(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147594
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】基板、高周波回路、アンテナ装置、無線通信装置、および基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01P 5/02 20060101AFI20241008BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241008BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01P5/02 603L
H05K1/02 J
H05K3/46 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106422
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2021026317の分割
【原出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】佐野 誠
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、高周波信号の透過特性の劣化を低減し、基板の長期的な信頼性を向上させる基板を提供する。
【解決手段】第1貫通穴105を有する第1誘電体基板101aと、第1導体ビア103aを有する第2誘電体基板101bと、第1、第2誘電体基板の間に設けられる第1信号線102aと、第2導体ビア103bを有する第3誘電体基板101cと、第2と第3誘電体基板の間に設けられ、第1および第2導体ビアからは離れている第1平面導体と、第4誘電体基板101dと、第3と第4誘電体基板の間に設けられる第2信号線102bを備え、第1貫通穴105における第1内壁の少なくとも一部は導体に覆われておらず、第1貫通穴105および第1導体ビア103aは第1方向で一部重なり、第1および第2導体ビアは第1方向で一部重なり、第2導体ビア103bおよび第2信号線102bは第1方向で一部重なる。
【選択図】
図1(A)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面を有し、前記第1面から前記第2面へ貫通する第1貫通穴を有する第1誘電体基板と、
第3面と第4面を有し、前記第3面と前記第4面とを結ぶ方向に設けられた第1導体ビアを有する第2誘電体基板と、
前記第1誘電体基板および前記第2誘電体基板の間に設けられる第1信号線と、
第5面と第6面を有し、前記第5面と前記第6面とを結ぶ方向に設けられた第2導体ビアを有する第3誘電体基板と、
前記第2誘電体基板と前記第3誘電体基板の間に設けられ、前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアからは離れている第1平面導体と、
第4誘電体基板と、
前記第3誘電体基板と前記第4誘電体基板の間に設けられる第2信号線と、
前記第1誘電体基板および前記第2誘電体基板の間に設けられ、前記第1貫通穴および前記第1導体ビアと重なる第1の穴を有する第1接着層と、
前記第2誘電体基板および前記第3誘電体基板の間に設けられ、前記第1導体ビア及び前記第2導体ビアと重なる第2の穴を有する第2接着層と、
前記第3誘電体基板および前記第4誘電体基板の間に設けられる第3接着層と、
を備え、
前記第1貫通穴における前記第1誘電体基板の第1内壁の少なくとも一部は導体に覆われておらず、
前記第1貫通穴および前記第1導体ビアは前記第1誘電体基板と前記第2信号線とを結ぶ第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアは前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第2導体ビアおよび前記第2信号線は前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第1方向において、前記第1導体ビアの導体の一部と前記第3面とは重なり、前記第1導体ビアの導体の他の一部と前記第4面とは重なる、
基板。
【請求項2】
第1面と第2面を有し、前記第1面から前記第2面へ貫通する第1貫通穴を有する第1誘電体基板と、
第3面と第4面を有し、前記第3面と前記第4面とを結ぶ方向に設けられた第1導体ビアを有する第2誘電体基板と、
前記第1誘電体基板および前記第2誘電体基板の間に設けられる第1信号線と、
第5面と第6面を有し、前記第5面と前記第6面とを結ぶ方向に設けられた第2導体ビアを有する第3誘電体基板と、
前記第2誘電体基板と前記第3誘電体基板の間に設けられ、前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアからは離れている第1平面導体と、
第4誘電体基板と、
前記第3誘電体基板と前記第4誘電体基板の間に設けられる第2信号線と、
前記第1誘電体基板および前記第2誘電体基板の間に設けられ、前記第1貫通穴および前記第1導体ビアと重なる第1の穴を有する第1接着層と、
前記第2誘電体基板および前記第3誘電体基板の間に設けられ、前記第1導体ビア及び前記第2導体ビアと重なる第2の穴を有する第2接着層と、
前記第3誘電体基板および前記第4誘電体基板の間に設けられる第3接着層と、
を備え、
前記第1貫通穴における前記第1誘電体基板の第1内壁の少なくとも一部は導体に覆われておらず、
前記第1貫通穴および前記第1導体ビアは前記第1誘電体基板と前記第2信号線とを結ぶ第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアは前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第2導体ビアおよび前記第2信号線は前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第1方向において、前記第2導体ビアの導体の一部と前記第5面とは重なり、前記第2導体ビアの導体の他の一部と前記第6面とは重なる、
基板。
【請求項3】
第1面と第2面を有し、前記第1面から前記第2面へ貫通する第1貫通穴を有する第1誘電体基板と、
第3面と第4面を有し、前記第3面と前記第4面とを結ぶ方向に設けられた第1導体ビアを有する第2誘電体基板と、
前記第1誘電体基板および前記第2誘電体基板の間に設けられる第1信号線と、
第5面と第6面を有し、前記第5面と前記第6面とを結ぶ方向に設けられた第2導体ビアを有する第3誘電体基板と、
前記第2誘電体基板と前記第3誘電体基板の間に設けられ、前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアからは離れている第1平面導体と、
第4誘電体基板と、
前記第3誘電体基板と前記第4誘電体基板の間に設けられる第2信号線と、
前記第1誘電体基板および前記第2誘電体基板の間に設けられ、前記第1貫通穴および前記第1導体ビアと重なる第1の穴を有する第1接着層と、
前記第2誘電体基板および前記第3誘電体基板の間に設けられ、前記第1導体ビア及び前記第2導体ビアと重なる第2の穴を有する第2接着層と、
前記第3誘電体基板および前記第4誘電体基板の間に設けられる第3接着層と、
を備え、
前記第1貫通穴における前記第1誘電体基板の第1内壁の少なくとも一部は導体に覆われておらず、
前記第1貫通穴および前記第1導体ビアは前記第1誘電体基板と前記第2信号線とを結ぶ第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアは前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第2導体ビアおよび前記第2信号線は前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第4面は前記第3面と前記第6面の間にあり、
前記第5面は前記第3面と前記第6面の間にあり、
前記第1方向において、前記第1導体ビアの導体の一部と前記第4面とは重なり前記第1方向において、前記第2導体ビアの導体の一部と前記第5面とは重なり、前記第1方向において、前記第1導体ビアの導体の前記一部と前記第2導体ビアの導体の前記一部とは重なる、
基板。
【請求項4】
前記第1信号線から前記第2信号線へ高周波信号が伝搬される、または前記第2信号線から前記第1信号線へ高周波信号が伝搬される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板。
【請求項5】
前記第1内壁のうち第1面側は導体に覆われ、第2面側は導体に覆われていない
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板。
【請求項6】
前記第1誘電体基板に設けられる第2平面導体をさらに備え、
前記第1信号線は前記第1平面導体および前記第2平面導体の間に設けられる、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板。
【請求項7】
前記第1誘電体基板は、前記第1面と前記第2面とを結ぶ方向に設けられ、前記第2平面導体と電気的に接続される複数の第3導体ビアを有し、
前記第2誘電体基板は、前記第3面と前記第4面とを結ぶ方向に設けられ、前記第1平面導体と電気的に接続される複数の第4導体ビアを有し、
前記複数の第3導体ビアおよび前記複数の第4導体ビアは前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記複数の第3導体ビアまたは前記複数の第4導体ビアの間隔は高周波信号における管内波長の1/2以下である、
請求項6に記載の基板。
【請求項8】
