(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147656
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】低電位検出を特徴とする被検物質センサおよび検知方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1486 20060101AFI20241008BHJP
A61B 5/1473 20060101ALI20241008BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61B5/1486
A61B5/1473
G01N27/327 353R
G01N27/327 353B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111775
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2022538446の分割
【原出願日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】62/952,558
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ラトゥール、ジョン ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】マキャンレス、ジョナサン ディ.
(72)【発明者】
【氏名】オージャ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ティエンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォリス、ケビン ポール
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホス、ウード
(72)【発明者】
【氏名】チェン、スーユエ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】膜を横断する被検物質フラックスが、温度に応じておよび/または被検物質センサが組織に埋め込まれている時間の長さに応じて著しく変動し得る。
【解決手段】低い作用電極電位で応答する被検物質センサは、作用電極の表面上に活性区域を含んでもよく、活性区域はポリマーと、ポリマーに共有結合したレドックスメディエータと、被検物質に応答し、ポリマーに共有結合した少なくとも一つの酵素とを含む。低電位で反応する或る特定のレドックスメディエータは、(I)の構造を有してもよく、Gは、レドックスメディエータをポリマーに共有結合させる結合基である。被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜は、活性区域を覆い得る。いくつかのセンサ構成において、物質移動制限膜は、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルのような三つ以上の架橋基を含む分岐架橋剤によって架橋された膜ポリマーを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質センサであって、
Ag/AgCl参照電極及び少なくとも第1作用電極を含むセンサ尾部と、
前記第1作用電極の表面上に配置され第1被検物質に低電位で応答する第1活性区域であって、前記第1活性区域は、第1ポリマーと、前記第1ポリマーに共有結合した第1レドックスメディエータと、前記第1ポリマーに共有結合した前記第1被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含み、
前記第1被検物質がケトンであり、
前記低電位が、前記第1レドックスメディエータの酸化還元電位よりも高く、前記Ag/AgCl参照電極に対して-80mV未満であり、
前記第1レドックスメディエータの前記酸化還元電位が、前記Ag/AgCl参照電極に対して-200mVから-400mVの範囲であり、
前記第1レドックスメディエータが、
【化1】
の構造を有し、式中、Gは前記レドックスメディエータを前記第1ポリマーに共有結合させる結合基である、前記第1活性区域と、
少なくとも前記第1活性区域を覆う前記第1被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜と、
を含む被検物質センサ。
【請求項2】
前記少なくとも一つの酵素は、前記第1被検物質に集団として応答する複数の酵素を含む酵素系を含む、請求項1に記載の被検物質センサ。
【請求項3】
前記物質移動制限膜は、三つ以上の架橋基を含む分岐架橋剤によって架橋された膜ポリマーを含む、請求項1に記載の被検物質センサ。
【請求項4】
前記膜ポリマーは、ポリビニルピリジンまたはポリビニルイミダゾールを含む、請求項3に記載の被検物質センサ。
【請求項5】
前記分岐架橋剤は、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルを含む、請求項3に記載の被検物質センサ。
【請求項6】
第2作用電極と、
前記第2作用電極の表面上に配置され前記第1被検物質とは異なる第2被検物質に応答する第2活性区域であって、第2ポリマーと、前記第2ポリマーに共有結合した、前記第1レドックスメディエータとは異なる第2レドックスメディエータと、前記第2ポリマーに共有結合した前記第2被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含む前記第2活性区域と、
前記第2活性区域を覆う前記物質移動制限膜の第2部分と、をさらに含む、請求項1に記載の被検物質センサ。
【請求項7】
前記第2被検物質に応答する前記少なくとも一つの酵素は、前記第2被検物質に集団として応答する複数の酵素を含む酵素系を含む、請求項6に記載の被検物質センサ。
【請求項8】
請求項1に記載の前記被検物質センサを提供することと、
前記第1作用電極へ前記低電位を印加することと、
前記第1活性区域に接触している流体中の前記第1被検物質の濃度に比例し、前記第1活性区域の酸化還元電位以上の第1シグナルを取得することと、
前記第1シグナルを前記流体中の前記第1被検物質の濃度と相関させることと、
を含む方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの酵素は、前記第1被検物質に集団として応答する複数の酵素を含む酵素系を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記物質移動制限膜は、三つ以上の架橋基を含む分岐架橋剤によって架橋された膜ポリマーを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記膜ポリマーは、ポリビニルピリジンまたはポリビニルイミダゾールを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記分岐架橋剤は、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記被検物質センサは、
第2作用電極と、
前記第2作用電極の表面上に配置され前記第1被検物質とは異なる第2被検物質に応答する第2活性区域であって、第2ポリマーと、前記第2ポリマーに共有結合した、前記第1レドックスメディエータとは異なる第2レドックスメディエータと、前記第2ポリマーに共有結合した前記第2被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含む前記第2活性区域と、
前記第2活性区域を覆う前記物質移動制限膜の第2部分と、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記第2被検物質に応答する前記少なくとも一つの酵素は、前記第2被検物質に集団として応答する複数の酵素を含む酵素系を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検物質センサおよび検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個人内の様々な被検物質の検出が健康状態のモニタリングにとって重要な場合がある。正常な被検物質レベルからの逸脱が多くの生理状態を示すことがある。グルコースレベルは、例えば、糖尿病の個人における検出およびモニタリングにとって特に重要である。糖尿病の個人は、十分な規則性でグルコースレベルをモニタリングすることにより、重大な生理的不都合が発生する前に矯正処置を行うことができる(例えば、グルコースレベルを下げるためにインスリンを注射することによって、またはグルコースレベルを上げるために食事をとることによって)。他の生理状態については他の被検物質をモニタリングすることが望ましいことがある。いくつかの場合に、特に互いに組み合わせて二つ以上の被検物質の調節異常を同時にもたらす併発状態に対し、複数の被検物質のモニタリングが望ましいこともある。
【0003】
適切な検出ケミストリが同定できる場合、多くの被検物質が生理的分析用の興味深い標的になる。この目的のため、生体内で連続してグルコースをアッセイするよう構成された電流測定センサが近年開発および改良され、糖尿病の個人の健康モニタリングに役立っている。糖尿病の個人において一般的にグルコースと同時に調節異常を起こしやすい他の被検物質には、例えば、乳酸、酸素、pH、A1cおよびケトンなどが含まれる。これらとともにグルコースの調節異常とは独立した他の被検物質を併せてモニタリングすることが望ましいこともある。生体内でグルコース以外の被検物質を検出するよう構成された被検物質センサが知られているが、現在のところ十分に改良されていない。少量の被検物質に対する低い感度は、特に問題になり得る。
【0004】
個人の被検物質モニタリングは、ある時間期間にわたって定期的または継続的に行われ得る。定期的な被検物質モニタリングは、設定された時間間隔で血液や尿のような体液のサンプルを採取し、生体外で分析することで行われ得る。定期的な生体外被検物質モニタリングは、多くの個人の生理状態を決定するのに十分である。しかし、生体外被検物質モニタリングはいくつかの場合において、不便または苦痛であり得る。さらに、被検物質の測定が適切な時間に得られない場合、欠落したデータを埋め合わせる方法はない。継続的な被検物質モニタリングは、分析が生体内で行われ得るように、皮膚、皮下、または静脈内といった個人の組織内に少なくとも部分的に埋め込んだままのセンサを一つ以上用いて実行されることがある。個人の特定の健康ニーズおよび/または以前に測定された被検物質レベルに応じて、埋め込み式センサは、オンデマンドで、または決まったスケジュールで、または継続的に被検物質データを収集し得る。生体内埋め込み式センサを用いた被検物質モニタリングは、重度の被検物質調節異常および/または急速に変動する被検物質レベルを有する個人にとってより望ましいアプローチである。もっとも、他の個人にとっても同様に有益である。埋め込み式被検物質センサは、しばしば長い時間期間にわたって個人の組織内に留まるので、そのような被検物質センサを高度な生体適合性を示す安定した材料から製造することが強く望まれる場合がある。
【0005】
生体適合性を向上するために、被検物質センサは、センサの埋め込み式部分の全体の上に配置される膜を、特に、少なくともセンサの活性区域を覆う膜を含むことができる。生体適合性の促進に加えて、膜は、目的の被検物質に対して透過性または半透過性でかつセンサの活性区域への全被検物質フラックスを制限してよい。そのような物質移動制限膜は、活性区域内における検知成分の過負荷(飽和)を避けるのを補助することができ、それによりセンサ性能および正確性を向上する。例えば、酵素ベースの検出を行うセンサの場合において、活性区域への被検物質の物質移動を制限することは、検知プロセスの化学反応速度論を酵素制限型ではなくむしろ被検物質制限型にすることができ、それにより存在する被検物質の量にセンサ出力を容易に相関づけることが可能になる。
【0006】
被検物質センサ上に膜を装備することに関連する一つの問題は、膜を横断する被検物質フラックスが、温度に応じておよび/または被検物質センサが組織に埋め込まれている時間の長さに応じて著しく変動し得ることである。いくつかの膜材料は、他よりも温度依存の被検物質フラックスの影響を受けにくい。必要な場合、温度に応じた被検物質フラックスの変動性を評価するための校正係数や校正方程式を採用し得るが、そうするとセンサの使用を著しく複雑にすることがある。膜の組成変化は、特に様々な膜成分の抽出損失および/または膜劣化または代謝によって経時的に発生することがあり、組成変化の発生程度に応じて被検物質の透過性の値を異ならせる原因となり得る。膜透過性の値を異ならせることとなる組成変化に定量的に対処することは困難な場合があり、被検物質の濃度の正確な測定が可能になるのに十分に膜透過性が安定化するのがいつなのかを決定することは困難なことがある。しばしば、新品の被検物質センサを生体内に埋め込んだ場合、膜を通過する被検物質フラックスが安定化するのに、数時間以上の平衡化期間を要することがある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の特定の態様を示すために以下の図面は含まれ、排他的な実施形態として見られるべきではない。開示された主題は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態や機能において多くの修正、変更、組み合わせ、および均等物が可能である。
【0008】
【
図1】本開示の被検物質センサを組み込んだ例示的な検知システムの略図を示す。
【0009】
【
図2A】単一の活性区域を含む被検物質センサの断面図を示す。
【
図2B】単一の活性区域を含む被検物質センサの断面図を示す。
【
図2C】単一の活性区域を含む被検物質センサの断面図を示す。
【0010】
【
図3A】二つの活性区域を含む被検物質センサの断面図を示す。
【
図3B】二つの活性区域を含む被検物質センサの断面図を示す。
【
図3C】二つの活性区域を含む被検物質センサの断面図を示す。
【
図4】二つの活性区域を含む被検物質センサの断面図を示す。
【0011】
【
図5A】別々の作用電極上に二つの活性区域を含む被検物質センサの斜視図を示す。
【
図5B】別々の作用電極上に二つの活性区域を含む被検物質センサの斜視図を示す。
【
図5C】別々の作用電極上に二つの活性区域を含む被検物質センサの斜視図を示す。
