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特開2024-14765マスターバッチならびにその用途および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014765
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】マスターバッチならびにその用途および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20240125BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240125BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240125BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240125BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240125BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240125BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08J3/22 CEP
C08L21/00
C08L1/02
C08K5/053
C08K7/02
C08L9/00
C08L23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109461
(22)【出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022116533
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】廣田 真之
(72)【発明者】
【氏名】前田 麻美
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA08
4F070AA16
4F070AC04
4F070AC05
4F070AC32
4F070AC38
4F070AC40
4F070AC50
4F070AC52
4F070AC65
4F070AC66
4F070AE01
4F070AE02
4F070AE08
4F070AE09
4F070AE14
4F070FA01
4F070FA17
4F070FB03
4F070FC03
4J002AB012
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC111
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB151
4J002BB181
4J002BB241
4J002BB271
4J002BD121
4J002BG041
4J002CH041
4J002CK021
4J002CP031
4J002EC046
4J002FA042
4J002FD010
4J002FD012
4J002FD020
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD206
4J002GJ02
4J002GM00
4J002GM01
4J002GN00
4J002GN01
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】加硫ゴム組成物の機械的特性を向上できるマスターバッチを提供する。
【解決手段】ゴム成分(A)と、セルロース(B)と、結晶残量10~95質量%の結晶性分散剤(C)とを組み合わせてマスターバッチを調製する。前記結晶性分散剤(C)の融点は130~200℃であってもよい。前記結晶性分散剤(C)は、多環式芳香環を含んでいてもよい。前記結晶性分散剤(C)は、9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物であってもよい。前記マスターバッチは、前記結晶性分散剤(C)の融点以下の温度で加熱して混練することにより製造してもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)、セルロース(B)および結晶性分散剤(C)を含み、かつ前記結晶性分散剤(C)の結晶残量が10~95質量%である、マスターバッチ。
【請求項2】
前記結晶性分散剤(C)の融点が130~200℃である請求項1記載のマスターバッチ。
【請求項3】
前記結晶性分散剤(C)が、多環式芳香環を含む請求項1または2記載のマスターバッチ。
【請求項4】
前記結晶性分散剤(C)が、9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物である請求項1または2記載のマスターバッチ。
【請求項5】
前記結晶性分散剤(C)が、下記式(1)で表される化合物である請求項1または2記載のマスターバッチ。
【化1】
(式中、環Zはアレーン環、RおよびRは置換基、Xはヘテロ原子含有官能基、kは0~4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す)
【請求項6】
前記式(1)において、Xが、基-(OA)m1-OH(式中、Aはアルキレン基、m1は0以上の整数を示す)である請求項5記載のマスターバッチ。
【請求項7】
前記セルロース(B)が、平均繊維径1μm以上の繊維状セルロースである請求項1または2記載のマスターバッチ。
【請求項8】
前記セルロース(B)の割合が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して10~200質量部である請求項1または2記載のマスターバッチ。
【請求項9】
前記ゴム成分(A)が、ジエン系ゴムおよび/またはオレフィン系ゴムである請求項1または2記載のマスターバッチ。
【請求項10】
前記ゴム成分(A)が、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴムおよびエチレン-プロピレン-ジエンゴムからなる群より選択された少なくとも一種である請求項1または2記載のマスターバッチ。
【請求項11】
前記ゴム成分(A)と前記セルロース(B)と前記結晶性分散剤(C)とを、前記結晶性分散剤(C)の融点以下の混練温度で加熱して混練する、請求項1または2記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項12】
前記結晶性分散剤(C)の融点をT(℃)としたとき、前記混練温度が(T-7)℃以下である請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1または2記載のマスターバッチを含む、加硫ゴム組成物。
【請求項14】
請求項1または2記載のマスターバッチと、前記ゴム成分(A)と同種のゴム成分(a)とを、前記結晶性分散剤(C)の融点以下の混練温度で混練して未加硫ゴム組成物を調製する混練工程、前記未加硫ゴム組成物を加硫する加硫工程を含む、加硫ゴム組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項13記載の加硫ゴム組成物で形成された、成形体。
【請求項16】
ベルト、ロール、ガスケット、オイルシール、パッキン、ホース、窓枠ゴム、制振材、カーペットバッギング材、自動車用部材、タイヤまたは電線被覆物である請求項15記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成分、セルロースおよび結晶性分散剤を含むマスターバッチならびにその用途および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物由来の繊維であるセルロースは、環境負荷が小さく、かつ持続型資源であるとともに、高弾性率、高強度、低線膨張係数などの優れた特性を有する。そのため、幅広い用途、例えば、紙、フィルムやシートなどの材料、樹脂の複合材料(例えば、樹脂の補強剤)などに利用されている。また、ゴム組成物においても、ゴムの機械的特性を向上させるために、補強剤としてセルロースが添加されている。
【0003】
WO2019/188104号(特許文献1)には、ゴム成分と、9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物が結合した修飾セルロースナノ繊維とを含む加硫ゴム組成物が開示されている。
【0004】
特開2019-183123号公報(特許文献2)には、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴムから選ばれる少なくとも一種のゴム成分と、前記ゴム成分100質量部あたり1.5~30質量部のフルオレン変性セルロースナノ繊維と、前記ゴム成分100質量部あたり30~120質量部の炭素系フィラーとを含有するゴム組成物が開示されている。
【0005】
WO2020/110955号(特許文献3)には、ゴム成分と、セルロースと、9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物とを含むゴム状組成物が開示されている。
【0006】
特開2021-011559号公報(特許文献4)には、ゴム成分と、セルロースと、9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物と、補強剤と、軟化剤とを含むゴム状組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2019/188104号
【特許文献2】特開2019-183123号公報
【特許文献3】WO2020/110955号
【特許文献4】特開2021-011559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1および2のゴム組成物では、セルロースナノ繊維が修飾されているものの、ゴム成分中での修飾セルロースナノ繊維の分散性が十分ではなく、硬度、引張初期応力、引裂強度などの機械的特性を高度に向上できない。また、修飾セルロースナノ繊維を調製する工程が必要であり、製造工程が煩雑である。
【0009】
一方、特許文献3および4のゴム組成物では、分散剤としてのフルオレン化合物が配合されているものの、ゴムとセルロースとの相容性が低いため、セルロースをゴム中に均一に分散させるのが困難であり、機械的特性を高度に向上できない。
【0010】
