールモノマーはリグニンの前駆体であり、そ
の全てが様々な程度にメトキシ化されている。これらには、p-クマリルアルコール、コ
ニフェリルアルコール、シナピルアルコールが含まれる。これらのリグノールは、それぞ
れフェニルプロパノイドp-ヒドロキシフェニル(H)、グアイアシル(G)、およびシ
リンギル(S)の形態でリグニンに組み込まれる。裸子植物は、ほとんど完全にGと少量
のHで構成されるリグニンを有する。双子葉被子植物は、大抵の場合GとSの混合物であ
り、Hはほとんどない。最後に、単子葉植物リグニンは3つ全て(すなわち、H、G、お
よびS)の混合物である。多くの草本は主にGを有するが、一部のヤシは主にSを有する
。全てのリグニンには、少量の不完全または修飾モノリグノールが含まれる。さらに、非
木質植物では別のモノマーが顕著である。
【0054】
特定の実施形態では、リグニンはセルロースを実質的に含まない。したがって、例えば
、リグニンは、リグニンの総重量に基づいて約20重量%未満、約15重量%未満、約1
0重量%未満、約5重量%未満、または約1重量%未満のセルロースを含有することがで
きる。
【0055】
特定の実施形態では、リグニンはヘミセルロースを実質的に含まない。したがって、例
えば、リグニンは、リグニンの総重量に基づいて約20重量%未満、約15重量%未満、
約10重量%未満、約5重量%未満、または約1重量%未満のヘミセルロースを含有する
ことができる。
【0056】
特定の実施形態では、リグニンは、セルロースまたはヘミセルロースのいずれか一方を
実質的に含まない。したがって、例えば、リグニンは、セルロースとヘミセルロースの両
方を合わせてリグニンの総重量に基づいて約20重量%未満、約15重量%未満、約10
重量%未満、約5重量%未満、または約1重量%未満含有することができる。
【0057】
本発明はまた、本質的にリグニンからなるバイオマスを含むポリマーまたはポリマー組
成物を提供する。したがって、特定の実施形態では、バイオマスは、バイオマスの総重量
に基づいて、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくと
も約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくと
も約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくと
も約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくと
も約99%、または約100%のリグニンを含む。
【0058】
ポリマー-リグニン複合物は、少なくとも1つのポリマーとリグニンを含む。ポリマー
成分およびリグニン成分のそれぞれは、乾燥複合物の重量に基づいて、0重量%より多く
、最大で100重量%未満の範囲の量で存在する。一実施形態では、少なくとも2つの成
分のそれぞれは、複合物の重量に基づいて、少なくとも2重量%、最大で98重量%の範
囲の量で存在する。一実施形態では、少なくとも2つの成分のそれぞれは、複合物の重量
に基づいて、少なくとも5重量%、最大で95重量%の範囲の量で存在する。
【0059】
リグニン(例えば、草本リグニンまたは広葉樹リグニン)は、任意の好適な量で、ポリ
マーまたはポリマー組成物、例えば熱可塑性ポリマーに用いられることができる。例えば
、量は、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0
.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6
、1.7、1.8、1.9、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.2、3.4
、3.6、3.8、4、4.2、4.4、4.6、4.8、5、5.5、6、6.5、7
、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、18
、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、
46、48、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95(重
量%)とすることができる。前記の数字のそれぞれの前に用語「約」、「少なくとも約」
、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープ
ンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することがで
きる。例えば、リグニンは、ポリマーまたはポリマー組成物中に0.1~3.0重量%、
または0.3~2.0重量%、または10~60重量%の量で用いられることができる。
リグニンは、本明細書の他の場所に記載されているようにバイオマスから得られることが
できる。好適なバイオマスには、スイッチグラス、ススキ(シルバーグラス)、芝草、広
葉樹、観賞用の草、および穀物、例えばモロコシ、大麦、小麦などが含まれるが、これら
に限定されない。本明細書に開示のように、リグニンは、ポリマーまたはポリマー組成物
がコーティング、フィルム、接着剤、またはパーソナルケア組成物中に存在する組成物を
含む、抗酸化剤目的の任意の組成物で用いられることができる。
【0060】
したがって、特定の実施形態では、ポリマーまたはポリマー組成物は、熱可塑性物質、
熱硬化性物質、複合材料、コーティング、フィルム、接着剤、パーソナルケア組成物、ま
たはそれらの任意の組み合わせである。
【0061】
特定の実施形態では、草本リグニンを含むポリマーまたはポリマー組成物の酸化開始温
度は、草本リグニンの代わりにクラフトリグニンまたは広葉樹リグニンを含有する以外は
同一のポリマーまたはポリマー組成物よりも少なくとも10℃高い。
【0062】
特定の実施形態では、ポリマーまたはポリマー組成物は、約232℃~約250℃の酸
化開始温度を有する。このような一実施形態では、ポリマーはポリプロピレンである。こ
のような一実施形態では、草本リグニンはスイッチグラスリグニンである。
【0063】
特定の実施形態では、ポリマーまたはポリマー組成物は熱可塑性物質である。
【0064】
特定の実施形態では、熱可塑性物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれら
の組み合わせを含む。
【0065】
ポリマーまたはポリマー組成物の他の好適な成分は、充填剤(例えば、タルク、炭酸カ
ルシウム、ガラス繊維など)、着色剤(例えば、無機顔料、例えば二酸化チタン、カーボ
ンブラック、金属塩など、または有機着色剤、例えばフタロシアニンブルー)、および他
の添加剤、例えば相溶化剤(例えばグラフト変性ポリマー、ブロックコポリマー、シラン
など)、加工助剤(例えばワックス、潤滑剤、ステアリン酸亜鉛など)、耐摩耗性助剤(
例えば潤滑剤、例えばポリテトラフルオロエチレン、PTFE、オイル、シリコーンなど
)、ブロッキング防止助剤(例えば、タルク)、帯電防止剤(金属、例えばステンレス鋼
繊維、イオン塩など)、核生成剤(例えばソルビトール、ミネラル、金属塩など)、
難燃剤(臭素含有化合物、リン含有化合物、水酸化マグネシウムなど)、
またはそれらの任意の組み合わせであることができる。
【0066】
安定化されるポリマー(またはポリマー-リグニン複合体のポリマー)は任意のポリマ
ー、例えば、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、コーティング、フィルム、接着剤、
パーソナルケア組成物、またはそれらの組み合わせであることができる。特定の実施形態
では、ポリマーは合成ポリマーであってもよい。特定の実施形態では、ポリマーは熱可塑
性ポリマーであってもよい。特定の実施形態では、ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロ
ピレン、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート))、ポリアミド(例え
ば、脂肪族、芳香族または半芳香族ポリアミドを含む)、またはそれらの任意の組み合わ
せ、を含む、から本質的になる、またはからなる。安定化ポリマーには、ポリプロピレン
、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、塩素化ポリエ
チレン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー
、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、PVC/ABSブレンド、ポリエチレンテレフタレ
ート(PET)、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル、スチレン-アクリル、ポ
リアミド、ナイロン、エラストマーなどが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書のポリマーのいずれかは、単独でまたは任意の組み合わせで(例えば、他の合成
ポリマーと、天然ポリマーと、または両方と)存在してもよい。ポリマーは、溶媒もキャ
リア液も含まないバルク(乾燥)ポリマーとして存在してもよく、または、溶媒溶液もし