【0012】
【
図6】A、B、Cは、被検物質センサにおいてケトンを検出するために用いられ得る酵素系の略図を示す。
【0013】
【
図7】非結合型およびポリマー結合型低電位レドックスメディエータのサイクリックボルタモグラムを示す。
【0014】
【
図8】低電位レドックスメディエータを組み込んだケトンセンサの様々な作用電極電位で電流対時間のプロットを示す。
【0015】
【
図9】低電位レドックスメディエータを組み込んだケトンセンサの様々な作用電極電位で電流対ケトン濃度のプロットを示す。
【0016】
【
図10】ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋された膜ポリマーと比較した、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルを用いて架橋された膜ポリマーから得られた抽出物のUV-VIS吸光測定のデータを示す。
【
図11】ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋された膜ポリマーと比較した、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルを用いて架橋された膜ポリマーから得られた抽出物のUV-VIS吸光測定のデータを示す。
【0017】
【
図12】ポリエチレングリコールジグリシジルを用いて架橋された膜ポリマーに覆われた被検物質センサと比較した、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルを用いて架橋された膜ポリマーに覆われた被検物質センサのセンサ出力対時間のプロットを示す。
【
図13】ポリエチレングリコールジグリシジルを用いて架橋された膜ポリマーに覆われた被検物質センサと比較した、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルを用いて架橋された膜ポリマーに覆われた被検物質センサのセンサ出力対時間のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は一般的に、生体内での使用に適した被検物質センサを説明し、より具体的には、被検物質センサは低電位動作能力および/または安定化された膜材料の特徴を含む構成要素を備える。センサ構成に応じて、本開示の被検物質センサは、一つの被検物質または複数の被検物質を同時にまたはほとんど同時に検出するように構成され得る。被検物質センサ上の特定の複数の位置に異なる膜組成物を導入するために一連のディップコーティング操作が実行され得る。
【0019】
様々な被検物質センサの構成要素は、いくつかの被検物質または被検物質の組み合わせをモニタリングする間に、特定の支障を発生し得る。作用電極への電子の移動を促進するために用いられるレドックスメディエータは、比較的高電位で被検物質センサを動作させることを必要とし得、高電位での被検物質センサの動作は少量の被検物質の検出を複雑にし得る電気化学的副反応を導くことがある。被検物質センサ内の物質移動制限膜における組成の変化は、被検物質センサが生体内に埋め込まれる期間に、特に長期のセンサ装着期間に、被検物質の透過性の望ましくない変化を導き得る。さらに、単一の被検物質センサを用いて複数の被検物質を分析する場合、異なる被検物質透過特性は、様々な位置に異なる物質移動制限膜の使用を必要とし得る。
【0020】
前述のニーズに取り組むために、本開示は、従来使用されていた物よりも低い作用電極電位で電子の移動を促進するためのレドックスメディエータを提供する。そのような「低電位」レドックスメディエータの使用は、被検物質の検出を、そうでなかった場合に可能であろう電位よりも低い電位で行うことを可能にすることで、電気化学的副反応の発生を減らし得る。電気化学的副反応およびそれに関するシグナルノイズの発生を減らすことで、ケトンのような少量の被検物質の検出を、そうでなかった場合にはより高い作用電極電位で可能となるであろうよりも容易に行い得る。そのような低電位レドックスメディエータは、後述にさらに議論されるように、複数の被検物質の検出と併用して用いられる場合に有利であり得る。低い作用電極電位で被検物質の検出を促進可能なレドックスメディエータは、以下にさらに説明される。
【0021】
様々な架橋ポリビニルイミダゾールおよびポリビニルピリジン膜ポリマーは、生体適合性を向上するためおよび物質移動を制限する性質を提供するために被検物質センサに用いられ得る。膜材料上での官能基化は、被検物質の透過性を修飾するためかつ温度による被検物質透過性変化を制限するために選ばれ得る。そのような膜ポリマーは、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)のような二つの架橋基を有する直鎖グリシジルエーテルに架橋され得るが、被検物質フラックスを安定化可能にするためにセンサ埋め込み後に平衡化期間が必要であり得る。理論や機構に縛られるものではないが、膜の組成は、少量の抽出可能物質が膜から遊離する平衡化期間の間に変化し、それにより被検物質の透過性を変化させる可能性があると信じられている。驚くことに、本開示は分岐ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、より具体的にはポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルのような三つ以上の架橋基を含む分岐架橋剤がセンサ埋め込み後の膜から遊離する抽出可能物質の量を減らし得ることを示す。膜からの抽出可能物質の生成減少は、架橋密度および架橋剤の量(質量)が二つの架橋基を有する直鎖グリシジルエーテルによって提供される場合と実質的に同じであっても、実現され得る。すなわち、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルのような分岐架橋剤からの所与の架橋基の量は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルのような直鎖グリシジルエーテル架橋剤から得られる実質的に類似している架橋基の量がもたらす抽出可能物の量と比較すると、所与の膜材料に対して抽出可能物の減少をもたらし得る。有利なことに、本明細書に開示されたように、抽出可能物の減少は、分岐架橋剤を用いて架橋された膜材料に由来し得、それにより向上した毒性プロフィールを与える。さらに、ここで開示された膜材料によりもたらされた組成変化の減少は、センサが埋め込まれた後に、より短いセンサの平衡化時間を与え、センサの装着寿命を延ばす可能性があり得る。
【0022】
本開示の被検物質センサおよびそれらの構成要素をさらに詳細に説明する前に、適切な生体内被検物質センサ構成およびその被検物質センサを使用するセンサシステムの概要がまず提供され、それにより本開示の実施形態は、より理解され得る。
図1は、本開示の被検物質センサを取り入れ得る例示的な検知システムの図を示す。図に示すように、検知システム100は、有線でまたは無線で、一方向でまたは双方向で、および暗号化されているまたは暗号化されていないローカル通信パスまたはリンクを介して互いに通信するように構成されたセンサ制御装置102および読み取り装置120を含む。読み取り装置120は、いくつかの実施形態によると、被検物質の濃度およびセンサ104またはそれに関連したプロセッサによって決定される警告または通知を見るための出力装置を構成してもよく、同様に一つ以上のユーザの入力を可能にする。読み取り装置120は、多目的スマートフォンまたは専用の電子読み取り機器であり得る。ただ一つの読み取り装置120が示されるが、複数の読み取り装置120は特定の場合において存在し得る。読み取り装置120はまた、有線でまたは無線で、一方向でまたは双方向で、暗号化されてまたは暗号化されていない通信パス(複数)/リンク(複数)141および/または142をそれぞれ介して遠隔端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180と通信し得る。それに加えてまたはそれに代えて、読み取り装置120は、通信パス/リンク151によってネットワーク150(例えば、モバイルテレフォンネットワーク、インターネット、またはクラウドサーバー)と通信し得る。ネットワーク150はさらに、通信パス/リンク152によって遠隔端末170とおよび/または通信パス/リンク153によって信頼できるコンピュータシステム180と通信可能に接続され得る。代わりに、センサ104は、介在する読み取り装置120を存在させずに、遠隔端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180と直接通信し得る。例えば、米国特許出願公開第2011/0213225号に記載され、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるように、いくつかの実施形態によると、センサ104は、ネットワーク150への直接通信リンクを介して遠隔端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180と通信し得る。任意の適切な電子通信プロトコルは、近距離無線通信(NFC)、無線自動識別(RFID)、BLUETOOTH(登録商標)またはBLUETOOTH(登録商標)低エネルギープロトコル、またはWiFiなどのような通信パスまたはリンクのそれぞれのために用いられ得る。遠隔端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180は、いくつかの実施形態によると、ユーザの被検物質レベルに関心がある最初のユーザ以外の個人によってアクセス可能であり得る。読み取り装置120は、表示部122および任意の入力要素121を含み得る。いくつかの実施形態によると、表示部122は、タッチスクリーンインターフェースを含み得る。
【0023】
センサ制御装置102は、センサハウジング103を含み、センサ104を動作するための電気回路および電源を収納し得る。任意に、電源および/またはアクティブ電気回路は、除かれ得る。プロセッサ(図示無し)は、センサ104と通信可能に接続してもよく、プロセッサは、センサハウジング103または読み取り装置120に物理的に内蔵されている。センサ104は、センサハウジング103の下側から突き出し、かつ接着層105を通って延び、いくつかの実施形態によると、肌のような組織表面にセンサハウジング103を接着させるために適している。
【0024】
センサ104は、皮膚の真皮または皮下層のような目的の組織へ少なくとも部分的に挿入されるように適合される。センサ104は、所与の組織において望ましい深さまで挿入するのに十分な長さのセンサ尾部を含み得る。センサ尾部は、少なくとも一つの作用電極を含み得る。特定の構成において、センサ尾部は、ケトン応答性活性区域を含み、特定の場合に、低電位レドックスメディエータを含み得ることがさらに議論される。対電極は、少なくとも一つの作用電極と組み合わせて存在し得る。センサ尾部上の特定の電極の構成は、以下にさらに詳細に説明される。
【0025】
一つ以上の物質移動制限膜は、特に、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルのような分岐グリシジルエーテルによって架橋される物質移動制限膜は、以下でさらに詳細に説明されるように、活性区域を覆うことがある。活性区域は、特定の被検物質を検出するように構成され得る。例えば、グルコース応答性活性区域は、グルコース応答性酵素を含むことがあり、乳酸応答性活性区域は、乳酸応答性酵素を含むことがあり、ケトン応答性活性区域は、ケトンの検出を容易にするためにともに働くことができる少なくとも二つの酵素を含む酵素系を含むことがある。ケトンを検出するための適切な酵素系は、
図6Aから
図6Cを参照して以下にさらに説明される。様々な実施形態によると、各活性区域は、少なくともいくつかの酵素と共有結合するポリマーを含むことがある。
【0026】
本開示の任意の実施形態において、一つ以上の被検物質は、皮膚液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄、または羊水などのような目的の体液においてモニタリングされ得る。特定の実施形態において、本開示の被検物質センサは、生体内で一つ以上の被検物質の濃度を決定するための真皮液または間質液のアッセイに対して適合され得る。
【0027】
さらに
図1を参照すると、センサ104は、読み取り装置120へデータを自動的に転送し得る。例えば、被検物質濃度データ(すなわちグルコース濃度および/またはケトン濃度)は、データが得られる特定の頻度でまたは特定の期間が経過した後などに、データが送信されるまで(例えば、毎分、5分毎または他の所定の時間周期)にメモリに保存されていたデータを用いて自動的かつ定期的に通信され得る。他の実施形態において、センサ104は、読み取り装置120と非自動的な方法でかつ設定したスケジュールに従わずに通信し得る。例えば、データは、センサ電子機器が読み取り装置120の通信範囲に持ち込まれる場合に、RFID技術を用いてセンサ104から通信可能であり得る。データは、読み取り装置120に通信されるまで、センサ104のメモリに保存されたままであってよい。したがって、ユーザは常に読み取り装置120の近傍に居続ける必要はなく、代わりに都合の良い時にデータをアップロードできる。さらに他の実施形態において、自動的および非自動的なデータ転送の組み合わせが実行され得る。例えば、読み取り装置120がセンサ104の通信範囲に存在しなくなるまでデータ転送は自動的に継続してよい。
【0028】
導入器は、組織内へセンサ104の導入を促進するために一時的に存在することがある。例示的な実施形態において、導入器は、針または類似の鋭利な部分を備えることがある。シースまたはブレードのような他の種類の導入器が、代替の実施形態に存在し得ることが認識されるべきである。より具体的には、針または他の導入器は、組織に挿入する前に一時的にセンサ104の近くに存在してもよく、その後引き抜かれてもよい。存在する間、針または他の導入器は、センサ104がたどるアクセス経路を開くことにより組織内へのセンサ104の挿入を容易にし得る。例えば、一つ以上の実施形態によると、針は、センサ104の埋め込みを実行可能にするために真皮へのアクセス経路として上皮の貫通を容易にすることがある。針または他の導入器は、アクセス経路を開いた後に、鋭利な先端による危険性を示さないように引き抜かれることがある。例示的な実施形態において、適切な針は、中実または中空、鋭角または非鋭角、および/または断面において円形または非円形であり得る。より特定の実施形態において、適切な針は、断面の直径および/または先端の設計において鍼治療の針に匹敵し、約250ミクロン(250μm)の断面直径を有し得る。しかし、適切な針は、特定の用途に対して必要な場合、より大きい断面直径またはより小さい断面直径を有し得ることが認識されるべきである。