従って、本発明の目的は、加硫ゴム組成物の機械的特性を向上できるマスターバッチならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、マスターバッチとして、ゴム成分(A)と、セルロース(B)と、結晶残量10~95質量%の結晶性分散剤(C)とを組み合わせることにより、加硫ゴム組成物の機械的特性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の態様[1]としてのマスターバッチは、ゴム成分(A)、セルロース(B)および結晶性分散剤(C)を含み、かつ前記結晶性分散剤(C)の結晶残量が10~95質量%である。
【0013】
本発明の態様[2]は、前記結晶性分散剤(C)の融点が130~200℃である態様である。
【0014】
本発明の態様[3]は、前記態様[1]または[2]において、前記結晶性分散剤(C)が、多環式芳香環を含む態様である。
【0015】
本発明の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかにおいて、前記結晶性分散剤(C)が、9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物である態様である。
【0016】
本発明の態様[5]は、前記態様[1]~[4]のいずれかにおいて、前記結晶性分散剤(C)が、下記式(1)で表される化合物である態様である。
【0017】
【化1】
【0018】
(式中、環Zはアレーン環、RおよびRは置換基、Xはヘテロ原子含有官能基、kは0~4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す)。
【0019】
本発明の態様[6]は、前記態様[5]の前記式(1)において、Xが、基-(OA)m1-OH(式中、Aはアルキレン基、m1は0以上の整数を示す)である態様である。
【0020】
本発明の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかにおいて、前記セルロース(B)が、平均繊維径1μm以上の繊維状セルロースである態様である。
【0021】
本発明の態様[8]は、前記態様[1]~[7]のいずれかにおいて、前記セルロース(B)の割合が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して10~200質量部である態様である。
【0022】
本発明の態様[9]は、前記態様[1]~[8]のいずれかにおいて、前記ゴム成分(A)が、ジエン系ゴムおよび/またはオレフィン系ゴムである態様である。
【0023】
本発明の態様[10]は、前記態様[1]~[9]のいずれかにおいて、前記ゴム成分(A)が、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴムおよびエチレン-プロピレン-ジエンゴムからなる群より選択された少なくとも一種である態様である。
【0024】
本発明には、態様[11]として、前記ゴム成分(A)と前記セルロース(B)と前記結晶性分散剤(C)とを、前記結晶性分散剤(C)の融点以下の混練温度で加熱して混練する、前記態様[1]~[10]のいずれかのマスターバッチの製造方法も含まれる。
【0025】
本発明の態様[12]は、前記態様[11]において、前記結晶性分散剤(C)の融点をT(℃)としたとき、前記混練温度が(T-7)℃以下である態様である。
【0026】
本発明には、態様[13]として、前記態様[1]~[10]のいずれかのマスターバッチを含む加硫ゴム組成物も含まれる。
【0027】
本発明には、態様[14]として、前記態様[1]~[10]のいずれかのマスターバッチと、前記ゴム成分(A)と同種のゴム成分(a)とを、前記結晶性分散剤(C)の融点以下の混練温度で混練して未加硫ゴム組成物を調製する混練工程、前記未加硫ゴム組成物を加硫する加硫工程を含む加硫ゴム組成物の製造方法も含まれる。
【0028】
本発明には、態様[15]として、前記態様[13]の加硫ゴム組成物で形成された成形体も含まれる。
【0029】
本発明の態様[16]は、前記態様[15]の成形体が、ベルト、ロール、ガスケット、オイルシール、パッキン、ホース、窓枠ゴム、制振材、カーペットバッギング材、自動車用部材、タイヤまたは電線被覆物である態様である。
【0030】
なお、本明細書および特許請求の範囲において「マスターバッチ」とは、ゴム含有マスターバッチを意味し、詳細には、ゴム成分と高濃度のセルロースとを含み、かつ前記ゴム成分で希釈して加硫ゴム組成物を調製するためのゴム組成物(中間生成物または加硫ゴムの原料)を意味する。
【0031】
また、本明細書および特許請求の範囲において「結晶性分散剤(C)の融点」とは、マスターバッチ中における結晶性分散剤(C)の融点を意味する。
【0032】
さらに、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、加硫ゴム組成物を製造するためのマスターバッチが、ゴム成分(A)と、セルロース(B)と、結晶残量10~95質量%の結晶性分散剤(C)との組み合わせであるため、加硫ゴム組成物の機械的特性を向上できる。特に、ゴム組成物中でセルロース(B)が均一に分散されるためか、加硫ゴム組成物の硬度、引張初期応力および引裂強度を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のマスターバッチは、ゴム成分(A)と、セルロース(B)と、結晶残量が10~95質量%である結晶性分散剤(C)とを含む。
【0035】
[ゴム成分(A)]
マスターバッチに含まれるゴム成分(A)は、未加硫のゴム成分である。ゴム成分(A)としては、特に限定されず、慣用のゴム成分を利用できる。慣用のゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム(ACM、ANM)、ブチルゴム(IIR)、エピクロロヒドリンゴム(CO)、多硫化ゴム(OT、EOT)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FFKM、FKM)、含イオウゴムなどが挙げられる。これらのゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのゴム成分のうち、結晶性分散剤(C)によるセルロース(B)の分散性向上効果が大きい点から、ジエン系ゴムおよび/またはオレフィン系ゴムが好ましい。
【0036】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム、ポリブタジエン[例えば、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエン(VBR)など]、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、水添ゴム(例えば、水素化BR、水素化NBR、水素化SBRなど)であってもよい。これらのジエン系ゴムは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-ブテンゴム、エチレン-1-ブテン-ジエンゴム、プロピレン-1-ブテン-ジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン-酢酸ビニルゴム、マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム(M-EPM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M-CM)などが挙げられる。オレフィン系ゴムに含まれるジエン単位(非共役ジエン単位)としては、例えば、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン由来の単位などが挙げられる。これらのオレフィン系ゴムは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
なお、共重合ゴムは、ランダムまたはブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、ラジアルテレブロック型の構造を有する共重合体などが含まれる。
【0039】
これらのうち、ジエン系ゴムおよび/またはオレフィン系ゴムが好ましく、SBR、EPMおよびEPDMからなる群より選択された少なくとも一種が特に好ましい。
【0040】
なかでも、加硫ゴム組成物の硬度、引裂強度を高度に向上できる点から、ジエン系ゴムが好ましい。さらに、ジエン系ゴムの中でも、結晶性分散剤(C)との相容性が高く、セルロース(B)の分散性向上効果が大きい点から、SBRなどの芳香族骨格または芳香環を有するジエン系ゴムが特に好ましい。
【0041】
ジエン系ゴムの割合は、ゴム成分(A)中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0042】
オレフィン系ゴムの割合は、ゴム成分(A)中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0043】
[セルロース(B)]
セルロース(B)としては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが例示できる。これらのセルロースは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースのうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維パルプ(例えば、コットンリンターパルプ)由来のセルロースなどが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ない点から、パルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。
【0044】
セルロース(B)は、粒状などであってもよいが、均一な分散が困難であり、本発明の効果が発現し易い点から、繊維状が好ましい。
【0045】
セルロース(B)が繊維状セルロース(セルロース繊維)である場合、セルロース(B)の繊維径はナノメータサイズであってもよいが、セルロース(B)の分散性を向上できる点から、ミクロンオーダーであるのが好ましい。セルロース繊維の平均繊維径は、10nm~1mm程度の範囲から選択でき、1μm以上であってもよく、例えば1~500μm、好ましくは5~300μm、さらに好ましくは10~200μm、より好ましくは20~100μm、最も好ましくは30~50μmである。平均繊維径が小さすぎると、セルロース(B)が均一に分散させるのが困難となる虞があり、逆に大きすぎると、ゴム組成物の強度などの特性が低下する虞がある。
【0046】
