(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147617
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】インピーダンス測定装置、測定方法および二次電池診断システム
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20241008BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20241008BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/389
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109247
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2023551086の分割
【原出願日】2023-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2022028753
(32)【優先日】2022-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】721007641
【氏名又は名称】株式会社電知
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】向山 大吉
(72)【発明者】
【氏名】向山 公一
(72)【発明者】
【氏名】井上 一孝
(57)【要約】
【課題】電池の状態診断等に利用されるインピーダンス解析の精度を向上する。
【解決手段】3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号からなる電圧または電流を入力信号として任意の電気化学系に印加する印加部と、前記入力信号の電圧入力値または電流入力値と、前記入力信号に対応した電流応答値または電圧応答値を応答信号として測定する測定部と、前記応答信号の電流応答値または電圧応答値から、複数の周波数におけるインピーダンス値を算出する算出部とを備えることを特徴とするインピーダンス測定装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波からなる電圧または電流を入力信号として任意の電気化学系に印加する印加部と、
前記入力信号の電圧入力値または電流入力値と、前記入力信号に対応した電流応答値または電圧応答値を応答信号として測定する測定部と、
前記応答信号の電流応答値または電圧応答値から、複数の周波数におけるインピーダンス値を算出する算出部と、
を備え、
前記入力信号の波形は半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっていることを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項2】
前記入力信号が、3~5段の階段波からなる電圧または電流であることを特徴とする請求項1記載のインピーダンス測定装置。
【請求項3】
前記入力信号が、周波数の異なる2以上の方形波を重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項1記載のインピーダンス測定装置。
【請求項4】
前記入力信号が、周波数および振幅の異なる2以上の方形波を重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項3記載のインピーダンス測定装置。
【請求項5】
前記入力信号が、周波数の異なる2以上の方形波を互いの位相をずらして重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項3記載のインピーダンス測定装置。
【請求項6】
前記入力信号が、疑似正弦波でない階段波であることを特徴とする請求項1記載のインピーダンス測定装置。
【請求項7】
前記入力信号が、基準となる方形波に対し、該基準方形波の周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍した方形波を1または2以上重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項3記載のインピーダンス測定装置。
【請求項8】
前記入力信号が、基準となる方形波に対し、該基準方形波の周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍し、該基準方形波の振幅をn/(n+1)(nは1~5の整数)倍以下にした方形波を1または2以上重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項4記載のインピーダンス測定装置。
【請求項9】
前記入力信号が、基準となる方形波に対し、該基準方形波の周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍した方形波の1または2以上を、該基準方形波に対して位相を10~350°ずらして重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項5記載のインピーダンス測定装置。
【請求項10】
一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号からなる電圧または電流を入力信号として任意の電気化学系に印加する印加ステップと、
前記入力信号の電圧入力値または電流入力値と、前記入力信号に対応した電流応答値または電圧応答値を応答信号として測定する測定ステップと、
前記応答信号の電流応答値または電圧応答値から、複数の周波数におけるインピーダンス値を算出する算出ステップと、