前記第4誘電体基板に第3平面導体をさらに備え、
前記第2信号線は前記第1平面導体および前記第3平面導体の間に設けられる、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の基板。
【請求項9】
前記第3誘電体基板は、前記第5面と前記第6面とを結ぶ方向に設けられ、前記第1平面導体と電気的に接続される複数の第5導体ビアを有し、
前記第4誘電体基板は、第7面と第8面とを結ぶ方向に設けられ、前記第3平面導体と電気的に接続される複数の第6導体ビアを有し、
前記複数の第5導体ビアおよび前記複数の第6導体ビアは前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記複数の第5導体ビアまたは前記複数の第6導体ビアの間隔は高周波信号における管内波長の1/2以下である、
請求項8に記載の基板。
【請求項10】
前記第1信号線と前記第1平面導体との間または前記第1平面導体と前記第2信号線との間に第4平面導体をさらに備え、
前記第4平面導体は前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアからは離れている、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の基板。
【請求項11】
前記第4誘電体基板は、第7面と第8面とを結ぶ方向に設けられる第7導体ビアを有し、
さらに、
第9面と第10面を有し、前記第9面と前記第10面とを結ぶ方向に設けられる第8導体ビアを有する第5誘電体基板と、
前記第4誘電体基板と前記第5誘電体基板の間に設けられ、前記第7導体ビアおよび前記第8導体ビアからは離れている第3平面導体と、
第11面と第12面を有し、前記第11面と前記第12面とを結ぶ方向に設けられる第2貫通穴を有する第6誘電体基板と、
前記第5誘電体基板と前記第6誘電体基板の間に設けられる第3信号線と、を備え、
前記第2貫通穴における前記第6誘電体基板の第2内壁の少なくとも一部は導体に覆われておらず、
前記第2貫通穴および前記第8導体ビアは、前記第5誘電体基板と前記第6誘電体基板とを結ぶ第2方向において少なくとも一部重なり、
前記第7導体ビアおよび前記第8導体ビアは、前記第2方向において少なくとも一部重なり、
前記第2導体ビアおよび前記第7導体ビアは前記第1方向および前記第2方向の少なくとも一方において重ならない、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の基板。
【請求項12】
前記第2内壁のうち前記第10面側は導体に覆われ、前記第9面側は導体に覆われていない
請求項11に記載の基板。
【請求項13】
前記第6誘電体基板に第5平面導体をさらに備え、
前記第3信号線は前記第3平面導体および前記第5平面導体の間に設けられる、
請求項11又は12に記載の基板。
【請求項14】
前記第1平面導体は、前記第1信号線および前記第2信号線間において高周波信号を伝搬するためのスロットを有する、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の基板。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の基板と、
前記第1信号線および第2信号線に伝搬される高周波信号を供給する信号回路と、を備える、
高周波回路。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の基板と、
前記第1信号線または第2信号線から伝搬される高周波信号を放射するアンテナ素子と、
を備える、
アンテナ装置。
【請求項17】
請求項16に記載のアンテナ装置と、
無線通信に用いる無線信号を生成する無線信号回路と、
前記無線信号を高周波信号に変換し、前記第1信号線または第2信号線に供給する変換回路と、
を備える、
無線通信装置。
【請求項18】
第1面と第2面を有し、前記第1面から前記第2面へ貫通する第1貫通穴を有する第1誘電体基板と、
第3面と第4面を有し、前記第3面と前記第4面とを結ぶ方向に設けられた第1導体ビアを有する第2誘電体基板と、
前記第1誘電体基板および前記第2誘電体基板の間に設けられる第1信号線と、
第5面と第6面を有し、前記第5面と前記第6面とを結ぶ方向に設けられた第2導体ビアを有する第3誘電体基板と、
前記第2誘電体基板と前記第3誘電体基板の間に設けられ、前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアからは離れている第1平面導体と、
第4誘電体基板と、
前記第3誘電体基板と前記第4誘電体基板の間に設けられる第2信号線と、
前記第1誘電体基板および前記第2誘電体基板の間に設けられ、前記第1貫通穴および前記第1導体ビアと重なる第1の穴を有する第1接着層と、
前記第2誘電体基板および前記第3誘電体基板の間に設けられ、前記第1導体ビア及び前記第2導体ビアと重なる第2の穴を有する第2接着層と、
前記第3誘電体基板および前記第4誘電体基板の間に設けられる第3接着層と、を積層し、
前記第1貫通穴における前記第1誘電体基板の第1内壁の少なくとも一部は導体に覆われておらず、
前記第1貫通穴および前記第1導体ビアは前記第1誘電体基板と前記第2信号線とを結ぶ第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアは前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第2導体ビアおよび前記第2信号線は前記第1方向において少なくとも一部重なり、
前記第4面は前記第3面と前記第6面の間にあり、
前記第5面は前記第3面と前記第6面の間にあり、
前記第1方向において、前記第1導体ビアの導体の一部と前記第4面とは重なり前記第1方向において、前記第2導体ビアの導体の一部と前記第5面とは重なり、前記第1方向において、前記第1導体ビアの導体の前記一部と前記第2導体ビアの導体の前記一部とは重なる、
基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板、高周波回路、アンテナ装置、無線通信装置、および基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の層を有する基板の内部に形成された信号線間において高周波信号を伝搬させる方法として、基板を貫通する導体ビア(スルーホール)を用いた方法が知られている。しかし、信号線より外部の層における導体ビアと信号線が電気的に接続される、あるいは高周波信号が信号線からこの外部の層における導体ビアにも一部伝搬されることがある。この場合、この外部の層における導体ビアがスタブとなって高周波信号の透過特性が劣化する可能性がある。また、この外部の層における導体ビアを形成せず、貫通穴も設けない場合には、信号線より内部の層における導体ビアに空気が残ることがある。この場合、気圧や温度の変化により残った空気の気圧が変動し、基板を形成する層の一部に剥離または密着する応力が発生し、基板の長期的な信頼性が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-262989号公報
【特許文献2】国際公開第2019/207930号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、高周波信号の透過特性の劣化を低減し、基板の長期的な信頼性を向上させる基板、高周波回路、アンテナ装置、無線通信装置、および基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本実施形態の基板は、第1面と第2面を有し、この第1面からこの第2面を貫通する第1貫通穴を有する第1誘電体基板と、第3面と第4面を有し、この第3面からこの第4面を貫通して設けられる第1導体ビアを有する第2誘電体基板と、前記第1誘電体基板および前記第2誘電体基板の間に設けられる第1信号線と、第5面と第6面を有し、この第5面からこの第6面を貫通して設けられる第2導体ビアを有する第3誘電体基板と、前記第2誘電体基板と前記第3誘電体基板の間に設けられ、前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアからは離れている第1平面導体と、第4誘電体基板と、前記第3誘電体基板と前記第4誘電体基板の間に設けられる第2信号線を備え、前記第1貫通穴における前記第1誘電体基板の第1内壁の少なくとも一部は導体に覆われておらず、前記第1貫通穴および前記第1導体ビアは前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアの少なくとも一方が貫通する第1方向において少なくとも一部重なり、前記第1導体ビアおよび前記第2導体ビアは前記第1方向において少なくとも一部重なり、前記第2導体ビアおよび前記第2信号線は前記第1方向において少なくとも一部重なる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1(A)】第1の実施形態における基板100の立体図。
【
図1(B)】第1の実施形態における基板100のxz断面図。
【
図2(A)】第1の実施形態に適用可能な基板100’の立体図。
【
図2(B)】第1の実施形態に適用可能な基板100’のxz断面図。
【
図2(C)】第1の実施形態に適用可能な基板100”の立体図。
【
図3】第1の実施形態に適用可能な基板110のxz断面図。
【
図4(A)】第1の実施形態に適用可能な基板120の立体図。
【
図4(B)】第1の実施形態に適用可能な基板120のxz断面図。
【
図4(C)】第1の実施形態に適用可能な基板120’の立体図。
【
図5】第1の実施形態に適用可能な基板120Aのxz断面図。
【
図6(A)】第1の実施形態に適用可能な基板120Bの立体図。