セルロース(B)が繊維状セルロースである場合、セルロース(B)の平均繊維長は、例えば0.1μm以上(例えば0.1~100mm)程度の範囲から選択でき、1μm以上であってもよく、例えば10μm以上(例えば10μm~50mm)、好ましくは100μm以上(例えば0.1~30mm)、さらに好ましくは300μm以上(例えば0.3~20mm)、より好ましくは500μm以上(例えば0.5~10mm)、最も好ましくは1mm以上(例えば1~5mm)である。平均繊維長が短すぎると、ゴム組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に長すぎると、ゴム組成物中での分散性が低下する虞がある。
【0047】
セルロース(B)が繊維状セルロースである場合、セルロース(B)の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば5以上(例えば5~10000)、好ましくは10以上(例えば10~5000)、さらに好ましくは15以上(例えば15~3000)、より好ましくは20以上(例えば20~100)、最も好ましくは25以上(例えば25~50)である。アスペクト比が小さすぎると、ゴム成分(A)に対する補強効果が低下し、アスペクト比が大きすぎると、均一な分散が困難となり、セルロース(B)が分解(または損傷)し易くなる虞がある。
【0048】
なお、本明細書および特許請求の範囲では、繊維状セルロースの平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
【0049】
セルロース(B)は、化学パルプなどのパルプ材であってもよく、機械的な処理で裁断したパルプ材であってもよい。
【0050】
セルロース(B)は、結晶性の高いセルロース(またはセルロース繊維)であってもよく、セルロース(B)の結晶化度は、例えば40~100%(例えば50~100%)、好ましくは60~100%、さらに好ましくは70~100%、最も好ましくは75~99%であり、通常、結晶化度が60%以上(例えば60~98%)である。また、セルロース(B)の結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、線膨張特性や弾性率などに優れたI型結晶構造が好ましい。なお、結晶化度は、粉末X線回折装置((株)リガク製「Ultima IV」)などを用いて測定できる。
【0051】
セルロース(B)は、ヘミセルロースやリグニンなどの非セルロース成分を含んでいてもよく、セルロース繊維(特に、セルロースナノ繊維)の場合、非セルロース成分の割合は繊維状セルロース中30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。セルロース繊維は、非セルロース成分を実質的に含まないセルロース繊維(特に、非セルロース成分を含まないセルロース繊維)であってもよい。
【0052】
セルロース(B)の重合度は、組成物の機械的特性の点から、500以上であってもよく、好ましくは600以上(例えば600~10万)であってもよい。
【0053】
本発明では、後述する結晶性分散剤(C)の存在下、セルロース濃度が高いゴム含有マスターバッチ中でセルロース(B)を混練することにより、セルロース(B)をゴム成分(A)中に均一に分散できる。ゴム含有マスターバッチにおいて、セルロース(B)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上であればよく、例えば10~200質量部、好ましくは15~150質量部、さらに好ましくは20~100質量部、より好ましくは30~80質量部、最も好ましくは40~60質量部である。セルロース(B)の割合が少なすぎると、セルロース(B)をゴム成分(A)中に均一に分散させるのが困難となる虞があり、逆に多すぎると、混練自体が困難となる虞がある。
【0054】
[結晶性分散剤(C)]
本発明では、マスターバッチが特定の結晶残量を有する分散剤(結晶性分散剤)(C)を含むことにより、加硫ゴム組成物を形成するためのゴム組成物中でのセルロース(B)の分散性を向上でき、加硫ゴム組成物の機械的特性を向上できる。加硫ゴム組成物の機械的特性が向上するメカニズムの詳細は不明であるが、結晶性分散剤(C)の化学的な相容化作用に加えて、特定の結晶残量を有することにより、ゴム組成物を調製するための混練工程において結晶性分散剤(C)の過度な均質化または均一化が抑制され、結晶性分散剤(C)が物理的に作用して、セルロース(B)の分散性を向上していると推定できる。さらに、結晶性分散剤(C)の結晶残量が特定範囲であるマスターバッチは、セルロース濃度が高いマスターバッチの調製工程において、結晶性分散剤(C)の結晶残量が特定範囲となるように混練すると、前述の物理的な作用によって、マスターバッチ中においてもセルロース(B)の分散性を向上でき、加硫ゴム組成物中におけるセルロース(B)の分散性に寄与すると推定できる。
【0055】
本発明では、結晶性分散剤(C)の結晶残量は10~95質量%であり、好ましくは20~90質量%、特に好ましくは30~80質量%、さらに好ましくは40~70質量%である。特に、結晶性分散剤(C)の結晶残量は、加硫ゴム組成物の硬度および引裂強度を高度に向上できる点から、50質量%以上であってもよく、好ましくは50~70質量%、より好ましくは50~65質量%、最も好ましくは53~63質量%である。結晶性分散剤(C)の結晶残量が小さすぎると、ゴム組成物中でのセルロース(B)の均一性を向上できず、加硫ゴム組成物の硬度、引張初期応力および引裂強度が低下し、逆に大きすぎると、結晶性分散剤(C)自体が均一に分散できないため、ゴム成分(A)とセルロース(B)との親和性の向上やセルロース(B)の分散性を向上できず、加硫ゴム組成物の引裂強度が低下する。
【0056】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、結晶性分散剤(C)の結晶残量は、マスターバッチ中におけるフルオレン化合物の割合(質量%)をM、示差走査熱量測定(DSC)に基づいて測定したマスターバッチ中におけるフルオレン化合物の結晶の割合(質量%)をCとしたとき、両者の比率C/Mとして求めることができる。詳しくは、マスターバッチ中におけるフルオレン化合物の結晶の割合(C)は、マスターバッチ1g当たりのフルオレン化合物の融解エンタルピー(J/g)を、フルオレン化合物の結晶単独1g当たりの融解エンタルピー(J/g)で割った(除した)割合(質量%)として算出できる。
【0057】
結晶性分散剤(C)は、セルロース(B)をゴム成分(A)と相溶化(相容化)させることにより、セルロース(B)をゴム成分(A)中に分散させる作用を有し、かつ結晶性を有する分散剤であれば特に限定されない。
【0058】
結晶性分散剤(C)は、前記特性を有していればよいが、所定の融点を有することにより、マスターバッチおよび加硫ゴム組成物の調製工程において、固体状態を保持することができ、ゴム組成物中でのセルロース(B)の分散性を向上できる。結晶性分散剤(C)の融点は100℃以上(例えば100~270℃)であってもよく、例えば120~230℃、好ましくは130~200℃、特に好ましくは135~180℃、さらに好ましくは140~170℃、より好ましくは145~165℃、最も好ましくは150~160℃である。結晶性分散剤(C)の融点が低すぎると、固体状態を保持できず、セルロース(B)をゴム成分(A)中に均一に分散させるのが困難となる虞がある。
【0059】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、結晶性分散剤(C)の融点は、マスターバッチを試料として測定した示差走査熱量測定(DSC)のDSC曲線におけるピークトップ温度を意味し、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0060】
化学構造の点から、結晶性分散剤(C)は、芳香環(芳香族炭化水素環)を含む分散剤が好ましく、セルロース(B)の分散性を向上できる点から、多環式芳香環を含む分散剤が特に好ましい。
【0061】
多環式芳香環を含む結晶性分散剤は、リグニンスルホン酸塩などの複数のベンゼン環を含む分散剤、アルキルナフタレンスルホン酸塩やナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などの縮合多環式芳香環を含む分散剤であってもよいが、フルオレン環を有する分散剤が好ましく、9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物が特に好ましい。
【0062】
9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物であればよく、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン化合物であってもよい。
【0063】
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
【0064】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環)、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
【0065】
環集合アレーン環としては、ビアレーン環[例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(例えば、1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環など)などのビC6-12アレーン環など]、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環など)が例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6-10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
【0066】
フルオレンの9位に置換する2つの環Zは、異なっていてもよく、同一であってもよいが、通常、同一の環である場合が多い。環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環(特にベンゼン環)などが好ましい。
【0067】
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zに対応する基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよい。
【0068】
で表されるヘテロ原子含有官能基としては、ヘテロ原子として、酸素、イオウおよび窒素原子から選択された少なくとも一種を有する官能基などが例示できる。このような官能基に含まれるヘテロ原子の数は、特に制限されないが、通常、1~3個、好ましくは1または2個であってもよい。
【0069】
前記官能基としては、例えば、基-[(OA)m1-Y](式中、Yはヒドロキシル基、グリシジルオキシ基、アミノ基、N置換アミノ基またはメルカプト基であり、Aはアルキレン基、m1は0以上の整数である)、基-(CH)m2-COOR(式中、Rは水素原子またはアルキル基であり、m2は0以上の整数である)などが挙げられる。