を備えることを特徴とするインピーダンス測定方法。
【請求項11】
前記入力信号が、3~5段の階段波からなる電圧または電流であることを特徴とする請求項10記載のインピーダンス測定方法。
【請求項12】
前記入力信号が、周波数の異なる2以上の方形波を重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項10記載のインピーダンス測定方法。
【請求項13】
前記入力信号が、周波数および振幅の異なる2以上の方形波を重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項12記載のインピーダンス測定方法。
【請求項14】
前記入力信号が、周波数の異なる2以上の方形波を互いの位相をずらして重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項12記載のインピーダンス測定方法。
【請求項15】
前記入力信号が、疑似正弦波でない階段波であることを特徴とする請求項10記載のインピーダンス測定方法。
【請求項16】
前記入力信号が、基準となる方形波に対し、該基準方形波の周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍した方形波を1または2以上重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項12記載のインピーダンス測定方法。
【請求項17】
前記入力信号が、基準となる方形波に対し、該基準方形波の周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍し、該基準方形波の振幅をn/(n+1)(nは1~5の整数)倍以下にした方形波を1または2以上重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項13記載のインピーダンス測定方法。
【請求項18】
前記入力信号が、基準となる方形波に対し、該基準方形波の周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍した方形波の1または2以上を、該基準方形波に対して位相を10~350°ずらして重畳して得られた階段波であることを特徴とする請求項14記載のインピーダンス測定方法。
【請求項19】
請求項1から9に記載のインピーダンス測定装置を備えることを特徴とする電池の診断装置。
【請求項20】
請求項10から18に記載のインピーダンス測定方法を備えることを特徴とする電池の診断方法。
【請求項21】
一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が測定対象となる二次電池の充放電規格に準拠した接続部と、
3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号からなる電圧または電流を入力信号として測定対象となる二次電池に印加する印加部と、
前記入力信号の電圧入力値または電流入力値と、前記入力信号に対応した電流応答値または電圧応答値を応答信号として測定する測定部と、
前記応答信号の電流応答値または電圧応答値から、複数の周波数におけるインピーダンス値を算出する算出部と、
前記インピーダンス値に基づいて電池の劣化状態を解析する解析部と、
前記測定部により得られた入力信号および応答信号、前記算出部により得られたインピーダンス値、および/または前記解析部により得られた劣化状態の解析結果を記憶する記憶部と、
を備えることを特徴とする二次電池診断システム。
【請求項22】
前記印加部と前記測定部と前記算出部と前記解析部と前記記憶部とがネットワークを介して相互に通信可能であることを特徴とする請求項21に記載の二次電池診断システム。
【請求項23】
さらに前記ネットワークを介して通信可能である携帯端末を備えることを特徴とする請求項22に記載の二次電池診断システム。
【請求項24】
前記測定部において、前記二次電池の放電電圧または放電電流として3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号を入力信号として測定対象となる二次電池に印加することを特徴とする請求項21に記載の二次電池診断システム。
【請求項25】
前記接続部を介して測定対象となる二次電池および印加部と接続可能な充電設備を備え、前記測定部において、前記二次電池への充電電圧または充電電流として3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号を入力信号として測定対象となる二次電池に印加することを特徴とする請求項21に記載の二次電池診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成かつ短時間で、より多くの周波数におけるインピーダンス値を取得することができるインピーダンス測定装置および測定方法、さらに当該インピーダンス測定装置を使用し、高精度で電池の状態を診断することが可能な二次電池診断システムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンやノートパソコン等に搭載されるモバイル型の電源としてリチウムイオン電池が広く用いられている。近年、リチウムイオン電池の大容量化によって、電気自動車用の車載電源や大型の電力貯蔵用蓄電池にも使用されるようになり、耐久性や安全性の確保が以前にまして重要になっている。
【0003】
このような電池の状態を測定する方法として、サイン波の交流波を電池に印加してインピーダンス応答を得る交流インピーダンス法が知られている。この方法を用いてインピーダンス測定結果を解析することによって、電池内部の状態、例えば、電極や活物質の劣化、電解質、電解液の状態等について詳しく知ることができる。
【0004】
