(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014760
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】経口投与製品の皮膜形成用組成物、上記組成物による皮膜層を含む経口投与製品、及びレーザーマーキング方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/02 20060101AFI20240125BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20240125BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240125BHJP
A23L 5/30 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K47/02
A61K9/28
A23L5/00 F
A23L5/30
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108629
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2022-0089470
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517361454
【氏名又は名称】株式会社 エンクロニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】イ キュン-ホ
【テーマコード(参考)】
4B035
4C076
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE07
4B035LG01
4B035LK14
4B035LP59
4B035LT20
4C076AA42
4C076AA46
4C076BB01
4C076DD29H
4C076DD41
4C076DD67H
4C076EE38H
4C076FF21
(57)【要約】
【課題】本発明は、医薬品や食品などのような経口投与製品の表面にレーザーにより識別性マークを施すためのレーザーマーキング用皮膜組成物、上記組成物から形成された皮膜層を含む経口投与物品、及び上記経口投与物品の表面にレーザーによりマーキングする方法に関する。
【解決手段】本発明は、経口投与製品の外皮を形成する皮膜形成用組成物であって、固形分の全重量に対して1~25重量%のZnOを含む皮膜形成用組成物、上記組成物により形成された外皮を含む経口投与製品、及び上記経口投与製品に対するレーザーマーキング方法を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与製品の外皮を形成する皮膜形成用組成物であって、皮膜組成物の全重量に対して0.5~25重量%のZnOを含む、皮膜形成用組成物。
【請求項2】
前記皮膜形成用組成物は、ZnOの含量が、皮膜組成物の全重量に対して1~15重量%または1~5重量%である、請求項1に記載の皮膜形成用組成物。
【請求項3】
外皮を含む経口投与製品であって、
前記外皮は請求項1または2に記載の皮膜形成用組成物から形成されたものである、経口投与製品。
【請求項4】
前記外皮は、20μm以上、1000μm以下の厚さを有する、請求項3に記載の経口投与製品。
【請求項5】
前記経口投与製品は、ZnOの含量が8mg以下である、請求項3に記載の経口投与製品。
【請求項6】
前記経口投与製品は、外皮の表面にレーザーマーキングによるマークを有し、前記マークは外皮の表面と明度差を有する、請求項3に記載の経口投与製品。
【請求項7】
請求項1または2に記載の皮膜形成用組成物による外皮を含む経口投与製品の外皮の表面にレーザー光を照射してマーキングする段階を含む、経口投与用製品のレーザーマーキング方法。
【請求項8】
前記レーザー光は、波長が200~1100nmであり、平均出力が2~12Wであり、周波数が20~100kHzである、請求項7に記載のレーザーマーキング方法。
【請求項9】
前記レーザー光は、20~20000mm/secで照射する、請求項7に記載のレーザーマーキング方法。
【請求項10】
前記レーザー光は、390~21000mJ/cm2の単位面積当たりのエネルギーを有する、請求項7に記載のレーザーマーキング方法。
【請求項11】
前記外皮は、20μm以上、1000μm以下の厚さを有する、請求項7に記載のレーザーマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品などのような経口投与製品の表面にレーザーにより識別性マークを施すためのレーザーマーキング用皮膜組成物、上記組成物から形成された皮膜層を含む経口投与物品、及び上記経口投与物品の表面にレーザーによりマーキングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤などの経口投与用医薬組成物は、医薬品の調剤行為や服薬ミスを未然に防止するために、包装容器は言うまでもなく、製品そのものにも識別性が求められており、食品においても、多様な理由からこのような識別性が求められている。
【0003】