【0070】
基-[(OA)m1-Y]において、YのN置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基などのN-モノアルキルアミノ基(N-モノC1-4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN-モノヒドロキシアルキルアミノ基(N-モノヒドロキシC1-4アルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0071】
アルキレン基Aには、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基が含まれ、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC2-6アルキレン基(好ましくは直鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2-3アルキレン基、特にエチレン基)が例示でき、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基などの分岐鎖状C3-6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C3-4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。
【0072】
オキシアルキレン基(OA)の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm1は、0以上(例えば0~15、好ましくは0~10)の範囲から選択でき、例えば0~8(例えば1~8)、好ましくは0~5(例えば1~5)、さらに好ましくは0~4(例えば1~4)、特に0~3(例えば1~3)であってもよく、通常0~2(例えば0~1)であってもよい。なお、m1が2以上である場合、アルキレン基Aの種類は、同一または異なっていてもよい。また、アルキレン基Aの種類は、同一のまたは異なる環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。
【0073】
基-(CHm2-COORにおいて、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基は、C1-4アルキル基、特にC1-2アルキル基である。メチレン基の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm2は0または1以上の整数(例えば1~6、好ましくは1~4、さらに好ましくは1~2)であってもよい。m2は、通常、0または1~2であってもよい。
【0074】
これらのうち、セルロース(B)の分散性を大きく向上できる点から、基Xは、Yがヒドロキシル基である基-[(OA)m1-OH][式中、Aはエチレン基などのC2-6アルキレン基(例えばC2-4アルキレン基、特にC2-3アルキレン基)、m1は0~5の整数(例えば0または1)である]が特に好ましい。
【0075】
前記式(1)において、環Zに置換した基Xの個数を示すnは、1以上であり、好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2(特に1)であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。
【0076】
基Xは、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2,3,4位(特に、3位および/または4位、特に4位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5~8位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9位に対してナフタレン環の1位または2位が置換し(1-ナフチルまたは2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位などの関係(特にnが1である場合、2,6位の関係)で基Xが置換している場合が多い。また、nが2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Zにおいて、基Xの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に結合したアレーン環および/またはこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3位または4位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの3位がフルオレンの9位に結合しているとき、基Xの置換位置は、2,4,5,6,2’,3’,4’位のいずれであってもよく、好ましくは6位に置換していてもよい。
【0077】
前記式(1)において、置換基Rとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC6-12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5-10シクロアルコキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1-6アシル基など)、ニトロ基、シアノ基などが例示できる。
【0078】
これらの置換基Rのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい置換基Rとしては、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基など)、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基)が好ましい。なお、置換基Rがアリール基であるとき、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基Rの種類は、同一のまたは異なる環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。
【0079】
置換基Rの係数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば0~8程度の整数であってもよく、0~4の整数、好ましくは0~3(例えば0~2)の整数、さらに好ましくは0または1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環、置換基Rがメチル基であってもよい。
【0080】
置換基Rとしては、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ-カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などのC1-6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6-10アリール基)などが挙げられる。
【0081】
これらの置換基Rのうち、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基(特に、メチル基などのC1-3アルキル基)、カルボキシル基またはC1-2アルコキシ-カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。置換数kは0~4(例えば0~3)の整数、好ましくは0~2の整数(例えば0または1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一または異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基Rの種類は互いに同一または異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一または異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位ないし7位(2位、3位および/または7位など)であってもよい。
【0082】
これらのうち、好ましいフルオレン化合物としては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス(3,4-ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ジまたはトリヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノまたはジC1-4アルキル-ヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-フェニル-3-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-12アリール-ヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス[3-メチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(モノまたはジC1-4アルキル-ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-フェニル-3-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(C6-12アリール-ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-12アリール)フルオレンなどが挙げられる。特に好ましいフルオレン化合物は、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)などの9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-フェニル)フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)などの9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン(BOPPEF)などの9,9-ビス(フェニル-ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-フェニル)フルオレンであり、最も好ましくはBPEFなどの9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-フェニル)フルオレンである。
【0083】
