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特開2024-147662基板ホルダーならびに基板を固定および接合する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147662
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】基板ホルダーならびに基板を固定および接合する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241008BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024112044
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2022572805の分割
【原出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス プラッハ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非対称に変形した基板の接合装置で、基板縁部での接合精度を向上させる、2枚の基板を接合する基板ホルダー並びに基板を固定及び接合する方法を提供する。
【解決手段】基板を収容するための基板ホルダー1であって、基板ホルダーは、基板を固定するための固定要素6、6’を備え、固定要素は、各ゾーン7、7’へのグループ分けが可能であり、前進する接合波を有利にも狙いどおりに変形させるために、異なる固定要素あるいはゾーンを、特に時間的にずらして切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(13)を収容するための基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)であって、前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)は、前記基板(13)を固定するための固定要素(6,6’,6’’)を備え、前記固定要素(6,6’,6’’)は、各ゾーン(7,7’)へのグループ分けが可能であり、前記ゾーン(7,7’)は、好ましくは環状に、さらに好ましくは円環状に配置されている、基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項2】
前記ゾーン(7,7’)が、前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)の中央に対して対称的に配置されている、請求項1記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項3】
前記ゾーン(7,7’)が、前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)の中央の周りに複数の環状、好ましくは円環状に配置されている、請求項1または2記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項4】
前記ゾーン(7,7’)同士が、半径方向および/または方位角方向に均一に間隔を置いて配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項5】
前記ゾーン(7,7’)が、前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)の中央から前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)の縁部に向かって幅が変化するように、特に幅が増加するように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項6】
前記ゾーン(7,7’)が、個別に切り替え可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項7】
複数のゾーン(7,7’)が、グループ分け可能でありかつ一緒に切り替え可能である、請求項1から6までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項8】
前記ゾーン(7,7’)における前記固定要素(6,6’,6’’)の数が、柔軟に変更可能である、請求項1から7までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項9】
前記固定要素(6,6’)を、異なるゾーン(7,7’)に柔軟に割り当てることができる、請求項1から8までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項10】
前記固定要素(6,6’)が、ゾーン横断的に制御可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項11】
1枚以上の基板(13)を、特に請求項1から10までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)を用いて固定および接合する方法であって、前記固定要素(6,6’,6’’)を、各ゾーン(7,7’)にグループ分けし、前記ゾーン(7,7’)を、好ましくは環状に、さらに好ましくは円環状に構成する、方法。
【請求項12】
前記ゾーン(7,7’)を個別に切り替える、請求項11記載の方法。
【請求項13】
複数のゾーン(7,7’)をグループ分けして一緒に切り替える、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
前記ゾーン(7,7’)における前記固定要素(6,6’,6’’)の数を柔軟に変更する、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記固定要素(6,6’)を異なるゾーン(7,7’)に柔軟に割り当てる、請求項11から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板ホルダーならびに基板を固定および接合する方法に関する。
【0002】
