(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014758
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電力コンバーターにおけるリンギングの選択的減衰
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023107941
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】63/391,099
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/142,485
(32)【優先日】2023-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501315784
【氏名又は名称】パワー・インテグレーションズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【弁理士】
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクラム バラクリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】エング ヒュー クエク
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730BB43
5H730DD04
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD31
5H730FD41
5H730FG01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不連続伝導モード中における共振リンギングを減衰させる電力コンバーター及び減衰方法を提供する。
【解決手段】電力コンバーター100は、電力コンバーターが不連続伝導モードであるとき、結合インダクタ106といったエネルギー伝達要素の磁気インダクタンスにより生成され、また、二次スイッチ122のスイッチ静電容量により生成される共振リンギングに対応したエネルギーを放散させる放散要素150に結合された減衰回路139を含む。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線と二次巻線と順電圧ノードと出力電圧ノードとを含むエネルギー伝達要素と、
前記一次巻線に結合された、および基準グランドに結合された一次スイッチであって、非伝導状態とスイッチ静電容量とをもつ前記一次スイッチと、
前記順電圧ノードに結合された放散要素と、
前記二次巻線に結合された二次制御装置であって、前記二次制御装置が、
非伝導状態をもつ二次スイッチと、
前記一次スイッチと前記二次スイッチとが前記非伝導状態であることに応答して減衰電流を選択的に生成するために前記放散要素に結合された減衰回路と、
を備える、前記二次制御装置と、
を備え、
前記放散要素が、前記減衰電流を受信し、それに応答して、前記エネルギー伝達要素の磁気インダクタンスにより、および前記スイッチ静電容量により生成された共振リンギングに対応したエネルギーを放散させる、
電力コンバーター。
【請求項2】
前記減衰回路が、前記一次スイッチと前記二次スイッチとが前記非伝導状態であること、および、前記順電圧ノードにおける電圧が前記出力電圧ノードにおける電圧より高いことに応答して前記減衰電流を選択的に生成するように更に結合された、
請求項1に記載の電力コンバーター。
【請求項3】
前記減衰回路が、
前記順電圧ノードにおける前記電圧が前記出力電圧ノードにおける前記電圧より高いときに有効化信号を生成するために前記エネルギー伝達要素に結合された順電圧ディテクター回路と、
タイミング回路と、
減衰有効化信号を生成するために前記順電圧ディテクター回路に、および前記タイミング回路に結合された減衰駆動回路と、
前記減衰有効化信号を受信するように結合された減衰スイッチと、
を備える、
請求項2に記載の電力コンバーター。
【請求項4】
前記減衰回路が、前記放散要素に結合された、
請求項1に記載の電力コンバーター。
【請求項5】
前記減衰回路が、前記二次巻線の負の端子と基準グランドとの間に結合された、
請求項1に記載の電力コンバーター。
【請求項6】
前記減衰回路が、前記二次巻線の負の端子とスイッチング式電源のバイパス端子との間に結合された、
請求項1に記載の電力コンバーター。
【請求項7】
エネルギー伝達要素におけるリンギングを減衰させる方法であって、前記方法が、
前記エネルギー伝達要素を含む電力コンバーターの不連続伝導モードを検出することと、
前記エネルギー伝達要素の二次巻線における電圧と前記エネルギー伝達要素の出力電圧とを比較することと、
減衰電流を生成することと、