これらのフルオレン化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。なお、「(ポリ)アルコキシ」は、アルコキシ基およびポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
【0084】
前記式(1)で表されるフルオレン化合物の割合は、結晶性分散剤(C)中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0085】
結晶性分散剤(C)は、マスターバッチ中において、前記セルロース(B)と独立または遊離して存在していてもよいが、セルロース(B)の分散性を向上できる点から、少なくとも一部の結晶性分散剤(C)は、ゴム組成物中でセルロース(B)と近接または接触して存在するのが好ましいが、混練過程において、セルロース(B)をゴム成分(A)中に均一に分散できる点から、結晶性分散剤(C)は、セルロース(B)に対して、エーテル結合やエステル結合などの共有結合を形成して複合化(化学修飾)しない形態であるのが好ましい。結晶性分散剤(C)とセルロース(B)とが複合化している場合、水素結合などによって比較的緩やかに結合または親和して複合化するのが好ましい。緩やかな結合で複合化している場合、ゴム組成物中における自由度が高く、ゴム組成物の機械的特性(耐屈曲疲労性など)を向上できると推定できる。
【0086】
結晶性分散剤(C)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば1~70質量部、好ましくは5~50質量部、さらに好ましくは10~40質量部、より好ましくは15~35質量部、最も好ましくは20~30質量部である。結晶性分散剤(C)の割合が少なすぎると、セルロース(B)の分散性が低下する虞があり、逆に多すぎると、セルロース(B)による補強効果が弱まり、加硫ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0087】
[シランカップリング剤(D)]
本発明のマスターバッチは、結晶性分散剤(C)の結晶残量を調整するために、シランカップリング剤(D)をさらに含んでいてもよい。
【0088】
シランカップリング剤(D)としては、慣用のシランカップリング剤、例えば、アルコキシシリル基含有シランカップリング剤、ハロゲン含有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤、エチレン性不飽和結合基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、カルボキシル基含有シランカップリング剤、シラノール基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0089】
これらのうち、ゴムで慣用的に利用されるシランカップリング剤が好ましく、硫黄原子含有シランカップリング剤が特に好ましい。
【0090】
硫黄原子含有シランカップリング剤としては、例えば、ジスルフィド類[ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどのビス(トリC1-4アルコキシシリル-C2-4アルキル)ジスルフィドなど]、テトラスルフィド類(ペルテトラスルフィド類またはテトラスルファン類){ビス[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]テトラスルフィドなどのビス(トリC1-4アルコキシシリル-C2-4アルキル)テトラスルフィドなど}、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトC2-4アルキルトリC1-4アルコキシシランなど)またはその縮合体(オリゴマー)、メルカプトアルキルアルキルジアルコキシシラン(3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトC2-4アルキルC1-4アルキルジC1-4アルコキシシランなど)などが挙げられる。メルカプトアルキルトリアルコキシシランのオリゴマーにおいて、メルカプト基の少なくとも一部は、カルボン酸とエステルを形成していてもよい。カルボン酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸などのC4-24飽和脂肪酸などが挙げられる。これらの硫黄原子含有シランカップリング剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0091】
硫黄原子含有シランカップリング剤の割合は、シランカップリング剤(D)中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0092】
シランカップリング剤(D)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1~20質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.5~15質量部、好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは2~8質量部、最も好ましくは3~7質量部である。シランカップリング剤(D)の割合が少なすぎると、分散剤(C)の結晶残量を調整するのが困難となる虞があり、逆に多すぎると、ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0093】
[軟化剤(E)]
本発明のマスターバッチは、結晶性分散剤(C)の結晶残量を調整するために、軟化剤(E)をさらに含んでいてもよい。軟化剤(E)は、ゴム成分(A)に相容してゴム組成物(未加硫ゴム組成物)の粘度を低減することにより結晶性分散剤(C)の結晶残量を調整できる。前記シランカップリング剤(D)は、結晶性分散剤(C)の結晶残量を低減し易いのに対して、軟化剤(E)は、結晶性分散剤(C)の結晶残量の低減を抑制できるため、シランカップリング剤(D)と軟化剤(E)とを組み合わせることにより、結晶性分散剤(C)の結晶残量を調整してもよい。
【0094】
軟化剤(E)としては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、プロセスオイルなどのオイル類などが挙げられる。これらの軟化剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの軟化剤のうち、プロセスオイルなどのオイル類が好ましい。
【0095】
軟化剤(E)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば1~50質量部、好ましくは2~30質量部、さらに好ましくは3~20質量部、最も好ましくは5~15質量部である。軟化剤(E)の割合が少なすぎると、結晶性分散剤(C)の結晶残量を調整するのが困難となる虞があり、逆に多すぎると、ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0096】
[他の添加剤]
本発明のマスターバッチは、ゴム組成物に配合する慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、後述する加硫ゴム組成物の項で記載された加硫剤(b)、加硫助剤(c)、補強剤(d)、可塑剤(f)、他の添加剤(h)などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0097】
他の添加剤の合計割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して50質量部以下であってもよく、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。マスターバッチは、セルロース(B)を高濃度で混練するのが好ましいため、他の添加剤は実質的に含まなくてもよく、他の添加剤を含まないのが好ましい。特に、マスターバッチの調製工程において、マスターバッチが加硫するのを抑制するため、加硫剤を実質的に含まないのが好ましく、加硫剤を含まないのが特に好ましい。
【0098】
[マスターバッチの製造方法]
本発明のマスターバッチは、前記ゴム成分(A)と前記セルロース(B)と前記結晶性分散剤(C)とを所定の混練温度で加熱して混練する混練工程(第1の混練工程)を経て得られる。
【0099】
前記混練温度は、前記結晶性分散剤(C)の融点以下の温度であればよく、前記結晶性分散剤(C)の融点をT(℃)としたとき、例えば(T-100)~T℃程度の範囲から選択できる。特に、前記混練温度は、マスターバッチ中の結晶性分散剤(C)の結晶残量を10~95質量%に調整し易い点から、(T-7)℃以下が好ましく、好ましくは(T-100)~(T-7)℃、特に好ましくは(T-70)~(T-10)℃、さらに好ましくは(T-50)~(T-15)℃、より好ましくは(T-40)~(T-20)℃、最も好ましくは(T-30)~(T-22)℃である。具体的な混練温度は、ゴム成分(A)および結晶性分散剤(C)の種類に応じて適宜選択できるが、例えば80~200℃、好ましくは100~150℃、さらに好ましくは110~145℃、最も好ましくは120~140℃である。混練温度が高すぎると、マスターバッチの調製工程において、結晶性分散剤(C)の非晶化が進行しすぎて、結晶残量が10質量%未満に低下する虞がある。なお、結晶性分散剤(C)が二種以上の組み合わせである場合、結晶性分散剤(C)の融点は、最も低い融点とする。
【0100】
第1の混練工程(マスターバッチの調製工程)において、混練方法としては、例えば、ミキシングローラなどのロール式混練機を用いて混練する方法、バンバリーミキサー、インターミックス、ニーダー、押出機(一軸または二軸押出機など)などの密閉式混練機を用いて混練する方法などが挙げられる。これらの混練方法のうち、セルロース(B)を均一に混練し易い点から、密閉式混練機を用いる混練方法が好ましく、ニーダー(特に、加圧式ニーダー)を用いる混練方法が特に好ましい。
【0101】
なお、マスターバッチの組成が同一であっても、スケールアップすると、ゴム自身の熱劣化が進行し、加硫ゴム組成物の硬度や引裂強度が低下し易くなる。そのため、目的の機械的特性や生産性に応じて混練機の容量を適宜調整してもよい。混練機の容量は、加硫ゴム組成物の機械的特性を考慮し、例えば30リットル以下などに調整してもよい。
【0102】
混練時間は、例えば10~360分、好ましくは30~120分、さらに好ましくは60~80分である。混練時間が短すぎると、セルロース(B)の均一性が低下する虞があり、逆に長すぎると、結晶性分散剤(C)の結晶残量が低下する虞がある。
【0103】
第1の混練工程では、必要に応じて、ゴム成分(A)、セルロース(B)および結晶性分散剤(C)に加えて、シランカップリング剤(D)や軟化剤(E)などの他の成分を、ゴム成分(A)、セルロース(B)および結晶性分散剤(C)と同時に混練してもよい。