先行技術には、基板同士を最適に接合する方法を開示した刊行物がある。特に国際公開第2017162272号には、個々のゾーンを有する基板ホルダーが示されている。さらに、国際公開第2013023708号、国際公開第2012083978号、国際公開第2018028801号が挙げられる。
【0003】
非対称に変形した基板は、先行技術において非常に大きな問題であった。多くの基板は、機械的異方性を示し、すなわち、その弾性率が著しく方向依存的である。弾性率が方向に依存することから、他の機械的特性、特に延性も方向依存性を有する。このような基板に力、特に重力が作用すると、非対称な変形が生じる。この非対称な変形は、2枚の基板の接触時および/または接合工程時にも存在し、必然的に接合波面の非対称な伝播、ひいては望ましくないランアウト効果を招く。
【0004】
半導体産業では、長年にわたり、いわゆる接合プロセスによって基板同士が接合されている。接合前には、これらの基板同士を可能な限り正確にアライメントする必要があり、その際にナノメートル範囲のずれが問題となる。ここで、基板のアライメントは、通常、アライメントマークによって行われる。アライメントマークとは別に、基板上にはさらに別の要素、特に機能要素も存在し、これらも接合プロセスで互いにアライメントする必要がある。このような個々の機能要素間のアライメント精度が、基板面全体に対して要求される。したがって、例えば、基板の中央部ではアライメント精度が非常に良好であっても、縁部に向かって低下するようでは不十分である。
【0005】
先行技術においては、既に前述したように、例えば国際公開第2017162272号、欧州特許第2656378号明細書、または国際公開第2014191033号のような、接合工程に影響を及ぼす試みを行うことのできる多数の方法およびシステムが存在する。
【0006】
接合における最大の課題の1つは、2枚の基板同士が独立して接合される期間である。これは、接合開始から基板の接触面が完全に接触するまでの期間である。ここではまだ、2枚の基板同士のアライメントが、以前のアライメントと比較して決定的に変化する可能性がある。2つの基板面同士がひとたび接合されてしまうと、分離は理論的には可能であるが、高コストで、低スループットでかつ欠陥が生じ易くなる。
【0007】
本発明の課題は、先行技術の問題を解消し、特に基板縁部での接合精度を向上させる、2枚の基板を接合するための装置および方法を提供することである。
【0008】
本発明の課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に提示されている。本明細書、特許請求の範囲および/または図面に示された少なくとも2つの特徴のすべての組み合わせも、本発明の範囲に包含される。記載された値範囲において、言及された限界の内側にある値も限界値として開示されているものとみなされ、任意の組み合わせで特許請求することができる。
【0009】
本発明は、基板を収容するための基板ホルダーであって、該基板ホルダーは、基板を固定するための固定要素を備え、固定要素は、各ゾーンへのグループ分けが可能であり、ゾーンは、好ましくは環状に、さらに好ましくは円環状に配置されている、基板ホルダーに関する。
【0010】
ここで、1つのゾーンは、固定要素が空間的に隣接しているかまたは反対側の縁部領域に存在しているかとは無関係に、任意の量の固定要素である。1つのゾーンは、ある数の固定要素であるため、ゾーンの定義または設定は、時間と共に変化し得る。
【0011】
本明細書の以下の文章では、ゾーンの形状または位置について言及する。これは、そのような1つのゾーンの内部のすべての固定要素を囲む包絡線の形状および位置を意味する。あるゾーンの切り替え能力について言及する場合、これは、そのゾーンの内部のすべての固定要素の切り替え能力を意味する。特に、ゾーンのオフとは、ゾーンの内部のすべての固定要素のオフを意味する。この影響を受けず、好ましくは、ゾーンの内部のすべての固定要素を個別に切り替えることもできる。極端な例では、1つのゾーンには1つの固定要素しかない。
【0012】
好ましくは、同じゾーンのすべての固定要素を、単一の制御要素により制御することができ、特に真空固定要素を使用した場合には制御弁により制御することができる。したがって、有利には、1つのゾーンのすべての固定要素を同時に切り替えることが可能である。
【0013】
前進する接合波を有利にも狙いどおりに変形させるために、異なる固定要素あるいはゾーンを、特に時間的にずらして切り替えることができる。
【0014】
本発明はさらに、1枚以上の基板を、特に本発明による基板ホルダーを用いて固定および接合する方法であって、固定要素を、各ゾーンにグループ分けし、ゾーンを、好ましくは環状に、さらに好ましくは円環状に構成する、方法に関する。
【0015】
環状の配置によって、有利には、基板を接合工程時に最適に固定および解放することができるため、特に「ランアウト」誤差を最小限に抑えることができ、したがって接合精度を著しく高めることができる。好ましい円環状の配置では、通常は接合波も同様に円環状に伝播するため、固定および解放がさらに好ましい態様で可能である。
【0016】
好ましくは、各ゾーンが基板ホルダーの中央に対して対称的に配置されている基板ホルダーが提供される。接合波は、通常は基板ホルダーの中央に対して対称的に伝播するため、これにより接合精度のさらなる向上が有利に達成される。
【0017】
好ましくはさらに、各ゾーンが基板ホルダーの中央の周りに複数の環状、好ましくは円環状に配置されている基板ホルダーが提供される。これにより、有利には基板ホルダーの半径方向にも最適な解放を行うことができる。
【0018】
好ましくはさらに、各ゾーン同士が半径方向および/または方位角方向に均一に間隔を置いて配置されている基板ホルダーが提供される。これにより、有利に特に厳密な解放制御を行うことができる。
【0019】
好ましくはさらに、各ゾーンが、基板ホルダーの中央から基板ホルダーの縁部に向かって幅が変化するように、特に幅が増加するように構成されている基板ホルダーが提供される。接合波が伝播する速度も中央からの距離の関数として変化し得るため、より良好な接合結果を得るためには、このように幅を変化させることが必要となり得る。
【0020】