【0029】
いくつかの実施形態において、針の先端(存在する間)は、最初に針が組織を貫通し、センサ104のアクセス経路を開くように、センサ104の末端上で角度をつけられてもよい。他の例示的な実施形態において、センサ104は、針がセンサ104のアクセス経路を同様に開くように、針の内腔または溝に存在してもよい。いずれの場合においても、針は、その後、センサの挿入を容易にした後に、引き抜かれる。
【0030】
対応する単一の被検物質を検出するように構成される単一の活性区域を含むセンサ構成は、
図2Aから
図2Cを参照してここでさらに説明されるように、2電極または3電極検出モチーフを採用し得る。別々の作用電極上または同じ作用電極上のいずれか一方で、別々の被検物質の検出のための二つの異なる活性区域を含むセンサ構成は、
図3Aから
図5Cを参照して後に別々に説明される。複数の作用電極を有するセンサ構成は、各活性区域の寄与するシグナルがより容易に決定され得るため、同じセンサ尾部内に二つの異なる活性区域を取り入れることに対して特に有利であり得る。さらに、各活性区域上での異なる膜の組成の成膜は、活性区域が第2作用電極上に存在する場合に、一連のディップコーティング操作によって容易に行われ得る。
【0031】
単一の作用電極が被検物質センサに存在する場合、3電極センサ構成は、作用電極、対電極、および参照電極を含み得る。関連する2電極センサ構成は、作用電極および第2電極を含むことがあり、第2電極は、対電極および参照電極の両方(すなわち、対/参照電極)として機能し得る。様々な電極は、少なくとも互いに部分的に積み重ねられてもよく(層状)、および/または互いにセンサ尾部上で横方向に離れて間隔を空けてもよい。適切なセンサ構成は、実質的に平らな形態でもよく、または実質的に円筒の形態でもよい。ここで開示された任意のセンサ構成において、様々な電極が、誘電材料または類似の絶縁体によって互いに電気的に絶縁され得る。
【0032】
複数の作用電極を備える被検物質センサは、同様に少なくとも一つの追加電極を含み得る。一つの追加電極が存在する場合、一つの追加電極は、複数の作用電極の各々に対して対/参照電極として機能し得る。二つの追加電極が存在する場合、追加電極の一つは、複数の作用電極の各々に対して対電極として機能してもよく、追加電極の他方は、複数の作用電極の各々に対して参照電極として機能してもよい。
【0033】
図2Aは、例示的な2電極被検物質センサ構成の略図を示し、本明細書の開示における使用に適合する。図に示すように、被検物質センサ200は、作用電極214と対/参照電極216との間に配置された基板212を含む。代わりに、作用電極214および対/参照電極216は、間に介在する誘電材料と共に、基板212の同じ側上に配置され得る(構成は図示無し)。活性区域218は、作用電極214の少なくとも一部分上に少なくとも一つの層として配置される。活性区域218は、本明細書にさらに議論されるように、低い作用電極電位で被検物質を検出するように構成された複数のスポットまたは単一のスポットを含み得る。
【0034】
さらに
図2Aを参照すると、膜220は、いくつかの実施形態によると、少なくとも活性区域218を覆い、任意に作用電極214および/または対/参照電極216のいくつかまたは全て、または被検物質センサ200の全体を覆い得る。被検物質センサ200の片面または両面が、膜220を用いて覆われ得る。膜220は、活性区域218への被検物質フラックスを制限することが可能な一つ以上のポリマー膜材料を含み得る(すなわち、膜220は、目的の被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜である)。本明細書の開示によると、膜220は、特定のセンサ構成において、分岐架橋剤を用いて架橋され得る。膜220の組成および厚さは、活性区域218への望ましい被検物質フラックスを促し、それにより望ましいシグナルの強度および安定性を提供するよう変更してよい。被検物質センサ200は、任意のクーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、またはポテンショメトリーの電気化学的検出技術によって被検物質をアッセイするために動作可能である。
【0035】
図2Bおよび
図2Cは、例示的な3電極被検物質センサ構成の略図を示し、当該センサ構成は本明細書の開示における使用にも適合する。3電極被検物質センサ構成は、被検物質センサ201および202(
図2Bおよび
図2C)における追加電極217を含むことを除いて、
図2Aにおける被検物質センサ200として示される構成に類似し得る。追加電極217が存在する場合、対/参照電極216は、次に対電極または参照電極のいずれか一方として機能してもよく、追加電極217は、構成されていない他方の電極機能を果たす。作用電極214は、その本来の機能を果たし続ける。追加電極217は、間に誘電材料の分離層を挟んで、作用電極214または電極216のいずれか一方の上に配置されてもよい。例えば、
図2Bに示されるように、誘電層219a、219bおよび219cは、電極214、216および217を互いに隔て、電気的絶縁を提供する。代わりに、電極214、216、および217の少なくとも一つは、
図2Cに示すように、基板212の両面に配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、電極214(作用電極)および電極216(対電極)が、基板212の両面に配置されてもよく、電極217(参照電極)は、電極214または電極216の一つの上に配置され、かつ誘電材料を挟んで互いに離れて間隔を空ける。参照材料層230(例えば、Ag/AgCl)は、電極217上に存在してもよく、参照材料層230の配置は、
図2Bおよび
図2Cに示される配置に制限されない。
図2Aに示されるセンサ200と同様に、被検物質センサ201および202における活性区域218は、複数のスポットまたは単一のスポットを含み得る。さらに、被検物質センサ201および202は、任意のクーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、またはポテンショメトリーの電気化学的検出技術によって被検物質をアッセイするために動作され得る。
【0036】
被検物質センサ200のように、被検物質センサ201および202において、膜220はまた、他のセンサ構成と同様に活性区域218を覆うことがあり、それにより物質移動制限膜として役割を果たす。追加の電極217は、いくつかの実施形態において、膜220によって覆われ得る。
図3Bおよび
図2Cは、膜220に覆われている全ての電極214、216および217を示しているが、いくつかの実施形態において、作用電極214のみが覆われ得ることが認められるべきである。さらに、電極214、216および217のそれぞれでの膜220の厚さは、同じであってもよく、または異なってもよく、および/または膜の組成は、局所的に異なり得る。2電極被検物質センサ構成(
図2A)のように、被検物質センサ201および202の片面または両面は、
図2Bおよび
図2Cのセンサ構成における膜220によって覆われてもよく、または被検物質センサ201および202の全体が覆われてもよい。さらに
図2Bおよび
図2Cに示される3電極センサ構成は、本明細書に開示された実施形態に制限されないことは理解されるべきであり、代替の電極および/または層の構成は、本開示の範囲内のままである。
【0037】
図3Aは、単一の作用電極の上に二つの異なる活性区域が配置された単一の作用電極を有するセンサ203の例示的な構成を示す。
図3Aは、作用電極214の上に二つの活性区域が存在することを除き、
図2Aに類似しており、第1活性区域218aおよび第2活性区域218bは、異なる被検物質に応答し、かつ作用電極214の表面上で互いに横方向に離れて間隔を空ける。活性区域218aおよび218bは、各被検物質の検出のために構成された複数のスポットまたは単一のスポットを含み得る。膜220の組成は、活性区域218aおよび218bで異なってもよく、または組成的に同じであってもよい。第1活性区域218aおよび第2活性区域218bは、以下にさらに議論されるように、互いに異なる作用電極電位で、対応する被検物質を検出するために構成され得る。
【0038】
図3Bおよび
図3Cは、センサ204および205のための例示的な3電極センサ構成の断面図をそれぞれ示し、単一の作用電極上に配置された第1活性区域218aおよび第2活性区域218bを有する単一の作用電極を特徴とする。
図3Bおよび
図3Cは、その他の点では
図2Bおよび
図2Cに類似しており、それは参照によってより理解され得る。
図3Aと同様に、膜220の組成は、活性区域218aおよび218bで異なってもよく、または組成的に同じであってもよい。
【0039】
複数の作用電極、特に二つの作用電極を有する例示的なセンサ構成は、
図4から
図5Cを参照してさらに詳細に説明される。以下の説明は、二つの作用電極を有するセンサ構成を主に対象とするが、二つの作用電極より多い構成は、本明細書の開示の拡張によって組み込まれ得ることが認められるべきである。追加作用電極は、被検物質センサへ第1被検物質および第2被検物質のみではなく追加の検知機能を与えるために用いられ得る。
【0040】
図4は、二つの作用電極、参照電極および対電極を有する例示的な被検物質センサ構成の断面図を示し、本明細書の開示における使用に相応しい。図に示すように、被検物質センサ300は、基板302の両面に配置された作用電極304および306を含む。第1活性区域310aは、作用電極304の表面上に配置され、第2活性区域310bは、作用電極306の表面上に配置される。対電極320は、誘電層322により作用電極304から電気的に絶縁され、参照電極321は、誘電層323により作用電極306から電気的に絶縁される。外側の誘電層330および332は、参照電極321および対電極320上にそれぞれ配置される。膜340は、様々な実施形態によると、少なくとも活性区域310aおよび310bを覆ってもよく、同様に被検物質センサ300の他の構成要素または被検物質センサ300全体は、任意に膜340によって覆われてもよい。さらに、必要な場合、膜340は、各位置で被検物質フラックスを差別的に調節するのに適した透過性の値を提供するために、活性区域310aと310bとで組成的に異なってもよい。例えば、膜340は、活性区域310aを覆う位置で均質であってもよく、活性区域310bを覆う位置で不均質であってもよい。
【0041】
複数の作用電極を有し、
図4に示される構成とは異なる代替のセンサ構成は、別々の対電極および参照電極320、321の代わりに、一つの対/参照電極を備えてもよく、および/または明確に示された配置と層および/または膜の配置が異なることを特徴としてもよい。例えば、対電極320および参照電極321の配置は、
図4に示される配置から反転され得る。さらに、作用電極304および306は、
図4に示される配置における基板302の両面に必ずしも存在する必要はない。代わりに、作用電極304および306は基板302の同じ表面上に存在してもよく、間隔を挟んで互いに離れてもよい。特に、作用電極304は作用電極306と比較すると、被検物質センサのより遠位端(先端)の方向へ配置されてもよく、より近位端の方向へ配置されてもよい。作用電極304と306との間に十分大きな間隔が存在する場合、膜340は、一連のディップコーティング操作によって作用電極304および306上に堆積されてもよく、膜340の組成は局所的に異なってもよい。特に、一回目のディップコーティング操作は、作用電極304および306の両方の上に第1膜ポリマーを堆積してもよく、二回目のディップコーティング操作は、作用電極304上のみに異なる組成を有する第2膜ポリマーを堆積してもよく、それにより作用電極304の上に二層を定義し、作用電極306の上に均一な膜を残す。したがって、二層膜の下の層および均一な膜は、同じ膜ポリマーを含み得る。代わりに、二層膜および均一な膜を定義するために、一回目のディップコーティング操作は、作用電極304の上に第1膜ポリマーを堆積してもよく、二回目のディップコーティング操作は、作用電極304および306の両方の上に異なる組成を有する第2膜ポリマーを堆積してもよい。この場合では、二層膜の上の層および均一な膜は、同じ膜ポリマーを含み得る。
【0042】
作用電極304と306との間の間隔の大きさは、二つの電極の間に少なくとも電気的絶縁を与える余裕が十分あり、より典型的には、(例えば、少なくとも一回の浸す工程において、作用電極の一つを優先的に覆うよう被検物質センサを異なる深さに浸すことを可能にすることによって)一連のディップコーティング操作を十分容易にすることができる大きさである。言い換えれば、間隔の大きさは、他方に優先して作用電極の一方の上での成膜を容易にするために、特定のディップコーティング剤内に被検物質センサを特定の深さまで下げるための誤差の余地を提供し得る。
【0043】
適切なセンサ構成は、離れて間隔を空けた作用電極を有する平らなセンサ構成を含む実質的に平らな性質の電極を特徴とすることがあるが、平らではない電極を特徴とするセンサ構成は、本明細書の開示における使用のために有利であり、かつ特に適し得ることが理解されるべきである。特に、互いに同心円状に配置され、センサ尾部の長さに沿って離れて間隔を空けた円筒型の電極は、以下にさらに説明されるように、組成が異なる物質移動制限膜の成膜を容易にし得る。特に、センサ尾部の長さに沿って離れて間隔を空けた同心の作用電極は、実質的に平らなセンサ構成に対する上述の方法と同様に、一連のディップコーティング操作による成膜を容易にし得る。
図5Aから
図5Cは、互いに同心円状に配置された二つの作用電極を備える被検物質センサの斜視図を示す。第2作用電極を持たないが、同心の電極配置を有するセンサ構成が本開示において可能であることも理解されるべきである。
【0044】