【0104】
[加硫ゴム組成物]
本発明の加硫ゴム組成物は、前記マスターバッチを含み、このマスターバッチを希釈して得られるゴム組成物の架橋体である。
【0105】
(a)ゴム成分
本発明の加硫ゴム組成物は、前記マスターバッチに加えて、前記マスターバッチを希釈するためのゴム成分として、前記ゴム成分(A)と同種のゴム成分(a)(第2のゴム成分)をさらに含む。ゴム成分(a)は、前記ゴム成分(A)と同種のゴム成分であればよいが、同一のゴム成分が好ましい。ゴム成分(a)の割合は、マスターバッチ100質量部に対して、例えば100~1000質量部、好ましくは200~800質量部、さらに好ましくは300~700質量部、より好ましくは400~600質量部、最も好ましくは450~550質量部である。ゴム成分(a)の割合が少なすぎると、セルロース(B)の補強効果が発現しない虞があり、逆に多すぎると、加硫ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0106】
ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の総量は、加硫ゴム組成物中10質量%以上であってもよく、例えば10~90質量%、好ましくは30~80質量%、さらに好ましくは40~75質量%、より好ましくは50~70質量%、最も好ましくは55~65質量%である。
【0107】
加硫ゴム組成物において、セルロース(B)の割合は、ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の合計100質量部に対して、例えば0.1~20質量部、好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~8質量部、より好ましくは2~8質量部、最も好ましくは3~7質量部である。
【0108】
加硫ゴム組成物において、結晶性分散剤(C)の割合は、ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の合計100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~4質量部、より好ましくは1.5~3.5質量部、最も好ましくは2~3質量部である。
【0109】
(b)加硫剤
本発明の加硫ゴム組成物は、前記ゴム成分(A)およびゴム成分(a)のゴム成分に加えて、さらに通常、加硫剤(b)を含んでいてもよい。加硫剤(b)としては、ゴム成分の種類に応じて、慣用の加硫剤を利用できる。加硫剤(b)には、硫黄系加硫剤、有機過酸化物が含まれる。
【0110】
硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄(粉末硫黄、沈降性硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄など)、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィドなどが挙げられる。
【0111】
有機過酸化物としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド;ジt-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、1,1-ジ-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシ-イソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキシド;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシド;n-ブチル-4,4-ジ-t-ブチルパーオキシバレレート、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジ(パーオキシルベンゾエート)などのパーオキシエステルなどが挙げられる。
【0112】
これらの加硫剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、硫黄やジクミルパーオキシドなどのジアルキルパーオキシドなどが汎用される。
【0113】
加硫剤(b)の割合は、ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の合計100質量部に対して0.1~30質量部程度の範囲から選択でき、硫黄系加硫剤の場合、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは0.6~5質量部であり、有機過酸化物の場合、例えば1~25質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは5~15質量部である。
【0114】
(c)加硫助剤
本発明の加硫ゴム組成物は、ゴム成分の加硫を促進するために、さらに加硫助剤(c)を含んでいてもよい。
【0115】
加硫助剤(または共架橋剤)(c)には、有機系助剤、例えば、有機系加硫促進剤[例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)などのスルフェンアミド系促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)などのチウラム系促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、MBTの亜鉛塩、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)などのチアゾール系促進剤;トリメチルチオ尿素(TMU)、ジエチルチオ尿素(EDE)などのチオウレア系促進剤;ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン(DOTG)などのグアニジン系促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどのジチオカルバミン酸系促進剤;イソプロピルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸塩系促進剤;ヘキサンメチレンテトラミンなどのアルデヒド-アミン系またはアルデヒド-アンモニア系促進剤など]、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエンなど)、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛などの(メタ)アクリル酸多価金属塩など]、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレートなど]、芳香族マレイミド(N,N’-m-フェニレンジマレイミドなどのアレーンビスマレイミドなど)、無機系助剤[酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウムなど]などが挙げられる。
【0116】
これらの加硫助剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、CBSなどのスルフェンアミド系促進剤、TMTDなどのチウラム系促進剤、酸化亜鉛などの無機系助剤が汎用される。
【0117】
加硫助剤(c)の割合は、ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の合計100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは2~20質量部、さらに好ましくは3~15質量部、より好ましくは4~12質量部、最も好ましくは5~10質量部である。
【0118】
(d)補強剤
本発明の加硫ゴム組成物は、硬度や強度などの機械的特性を向上させるために、さらに補強剤(d)を含んでいてもよい。
【0119】
補強剤(d)としては、慣用の補強剤を利用でき、例えば、粒状補強剤(カーボンブラックやグラファイトなどの炭素質材料;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)などの金属酸化物;ケイ酸カルシウムやケイ酸アルミニウムなどの金属ケイ酸塩;炭化ケイ素や炭化タングステンなどの金属炭化物;窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物;炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウムや硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;ゼオライト、ケイソウ土、焼成ケイソウ土、活性白土、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレーなどの鉱物質材料など)、繊維状補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、ウィスカー、ワラストナイトなどの無機繊維;ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維など)などが挙げられる。これらの補強剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0120】
これらの補強剤のうち、カーボンブラックやシリカなどの粒状補強剤(特に粒状無機補強剤)が好ましく、ゴム組成物の機械的特性を向上できる点から、カーボンブラックが特に好ましい。
【0121】
カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、被覆カーボンブラック、グラフトカーボンブラックなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0122】
カーボンブラックの平均粒径(算術平均粒径)は5~200nm程度の範囲から選択でき、例えば10~150nm、好ましくは15~100nm、さらに好ましくは20~80nm、最も好ましくは30~50nmである。カーボンブラックの平均粒径が小さすぎると、均一な分散が困難となる虞があり、大きすぎると、加硫ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0123】
補強剤(d)の割合は、ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の合計100質量部に対して3~300質量部程度の範囲から選択でき、例えば5~200質量部、好ましくは8~150質量部、さらに好ましくは10~100質量部、最も好ましくは15~80質量部である。補強剤(d)の割合が少なすぎると、加硫ゴム組成物の機械的特性を向上させる効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、加硫ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0124】