好ましくはさらに、各ゾーンが個別に切り替え可能である基板ホルダーが提供される。これにより、所望の解放に応じたこれらのゾーンの柔軟な制御が有利に可能となる。
【0021】
好ましくはさらに、複数のゾーンが、グループ分け可能でありかつ一緒に切り替え可能である基板ホルダーが提供される。これにより、有利には、より広い領域を必要に応じて切り替えることができ、より柔軟に、より正確に解放を行うことが可能となる。
【0022】
好ましくはさらに、各ゾーンにおける固定要素の数が柔軟に変更可能である基板ホルダーが提供される。これにより、例えば個々のゾーンにおける引力を増加または減少させることができるため、有利に解放の正確な制御が可能となる。
【0023】
好ましくはさらに、固定要素を異なるゾーンに柔軟に割り当てることができる基板ホルダーが提供される。さらに、代替的または追加的に、固定要素が、ゾーン横断的に制御可能である。したがって、有利には各ゾーンにおける保持力を必要に応じて柔軟に調整することができる。
【0024】
本発明は特に、2枚の基板を最小限のランアウトで接合するための装置および方法について説明するものである。ここで、本発明は特に、非対称に変形した基板を固定するために、複数の固定要素からなる特別に形成されたゾーンを有する少なくとも1つの基板ホルダーを使用するという思想に基づく。特別に形成されたゾーンおよびその固定要素によって、また特にこれらのゾーンあるいはその固定要素の本発明による切り替えによって、特にまだ接合工程が行われている間であっても基板の非対称変形が補償されて、最適な接合波面、ひいては最適な接合が得られる。
【0025】
次にどの基板を基板ホルダーに固定するか、基板がどのような機械的異方性を有するか、または基板が固定時にどの程度歪むかは、一般に知られていない。また、一般に厚みの異なる基板は、上部基板ホルダーに固定された場合、重力による変形量も異なる。そのため、発生する非対称性のあらゆる様態に応じて新たな基板ホルダーを作製することは不可能である。
【0026】
本発明による基板ホルダーによって、有利に、特に非対称に変形した基板をゾーンの狙いどおりの切り替え技術により補償することで、特にまだ接合工程が行われている間に非対称性を補償することができる。したがって、有利なことに、1種類の基板ホルダーしか設計する必要がなく、これを異なる程度の非対称の変形を有する異なる基板に使用することができる。
【0027】
本発明は、特別に形成されたゾーンを有する基板ホルダーを提供し、その形状、配置および制御により接合結果を向上させるという思想に基づく。国際公開第2017162272号に既に詳細に記載されているように、基板の曲率の調整は、欠陥のない接合工程の成功にとって決定的に重要である。したがって、本発明は特に、過去数ヶ月から数年の間に開発が完了した非常に特殊な基板ホルダーを説明するものである。特に、国際公開第2017162272号の既に公開されたプロセスステップも参照される。
【0028】
本発明による基板ホルダーは、主に上部基板ホルダーとして使用されるが、下部基板の固定のために接合システムの下側でも十分に使用することができる。特にそれぞれ、本発明による1つの基板ホルダーを上部基板ホルダーとして使用し、本発明による1つの基板ホルダーを下部基板ホルダーとして使用することができる。国際公開第2017162272号において詳細に扱われ開示されている、曲率の狙いどおりの調整は、本発明による新規の基板ホルダーの設計によってさらに改善される。
【0029】
曲率の変化とは特に、基板の初期状態(特に、接触前に調整された曲率)から乖離した状態を意味すると理解される。本発明によれば、接合は、接触面の接触後に、特に基板の固定の制御を管理することによって制御される。対応する固定手段は、特に本装置により提供されている。
【0030】
本発明のさらなる、特に独自の態様は、特に個別に切り替え可能であって、特別に形成された各ゾーンにグループ分けされる固定要素の使用にあり、これを用いることにより、接触面間の接合波の前進を管理下に制御または調整することができる。開示されたゾーンの形状は非常に特殊であり、国際公開第2017162272号とは異なる重要な特徴が生じている。
【0031】
1つのゾーンは、総じて少なくとも1つの固定要素、しかし特に複数の固定要素を有し、これらは個別に制御可能である。
【0032】
ここで、特にこの思想の基礎となる着想は、2枚の基板のうち少なくとも一方の曲率および/または固定および/または解放を狙いどおりに管理、制御または調整することによって、前進する接合波を管理、制御または調整することで、接触面に沿って2枚の基板を最適かつ連続的に、特に内側から外側に向かって前進するように接触させることである。本発明によるこの方法によって、接合前および/または接合中に存在する基板の非対称性、特に機械的な非対称性が補償されて、接合波が所望の、特に半径方向に対称な形状を有するようにすることが望ましい。本発明によれば、この効果は、特別に形成されたゾーンと、該ゾーンの固定要素の本発明による制御とによって達成される。最適な接触とは特に、2枚の基板間の接触界面のすべての点で「ランアウト」誤差が最小限であるか、または最適な場合には消滅さえすることを意味するものと理解される。
【0033】
総じて、本発明による基板ホルダーにより、接合波の前進に対して方向依存的に影響を及ぼすことができる。特に、本発明による基板ホルダーを用いると、半径方向に対称に、すなわち円形に伝播する接合波面を生成することができる。したがって、本発明による基板ホルダーによって保持された基板を、個々の特別に形成されたゾーンの制御によって狙いどおりに異方的に変形させることができる。
【0034】
本発明による基板ホルダーが上側で使用されるか下側で使用されるかに応じて、それによって固定される基板に異なる影響が生じる。両基板の最大の相違点は、接合プロセス時の重力の作用の方向である。上側に固定された基板の場合、少なくともいくつかのゾーンの活性化および/または不活性化後に、重力により、概して異方的なサギングが生じる。下側の基板では、このようなことはない。
【0035】
センサ