【
図6(B)】第1の実施形態に適用可能な基板120Bのxz断面図。
【
図7】第1の実施形態に適用可能な基板120Cのxz断面図。
【
図8】第1の実施形態に適用可能な基板120Dのxz断面図。
【
図9】第1の実施形態に適用可能な基板120Eのxz断面図。
【
図10】第1の実施形態に適用可能な基板120Fのxz断面図。
【
図11(A)】第1の実施形態に適用可能な基板130の立体図。
【
図11(B)】第1の実施形態に適用可能な基板130のxz断面図。
【
図12】第1の実施形態に適用可能な基板140のxz断面図。
【
図13】第1の実施形態に適用可能な基板150のxz断面図。
【
図14】第1の実施形態に適用可能な基板160のxz断面図。
【
図15(A)】第2の実施形態における基板200の立体図。
【
図15(B)】第2の実施形態における基板200のxz断面図。
【
図16】第2の実施形態に適用可能な基板200’のxz断面図。
【
図17】第2の実施形態に適用可能な基板200”のxz断面図。
【
図18(A)】第2の実施形態に適用可能な基板210の立体図。
【
図18(B)】第2の実施形態に適用可能な基板210のxz断面図。
【
図19】基板130、210における高周波信号の透過係数の周波数特性図。
【
図20】第3の実施形態における高周波回路300の構成図。
【
図21】第4の実施形態におけるアンテナ装置400の構成図。
【
図22】第5の実施形態における無線通信装置500の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について図面を参照して説明する。開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1(A)は第1の実施形態における基板100の立体図である。基板100は、誘電体基板101a、101b、101c、101d、信号線102a、102b、導体ビア103a、103b、平面導体104を備える。また、誘電体基板101aには貫通穴105が形成されている。基板100は複数の誘電体基板をそれぞれ形成し、積層することにより形成される。視認性のため、
図1(A)では積層前の基板100について、誘電体基板101a~101dの間の間隔を空けて図示している。図面では、誘電体基板101a~101dを積層する方向をz方向として表している。
図1(B)は、積層後の基板100のxz断面図である。一例として、xz断面図は貫通穴105を通るxz断面図を表す。なお、基板100を多層基板と称することもある。
【0009】
基板100は高周波信号を伝搬する。信号線102aまたは102bから入力された高周波信号は、導体ビア103aおよび103bを経由して、信号線102bまたは102aから出力される。高周波信号は、例えば無線通信やRFID、衛星通信Kuバンドなどに用いる周波数帯の信号であり、例えば数百MHz以上の信号を表す。
【0010】
誘電体基板101a~101dは絶縁体の誘電体基板である。誘電体基板101a~101dの素材の例として、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)、PPE(Poly Phenylene Ether)、樹脂発泡体、液晶ポリマー、COP(シクロオレフィンコポリマー)、ガラスエポキシ、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)、紙フェノール、MgO(酸化マグネシウム)、ガラスなどが挙げられる。PTFEにセラミックフィラーやガラスクロスを混ぜたコンポジット材でもよい。誘電体基板101a~101dの基材や厚さはすべて同じでもよいし、それぞれ異なっていてもよい。誘電体基板101a~101dの表面にソルダーレジストなどの保護層が塗布されていても良い。誘電体基板101a~101dは積層後にネジやクランプで固定されていてもよい。誘電体基板101a~101dの基材がPTFEのように熱可塑性の場合、加熱・加圧して接合させてもよい。
【0011】
なお、誘電体基板101aを第1誘電体基板、誘電体基板101bを第2誘電体基板、誘電体基板101cを第3誘電体基板、誘電体基板101dを第4誘電体基板と称することもある。また、誘電体基板101aの+z方向のxy平面に平行な面をa1面、誘電体基板101aの-z方向のxy平面に平行な面をa2面、誘電体基板101bの+z方向のxy平面に平行な面をb1面、誘電体基板101bの-z方向のxy平面に平行な面をb2面、誘電体基板101cの+z方向のxy平面に平行な面をc1面、誘電体基板101cの-z方向のxy平面に平行な面をc2面、誘電体基板101dの+z方向のxy平面に平行な面をd1面、誘電体基板101aの-z方向のxy平面に平行な面をd2面と称する。a1面を第1面、a2面を第2面、b1面を第3面、b2面を第4面、c1面を第5面、c2面を第6面、d1面を第7面、d2面を第8面と称することもある。
【0012】
信号線102a、102bは高周波信号を伝搬する。すなわち、信号線102aおよび102bは、一方の信号線からもう一方の信号線へ高周波信号を伝搬させるための信号線である。信号線102aは誘電体基板101aおよび101bの間に設けられる。信号線102bは誘電体基板101cおよび101dの間に設けられる。一例として、
図1(A)では信号線102aは誘電体基板101bのb1面上に、信号線102bは誘電体基板101dのd1面上に設けられている。信号線102a、102bの素材は銅、ニッケル、金、銀などである。信号線102a、102bの表面には異なる種類の導体がメッキされていてもよいし、ソルダーレジストやフラックス、半田ラベラーなどが塗布されていてもよい。信号線102a、102bの材質、形状は同じでもよいし、異なっていてもよい。また、信号線102a、102bには、スタブやステップ構造などのインピーダンス整合用の素子が接続されていてもよい。なお、信号線102aを第1信号線、信号線102bを第2信号線と称することもある。
【0013】
導体ビア103a、103bは信号線102aおよび102bの一方からの高周波信号を、もう一方の信号線に伝搬する。すなわち、信号線102aおよび102bの一方に入力された高周波信号は、導体ビア103a、103bを通じてもう一方の信号線へ伝搬される。導体ビア103aは誘電体基板101bのb1面からb2面を貫通して設けられ、導体ビア103bは誘電体基板101cのc1面からc2面を貫通して設けられる。なお、導体ビア103aを第1導体ビア、導体ビア103bを第2導体ビアと称することもある。
図1(A)では導体ビア103a、103bを円筒形状として表しているが、円筒形状以外にも楕円形状、角型形状、少なくとも一部曲線を含む形状など、形状は任意である。
【0014】
信号線102aおよび導体ビア103aは、電気的に接続される、またはキャパシタンスにより高周波信号の伝搬が可能な程度の距離に設けられる。導体ビア103aおよび貫通穴105は、導体ビア103aおよび103bの少なくとも一方が貫通する方向(本実施形態ではz方向)において、少なくとも一部重なっている。以降、導体ビア103aおよび103bの少なくとも一方が貫通する方向を、第1方向と称することもある。導体ビア103aおよび103bは、第1方向において少なくとも一部重なっている。また、導体ビア103bと信号線102bは、第1方向において少なくとも一部重なっている。これにより、貫通穴105の空間と、導体ビア103aの空間と、導体ビア103bの空間が接続される(空気の通り道となる)。これにより、基板100の外部において温度や気圧の変化が生じても、これらの空間内の空気の気圧と基板100の外部の気圧を同程度にすることができ、基板100を形成する層(誘電体基板)の一部に剥離または密着する応力を低減させることができる。結果として、基板100の長期的な信頼性が向上する。
【0015】
平面導体104aは、信号線102a、102bとマイクロストリップ線路を構成する。平面導体104aは、誘電体基板101bと誘電体基板101cの間に設けられる。一例として、
図1(A)では、平面導体104aは誘電体基板101cのc1面に設けられている。平面導体104aの素材は、銅、ニッケル、金、銀などの導体である。平面導体104aの表面に異なる種類の導体がメッキされていてもよい。平面導体104aの表面にソルダーレジストやフラックス、半田ラベラーなどが塗布されていてもよい。平面導体104aの面積は、信号線102aの面積より大きい。また、平面導体104aの面積は、信号線102bの面積より大きい。なお、平面導体104aを第1平面導体104aと称することもある。
【0016】
導体ビア103a、103bと平面導体104aは離れており、電気的に接続されていない。信号線102aと平面導体104aによってマイクロストリップ線路が構成される。同様に、信号線102bと平面導体104aによって、マイクロストリップ線路が構成される。なお、信号線102a、102bの近傍に図示していない導体パターンを追加して、コプレーナ線路やフィンライン線路を構成してもよい。
【0017】
貫通穴105は、誘電体基板101aのa1面からa2面を貫通して設けられる。貫通穴105の形成方法は任意であり、例えばドリルやレーザなどで形成される。
図1(A)では貫通穴105を円筒形状として表しているが、円筒形状以外にも楕円形状、角型形状、少なくとも一部曲線を含む形状など、形状は任意である。また貫通穴105は、途中でベントが設けられていてもよい。
【0018】
貫通穴105の内壁、すなわち貫通穴105が開けられている部分の誘電体基板101aの少なくとも一部は、導体に覆われていない。より詳細には、貫通穴105の内壁は、信号線102aから第1方向において所定の距離以内は導体に覆われていない。この所定の距離は、貫通穴105の直径、導体ビア103aの直径、および信号線102aの幅の少なくとも1つに基づいて定められる。これにより、高周波信号が誘電体基板101aの一部に伝搬される可能性が低減され、貫通穴105がスタブとなる可能性が低減される。結果として、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。なお、貫通穴105を第1貫通穴と称することもあり、貫通穴105の内壁を第1内壁と称することもある。