くは分散液中、もしくは水溶液もしくは分散液中に存在してもよく、または、乾燥フィル
ムもしくはコーティングとして存在してもよい。したがって、様々な実施形態では、安定
化されるポリマーは、リグニンのスコーチ点より低い処理温度(すなわち、溶融または軟
化)を有するポリマーであることができる。様々な別の実施形態では、安定化されるポリ
マーは、約400℃未満の処理温度を有するポリマーであることができる。
【0067】
抗酸化剤の活性は、ASTM2009-02(示差走査熱量測定(DSC)による炭化
水素の酸化開始温度の標準試験方法)を用いて評価されることができる。草本リグニン、
例えばスイッチグラスリグニンは、他のリグニンと比較して、ポリマーの酸化分解に対す
る優れた保護を提供できる。例えば、1.0重量%濃度では、スイッチグラスリグニンは
通常、ポリプロピレン(BapoleneR 4012F,Bamberger Pol
ymer,Inc.,Houston,TX,USA)の酸化開始温度を、(同じポリマ
ーで同じ濃度で、約230℃の広葉樹リグニンおよびクラフトリグニンの場合と比べて)
約200℃から約244℃へ上げる。
【0068】
特定の実施形態では、組成物は、草本リグニンの代わりにクラフトリグニンまたは広葉
樹リグニンを含有する以外は同一の組成物よりも少なくとも10℃高い酸化開始温度を有
する。
【0069】
1.草本リグニン
特定の実施形態では、リグニンは草本リグニンである。特定の実施形態では、草本リグ
ニンはスイッチグラスリグニンである。特定の実施形態では、草本リグニンは、リグニン
にエーテル結合する大量のヒドロキシケイ皮酸ユニット、例えばフェルラ酸およびp-ク
マル酸ユニットを有する。例えば、草本リグニンは、p-ヒドロキシフェニル、グアヤシ
ル、およびシリンギル単位の混合物を含むことができる。
【0070】
特定の実施形態では、草本リグニンは、光散乱により測定される約600μm未満、約
550μm未満、約500μm未満、約450μm未満、約400μm未満、約350μ
m未満、約300μm未満、約250μm未満、約200μm未満、約150μm未満、
約125μm未満、約100μm未満、約75μm未満、約50μm未満、約25μm未
満、約10μm未満、または約5μm未満の平均粒子径d(50)を有する。
【0071】
特定の実施形態では、草本リグニンは、流体による草本系バイオマスの加水分解、例え
ば亜臨界、近臨界、または超臨界加水分解によって得られる。流体の例としては、水、メ
タノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、二酸化炭素、二酸化硫黄、またはこ
れらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。特定の態様では、加水
分解は超臨界加水分解である。本明細書でさらに詳述するように、調製プロセスは前処理
工程を含むことができるが、このような前処理工程は必須ではない。特定の実施形態では
、プロセスは、本明細書でさらに詳述するように、処理工程を含むことができる。
【0072】
特定の実施形態では、草本リグニンは、加水分解、例えば超臨界加水分解により得られ
る。加水分解は、圧力、例えば、1、5、10、20、30、40、50、60、70、
80、90、100、110、120、125、130、140、150、160、17
0、175、180、190、200、210、220、221、225、230、24
0、250、260、270、275、280、290、300、310、320、32
5、330、340、350、360、370、375、380、390、400、42
0、440、450、460、475、480、500、525、550、575、60
0、625、650、675、700、725、750、775、または800(bar
)で行われることができる。加水分解は、温度、例えば、374、375、380、39
0、400、410、420、430、440、450、460、470、480、49
0、500、510、520、530、540、550、560、570、または575
(℃)で行われることができる。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも
約」、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオ
ープンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載すること
ができる。したがって、特定の実施形態では、草本リグニンは、草本系バイオマスを約3
40℃~約400℃の温度および約225bar~約250barの圧力を有する流体に
さらすことにより得られる。
【0073】
従来、ポリマー用の抗酸化剤は添加剤として提供され、一般的に0.05~10重量%
(固体に基づく固体)の範囲の量で用いられる。ポリマーの抗酸化剤として用いるための
本明細書に開示の草本リグニン(例えばスイッチグラスリグニン)も、ポリマー添加剤と
してこのように利用されることができる。しかし、本明細書に開示し、以下でさらに説明
するように、草本リグニンはまた、抗酸化剤としても機能するポリマー充填剤(または増
量剤)として利用されてもよい。したがって、草本リグニンの含有量は95重量%と高い
場合がある。
【0074】
ポリマー-リグニン複合物は、少なくとも1つのポリマーおよび草本リグニンを含む。
ポリマー成分および草本リグニン成分のそれぞれは、乾燥複合物の重量に基づいて、0重
量%より多く、最大で100重量%未満の範囲の量で存在する。一実施形態では、少なく
とも2つの成分のそれぞれは、複合物の重量に基づいて、少なくとも2重量%、最大で9
8重量%の範囲の量で存在する。一実施形態では、少なくとも2つの成分のそれぞれは、
複合物の重量に基づいて、少なくとも5重量%、最大で95重量%の範囲の量で存在する
【0075】
草本リグニン(例えば、スイッチグラスリグニン)は、任意の好適な量で、ポリマーま
たはポリマー組成物、例えば熱可塑性ポリマーに用いられることができる。例えば、量は
、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、
0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.
7、1.8、1.9、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.2、3.4、3.
6、3.8、4、4.2、4.4、4.6、4.8、5、5.5、6、6.5、7、7.
5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、18、20
、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、
48、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95(重量%)
とすることができる。前記の数字のそれぞれの前に用語「約」、「少なくとも約」、また
は「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエン
ドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。
例えば、草本リグニンは、ポリマーまたはポリマー組成物中に0.1~3.0重量%、ま
たは0.3~2.0重量%、または10~60重量%の量で用いられることができる。草
本リグニンは、本明細書の他の場所に記載されているように草本系バイオマスから得られ
ることができる。好適なバイオマスには、スイッチグラス、ススキ(シルバーグラス)、
芝草、観賞用の草、および穀物、例えばモロコシ、大麦、小麦などが含まれるが、これら
に限定されない。本明細書に開示のように、草本リグニンは、ポリマーまたはポリマー組
成物がコーティング、フィルム、接着剤、またはパーソナルケア組成物中に存在する組成
物を含む、抗酸化剤目的の任意の組成物で用いられることができる。
【0076】
草本リグニンは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8
、0.9、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9
、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0
、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、
11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、5
0(マイクロメートル)の平均粒子径、直径/最大寸法を有することができる。前記の数
字のそれぞれの前に用語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることがで
き、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み
合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例えば、草本リグニンは、1.