前記リンギングにおけるエネルギーを放散させることと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記減衰電流を生成するステップが、結合インダクタの前記二次巻線における前記電圧が前記エネルギー伝達要素の前記出力電圧より高いことに応答して減衰電流を生成することを更に含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
一次巻線と二次巻線と順電圧ノードと出力電圧ノードとを含むエネルギー伝達要素と、
前記一次巻線に結合された、および基準グランドに結合された一次スイッチであって、非伝導状態とスイッチ静電容量とをもつ前記一次スイッチと、
前記順電圧ノードに結合された放散要素と、
前記二次巻線に結合された二次制御装置であって、前記二次制御装置が、
非伝導状態をもつ二次スイッチと、
前記一次スイッチと前記二次スイッチとが前記非伝導状態であること、および、前記順電圧ノードにおける電圧が前記出力電圧ノードにおける電圧より高いことに応答して減衰電流を選択的に生成するように構成された、前記放散要素に結合された減衰回路と、
を備える、前記二次制御装置と、
を備え、
前記放散要素が、前記減衰電流を受信し、それに応答して、前記エネルギー伝達要素の磁気インダクタンスにより、および前記スイッチ静電容量により生成された共振リンギングに対応したエネルギーを放散させる、
電力コンバーター。
【請求項10】
前記減衰回路が、
前記エネルギー伝達要素に結合された、および、前記順電圧ノードにおける前記電圧が前記出力電圧ノードにおける前記電圧より高いときに有効化信号を生成するように構成された、順電圧ディテクター回路と、
タイミング回路と、
減衰有効化信号を生成するために前記順電圧ディテクター回路に、および前記タイミング回路に結合された減衰駆動回路と、
前記減衰有効化信号を受信するように結合された減衰スイッチと、
を備える、
請求項9に記載の電力コンバーター。
【請求項11】
前記減衰回路が、前記放散要素に結合された、
請求項9に記載の電力コンバーター。
【請求項12】
エネルギー伝達要素におけるリンギングを減衰させる方法であって、前記方法が、
前記エネルギー伝達要素を含む電力コンバーターの不連続伝導モードを検出することと、
前記エネルギー伝達要素の二次巻線における電圧と前記エネルギー伝達要素の出力電圧とを比較することと、
結合インダクタの前記二次巻線における前記電圧が前記エネルギー伝達要素の前記出力電圧より高いとき、減衰電流を生成することと、
前記リンギングにおけるエネルギーを放散させることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[1] 本出願は、同文献の全体が参照により組み込まれる2022年7月21日に出願された米国仮特許出願第63/391,099号の利益を主張する。
【0002】
[2] 本発明は概して、電力コンバーターを制御することに関し、特に、不連続モード中における共振リンギングに関する。更に、より具体的には、本発明は、共振リンギングを減衰させることに関する。
【背景技術】
【0003】
[3] フライバックコンバーターは、低電力および中電力用途における電源のための一般的な回路トポロジーである。フライバックコンバーターは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、DVDプレーヤーおよびセットトップボックスを包含する広範囲の電子デバイスに給電するために使用される。フライバックコンバーターは、不連続伝導モード(DCM:discontinuous conduction mode)および連続伝導モード(CCM:continuous conduction mode)という2つの別個の動作モードをもつスイッチング式電源である。DCMでは、エネルギー伝達要素、典型的には結合インダクタは、各スイッチング周期中に、その蓄積されたエネルギーをゼロまで減少させられるようにする。結合インダクタは、少なくとも2つの巻線をもつインダクタである。典型的には、フライバックコンバーターでは、一方の巻線が入力(一次)巻線であり、他方が出力(二次的)巻線である。CCMでは、巻線における電流からのエネルギーが各スイッチング周期の全体中にエネルギー伝達要素に蓄積される。
【0004】
[4] DCMでは、一次巻線と二次巻線とのいずれも電力変換に寄与する電流を伝導しない不感時間が存在する。不感時間中、典型的には、結合インダクタの巻線にかかる電圧の共振リンギングとも呼ばれる減衰振動が存在する。共振リンギングは結合インダクタの励磁インダクタンスと一次スイッチノードにおける寄生容量との間の相互作用により生成される。このDCMリンギングは典型的には400kHzから1.2MHzであり、および、このような信号は望ましくないノイズであると考えられる、および規制機関により制限された周波数帯域の中にある。コンバーターにより生成された電気的ノイズは、物理的回路または寄生容量を介して入力電力線上で別のデバイスに伝導され得る。したがって、DCMリンギングの大きさは管理されなければならない。
【発明の概要】
【0005】