図5Aは、複数の電極が実質的に円筒型であり、かつ中心の基板に関して互いに同心円状に配置される例示的なセンサ構成の斜視図を示す。図に示すように、被検物質センサ400は、全ての電極および誘電層が互いに同心円状に配置された中心の基板402を含む。特に、作用電極410は、中心の基板402の表面上に配置され、誘電層412は、センサ先端404に対して遠位に作用電極410の一部分の上に配置される。作用電極420は、誘電層412上に配置され、誘電層422は、センサ先端404に対して遠位に作用電極420の一部分の上に配置される。対電極430は、誘電層422上に配置され、誘電層432は、センサ先端404に対して遠位に対電極430の一部分の上に配置される。参照電極440は、誘電層432上に配置され、誘電層442は、センサ先端404に対して遠位に参照電極440の一部分の上に配置される。そのように、作用電極410、作用電極420、対電極430、および参照電極440の露出した表面は、被検物質センサ400の長手方向の軸Bに沿って互いに離れて間隔を空ける。この電極配置は、一連のディップコーティング操作によって膜450が堆積されるのを可能にしてもよく、以下に議論されるように、作用電極410上に二層膜部分を配置し、作用電極420上に均一な膜部分を配置することを可能にしてもよい。二層膜部分および均一な膜部分は、互いに隣接し得る。
【0045】
さらに
図5Aを参照して、異なる被検物質に応答する第1活性区域414aおよび第2活性区域414bは、作用電極410および420の露出した表面上にそれぞれ配置され、それにより検知するために行われる流体との接触が可能になる。活性区域414aおよび414bは、
図5Aにおいて三つの別々のスポットとして示されているが、活性区域の連続した層を含み、三つのスポットよりも少ないまたは多いものが代替のセンサ構成に存在し得ることは理解されるべきである。
【0046】
図5Aにおいて、センサ400は、作用電極410および420およびその上に配置された活性区域414aおよび414b上で膜450によって部分的にコーティングされる。
図5Bは、実質的にセンサ401の全体が、膜450によって覆われる代替のセンサ構成を示す。膜450は活性区域414aおよび414bで組成的に同じであってもよく、または異なってもよい。例えば、膜450は、活性区域414aを覆う二層膜部分を含んでよく、活性区域414bを覆う均一な膜部分であってもよい。膜450は、作用電極410および活性区域414a上に二層膜部分を堆積し、作用電極420および活性区域414b上に均一な膜部分を堆積するために、一連のディップコーティング操作によって堆積されてもよい。
【0047】
図5Aおよび
図5Bにおける様々な電極配置が、明確に示された配置とは異なり得ることはさらに理解されるべきである。例えば、対電極430および参照電極440の配置は、
図5Aおよび
図5Bに示された構成から反転され得る。同様に、作用電極410および420の配置は、
図5Aおよび
図5Bに明確に示された配置に制限されない。
図5Cは、
図5Bに示された構成に対する代替のセンサ構成を示し、センサ405は、センサ先端404に対してより近位に配置された対電極430および参照電極440、およびセンサ先端404に対してより遠位に配置された作用電極410および420を含む。作用電極410および420が、センサ先端404に対してより遠位に配置されたセンサ構成は、活性区域414aおよび414b(
図5Cにおいて、五つの別々の検知スポットが、例示的に示される)の成膜のために、大きな表面区域を提供することによって有利であってもよく、それによりいくつかの場合において、シグナル強度の増強を容易にする。さらに、互いに同心かつセンサ尾部に沿って離れて間隔が空いた作用電極410および420を有することで、一連のディップコーティング操作により二層膜部分は、センサ先端404の近くに配置された作用電極上に堆積されてもよく、均一な膜部分は、センサ先端404から離れた作用電極上に堆積されてもよい。同様に、中心の基板402は、本明細書に開示された任意の同心のセンサ構成において除かれてもよく、最遠の電極が、代わりに成膜層に続いてサポートしてもよい。
【0048】
以下の開示に従った低電位で動作可能な被検物質センサが、二層膜部分および均一な膜部分を有する物質移動制限膜を含み得ることも理解されるべきである。一連のディップコーティング操作は、物質移動制限膜のような成膜に対して有利であり得る。しかし、本開示は、検出が必ずしも低電位で行われる必要はないが、二層膜部分および均一の膜部分を含む物質移動制限膜をさらに装備する被検物質センサも考慮する。
【0049】
その結果、本開示によると、低電位で動作可能な被検物質センサは、少なくとも第1作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置され第1被検物質に低電位で応答する第1活性区域であって、第1ポリマーと、前記第1ポリマーに共有結合した第1レドックスメディエータと、前記第1ポリマーに共有結合した前記第1被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含む前記第1活性区域と、少なくとも前記第1活性区域を覆う前記第1被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜と、を含み得る。ここで用いられるように、用語「低電位」は、第1レドックスメディエータの酸化還元電位より高い電位を示し、Ag/AgCl参照電極と比較して測定される場合に、約+100mV未満、約-50mV未満、約-80mV未満、または約-100mV未満を含む約+200mV未満の電位を示す。作用電極電位のような電位での動作を容易にし得る第1レドックスメディエータの例示的な酸化還元電位は、Ag/AgCl参照電位と比較して測定された場合に、約-400mVから約-200mV、または約-350mVから約-250mV、または約-300mVから約-250mVのような約-200mV未満であり得る。
【0050】
低電位で動作を促進可能な第1レドックスメディエータの適切な例は、式1によって表される構造を有してもよく、
【化1】
式中、Mはオスミウム、ルテニウム、バナジウム、コバルト、または鉄であり、L
1からL
6はMに配位的に結合する独立したヘテロ芳香族配位子であり、L
1からL
6の二つ以上が、任意に結合して二座、三座またはそれより座数の多い配位子を形成してよく、L
1からL
6の少なくとも一つが、第1レドックスメディエータを第1ポリマーに結合させる結合基を含み、L
1からL
6の少なくとも一つは、電子供与基によって官能基化される。電子供与基は、結合基とは離れておりかつ異なる。
【0051】
低電位レドックスメディエータに含まれる複素芳香族配位子を特徴とする、特に適切な二座配位子は、任意に置換された2,2’-ビイミダゾール配位子、2-(2-ピリジル)イミダゾール配位子および2,2’-ビピリジン配位子を含む。
【0052】
2,2’-ビイミダゾール配位子の例は、式2によって示され、
【化2】
式中、R
1およびR
2は、任意に置換されたアルキル基、アルケニル基、またはアリール基の中から別々に選ばれる。より具体的な例では、R
1およびR
2は、不飽和C
1からC
12アルキル基または不飽和C
1からC
4アルキル基から別々に選ばれる。いくつかの実施形態では、R
1およびR
2の両方が、メチルである。Qは、イミダゾール環(n=0、1または2)の一つ以上の炭素原子に結合される任意の置換であり、任意のQの置換は、いくつかの実施形態において、電子供与基または結合基であり得る。一つ以上のQを含み得る適切な電子供与基は、例えば、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノなどを含む。Qが存在しない場合、その炭素原子は、水素原子を有する。
【0053】
2-(2-ピリジル)イミダゾール配位子の例は、式3によって表される構造を有してもよく、
【化3】
式中、R
1’は、不飽和C
1からC
12のアルキル基、またはC
1からC
4のアルキル基、特にはメチルのような任意に置換されたアルキル基、アルケニル基、またはアリール基である。Qは、イミダゾール環またはピリジン環(イミダゾールn=0、1または2、ピリジンp=0、1、2、3または4)の一つ以上の炭素原子に結合される任意の置換であり、任意のQの置換は、いくつかの実施形態において、電子供与基または結合基であり得る。一つ以上のQを含み得る適切な電子供与基は、例えば、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノなどを含む。Qが存在しない場合、その炭素原子は、水素原子を有する。
【0054】
2,2’-ビピリジン配位子の例は、式4によって表される構造を有してもよく、
【化4】
式中、Qはピリジン環(p=0、1、2、3または4)の一つ以上の炭素原子に結合される任意の置換であり、任意のQの置換は、いくつかの実施形態において、電子供与基または結合基であり得る。一つ以上のQを含む適切な電子供与基は、例えば、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノなどを含む。Qが存在しない場合、その炭素原子は、水素原子を有する。
【0055】
低電位で電子の移動を促進可能なレドックスメディエータの特に適切な例は、式5によって表される構造を有してもよく、L
1およびL
2、L
3およびL
4、およびL
5およびL
6はいずれも結合して二座配位子を形成しており、二座配位子の一つは、レドックスメディエータをポリマーに共有結合させる結合基Gを有しており、L
1-L
2、L
3-L
4、およびL
5-L
6の少なくとも一つは、電子供与基を有する。電子供与基は、結合基とは離れておりかつ異なる。電子供与基は、結合基Gを含む同じ二座配位子上にあってもよく、または異なる二座配位子上にあってもよい。L
1-L
2、L
3-L
4、およびL
5-L
6は、例えば、式2から式4の一つ以上に表される二座配位子を含み得る。
【化5】
【0056】
いくつかの実施形態では、レドックスメディエータは、正電荷(例えば、+1から+5の範囲の電荷)を帯電し得る。代わりに、配位子または主鎖が、例えば、カルボン酸基、リン酸基またはスルホン酸基のような十分な数の負電荷官能基によって誘導体化される場合、レドックスメディエータは、負電荷(例えば、-1から-5の範囲の電荷)を帯電する。一つ以上のカウンターイオンは、電荷のバランスを取るために用いられる。適切なカウンターイオンの例は、ハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオンまたはヨウ化物イオン)、硫酸イオン、リン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、およびテトラフルオロホウ酸イオンのようなアニオン、およびカチオン、特には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、およびアンモニウムイオンのような一価のカチオンである。
【0057】
より特定の例では、第1活性区域におけるレドックスメディエータは、式6によって表される構造を有してもよく、
【化6】
式中、Gは、レドックスメディエータを活性区域のポリマーへ共有結合させる結合基であり、Dは、電子供与基である。適切な電子供与基の特定の例は、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基またはエトキシ基)、アミノ基、またはアルキル基またはジアルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、またはジエチルアミノ基)を含む。さらに特定の例では、電子供与基は、式7に示すように、ピリジン環の4-位置に配置され得る。
【化7】
本明細書の任意の実施形態では、低電位で電子の移動を促進可能なレドックスメディエータは、式8に表される構造を有し得る。
【化8】
【0058】
少なくとも一つの実施形態では、結合基Gは、ポリマーへの共有結合を促進するための反応性基を含み得る。この反応性基は、ポリマー上またはポリマーの前駆体内に配置された相補的反応性基と反応し、それへの共有結合を促進する。いくつかの実施形態において、アミド基は、結合基G内に存在し得る。
【0059】
任意の適切なポリマーの主鎖は、レドックスメディエータおよび酵素のそれへの共有結合によって、低電位での被検物質の検出を容易にするために活性区域において存在し得る。活性区域内の適切なポリマーの例は、ポリ(4-ビニルピリジン)およびポリ(N-ビニルイミダゾール)またはそのコポリマーを含み、例えば、四級化ピリジン基および四級化イミダゾール基は、レドックスメディエータまたは酵素のそれに対する結合部として働く。活性区域に存在し得る他の適切なポリマーは、限定されないが、米国特許第6,605,200号に記載され、その全てが参照によって本明細書に組み込まれるように、ポリ(アクリル酸)、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(GANTREZポリマー)、ポリ(塩化ビニルベンジル)、ポリ(アリルアミン)、ポリリシン、カルボキシペンチル基で四級化されたポリ(4-ビニルピリジン)、およびポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)のようなポリマーを含む。
【0060】
第1活性区域において、低電位で検出を促進可能であるポリマーに共有結合する酵素が、特に制限されることは信じられない。適切な酵素は、グルコース、乳酸、ケトン、またはクレアチニン等を検出可能である酵素を含み得る。いくつかの場合では、第1活性区域におけるポリマーに共有結合する少なくとも一つの酵素は、低電位で被検物質に集団として応答する複数の酵素を含み得る。酵素系は、ケトンおよびクレアチニンを検出するために特に望ましいことがある。
【0061】
より具体的な実施形態では、第1活性区域は、ケトンを検出可能な酵素系を含み得る。先に言及したように、ケトンは、通常少ない生物学的量において存在し、本明細書の開示に従った低電位での検出から利益を受け得る。さて、
図6Aから
図6Cを参照すると、ケトンを検出するために用いられ得る特定の酵素系が、さらに詳細に説明される。示された酵素反応では、β-ヒドロキシ酪酸は、生体内で形成されたケトンに対する代用として働く。
図6Aに示すように、本明細書の開示に従ったケトンを検出するために用いられ得る一対の協調酵素は、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(HBDH)およびジアフォラーゼであり、ここでさらに説明されるように、少なくとも一つの作用電極の表面上のケトン応答性活性区域内に堆積され得る。ケトン応答性活性区域が、この対の協調酵素を含む場合、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼは、β-ヒドロキシ酪酸および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+)をそれぞれアセトアセテートおよび還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に変換する。酵素補因子NAD