そこで、錠剤やカプセルを特別な形状に実現したり、固有の色調を付与したりすることで識別性を提供しているが、錠剤やカプセルの形状、色調だけでは、識別性には限界がある。かかる識別性の限界を克服するために、錠剤やカプセル剤の表面にマークをさらに施し、識別性をより向上させている。
【0004】
このようなマークを施す方法として、例えば、フィルムコーティングされた錠剤やカプセル剤の表面にゴムローラーを用いて文字などを印刷する転写式印刷、または、インクをドット印刷するインクジェット印刷などが挙げられ、また、コーティングされていない錠剤には、凹凸を有するパンチを用いて刻印する方法などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、上記の転写式印刷法は、錠剤やカプセルの表面状態や、プリントする場所の雰囲気などに影響されやすく、明瞭なプリントを安定して行うためには、管理が非常に複雑である。
【0006】
また、インクジェット印刷法では、インク液の乾燥が不十分な場合、錠剤の汚れやプリントの滲みなどを引き起こし、外観品質に影響を与える恐れがある。
【0007】
一方、錠剤やカプセル剤が球面を有している場合が多いため、刻印法により錠剤の表面にプリントする場合、プリントの可能範囲、印刷できる文字数やサイズ、または図形形状に限界があり、識別性のために求められる情報を十分に提供するには不足する側面がある。
【0008】
上記のような問題により、従来の印刷法や刻印法に代替する方法として、ガルバノメーターレーザースキャナーにて出力の小さいレーザー光を照射することで、錠剤及びカプセル剤にマーキングする方法が開発されている。
【0009】
一般に、経口投与用製品は色相の明確化などのために少量のTiO2を含むが、上記TiO2は、レーザー光の照射により凝集し、変色が発生するという特性を有する。そのため、TiO2を含む経口投与用製品にレーザー光を照射することで製品の表面にマーキングしてきた。
【0010】
経口投与用製品として代表的な医薬品には、熱及び紫外線により誘導される医薬品成分の低下防止、色相の鮮明性など、多様な目的でTiO2が添加されている。しかし、近年、欧州食品安全機関(EFSA)は、食品添加物のTiO2の安定性に対して、遺伝細胞物質を変化させる能力に関する懸念があり、ナノ粒子として存在するため、内壁、肺胞または細胞核膜を通過する恐れがあると判断し、食品にTiO2を添加することはこれ以上安全であるといえないという意見を発表した。
【0011】
したがって、今のところは欧州食品安全機関(EFSA)で医薬品におけるTiO2の使用禁止を留保しているが、2~3年間の留保期間中における代替物質の開発現況などによっては、医薬品においてもTiO2の使用禁止が予想される。そのため、経口用製品の識別のための他の手段の提供が望まれている。しかし、従来のTiO2の変色特性を用いて識別性を提供するマーキング方法以外の他の方法を適用するなどの場合には、従来のレーザーマーキングに用いられていたレーザー処理装置を廃棄する必要があり、多くのコストが必要とされる。
【0012】
そこで、従来のTiO2のレーザー処理による変色特性を用いてマーキングするのに用いられていたレーザー処理装置を特別な変更なしに使用できる新しいマーキング組成物の提供が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、医薬品や食品などのような経口投与製品のレーザーマーキング用皮膜組成物を提供することを課題とする。
【0014】
さらに、本発明は、従来のTiO2を含む物品に対するレーザーマーキングに用いられていた装置をそのまま使用できる組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、一実施形態として、経口投与製品の外皮を形成する皮膜形成用組成物に関し、皮膜組成物の全重量に対して0.5~25重量%のZnOを含む皮膜形成用組成物を提供する。
【0016】
上記皮膜形成用組成物は、ZnOの含量が、皮膜組成物の全重量に対して1~15重量%または1~5重量%であることができる。
【0017】
本発明の他の実施形態として、外皮を含む経口投与製品を提供し、上記外皮は上述の皮膜形成用組成物から形成されたものである、経口投与製品を提供する。
【0018】
上記外皮は、20μm以上、1000μm以下の厚さを有することができる。
【0019】
上記経口投与製品は、ZnOの含量が8mg以下であることができる。
【0020】
上記経口投与製品は、外皮の表面にレーザーマーキングによるマークを有し、上記マークは外皮の表面と明度差を有することができる。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態は、経口投与用製品のレーザーマーキング方法を提供することであり、上述の皮膜形成用組成物による外皮を含む経口投与製品の外皮の表面にレーザー光を照射してマーキングする段階を含む。
【0022】
上記レーザー光は、波長が200~1100nmであり、平均出力が2~12Wであり、周波数が20~100kHzであることができる。
【0023】
上記レーザー光は、20~20000mm/secで照射することができる。
【0024】
上記レーザー光は、390~21000mJ/cm2の単位面積当たりのエネルギーを有することができる。
【0025】
上記外皮は、20μm以上、1000μm以下の厚さを有することができる。
【発明の効果】
【0026】