【0019】
以上、基板100の構成要素を説明した。本実施形態は一例であって、変形例は様々に実装可能である。以下、本実施形態に適用可能な変形例を説明する。以降、本実施形態と同様の構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0020】
(変形例1)
基板100は、誘電体基板101a~101dを積層することにより製造される。誘電体基板101a~101dはそれぞれ製造される。
図1(A)を例とすると、基板100は、+z方向から順番に、貫通穴105を有する誘電体基板101aと、信号線102aと、導体ビア103aが設けられた誘電体基板101bと、平面導体104aと、導体ビア103bが設けられた誘電体基板101cと、信号線102bと、誘電体基板101dとを積層して製造される。誘電体基板101bの製造においてb1面に信号線102aを形成してもよいし、誘電体基板101cの製造においてc1面に平面導体104aを形成してもよいし、誘電体基板101dの製造においてd1面に信号線102bを形成してもよい。
【0021】
(変形例2)
図2(A)は、変形例2における基板100’の立体図である。基板100’は、誘電体基板101a~101dの間を、接着層により接合して積層される。誘電体基板101aと101bの間に接着層106aが設けられ、誘電体基板101aと101bが接合される。誘電体基板101bと101cの間に接着層106bが設けられ、誘電体基板101bと101cが接合される。誘電体基板101cと101dの間に接着層106cが設けられ、誘電体基板101cと101dが接合される。視認性のため、
図2(A)では積層前の基板100’について、誘電体基板101a~101dの間の間隔を空けて図示している。
図2(B)は、積層後の基板100’のxz断面図である。
【0022】
接着層106a~106cは誘電体基板を接合する絶縁体であり、例えばボンディングフィルム、プリプレグが挙げられる。また、接着層106a~106cの少なくとも1つは複数枚の接着層で構成されていてもよい。例えば、接着層106aは2枚の接着層で構成されていてもよい。なお、接着層106aを第1接着層、接着層106bを第2接着層、接着層106cを第3接着層と称することもある。
【0023】
基板100’では、接着層106bによって導体ビア103aと103bとが電気的に接続されない場合があり、接着層106cによって導体ビア103bと信号線102bとが電気的に接続されない場合がある。この場合、直流信号は伝搬しない。しかし、導体ビア103aと103b間のキャパシタンスおよび導体ビア103bと信号線102b間のキャパシタンスによって、高周波信号を伝搬させることができる。なお、キャパシタンスは、接着層を介して対向する導体の面積を大きくすること、および接着層の厚さを薄くすることなどによって増加させることができる。例えば、対向する導体ビア103のランドの面積を大きくする、信号線103の面積を大きくする、接着層106の第1方向における厚さを薄くするなどである。キャパシタンスを増加させることで、高周波信号の透過特性(通過特性とも称される)を向上させることができる。
【0024】
図2(A)において、積層前の基板100’では、接着層106a、106bには貫通穴105、導体ビア103a、103bに対応する穴が開けられていない。しかし、誘電体基板101a~101dの積層時における加熱・加圧工程によって接着層106a、106bには貫通穴105、導体ビア103a、103bに対応する部分の接着層が貫通穴105、導体ビア103a、103bに流れ込む。結果としてとして、接着層106a、106bには貫通穴105、導体ビア103a、103bに対応する穴が開けられる。
【0025】
図2(C)は、積層前から接着層106aおよび106bに穴を空けた場合の基板100”の立体図である。積層前から接着層106aおよび106bに貫通穴105、導体ビア103a、103bに対応する穴を開けてもよい。また、基板100’においても、積層後で接着層106aおよび106bに貫通穴105、導体ビア103a、103bに対応する穴を開けてもよい。
【0026】
以上説明したように、変形例2では誘電体基板101a~101dを接着層106a~106cによって接合することができる。
【0027】
(変形例3)
図3は、変形例3における基板110のxz断面図である。基板110は、基板100’において平面導体104bおよび104cをさらに備える。信号線102aは平面導体104bと104aの間に設けられ、信号線102bは平面導体104aと104cの間に設けられる。一例として、
図3では誘電体基板101aのa1面に平面導体104bが設けられ、誘電体基板101dのd2面に平面導体104cが設けられる。なお、平面導体104bを第2平面導体、平面導体104cを第3平面導体と称することもある。
【0028】
平面導体104bおよび104cは、平面導体104aで説明した導体を適用可能である。平面導体104a、104b、104cで少なくとも1つは異なる導体を適用してもよい。また、平面導体104a、104b、104cの形状はそれぞれ同じでもよいし、少なくとも1つ異なっていてもよい。平面導体104bの面積は信号線102aの面積より大きく、平面導体104cの面積は信号線102bの面積より大きい。これにより、平面導体104b、信号線102a、および平面導体104aによってストリップ線路が構成される。同様に、平面導体104a、信号線102b、平面導体104cによってストリップ線路が構成される。これにより、信号線102aおよび102bから基板110外部への高周波信号の放射を抑制することができる。結果として、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。
【0029】
(変形例4)
基板110について、平面導体104aと、接着層106bを介して対向する平面導体をさらに備えてもよい。
図4(A)は、変形例4における基板120の立体図である。基板120は、基板110において平面導体104dをさらに備える。平面導体104dは、信号線102aと平面導体104aの間、または平面導体104aと信号線102bの間に設けられる。平面導体104aと104dとは、接着層106bを介して対向する。一例として、
図4(A)では誘電体基板101cのc1面に平面導体104aが設けられているので、誘電体基板101bのb2面に平面導体104dが設けられる。視認性のため、
図4(A)では積層前の基板120について、誘電体基板101a~101dの間の間隔を空けて図示している。
図4(B)は、積層後の基板120のxz断面図である。なお、平面導体104dを第4平面導体と称することもある。
【0030】
平面導体104dは、平面導体104aで説明した導体を適用可能である。平面導体104a~104dで少なくとも1つは異なる導体を適用してもよい。また、平面導体104a~104dの形状はそれぞれ同じでもよいし、少なくとも1つ異なっていてもよい。平面導体104dの面積は信号線102aの面積より大きい。平面導体104dは、平面導体104aと同様に、導体ビア103a、103bとは離れており、電気的に接続されていない。これにより、平面導体104b、信号線102a、および平面導体104dによってストリップ線路が構成される。同様に、平面導体104a、信号線102b、平面導体104cによってストリップ線路が構成される。これにより、接着層106bの厚さが変化しても、平面導体104b、信号線102a、および平面導体104dによって構成されるストリップ線路の特性インピーダンスが変化しなくなる。平面導体104aが誘電体基板101bのb2面に設けられている場合は、平面導体104dは誘電体基板101cのc1面に設けられることになる。この場合は、平面導体104b、信号線102a、および平面導体104aによってストリップ線路が構成され、平面導体104d、信号線102b、および平面導体104cによってストリップ線路が構成される。同様に、接着層106bの厚さが変化しても、平面導体104d、信号線102b、および平面導体104cによって構成されるストリップ線路の特性インピーダンスが変化しなくなる。これにより、信号線102aおよび102bから基板120外部への高周波信号の放射をさらに抑制することができる。結果として、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。
【0031】
また、基板110および120において、貫通穴105は平面導体104bも貫通して設けられる。これにより、貫通穴105は導体ビア103aと103bのインダクタンス成分を相殺するキャパシタンスのように振る舞う。結果として、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。
【0032】
積層前の接着層106a、106bには、変形例2と同様に穴を貫通穴105、導体ビア103a、103bに対応する穴を開けてもよいし、開けなくてもよい。
図4(A)は接着層106a、106bに穴を開けない場合の基板120を表し、
図4(C)は、積層前から接着層106aおよび106bに穴をあけた場合の基板120’の立体図である。基板120においても、積層後で接着層106aおよび106bに貫通穴105、導体ビア103a、103bに対応する穴を開けてもよい。
【0033】
(変形例5)
基板120において、信号線102aは誘電体基板101bのb1面に設けられていた。信号線102aは、接着層106aを介してb1面に対向して設けられてもよい。