+およびNADHは、ここで開示される協調酵素反応を促進することに役立っている。NADHは次に、ジアフォラーゼを介した酸化を受けてもよく、このプロセス間の電子の移動が、作用電極でケトン検出のための基礎を提供する。したがって、作用電極への電子の移動量とβ-ヒドロキシ酪酸の変換量との間は1:1でモルが対応し、それによりケトン検出のための基礎および作用電極の電流量の測定に基づく定量化を提供する。作用電極にNADH酸化をもたらす電子の移動は、低電位で動作を促進可能なレドックスメディエータによって行われ得る。アルブミンは、この対の協調酵素と共に安定剤として存在し得る。特定の実施形態によると、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼおよびジアフォラーゼは、被検物質センサのケトン応答性活性区域内のポリマーに共有結合され得る。NAD
+は、ポリマーに共有結合されてもよく、またはされなくてもよく、NAD
+が共有結合されない場合、ケトン応答性活性区域内に物理的に留まり得る。ケトン応答性活性区域を覆う膜は、ケトン応答性活性区域内にNAD
+を留めることに役立ち、ケトンの検出を可能にするために内部で十分なケトンの拡散を許容する。
【0062】
酵素的にケトンを検出するための他の適切なケミストリは、
図6Bおよび
図6Cに示される。両方の場合において、作用電極への電子の移動量とβ-ヒドロキシ酪酸の変換量との間はさらに1:1でモルが対応し、それによってケトン検出のための基礎を提供する。
【0063】
図6Bに示すように、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(HBDH)は、さらにβ-ヒドロキシ酪酸およびNAD
+をそれぞれアセトアセテートおよびNADHに変換し得る。ジアフォラーゼ(
図6Aに示す)および適切なレドックスメディエータによって完了されている作用電極への電子の移動の代わりに、NADHオキシダーゼ(NADHOx(Red))の還元型は、反応を受け、対応する酸化型(NADHOx(Ox))を形成する。NADHOx(Red)は、次に分子酸素を用いた反応により再形成しスーパーオキシドを生み出し、その後、活性酸素分解酵素(SOD)を介して過酸化水素へ変換され得る。過酸化水素は次に、作用電極で酸化されてもよく、初期に存在したケトンの量に相関し得るシグナルを提供する。SODは、様々な実施形態によると、ケトン応答性活性区域におけるポリマーに共有結合され得る。
図6Aに示す酵素系のように、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼおよびNADHオキシダーゼは、ケトン応答性活性区域におけるポリマーに共有結合されてもよく、NADは、ケトン応答性活性区域におけるポリマーに共有結合されてもよく、またはされなくてもよい。NAD
+が共有結合されない場合、ケトン応答性活性区域内にNAD
+の保持を促進する膜ポリマーを用いて、ケトン応答性活性区域内に物理的に留められてもよい。
【0064】
図6Cに示すように、ケトンに対する別の酵素の検出ケミストリは、β-ヒドロキシ酪酸およびNAD
+をそれぞれアセトアセテートおよびNADHに変換するために、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(HBDH)を活用してもよい。この場合における電子の移動サイクルは、作用電極で1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンの酸化によって完了され、NADを再形成する。1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンは、ケトン応答性活性区域内でポリマーに共有結合されてもよく、またはされなくてもよい。
図6Aに示す酵素系のように、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼは、ケトン応答性活性区域におけるポリマーに共有結合されてもよく、NADは、ケトン応答性活性区域におけるポリマーに共有結合されてもよく、またはされなくてもよい。活性区域におけるアルブミンの含有は、反応安定性の驚くべき向上を提供し得る。適切な膜ポリマーは、ケトン応答性活性区域内にNAD
+の保持を促進し得る。
【0065】
本開示の被検物質センサはさらに、第1活性区域において、低電位で検出可能な被検物質に加えて、第2またはその次の被検物質を分析するように構成され得る。第2被検物質の検出を容易にするために、本開示の被検物質センサは、第2作用電極と、前記第2作用電極の表面上に配置され前記第1被検物質とは異なる第2被検物質に応答する第2活性区域であって、第2ポリマーと、前記第2ポリマーに共有結合した、前記第1レドックスメディエータとは異なる第2レドックスメディエータと、前記第2ポリマーに共有結合した前記第2被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含む前記第2活性区域と、をさらに含む。物質移動制限膜の第2部分は、前記第2活性区域を覆い得る。前記第2被検物質に応答する前記少なくとも一つの酵素は、前記第2被検物質に集団として応答する複数の酵素を含む酵素系を含み得る。前記第2活性区域において、前記第2レドックスメディエータは、必ずしも低電位で電子の移動を促進可能である必要はないが、低電位で電子の移動を促進可能であってもよい。
【0066】
第2活性区域に含まれる適切なレドックスメディエータは、限定されないが、米国特許第6,134,461号および米国特許第6,605,200号に記載され、それらの全てが参照によって本明細書に組み込まれるように、オスミウム錯体および他の遷移金属錯体を含み得る。適切なレドックスメディエータの追加の例は、米国特許第6,736,957号、米国特許第7,501,053号および米国特許第7,754,093号に記載され、各開示でそれらの全てもまた参照によって本明細書に組み込まれるものを含む。第2活性区域に含まれる他の適切なレドックスメディエータは、ルテニウム、オスミウム、鉄(例えば、ポリビニルフェロセンまたはヘキサシアノ鉄酸)、またはコバルト、例えば、そのメタロセン化合物を含む、の金属化合物または金属錯体を含み得る。金属錯体に対する適切な配位子は、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、またはピリジル(イミダゾール)のような、例えば、二座以上の座数の配位子を含み得る。他の適切な二座配位子は、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、またはo-ジアミノアレーンを含み得る。単座、二座、三座、四座、またはより多い座数の配位子の任意の組み合わせが、完全な配位圏を達成するために金属錯体に存在してもよい。
【0067】
本明細書の開示による被検物質の検出を促進するための活性区域は、レドックスメディエータが共有結合するポリマーを含み得る。ポリマー結合型レドックスメディエータの適切な例は、米国特許第8,444,834号、米国特許第8,268,143号、および米国特許第6,605,201号に記載され、開示はその全てが参照によって本明細書に組み込まれるものを含み得る。活性区域に含まれる適切なポリマーは、限定されないが、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4-ビニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、またはその任意のコポリマーを含み得る。活性区域に含まれ、適切であり得る例示的なコポリマーは、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、またはアクリロニトリルのようなモノマー単位を含有するものを含む。各活性区域内のポリマーは同じであってもよく、または異なってもよい。
【0068】
特定の例では、第2活性区域は、第1活性区域において低電位で検出可能な被検物質と組み合わせてグルコースを検出するように構成され得る。このように、本開示の特定の実施形態において、第2酵素はグルコースオキシダーゼであり得る。さらに、より特定の例において、第1被検物質は、本明細書に説明されるような酵素系により検出可能であるケトンであってもよく、第2被検物質は、グルコースオキシダーゼにより検出可能であるグルコースであってもよい。
【0069】
各被検物質の検出は、別々のシグナルが、各被検物質から得られるように、各作用電極に別々に電位を印加することを含み得る。各被検物質から得られるシグナルは、次に、検量線または関数の使用によって、またはルックアップテーブルを用いることによって被検物質の濃度と関連付けられ得る。被検物質シグナルと被検物質濃度の相関は、特定の例において、プロセッサの使用によって導かれ得る。
【0070】
他の被検物質センサ構成において、第1活性区域および第2活性区域は、単一の作用電極上に配置され得る。第1シグナルは、第1活性区域から低電位で取得されてもよく、両方の活性区域からのシグナル寄与を含む第2シグナルは、より高い電位で取得されてもよい。次に、第2シグナルから第1シグナルを引くことで、第2被検物質から発生したシグナル寄与の決定を可能にし得る。次に、複数の作用電極を有するセンサ構成に対して説明された方法と同様に、各被検物質からのシグナル寄与は、被検物質濃度と関連付けられ得る。
【0071】
その結果、本開示は、少なくとも第1作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置され前記第1被検物質に低電位で応答する第1活性区域であって、前記第1活性区域は、第1ポリマーと、前記第1ポリマーに共有結合した第1レドックスメディエータと、前記第1ポリマーに共有結合した前記第1被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含み、前記レドックスメディエータが、上述された式1から式8の任意の一つによって表される構造を有し、Gは前記第1レドックスメディエータを前記第1ポリマーに共有結合させた結合基である、前記第1活性区域と、少なくとも前記第1活性区域を覆う前記第1被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜と、を含む被検物質センサを提供することと、前記第1作用電極へ低電位を印加することと、前記第1活性区域に接触している流体中の第1被検物質の濃度に比例し、前記第1活性区域の酸化還元電位以上の第1シグナルを取得することと、前記流体中の前記第1被検物質の濃度と前記第1シグナルとを相関させることと、を含む方法を提供する。
【0072】
Ag/AgCl参照電極と比較して測定すると、低電位は約+100mV未満、約-50mV未満、約-80mV未満または約-100mV未満を含み、約+200mV未満でもよい。低電位はまた、第1レドックスメディエータの酸化還元電位より高くてもよい。低い作用電極電位での動作を容易にし得る第1レドックスメディエータの例示的な酸化還元電位は、Ag/AgCl参照電極と比較して測定すると、約-400mVから約-200mV、または約-350mVから約-250mV、または約-300mVから約-250mVのように約-200mV未満でもよい。
【0073】
本明細書に開示された被検物質センサは、少なくとも第1活性区域を覆う被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜をさらに含む。複数の活性区域が存在する場合、物質移動制限膜は、例えば、センサ先端の近くにある作用電極上に二層膜部分を生み出すことが、一連のディップコーティング操作によって達成され得るように、異なる活性区域上で異なる組成を含み、各活性区域を覆うことがある。物質移動制限膜は、例えば、ポリビニルピリジンまたはポリビニルイミダゾールのホモポリマーまたはコポリマーのような膜ポリマーを含んでもよく、適切な架橋剤によってさらに架橋されてもよい。膜ポリマーは、特定の実施形態において、ビニルピリジンおよびスチレンのコポリマーを含み得る。より特定の例では、一つ以上の活性区域を覆う膜ポリマーは、例えば、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルのような三つ以上の架橋基を含む分岐架橋剤によって架橋されてもよく、上述のような物質移動制限膜から取得される抽出可能物の量が、驚くほど減少してもよい。より具体的には、物質移動制限膜は、ポリビニルピリジンまたは、例えば、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルのような三つの架橋基を含む分岐グリシジルエーテル架橋剤によって架橋されたビニルピリジンおよびスチレンのコポリマーを含み得る。特には、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルのエポキシ基が、ピリジン窒素原子またはイミダゾール窒素原子と反応してもよく、エポキシド環の開環によって架橋基の共有結合を促進してもよい。架橋剤本体を膜ポリマーの複素環へ架橋するヒドロキシアルキル基が、もたらされ得る。
【0074】
ビニルピリジンおよびスチレンの適切なコポリマーは、約0.01%から約50%のモル%、または約0.05%から約45%のモル%、または約0.1%から約40%のモル%、または約0.5%から約35%のモル%、または約1%から約30%のモル%、または約2%から約25%のモル%、または約5%から約20%のモル%の範囲に含有するスチレンを有し得る。置換されたスチレンは、同様にかつ同様の量で用いられ得る。ビニルピリジンおよびスチレンの適切なコポリマーは、5kDa以上、または約10kDa以上、または約15kDa以上、または約20kDa以上、または約25kDa以上、または約30kDa以上、または約40kDa以上、または約50kDa以上、または約75kDa以上、または約90kDa以上、または約100kDa以上の分子量を有し得る。限定されない例では、ビニルピリジンおよびスチレンの適切なコポリマーは、約5kDaから約150kDa、または約10kDaから約125kDa、または約15kDaから約100kDa、または約20kDaから約80kDa、または約25kDaから約75kDa、または約30kDaから約60kDaの範囲の分子量を有し得る。