しかし、電気自動車等の大型二次電池の充放電は直流で行われるため、交流のサイン波を電池に印加して行う交流インピーダンス法は、別途高価な機器が必要であったり、入力電圧の制御が難しかったりする等、現実的な運用が困難である。これに対して、簡易な構成のパワーコントローラを使用し、疑似パルス波形である方形波を電池に印加してインピーダンスを測定する手法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来行われてきたサイン波を入力信号とする交流インピーダンス法では、一度の測定で一の周波数におけるインピーダンス値しか得られない。これに対し、方形波を使用した特許文献1の方法によれば、電池からの応答信号をフーリエ変換することで入力波の周波数に対して奇数倍(1,3,5,7,9・・・倍)の周波数成分が得られ、これによって一度の測定で複数の周波数における値を取得することができる。しかしながら、インピーダンス解析によって電池の状態を診断するためには、さらに細かい周波数ごとのインピーダンスプロットが望まれる。例えば、周波数を対数表記としてインピーダンス値を周波数ごとにプロットすると、基準となる周波数に対して1~10倍までのスケールにおいて得られる値が1,3,5,7,9の5点しかなく、特に低周波数側の領域において、単位時間当たりにより多くのインピーダンス値を取得することが、解析精度のさらなる向上につながる。
【0007】
本発明の目的は、インピーダンス測定において、簡易な構成かつ一度の測定によってより多くの周波数におけるインピーダンス値を取得することであり、これによって電池の状態診断等に利用されるインピーダンス解析精度を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来技術の課題に鑑みて本発明者が鋭意検討を行った結果、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている入力信号を電池に印加することによって、一度の測定でより多くの周波数におけるインピーダンス値を得ることができ、これによってインピーダンス測定を利用した解析精度が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、インピーダンス測定において、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号を入力信号として使用することを特徴としている。
【0009】
すなわち、本発明のインピーダンス測定装置は、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波からなる電圧または電流を入力信号として任意の電気化学系に印加する印加部と、前記入力信号の電圧入力値または電流入力値と、前記入力信号に対応した電流応答値または電圧応答値を応答信号として測定する測定部と、前記応答信号の電流応答値または電圧応答値から、複数の周波数におけるインピーダンス値を算出する算出部を備え、前記入力信号の波形は半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のインピーダンス測定方法は、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波からなる電圧または電流を入力信号として任意の電気化学系に印加する印加ステップと、前記入力信号の電圧入力値または電流入力値と、前記入力信号に対応した電流応答値または電圧応答値を応答信号として測定する測定ステップと、前記応答信号の電流応答値または電圧応答値から複数の周波数におけるインピーダンス値を算出する算出ステップを備え、前記入力信号の波形は半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっていることを特徴とするものである。
【0011】
前記入力信号は、3~5段の階段波からなる電圧または電流であることが望ましい。また、前記入力信号は、周波数の異なる2以上の方形波を重畳して得られた階段波であることが望ましい。また、前記入力信号は、周波数および振幅の異なる2以上の方形波を重畳して得られた階段波であることが望ましい。また、前記入力信号は、周波数の異なる2以上の方形波を互いの位相をずらして重畳して得られた階段波であることが望ましい。また、前記入力信号は、疑似正弦波でない階段波であることが望ましい。
【0012】
また、前記入力信号は、基準となる方形波に対し、該基準方形波の周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍した方形波を1または2以上重畳して得られた階段波であることが望ましい。また、前記入力信号は、基準となる方形波に対し、該基準方形波の周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍し、該基準方形波の振幅をn/(n+1)(nは1~5の整数)倍以下にした方形波を1または2以上重畳して得られた階段波であることが望ましい。また、前記入力信号は、基準となる方形波に対し、該基準方形波の周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍した方形波の1または2以上を、該基準方形波に対して位相を10~350°ずらして重畳して得られた階段波であることが望ましい。
【0013】
また、本発明の電池の診断装置は前記インピーダンス測定装置を備えるものである。また、本発明の電池の診断方法は前記インピーダンス測定方法を備えるものである。
【0014】