また、本発明の組成物により形成された皮膜上にレーザーによりマーキングを行うことができるため、医薬品や食品のような経口投与製品などの品質を損なうことなく、優れた識別性を提供することができる。
【0027】
本発明のレーザーマーキング用皮膜組成物は人体に無害であって、ヒトに対する安全性を確保することができる。
【0028】
本発明のレーザーマーキング用皮膜組成物を用いることで、従来のTiO2を含んでいた組成物により形成された皮膜のレーザーマーキング装置をそのまま用いて、レーザーマーキングによる識別力を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ZnOの含量による、レーザー出力毎のマーキング領域の明度変化を示したグラフである。
【
図2】ZnOの含量による、レーザー出力毎のマーキング領域の明度変化を周辺明度値と対比して示したグラフである。
【
図3】
図1に示したそれぞれのZnOの含量及びレーザー出力条件でマーキングしたサンプルを撮影した写真であり、22倍の倍率で撮影した写真である。
【
図4】ZnOの含量1%、2%、及び3%である時に、レーザー出力条件によるマーキングしたサンプルを撮影した写真であり、70倍の倍率で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、皮膜組成物、上記組成物から形成された皮膜層を含む経口投与物品、及び上記経口投与物品の表面にレーザーによりマーキングする方法を提供するものであり、以下、本発明を具体的に説明する。
【0031】
本発明は、一実施形態として皮膜形成用組成物を提供し、上記皮膜形成用組成物は、経口投与製品の外皮を形成する皮膜形成用組成物である。上記皮膜形成用組成物から形成された皮膜に対して、レーザーにより所定のマークを形成することができる。
【0032】
従来は、経口投与用製品にレーザーマーキングを行うにあたり、上記製品または製品のコーティング層などに変色性を提供するために、TiO2や三二酸化鉄などが用いられていたが、本発明では、変色性を提供するためにZnOを含む。
【0033】
上記ZnOは、レーザーにより変色され、経口投与用製品の表面に鮮明なマークを形成することで、識別性を提供することができる。さらに、上記ZnOに含まれているZnは、多様な用途で服用可能であって人体に有益な成分であり、本発明で好適に用いられることができる。亜鉛は酵素の構成要素であり、炭水化物、タンパク質、脂質、核酸の合成と分解に関与するが、特に、核酸DNAとRNAの合成に関与することで、細胞の分化から増殖、遺伝子の発現過程で必須な役割を果たし、成長、組織、及び骨格の形成と、生殖、免疫機能などが円滑に行われるように補助する作用をする。
【0034】
上記ZnOは、上記皮膜形成用組成物の全重量に対して0.5~25重量%の含量で含まれることができる。上記ZnOの含量が0.5重量%未満である場合には、レーザー光の照射による変色の程度が十分ではないため、周辺色との明度差が小さく、これにより鮮明な識別性が提供できない恐れがある。
【0035】
上記ZnOは25重量%以下で含まれることができ、上記ZnOの含量が25%を超える場合には、過量添加によるさらなる明度差を提供せず、過量摂取による副作用をもたらす恐れがある。具体的には、上記ZnOの含量は、皮膜形成用組成物の全重量の15重量%以下、より具体的には5重量%以下であることができる。
【0036】
本発明の皮膜組成物は賦形剤を含むことができる。上記賦形剤は皮膜形成のための主成分であって、食用可能であり、ZnOを含んだ状態で所定のフィルムのような形状を提供することができる。上記賦形剤としては、通常用いられるものであれば本発明でも好適に適用可能である。
【0037】
上記賦形剤としては、胃または腸などの人体内で溶解可能な成分を好適に用いることができる。上記賦形剤としては、例えば、HPMC(hydroxypropyl methylcellulose)、EC(ethylcellulose)、HPC(hydroxypropyl cellulose)、PVP(povidone)のような胃溶性賦形剤、またはCAP(acetyl phthalate cellulose)、HPMCP(Hydroxypropyl methylcellulose phthalate)、PVAP(polyvinyl acetate phthalate)のような腸溶性賦形剤が挙げられる。
【0038】
さらに、D-マンニトール、乳糖、白糖、トウモロコシ澱粉、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウムなどがさらに使用できる。
【0039】
その他に、デキストリン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルファ澱粉などがさらに使用できる。
【0040】
上記皮膜形成用組成物は、必要に応じて、他の添加剤をさらに含むことができる。例えば、本発明で用いる他の添加剤は、薬理学的に許容される物質として、滑沢剤、崩壊剤、コーティング剤、可塑剤、懸濁剤または乳化剤、着香剤、矯味剤、糖衣錠、流動化剤、着色剤、溶剤などが挙げられる。
【0041】
滑沢剤の具体的な例としては、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられ、崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