【0075】
その結果、本明細書に説明された被検物質センサの少なくともいくつかは、少なくとも第1作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置された第1活性区域と、少なくとも前記第1活性区域を覆う第1被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜と、を含み得る。前記第1活性区域は第1ポリマーと、前記第1ポリマーに共有結合され第1被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含む。前記物質移動制限膜は、例えば、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルのような三つ以上の架橋基を含む分岐グリシジルエーテル架橋剤によって架橋される膜ポリマーを含む。
【0076】
架橋は、より特定の実施形態において、分子間で起こり得る。二つ以上の膜ポリマー主鎖の間で分子間架橋を促進するために用いられるポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルは、適切な分子量の広い範囲を示し得る。四つのポリマー主鎖まではポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテル架橋剤の単一の分子によって架橋され得る。特定の例では、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルの分子量は、約1000g/molから約5000g/molの範囲であり得る。ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルの各アームにおけるエチレングリコールの繰り返し単位の数は、同じであってもよく、または異なってもよく、通常は平均的な分子量を与える所与のサンプルの範囲にわたって変更されてもよい。架橋前のポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルの構造は、以下の式9によって表され、
【化9】
式中、n1、n2、n3およびn4は、いずれも0以上の整数、通常は1以上であり、n1、n2、n3およびn4は、同じであってもよく、または異なってもよい。n1、n2、n3およびn4の合計は、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルの分子量が上述の範囲に収まるように選ばれ得る。言い換えれば、上述の範囲内の分子量を有するポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルを生成するためには、n1、n2、n3およびn4の合計が、約14から約110、または約15から約104の範囲であってもよく、これらの値の間における任意の副範囲を含み、n1、n2、n3およびn4は、別々に0以上の任意の整数であってもよく、または1以上の整数であってもよい。
【0077】
架橋密度は、膜ポリマー側鎖に結合する架橋剤を有する膜ポリマー側鎖の数を示す。例えば、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルまたは三つ以上の架橋基を有する類似のポリエチレンオキシド架橋剤のような分岐グリシジルエーテルによって架橋された膜ポリマーは、広い範囲にわたって変更される架橋密度を有し得る。特定の例において、側鎖に付加された架橋剤を有し得る側鎖の一部分は、膜ポリマー中の利用可能な複素環の約0.1%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約0.2%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約0.3%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約0.4%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約0.5%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約0.6%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約0.7%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約0.8%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約0.9%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約1.0%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約1.2%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約1.4%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約1.6%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約1.8%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約2.0%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約2.2%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約2.4%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約2.6%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約2.8%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約3.0%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約3.5%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約4.0%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約4.5%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約5.0%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約5.5%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約6.0%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約6.5%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約7.0%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約7.5%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約8.0%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約8.5%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約9.0%以上であってもよく、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約9.5%以上であってもよく、または複素環のポリマー中の利用可能な複素環の約10%以上であってもよい。より具体的な実施形態において、架橋剤は、膜ポリマー中の利用可能な複素環の約1%と約20%との間、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約2%と約10%との間、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約3%と約8%との間、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約4%と約9%との間、または膜ポリマー中の利用可能な複素環の約5%と約12%との間に付加され得る。
【0078】
適切な膜ポリマーは、ピリジンまたはイミダゾールのモノマー単位の窒素原子に結合する一つ以上のポリエーテルアーム(側鎖)をさらに含み得る。本明細書に開示されたいくつかの膜ポリマーは、一つ以上のポリエーテルアームをさらに含み得る。ポリエーテルアームは、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルまたは類似の架橋剤から形成された架橋基と区別され、ポリエーテルアームは、別のポリマー鎖間で伸びず、または単一のポリマー鎖内の分子内で終端しない。したがって、ポリエーテルアームは、架橋剤から形成された架橋基とは離れておりかつ異なる。ポリエーテルアームは、ポリエチレンオキシドブロックおよびポリプロピレンオキシドブロックを含んでもよく、特にポリプロピレンオキシドブロックを有するポリエーテルアームは、二つのポリエチレンオキシドブロックの間に挿入される。ポリエーテルアームと複素環の窒素原子との結合は、膜ポリマー中の複素環の窒素原子と結合を形成可能な任意の反応性官能基によって発生し得る。ポリエーテルアームと複素環の窒素原子との結合は、アルキル基、ヒドロキシル官能基化アルキル基、またはカルボニルにより起き得る。他の特定の場合において、ポリエーテルアームはまた、複素環の窒素原子から離れたアミン基を含んでもよく、またはアミンフリーであってもよい。
【0079】
膜ポリマーのポリエーテルアームは、少なくとも一つのポリエチレンオキシドブロックおよび少なくとも一つのポリプロピレンオキシドブロックを含んでもよく、それによりスペーサによって複素環の窒素原子へ結合されたポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのモノマー単位の少なくともジブロック配列を与える。ポリエチレンオキシドブロックまたはポリプロピレンオキシドブロックのいずれか一方は、スペーサに結合し得る。他のより具体的な実施形態において、ポリエーテルアームは、順番通りに、スペーサ、第1ポリエチレンオキシドブロック、ポリプロピレンオキシドブロック、および第2ポリエチレンオキシドブロック(すなわち、A-B-A反復パターン)または、順番通りに、スペーサ、第1ポリプロピレンオキシドブロック、ポリエチレンオキシドブロック、および第2ポリプロピレンオキシドブロック(すなわち、B-A-B反復パターン)を含み得る。アミン基は、アミン含有ポリエーテルアーム中のポリエチレンオキシドブロックとポリプロピレンオキシドブロックとの間を仲介し得る。したがって、本明細書に開示された膜ポリマー中のポリエーテルアームは、以下の式10から式13により一般に定められる構造を有してもよく、
【化10】
式中、PEは、ポリエチレンオキシドブロックを示し、PPは、ポリプロピレンオキシドブロックを示し、Aはアミノ基、Jはスペーサ基である。スペーサ基Jは、膜ポリマーの複素環に結合され得る。適切なスペーサ基Jは、限定されないが、アルキル、ヒドロキシ官能基化アルキル、カルボニル、カルボン酸エステル、およびカルボキサミドなどを含み得る。可変のq、r、s、およびtは、各ブロックにおけるモノマー単位の数およびブロックの反復回数を定める正の整数であり、ジブロック配列の条件では、可変のtは、0であってもよく、および可変のsは1であってもよい。いくつかの実施形態によると、可変のqは、約2と約50との間または約6と約20との間の範囲の整数であり、可変のrは、約2と約60との間または約10と約40との間の範囲の整数であり、可変のtは、約2と約50との間または約10と約30との間の範囲の整数である。いくつかのまたは他の様々な実施形態によると、可変のsは、1と約20との間または1と約10との間の範囲の整数である。いくつかの実施形態において、可変のsは、1である。
【0080】
本開示のより具体的な実施形態によると、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリエチレンオキシド(式10に類似する)アームのトリブロック配列を有するアミンフリーポリエーテルアームは、式14によって定められる構造を有してもよく、
【化11】
式中、Rは、アルキル基、特にメチル基であり、可変のwは、0または1であり、可変のxは、約4と約24との間または約6と約20との間の範囲の整数であり、可変のyは、約8と約60との間または約10と約40との間の範囲の整数であり、可変のzは、約6と約36との間または約10と約30との間の範囲の整数である。より具体的な実施形態では、可変のxは、約8と約16との間または約9と約12との間の範囲であってもよく、可変のyは、約10と約32との間、または約16と約30との間、または約12と約20との間の範囲であってもよく、可変のzは、約10と約20との間または約14と約18との間の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、第2ポリエチレンオキシドブロックが、第1ポリエチレンオキシドブロックより長い(大きい)ように、可変のxは、可変のzより小さくてもよい。可変のwが0の場合、アミンフリーポリエーテルアームは、二つの炭素のアルキル基によって直接膜ポリマーに結合されるが、長いアルキル基もまた本開示によって考慮される。
【0081】
本開示の他の特定の実施形態において、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリエチレンオキシドのトリブロック配列を有し、かつポリエチレンオキシドブロックとポリプロピレンオキシドブロックとの間で仲介するアミン基を有するポリエーテルアーム(式12に類似する)は、式15によって定められる構造を有してもよく、
【化12】
式中、w、x、y、zおよびRが、上記式14に定められる。可変のwが0の場合、ポリエーテルアームは、二つの炭素のアルキル基によって直接膜ポリマーに結合されるが、長いアルキル基もまた本開示によって考慮される。