また、本発明の二次電池診断システムは、測定対象となる二次電池の充放電規格に準拠した接続部と、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波からなる電圧または電流を入力信号として測定対象となる二次電池に印加する印加部と、前記入力信号の電圧入力値または電流入力値と、前記入力信号に対応した電流応答値または電圧応答値を応答信号として測定する測定部と、前記応答信号の電流応答値または電圧応答値から、複数の周波数におけるインピーダンス値を算出する算出部と、前記インピーダンス値に基づいて電池の劣化状態を解析する解析部と、前記測定部により得られた入力信号および応答信号、前記算出部により得られたインピーダンス値、および/または前記解析部により得られた劣化状態の解析結果を記憶する記憶部と、を備え、前記入力信号の波形は半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっていることを特徴とする。
【0015】
また、前記印加部と前記測定部と前記算出部と前記解析部と前記記憶部とがネットワークを介して相互に通信可能であることが望ましい。また、さらに前記ネットワークを介して通信可能である携帯端末を備えることが望ましい。また、前記測定部において、前記二次電池の放電電圧または放電電流として一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている入力信号を測定対象となる二次電池に印加することが望ましい。また、前記接続部を介して測定対象となる二次電池および印加部と接続可能な充電設備を備え、前記測定部において、前記二次電池への充電電圧または充電電流として3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている入力信号を測定対象となる二次電池に印加することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構成で、かつ一度の測定でより多くの周波数におけるインピーダンス値を取得することが可能となり、これによって電池の状態診断等に用いられるインピーダンス解析の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明のインピーダンス測定装置の概略図である。
【
図2】
図2は2~4段の階段波の例である((A)2段、(B)3段、(C)4段)。
【
図3】
図3は位相をずらした方形波を重畳して得た3段の階段波の例である。
【
図4】
図4は2~4段の階段波のそれぞれを用いた場合においてインピーダンス値の得られる周波数のプロットである((A)2段、(B)3段、(C)4段)。
【
図5】
図5は2~4段の階段波により測定した電池のナイキスト線図である。
【
図6】
図6は2~4段の階段波により測定した電池の周波数特性図である。
【
図7】
図7は本発明の二次電池診断システムの概略図である。
【
図8】
図8は本発明の第一実施形態の二次電池診断システムである。
【
図9】
図9は本発明の第二実施形態の二次電池診断システムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[インピーダンス測定装置]
本発明のインピーダンス測定装置の概略図を
図1に示す。
図1に示すように、本発明のインピーダンス測定装置10は、印加部20と、測定部30と、算出部40とを備えている。なお、本発明においてインピーダンスとは、狭義の不変性を満たすものに限定されるものではなく、insituインピーダンス等の経時変化を有するインピーダンスも含まれる。
【0019】
測定対象となる電池1は、印加部20と測定部30にそれぞれ接続される。なお、本実施例においては、電池を測定対象としているものの、その他任意の電気化学系であればよく、例えば、電気化学セル、キャパシタ、スピーカー等の電化製品のようなものであってもよい。電池としては、一次電池、二次電池問わず、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池、ニッケルカドミウム電池等が挙げられる。特に車載用大型電池や、大型蓄電池のインピーダンス測定、あるいはそれに基づいた電池の状態診断において、本発明は特に有用である。
【0020】
印加部20は電池1に接続し、3段以上の階段波からなる電圧または電流を入力信号として電池1に印加する。また、測定部30は電池1および印加部20に接続し、印加部20からの入力信号の電圧入力値または電流入力値と、印加部20からの入力信号に対応した電池1の電流応答値または電圧応答値を測定する。定電圧での応答を見る場合、印加部20は、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている入力信号となるように制御された電圧値を入力信号として電池1に印加し、その応答信号としての電流値の変化を測定する。あるいは、定電流での応答を見る場合、印加部20は、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている入力信号となるように制御された電流値を入力信号として電池1に印加し、その応答信号としての電圧値の変化を測定する。したがって、印加部20は、所定の電圧値または電流値となるように入力信号を制御する必要がある。例えば、測定対象である電池の充放電設備に備えられたパワーコントローラを利用することで、定電流または定電圧となるように入力信号を調整することができる。
【0021】
図2に、2~4段の各段数の階段波の例を示す。
本発明において、階段波とは時間に対してステップ状(階段状)に電圧値または電流値が変化する波形のことである。階段波の段数は、一周期あたりでの電圧値または電流値の定常部分(直線部分)の数を意味する(例えば、特開2007-266951号参照)。したがって、1段の階段波とは一定の電圧値または電流値となるように制御された信号であり、波形は単一の直線となる。また、2段の階段波とは、電圧値または電流値の定常部分が一周期あたり2つのもので、