基板と基板ホルダーとの間の距離を監視するためのセンサを、本発明による基板ホルダーに組み込むことが好ましい。このセンサにより、接合波の伝播速度および特に対称的な形状を接合プロセス時に監視し、必要であれば適応的に調節することも可能である。本発明によるこの拡張機能を双方の基板ホルダーに組み込むと、両基板を同時に測定することができ、特にまだ接合工程が行われている間に、そのランアウト誤差が最小限となるように適合させることができる。ここで、この適合は特に、特別に形成された異なるゾーンを狙いどおりに切り替えることによって行われる。
【0036】
固定要素
本発明により言及される固定要素はいずれも、個別に、すなわち固定状態または非固定状態に切り替えることができる。特に、固定要素に対する基板の押圧力を狙いどおりに調整することも可能であり、これにより、法線力または法線応力を決定することができる。
【0037】
各固定要素は、封止要素によって互いに分離されていてよい。しかし、本発明による特に好ましい一実施形態では、固定要素は、基板ホルダー表面に対してへこんでおり、特にフライス加工されている。本実施形態は、特に真空固定要素が使用される場合に適している。本発明による一拡張形態では、小突起、鋲、ピンまたはウェブが凹部に存在しており、その表面は基板ホルダー表面と一致する。
【0038】
1つのゾーンの内部の個々の固定要素(例えば、同じ半径の円セグメント)は柔軟に制御可能であるため、例えば、ローディング工程時に基板をほぼ全周に沿って固定することが可能である。これにより、この時点で基板は可能な限り平坦である。その後、接合プロセス自体では、同じ半径に沿って複数の固定要素を不活性化させることが可能である。
【0039】
また、1つのゾーンの固定要素の固定特性を、同時に、または所定の遅延を伴ってオフにすることも可能であり、これにより、接合速度をより細かく管理することができる。特に、接合波面の半径方向に非対称な前進を測定している場合、接合波面が再び半径方向に対称となるように個々の固定要素を切り替えることができる。
【0040】
固定要素が真空固定要素として設計されている場合、真空固定部に存在する圧力は、0.01mbar~1000mbar、好ましくは0.01mbar~800mbar、さらにより好ましくは0.01mbar~500mbar、非常に好ましくは0.01mbar~100mbar、最も好ましくは0.01mbar~10mbarである。そして、真空固定要素における外側の比較的高い圧力と内側の比較的低い圧力との差圧が、基板への押圧力となり、基板の固定につながる。
【0041】
ゾーン
個々の固定要素は、各ゾーンへのグループ分けが可能である。
【0042】
本発明による第1の実施形態では、複数のゾーンは、基板ホルダーの周縁部にのみ存在している。ここで、各ゾーン同士は、半径方向および/または方位角方向で分離されている。特に、半径方向および方位角方向の分割が存在する。
【0043】
各ゾーンは、好ましくは、n回対称で回転軸を中心に対称に配置される。ここで、nの値は、1より大きく、好ましくは4より大きく、さらにより好ましくは6より大きく、非常に好ましくは12より大きく、最も好ましくは24より大きい。回転軸のステップサイズが大きいほど、円周に沿ってより多くのゾーンが存在するが、その方位角に沿ったゾーンは小さくなる。円周1つあたりの最適なゾーン数、および半径方向に沿った最適なゾーン数は、特に経験的な測定および/またはシミュレーションによって決定される。
【0044】
本発明による第1の実施形態では、特に複数の固定要素からなる複数のゾーンが基板ホルダーの周縁部に存在し、特に単一の固定要素のみからなる大きな1つのゾーンが中央に存在する。この中央のゾーンは、基板面の大部分を占め、基板を強力に固定する役割を果たす。基板ホルダーの周縁部のゾーンは、細かい制御、特に接合波の形状に狙いどおりに影響を与える役割を果たす。
【0045】
本発明による第2の実施形態では、基板ホルダーは専ら、複数の固定要素からなる、特に周縁部に設けられたゾーンで構成される。基板ホルダーのうち面積的に最も大きい部分には、ゾーンがない。
【0046】
本発明による第3の実施形態では、基板ホルダーは専ら、複数の固定要素からなる、特に周縁部に設けられたゾーンと、少なくとも1つの、好ましくは正確に1つの固定要素からなる、特に全周にわたって閉じた単一のゾーンとで構成されている。
【0047】
本発明による第4の実施形態では、基板は、少なくとも1つの固定要素からなる、完全に周方向の、特に閉じた、最も好ましくは環状のゾーンによって外縁部で固定される。外側のゾーンの内側に存在するゾーンは切り替え可能であり、それにより基板を変形させる。これは特に、個々の固定要素の固定機能が、真空吸引あるいは流体フラッシング手段に基づいている場合に可能である。
【0048】
本発明による第5の実施形態では、ゾーンの少なくともいくつかは、他のゾーンを取り囲むかまたは少なくとも他のゾーンに沿うように形成されている。
【0049】
ゾーンおよび/または固定要素を、特に以下の構成で配置することができる:
1. 環状
2. 螺旋状
3. 格子状
4. 放射状
5. 前述のものの組み合わせ(特に、放射状に接続されたリング)。
【0050】
ローディングピン
基板ホルダーがローディングピンを有する場合、基板ホルダー表面には必ず穴が存在する。真空固定部によりゾーンを切り替える場合、封止を目的とした対策を講じることが必要な場合がある。このローディングピンが動く穴のために、ゾーンでの過圧の印加には複数のバリエーションがある。
【0051】
第1のバリエーションでは、穴は単にあいたままであり(実施形態を少量の漏れに対して最適化)、過圧を、基板と基板ホルダーとの間の領域における流体の対応する連続的な流れによって維持する必要がある(流入と流出との平衡)。
【0052】
第2のバリエーションでは、ローディングピンは封止部を備えており、これにより、ウェハと保持装置との間の閉塞領域で静的な過圧を構築することが可能である。
【0053】
本発明による基板ホルダーが上部基板ホルダーとして構成される場合、ローディングピンは、その内部に穴、チューブまたは他の流体システムを備えたピンであり得るが、これによりローディングピン表面に真空が発生し、重力方向に対してロードされる基板を固定し上昇させることが可能となる。よって、このローディングピンは、固定された基板をローディング時に上方に引っ張り、最終的に基板ホルダー表面に接触させてこれに固定することができる。
【0054】
中抜き部