0~10.0、または2~8マイクロメートルの平均粒子径(マイクロメートル)を有す
ることができる。
【0077】
草本リグニンは、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、5.0、6.0、7.0
、8.0、9.0、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、2
0、25、30、40、50(%)の炭水化物含有量を有することができる。前記の数字
のそれぞれの前に用語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることができ
、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合
わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例えば、草本リグニンは、1.0
~15.0、または2~8%の炭水化物含有量を有することができる。
【0078】
スイッチグラスバイオマスを含むバイオマスは、通常、セルロース、ヘミセルロース、
およびリグニンを含む。草本リグニンは、例えば、草本系バイオマスを流体で加水分解す
ることを含む、任意の好適な方法により草本系バイオマスから誘導されることができる。
加水分解には、1つの工程または複数の工程(2、3、4、5、6、7、8、または9以
上の加水分解工程)が含まれる。本明細書に記載されている温度、圧力、および時間は、
任意の単一工程に適用されることができる。例えば、加水分解プロセスは2つの工程で実
行されることができ、第1の工程は本明細書に開示される温度、圧力、および滞留時間の
いずれかを有し、第2の工程は本明細書に開示される温度、圧力、および時間のいずれか
を有する。
【0079】
流体は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、二酸化炭素、二酸
化硫黄、またはそれらの任意の組み合わせからなる、またはから本質的になる。いくつか
の実施形態では、流体は水、を含む、からなる、または、から本質的になる。
【0080】
特定の実施形態では、草本系バイオマス(例えば、スイッチグラス)は、亜臨界、近臨
界、または超臨界加水分解される。このプロセスは、草本系バイオマスを第1の温度およ
び第1の圧力下で第1の期間前処理し、それにより前処理されたバイオマスを形成する前
処理工程を含むことができる。本明細書で用いられる前処理工程は、通常バイオマスから
ヘミセルロース(存在する場合)を抽出することを含み、一方セルロース(存在する場合
)およびリグニンを残す(すなわち、前処理工程の生成物は本明細書では「前処理バイオ
マス」と呼ばれる)。プロセスは、前処理されたバイオマスが第2の温度および第2の圧
力下で第2の期間処理される処理工程をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、
プロセスは処理工程を含み、前処理工程を含まない。言い換えれば、本明細書で定義され
る前処理工程を受けていない草本系バイオマスは、流体を含む処理工程を受ける。しかし
、処理工程の前に、草本系バイオマスは粉砕されてもよいが(例えば、機械的手段、例え
ば粉砕、すりつぶし、衝突粉砕などにより、または爆発的減圧、例えば蒸気爆砕によりサ
イズを縮小)、この粉砕は、本明細書で用いられる前処理工程と見なされない。超臨界水
を含む流体を用いる場合、プロセスは、本明細書で定義される前処理工程なしに超臨界水
を用いて草本系バイオマスを処理することを含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、必要に応じて、草本系バイオマスは、通常約600マイクロ
メートル未満、または500マイクロメートル未満の平均粒子径d(50)を製造するた
めに、亜臨界、近超臨界、または超臨界加水分解の前に、上記のサイズの縮小を行っても
よい。特定の実施形態では、サイズの縮小は、アンモニアの存在下で草本系バイオマスを
爆発させることを含む。特定の実施形態では、サイズの縮小は、二酸化硫黄の存在下で草
本系バイオマスを爆発させることを含む。しかし、サイズの縮小は必要ない場合がある。
【0082】
特定の実施形態では、亜臨界、近超臨界、または超臨界加水分解、または本明細書に開
示の他のいずれの加水分解(例えば、酵素など)される草本系バイオマスは、光散乱で測
定した約600μm未満、または約500μm未満の平均粒子径d(50)、例えば平均
粒子径、d(50)は5、10、25、50、75、100、125、150、200、
250、300、350、400、450、500、550、600(マイクロメートル
、μm)であってもよい。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」、
または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープン
エンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することができ
る。例えば、平均粒子径d(50)は、約50μm~約600μm、約50μm~約50
0μm、約50μm~約450μm、約25μm~約250μm、または約100μm~
約400μmとすることができる。
【0083】
特定の実施形態では、好ましくは本明細書で前記のサイズを縮小した草本系バイオマス
は流体、例えば水を含む、からなる、または、から本質的になる流体と混合され、それに
より混合物を形成し、混合物は少なくとも約100℃の温度で加水分解される。いくつか
の実施形態では、混合物または混合物自体と接触する流体は、100、120、140℃
、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃
、230℃、240℃、250℃、260℃、280℃、300℃、320℃、340℃
、350℃、360℃、370℃、374.2℃、380℃、390℃、400℃、41
0℃、420℃、440℃、450℃、460℃、480℃、500℃、520℃、54
0℃、560℃、580℃、または600℃の温度(℃)を有する。前記の数字のそれぞ
れの前に単語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることができ、前記の
数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてク
ローズエンドの範囲を記載することができる。例えば、混合物は、190℃~374℃の
温度で加水分解されてもよい。または、混合物は、374℃~500℃の温度で、または
500℃を超える温度で加水分解されてもよい。特定の実施形態では、混合物は、100
℃~500℃の温度で、全ての流体が確実に液体形態であるのに十分な圧力下で加水分解
される。いくつかのこのような実施形態では、混合物は外因性酸を実質的に含まない。い
くつかのこのような実施形態では、混合物はCi-05アルコールを実質的に含まない。
必要に応じて、各実施形態では、1つまたは複数の予熱工程も用いられることができる。
【0084】
特定の実施形態では、草本系バイオマスは、例えば水を含む、からなる、または、から
本質的になる流体と混合されて混合物を生成し、混合物は超臨界加水分解され、前記混合
物は、少なくとも約374℃、例えば約374.2℃から約575℃の温度、および少な
くとも約221barの圧力を少なくとも1つのC6糖類を生成するのに十分な時間受け
る。混合物が超臨界加水分解される場合、混合物と接触する水は少なくとも約374℃の
温度を有する。混合物と接触する水は、374、375、380、390、400、41
0、420、430、440、450、460、470、480、490、500、51
0、520、530、540、550、560、570、575(℃)の温度を有する。
前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付ける
ことができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、ま
たは組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。したがって、混合物と
接触する水は、前述のエンドポイントのいずれか2つによって境界付けられる温度を有す
ることができる。例えば、水は、約374℃~約575℃、約374℃~約450℃、約
400℃~約520℃、または約375℃~約430℃の温度を有し、それぞれの場合に
おいて、少なくとも約221barの圧力下にあることができる。特定の実施形態では、
水は、575℃より高い温度を有し、少なくとも約221barの圧力下にあることがで
きる。いくつかのこのような実施形態では、混合物は外因性酸を実質的に含まない。いく
つかのこのような実施形態では、混合物はC1-05アルコールを実質的に含まない。必
要に応じて、各実施形態では、追加の予熱工程も用いられることができる。
【0085】
混合物が亜臨界、近超臨界、または超臨界加水分解される実施形態では、加水分解は、
1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、1
20、125、130、140、150、160、170、175、180、190、2
00、210、220、221、225、230、240、250、260、270、2
75、280、290、300、310、320、325、330、340、350、3
60、370、375、380、390、400、420、440、450、460、4
75、480、500、525、550、575、600、625、650、675、7
00、725、750、775、または800(bar)の圧力で行われる。前記の数字
のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることができ
、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合
わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例えば、圧力は、約221bar
~約800bar、約230bar~約500bar、約325bar~約750bar
、または約275bar~約350barとすることができる。特定の実施形態では、圧
力は800barより大きくてもよい。
【0086】
混合物が近超臨界または超臨界加水分解される特定の実施形態では、加水分解の継続時
間は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1
.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2
.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9
.0、10.0、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、1
20、140、160、180、200、220、240、260、280、または30