(e)軟化剤
本発明の加硫ゴム組成物は、さらに軟化剤(e)を含んでいてもよい。軟化剤(e)としては、マスターバッチの項で記載された軟化剤(E)などが挙げられる。前記軟化剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記軟化剤のうち、プロセスオイルなどのオイル類が好ましい。
【0125】
軟化剤(e)の割合は、ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の合計100質量部に対して、例えば1~50質量部、好ましくは2~30質量部、さらに好ましくは3~20質量部、最も好ましくは5~15質量部である。軟化剤(e)の割合が少なすぎると、セルロース(B)の分散性が向上する効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、加硫ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0126】
(f)可塑剤
本発明の加硫ゴム組成物は、成形性などを向上させるために、さらに可塑剤(f)を含んでいてもよい。可塑剤(f)としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなどが挙げられる。これらの可塑剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ステアリン酸などの高級脂肪酸が好ましい。
【0127】
可塑剤(f)の割合は、ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の合計100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.3~5質量部、さらに好ましくは0.5~3質量部である。可塑剤(f)の割合が少なすぎると、成形性を向上する効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、加硫ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0128】
(g)シランカップリング剤
本発明の加硫ゴム組成物は、機械的特性を向上させるために、さらにシランカップリング剤(g)を含んでいてもよい。シランカップリング剤(g)としては、マスターバッチの項で記載されたシランカップリング剤(D)などが挙げられる。前記シランカップリング剤(g)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記シランカップリング剤のうち、硫黄原子含有シランカップリング剤が好ましい。
【0129】
シランカップリング剤(g)の割合は、ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の合計100質量部に対して、例えば10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下(例えば0.1~1質量部)である。シランカップリング剤(g)の割合が多すぎると、加硫ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0130】
(h)他の添加剤
本発明の加硫ゴム組成物は、ゴム成分(a)の種類に応じて、慣用の添加剤を含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、樹脂成分(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など)、溶剤、加硫遅延剤、老化または酸化防止剤(芳香族アミン系、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)、着色剤(例えば、染顔料など)、粘着付与剤、カップリング剤、安定剤(紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定剤など)、離型剤、潤滑剤、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、制振付与剤、難燃助剤、帯電防止剤、導電剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、核剤、結晶化促進剤、抗菌剤、防腐剤などが挙げられる。
【0131】
これら他の添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。他の添加剤の合計割合は、ゴム成分(A)およびゴム成分(a)の合計100質量部に対して、例えば0.1~50質量部、好ましくは0.5~30質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0132】
[加硫ゴム組成物の特性]
本発明の加硫ゴム組成物は、ゴム組成物中にセルロース(B)が均一に分散しているため、機械的特性に優れている。
【0133】
本発明の加硫ゴム組成物は、硬度が高い。本発明の加硫ゴム組成物の硬度(タイプAデュロメータ)は65以上であってもよく、例えば65~90、好ましくは67~85、さらに好ましくは68~80、より好ましくは69~75である。なお、本明細書および特許請求の範囲において、硬度(タイプAデュロメータ)は、JIS K 6253に準拠し、デュロメータ(タイプA)を用いて測定できる。
【0134】
本発明の加硫ゴム組成物は、引張初期応力が高い、本発明の加硫ゴム組成物の25%引張強さは、例えば1~5MPa、好ましくは1.1~3MPa、さらに好ましくは1.2~1.7MPa、より好ましくは1.3~1.5MPaである。本発明の加硫ゴム組成物の50%引張強さは、例えば1.6~10MPa、好ましくは1.8~5MPa、さらに好ましくは2~3MPa、より好ましくは2.1~2.5MPaである。なお、本明細書および特許請求の範囲において、引張強さは、JIS K 6251-8に準拠した方法で測定できる。
【0135】
本発明の加硫ゴム組成物は、引裂強度が高い。本発明の加硫ゴム組成物の引裂強度は、例えば9~20N/mm、好ましくは10~18N/mm、さらに好ましくは10.5~16N/mm、より好ましくは11~15N/mm、最も好ましくは11.5~13N/mmである。なお、本明細書および特許請求の範囲において、引裂強度は、JIS K 7128-1に準拠した方法で測定でき、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0136】
[加硫ゴム組成物の製造方法]
本発明の加硫ゴム組成物の製造方法は、ゴム成分(A)と前記セルロース(B)と前記結晶性分散剤(C)とを、前記結晶性分散剤(C)の融点以下の混練温度で加熱して混練することによりマスターバッチを調製する第1の混練工程、得られたマスターバッチと、前記ゴム成分(A)と同種のゴム成分(a)とを、前記結晶性分散剤(C)の融点以下の混練温度で混練して未加硫ゴム組成物を調製する第2の混練工程、前記未加硫ゴム組成物を加硫する加硫工程を含む製造方法であってもよい。
【0137】
第1の混練工程は、前記マスターバッチの製造方法と同様である。
【0138】
第2の混練工程において、混練温度は、前記結晶性分散剤(C)の融点以下の温度であってもよく、前記結晶性分散剤(C)の融点をT(℃)としたとき、例えば(T-100)~T℃程度の範囲から選択でき、例えば(T-50)~(T-1)℃、好ましくは(T-30)~(T-2)℃、さらに好ましくは(T-20)~(T-3)℃である。具体的な混練温度は、ゴム成分(A)および結晶性分散剤(C)の種類に応じて適宜選択できるが、例えば100~200℃、好ましくは130~180℃、さらに好ましくは140~160℃、最も好ましくは145~155℃である。混練温度が高すぎると、セルロース(B)の均一性が低下する虞があり、逆に高すぎると、十分に混練されない虞がある。第2の混練工程では、最大温度が前記範囲となるように調整して混練してもよい。なお、結晶性分散剤(C)が二種以上の組み合わせである場合、結晶性分散剤(C)の融点は、最も低い融点とする。
【0139】
第2の混練工程において、混練方法としては、例えば、ミキシングローラなどのロール式混練機を用いて混練する方法、バンバリーミキサー、インターミックス、ニーダー、押出機(一軸または二軸押出機など)などの密閉式混練機を用いて混練する方法などが挙げられる。これらの混練方法のうち、セルロース(B)を均一に混練し易い点から、密閉式混練機を用いる混練方法が好ましく、ニーダー(特に、加圧式ニーダー)を用いる混練方法が特に好ましい。
【0140】
混練時間は、例えば0.5~30分、好ましくは1~10分、さらに好ましくは2~5分である。混練時間が短すぎると、セルロース(B)の均一性が低下する虞があり、逆に長すぎると、結晶性分散剤(C)の結晶残量が低下する虞がある。
【0141】
第2の混練工程では、必要に応じて、マスターバッチ、ゴム成分(a)に加えて、加硫剤(b)、加硫助剤(c)、補強剤(d)、軟化剤(e)、可塑剤(f)などの他の成分を、マスターバッチおよびゴム成分(a)と同時に混練してもよい。
【0142】
加硫工程では、第2の混練工程で得られた未加硫ゴム組成物を所定の形状に成形した状態で加硫して加硫ゴム組成物が得られる。加硫工程において、加硫温度は、ゴムの種類に応じて選択でき、例えば100~250℃、好ましくは130~200℃、さらに好ましくは140~190℃、より好ましくは150~180℃である。
【実施例0143】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例で用いた原料および評価方法は以下の通りである。
【0144】
[原料]
SBR:JSR(株)製「JSR 1502」
EPDM1:三井化学(株)製「三井EPT(登録商標)3045」
EPDM2:JSR(株)製「JSR EP96」
プロセスオイル:三共油化工業(株)製「プロセスオイルSNH-22」
パラフィンオイル:出光興産(株)製「ダイアナプロセスPW-380」
シランカップリング剤:エボニック社製「シラノグランSI-69」
CB N234:東海カーボン(株)製「シースト7HM」
硫黄:鶴見化学(株)製「粉末硫黄」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
ステアリン酸:日油(株)製「ビーズステアリン酸つばき」
促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ-G」
促進剤TT:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT-P」