本発明による基板ホルダーは、固定された基板の裏側を見ることができるように通路または中抜き部を有しており、これらは特にガラス張りであってよい。通路は、好ましくは蓋で、特に自動的に閉じることができる。
【0055】
変形要素
さらなる、特に独自の、または前述の本発明と組み合わせることができる着想は、湾曲手段および/または曲率変更手段としての変形要素の使用にあり、これは特にガス解放口によって構成されている。これにより、基板との機械的な接触が防止される。曲率の制御は、前述の特徴の組み合わせによってさらにより正確に行われる。
【0056】
説明された本発明による実施形態はいずれも、固定された基板を変形させる変形要素を有することができる。特に、個々のゾーンが真空固定要素を有する場合、個々のゾーンでは基板の変形のために流体を使用することができる。
【0057】
変形要素が流体を用いて動作する場合、流体の圧力は、0.1bar~10bar、好ましくは0.2bar~8bar、さらにより好ましくは0.3bar~7bar、非常に好ましくは0.4bar~6bar、最も好ましくは0.5bar~5barである。
【0058】
変形要素が基板に加える力は、0.1N~1000N、好ましくは0.2N~500N、さらにより好ましくは0.3N~250N、非常に好ましくは0.4N~200N、最も好ましくは0.5N~100Nである。
【0059】
接合波の監視
接合波面の伝播速度を方向依存的に決定するために、基板ホルダーにセンサを組み込むことができ、これにより、基板ホルダー表面とロードされた基板との距離を任意の時点で測定することが可能となる:
1. 速度を中央までの距離の関数として決定するための、半径に沿った複数のセンサ、特に、個々のゾーンの中央を通る半径に沿ったセンサ、
2. 半径に沿って設置された複数のセンサで、項目1で挙げた半径の間に位置するもの。これにより、異なる方向への速度を求めることが可能となる。
【0060】
基板と基板ホルダー表面との距離を測定できる既存のセンサにより、接合波の伝播を監視することができる。各センサは、接合プロセスの開始前にある開始値を有する。この開始値は、例えば、センサの領域内の基板が基板ホルダー表面に接触している場合にはゼロである。基板が全面的に固定されておらず、例えば局所的にサギングを生じている場合や局所的に湾曲している場合には、開始値は、ゼロより大きな値を有する。各センサは、特に接合プロセスの完了後に終了値を得る。センサの値が相応して変化すると、そこから、それぞれのセンサの領域で基板が接合されたか否かを推定することができる。このようにして、接合波の位置の推移が時間の関数として得られる。センサの正確な配置によっては、異なる方向の接合波の位置のデータを時間の関数として取得することも可能である。
【0061】
方法
接合測定方法
本発明による好ましい第1の方法は、接合すべき2枚の基板の接合波面を測定して適合させることができるものであり、以下のとおりである。
【0062】
第1のプロセスステップでは、第1の基板を、第1の、特に本発明による基板ホルダーに固定する。
【0063】
第2のプロセスステップでは、第2の基板を、第2の、特に本発明による基板ホルダーに固定する。
【0064】
第3のプロセスステップでは、第1および/または第2の基板の基板の裏側を測定するセンサの値を調べ、かつ/またはゼロに設定する。特に、センサは、距離センサである。
【0065】
本発明による第4のプロセスステップでは、2枚の基板を、互いに接合すべき基板面の間に所望の距離が存在するようになるまで、互いに接近させる。
【0066】
本発明による第5のプロセスステップでは、既に述べた変形要素を用いて上部および/または下部基板を変形させて、2枚の基板を少なくとも1点、特に正確に1点で接触させる。特に、センサを用いた基板面裏側の測定は、既に上部および/または下部基板の変形時に行われるため、上部および/または下部基板の曲率は、既に接触前および/または接触中には極めて正確にわかっている。それにより、たわみにおいて生じ得る非対称性を既に検出することができる。
【0067】
本発明による第6のプロセスステップでは、特に狙いどおりに制御された、個々のゾーンの固定要素の個々の切り替えによってもたらされる第1および/または第2の基板の解放が正確に行われることで、接合波面が時間的に所望のとおりに進む。特に、2枚の基板の間の接合波面は、すべての時点で半径方向に対称な形状であることが望ましい。接合波面の伝播の間、センサにより第1および/または第2の基板の基板面裏側を連続的に測定することで、接合波面の望ましくない逸脱が生じた際に、ゾーンの個々の固定要素を狙いどおりに制御して接合波面をその所望の形状に戻すことができる。
【0068】
本発明による代替的な第2の好ましい方法は、本発明による第1の方法の第4および第5のプロセスステップを逆順に行う。まず、第1および/または第2の基板を、互いに接触させずに変形させる。その後、接触するまで、2枚の基板同士を相対的に接近させる。特に、2枚の基板の相対的な並進運動による2枚の基板の相対的な接近を、接触後すぐに終了する。
【0069】
本発明による方法の特別な一実施形態では、下部基板を常に全面にわたって固定するため、湾曲させない。
【0070】
本発明による接合波測定方法とは別に、本発明による接合波操作方法も存在する。これを、特にプロセスステップ6において、前述の接合波測定方法と組み合わせることができる。本発明によるこれらの方法は、非常に特殊であり、特に本発明による特別なゾーンを有する基板ホルダーに依存する。ここでは、その詳細について説明する。
【0071】
また、本発明による第1の接合波操作方法は、特にさらに以下のプロセスステップを含む:
第1の接合方法
本発明による第1のプロセスステップでは、下部基板を全面にわたって固定し、すなわち湾曲させない。
【0072】
本発明による第2のプロセスステップでは、上部基板を、複数の、特に基板ホルダーの周縁部にのみ存在するゾーンを有する基板ホルダーに固定する。好ましくは、2n回の対称性が生じ得るほど多くのゾーンが存在する。特に好ましくは、基板ホルダーは、それぞれ8つの周縁ゾーンを有する。その場合、例えば0°、90°、180°、および270°に4つのゾーンが存在し、以下、これらを通常位置と称する。それらの間、すなわち45°、135°、225°および315°に残りの4つの特に長いゾーンが存在し、以下、これらを対角位置と称する。最初は、2n個のゾーンすべてが切り替え状態にあり、上部基板を固定することにより上部基板をしっかりと固定して、重力によるたわみの影響を少なくとも最小限に抑える。