0(秒)である。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」、または「
約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの
範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例え
ば、継続時間は、約0.1秒~約10秒、約0.1秒~約5秒、約0.1秒~約0.3秒
、約1.1秒~約5秒、または約0.9秒~約9秒とすることができる。特定の実施形態
では、継続時間は10秒より大きい。好ましい実施形態では、継続時間は、約1.4秒以
下、例えば約0.1秒~約1.4秒である。混合物がより低い温度を受ける(例えば、亜
臨界加水分解)特定の実施形態では、加水分解の継続時間は、0.5、1、1.5、2、
2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30
、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、
100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、
200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、
または300(分)である。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」
、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープ
ンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することがで
きる。
【0087】
特定の実施形態では、後に加水分解される草本系バイオマスを含む混合物は、C1-0
5アルコールを実質的に含まない。特定の実施形態では、混合物は外因性酸を実質的に含
まない。必要に応じて、各実施形態では、1つまたは複数の予熱工程はまた加水分解の前
に用いられることができる。別の実施形態では、混合物は、(本明細書の他の箇所に開示
の)任意のC1-05アルコール、外因性酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0088】
特定の実施形態では、混合物の総重量に基づく混合物の固形分は、約1重量%以上、例
えば1重量%~40重量%である。混合物の固形分は、1、2、3、4、5、6、7、8
、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、2
2、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40
(%)、またはそれ以上であってもよい。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少
なくとも約」、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、
単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載
することができる。例えば、混合物の固形分は、約10重量%~約29重量%、約15重
量%~約29重量%、約10重量%~約18重量%、または約24重量%~約27重量%
とすることができる。
【0089】
2.広葉樹リグニン

特定の実施形態では、リグニンは広葉樹リグニンである。例えば、広葉樹リグニンは、
グアヤシル、およびシリンギル単位の混合物を含むことができる。別の特定の実施形態で
は、広葉樹リグニンはp-ヒドロキシフェニルを含むことができない。
【0090】
特定の実施形態では、広葉樹リグニンは、光散乱により測定される約600μm未満、
約550μm未満、約500μm未満、約450μm未満、約400μm未満、約350
μm未満、約300μm未満、約250μm未満、約200μm未満、約150μm未満
、約125μm未満、約100μm未満、約75μm未満、約50μm未満、約25μm
未満、約10μm未満、または約5μm未満の平均粒子径d(50)を有する。
【0091】
特定の実施形態では、広葉樹リグニンは、流体によるバイオマスの加水分解、例えば亜
臨界、近臨界、または超臨界加水分解によって得られる。流体の例としては、水、メタノ
ール、エタノール、プロパノール、ブタノール、二酸化炭素、二酸化硫黄、またはそれら
の任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。特定の態様では、加水分解
は超臨界加水分解である。本明細書でさらに詳述するように、調製プロセスは前処理工程
を含むことができるが、このような前処理工程は必須ではない。特定の実施形態では、プ
ロセスは、本明細書でさらに詳述するように、処理工程を含むことができる。
【0092】
特定の実施形態では、広葉樹リグニンは、加水分解、例えば超臨界加水分解により得ら
れる。加水分解は、圧力、例えば、1、5、10、20、30、40、50、60、70
、80、90、100、110、120、125、130、140、150、160、1
70、175、180、190、200、210、220、221、225、230、2
40、250、260、270、275、280、290、300、310、320、3
25、330、340、350、360、370、375、380、390、400、4
20、440、450、460、475、480、500、525、550、575、6
00、625、650、675、700、725、750、775、または800(ba
r)で行われることができる。加水分解は、温度、例えば、374、375、380、3
90、400、410、420、430、440、450、460、470、480、4
90、500、510、520、530、540、550、560、570、または57
5(℃)で行われることができる。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくと
も約」、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独で
オープンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載するこ
とができる。したがって、特定の実施形態では、広葉樹リグニンは、バイオマスを約34
0℃~約400℃の温度および約225bar~約250barの圧力を有する流体にさ
らすことにより得られる。
【0093】
従来、ポリマー用の抗酸化剤は添加剤として提供され、一般的に0.05~10重量%
(固体に基づく固体)の範囲の量で用いられる。ポリマーの抗酸化剤として用いるために
本明細書に開示の広葉樹リグニンも、ポリマー添加剤としてこのように利用されることが
できる。しかし、本明細書に開示し、以下でさらに説明するように、広葉樹リグニンはま
た、抗酸化剤としても機能するポリマー充填剤(または増量剤)として利用されてもよい
。したがって、広葉樹リグニンの含有量は95重量%と高い場合がある。
【0094】
ポリマー-リグニン複合物は、少なくとも1つのポリマーおよび広葉樹リグニンを含む
。ポリマー成分および広葉樹リグニン成分のそれぞれは、乾燥複合物の重量に基づいて、
0重量%より多く、最大で100重量%未満の範囲の量で存在する。一実施形態では、少
なくとも2つの成分のそれぞれは、複合物の重量に基づいて、少なくとも2重量%、最大
で98重量%の範囲の量で存在する。一実施形態では、少なくとも2つの成分のそれぞれ
は、複合物の重量に基づいて、少なくとも5重量%、最大で95重量%の範囲の量で存在
する。
【0095】
広葉樹リグニンは、任意の好適な量で、ポリマーまたはポリマー組成物、例えば熱可塑
性ポリマーに用いられることができる。例えば、量は、0.01、0.02、0.05、
0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.
1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.2、
2.4、2.6、2.8、3、3.2、3.4、3.6、3.8、4、4.2、4.4、
4.6、4.8、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10
、11、12、13、14、15、16、18、20、22、24、26、28、30、
32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、55、60、65、7
0、75、80、85、90、または95(重量%)とすることができる。前記の数字の
それぞれの前に用語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることができ、
前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合わ
せてクローズエンドの範囲を記載することができる。例えば、広葉樹リグニンは、ポリマ
ーまたはポリマー組成物中に0.1~3.0重量%、または0.3~2.0重量%、また
は10~60重量%の量で用いられることができる。広葉樹リグニンは、本明細書の他の
場所に記載されているようにバイオマスから得られることができる。本明細書に開示のよ
うに、広葉樹リグニンは、ポリマーまたはポリマー組成物がコーティング、フィルム、接
着剤、またはパーソナルケア組成物中に存在する組成物を含む、抗酸化剤目的の任意の組
成物で用いられることができる。
【0096】
広葉樹リグニンは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.
8、0.9、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.
9、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.5、4.0、4.5、5.
0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10
、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、
50(マイクロメートル)の平均粒子径、直径/最大寸法を有することができる。前記の
数字のそれぞれの前に用語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることが
でき、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組
み合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例えば、広葉樹リグニンは、
1.0~10.0、または2~8マイクロメートルの平均粒子径(マイクロメートル)を
有することができる。
【0097】
広葉樹リグニンは、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、5.0、6.0、7.