促進剤TRA:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTRA」
促進剤M:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーM-P」
セルロース繊維:植物由来のパルプ(化学修飾されていないセルロース繊維)シートを2mm×5mm角程度のチップ状に裁断した繊維、平均繊維径約40μm、平均繊維長1mm以上
フルオレン化合物(BPEF):9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製「BPEF」。
【0145】
[示差走査熱量測定(DSC)]
示差走査熱量計(TA Instruments(株)製「DSC25」)を用いて、下記条件でフルオレン化合物の融点および融解エンタルピーを測定し、フルオレン化合物の結晶残量を算出した。
【0146】
(測定条件)
温度範囲30~200℃
昇降温速度10℃/分
窒素雰囲気。
【0147】
フルオレン化合物の融点については、フルオレン化合物を含むマスターバッチを試料として測定して得られた測定チャートにおいて、融解のピークトップ温度を融点とした。
【0148】
フルオレン化合物の結晶残量については、マスターバッチ中におけるフルオレン化合物の割合(MB中フルオレン割合)(M)に対するマスターバッチ中におけるフルオレン化合物の結晶の割合(MB中フルオレン結晶割合)(C)の比率(C/M)として評価した。なお、MB中フルオレン割合(M)は、マスターバッチにおけるフルオレン化合物の質量割合(質量%)として算出した。また、MB中フルオレン結晶割合(C)(%)は、マスターバッチ1g当たりのフルオレン化合物の融解エンタルピー(MB融解エンタルピー)(J/g)を、フルオレン化合物(BPEF)の結晶単独の融解エンタルピー65.5J/gで割った(除した)割合(%)として算出した。
【0149】
[引張試験]
JIS K 6251-8に準拠し、25~300%引張応力を測定した。
【0150】
[引裂強さ]
JIS K 7128-1に準拠し、シートをスリット入り短冊形状に切り出し、下記条件で測定した。
【0151】
(測定条件)
チャック間距離32mm
ロードセル1kN
引張速度10mm/分。
【0152】
[硬度]
JIS K6253タイプAに準拠し、デュロメーターAを用いて硬度を測定した。
【0153】
(実施例1~4)
表1に示す質量割合の各成分を加圧式ニーダー(モリヤマ(株)製、容量3リットル)を用いて、温度130℃で76分間混練し、マスターバッチを調製した。
【0154】
(比較例1)
混練温度を150℃に変更する以外は実施例1と同一の方法でマスターバッチを調製した。
【0155】
(比較例2)
温度150℃で30分間混練した後、130℃で46分間混練する以外は実施例1と同一の方法でマスターバッチを調製した。
【0156】
実施例1~4および比較例1~2で得られたマスターバッチ中のフルオレン化合物の物性を表1に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
(実施例5)
実施例1で得られたマスターバッチを表2に示す配合割合にて、ラボニーダミル((株)トーシン製「TDR100-3型」)を用いて、100rpmで100℃から開始し150℃を越えないよう回転数を調整して3分間混練し取り出した後、促進剤を添加し100rpmで100℃を越えないよう回転数を調整して2分間混練し、未加硫ゴム組成物を調製した。得られた未加硫ゴム組成物を、加硫温度160℃で12分間プレス加硫し、シート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0159】
(実施例6)
実施例1で得られたマスターバッチの代わりに実施例2で得られたマスターバッチを用いて、表2に示す配合割合とした以外は実施例5と同様にしてシート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0160】
(実施例7)
実施例1で得られたマスターバッチの代わりに実施例3で得られたマスターバッチを用いて、表2に示す配合割合とした以外は実施例5と同様にしてシート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0161】
(実施例8)
実施例1で得られたマスターバッチの代わりに実施例4で得られたマスターバッチを用いて、表2に示す配合割合とした以外は実施例5と同様にしてシート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0162】
(比較例3)
実施例1で得られたマスターバッチの代わりに比較例1で得られたマスターバッチを用いた以外は実施例5と同様にしてシート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0163】
(比較例4)
実施例1で得られたマスターバッチの代わりに比較例2で得られたマスターバッチを用いた以外は実施例5と同様にしてシート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0164】
実施例5~8および比較例3~4で得られたシート状加硫ゴム組成物の評価結果を表2に示す。
【0165】
【表2】
【0166】
表2から明らかなように、実施例5~8では、比較例3~4に比べて引張初期応力である25%引張強さおよび引裂強度、硬度に優れていた。
【0167】
表1から明らかなように、実施例1~4、比較例1~2のフルオレン化合物について比較すると、130℃にて混練した実施例1~4ではフルオレン化合物の融解エンタルピーが見られた。すなわち、実施例1~4では、フルオレン化合物がマスターバッチ中に結晶として残存していた。一方、混練時に150℃に達した比較例1~2ではフルオレン化合物の融解エンタルピーが見られなかった。このような結果となった原因については、155~158℃に融解ピークを有するフルオレン化合物が、130℃にて混練した場合は融解せず結晶として残存する一方、150℃にて混練した場合は、融解して結晶が残存しないためであると考えられる。フルオレン化合物の結晶残量が、引張初期応力や引裂強度、硬度の向上に寄与したことが考えられる。
【0168】
実施例5~8について比較すると、実施例8に関して引裂強度がやや劣っていた。この原因については、実施例8の結晶残量が実施例5~7と比較し、わずかに大きいことにより引裂強度が少し低下したためであると考えられる。
【0169】
(実施例9)
表3に示す質量割合の各成分を加圧式ニーダー(モリヤマ(株)製、容量55リットル)を用いて、温度135℃で60分間混練し、マスターバッチを調製した。
【0170】
(実施例10)
表3に示す質量割合の各成分を加圧式ニーダー(モリヤマ(株)製、容量55リットル)を用いて、温度130℃で90分間混練し、マスターバッチを調製した。
【0171】
(実施例11)
表3に示す質量割合の各成分を実施例1と同一の方法でマスターバッチを調製した。
【0172】
(実施例12)
表3に示す質量割合の各成分を温度150℃で76分間混練する以外は実施例1と同一の方法でマスターバッチを調製した。
【0173】
実施例9~12で得られたマスターバッチ中のフルオレン化合物の物性を表3に示す。
【0174】
【表3】
【0175】
(実施例13)
実施例9で得られたマスターバッチを表4に示す配合割合にて、ラボニーダミル((株)トーシン製「TDR100-3型」)を用いて、100rpmで100℃から開始し150℃を越えないよう回転数を調整して3分間混練し取り出した後、促進剤を添加し100rpmで100℃を越えないよう回転数を調整して2分間混練し、未加硫ゴム組成物を調製した。得られた未加硫ゴム組成物を、加硫温度160℃で12分間プレス加硫し、シート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0176】
(実施例14)
実施例9で得られたマスターバッチの代わりに実施例10で得られたマスターバッチを用いて、表4に示す配合割合とした以外は実施例13と同様にしてシート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0177】
(実施例15)
実施例9で得られたマスターバッチの代わりに実施例11で得られたマスターバッチを用いて、表4に示す配合割合とした以外は実施例13と同様にしてシート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0178】
(実施例16)
実施例9で得られたマスターバッチの代わりに実施例12で得られたマスターバッチを用いて、表4に示す配合割合とした以外は実施例13と同様にしてシート状加硫ゴム組成物(厚み約1mm)を得た。
【0179】
実施例13~16で得られたシート状加硫ゴム組成物の評価結果を表4に示す。
【0180】
【表4】
【0181】
実施例9および10で得られたマスターバッチは、実施例4で得られたマスターバッチと同組成であるが、混練装置の容量を3リットルから55リットルにスケールアップしたマスターバッチである。表4から明らかなように、混練機を大きくしたことにより熱劣化しやすくなったため、実施例9および10のマスターバッチを用いた実施例13および14では、実施例4のマスターバッチを用いた実施例8に比べて物性は全体的に低下した。実施例13と実施例14とを比較すると、結晶残量がより好ましい50~70質量%の範囲内である実施例9のマスターバッチを用いた実施例13は、初期応力である25%引張強さおよび引裂強度、硬度に優れるゴム組成物であった。一方、実施例10のマスターバッチは長時間の混練により結晶残量が50質量%を切る結果となり、このマスターバッチを用いた実施例14は、硬度および引裂強度がやや劣る結果となった。
【0182】
実施例11および12はEPDMを用いたマスターバッチであるが、表4から明らかなように、実施例1~4および9のSBRを用いたマスターバッチと同様に、結晶残量がより好ましい50~70質量%の範囲内である実施例11のマスターバッチを用いた実施例15は物性に優れていた。一方、実施例12のマスターバッチは、高温での混練により結晶残量が50質量%を切る結果となり、このマスターバッチを用いた実施例16は、硬度および引裂強度がやや劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明のマスターバッチは、各種の工業用部材(コンベアベルトなどのベルト;ゴムカバーロール、印刷ロールなどのロール;ガスケット;オイルシールなどのシール;パッキン;耐油ホースなどのホースなど)、建築部材(窓枠ゴム、制振材、カーペットバッギング材など)、輸送機部材(自動車用部材、タイヤ、動力伝達ベルトなど)、電気・電子機器部材(電線被覆物など)に利用できる。