図5は基板120Aのxz断面図である。基板120Aは、基板120と構成要素は同様であるが、信号線102aが誘電体基板101aのa2面に設けられている。この場合、信号線102aと導体ビア103aとは接着層106aによって電気的に接続されない場合があるが、信号線102aと導体ビア103a間のキャパシタンスによって高周波信号を伝搬させることができる。なお、この場合における接着層106aの厚さは、信号線102aと導体ビア103a間のキャパシタンスによって高周波信号を伝搬させることができる程度の厚さである。
【0034】
この場合、平面導体104bと信号線102aの間隔は、接着層106aの厚さによって変化しない。平面導体104b上に、図示しない素子を設けた場合、この素子は平面導体104bと信号線102aの電磁界結合によって動作させることとなる。平面導体104bと信号線102aの間隔が変化しないため、この素子を安定して動作させることができる。この素子の例として、近接結合給電やスロット結合に用いられるアンテナ素子(パッチアンテナ)が挙げられる。
【0035】
(変形例6)
信号線102aは導体ビア103aから+x方向に設けられているが、-x方向にも設けられてもよい。
図6(A)は変形例6における基板120Bである。基板120Bは、基板120と同様の構成要素であるが、信号線102aが-x方向にも設けられている。視認性のため、
図6(A)では積層前の基板120Bについて、誘電体基板101a~101dの間の間隔を空けて図示している。
図6(B)は、積層後の基板120Bのxz断面図である。
【0036】
基板120Bにおいて信号線102bに高周波信号が入力された場合、信号線102aから出力されることとなるが、信号線102aの設けられる±x方向に2分配して出力される。これにより、高周波信号を分配して出力することができる。
【0037】
変形例6では信号線102aを±x方向に設けた例を説明したが、信号線を設ける方向および高周波信号を分配する数は任意である。例えば信号線102aを±y方向に設けて2分配させてもよいし、信号線102aを±x方向と+y方向に設けて3分配、±x方向と±y方向に設けて4分配させてもよい。また、信号線102bについても導体ビア103bから+x方向だけでなく、信号線102aと同様に任意の方向に設けて任意の数だけ高周波信号を分配してもよい。これにより、1入力多出力、多入力1出力、多入力多出力の基板を構成することができる。
【0038】
(変形例7)
本実施形態では、貫通穴105と導体ビア103a、導体ビア103aと導体ビア103b、導体ビア103bと信号線102bとがそれぞれ第1方向において少なくとも一部重なっていればよいことを説明した。
【0039】
図7は、積層後の基板120Cのxz断面図である。基板120Cは、基板120の構成要素と同様であるが、貫通穴105と導体ビア103aとがxy平面の位置においてずれている。この場合においても、貫通穴105と導体ビア103aとは第1方向において少なくとも一部重なっているため、本実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。さらに、貫通穴105を設ける位置について、設計上の自由度を向上させることができる。
【0040】
図8は、積層後の基板120Dのxz断面図である。基板120Dは、基板120の構成要素と同様であるが、貫通穴105にベントが設けられている。このベントは例えば誘電体基板101aへのエンドミル加工、ドリル加工などで設けることができる。ベントが設けられていても、誘電体基板101aのa1面からa2面を貫通する穴を貫通孔105とする。この場合においても、貫通穴105と導体ビア103aとは第1方向において少なくとも一部重なっているため、本実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。さらに、貫通穴105を設ける位置について、設計上の自由度を向上させることができる。例えば平面導体104b上に図示しない回路素子を配置する場合に、配置の自由度を向上させることができる。回路素子とは例えば、抵抗やチップコンデンサ等の電子部品である。
【0041】
図9は、積層後の基板120Eのxz断面図である。基板120Eは、基板120の構成要素と同様であるが、貫通穴105と導体ビア103aのxy平面における位置、導体ビア103aと導体ビア103bのxy平面における位置がずれており、信号線102bの長さが変わっている。この場合においても、貫通穴105と導体ビア103aとが第1方向において少なくとも一部重なり、導体ビア103aと導体ビア103bとが第1方向において少なくとも一部重なり、導体ビア103bと信号線102bと第1方向において少なくとも一部重なっているため、本実施形態と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。さらに、貫通穴105、導体ビア103a、103bを設ける位置について、設計上の自由度を向上させることができる。
【0042】
(変形例8)
本実施形態では、貫通穴105の内壁の少なくとも一部は、導体に覆われていないことを説明した。
図10は、変形例8における積層後の基板120Fのxz断面図である。基板120Fは、基板120の構成要素と同様であるが、貫通穴105の内壁の一部が導体に覆われている。しかし、貫通穴105の内壁のうち、信号線102aから第1方向において距離D以内は導体に覆われていない。基板120Fでは、誘電体基板101aと誘電体基板101bが接着層106aにて接合されている。この場合、距離Dは、貫通穴105の直径、導体ビア103aの直径、および信号線102aの幅、接着層106aの材質、および接着層106aの第1方向における厚さの少なくとも1つに基づいて定められる。これにより、高周波信号が誘電体基板101aの一部に伝搬される可能性が低減され、貫通穴105がスタブとなる可能性が低減される。結果として、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。
【0043】
(変形例9)
図11(A)は、変形例9における基板130の立体図である。基板130は、基板120にさらに加えて、誘電体基板101aに複数の導体ビア131aを、誘電体基板101bに複数の導体ビア131bを、誘電体基板101cに複数の導体ビア131cを、誘電体基板101dに複数の導体ビア131dを備える。視認性のため、
図11(A)では積層前の基板130について、誘電体基板101a~101dの間の間隔を空けて図示している。
図11(B)は、積層後の基板130のxz断面図である。なお、導体ビア131aを第3導体ビア、導体ビア131bを第4導体ビア、導体ビア131cを第5導体ビア、導体ビア131dを第6導体ビアと称することもある。
【0044】
導体ビア131aは、誘電体基板101aのa1面からa2面を貫通して設けられ、平面導体104bと電気的に接続される。導体ビア131aは貫通穴105の周囲に設けられており、導体ビア131a同士のxy平面における間隔は高周波信号における管内波長の1/2以下である。なお、
図11(A)では、導体ビア131aは貫通穴105を囲むように設けられているが、この配置に限定されず、貫通穴105の周囲の少なくとも1辺がカバーされていればよい。
【0045】
導体ビア131bは、誘電体基板101bのb1面からb2面を貫通して設けられ、平面導体104dと電気的に接続される。導体ビア131bは導体ビア103aおよび信号線102aの周囲に設けられており、導体ビア131b同士のxy平面における間隔は高周波信号における管内波長の1/2以下である。なお、
図11(A)では、導体ビア131bは導体ビア103aおよび信号線102aを囲むように設けられているが、この配置に限定されず、導体ビア103aおよび信号線102aの周囲の少なくとも1辺がカバーされていればよい。また、導体ビア131aおよび131bは、それぞれ少なくとも一部が第1方向において重なっている。導体ビア131aと導体ビア131bは接着層106aがある場合には電気的に接続されないが、導体ビア131aと131b間のキャパシタンスによって高周波信号を伝搬させることができる。導体ビア131aおよび131bによって、導体ビア103aおよび信号線102aにおける平行平板モードによる高周波信号の漏洩を低減させることができる。結果、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。
【0046】
導体ビア131cは、誘電体基板101cのc1面からc2面を貫通して設けられ、平面導体104aと電気的に接続される。導体ビア131cは導体ビア103bの周囲に設けられており、導体ビア131c同士のxy平面における間隔は高周波信号における管内波長の1/2以下である。なお、
図11(A)では、導体ビア131cは導体ビア103bを囲むように設けられているが、この配置に限定されず、導体ビア103bの周囲の少なくとも1辺がカバーされていればよい。
【0047】
導体ビア131dは、誘電体基板101dのd1面からd2面を貫通して設けられ、平面導体104cと電気的に接続される。導体ビア131dは導体ビア103bおよび信号線102bの周囲に設けられており、導体ビア131d同士のxy平面における間隔は高周波信号における管内波長の1/2以下である。なお、
図11(A)では、導体ビア131dは導体ビア103bおよび信号線102bを囲むように設けられているが、この配置に限定されず、導体ビア103bおよび信号線102bの周囲の少なくとも1辺がカバーされていればよい。また、導体ビア131cおよび131dは、それぞれ少なくとも一部が第1方向において重なっている。導体ビア131cと導体ビア131dは接着層106cがある場合には電気的に接続されないが、導体ビア131cと131d間のキャパシタンスによって高周波信号を伝搬させることができる。導体ビア131cおよび131dによって、導体ビア103bおよび信号線102bにおける平行平板モードによる高周波信号の漏洩を低減させることができる。結果、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。