0、8.0、9.0、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、
20、25、30、40、50(%)の炭水化物含有量を有することができる。前記の数
字のそれぞれの前に用語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることがで
き、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み
合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例えば、広葉樹リグニンは、1
.0~15.0、または2~8%の炭水化物含有量を有することができる。
【0098】
バイオマスは、通常、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンを含む。広葉樹リ
グニンは、例えば、バイオマスを流体で加水分解することを含む、任意の好適な方法によ
りバイオマスから誘導されることができる。加水分解には、1つの工程または複数の工程
(2、3、4、5、6、7、8、または9以上の加水分解工程)が含まれる。本明細書に
記載されている温度、圧力、および時間は、任意の単一工程に適用されることができる。
例えば、加水分解プロセスは2つの工程で実行されることができ、第1の工程は本明細書
に開示される温度、圧力、および滞留時間のいずれかを有し、第2の工程は本明細書に開
示される温度、圧力、および時間のいずれかを有する。
【0099】
流体は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、二酸化炭素、二酸
化硫黄、またはそれらの任意の組み合わせからなる、またはから本質的になる。いくつか
の実施形態では、流体は水、を含む、からなる、または、から本質的になる。
【0100】
特定の実施形態では、バイオマスは、亜臨界、近臨界、または超臨界加水分解される。
このプロセスは、バイオマスを第1の温度および第1の圧力下で第1の期間前処理し、そ
れにより前処理されたバイオマスを形成する前処理工程を含むことができる。本明細書で
用いられる前処理工程は、通常バイオマスからヘミセルロース(存在する場合)を抽出す
ることを含み、一方セルロース(存在する場合)およびリグニンを残す(すなわち、前処
理工程の生成物は本明細書では「前処理バイオマス」と呼ばれる)。プロセスは、前処理
されたバイオマスが第2の温度および第2の圧力下で第2の期間処理される処理工程をさ
らに含んでもよい。いくつかの実施形態では、プロセスは処理工程を含み、前処理工程を
含まない。言い換えれば、本明細書で定義される前処理工程を受けていないバイオマスは
、流体を含む処理工程を受ける。しかし、処理工程の前に、バイオマスは粉砕されてもよ
いが(例えば、機械的手段、例えば粉砕、すりつぶし、衝突粉砕などにより、または爆発
的減圧、例えば蒸気爆砕によりサイズを縮小)、この粉砕は、本明細書で用いられる前処
理工程と見なされない。超臨界水を含む流体を用いる場合、プロセスは、本明細書で定義
される前処理工程なしに超臨界水を用いてバイオマスを処理することを含んでもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、必要に応じて、バイオマスは、通常約600マイクロメート
ル未満、または500マイクロメートル未満の平均粒子径d(50)を製造するために、
亜臨界、近超臨界、または超臨界加水分解の前に、上記のサイズの縮小を行ってもよい。
特定の実施形態では、サイズの縮小は、アンモニアの存在下でバイオマスを爆発させるこ
とを含む。特定の実施形態では、サイズの縮小は、二酸化硫黄の存在下でバイオマスを爆
発させることを含む。しかし、サイズの縮小は必要ない場合がある。
【0102】
特定の実施形態では、亜臨界、近超臨界、または超臨界加水分解、または本明細書に開
示の他のいずれの加水分解(例えば、酵素など)されるバイオマスは、光散乱で測定した
約600μm未満、または約500μm未満の平均粒子径d(50)、例えば平均粒子径
、d(50)は5、10、25、50、75、100、125、150、200、250
、300、350、400、450、500、550、600(マイクロメートル、μm
)であってもよい。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」、または
「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンド
の範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例
えば、平均粒子径d(50)は、約50μm~約600μm、約50μm~約500μm
、約50μm~約450μm、約25μm~約250μm、または約100μm~約40
0μmとすることができる。
【0103】
特定の実施形態では、好ましくは本明細書で前記のサイズを縮小したバイオマスは流体
、例えば水を含む、からなる、または、から本質的になる流体と混合され、それにより混
合物を形成し、混合物は少なくとも約100℃の温度で加水分解される。いくつかの実施
形態では、混合物または混合物自体と接触する流体は、100、120、140℃、15
0℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、23
0℃、240℃、250℃、260℃、280℃、300℃、320℃、340℃、35
0℃、360℃、370℃、374.2℃、380℃、390℃、400℃、410℃、
420℃、440℃、450℃、460℃、480℃、500℃、520℃、540℃、
560℃、580℃、または600℃の温度(℃)を有する。前記の数字のそれぞれの前
に単語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることができ、前記の数値の
いずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズ
エンドの範囲を記載することができる。例えば、混合物は、190℃~374℃の温度で
加水分解されてもよい。または、混合物は、374℃~500℃の温度で、または500
℃を超える温度で加水分解されてもよい。特定の実施形態では、混合物は、100℃~5
00℃の温度で、全ての流体が確実に液体形態であるのに十分な圧力下で加水分解される
。いくつかのこのような実施形態では、混合物は外因性酸を実質的に含まない。いくつか
のこのような実施形態では、混合物はCi-05アルコールを実質的に含まない。必要に
応じて、各実施形態では、1つまたは複数の予熱工程も用いられることができる。
【0104】
特定の実施形態では、バイオマスは、例えば水を含む、からなる、または、から本質的
になる流体と混合されて混合物を生成し、混合物は超臨界加水分解され、前記混合物は、
少なくとも約374℃、例えば約374.2℃から約575℃の温度、および少なくとも
約221barの圧力を少なくとも1つのC6糖類を生成するのに十分な時間受ける。混
合物が超臨界加水分解される場合、混合物と接触する水は少なくとも約374℃の温度を
有する。混合物と接触する水は、374、375、380、390、400、410、4
20、430、440、450、460、470、480、490、500、510、5
20、530、540、550、560、570、575(℃)の温度を有する。前記の
数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることが
でき、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組
み合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。したがって、混合物と接触す
る水は、前述のエンドポイントのいずれか2つによって境界付けられる温度を有すること
ができる。例えば、水は、約374℃~約575℃、約374℃~約450℃、約400
℃~約520℃、または約375℃~約430℃の温度を有し、それぞれの場合において
、少なくとも約221barの圧力下にあることができる。特定の実施形態では、水は、
575℃より高い温度を有し、少なくとも約221barの圧力下にあることができる。
いくつかのこのような実施形態では、混合物は外因性酸を実質的に含まない。いくつかの
このような実施形態では、混合物はC1-05アルコールを実質的に含まない。必要に応
じて、各実施形態では、追加の予熱工程も用いられることができる。
【0105】
混合物が亜臨界、近超臨界、または超臨界加水分解される実施形態では、加水分解は、
1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、1
20、125、130、140、150、160、170、175、180、190、2
00、210、220、221、225、230、240、250、260、270、2
75、280、290、300、310、320、325、330、340、350、3
60、370、375、380、390、400、420、440、450、460、4
75、480、500、525、550、575、600、625、650、675、7
00、725、750、775、または800(bar)の圧力で行われる。前記の数字
のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることができ
、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合
わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例えば、圧力は、約221bar
~約800bar、約230bar~約500bar、約325bar~約750bar
、または約275bar~約350barとすることができる。特定の実施形態では、圧
力は800barより大きくてもよい。
【0106】
混合物が近超臨界または超臨界加水分解される特定の実施形態では、加水分解の継続時
間は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1
.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2
.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9
.0、10.0、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、1
20、140、160、180、200、220、240、260、280、または30
0(秒)である。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」、または「
約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの
範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例え