[5] 以下の図を参照しながら、本発明の非限定的かつ非網羅的な実施形態が説明される。異なる図の中の同様の参照符号は、別段の指定がない限り同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[6]
図1は、従来技術の場合の不連続伝導モード(DCM)中における、フライバックコンバーターにおけるエネルギー伝達要素の各巻線を通る電流を示す。
【
図2A】[7]
図2Aは、本発明の教示による、リンギングを減衰させるために選択的に有効化される回路を使用するフライバック構成による電力コンバーターの例示的な機能ブロック図を示す。示される例では、ダイオードが受動二次スイッチとして機能する。
【
図2B】
図2Bは、制御回路とともに電力スイッチを含む集積回路を含む、
図2Aに示されるフライバック構成による電力コンバーターの回路図を示す。
【
図3A】[8]
図3Aは、本発明の教示による、リンギングを減衰させるために選択的に有効化される回路を使用するフライバック構成による電力コンバーターの例示的な機能ブロック図を示す。示される例では、同期整流器が能動二次スイッチとして機能する。
【
図3B】
図3Bは、制御回路とともに電力スイッチを含む集積回路を含む
図3Aに示されるフライバック構成による電力コンバーターの回路図を示す。
【
図4】[9]
図4は、例示的な電力コンバーターにおいて観測される一次駆動信号、二次駆動信号、減衰有効化信号、スイッチ電流、およびスイッチ電圧の例示的な波形を示す例示的なタイミング図を示す。時間インターバルt
0からt
4は、減衰を伴わない不連続伝導モード(DCM)動作を示す。時間インターバルt
5からt
10は、減衰を伴う不連続伝導モード(CCM)動作を示す。
【
図5】[10]
図5は、本発明の教示による、減衰回路の1つの例示的な判断工程のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[11] 図面中の複数の図にわたり、対応する参照符号が対応するコンポーネントを示す。当業者は、図中の要素が簡潔かつ明確であるように描かれること、および、一定の縮尺で描かれているとは限らないことを理解する。例えば、図中の幾つかの要素の寸法は、本発明の様々な実施形態をより理解しやすくするために、他の要素より誇張される場合がある。更に、市販に適した実施形態において有用なまたは必要な、一般的だが良く理解される要素は、多くの場合、本発明に係るこれらの様々な実施形態の図が見づらくならないように図示されていない。
【0008】
[12] 以下の説明では、本発明を十分に理解してもらうために、多くの特定の詳細事項が記載される。しかし、本発明を実施するために特定の詳細事項が使用されるとは限らないことが当業者に明らかである。他の例を挙げると、よく知られた材料または方法については、本発明が理解しにくくなるのを防ぐために、詳細には説明されていない。
【0009】
[13] 本明細書中での、「一実施形態」、「実施形態」、「一例」、または「例」についての言及は、実施形態または例との関連で説明される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所における「一実施形態において」、「実施形態において」、「一例」、または「例」といった表現の使用は、すべてが同じ実施形態または例に関連するとは限らない。更に、特定の特徴、構造、または特性が、1つまたは複数の実施形態または例において、任意の適切な組み合わせ、および/または部分的組み合わせで組み合わされてもよい。特定の特徴、構造、または特性は、説明される機能を提供する集積回路、電子回路、結合論理回路、または他の適切なコンポーネントに含まれてもよい。加えて、本明細書とともに提供される図が当業者への説明を目的としていること、および図面が一定の縮尺で描かれているとは限らないことが理解される。
【0010】
[14] 例示を目的として、以下の説明は、電力コンバーターが電池駆動式製品にエネルギーを提供することを目的として出力電圧および電流を提供するために使用され得ることについて議論していることに留意されたい。しかし、本発明が概して任意の電力コンバーターに適用され得ることが理解される。
【0011】
[15] 本明細書において説明されている様々な例において、教示は、共振リンギングが検出された後、例えば、二次巻線における電流がゼロまで減少し、および、二次スイッチがオフに切り替えられた後、スイッチング式電源の共振回路におけるエネルギーを減らすことにより伝導されるEMIを減らすことに関する。共振回路は、結合インダクタのインダクタンス、および、その巻線の端部における有効静電容量により形成される。支配的な静電容量は典型的には、一次スイッチに接続されたノードに関連する。この一次スイッチ静電容量CPS120は、結合インダクタ106の内部にある自然な静電容量、および電力スイッチ116の自然な内部静電容量を含み得る。静電容量CPS120は、ノイズをフィルタリングするために、およびスイッチング電圧の遷移を遅くするために回路の様々な部分に意図的に配置された独立したコンデンサを更に表し得る。