【0082】
本明細書に開示されたポリエーテルアームは、ポリエーテルアームの前駆体中の反応性官能基として複素環の窒素原子に結合され得る。適切な反応性官能基は、例えば、ハロゲンまたはエポキシドを含み得る。上記の式14および式15に挙げられるように(式14および式15におけるn=1)、例えば、エポキシドは、ポリエーテルアームを膜ポリマーの複素環の窒素原子に結合させるヒドロキシアルキルスペーサ基の形成を導く。対照的に、ハロゲン官能基化ポリエーテルアーム前駆体は、アルキルスペーサ(式14および式15におけるn=0)を導いてもよく、適切なアルキル基は、直鎖であってもよく、または分岐鎖であってもよく、かつ2から約20の炭素原子を含んでもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、スルホン酸を含むアームは、本明細書に開示された膜ポリマーの少なくとも一部における側鎖として付加され得る。スルホン酸を含むアームは、任意の適切な比率において、ポリエーテルアームおよび/または架橋剤と組み合わせて存在し得る。本明細書に開示された任意の膜ポリマーは、スルホン酸を含むアームよりも多量のポリエーテルアームまたは架橋基を含み得る。スルホン酸を含むアームは、アルキル基によって膜ポリマーに付加される。様々な実施形態によると、アルキル基は、1と約6との間の炭素原子、または2と約4との間の炭素原子を含み得る。スルホン酸を含むアームを本明細書に開示された膜ポリマーに導入するための適切な試薬は、クロロメタンスルホン酸、またはブロモエタンスルホン酸などのようなハロスルホン酸化合物、または環状のスルホン酸(スルトン)を含み得る。
【0084】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、本明細書に開示されたいくつかの物質移動制限膜において組み込まれ得る。
【0085】
異なる被検物質をアッセイするように構成された第1活性区域および第2活性区域が別々の作用電極上に配置された場合、物質移動制限膜は、第1被検物質および第2被検物質に対して異なる透過性の値を有し得る。各作用電極の膜の厚さおよび/または活性区域の大きさは、各被検物質に対して感度が均等になるように変更され得るが、このアプローチは、被検物質センサの製造を著しく複雑にし得る。解決策として、活性区域の少なくとも一つを覆う物質移動制限膜は、第1膜ポリマーおよび第2膜ポリマーの混合膜または第1膜ポリマーおよび第2膜ポリマーの二層膜を含み得る。均一な膜は、混合膜または二層膜で覆われていない活性区域を覆ってもよく、均一な膜は第1膜ポリマーまたは第2膜ポリマーの一つだけを含む。有利なことに、本明細書に開示された被検物質センサの構造は、被検物質センサの第1活性区域上に配置された均一な膜部分および第2活性区域上に配置された多成分の膜部分を有する連続膜を容易に許容し、それにより各被検物質に対する透過性の値を均一化し、同時に感度および検出の正確性を向上する。連続膜の成膜は、特定の実施形態において、一連のディップコーティング操作によって行われ得る。
【0086】
本明細書に開示された実施形態は、以下を含む。
【0087】
A.被検物質の低電位検出が可能な被検物質センサ。被検物質センサであって、少なくとも第1作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置され第1被検物質に低電位で応答する第1活性区域であって、前記第1活性区域は、第1ポリマーと、前記第1ポリマーに共有結合した第1レドックスメディエータと、前記第1ポリマーに共有結合した前記第1被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含み、前記第1レドックスメディエータが、
【化13】
の構造を有し、Gは前記第1レドックスメディエータを前記第1ポリマーに共有結合させる結合基である、前記第1活性区域と、少なくとも前記第1活性区域を覆う前記第1被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜と、を含む被検物質センサ。
【0088】
B.低電位検出が可能な被検物質センサを用いた被検物質の検出をするための方法。少なくとも第1作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置され前記第1被検物質に低電位で応答する第1活性区域であって、前記第1活性区域は、第1ポリマーと、前記第1ポリマーに共有結合した第1レドックスメディエータと、前記第1ポリマーに共有結合した前記第1被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含み、前記第1レドックスメディエータは、
【化14】
の構造を有し、Gは前記第1レドックスメディエータを前記第1ポリマーに共有結合させる結合基である、前記第1活性区域と、少なくとも前記第1活性区域を覆う前記第1被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜と、を含む被検物質センサを提供することと、前記第1作用電極へ低電位を印加することと、前記第1活性区域に接触している流体中の第1被検物質の濃度に比例し、前記第1活性区域の酸化還元電位以上の第1シグナルを取得することと、前記流体中の前記第1被検物質の濃度と前記第1シグナルとを相関させることと、を含む方法。
【0089】
B1.低電位検出が可能な被検物質センサを用いた被検物質を検出するための方法。少なくとも第1作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置され前記第1被検物質に低電位で応答する第1活性区域であって、前記第1活性区域は、第1ポリマーと、前記第1ポリマーに共有結合した第1レドックスメディエータと、前記第1ポリマーに共有結合した前記第1被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含み、前記第1レドックスメディエータは、
【化15】
の構造を有し、Gは前記第1レドックスメディエータを前記第1ポリマーに共有結合させる結合基である、前記第1活性区域と、少なくとも前記第1活性区域を覆う前記第1被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜と、を含む被検物質センサを前記第1被検物質が含まれる流体にさらすことと、前記第1作用電極へ低電位を印加することと、前記流体中の前記第1被検物質の濃度に比例し、前記第1活性区域の酸化還元電位以上の第1シグナルを取得することと、前記流体中の前記第1被検物質の濃度と前記第1シグナルとを相関させることと、を含む方法。
【0090】
C.分岐グリシジルエーテル架橋剤によって架橋された物質移動制限膜を含む被検物質センサ。被検物質センサであって、少なくとも第1作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置された第1活性区域であって、第1ポリマーと、前記第1ポリマーに共有結合され第1被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含む前記第1活性区域と、少なくとも前記第1活性区域を覆う前記第1被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜であって、三つ以上の架橋基を含む分岐架橋剤によって架橋された膜ポリマーを含む前記物質移動制限膜と、を含む被検物質センサ。
【0091】
D.分岐グリシジルエーテル架橋剤によって架橋された物質移動制限膜を含む被検物質センサを用いた被検物質を検出するための方法。少なくとも第1作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置された第1活性区域であって、第1ポリマーと、前記第1ポリマーに共有結合され第1被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含む前記第1活性区域と、少なくとも前記第1活性区域を覆う前記第1被検物質に対して透過性のある物質移動制限膜であって、三つ以上の架橋基を含む分岐架橋剤によって架橋された膜ポリマーを含む前記物質移動制限膜と、を含む被検物質センサを提供することと、前記第1作用電極へ電位を印加することと、前記第1活性区域に接触している流体中の第1被検物質の濃度に比例し、前記第1活性区域の酸化還元電位以上の第1シグナルを取得することと、前記流体中の前記第1被検物質の濃度と前記第1シグナルとを相関させることと、を含む方法。
【0092】
実施形態AからDは、任意の組み合わせにおいて、以下の要素を一つ以上有し得る。
【0093】
要素1:前記少なくとも一つの酵素は、前記第1被検物質に集団として応答する複数の酵素を含む酵素系を含む。
【0094】
要素2:前記第1被検物質は、一つ以上のケトンを含む。
【0095】
要素3:前記物質移動制限膜は、三つ以上の架橋基を含む分岐架橋剤によって架橋された膜ポリマーを含む。
【0096】
要素4:前記膜ポリマーは、ポリビニルピリジンまたはポリビニルイミダゾールを含む。
【0097】
要素5:前記膜ポリマーは、ビニルピリジンおよびスチレンのコポリマーを含む。
【0098】
要素6:前記分岐架橋剤は、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルを含む。
【0099】
要素7:前記被検物質センサは、第2作用電極と、前記第2作用電極の表面上に配置され、前記第1被検物質とは異なる第2被検物質に応答する第2活性区域であって、第2ポリマーと、前記第2ポリマーに共有結合され、前記第1レドックスメディエータとは異なる第2レドックスメディエータと、前記第2ポリマーに共有結合した前記第2被検物質に応答する少なくとも一つの酵素と、を含む前記第2活性区域と、前記第2活性区域を覆う物質移動制限膜の第2部分と、をさらに含む。
【0100】
要素8:前記第2被検物質に応答する前記少なくとも一つの酵素は、前記第2被検物質に集団として応答する複数の酵素を含む酵素系を含む。
【0101】
要素9:前記第2被検物質は、グルコースを含む。
【0102】
要素10:前記低電位は、前記第1レドックスメディエータの酸化還元電位より高く、かつAg/AgCl参照電極に対して約-80mV未満である。
【0103】
要素10A:前記第1レドックスメディエータの前記酸化還元電位は、Ag/AgCl参照電極に対して約-200mVから-約400mVの範囲である。
【0104】
要素11:前記ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルは、約1000g/molから約5000g/molの範囲の分子量を有する。
【0105】
限定されない例として、AおよびBに適用可能である典型的な組み合わせは、限定されないが、1および2;1から3;1、3および6;1および4;1および7;1および9;1および10または10A;2および3;2、3および6;2および7;2および9;2および10または10A;3および4;3および6;3、4および6;3、5および6;3および7;3および9;3および10または10A;4および7;5および7;4または5、および9;および4または5、および10または10Aを含む。さらに限定されない例として、CおよびDに適用可能である典型的な組み合わせは、限定されないが、6および11;4および6;5および6;6および7;6から8;4、6および11;5、6および11;6、7および11;および6から8および11を含む。
【0106】
本明細書に開示されたさらなる実施形態は、以下を含む。
【0107】
A’:ディップコーティングによって物質移動制限膜を形成するための方法。少なくともセンサ尾部の長さに沿って互いに離れて間隔を空けた第1作用電極および第2作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置された第1活性区域および前記第2作用電極の表面上に配置された第2活性区域であって、異なる被検物質に応答している前記第1活性区域および前記第2活性区域と、を含む被検物質センサを提供することと、一連のディップコーティング操作によって前記第1活性区域および前記第2活性区域上に物質移動制限膜を堆積することと、を含み、前記物質移動制限膜は、前記第1活性区域を覆う二層膜部分および前記第2活性区域を覆う均一な膜部分を含む、方法。
【0108】
B’:ディップコーティングされた物質移動制限膜を有する被検物質センサ。被検物質センサであって、少なくともセンサ尾部の長さに沿って互いに離れて間隔を空けた第1作用電極および第2作用電極を含むセンサ尾部と、前記第1作用電極の表面上に配置された第1活性区域および前記第2作用電極の表面上に配置された第2活性区域であって、異なる被検物質に応答している前記第1活性区域および前記第2活性区域と、前記第1活性区域および前記第2活性区域上にディップコーティングされた物質移動制限膜であって、前記第1活性区域を覆うディップコーティングされた二層膜部分および前記第2活性区域を覆うディップコーティングされた均一な膜部分を含む前記ディップコーティングされた物質移動制限膜と、を含む被検物質センサである。
【0109】
実施形態A’およびB’は、任意の組み合わせにおいて、以下の要素を一つ以上有し得る。
【0110】
要素1’:前記二層膜部分および前記均一な膜部分は、互いに隣接する。
【0111】
要素2’:前記第1作用電極および前記第1活性区域は、前記第2作用電極および前記第2活性区域より前記被検物質センサの先端の近くに位置する。
【0112】
要素3’:前記二層膜部分および前記均一な膜部分の上層は、同じ前記膜ポリマーを含む。
【0113】
要素4’:一回目のディップコーティング操作は、前記第1活性区域上に第1膜ポリマーを堆積し、二回目のディップコーティング操作は、前記第1活性区域および前記第2活性区域の両方の上に第2膜ポリマーを堆積し、前記第1活性区域上に前記二層膜部分および前記第2活性区域上に前記均一な膜部分を定義し、前記第1膜ポリマーおよび前記第2膜ポリマーは、互いに異なる。
【0114】
要素5’:前記二層膜部分および前記均一な膜部分の下層は、同じ前記膜ポリマーを含む。
【0115】
要素6’:一回目のディップコーティング操作は、前記第1活性区域および前記第2活性区域の両方の上に第1膜ポリマーを堆積し、二回目のディップコーティング操作は、前記第1活性区域上に第2膜ポリマーを堆積し、前記第1活性区域上に前記二層膜部分を定義し、前記第1膜ポリマーおよび前記第2膜ポリマーは、互いに異なる。