【0073】
本発明による第3のプロセスステップでは、2n個のゾーンのうちn個を不活性化させる。特に、対角位置の長いゾーンを不活性化させる。n個のゾーンの不活性化により、基板を好ましくは変形させて、機械的異方性および重力による非対称性を補償し、接合工程時に接合波面が所望の形状、特に半径方向に対称な形状を得る。
【0074】
本発明による第4のプロセスステップでは、基板の接触を、特に変形手段を用いておよび/または基板ホルダー同士の相対的な接近によって行う。
【0075】
本発明による第5のプロセスステップでは、第1および/または第2の基板の基板ホルダー裏側の測定を行い、必要に応じて個々のゾーンの固定要素を適切に切り替えることによって、伝播する接合波面を適切に適合させる。
【0076】
第2の接合方法
本発明による第2の接合波操作方法は、特にさらに以下のプロセスステップを含む:
本発明による第1のプロセスステップでは、下部基板を、複数の、特に基板ホルダーの周縁部にのみ存在するゾーンを有する基板ホルダーに固定する。好ましくは、2n回の対称性が生じ得るほど多くのゾーンが存在する。特に好ましくは、基板ホルダーは、それぞれ8つの周縁ゾーンを有する。その場合、例えば0°、90°、180°、および270°に4つのゾーンが存在し、以下、これらを通常位置と称する。それらの間、すなわち45°、135°、225°および315°に残りの4つの特に長いゾーンが存在し、以下、これらを対角位置と称する。最初は、2n個のゾーンすべてが切り替え状態にあり、下部基板を固定する。
【0077】
本発明による第2のプロセスステップでは、上部基板を、複数の、特に基板ホルダーの周縁部にのみ存在するゾーンを有する基板ホルダーに固定する。好ましくは、2n回の対称性が生じ得るほど多くのゾーンが存在する。特に好ましくは、基板ホルダーは、それぞれ8つの周縁ゾーンを有する。その場合、例えば0°、90°、180°、および270°に4つのゾーンが存在し、以下、これらを通常位置と称する。それらの間、すなわち45°、135°、225°および315°に残りの4つの特に長いゾーンが存在し、以下、これらを対角位置と称する。最初は、2n個のゾーンすべてが切り替え状態にあり、上部基板を固定することにより上部基板をしっかりと固定して、重力によるたわみの影響を少なくとも最小限に抑える。
【0078】
本発明による第3のプロセスステップでは、対角位置のゾーンを不活性化させる。
【0079】
本発明による第4のプロセスステップでは、基板の接触を、特に変形手段を用いておよび/または基板ホルダー同士の相対的な接近によって行う。
【0080】
本発明による第5のプロセスステップでは、第1および/または第2の基板の基板ホルダー裏側の測定を行い、必要に応じて個々のゾーンの固定要素を適切に切り替えることによって、伝播する接合波面を適切に適合させる。
【0081】
接近する基板間の距離は、0μm~2000μm、好ましくは0μm~1500μm、さらに好ましくは0μm~1000μ、最も好ましくは0μm~500μmである。
【0082】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施例の以下の説明から、および図面により明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】本発明による第1の実施形態における本発明による基板ホルダーを示す図である。
図2】本発明による第2の実施形態における本発明による基板ホルダーを示す図である。
図3】本発明による第3の実施形態における本発明による基板ホルダーを示す図である。
図4】本発明による第4の実施形態における簡略化して示された本発明による基板ホルダーを示す図である。
図5】本発明による第5の実施形態における簡略化して示された本発明による基板ホルダーを示す図である。
図6】本発明による第6の実施形態における簡略化して示された本発明による基板ホルダーを示す図である。
図7図4による簡略化して示された本発明による基板ホルダーを、固定された基板とともに示す図である。
【0084】
図中、同一の構成要素または同一の機能を有する構成要素は、同一の参照番号で示されている。
【0085】
示された図はいずれも、そのゾーンおよび固定要素を有する基板面の概略図であり、これらは必ずしも縮尺どおりではない。すべての構成要素を有する基板ホルダーの完全な図示は、本発明による着想に対して付加的な価値を持たないため、意図的に割愛されている。特に、本発明による最初の3つの基板ホルダーは、最後の3つの基板ホルダーよりも正確に図示されている。
【0086】
図1は、本発明による第1の例示的な実施形態における本発明による基板ホルダー1の固定面を示す。基板ホルダー1は、ベース本体2、特にプレートを有する。ベース本体2は、留め具3を用いて装置に取り付けることができる。ベース本体2において、固定領域には2つの中抜き部4、特に細長い穴があり、この穴を通して基板(図示せず)の裏側を観察することができる。
【0087】
基板ホルダー1の中央には、変形要素5、特にピンまたはノズルが存在する。基板ホルダーは、本発明による2つの、特に異なる構成の固定要素6,6’を有する。外側の固定要素6は、特に全周にわたって円形に構成されている。固定要素6,6’’は特に、非常に細く構成された凹部11であり、これらは、好ましくは流体開口部12を通じて排気することができ、したがって真空固定要素として機能する。
【0088】
内側の固定要素6’は、ベース本体2の残りの面にわたって凹部11のネットワークとして構成されている。固定要素6’は、特に真空固定要素としても構成されている。したがって、外側の固定要素6は、ゾーン7に属する唯一の固定要素である。内側の固定要素6’は、ゾーン7’に属する唯一の固定要素である。基板ホルダー1はさらに、様々なセンサ8、特に圧力測定センサを有することができる。
【0089】
ゾーン7,7’は、図示されたいずれの実施形態においても環状、特に円環状に配置されている。
【0090】