【0012】
[16]
図1は、従来技術の不連続伝導モード(DCM)中におけるフライバックコンバーターにおけるエネルギー伝達要素の各巻線を通る電流を示す。
【0013】
[17] t0からt1までの時間インターバル中、コンバーターの一次側では、一次スイッチがオンであり、入力電圧源から一次巻線を通ってグランドまで一定の傾きでドレイン電流IDを伝導する。ドレイン電流IDは所望の電流レベルに到達するまで増加し、到達した時点で一次制御装置が一次スイッチをオフに切り替える。ドレイン電流IDが増加するにつれて、エネルギーが結合インダクタに蓄積される。このインターバル中にコンバーターの二次側では、二次巻線にかかる電圧が二次スイッチを非伝導状態にする。
【0014】
[18] 時間インターバルt1からt2中に、一次スイッチがオフに切り替えられ、結合インダクタに蓄積されたエネルギーが二次巻線における電流により送達され、二次スイッチを伝導状態にする。二次電流が線形に減衰する。DCMでは、動作のこの時間インターバルは、二次電流をゼロまで減衰させるほど十分に長い。
【0015】
[19] DCMでは、出力がより多くのエネルギーを要求しないので、一次電流と二次電流との両方がゼロである「アイドル期間」または不感時間が存在する。このアイドル期間後に、電力変換の新しいサイクルをトリガーするために、スイッチが再度オンに切り替わる。このアイドル期間中に、結合インダクタの励磁インダクタンスと一次スイッチノードにおける寄生容量に蓄積されたエネルギーとの間の相互作用により共振リンギングが発生する。
【0016】
[20] DCMにおける電力コンバーターは、共振リンギングが完全に減衰するほど十分に長い不感時間をもち得、例えばVDSがVinと同等になる。不感時間中の共振リンギングは、許容される大きさが制限される例えば400kHzから1.2MHzといった伝導されるEMI帯域内であり得る。高周波リンギングは、ドレイン対ソース電圧VDS(例えば一次スイッチにかかる電圧)を増加させる。
【0017】
[21] 時間インターバルt0からt1中、一次スイッチが導通しており、一次スイッチにかかる電圧VDSは実質的にゼロである。時間インターバルt1からt2中、二次側におけるダイオード(または同期整流器)が伝導しているとき、一次巻線にかかる電圧は、おおむね入力電圧(VIN)に、一次巻線に反射された出力電圧VOを加えたものになる。すなわち、
VP=nVS
および
VS≒VO
である。nは一次巻線の巻数を二次巻線の巻数で割ったものである。しかし、上述のとおり、一次スイッチのドレイン電圧におけるリンギングが、それが以下のように安定する前に存在する。
VIN+nVO
【0018】
[22] 二次スイッチがオフに切り替わった後、結合インダクタのインダクタンスとドレインの寄生容量とが、一次巻線および二次巻線に高周波振動をもたらす。本教示では、二次スイッチをオフに切り替えた直後に共振リンギングを減衰させることが、リンギングにおけるエネルギーを放散させる。
【0019】
[23]
図2Aは、本発明の教示による、リンギング電圧の大きさおよび持続期間を小さくするための減衰スイッチと減衰駆動回路とを使用するフライバック構成による電力コンバーターの例示的な機能ブロック図を示す。
図2Bは、制御回路とともに電力スイッチを含む集積回路を含む
図2Aに示されるフライバック構成による電力コンバーターの回路図を示す。示される例では、フライバック構成による電力コンバーター100は二次スイッチとしてダイオードを使用する。
【0020】
[24] 電力コンバーター100は、例えば電池駆動式製品といった電子デバイスにエネルギーを提供するために使用され得る。破線により示される有効一次スイッチ静電容量CPS120は、電力スイッチ116にまたがって結合された全ての静電容量を表す。一次スイッチ静電容量CPS120は、例えば結合インダクタ106といったエネルギー伝達要素の内部における自然な静電容量、および電力スイッチ116の自然な内部静電容量を含み得る。一次スイッチ静電容量CPS120は、ノイズをフィルタリングするために、およびスイッチング電圧の遷移を遅くするために回路の様々な部分に意図的に配置された独立したコンデンサを更に表し得る。
【0021】
[25] 電力コンバーター100は、一次制御装置134と二次制御装置132とを更に含む。一次制御装置134が一次スイッチ116のスイッチングを制御するのに対し、二次制御装置132は減衰スイッチ138のスイッチング、および例えば抵抗器といった放散要素150を制御する。一次制御装置134および二次制御装置132は、ガルバニック絶縁された通信リンク133を介して通信し得る。
【0022】
[26] スイッチとして概略的に表されているが、減衰スイッチ138は、例えば金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:metal-oxide semiconductor field effect transistor)といった伝導率変調デバイスである。減衰スイッチ138は、順電圧ノード114と例えば基準グランドといったより低い電位のノードとの間で減衰電流を選択的に伝導するように結合されている。