図2(A)に示すように高いレベルと低いレベルをON/OFFによりスイッチして構成する疑似パルス波形であり、一般に方形波と呼ばれる。すなわち、高レベルの定常部分と低レベルの定常部分との間を略直線状に遷移して構成される波形であり、通常、高レベルと低レベルの時間の比率(デューティ比)が1:1のものが典型的な方形波である。また、高レベルの比率が小さくなるほど、典型的なパルス波に近くなる。なお、特許文献1に記載の技術では、疑似パルス波形であるこの2段の階段波(方形波)を用いてインピーダンス測定を行っている。
【0022】
本発明のインピーダンス測定装置では、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号を入力信号として用いる。
図2(B),(C)に、3段の階段波と4段の階段波の例を示す。3段の階段波は、電圧値または電流値の定常部分(以下、段数と呼ぶ)が一周期あたり3つの信号であり、4段の階段波は一周期あたり段数が4つの信号である。これらの階段波の波形も、定常部分との間を略直線状に遷移した波形となる。
【0023】
3段の階段波は、周波数の異なる2段の階段波、すなわち方形波を2つ重畳することで得られる。すなわち、1の基準となる方形波に対し、これと異なる周波数の方形波を重畳することによって、3段の階段波を得ることができ、
図2(B)に示される3段の階段波は、基準となる方形波に対して、周波数が2倍の方形波を重ねることによって得られたものである。
【0024】
4段の階段波は、周波数の異なる方形波を3つ重畳することによって得られる。
図2(C)に示される4段の階段波は、基準となる方形波に対して、周波数が3/2倍の方形波と、周波数が2倍の方形波の計3つの方形波を重畳して得られたものである。ここで、階段波の段数は、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分(直線部分)の数を意味するが、同一の絶対値において複数回登場する定常部分の数は一つと数える。すなわち、
図2(C)の階段波は、絶対値として+1A、+0.33A、-0.33A、-1Aの4つの位置で定常部分が出現しているため、この階段波は4段となる。
【0025】
5段以上の階段波は、以上の3,4段の階段波と同様、周波数の異なる方形波を4つ以上重畳することによって得られる。すなわち、4つの方形波を重畳することで5段の階段波、5つの方形波を重畳することで6段の階段波が得られる。なお、本発明においては、3~5段の階段波を用いることが好ましい。6段以上の階段波は、波形が複雑となり制御が困難となる場合がある。また、本発明に用いる階段波の周波数は特に限定されないが、100Hz以下の周波数に調整することが望ましい。
【0026】
また、本発明においては、基準となる方形波に対して、周波数を(n+1)/n(nは1~5の整数)倍した方形波を1または2以上重畳して得られた階段波を用いることが望ましい。すなわち、基準方形波に対して、周波数が2倍、3/2倍、4/3倍、5/4倍、6/5倍の方形波を1つまたは2つ以上重畳して得られた階段波を好適に用いることができる。
【0027】
基準となる方形波と、周波数を(n+1)/n倍した方形波を重畳すると、n倍の位置で周期が重なる。例えば、基準方形波に対して2倍の周波数の方形波を重畳した場合、1倍の位置で周期が重なる。同様に、基準方形波に対して3/2倍の方形波を重畳した場合、2倍の位置で周期が重なり、基準方形波に対して4/3倍の方形波を重畳した場合、3倍の位置で周期が重なる。このように、(n+1)/n倍の方形波を重畳することで、n倍の位置で周期が重なることとなるため、階段波としての周期が短くなり、入力波として扱いやすくなるほか、応答信号の解析処理もしやすい。
【0028】
また、本発明に用いる階段波をデザインする際、重畳する方形波の振幅は基準となる方形波の振幅と同一でよく、あるいは異なっていてもよい。具体的には、重畳する方形波の振幅を周波数の倍数の逆数以下とすることも好ましい。例えば、基準方形波に対して周波数が2倍の方形波を重畳しようとした場合、その振幅を基準方形波に対して1/2倍以下として重畳する。同様に、周波数3/2倍の方形波は振幅を2/3倍以下、周波数4/3倍の方形波は振幅を3/4倍以下、周波数5/4倍の方形波は振幅を4/5倍以下といったように振幅を調整して重畳する。言い換えると、基準方形波の周波数を(n+1)/n倍した方形波を重畳する場合、振幅をn/(n+1)倍以下とすることが望ましい。
【0029】
図2(B),(C)に示す3段以上の階段波は、本発明に用いる入力信号の好適な例である。
図2(B)の階段波は3段であり、基準となる方形波に対し、周波数を2倍した(振幅は同一の)方形波を重畳して得られた波形である。この階段波は、周期が1.0秒、基準が0A、一段目が+1A、二段目が0A、三段目が-1Aとなっている。
【0030】
図2(C)の階段波は4段であり、基準となる方形波に対し、周波数を2倍し、振幅を1/2倍にした方形波と、周波数を3/2倍し、振幅を2/3倍にした方形波とを重畳して得られた波形である。この階段波は、周期が2.0秒、基準が0A、一段目が+1A、二段目が+0.33A、三段目が-0.33A、四段目が-1Aとなっている。
【0031】
なお、
図2(B),(C)に示す階段波は、いずれも基準を0Aとした正負対称の波形となっているが、基準は0Aでなくともかまわない。例えば、+3Aを基準とし、高レベル側を+4A、低レベル側を+2Aとした波形、あるいは-3Aを基準とし、高レベル側を-2A、低レベル側を-4Aとした波形であってもよい。特に電池の診断に用いる際には、充電電流あるいは放電電流を電池に流した状態で測定してもよく、その場合、基準を+側あるいは-側の任意の位置に設定して、階段波を設計してもよい。
【0032】
さらに、本発明の階段波の作成に際し、基準となる方形波または重畳する方形波、あるいはその両方について、それぞれ位相をずらした方形波を用いてもよい。通常の方形波は、