以下の図に示されているピン9の数は、実際の基板ホルダーに比べ、図ではかなり少なくなっている。本発明による基板ホルダーは、このようなピン9を固定要素6’’1つにつき数百ないし数千有することができる。
【0091】
図2は、本発明による第2の実施形態における本発明による基板ホルダー1’の固定面を示す。ベース本体2は、留め具3を用いて装置に取り付けることができる。基板ホルダー1’は、複数の、特に半径方向および方位角方向に区切られた固定要素6’’を有する。
【0092】
固定要素6’’は、特にへこんだ、好ましくはフライス加工された凹部11であり、その中にピン9が複数個所に存在する。ピン9のピン表面は、特にウェブ10のウェブ表面と一致している。固定要素6’’は、特に真空固定要素として構成されている。凹部11は、流体排出部12を通じて、特に個別に、ウェブ10による分離によって互いに独立して排気することができる。固定要素6’’が変形要素としても機能する場合、流体が流体開口部12を通じて流入することもでき、これにより、固定された基板が特に局所的に変形される。
【0093】
複数の固定要素6’’がまとまって1つのゾーン7を形成しており、一方で、異なった状態で形成されたさらなる中央の1つの固定要素6’’が、第2の中央のゾーン7’を形成している。好ましくは、基板ホルダー1’の中央に存在する変形要素5は、固定された基板を、特に中央で変形させることができる。ピン9は特に、固定された基板の接触面積を低減して、好ましくは汚染を防止する役割を果たす。複数のセンサ8、特に圧力センサが、基板ホルダー1’の固定面上に分配されていてよい。
【0094】
図3は、本発明による基板ホルダー1’’の本発明によるさらなる、より有利な実施形態を示す。固定要素6,6’’は、基板ホルダー1’’の周縁部に存在し、互いに方位角方向に分離されている。固定要素6は特に、単純な凹部11、すなわち溝であり、これも非常に細く構成されており、一方で、固定要素6’’は、この場合にもピン9と流体排出部12とを有する凹部11として構成されている。ピン9を有する凹部11を備えた領域は、固定要素6,6’’の間に存在することができる。これらの領域は、固定要素として構成されていてもよいが、そうである必要はない。同様に、中央領域は、専らピン9を有する凹部11として構成されていてもよいし、かつ/またはこの場合にも固定要素として機能してもよい。また、図に示すように、中央領域が平坦面を有することも考えられる。この場合、この図示は、周縁部の固定要素6,6’’に焦点を当ててそれらをより強調するために選択されている。基板ホルダー1’’は、この場合にもセンサ8および/または変形要素5を有することができる。特に、個々の固定要素6,6’’は、この場合にも固定要素および/または変形要素として機能することもできる。
【0095】
示された本発明による実施形態はいずれも、各ゾーン7,7’へのグループ分けが可能である複数の固定要素6,6’,6’’の概念を開示することを目的としている。しかし、ゾーン形成の概念は、互いに隣接する個々の固定要素のグループ分けを遥かに超えるものである。つまり、本発明によれば、互いに隣接していない固定要素を各ゾーンにグループ分けすることが可能である。本発明によるこの態様を説明するために、以下の図では、基板ホルダーをすべて詳細には図示しない。参照符号6,6’,6’’を付した固定要素および参照符号7,7’,7’’,7’’’を付したゾーンのみを示す。
【0096】
図示されている互いに方位角方向に分離されているゾーンは、5°~90°、好ましくは10°~70°、さらにより好ましくは20°~50°、非常に好ましくは22°~30°、最も好ましくは約22.5°の円セグメント角を有する。
【0097】
ゾーンは、50mm~1mm、好ましくは50mm~10mm、さらにより好ましくは50mm~20mm、非常に好ましくは50mm~30mm、最も好ましくは50mm~40mmの径方向の長さを有する。
【0098】
図4は、本発明による基板ホルダーのさらなる特定の実施形態を示し、ここでは、3つの異なるゾーンが存在する。第1のゾーン7は、合計で12個の固定要素6からなり、これらの固定要素は、対角線上にそれぞれ3個の固定要素6で各グループに分かれて存在している。第2のゾーン7’は、合計で12個の固定要素6からなり、これらの固定要素は、本発明による基板ホルダーの左側、右側、上側および下側にそれぞれ3個の固定要素6で各グループに分かれて存在している。また、中央には、特に単一の固定要素6のみからなる大きなゾーン7’’が存在する。
【0099】
図5は、本発明による基板ホルダーのさらなる特定の実施形態を示し、ここでは、4つの異なるゾーン7,7’,7’’,7’’’が存在する。第1の最も外側のゾーンは、円に沿って配置された4つの固定要素6からなる。同じことがゾーン7’および7’’にも同様に該当し、これらは、それぞれより小さな半径で存在する。第4のゾーン7’’’は、より大きな、特に全周にわたって閉じたゾーンであり、このゾーンは、さらにより小さな半径で特に1つの固定要素6のみからなる。
【0100】
図6は、本発明による基板ホルダーのさらなる特定の実施形態を示し、ここでは、3つの異なるゾーン7,7’,7’’が存在する。第1のゾーン7は、6つの固定要素6からなる。固定要素6は、上下の位置にそれぞれ3つの固定要素で2つのグループに分かれて存在している。第2のゾーン7’は、6つの固定要素6からなる。固定要素6は、左右の位置にそれぞれ3つの固定要素で2つのグループに分かれて存在している。特に1つの固定要素6のみからなるさらなる大面積のゾーン7’’が、残りの面の大部分を埋め、さらには部分的に2つのゾーン7,7’を取り囲んでいる。
【0101】
任意の数の固定要素6をまとめて任意のゾーンを形成することができるという概念が、示されたこれらの図から明らかとなる。このゾーン形成がなぜ必要なのかについて、さらなる図で説明する。
【0102】