【0023】
[27] エネルギー伝達要素106は、一次巻線106Aと二次巻線106Bとを含む。一次巻線にかかる電圧+VPはノード112からノード111に向かう。二次巻線にかかる電圧+VSは出力電圧ノード113から順電圧ノード114に向かう。
【0024】
[28] 一次制御装置134および二次制御装置132は、制御装置130として示されるハイブリッド集積回路とモノリシック集積回路とのいずれかとして製造される集積回路の一部として形成され得る。一例において、一次スイッチ116は、制御装置130とともに1つの集積回路パッケージに集積されてもよい。別の例では、減衰スイッチ138は、制御装置130とともに1つの集積回路パッケージに集積され得る。一次制御装置と二次制御装置との両方が1つの制御装置パッケージに含まれる必要はなく、別々の制御装置パッケージに実装されてもよいことが理解されなければならない。更に、一次制御装置134および二次制御装置132は、別の集積回路として形成されてもよい。
【0025】
[29] 二次制御装置132は、選択的に有効化される減衰回路139と出力調節制御部146とを含む。出力調節制御部146は、フライバックコンバーターの機能を管理するために使用される。
【0026】
[30] 選択的に有効化される減衰回路139は、減衰駆動回路140、順電圧ディテクター回路144、およびタイミング回路148を含む。順電圧ディテクター回路144は巻線検出結果WSを受信し、二次側の初期共振リンギングを特定し、それに応答して、減衰駆動回路140を有効化する。一例において、有効化信号ENはデジタル信号であって、そのデジタル信号では、有効化信号ENにおける立ち上がりエッジが、減衰スイッチ138がオンに切り替わることを可能にする。
【0027】
[31] 有効化されたとき、減衰駆動回路140および減衰スイッチ138は、二次スイッチ122がオフに切り替えられて共振リンギングが始まった直後、放散要素150においてエネルギーを放散させるために使用される減衰電流IDAMPを生成する。
【0028】
[32] タイミング回路146は、共振リンギングを減衰させるために減衰駆動回路140がオンに切り替えられる持続期間を特定する。これらの期間は、出力電流I
O、入力電圧V
IN、または、一次駆動信号P
DRのオンセクションと、その後の二次駆動信号S
DRの第2のオンセクションとの間の時間長の値に依存する。これらのパラメータは巻線検出結果WSから推定され得る。例として、入力電圧V
INは、二次巻線にかかる電圧(例えば
図2AにおけるFWDピン)を使用して検出され得る。入力電圧V
INが上昇するにつれて、減衰駆動回路140が有効化される持続期間も長くなり得、逆も同様である。
【0029】
[33]
図3Aは、本発明の教示による、共振回路のリンギングを減衰させるために減衰スイッチと減衰駆動回路とを使用するフライバック構成による電力コンバーターの例を示す。
図3Bは、制御回路とともに電力スイッチを含む集積回路を含む
図3Aに示されるフライバック構成による電力コンバーターの回路図を示す。
【0030】
[34] 示される例では、フライバック構成による電力コンバーター100は、出力整流のために二次スイッチとして同期整流器(SR:synchronous rectifier)122を使用する。
【0031】
[35] 電力コンバーター100は、一次制御装置134と二次制御装置132とを更に含む。一次制御装置134が一次スイッチ116のスイッチングを制御するのに対し、二次制御装置132は、二次スイッチ122、および、減衰スイッチ138のスイッチング、および、例えば抵抗器といった放散要素150を制御する。一次制御装置134および二次制御装置132は、ガルバニック絶縁された通信リンク133を介して通信し得る。二次スイッチ122は、同期整流器122として例示され得る。一次制御装置134および二次制御装置132は、ガルバニック絶縁された通信リンク133を介して通信し得る。一次制御装置134および二次制御装置132は、上述のように製造され得る。
【0032】
[36] 二次制御装置132は、選択的に有効化される減衰回路139と出力調節制御部146とを含む。出力調節制御部146は、フライバックコンバーターの機能を管理するために使用される。
【0033】
[37] 示される例では、二次制御装置は、二次スイッチ122を制御するSR駆動回路152を含む。SR駆動回路152は、有効化信号ENに応答して駆動信号SDRを生成し得る。駆動信号SDRは、同期整流器122のオン切り替え遷移とオフ切り替え遷移とを制御し得る。駆動信号SRは、論理ハイセクションおよび論理ローセクションの長さが変化するデジタル波形である。駆動信号SDRが論理ハイであるとき、二次スイッチ122がオンに切り替えられ、または伝導状態になる。例示的に、一次スイッチ116がオンである間に例えば結合インダクタ106といったエネルギー伝達要素に蓄積されたエネルギーが電力コンバーター100の出力に伝達される(例えば、出力コンデンサCO124および負荷126に伝達される)ように、一次スイッチ116がオフに切り替えられた後、二次スイッチ122がオンに切り替わるように制御される。この例では、二次巻線110における電流は、出力電圧ノード113から離れて順電圧ノード114に入る方向である。