【0116】
要素7’:前記第1活性区域は、グルコース、乳酸、ケトン、またはクレアチニンに応答する。
【0117】
要素8’:前記第1活性区域は、ケトンに応答する。
【0118】
要素9’:前記第2活性区域は、グルコースに応答する。
【0119】
要素10’:前記物質移動制限膜の少なくとも一部分は、架橋されたポリビニルピリジンのホモポリマーまたはコポリマーを含む。
【0120】
要素11’:前記物質移動制限膜の少なくとも一部分は、三つ以上の架橋基を含む分岐架橋剤によって架橋された膜ポリマーを含む。
【0121】
要素12’:前記分岐架橋剤は、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルを含む。
【0122】
要素13’:前記ディップコーティングされた二層膜部分および前記ディップコーティングされた均一な膜部分は、互いに隣接する。
【0123】
要素14’:前記第1作用電極および前記第1活性区域は、前記第2作用電極および前記第2活性区域より前記被検物質センサの先端の近くに位置する。
【0124】
要素15’:前記ディップコーティングされた二層膜部分および前記ディップコーティングされた均一な膜部分の上層は、同じ前記膜ポリマーを含む。
【0125】
要素16’:前記ディップコーティングされた二層膜部分および前記ディップコーティングされた均一な膜部分の下層は、同じ前記膜ポリマーを含む。
【0126】
要素17’:前記第1活性区域は、ケトンに応答する。
【0127】
要素18’:前記第2活性区域は、グルコースに応答する。
【0128】
限定されない例として、A’に適応可能である典型的な組み合わせは、限定されないが、1’および2’;1’から3’;1’から4’;1’、2’および5’;1’、2’、5’および6’;1’および7’;1’および8’;1’、8’および9’;1’および10’;2’および3’;2’から4’;2’から5’;2’、5’および6’;2’および7’;2’および8’;2’、3’、4’および8’;2’、3’、4’、8’および9’;2’、5’、6’および8’;2’、5’、6’、8’および9’;3’および4’;3’、4’および7’;3’、4’および8’;3’、4’、8’および9’;3’および7’;3’および8’;3’、8’および9’;5’および6’;5’、6’および8’;5’、6’、8’および9’;および8’および9’を含む。B’に適用可能である典型的な組み合わせは、限定されないが、13’および14’;13’、14’および15’;13’14’および16’;13’、14’および17’;13’、14’、17’および18’;14’および15’;14’および16’;14’および17’;14’および18’;15’および17’;15’、17’および18’;16’および17’;16’、17’および18’;および17’および18’を含む。
【0129】
本明細書の開示の理解をより容易にするために、様々な代表的な実施形態の実施例が、以下に与えられる。以下の実施形態が読まれることで、発明の範囲が制限、規定されるべきではない。
【0130】
実施例
実施例1:ともに働くジアフォラーゼおよびβ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを有する被検物質センサを用いた低電位でのケトンの検出。この実施例に対して、
図6Aの酵素系は、以下の表1および表2に記述された活性区域の配合物を用い、未結合の式8遷移金属錯体(表1)またはポリビニルピリジン-コ-スチレンに結合した式8遷移金属錯体(表2)のいずれか一方をレドックスメディエータとして使用するケトンの検出を容易にするために用いられる(HBHD=β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ;HSA=ヒト血清アルブミン;PEGDGE400=ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)。表1および表2に示される検知活性区域の配合物は、およそ0.2mm
2の面積を有する一つのスポットを堆積することによって炭素被覆作用電極上にコーティングされた。活性区域は、25℃で24時間硬化された。硬化の後、表3に記述される配合物を有するポリビニルピリジン膜が、合計4回のディップコーティングによって活性区域上に適用された。膜の適用の後、センサは、25℃で24時間硬化され、次に56℃で48時間硬化された。
【表1】
【表2】
【表3】
【0131】
図7は、式8の遷移金属錯体またはポリマー結合型式8遷移金属錯体に対するサイクリックボルタモグラムを示す。サイクリックボルタモグラムは、窒素のバブリングによって脱酸素化され、33℃の温度を保持し、pH7.4で100mMのPBS溶液において取得された。調査は、炭素対電極およびAg/AgCl参照電極を用いて5mV/sの調査速度で-0.5Vから0.1Vで実行された。サイクリックボルタモグラムから、式8の遷移金属錯体のE
1/2は、Ag/AgClに対して-0.29Vと測定され、ポリマー結合型式8遷移金属錯体のE
1/2は、Ag/AgClに対して-0.24Vと測定された。N,N-ジメチルアミノ置換が不足している比較のレドックスメディエータは、Ag/AgClに対して-0.08Vとはるかに小さい負のE
1/2値を示した(データ無し)。
【0132】
図8は、様々な作用電極電位でポリマー結合型式8遷移金属錯体を含むケトンセンサの電流対時間のプロットを示す。センサは、pH7.4で100mMのPBSにおいて+40mVから-200mVの範囲にある四つの電位の一つを保持し、様々な量のβ-ヒドロキシ酪酸が、最終ケトン濃度8mMになるまで33℃で滴定された。図に示すように、センサの反応は、各電位でケトンを加えた後に急速に安定した。調査された四つの電位はいずれも、ケトン濃度に対して線形応答が見られた(
図9に示す)。
【0133】
実施例2:ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルによって架橋された膜からの抽出可能物。ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテル(分子量~2500)によって架橋されたポリマー膜サンプルが、調製された。ベース膜ポリマーは、ベース膜ポリマーにおけるピリジン部分の少なくとも一部分に結合するアミンフリーポリエーテルアームを含むビニルピリジンおよびスチレンのコポリマーであった。比較のポリマー膜サンプルは、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(分子量~1000)によって架橋された同じ膜ポリマーを用いて調製された。比較のポリマー膜サンプルは、他のサンプルにおいて用いられるポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルの架橋剤と類似の量でポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋され、それにより類似の架橋密度を提供した。
【0134】
膜ポリマーは、膜ポリマーを含む溶液0.5mLを用いたサンプルバイアルの底部上にフィルムとして役割を与えられた。溶媒は蒸発され、次に、膜の硬化が、25℃で48時間および56℃で56時間実行された。水または95%エタノール(3mL)が、キャストポリマーフィルムに加えられ、抽出が、室温で72時間(水)または144時間(エタノール)行われた。バイアルは、抽出期間中にロッカー上で攪拌された。水の抽出物は、希釈せず、UV-Vis分光測色法により分析され(
図10)、エタノールの抽出物は、UV-Vis分析前に1:9で希釈された(
図11)。両方の場合において、UV-Vis吸光度の強度によって示され、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルによって架橋されたサンプルは、より少ない量の抽出可能物を示した。
【0135】
実施例3:ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルによって架橋された膜を有するセンサに対する平衡時間。グルコース応答性被検物質センサは、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルによって架橋された膜ポリマーで覆われた(実施例2に示す)。比較のセンサは、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルによって架橋された比較の膜ポリマーを用いて調製された。膜によってコーティングされた各センサは、37℃で1000mMのPBS(pH=7.4)において、30mMのグルコース溶液内に置かれた。
図12は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルによって架橋された膜ポリマーに覆われた被検物質センサと比較した、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルによって架橋された膜ポリマーに覆われた被検物質センサの10時間にわたるセンサ出力対時間の比較プロットを示す。図に示すように、両方の膜は、約1時間の平衡の後、安定したセンサ出力を提供した。
図13は、センサ平衡の1時間の拡大プロットを示し、ポリエチレングリコールテトラグリシジルエーテルによって架橋された膜の方が、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルによって架橋された膜よりも、早く安定した応答を提供したことが見られた。
【0136】
指示がない限り、本明細書および関連した特許請求の範囲における量などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されることが理解される。したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明の実施形態によって得られることが求められる望ましい性質に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲の範囲に均等の原理を適用することを制限するための試みではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の数を考慮して通常の丸め技術を適用することにより解釈されるべきである。
【0137】
様々な特徴を組み込んだ一つ以上の例示的な実施形態が、本明細書に提示される。物理的実施の全ての特徴が、明確にするために、本願において説明されまたは示されるわけではない。本発明の実施形態を組み入れた物理的実施形態の開発において、例えば、システムに関する、ビジネスに関する、政府に関するおよび他の制約のコンプライアンスなどの開発者の目標を達成するために、多数の実施固有の決定を行わなければならないことは理解され、実施によっておよび場合によって変化する。開発者の努力は時間がかかるかもしれないが、そのような努力は、それでもなお、当業者において日常的な取り組みであり、本開示の利益を有するであろう。
【0138】
様々なシステム、ツールおよび方法が、様々な構成要素または工程について「備える」という観点で本明細書に説明される一方で、システム、ツールおよび方法はまた様々な構成要素または工程について「から本質的になる」または「からなる」とできる。
【0139】
ここで用いられるように、一連の項目より先にあり、項目のいくつかを隔てる「および」または「または」という用語とともに「の少なくとも一つ」という句は、リストの各メンバー(すなわち、各項目)よりむしろリスト全体を修飾する。「の少なくとも一つ」という句は、項目の任意の一つのうち少なくとも一つ、および/または項目の任意の組み合わせのうち少なくとも一つ、および/または項目のそれぞれの少なくとも一つを含む意味を許容する。例として、「A、BおよびCのうち少なくとも一つ」または「A、B、またはCのうち少なくとも一つ」という句はいずれも、Aのみ、Bのみ、またはCのみ;A、B、およびCの任意の組み合わせ;および/またはA、B、およびCのそれぞれの少なくとも一つを示す。
【0140】
したがって、開示されたシステム、ツールおよび方法は、内在されたものと同様に言及された目的および利点を達成するために十分に適用される。本開示の教示は、本明細書の教示の利益を有する当業者には明らかに、異なるが同等の態様で修正および実施されてもよく、上記で開示された特定の実施形態は、一例に過ぎない。さらに、以下の特許請求の範囲において説明される場合を除き、本明細書に示される構成または設計の詳細は、いかなる制限も意図されていない。したがって、上記で開示された特定の具体的な実施形態は、変更、組み合わせ、または修正されてもよく、そのような全ての変化は、本開示の範囲内であると考慮されることは明らかである。本明細書に例示的に開示されているシステム、ツールおよび方法は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素および/または本明細書に開示された任意の要素がない状態において、適切に実行され得る。システム、ツールおよび方法は、様々な構成要素または工程を「備える」、「含有する」、または「含む」という観点で説明されているが、システム、ツールおよび方法はまた、様々な構成要素または工程「から本質的になる」または「からなる」とできる。上記で開示された全ての数および範囲は、いくつか変化し得る。下限および上限を有する数値範囲が開示される時はいつでも、その範囲に収まる任意の数および任意の含まれる範囲が、具体的に開示される。特に、本明細書に開示される値の全ての範囲(「約aから約b」、または同等に「およそaからb」、または同等に「およそa~b」の形式)は、より広い値の範囲に含まれる全ての数および範囲を記載することが理解される。また、特許請求の範囲において、用語は、特許権者によって明示的にかつ明確に規定されなければ、平易で通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲において用いられる、不定冠詞「a」または「an」は、それが導入する要素の一つよりも一つ以上を意味することがここで規定される。本明細書および、参照によって本明細書に組み込まれる一つ以上の特許文献または他の文献において、単語または用語の使用方法にいくつかの矛盾が生じた場合、本明細書と一貫している定義が、採用されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書または図面に記載した発明。