ば、継続時間は、約0.1秒~約10秒、約0.1秒~約5秒、約0.1秒~約0.3秒
、約1.1秒~約5秒、または約0.9秒~約9秒とすることができる。特定の実施形態
では、継続時間は10秒より大きい。好ましい実施形態では、継続時間は、約1.4秒以
下、例えば約0.1秒~約1.4秒である。混合物がより低い温度を受ける(例えば、亜
臨界加水分解)特定の実施形態では、加水分解の継続時間は、0.5、1、1.5、2、
2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30
、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、
100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、
200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、
または300(分)である。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」
、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープ
ンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することがで
きる。
【0107】
特定の実施形態では、後に加水分解されるバイオマスを含む混合物は、C1-05アル
コールを実質的に含まない。特定の実施形態では、混合物は外因性酸を実質的に含まない
。必要に応じて、各実施形態では、1つまたは複数の予熱工程はまた加水分解の前に用い
られることができる。別の実施形態では、混合物は、(本明細書の他の箇所に開示の)任
意のC1-05アルコール、外因性酸、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0108】
特定の実施形態では、混合物の総重量に基づく混合物の固形分は、約1重量%以上、例
えば1重量%~40重量%である。混合物の固形分は、1、2、3、4、5、6、7、8
、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、2
2、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40
(%)、またはそれ以上であってもよい。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少
なくとも約」、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、
単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載
することができる。例えば、混合物の固形分は、約10重量%~約29重量%、約15重
量%~約29重量%、約10重量%~約18重量%、または約24重量%~約27重量%
とすることができる。
【0109】
C.ポリマーおよびポリマー組成物の製造方法
本発明は、ポリマーまたはポリマー組成物の製造方法を提供し、この方法は、リグニン
、例えば草本リグニンまたは広葉樹リグニン、およびポリマー担体を組み合わせる工程を
含む。ポリマー担体の例としては、ポリプロピレン、エチレン、ポリ塩化ビニル(PVC
)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、塩素化ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル
-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、PV
C/ABSブレンド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリ
ウレタン、アクリル、スチレン-アクリル、ポリアミド、ナイロン、エラストマー、およ
びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
本発明の方法は、管状反応器、(垂直、水平、または傾斜)蒸解釜などを含むがこれら
に限定されない任意の好適な反応器で実施されることができる。好適な蒸解釜には、米国
特許第8,057,639B号に記載されている蒸解釜システムが含まれ、これは蒸解釜
および蒸気爆砕ユニットを備える。
【0111】
したがって、例えば、特定の実施形態では、リグニンは、(a)(i)セルロースおよ
びリグニンを含む第1の固形分と、(ii)第1の液体分と、を含むリグノセルロース系
バイオマスを供給すること、(b)第1の固形分を水と混合してスラリーを形成すること
、ならびに(c)(特定の実施形態では滞留時間約20秒~約45秒の場合)約225b
ar~約250barの圧力で、約340℃~約400℃の温度にスラリーを予熱するこ
と、によって得られる。
【0112】
特定の実施形態では、リグニンは、加水分解、例えば超臨界加水分解により得られる。
加水分解は、圧力、例えば、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80
、90、100、110、120、125、130、140、150、160、170、
175、180、190、200、210、220、221、225、230、240、
250、260、270、275、280、290、300、310、320、325、
330、340、350、360、370、375、380、390、400、420、
440、450、460、475、480、500、525、550、575、600、
625、650、675、700、725、750、775、または800(bar)で
行われることができる。加水分解は、温度、例えば、374、375、380、390、
400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、
500、510、520、530、540、550、560、570、または575(℃
)で行われることができる。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」
、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープ
ンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することがで
きる。したがって、特定の実施形態では、リグニンは、バイオマスを約340℃~約40
0℃の温度および約225bar~約250barの圧力を有する流体にさらすことによ
り得られる。
【0113】
特定の実施形態では、加水分解(例えば、超臨界加水分解)および生成物の収集を含む
本明細書に開示の方法は連続的に実行されるが、別の実施形態では、これらはバッチまた
は半バッチプロセスとして実行されることができる。
【0114】
草本系バイオマス(例えば、スイッチグラス)は、「そのまま」加水分解に用いられて
もよく、または、例えば、洗浄、機械的調製(例えば、すりつぶし、細断、粉砕など)、
またはそれらの任意の組み合わせによって好適に調製されてもよい。
【0115】
本発明の草本リグニンを調製するのに好適な別のプロセスも用いられてもよい。
【0116】
本発明の草本リグニンは、通常、好適な溶媒を用いることにより、上記の処理工程で生
成される固体から抽出される(しかし、そうである必要はない)。好適な溶媒による抽出
は、本明細書では「抽出工程」または「抽出」と呼ばれる。例えば、溶媒はアルカリ水溶
液、例えば水酸化ナトリウム水溶液であることができる。アルカリ性水溶液中の塩基の量
は、約0.1重量%以上とすることができ、最大量は特に限定されない。アルカリ性水溶
液中の塩基の量は、約3重量%以下とすることができ、最小量は特に限定されない。溶液
の残部は通常、水を含むか、水からなる。例えば、塩基の量は0.1、0.3、0.5、
0.7、0.9、1.2、1.4、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3(
重量%)とすることができる。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約
」、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオー
プンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することが
できる。例えば、塩基の量は、約0.9重量%以上、約1.7重量%~約2.6重量%、
約2.8重量%~約3重量%、または約0.9重量%~約1.2重量%とすることができ
る。好ましくは、アルカリ性水溶液は約1重量%である。
【0117】
他の好適な抽出溶媒には水性有機溶媒、例えば、ジオキサン、アセトン、エタノール、
メタノール、プロパノール、またはブタノール水溶液のうちの少なくとも1つが含まれる
。水性有機溶媒中の有機溶媒(ジオキサン、アセトン、エタノール、メタノール、プロパ
ノール、ブタノール、またはそれらの組み合わせ)の量は、約80体積%以上であること
ができ、上限は特に限定されない。有機溶媒の量は約99.5体積%以下とすることがで
き、最小量は特に限定されない。残部は水を含むか、水からなる。例えば、水性有機溶媒
中の有機溶媒の量は、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、
99、99.5(体積%)とすることができる。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」
、「少なくとも約」、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用
いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲
を記載することができる。例えば、水性有機溶媒中の有機溶媒の量は、約86体積%以下
、約88体積%~約94体積%、約90体積%~約92体積%、または約94体積%~約
96体積%とすることができる。水中の有機溶媒の好ましい量は、約90体積%または約
96体積%である。
【0118】
特定の実施形態では、草本リグニンの収率は、理論収率の少なくとも30%である。特
定の実施形態では、前記草本リグニンの収率(%)は、理論収率の30、35、40、4
5、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99%であ
る。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約」、または「約未満」を付
けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオープンエンドの範囲を記載し
、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することができる。例えば、特定の実
施形態では、草本リグニンの収率は、理論収率の少なくとも約70%、または理論収率の
少なくとも約85%である。