【0048】
導体ビア131bと131cは、
図11(A)(B)に表されるようにそれぞれ少なくとの一部が第1方向において重なっていてもよい。また、
図11(A)(B)は、導体ビア131a~131dが設けられている場合を表しているが、導体ビア131aおよび131bのみを設けてもよいし、導体ビア131cおよび131dのみを設けてもよい。
【0049】
(変形例10)
以上では4枚の誘電体基板101a~101dにより構成される基板について説明したが、5枚以上の誘電体基板を積層した基板であってもよい。
図12は、積層後の基板140のxz断面図である。基板140は、基板120の構成要素に加えて、さらに誘電体基板101e、導体ビア103c、平面導体104e、104f、接着層106dを備える。基板140は、基板120の誘電体基板101cと101dの間に誘電体基板101eを備える構造である。また、誘電体基板101eの+z方向のxy平面に平行な面をe1面、誘電体基板101eの-z方向のxy平面に平行な面をe2面と称する。
【0050】
誘電体基板101eは、誘電体基板101cと101dの間に設けられる。誘電体基板101a~101dで説明した素材と同様の素材を適用可能である。導体ビア103cは、誘電体基板101eのe1面とe2面を貫通して設けられ、導体ビア103a、103bで説明した素材と同様の素材を適用可能である。基板140では、導体ビア103bと103cは第1方向において少なくとも一部重なっており、導体ビア103cと信号線102bは第1方向において少なくとも一部重なっている。これにより、基板140外部と貫通穴105、導体ビア103a~103cの空間を接続することができる。
【0051】
平面導体104e、104fは誘電体基板101cと101eの間に設けられる。
図12では、平面導体104eは誘電体基板101cのc2面に設けられ、平面導体104fは誘電体基板101eのe1面に設けられる。平面導体104e、104fは、平面導体104a~104dで説明した素材と同様の素材を適用可能である。平面導体104e、104fの面積は信号線102a、102bの面積よりも多きい。平面導体104e、104fの役割は平面導体104d、104aと同様に、基板140外部への高周波信号の放射の抑制である。
【0052】
接着層106dは、誘電体基板101cと101eの間に設けられ、誘電体基板101cと101eを接合する。この場合、接着層106cは誘電体基板101eと101dを接合する。平面導体104e、104fは、接着層106dを介して対向する。接着層106dは、接着層106a~106cで説明した素材と同様の素材を適用可能である。
【0053】
基板140は、基板120と同様に、信号線102aと102bの一方から入力された高周波信号をもう一方の信号線へ伝搬させる。高周波信号は一方の信号線から、導体ビア103a、103bに加えて103cを介してもう一方の信号線へ伝搬される。導体ビア103bと103c、導体ビア103cと信号線102bは、接着層106dおよび106cによって電気的に接続されないことがある。しかし、導体ビア103bと103c間のキャパシタンス、導体ビア103cと信号線102b間のキャパシタンスによって高周波信号を伝搬させることができる。以上、導体ビア103を有する誘電体基板101が1層増加しても、本実施形態と同様に動作させることができる。導体ビア103を有する誘電体基板101が2層以上増加しても、本変形例と同様である。誘電体基板101の層を増加させることにより、基板の剛性を高めることができる。ここで、平面導体101d~101fの少なくとも1つは設けられなくてもよい。基板140の製造工程を減らすことができ、製造コストを抑えることができる。
【0054】
基板140では導体ビア103を有する誘電体基板101を増加させた場合について説明したが、貫通穴105を有する誘電体基板101を増加させてもよい。
図13は、積層後の基板150のxz断面図である。基板150は、基板120の構成要素に加えて、さらに誘電体基板101f、接着層106eを備える。誘電体基板101fには、貫通穴105bが設けられている。ここでは、誘電体基板101aが有する貫通穴105は、105aと称する。基板150は、基板120の誘電体基板101aにさらに誘電体基板101fを備える構造である。また、誘電体基板101fの+z方向のxy平面に平行な面をf1面、誘電体基板101fの-z方向のxy平面に平行な面をf2面と称する。
【0055】
誘電体基板101fは、誘電体基板101aの上に設けられ、誘電体基板101a~101eで説明した素材と同様の素材を適用可能である。貫通穴105bは、誘電体基板101fのf1面からf2面を貫通して設けられる。貫通穴105bの形成方法および形状は、貫通穴105で説明した方法および形状と同様のものが適用可能である。
【0056】
貫通穴105bの内壁、すなわち貫通穴105bが開けられている部分の誘電体基板101fについては、導体に覆われているか否かは任意である。貫通穴105aを有する誘電体基板101aによって、高周波信号の透過特性を劣化させないための距離は開いているためである。基板150では、貫通穴105bと105aは第1方向において少なくとも一部重なっている。これにより、基板150外部と貫通穴105b、105a、導体ビア103a、103bの空間を接続することができる。
【0057】
接着層106eは、誘電体基板101fと101aの間に設けられ、誘電体基板101fと101aを接合する。接着層106eは、接着層106a~106cで説明した素材と同様の素材を適用可能である。
【0058】
信号線102aおよび102bのうち、一方の信号線からもう一方の信号線への高周波信号の伝搬は、基板120の場合と同様である。以上、貫通穴105を有する誘電体基板101が1層増加しても、本実施形態と同様に動作させることができる。貫通穴105を有する誘電体基板101が2層以上増加しても、本変形例と同様である。誘電体基板101の層を増加させることにより、基板の剛性を高めることができる。なお、導体ビア103を有する誘電体基板101の増加と、貫通穴105を有する誘電体基板101の増加は組み合わせて行われてもよい。
【0059】
(変形例11)
以上では、貫通穴105、導体ビア103a、103bは-z方向に設けられていたが、さらに+z方向にも設けられてもよい。
図14は、積層後の基板160のxz断面図である。基板160は、基板120の構成要素に加えて、さらに誘電体基板101g、101h、信号線102c、導体ビア103d、103e、平面導体104g、104h、104i、104j、接着層106f、106gを備える。誘電体基板101hには、貫通穴105cが設けられている。基板160は、信号線102aまたは102cの一方に入力された高周波信号を、導体ビア103a、103b、信号線102b、導体ビア103d、103eを介して信号線102aまたは102cのもう一方から出力する。なお本変形例では、誘電体基板101aが有する貫通穴105は、105aと称する。
【0060】
誘電体基板101g、101hは誘電体基板101a~101fで説明した素材と同様の素材を適用可能である。誘電体基板101gの+z方向のxy平面に平行な面をg1面、誘電体基板101gの-z方向のxy平面に平行な面をg2面と称し、誘電体基板101hの+z方向のxy平面に平行な面をh1面、誘電体基板101hの-z方向のxy平面に平行な面をh2面と称する。なお、誘電体基板101gを第5誘電体基板、誘電体基板101hを第6誘電体基板、g1面を第9面、g2面を第10面、h1面を第11面、h2面を第12面と称することもある。
【0061】
信号線102cは、高周波信号を伝搬する。信号線102cは、信号線102aと102cの一方の信号線からもう一方の信号線へ高周波信号を伝搬させるための信号線である。信号線102cは誘電体基板101gと101hの間に設けられる。一例として、
図14では信号線102cは誘電体基板101hのh1面上に設けられている。信号線102cの素材、表面処理、接続される素子等は信号線102a、102bの説明と同様のものが適用可能である。なお、信号線102cを第3信号線と称することもある。
【0062】
導体ビア103d、103eは信号線102bおよび102cの一方からの高周波信号を、もう一方の信号線に伝搬する。すなわち、信号線102bに伝搬された高周波信号は、導体ビア103d、103eを通じて信号線102cへ伝搬され、信号線102cに入力された高周波信号は、導体ビア103e、103dを通じて信号線102bへ伝搬される。導体ビア103dは誘電体基板101dのd1面からd2面を貫通して設けられ、導体ビア103eは誘電体基板101gのg1面からg2面を貫通して設けられる。なお、導体ビア103dを第7導体ビア、導体ビア103eを第8導体ビアと称することもある。
図14では導体ビア103d、103eを円筒形状として表しているが、円筒形状以外にも楕円形状、角型形状、少なくとも一部曲線を含む形状など、形状は任意である。
【0063】