【0034】
[38]
図4は、減衰を伴わない、および減衰を伴う例示的な電力コンバーターにおいて観測される、一次駆動信号P
DR、二次駆動信号S
DR、有効化信号、一次スイッチ電流I
D、順電圧、および一次スイッチ電圧V
DSの例示的な波形の信号挙動を示す例示的なタイミング
図400を示す。時間インターバルt
0からt
4は、減衰を伴わない不連続伝導モード(DCM)動作を示す。時間インターバルt
5からt
10は、減衰を伴う不連続伝導モード(DCM)動作を示す。
【0035】
[39] 時間インターバルt1からt2中、一次駆動信号PDRは一次スイッチを伝導モードにする。一次スイッチにかかる電圧VDSは無視できる程度である。二次スイッチ122は伝導しておらず、順電圧はVOUT+VP/nであり、VP/nは一次巻線にかかる電圧を結合インダクタにおける巻線の巻数比nで割ったものである。巻数比は、二次巻線の巻数に対する一次巻線の巻数として規定される。
【0036】
[40] 時間インターバルt2からt3中、二次側における同期整流器が(二次駆動信号SDRにより示されるように)伝導状態であるとき、一次巻線にかかる電圧VPは入力電圧(Vi)に一次側に反射された出力電圧VOを加えたものとなる。順電圧は、同期整流器を通した電圧降下と同等である。
【0037】
[41] 時間インターバルt3からt4中、一次駆動信号PDRと二次駆動信号SDRとのどちらもアサートされない。電力コンバーターは不連続伝導モードである。ドレイン電圧VDSにまたがる共振リンギングが存在する。共振リンギングは、順電圧ノードに伝達される。
【0038】
[42] 時間インターバルt5からt10は、減衰を伴うDCM動作を例示している。
【0039】
[43] 時間インターバルt5からt6中、一次駆動信号PDRは一次スイッチを伝導モードにする。二次スイッチは伝導しておらず、一次スイッチにかかる電圧VDSは無視できる程度である。
【0040】
[44] 時間インターバルt6からt7中、(二次駆動信号SDRにより示されるように)二次側における同期整流器が伝導しているとき、一次スイッチにかかる電圧VDSは入力電圧(VIN)に一次側に反射された出力電圧VORを加えたものであり、および一次スイッチにまたがるリンギングが存在する。一次巻線にかかる電圧は、一次側に反射された出力電圧VOである。
【0041】
[45] 時間インターバルt7からt8中、二次スイッチがオフに切り替えられた直後、共振回路がリンギングし始める。
【0042】
[46] 時間インターバルt8からt9中、一次スイッチにおけるリンギングの開始を示す状態が検出されたとき、順電圧ディテクターが減衰駆動回路にENを送信する。実施形態において、その状態とは、VFWDがVOより高いときである。減衰駆動回路は、減衰電流IDAMPを生成する減衰スイッチに減衰有効化D_EN信号を送信する。アサートされたEN信号の持続期間は、タイミング回路および順電圧ディテクター回路により特定される。
【0043】
[47] 時間インターバルt9からt10中、EN信号がアサート解除されたとき、一次スイッチにおける共振回路における静電容量が放電され、以て、順電圧ノードに示されている後続のリンギングを低減する。
【0044】
[48]
図5は、減衰回路139の機能を示すフローチャート500である。ステップ510では、電力コンバーターがDCMであるか否かが判定される。yesである場合、ステップ515で、V
FWDがV
OUTより高いか否かが判定される。yesである場合、ステップ520では、減衰有効化D_EN信号がアサートされ、減衰スイッチが導通している。結合インダクタがエネルギーを蓄積し始める。ステップ525では、減衰有効化D_EN信号がアサート解除され、減衰スイッチが非伝導状態にされる。一次スイッチにおける共振回路における静電容量が放電され、以て、後続の共振リンギングを低減させる。
【0045】
[49] 本発明に関して示される例についての上述の説明は、要約で説明される事項を含め、網羅的であることを意図したものではなく、開示される形態そのものへの限定であることを意図したものでもない。本発明の特定の実施形態および例が本明細書において例示を目的として説明されるが、本発明のより広い趣旨および範囲から逸脱せずに様々な同等な変更が可能である。実際、具体的で例示的な電圧、電流、周波数、出力範囲値、時間などが説明のために提示されること、および、本発明の教示による他の実施形態および例において他の値が使用されてもよいことが理解される。
【0046】
[50] 本発明は請求項において規定されるが、本発明が代替的に以下の例により規定され得ることが理解されなければならない。
【0047】
[51] 例1.