上記コーティング剤の具体的な例としては、カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー分散液、メタクリル酸コポリマーLなどのアクリル酸系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどの合成高分子物質、ゼラチン、アラビアガムなどの天然系高分子物質などが挙げられる。
【0043】
可塑剤の具体的な例としては、アジピン酸ジオクチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、グリセリン、濃グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられ、懸濁剤または乳化剤の具体的な例として、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合物などが挙げられ、着香剤の具体的な例として、メントール、ハッカ油、オレンジ油などが挙げられ、矯味剤の具体的な例として、食用植物、果物類、種子類、茶葉類の抽出物、またはこれらの風味を有する香料成分が挙げられる。
【0044】
上記糖衣錠の具体的な例としては、白糖、乳糖、水飴、沈降炭酸カルシウム、アラビアガム、カルナウバロウなどが挙げられ、流動化剤の具体的な例として、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、トウモロコシ澱粉などが挙げられ、着色剤の具体的な例としては、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色102号、食用青色1号、食用青色2号(インジゴカルミン)、食用黄色4号、アルミニウムレーキなどのタール系色素、三二酸化鉄(べんがら)、タルク、リボフラビンなどが挙げられる。
【0045】
上記皮膜形成組成物は溶媒をさらに含むことができる。上記溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、プロピレングリコール、落花生油、ひまし油、ゴマ油、グリセリン、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。上記溶媒の含量は、上記ZnOを含む皮膜形成用組成物が対象経口投与製品の表面に容易にコーティング層を形成できる程度に含むことができ、特に限定されない。
【0046】
上記皮膜形成組成物を用いて経口投与製品を収容する皮膜を形成することができる。上記皮膜は、経口投与製品の表面に直接形成されて経口投与製品を収容することができ、上記皮膜形成組成物によるカプセル状の皮膜の内部に、粉末状、顆粒状、または液状の経口投与製品を収容することができる。
【0047】
上記皮膜は、特に限定されないが、20μm以上の厚さを有することができる。上記皮膜の厚さが20μm未満である場合には、レーザーの照射による皮膜の食刻により、皮膜内に収容された物質が露出する恐れがある。上記厚さの上限は特に限定されないが、例えば、1000μm以下であり、より具体的には、500μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下であることができる。
【0048】
上述のように、ZnOは服用可能な成分であるが、過度に過量服用する場合には人体に無理を与える恐れがあるため、上記ZnOは、経口投与製品に8mg以下、例えば、6mg以下、5mg以下、4mg以下、3mg以下、2mg以下、1mg以下、0.5mg以下、0.3mg以下の含量で含まれるように制御することができる。
【0049】
上記のような経口投与製品の皮膜の表面に、所定の条件のレーザー光を照射することでマークを形成することができる。以下、レーザー光の照射によるマーキング方法について具体的に説明する。
【0050】
本発明によるマーキング方法は、通常用いられていたレーザー装置、具体的に、TiO2を光変色物質として含む表面に適用していたレーザー装置を用いることができ、特に限定されない。
【0051】
本発明で提供するZnOを光変色物質として含む皮膜形成用組成物による皮膜にレーザーを照射することで、分散されたZnOが一部凝集することにより変色するようになり、その内部に収容される経口投与製品には何ら影響を与えず、外観品質を劣化させる問題も引き起こすことなく、識別性を有するマークを形成することができる。
【0052】
本発明によるマーキング方法に用いるレーザーは特に制限されず、レーザー媒質、すなわち、レーザー発振の元が固体、液体、気体の各状態でレーザー発進できるものを用いることができ、より具体的には、固体レーザーを用いることができる。
【0053】
また、本発明に用いるレーザーは、その波長が200~1100nmを有するものを用いることができ、具体的には、1060~1064nm、527~532nm、351~355nm、263~266nm、または210~216nmの波長であり、より具体的には、527~532nm、351~355nm、または263~266nmの波長であることができる。
【0054】
本発明において、レーザーを走査する時の平均出力は、対象とする経口投与用組成物の表面がほとんど食刻されない範囲で用いることができる。例えば、レーザーの平均出力は1~35Wであり、より具体的には3~25W、さらに具体的には2~12Wであることができる。単位時間当りのレーザー照射エネルギーが強すぎると、切除により錠剤の表面で食刻が発生し、変色部分まで剥がれてしまう。また、出力が弱いと、変色が十分ではない。