【0119】
D.生成物
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法により生成される生成物に
関する。
【0120】
いくつかの実施形態では、安定化ポリマーは、ポリプロピレン、エチレン、ポリ塩化ビ
ニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、塩素化ポリエチレン、ポリスチレン、アク
リロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポ
リマー、PVC/ABSブレンド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボ
ネート、ポリウレタン、アクリル、スチレン-アクリル、ポリアミド、ナイロン、エラス
トマー、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0121】
いくつかの実施形態では、安定化コーティングは、前述のポリマーのいずれか、または
それらの任意の組み合わせを含んでもよい建築用コーティングおよび工業用コーティング
を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、草本リグニン、例えばスイッチグラスは、1つまたは複数の
別の抗酸化剤と組み合わせて用いられる。好適な抗酸化剤には、IRGANOX 101
0、IRGANOX B225、IRGAFOS 168、および他の亜リン酸塩、ホス
ホナイト、立体障害フェノール、アミン、チオエステル、またはそれらの任意の組み合わ
せが含まれる。
【0123】
いくつかの実施形態では、草本リグニン(例えば、スイッチグラスリグニン)を含有す
るポリマーの酸化開始温度(OOT)は、150、155、160、165、170、1
75、180、185、190、195、200、205、210、215、220、2
22、225、227、230、231、232、233、234、235、236、2
37、238、239、240、241、242、243、244、245、246、2
47、248、249、250、252、255、257、260、262、265、2
67、270、275、280、285、290、295、300、305、310、3
15、320、325、330、335、340、345、350、355、360、3
65、370、380、390、400、410、420、430、440、または45
0(℃)とすることができる。前記の数字のそれぞれの前に単語「約」、「少なくとも約
」、または「約未満」を付けることができ、前記の数値のいずれかを用いて、単独でオー
プンエンドの範囲を記載し、または組み合わせてクローズエンドの範囲を記載することが
できる。
【0124】
いくつかの実施形態では、草本リグニン(例えば、スイッチグラスリグニン)を含有す
るポリマーの酸化開始温度は、草本リグニンの代わりにクラフトリグニンまたは広葉樹リ
グニンを含有する以外は同一のポリマーよりも、少なくとも1、2、4、6、8、10、
12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、3
8、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64
、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、
92、94、96、98、または100(℃)高い。
【0125】
E.例示的条項
本明細書に開示の方法または生成物のいくつかの実施形態は、以下の条項に記載され、
これらの条項(またはその一部)の任意の組み合わせが作成されてもよく、本明細書に開
示の方法または生成物の実施形態を定義することができる。
【0126】
条項1:草本リグニンを含むポリマーまたはポリマー組成物。
【0127】
条項2:ポリマーまたはポリマー組成物は、熱可塑性物質、熱硬化性物質、複合材料、
コーティング、フィルム、接着剤、パーソナルケア組成物、またはそれらの任意の組み合
わせである、条項1に記載のポリマーまたはポリマー組成物。
【0128】
条項3:草本リグニンを含むポリマーまたはポリマー組成物の酸化開始温度は、草本リ
グニンの代わりにクラフトリグニンまたは広葉樹リグニンを含有する以外は同一のポリマ
ーよりも少なくとも10℃高い、条項1に記載のポリマーまたはポリマー組成物。
【0129】
条項4:約232℃~約250℃の酸化開始温度を有する、条項1のポリマーまたはポ
リマー組成物。このような一実施形態では、ポリマーまたはポリマー組成物は、草本リグ
ニンを含むポリプロピレンポリマーである。このような一実施形態では、ポリマーまたは
ポリマー組成物は、スイッチグラスリグニンを含むポリプロピレンポリマーである。
【0130】
条項5:ポリマーまたはポリマー組成物は熱可塑性物質である、条項2、3、または4
のいずれか1項に記載のポリマーまたはポリマー組成物。
【0131】
条項6:熱可塑性物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせ
を含む、条項5に記載のポリマーまたはポリマー組成物。
【0132】
条項7:熱可塑性物質はポリプロピレンを含み、草本リグニンは0.5~1.5重量%
の濃度で存在する、条項5に記載のポリマーまたはポリマー組成物。このような一実施形
態では、熱可塑性物質はポリプロピレンを含み、草本リグニンは0.5~1.5重量%の
濃度で存在するスイッチグラスリグニンである。
【0133】
条項8:草本リグニンを0.5~2.0重量%の濃度で含むコーティング組成物または
フィルム。
【0134】
条項9:草本リグニンを0.5~2.0重量%の濃度で含むはパーソナルケア組成物。
【0135】
条項10:バイオマスはリグニンを含み、組成物はバイオマスの重量に対して20%以
下の量のセルロースおよび/またはヘミセルロースを含む、熱可塑性ポリマーおよびバイ
オマスを含む組成物。
【0136】
条項11:熱可塑性ポリマーは、約400℃未満の処理温度を有する、条項10に記載
の組成物。
【0137】
条項12:熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み
合わせである、条項10に記載の組成物。
【0138】
条項13:リグニンは広葉樹リグニンである、条項10に記載の組成物。
【0139】
条項14:リグニンは草本リグニンである、条項10に記載の組成物。
【0140】
条項15:リグニンは、グアヤシル単位およびシリンギル単位の混合物を含む、条項1
0に記載の組成物。
【0141】
条項16:約232℃~約250℃の酸化開始温度を有する、条項10に記載の組成物
【0142】
条項17:リグニンが約2マイクロメートル~約8マイクロメートルの平均粒子径を有
する、条項10に記載の組成物。
【0143】
条項18:リグニンは超臨界加水分解によって調製される、条項10に記載の組成物。
【0144】
条項19:リグニンは、バイオマスを約340℃~約400℃の温度および約225b
ar~約250barの圧力を有する流体にさらすことにより調製される、条項10に記
載の組成物。
【0145】
条項20:ポリマーはポリプロピレンであり、リグニンは約0.5重量%~約1.5重
量%の濃度で存在する、条項10に記載の組成物。
【0146】
条項21:条項10の組成物を含むコーティング組成物またはフィルム。
【0147】
条項22:条項10の組成物を含むパーソナルケア組成物。
【0148】
条項23:方法は、(a)バイオマスを約340℃~約400℃の温度および約225
bar~約250barの圧力を有する流体にさらすことによりリグニンを得ることと、
(b)リグニンを熱可塑性ポリマーと混合することと、の工程を含む、条項10の組成物
の製造方法。
【0149】
条項24:熱可塑性ポリマーは約400℃未満の処理温度を有する、条項23に記載の
方法。
【0150】
条項25:熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み
合わせである、条項23に記載の方法。
【0151】
条項26:リグニンは広葉樹リグニンである、条項23に記載の方法。
【0152】
条項27:リグニンは草本リグニンである、条項23に記載の方法。
【0153】
条項28:組成物は約232℃~約250℃の酸化開始温度を有する、条項23に記載
の方法。
【0154】
条項29:リグニンが約2マイクロメートル~約8マイクロメートルの平均粒子径を有
する、条項23に記載の方法。
【0155】
本発明を以下の実施例でさらに定義するが、特に明記しない限り、全ての割合およびパ
ーセントは重量による。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、
例示としてのみ与えられており、いかなる形でも限定するものとして解釈されるべきでは
ないことを理解されたい。上記の説明およびこれらの例から、当業者は本発明の本質的な
特徴を確認することができ、それらの趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の様
々な変更および修正を行い、様々な用途および条件に適合させることができる。
【実施例0156】
F.実施例
1.実施例1
この実施例は、ポリプロピレンの抗酸化剤としてのスイッチグラスリグニンの効果を示
し、それを広葉樹リグニンおよびクラフトリグニン、ならびに市販の抗酸化剤と比較する
。全ての試料は、ASTM 2009-02(示差走査熱量測定(DSC)による炭化水
素の酸化開始温度の標準試験方法)を用いて評価され、ASTM 2009-02では、
酸化開始温度(OOT)が高いほど酸化分解に対する安定性が向上すると考えられている
。全ての試料はポリプロピレン、具体的にはBapoleneR 4012F(Bamb
erger Polymer、Inc.、Houston、TX、USA)を用いて調製
され、それは12.0g/10分(ASTM D-1238、230C/2,160g)
のメルトフローの調合/押出グレードのポリプロピレンとして市販されている。試料をド
ライブレンドし(ポリプロピレン、リグニン抗酸化剤または市販の抗酸化剤、および加工
助剤として0.5重量%のステアリン酸亜鉛)、そして共回転20mmのツインスクリュ
ー押出機に直接供給した。試料を押し出してペレットを製造し、それを小さなディスク(
約2.6mg)にカットし、OOT試験のために正確に重量を量った(3回実行)。試料
は、空気中のDSCによって、Tzeroアルミニウムパン(TA Instrumen
ts、New Castle,DE,USA)で別々に試験され、試料は、50mL/分
の空気流で20℃/分の速度で温度を上げる前に50℃で平衡にされた。試料には、図1
に示すように、様々な量の各テスト抗酸化剤(0、0.1、0.3、0.5または0.6
、および1.0重量%)を含有した。
【0157】
図1は、添加された各抗酸化剤の各抗酸化剤添加濃度で得られたOOT(℃)を示す。
図1の凡例を参照すると、試験された抗酸化剤は:
【0158】
ベース-抗酸化剤添加なし(すなわち、0重量%抗酸化剤)
【0159】