図2(A)に示すように入力と同時に定常電圧値あるいは定常電流値まで直線的に立ち上がる。このような方形波の位相をずらすと、ずらした位相の分だけ入力信号の立ち上がりが遅れ、形状は同じであっても時間単位での周期が異なった波形となる。このため、互いに位相をずらした方形波を重畳することによって、より幅広い種類の階段波を作成することができる。
【0033】
図3に、基準となる方形波に対して位相をずらした方形波を重畳して得られた階段波を示す。
図3に示される3段の階段波は、基準となる方形波に対して、周波数が2倍で位相を180°ずらした方形波を重畳することによって得られたものである。
図2(B)に示す同一位相の方形波を重畳して得られた3段の階段波と、
図3に示す位相をずらした方形波を重畳して得られた3段の階段波とでは、似た形状であっても入力信号の変化の性質が異なる。測定対象となる電気化学系の種類、特に電池の種類や材料等によって、安定な
インピーダンス値を得るための入力信号として適切な階段波は様々に異なる可能性がある。このため、インピーダンス測定を行うにあたって、より幅広い種類の階段波をデザインすることが求められる場合がある。
【0034】
階段波の作成に際しては、基準となる方形波の位相をずらしてもよく、また、重畳する方形波の位相をずらしてもよい。あるいは基準波、重畳波の両方の位相をずらしてもよい。一周期は360°であるため、0<X<360°の範囲で方形波の位相をずらせばよいが、特に10~350°の範囲で方形波の位相をずらすことが望ましい。
【0035】
また、本発明に用いる階段波としては、その波形が疑似正弦波でないことが望ましい。電子工学や信号処理の分野では、細かい階段状の波形をサイン波に近づけて作った疑似正弦波という波形が知られており、交流サイン波の代替波形として用いられる場合がある。一方で、インピーダンス測定において、交流サイン波を使用すると一度の測定で一の周波数におけるインピーダンス値しか得られない。このため、このような疑似正弦波を本発明の階段波として使用すると、一度の測定でより多くの周波数におけるインピーダンス値を取得するという本発明の効果が得られない場合がある。
【0036】
本発明においては、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号を入力信号として用いることにより、例えば、特許文献1において使用される2段の階段波(方形波)を使用した場合と比較して、特に低周波数側の領域において、単位時間あたりにより多くのインピーダンス値を得ることができる。
【0037】
図4に、2段の階段波(方形波)を用いた場合(
図2(A))、3段の階段波を用いた場合(
図2(B))、4段の階段波を用いた場合(
図2(C))のそれぞれにおいてインピーダンス値の得られる周波数のプロットを示す。なお、3段の階段波として
図2(B)の階段波を用いた場合でも、
図3の階段波を用いた場合でも結果は同じとなる。
【0038】
電池からの応答信号を周波数解析することによって、2段の階段波(方形波)を使用した場合、当該階段波の周波数に対して奇数倍の周波数が得られ、基準周波数を1とすると1~10倍までの低周波数側において1,3,5,7,9倍の5点のデータが得られる。しかしながら、特に低周波数側においてはこのデータ数は十分なものとは言えず、より多くのインピーダンス値が得ることが望ましい。
【0039】
これに対して、3段の階段波を用いた場合には、基準周波数の1~10倍までの低周波数側において、1,2,3,5,6,7,9,10倍の8点と、より多くのデータが得られることがわかる(なお、3段の階段波として
図2(B)の階段波を用いた場合でも、
図3の階段波を用いた場合でも結果は同じとなる。)。また、4段の階段波を用いた場合、1,1.5,2,3,4.5,5,6,7,7.5,9,10倍の11点と、さらに細かい周波数ごとのデータを得ることができる。
【0040】
特に電池のインピーダンス解析を目的とした場合には、低周波数領域におけるインピーダンス値が非常に重要である。本発明のインピーダンス測定装置を用いることによって、低周波数領域においてより多くのデータを得ることが可能となるため、電池の解析精度を大きく向上することができる。また、従来の正弦波を使用する交流インピーダンス法では、周波数解析機器等やポテンショスタット等、高価な機器が必要であったり、入力電圧の制御が難しかったりするといった問題があったものの、本発明のインピーダンス測定装置は、任意の電圧/電流値を時間で制御する比較的簡易な構成で解析を行うことが可能である。
【0041】
測定部30は電池1および印加部20に接続し、印加部20からの入力信号の電圧入力値または電流入力値と、印加部20からの入力信号に対応した電池1の電流応答値または電圧応答値を測定する。測定された入力信号と応答信号は、当該測定部30と接続した算出部40へと送られ、算出部40において当該入力信号および応答信号についてフーリエ変換、ウェーブレット変換等の周波数解析を行うことにより、複数の周波数における電池1のインピーダンス値が算出される。
【0042】
より具体的には、測定部30により、印加部20からの入力信号と電池1からの応答信号が測定され、算出部40において入力スペクトルと出力スペクトルを得る。そして、このスペクトルの相互相関関数/自己相関関数によって、それぞれの周波数におけるインピーダンス値Z’、Z”を算出する。
【0043】
図2(A)~(C)の各階段波を入力信号(電流入力値)として電池に入力して得られた入出力スペクトルから算出したインピーダンス値のナイキスト線図を
図5に、周波数特性図を
図6に示す。
図5(A)に示すように、2段の階段波(方形波)を用いて得られたインピーダンスデータは、1~10Hzの低周波数領域においてデータ数が少ないため、曲線の形状が若干不明瞭である。
【0044】
これに比べて、