信号線102bと導体ビア103d、および導体ビア103eと信号線102cは、電気的に接続される、またはキャパシタンスにより高周波信号の伝搬が可能な程度の距離に設けられる。導体ビア103eおよび貫通穴105cは、導体ビア103dおよび103eの少なくとも一方が貫通する方向(本変形例ではz方向)において、少なくとも一部重なっている。以降、導体ビア103dおよび103eの少なくとも一方が貫通する方向を、第2方向と称することもある。本変形例では、第1方向と第2方向は同じ方向として説明する。導体ビア103dおよび103eは、第2方向において少なくとも一部重なっている。これにより、貫通穴105cの空間と、導体ビア103dの空間と、導体ビア103eの空間が接続される(空気の通り道となる)。これにより、基板160の外部において温度や気圧の変化が生じても、これらの空間内の空気の気圧と基板160の外部の気圧を同程度にすることができ、基板160を形成する層(誘電体基板)の一部に剥離または密着する応力を低減させることができる。結果として、基板160の長期的な信頼性が向上する。なお、導体ビア103bと導体ビア103dとは、第1方向および第2方向の少なくとも一方において重ならない。貫通穴105a、導体ビア103a、103bの空気の通り道と、貫通穴105c、導体ビア103d、103eの空気の通り道を別々に設けることにより、図示しない他の導体パターン(平面導体)を避けて高周波信号の伝送経路を構築できる。
【0064】
平面導体104g、104h、104i、104jは、他の平面導体104および信号線102b、102cとでマイクロストリップ線路を構成する。平面導体104g、104hは誘電体基板101cと101dの間に設けられ、接着層106cを介して対向して設けられる。平面導体104iは誘電体基板101dと101gの間に設けられ、平面導体104cと接着層106fを介して対向して設けられる。平面導体104jは、平面導体104iと104jの間に信号線102cが位置するように設けられる。一例として
図14では、平面導体104gは誘電体基板101cのc2面に設けられ、平面導体104hは誘電体基板101dのd1面に設けられ、平面導体104iは誘電体基板101gのg1面に設けられ、平面導体104jは誘電体基板101hのh2面に設けられる。平面導体104g~104jの素材、形状、および表面処理は、平面導体104aで説明したものと同様のものが適用可能である。なお、平面導体104jは第5平面導体と称することもある。
【0065】
平面導体104g~104hの面積は、信号線102b、102cの面積よりも大きい。導体ビア103d、103eと平面導体104cは離れており、電気的に接続されていない。信号線102bと平面導体104cによってマイクロストリップが構成される。同様に、信号線102cと平面導体104iによってマイクロストリップが構成される。なお、信号線102b、102cの近傍に図示していない導体パターンを追加して、コプレーナ線路やフィンライン線路を構成してもよい。また、平面導体104g、104hは信号線102b、導体ビア103b、導体ビア103dからは離れており、電気的に接続されていない。平面導体104c、104iは導体ビア103d、103eからは離れており、電気的に接続されていない。これにより、平面導体104i、信号線102c、および平面導体104jによってストリップ線路が構成される。同様に、平面導体104g、104hも他の平面導体や信号線によってストリップ線路が構成される。これにより、信号線102bおよび102cから基板160外部への高周波信号の放射を抑制することができる。結果として、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。
【0066】
貫通穴105cは、誘電体基板101hのh1面からh2面を貫通して設けられる。貫通穴105cの形成方法および形状は、貫通穴105、105bで説明した方法および形状と同様のものが適用可能である。
【0067】
貫通穴105cの内壁、すなわち貫通穴105cが開けられている部分の誘電体基板101hの少なくとも一部は、導体に覆われていない。より詳細には、貫通穴105cの内壁は、信号線102cから第2方向において所定の距離以内は導体に覆われていない。この所定の距離は、貫通穴105cの直径、導体ビア103eの直径、および信号線102cの幅、接着層106gの材質、および接着層106gの第2方向における厚さの少なくとも1つに基づいて定められる。これにより、高周波信号が誘電体基板101hの一部に伝搬される可能性が低減され、貫通穴105cがスタブとなる可能性が低減される。結果として、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。なお、貫通穴105cを第2貫通穴と称することもあり、貫通穴105の内壁を第2内壁と称することもある。
【0068】
また、基板160において、貫通穴105cは平面導体104jも貫通して設けられる。これにより、貫通穴105cは導体ビア103dと103eのインダクタンス成分を相殺するキャパシタンスのように振る舞う。結果として、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。
【0069】
接着層106fは誘電体基板101dと101eの間に設けられ、誘電体基板101dと101eを接合する。接着層106gは誘電体基板101eと101fの間に設けられ、誘電体基板101eと101fを接合する。平面導体104c、104iは、接着層106fを介して対向する。平面導体104c、104iは、接着層106fを介して対向する。接着層106f、106gは、接着層106a~106cで説明した素材と同様の素材を適用可能である。
【0070】
以上、本変形例の構成要素を説明した。基板160では、導体ビア103dと103eは接着層106fにより電気的に接続されない場合があり、接着層106gによって導体ビア103eと信号線102cとが電気的に接続されない場合がある。この場合、直流信号は伝搬しない。しかし、導体ビア103dと103e間のキャパシタンスおよび導体ビア103eと信号線102c間のキャパシタンスによって、高周波信号を伝搬させることができる。
【0071】
本変形例の基板160は、信号線102aまたは102cの一方に入力された高周波信号を、導体ビア103a、103b、信号線102b、導体ビア103d、103eを介して信号線102aまたは102cのもう一方から出力する。貫通穴105a、導体ビア103a、103bの空気の通り道と、貫通穴105c、導体ビア103d、105eの空気の通り道を別々に設けることで、図示しない他の導体パターン(平面導体)を避けて高周波信号の伝送経路を構築できる。また、誘電体基板の層を増加させることで、基板の剛性を高めることができる。ここで、平面導体101d、101g~101iの少なくとも1つは設けられなくてもよい。基板160の製造工程を減らすことができ、製造コストを抑えることができる。
【0072】
以上、本実施形態の変形例を説明した。本実施形態の変形例は、矛盾の起きない限りで先に説明した基板、後述する基板に適用してもよいし、変形例同士を組み合わせて適用してもよい。本実施形態の基板は、内部の信号線102aから102b間において高周波信号を伝搬する。貫通穴105の内壁の少なくとも一部が導体に覆われていないことにより、貫通穴105がスタブとなる可能性が低減され、高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。また、貫通穴105の空間と、導体ビア103aの空間と、導体ビア103bの空間を接続することにより、基板外部の気圧とこれらの空間の気圧を同程度にすることができ、基板を形成する層(誘電体基板)の一部に剥離または密着する応力を低減させることができる。結果として、基板の長期的な信頼性が向上する。
【0073】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、信号線102aと103b間の高周波信号の伝搬は、導体ビア103aおよび103bが行っていた。この高周波信号の伝搬を、スロットを使うことによっても行ってよい。
図15(A)は第2の実施形態における基板200の立体図である。基板200は、基板120の構成要素と同様であり、平面導体104aにスロット201aが、平面導体104dにスロット201bが設けられている。基板200は、信号線102aと103b間の高周波信号の伝搬を、導体ビア103aと103bによる伝搬とスロット201aと201bを用いた伝搬によって行うことにより、高周波信号の透過係数を向上させることができる。ここで、導体ビア103aと103bによる伝搬とスロット201aと201bを用いた伝搬とでは、スロット201aと201bを用いた伝搬が支配的となる。視認性のため、
図15(A)では積層前の基板200について、誘電体基板101a~101dの間の間隔を空けて図示している。
図15(B)は、積層後の基板200のxz断面図である。
【0074】
スロット201a、201bは、信号線102aと102b間の高周波信号の伝搬を行うためのスロットである。スロット201a、201bを用いた高周波信号の伝搬は、電磁界結合によって行う。スロット201a、201bの長さは、高周波信号の管内波長の1/2程度である。スロットの形状は任意であり、
図15(A)のように直線状のスロットでもよいし、少なくとも1つのベントを有していてもよいし、少なくとも一部が曲線状であってもよいし、複数のスロットを設けてもよい。また、スロット201a、201bは同様の形状でもよいし、異なる形状でもよい。なお、平面導体104dが設けられていない場合は、スロット201aのみで高周波信号を伝搬してもよい。
【0075】
導体ビア103a、103bによる伝搬では、接着層106b、106cの第1方向における厚さによっては、導体ビア103aと103b間のキャパシタンス、導体ビア103bと信号線102b間のキャパシタンスが小さくなる可能性がある。信号線102aが誘電体基板101aのa2面に設けられている場合には、信号線102aと導体ビア103a間のキャパシタンスが小さくなる可能性がある。一方、スロット201a、201bを用いた伝搬では、電磁界結合によって行うため、キャパシタンスの減少による高周波信号の透過特性の劣化の影響を減少させることができる。結果、高周波信号の透過特性の劣化を低減させ、高周波信号の信号線102aと102b間の伝搬を安定化させることができる。