EBS/Omno(50%)-添加された抗酸化剤は、50%エチレンビスステアラミ
ドおよび50%広葉樹リグニンを含んでいた。
【0160】
Irg1010/Omno(40%)-添加された抗酸化剤は、Irganox 10
10が60%、広葉樹リグニンが40%を含んでいた。
【0161】
Irganox-添加された抗酸化剤は、Irganox 1010であった。
【0162】
IrgB225/Omno(30%)-添加された抗酸化剤は、Irganox B2
25が70%、広葉樹リグニンが30%を含んでいた。
【0163】
クラフト-添加された抗酸化剤はクラフトリグニンであった。
【0164】
Omno-添加された抗酸化剤は広葉樹リグニンであった。
【0165】
スイッチグラスOmno-添加された抗酸化剤はスイッチグラスリグニンであった。
【0166】
[Irganox 1010は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ
-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、立体障害フェノール
;Irganox B225=Irganox 1010とIrgafos 168の溶
融ブレンド;Irgafos 168=亜リン酸トリス(2,4-ジtert-ブチルフ
ェニル)、亜リン酸塩安定剤]
【0167】
広葉樹リグニンおよびスイッチグラスリグニンの両方を、5マイクロメートル直径/最
大寸法の平均粒子径に予備粉砕した。
【0168】
OOTがベースケース(ベース:抗酸化剤を全く含まないポリプロピレン)に比べて高
くなっているため、データは、1.0重量%の添加濃度で、全てのリグニンが抗酸化安定
剤としていくつかの有効性を示す。しかし、スイッチグラスリグニンは、クラフトリグニ
ンおよび広葉樹リグニンと比較して、OOTを大幅に改善する。例えば、1.0重量%の
濃度では、(同じポリマー中の同じ濃度で、広葉樹リグニンおよびクラフトリグニンの約
230℃に比較して)スイッチグラスリグニンは、典型的にポリプロピレンのOOTを約
200℃から約244℃に上昇させる。さらに、曲線の外挿は、リグニンの濃度(抗酸化
剤として)が増加するにつれて、改善の濃度がはるかに大きくなる可能性が高いことを示
す。
【0169】
商業的に実行可能な性能は、通常の使用濃度(0.3重量%)でIrganox 10
10を用いて達成されるOOTから判断されることができ、このような性能は、わずかに
高い使用濃度のスイッチグラスリグニンで達成されるはずである。業界で現在用いられて
いる特殊化学物質は通常高価であるが、使用濃度のわずかな増加は、商業的観点から禁止
されない場合がある。
【0170】
2.実施例2
マスターバッチ(MB)A-Fの成分を表1に示す。
【0171】
例示的な組成物の成分を表2(重量%)および表3(グラム)に示す(注:1つのペレ
ットが500gを保持する)。
【0172】
用いた各成分の合計量(グラム)を表4に示す。
【0173】
3.実施例3
例示的な組成物の成分を表5(重量%)および表6(グラム)に示す(注:1つのペレ
ットが500gを保持する)。
【0174】
用いた各成分の合計量(グラム)を表7に示す。
【0175】
実施例3の組成物の酸化開始温度を表8に示す(約2.5mgの試料;空気、50mL
/分、310℃まで毎分20℃の勾配)。

【0176】
4.実施例4
例示的な組成物の酸化開始温度(OOT)の概要を表9および図2に示す。
【0177】
5.実施例5
例示的な組成物のUV試験の結果は、表10および11ならびに図3Aおよび図3B
示される。
【0178】
6.実施例6
例示的な組成物の熱試験の結果は、表12~14および図4A~Cに示される。
【0179】
7.実施例7
例示的な組成物の基準の酸化開始温度(OOT)試験の結果を表15、表16、および
図5に示す。
【0180】
8.実施例8
例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータを、それぞれ表17
i~xiiおよび図6A~Lに示す。
【0181】
本発明の好ましい形態が開示されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく
本発明の利点のいくつかを達成する様々な変更および修正を行うことができることは当業
者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および
範囲内にあるこのような同等物の変形を全て網羅し、本発明の範囲は添付の特許請求の範
囲によって決定されるものとする。
【0182】
物理的性質、例えば分子量、または化学的性質、例えば化学式について範囲が本明細書
で使用される場合、その中の特定の実施形態の範囲の全ての組み合わせおよび部分的組み
合わせが含まれることが意図される。
【0183】
本文書で引用または説明される各特許、特許出願、および刊行物の開示は、その全体が
参照により本明細書に組み込まれる。
【0184】
本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、本発明において様々な修正および変形
を行うことができることは当業者には明らかであろう。本発明の別の態様は、ここに開示
の本発明の明細書および実施の考察から当業者には明らかであろう。明細書および実施例
は例示としてのみみなされ、本発明の真の範囲および趣旨は添付の特許請求の範囲によっ
て示されることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
【手続補正書】
【提出日】2024-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーおよびバイオマスを含む組成物であって、前記バイオマスはリグニンを含み、前記リグニンは0.5重量%から1.5重量%の濃度で存在し、前記組成物は前記バイオマスの重量に対して20%以下の量のセルロースおよび/またはヘミセルロースを含む、組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーは、00℃未満の処理温度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記リグニンは広葉樹リグニンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記リグニンは草本リグニンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記リグニンは、グアイアシル単位およびシリンギル単位の混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
32℃~50℃の酸化開始温度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記リグニンがマイクロメートル~マイクロメートルの平均粒子径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1の組成物を含むコーティング組成物またはフィルム。
【請求項10】
請求項1の組成物を含むパーソナルケア組成物。
【請求項11】
請求項1の組成物を製造する方法であって、前記方法は、
(a)バイオマスを40℃~00℃の温度および25bar~50barの圧力を有する流体にさらすことによりリグニンを得る工程と、
(b)前記リグニンを前記熱可塑性ポリマーと混合する工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマーは、00℃未満の処理温度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、またはポリプロピレンである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記リグニンは広葉樹リグニンである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記リグニンは草本リグニンである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物は32℃~50℃の酸化開始温度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記リグニンはマイクロメートル~マイクロメートルの平均粒子径を有する、請求項11に記載の方法。
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【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
図1図1は、ポリプロピレンに添加された様々な抗酸化剤の各抗酸化剤添加濃度で得られた酸化開始温度、OOT、(℃)である。
図2図2は、例示的な組成物の酸化開始温度(OOT)の概要である。
図3A図3Aは、例示的な組成物のUV試験の結果である。
図3B図3Bは、例示的な組成物のUV試験の結果である。
図4A図4Aは、例示的な組成物の熱試験の結果である。
図4B図4Bは、例示的な組成物の熱試験の結果である。
図4C図4Cは、例示的な組成物の熱試験の結果である。
図5-1】図5-1は、例示的な組成物の基準の酸化開始温度(OOT)試験の結果である。
図5-2】図5-2は、例示的な組成物の基準の酸化開始温度(OOT)試験の結果である。
図5-3】図5-3は、例示的な組成物の基準の酸化開始温度(OOT)試験の結果である。
図5-4】図5-4は、例示的な組成物の基準の酸化開始温度(OOT)試験の結果である。
図6A図6Aは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6B図6Bである。は、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6C図6Cは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6D図6Dは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6E図6Eは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6F図6Fは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6G図6Gは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6H図6Hは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6I図6Iは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6J図6Jは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6K図6Kは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
図6L図6Lは、例示的な組成基準の酸化開始温度(OOT)試験に対応するデータである。
【外国語明細書】