図5(B)に示す3段の階段波を用いて得られたインピーダンスデータは、1~10Hzの低周波数領域でのデータ数が増加しているため、曲線の形状がより明確になっていることがわかる。また、
図5(C)に示す4段の階段波を用いて得られたインピーダンスデータでは、低周波数領域での曲線がさらにはっきりした形で得られている。
【0045】
電池の状態診断を目的とする場合、インピーダンス特性の微細な変化を読み取ることが重要となる。例えば、インピーダンス値の測定結果をナイキスト線図として複数のデータを比較した場合、半円の径が増加していると内部抵抗も増加していることなどがわかる。しかし、周波数ごとのインピーダンス値のプロットが少ないと、このような微細な変化を読み取ることができない。高周波数領域(1Hz以上)では測定時間が短くなるため、測定回数を多くすることでデータを増やすことが比較的容易であるが、低周波領域(1Hz未満)では一回の測定に時間がかかるため、測定回数を多くすることは現実的でない。
【0046】
特許文献1の方法によれば、2段の階段波(方形波)を用いることで、入力波の周波数に対して奇数倍(1,3,5,7,9・・・倍)の周波数でインピーダンス値が得られるため、1回の測定で比較的広い範囲の周波数領域においてデータを取得することができるが、
図5(A)に示すように、低周波数側においてデータ数が十分なものであるとは言い難い。これに対して、本発明は、
図5(B),(C)に示すように、3段以上の階段波を使用することによって、低周波数側においてより多くのインピーダンスデータが得られ、これによってインピーダンス特性の微細な変化も読み取ることが可能となるため、インピーダンス解析精度を大きく向上させることができる。
【0047】
[二次電池診断システム]
つづいて、本発明の二次電池診断システムの概略図を
図7に示す。
図7に示すように、本発明の二次電池診断システム100は、測定対象となる二次電池1と、接続部110と、印加部120と、測定部130と、算出部140と、解析部150と、記憶部160とを備えている。測定対象となる二次電池1は、接続部110を介して印加部120および測定部130と連絡している。また、印加部120と測定部130と算出部140と解析部150と記憶部160とは、ネットワークを介して相互に通信可能な状態となっている。
【0048】
測定対象となる二次電池1は、充放電可能に構成された電池であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池等が挙げられる。本発明は、特に車載用二次電池あるいは大型の定置型蓄電池の診断において有用であるが、その他の二次電池にも利用することができる。
【0049】
接続部110は、測定対象となる二次電池1の充放電規格に準拠している。例えば、電気自動車の充放電規格としては、CHAdeMO、GB/T、CCS1、CCS2、Tesla等が挙げられる。すなわち、二次電池1側のインレットの充放電規格に合致した充電コネクタが接続部110となる。接続部110はケーブルを介して印加部120および測定部130と連絡している。
【0050】
印加部120、測定部130および算出部140については、上述したインピーダンス測定装置の印加部および測定部と概略同一であるが、以下に簡単に説明する。
【0051】
印加部120は接続部110を介して測定対象となる二次電池1に連絡し、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号からなる電圧または電流を入力信号として二次電池1に印加する。ここで、3段以上の階段波とは、電圧値または電流値の定常部分が一周期あたり3つ以上の波形である。測定部130は二次電池1および印加部120に連絡しており、印加部120からの入力信号の電圧入力値または電流入力値と、印加部120からの入力信号に対応した二次電池1の電流応答値または電圧応答値を測定する。
【0052】
測定部130において測定された入力信号と応答信号は、ネットワークを介して算出部140へと送信され、算出部140において入力信号と応答信号についてフーリエ変換、ウェーブレット変換等の周波数解析を行うことにより、複数の周波数における二次電池1のインピーダンス値が算出される。
【0053】
ここで、本発明の二次電池診断システムにおいては、3段以上の階段波を入力信号として使用することによって、従来の方法と比較して、一度の測定でより多くの周波数におけるインピーダンス値が得られる。このため、インピーダンス特性の微細な変化も読み取ることが可能となり、インピーダンス解析精度を大きく向上させることができる。
【0054】
算出部140において算出されたインピーダンス値のデータは、ネットワークを介して解析部150へと送信され、解析部150において所定の解析処理を行うことで、二次電池1の詳細な劣化情報を取得する。より具体的には、例えば、解析部150では、算出部140で得られたインピーダンス値のデータを所定の等価回路を用いてフィッティングを行い、詳細な解析データを得ることができる。
【0055】
電池の内部では、電極合剤層内、集電体合剤層間、集電体内の電子移動、セパレータ内、合剤層電解質内、固体電解質界面(SEI)のイオン移動、電気化学反応による電荷移動、活物質内固相拡散等が起こっており、インピーダンス解析においては、これらの素過程に基づいて等価回路設計を行う。二次電池1を測定して得られたインピーダンスデータについて、所定の等価回路を用いてフィッティング解析を行うことによって、上述した各種素過程の情報を取得することができる。そして、このようにして得られた解析データはネットワークを介して記憶部160へと送信される。また、必要に応じて、記憶部160に保存された解析データを呼び出し、各種電池間で得られた解析データを比較することによって、より詳細な劣化情報を得ることができる。なお、解析部150においては、このようなフィッティング解析だけではなく、履歴、温度情報等、他の様々な解析処理を行ってもよい。