【0055】
レーザーを上記皮膜の表面に照射する時のレーザーの走査方式としては、特に制限されるものではないが、例えば、電気信号に応じてミラーの回転角を変えることができる偏向器を用いたガルバノミラー型、共振周波数の正弦波で駆動させて用いる共振型の偏向器であるレゾナントスキャン型、複数のミラーを用いるポリゴンミラー型などが挙げられ、好ましくはガルバノミラー型である。
【0056】
走査速度は、特に制限されるものではないが、20~20000mm/secであり、具体的には60~8000mm/secであり、より具体的には80~8000mm/secであることができる。例えば、その下限値は、レーザー出力が1Wの場合、20mm/sec以上である。8mm/secでは食刻が発生し、2mm/secではレーザー照射部が焼け焦げる恐れがある。また、レーザー出力が5Wの場合で例示すると、下限値は80mm/sec以上であり、具体的には100mm/sec以上であることができる。また、走査速度が60mm/sec以下では、食刻現象が発生したり、またはレーザー照射部が焼け焦げる恐れがある。
【0057】
さらに、走査速度は、高いほどマークの識別性に影響を与えることなく生産性を上げることができる。したがって、例えば、レーザー出力5Wでは、走査速度は80mm/sec~10000mm/secであり、具体的には90mm/sec~10000mm/secであり、より具体的には100mm/sec~10000mm/secである。また、レーザー出力が8Wの場合には、走査速度は250mm/sec~20000mm/secであり、具体的には500mm/sec~15000mm/secであり、より具体的には1000mm/sec~10000mm/secであることができる。
【0058】
本発明において、レーザーを経口投与用組成物の表面に走査して照射する時に、単位面積当たりのレーザーのエネルギーは、マーキングの可否及び経口投与用組成物の食刻の有無の観点から、390~21000mJ/cm2であり、具体的には400~20000mJ/cm2であり、より具体的には450~18000mJ/cm2であることができる。単位面積当たりのエネルギーが390mJ/cm2より低い場合には、マークを施すことができず、上記エネルギーが21000mJ/cm2より大きい場合には、食刻が発生するため、好ましくない。
【0059】
本発明によるレーザーマーキング方法が対象とする対象物は経口投与製品であって、食品であることができ、薬品であることができる。また、上記製品は、固状として所定の硬度を有する成形品であることができ、上記成形品の表面に皮膜が形成され、上記皮膜上にレーザーによりマーキングされることができる。また、上記製品は、液状や粉末状、顆粒状であることができ、上記製品が、本発明の皮膜組成物により形成されたカプセルやフィルム内に収容され、上記カプセルまたはフィルムの表面にレーザーによりマーキングされることができる。
【0060】
経口投与製品の外皮の表面にレーザーマーキングにより形成されたマークは、外皮の表面、すなわち、レーザーマーキングによるマークが形成されていない部分と比べて明度差を有する。上記明度差が大きいほど、マークが鮮明に現れて識別性を提供することができる。マークと周辺との上記明度差は、特に限定されるものではないが、9以上であり、具体的には、12以上または22以上であることができる。
【0061】
また、上記経口投与製品の表面にレーザーマーキングを行う場合、上記マークは、外皮の表面から一定の深さで形成されることができる。すなわち、外皮の一部が食刻される現象が生じることができる。上記マークが形成される深さは、レーザーの出力などの条件によって差が生じるものであり、特に限定されないが、11~13.5μmの深さを有することができる。
【0062】
本発明によるZnOを含む皮膜形成組成物を用いて皮膜を形成することで、皮膜の表面に鮮明なマークをレーザー光の照射により形成することができる。これにより、従来に用いられていたレーザー装置をそのまま活用することができる。
【実施例0063】
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明の一例として提供されるものであり、これにより本発明を限定しようとするものではない。
精製乳糖、トウモロコシ澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ZnOを混合して皮膜形成組成物を製造した。皮膜形成組成物の全重量中に、トウモロコシ澱粉10重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5重量%の一定量で添加し、ZnOを0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、4.5重量%、5.0重量%、10.0重量%、15.0重量%、20.0重量%、25.0重量%、30.0重量%、及び35.0重量%でそれぞれ含み、精製乳糖を残部量で含む皮膜形成組成物をそれぞれ製造した。
上記それぞれの錠剤に対して、50kHzでレーザーの出力を2W、3W、4W、5W、6W、7W、8W、9W、及び10Wに調節したことを除き、表1のような条件のレーザー光を照射することで、錠剤の表面にマーキングした。この時、同一の錠剤に対してレーザー出力を変えてマーキングすることでマークを形成した。