一次巻線と二次巻線と順電圧ノードと出力電圧ノードとを含むエネルギー伝達要素と、
一次巻線に結合された、および基準グランドに結合された、非伝導状態とスイッチ静電容量とをもつ一次スイッチと、
順電圧ノードに結合された放散要素と、
二次巻線に結合された二次制御装置であって、二次制御装置が、
非伝導状態をもつ二次スイッチと、
一次スイッチと二次スイッチとが非伝導状態であることに応答して減衰電流を選択的に生成するために放散要素に結合された減衰回路と、
を備える、二次制御装置と、
を備え、
放散要素が、減衰電流を受信し、それに応答して、エネルギー伝達要素の磁気インダクタンスにより、およびスイッチ静電容量により生成された共振リンギングに対応したエネルギーを放散させる、
電力コンバーター。
【0048】
[52] 例2.
減衰回路が、一次スイッチと二次スイッチとが非伝導状態であること、および、順電圧ノードにおける電圧が出力電圧ノードにおける電圧より高いことに応答して減衰電流を選択的に生成するように更に結合されている、
例1に記載の電力コンバーター。
【0049】
[53] 例3.
減衰回路が、
順電圧ノードにおける電圧が出力電圧ノードにおける電圧より高いときに有効化信号を生成するためにエネルギー伝達要素に結合された順電圧ディテクター回路と、
タイミング回路と、
減衰有効化信号を生成するために順電圧ディテクター回路に、およびタイミング回路に結合された減衰駆動回路と、
減衰有効化信号を受信するように結合された減衰スイッチと、
を備える、
例2に記載の電力コンバーター。
【0050】
[54] 例4.
減衰回路が、放散要素に結合された、
例1に記載の電力コンバーター。
【0051】
[55] 例5.
減衰回路が、二次巻線の負の端子と基準グランドとの間に結合された、
例1に記載の電力コンバーター。
【0052】
[56] 例6.
減衰回路が、二次巻線の負の端子とスイッチング式電源のバイパス端子との間に結合された、
例1に記載の電力コンバーター。
【0053】
[57] 例7.
エネルギー伝達要素におけるリンギングを減衰させる方法であって、方法が、
エネルギー伝達要素を含む電力コンバーターの不連続伝導モードを検出することと、
エネルギー伝達要素の二次巻線における電圧とエネルギー伝達要素の出力電圧とを比較することと、
減衰電流を生成することと、
リンギングにおけるエネルギーを放散させることと、
を含む、方法。
【0054】
[58] 例8.
減衰電流を生成するステップが、結合インダクタの二次巻線における電圧がエネルギー伝達要素の出力電圧より高いことに応答して減衰電流を生成することを更に含む、
例7に記載の方法。
【0055】
[59] 更なる実施形態:
【0056】
本発明は添付の請求項において規定されるが、本発明が以下の実施形態に従って更に(代替的に)規定され得ることが理解されなければならない。
【0057】
1.