【0056】
測定部130において測定された入力信号と応答信号、算出部140において算出されたインピーダンス値のデータ、解析部150において取得された解析データは、いずれもネットワークを介して記憶部160に送信され、保存される。また、必要に応じて記憶部160から別途通信可能に接続された端末へと送信してもよい。例えば、PCやスマートフォン等、キーボードやマウス、タッチパネルのような入力装置を備えた端末から操作し、インピーダンス値のデータや解析データを、ディスプレイを備えた端末から確認することができる。
【0057】
測定部130、算出部140、解析部150および記憶部160は、一つの装置に一体に組み込まれた、外部ネットワークに接続していないスタンドアローン型の装置であってもよい。あるいは、測定部130において得られた入力信号および応答信号を、測定部130の設けられた装置からネットワークを介して外部サーバーへと送信し、当該サーバーに設けられた算出部140、解析部150および記憶部160にて処理を行ってもよい。この際、測定装置から直接外部サーバー内での算出処理、解析処理等を操作することができる。あるいは別途ネットワークと通信可能に設けられたPCやスマートフォン等の端末からサーバー内での処理を操作してもよい。
【0058】
[第一実施形態]
図8に、本発明の第一実施形態にかかる二次電池診断システム200の概略図を示す。本実施形態の二次電池診断システム200では、電気自動車2に搭載された二次電池1に、接続部110を介して印加部120および測定部130が接続されている。他方、PC内には、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置等が搭載されており、これらによって算出部140、解析部150および記憶部160としての機能を果たす。また、印加部120と測定部130は、有線ケーブル、無線LAN、5GあるいはBluetooth等の通信によってPCと相互に通信可能な状態で接続されており、これによって印加部120、測定部130と、算出部140、解析部150および記憶部160とは、ネットワークを介して相互に通信可能な状態となっている。
【0059】
二次電池診断システム200においては、PCから印加、測定、算出および解析に関する操作のすべてをネットワークを介して行うことができる。例えば、PCの外部記憶装置に記憶される制御プログラムを呼び出し、プログラムを実行することで、印加、測定、算出および解析に至る作業をすべて自動的に行い、解析結果を二次電池1の診断結果としてディスプレイ上に表示することも可能である。
【0060】
第二実施形態
図9に、本発明の第二実施形態にかかる二次電池診断システム300の概略図を示す。本実施形態の二次電池診断システム300では、前記実施形態と同様、電気自動車2に搭載された二次電池1に、接続部110を介して印加部120および測定部130が接続されている。他方、電気自動車2に対して遠隔にあるサーバー上に算出部140、解析部150および記憶部160が設置されており、このサーバーと印加部120、測定部130とはインターネットを介して相互に通信可能な状態となっている。また、別途スマートフォン等の携帯端末が、印加部120、測定部130およびサーバーと通信可能な状態で設けられている。
【0061】
二次電池診断システム300においては、スマートフォン内に各種制御プログラムを含むソフトウェアがインストールされており、これによって印加、測定、算出および解析に至る作業を外部から操作することができる。また、解析結果を二次電池1の診断結果としてスマートフォン画面上に表示することができ、非常に簡単な操作で電池診断を行うことができる。
【0062】
また、本発明の二次電池診断システムにおいては、一周期あたりの電圧値または電流値の定常部分が3段以上の階段波で、波形が半周期で基準電圧値または基準電流値と交わるポイントを中心に点対称となっている信号からなる電圧または電流を入力信号として二次電池1に印加するにあたって、交流信号として3段以上の階段波を直接印加してもよいが、二次電池の放電電流または放電電圧、あるいは二次電池の充電電流または充電電圧といった直流信号を入力信号として印加してもよい。むしろ入力信号の供給安定性や二次電池への負荷や安全性への懸念を考慮すると、直流信号として3段以上の階段波を印加することが望ましい。
【0063】
二次電池の放電電圧または放電電流として入力信号を印加する場合、例えば、電子負荷装置を使用する等して、放電電圧または放電電流の波形が3段以上の階段波となるように制御する。すなわち、
図2(B)、(C)に例示した階段波は、0を基準とし、+1Aから-1Aの範囲の波形となっているものの、放電電流として階段波を入力する場合には、例えば、-3Aを基準とし、高レベル側を-2A、低レベル側を-4Aとした波形のように調整する必要がある。高レベル側を0とすることも可能であるが、0レベルでの安定な信号の扱いが難しいこともあるため、少なくとも電流値が0とならないように入力信号を調整することが望ましい。
【0064】
また、二次電池の充電電圧または充電電流として入力信号を印加する場合、接続部を介して測定対象となる二次電池および印加部と接続可能な充電設備が必要になる。通常、電気自動車の充電は、充電設備の接続コネクタを二次電池の接続部に挿入し、充電電流を流すことによって行われる。そして、このような直流の充電電流はおおよそ一定のアンペア数の定常電流であり、その上に3段以上の階段波を重畳することによって、階段波が入力信号として二次電池に印加される。
【符号の説明】
【0065】
1 測定対象(電池)
10 インピーダンス測定装置
20 印加部
30 測定部
40 算出部
100 二次電池診断システム
110 接続部
120 印加部
130 測定部
140 算出部
150 解析部
160 記憶部