【0076】
以上、基板200の構成要素を説明した。本実施形態は一例であって、変形例は様々に実装可能である。例えば、第1の実施形態および第1の実施形態で説明した変形例を適用可能である。以下、本実施形態に適用可能な変形例を説明する。
【0077】
(変形例12)
スロット201a、201bの形状は様々に考えられる。
図16は、積層後の基板200’のxz断面図である。基板200’のスロット201a’の形状はH字状である。スロット201b’の形状もH字状にすることができる。
図17は、積層後の基板200”のxz断面図である。基板200”のスロット201a”の形状はC字状である。スロット201b”の形状もC字状にすることができる。基板200’、200”のいずれも基板200と同様に高周波信号を伝搬させることができる。スロット201aの形状をH字状、C字状とすることにより、基板をy方向に小さくすることができる。結果、基板を小型化させることができ、コストを低減させることができる。
【0078】
(変形例13)
変形例9で説明した基板130に、本実施形態で説明したスロットを設けてもよい。
図18(A)は、変形例13における基板210の立体図である。基板210は、基板130の平面導体104aに変形例12で説明したスロット201a”を設け、平面導体104dにスロット201b”を設けている。視認性のため、
図18(A)では積層前の基板210について、誘電体基板101a~101dの間の間隔を空けて図示している。
図18(B)は、積層後の基板210のxz断面図である。基板210も基板200と同様に高周波信号を伝搬させることができる。また、変形例9で説明した導体ビア131a、131b、131c、131dにより、信号線102a、102b、導体ビア103a、103bにおける平行平板モードによる高周波信号の漏洩を低減させることができる。結果、高周波信号の透過特性(通過特性)の劣化を低減させることができる。
【0079】
図19は、基板130、210における高周波信号の透過係数の周波数特性を表す。すなわち、高周波信号の規格化周波数に対しての透過係数を表している。透過係数の数値が大きく(絶対値が小さく)なるほど高周波信号の透過特性の劣化が低減することを表す。基板130(0μm)は一点鎖線で表され、基板130において平面導体104aと104dが電気的に接続されている場合、すなわち接着層106bが存在しない場合を表す。基板130(30μm)は長鎖線で表され、基板130において平面導体104aと104dが接着層106bによって30μm離れている場合を表す。基板210(0μm)は実線で表され、基板210において平面導体104aと104dが電気的に接続されている場合、すなわち接着層106bが存在しない場合を表す。基板210(30μm)は破線で表され、基板210において平面導体104aと104dが接着層106bによって30μm離れている場合を表す。
【0080】
平面導体104aと104dが電気的に接続される場合(0μm)では、基板130と基板210とでは基板210の方が広い周波数範囲にわたってより透過係数が高いものの、大きな変化はない。
【0081】
平面導体104aと104dの間隔が30μmの場合、導体ビア103a、103bを介して高周波信号を伝搬させる基板130では、規格化周波数が0.95~1.05の範囲において、透過係数が-2.7dB~-4.2dB程度劣化する。一方、導体ビア103a、103bに加えてスロット201a”、201b”を介して高周波信号を伝搬させる基板210では、規格化周波数が0.95~1.05の範囲において、透過係数が-0.6dB~-0.9dB程度の劣化に抑えられている。
【0082】
導体ビア103a、103bを介して高周波信号を伝搬させる基板130では、平面導体104aと104dの間隔が大きくなるほど、すなわち接着層106bの厚さが大きくなるほど導体ビア103a、103b間のキャパシタンスが減少するため、高周波信号の透過特性が悪化する。一方、導体ビア103a、103bに加えてスロット201a”、201b”を介して高周波信号を伝搬させる基板210では、平面導体104aと104dの間隔、すなわち接着層106bの厚さの影響を基板210よりも小さく抑えることができる。よって、導体ビア103だけでなくスロット201を用いて高周波信号を伝搬させることで、広い周波数範囲にわたって高周波信号の透過特性の劣化を低減させることができる。
【0083】
以上、本実施形態の変形例を説明した。本実施形態の変形例は、矛盾の起きない限りで先に説明した基板に適用してもよいし、変形例同士を組み合わせて適用してもよい。本実施形態の基板は、内部の信号線102aから102b間において高周波信号を伝搬する。この伝搬を導体ビア103a、103bだけでなくスロット201a、201bを介して行うことにより、高周波信号の透過特性を向上させることができる。
【0084】
(第3の実施形態)
図20は、第3の実施形態における高周波回路300の構成図である。高周波回路300は、基板100(or200)と、この基板を伝搬する高周波信号を供給する信号回路301を備える。
図20では基板100(or200)と表しているが、以降、基板100(or200)とは第1の実施形態、第2の実施形態、および変形例で説明したすべての基板のいずれかであるとする。
【0085】
信号回路301は高周波信号を生成し、基板100(or200)に供給する。基板100(or200は、信号線102aおよび102bの一方(例えば、信号線102a)でこの高周波信号を受け取り、もう一方の信号線(例えば、信号線102b)に伝搬する。基板160の場合では、信号線102aおよび102cの一方でこの高周波信号を受け取り、もう一方の信号線に伝搬する。基板100(or200)を用いて高周波回路300を構成することで、高周波信号の透過特性の劣化を低減し、高周波回路300の長期的な信頼性を向上させることができる。
【0086】
(第4の実施形態)
図21は、第4の実施形態におけるアンテナ装置400の構成図である。アンテナ装置400は、基板100(or200)と、この基板から伝搬される高周波信号を放射するアンテナ素子401を備える。
【0087】
アンテナ素子401は、基板100(or200)から伝搬される高周波信号を電波として放射する。アンテナ素子401は、電波を受信し、高周波信号として基板100(or200)に入力する。基板100(or200)は、信号線102aおよび102bの一方(例えば、信号線102a)からアンテナ素子401に出力する。基板100(or200)は、信号線102aおよび102bのこの一方で電波を受信したアンテナ素子401から高周波信号を受け取り、もう一方の信号線(例えば、信号線102b)に伝搬する。基板160では、信号線102aおよび102bではなく信号線102aおよび102cとなる。
【0088】
アンテナ素子401は、基板100(or200)と同一の基板上に構成してもよいし、基板100(or200)とは異なる基板を組み合わせて構成し,同軸ケーブルなどを介して高周波信号を伝搬してもよい。
【0089】
基板100(or200)を用いてアンテナ装置400を構成することで、高周波信号の透過特性の劣化を低減し、アンテナ装置400の長期的な信頼性を向上させることができる。
【0090】
(第5の実施形態)
図22は、第5の実施形態における無線通信装置500の構成図である。無線通信装置500は、第4の実施形態のアンテナ装置400に加えて、無線信号回路501と、変換回路502を備える。
【0091】
無線信号回路501は、無線通信に用いる信号(以降、無線信号とも称する)を生成し、変換回路502に送る。また、無線信号回路501は変換回路502によって復調された信号(以降、復調信号とも称する)を受け取り、復調した信号の処理を行う。
【0092】
変換回路502は、無線通信回路501から送られた無線信号を変調し、高周波信号に変換してアンテナ装置400に送る。また、変換回路502は、アンテナ装置400から送られた高周波信号を復調し、復調信号を無線信号回路501に送る。
【0093】
基板100(or200)は、信号線102aおよび102bの一方(例えば、信号線102a)で変換回路502から変換された高周波信号を受けとり、もう一方の信号線(例えば、信号線102b)に伝搬する。高周波信号はこのもう一方の信号線からアンテナ素子401に送られ、電波として放射される。アンテナ素子401が電波を受信した場合、高周波信号としてこのもう一方の信号線(102b)に送る。基板100(or200)は、このもう一方の信号線(102b)でアンテナ素子401から高周波信号を受け取り、この一方の信号線(102a)に伝搬し、変換回路502に送る。基板160では、信号線102aおよび102bではなく信号線102aおよび102cとなる。
【0094】
基板100(or200)を用いて無線通信装置500を構成することで、高周波信号の透過特性の劣化を低減し、無線通信装置500の長期的な信頼性を向上させることができる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
100、100’、100”:基板
101a~101h:誘電体基板
102a~102c:信号線
103a~103e:導体ビア
104a~104j:平面導体
105、105a~105c:貫通穴
106a~106g:接着層
120、120’、120A~120F:基板
130:基板
131a~131d:導体ビア
140:基板
150:基板
160:基板
200、200’、200”:基板
201a、201a’、201a”、201b、201b’、201b”:スロット
210:基板
300:高周波回路
301:信号回路
400:アンテナ装置
401:アンテナ素子
500:無線通信装置
501:無線信号回路
502:変換回路