一次巻線と二次巻線と順電圧ノードと出力電圧ノードとを含むエネルギー伝達要素と、
一次巻線に結合された、および基準グランドに結合された、非伝導状態とスイッチ静電容量とをもつ一次スイッチと、
順電圧ノードに結合された放散要素と、
二次巻線に結合された二次制御装置であって、二次制御装置が、
非伝導状態をもつ二次スイッチと、
一次スイッチと二次スイッチとが非伝導状態であることに応答して減衰電流を選択的に生成するために放散要素に結合された減衰回路と、
を備える、二次制御装置と、
を備え、
放散要素が、減衰電流を受信し、それに応答して、エネルギー伝達要素の磁気インダクタンスにより、およびスイッチ静電容量により生成された共振リンギングに対応したエネルギーを放散させる、
電力コンバーター。
【0058】
2.
減衰回路が、一次スイッチと二次スイッチとが非伝導状態であること、および、順電圧ノードにおける電圧が出力電圧ノードにおける電圧より高いことに応答して減衰電流を選択的に生成するように更に結合された、
実施形態1に記載の電力コンバーター。
【0059】
3.
減衰回路が、
順電圧ノードにおける電圧が出力電圧ノードにおける電圧より高いときに有効化信号を生成するためにエネルギー伝達要素に結合された順電圧ディテクター回路と、
タイミング回路と、
減衰有効化信号を生成するために順電圧ディテクター回路に、およびタイミング回路に結合された減衰駆動回路と、
減衰有効化信号を受信するように結合された減衰スイッチと、
を備える、
実施形態2に記載の電力コンバーター。
【0060】
4.
減衰回路が、放散要素に結合された、
実施形態1に記載の電力コンバーター。
【0061】
5.
減衰回路が、二次巻線の負の端子と基準グランドとの間に結合された、
実施形態1に記載の電力コンバーター。
【0062】
6.
減衰回路が、二次巻線の負の端子とスイッチング式電源のバイパス端子との間に結合された、
実施形態1に記載の電力コンバーター。
【0063】
7.
エネルギー伝達要素におけるリンギングを減衰させる方法であって、方法が、
エネルギー伝達要素を含む電力コンバーターの不連続伝導モードを検出することと、
エネルギー伝達要素の二次巻線における電圧とエネルギー伝達要素の出力電圧とを比較することと、
減衰電流を生成することと、
リンギングにおけるエネルギーを放散させることと、
を含む、方法。
【0064】
8.
減衰電流を生成するステップが、結合インダクタの二次巻線における電圧がエネルギー伝達要素の出力電圧より高いことに応答して減衰電流を生成することを更に含む、
実施形態7に記載の方法。
【0065】
9.
一次巻線と二次巻線と順電圧ノードと出力電圧ノードとを含むエネルギー伝達要素と、
一次巻線に結合された、および基準グランドに結合された、非伝導状態とスイッチ静電容量とをもつ一次スイッチと、
順電圧ノードに結合された放散要素と、
二次巻線に結合された二次制御装置であって、二次制御装置が、
非伝導状態をもつ二次スイッチと、
一次スイッチと二次スイッチとが非伝導状態であること、および、順電圧ノードにおける電圧が出力電圧ノードにおける電圧より高いことに応答して減衰電流を選択的に生成するように構成された放散要素に結合された減衰回路と、
を備える、二次制御装置と、
を備え、
放散要素が、減衰電流を受信し、それに応答して、エネルギー伝達要素の磁気インダクタンスにより、およびスイッチ静電容量により生成された共振リンギングに対応したエネルギーを放散させる、
電力コンバーター。
【0066】
10.
減衰回路が、
エネルギー伝達要素に結合された、および、順電圧ノードにおける電圧が出力電圧ノードにおける電圧より高いときに有効化信号を生成するように構成された順電圧ディテクター回路と、
タイミング回路と、
減衰有効化信号を生成するために順電圧ディテクター回路に、およびタイミング回路に結合された減衰駆動回路と、
減衰有効化信号を受信するように結合された減衰スイッチと、
を備える、
実施形態9に記載の電力コンバーター。
【0067】
11.
減衰回路が、放散要素に結合された、
実施形態9に記載の電力コンバーター。
【0068】
12.
エネルギー伝達要素におけるリンギングを減衰させる方法であって、方法が、
エネルギー伝達要素を含む電力コンバーターの不連続伝導モードを検出することと、
エネルギー伝達要素の二次巻線における電圧とエネルギー伝達要素の出力電圧とを比較することと、
結合インダクタの二次巻線における電圧がエネルギー伝達要素の出力電圧より高いとき、減衰電流を生成することと、
リンギングにおけるエネルギーを放散させることと、
を含む、方法。
【外国語明細書】