図7は、図4の本発明による基板ホルダー1’’’を例示的に示す。ただしここでは、基板ホルダー1’’’は、基板13を固定しており、基板13が固定要素6を覆っている。しかし、ゾーン7,7’の位置が示されている。矢印14は、本発明によるゾーン7,7’,7’’により接合工程の前および/または間に補償すべき機械的異方性を示している。図示されている基板13は、例えば、結晶学的(100)面内の立方体材料の場合のように、方向に依存する弾性率を有し得る。それにより、基板13のサギングを招くそれ自体が均一に作用する重力のような力は、基板内部の異方的な延伸を招くであろう。また、ゾーン7’のみによる基板の固定によって、機械的異方性とも呼ばれる歪みが発生することも考えられる。これはおそらく、(基板13で覆われている)ゾーン7’’の追加的な切り替えによって補償することができるであろう。機械的異方性14の最適かつ所望の補償のための個々のゾーンの正しい切り替えは、理想的には試験により決定される。ゾーンの個々の固定要素6が特に半径方向に配置されるように構成されていてよいことも言及される。この配置により特に、接合波が中央から縁部に移動している間の半径方向の適合が可能となる。
【符号の説明】
【0103】
1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’ 基板ホルダー
2 ベース本体
3 留め具
4 中抜き部
5 変形要素
6,6’,6’’ 固定要素
7,7’ ゾーン
8 センサ
9 ピン
10 ウェブ
11 凹部
12 流体排出部、特に穿孔
13 基板
14 機械的異方性
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(13)を収容するための基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)であって、前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)は、前記基板(13)を固定するための固定要素(6,6’,6’’)を備え、前記固定要素(6,6’,6’’)は、各ゾーン(7,7’)へのグループ分けが可能であり、前記ゾーン(7,7’)は、好ましくは環状に、さらに好ましくは円環状に配置されており、
前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)は、前記基板(13)と前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)との間の距離を監視するセンサ(8)を有する、基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項2】
前記ゾーン(7,7’)が、前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)の中央に対して対称的に配置されている、請求項1記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項3】
前記ゾーン(7,7’)が、前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)の中央の周りに複数の環状、好ましくは円環状に配置されている、請求項1または2記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項4】
前記ゾーン(7,7’)同士が、半径方向および/または方位角方向に均一に間隔を置いて配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項5】
前記ゾーン(7,7’)が、前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)の中央から前記基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)の縁部に向かって幅が変化するように、特に幅が増加するように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項6】
前記ゾーン(7,7’)が、個別に切り替え可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項7】
複数のゾーン(7,7’)が、グループ分け可能でありかつ一緒に切り替え可能である、請求項1から6までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項8】
前記ゾーン(7,7’)における前記固定要素(6,6’,6’’)の数が、柔軟に変更可能である、請求項1から7までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項9】
前記固定要素(6,6’)を、異なるゾーン(7,7’)に柔軟に割り当てることができる、請求項1から8までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項10】
前記固定要素(6,6’)が、ゾーン横断的に制御可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項11】
前記センサ(8)により、接合波の伝播速度および特に対称的な形状を接合プロセス時に監視でき、特に適応的に調節することができる、請求項1から10までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)。
【請求項12】
1枚以上の基板(13)を請求項1から10までのいずれか1項記載の基板ホルダー(1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’)を用いて固定および接合する方法であって、前記固定要素(6,6’,6’’)を、各ゾーン(7,7’)にグループ分けし、前記ゾーン(7,7’)を、好ましくは環状に、さらに好ましくは円環状に構成する、方法。
【請求項13】
前記ゾーン(7,7’)を個別に切り替える、請求項12記載の方法。
【請求項14】
複数のゾーン(7,7’)をグループ分けして一緒に切り替える、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記ゾーン(7,7’)における前記固定要素(6,6’,6’’)の数を柔軟に変更する、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記固定要素(6,6’)を異なるゾーン(7,7’)に柔軟に割り当てる、請求項12から15までのいずれか1項記載の方法。
【外国語明細書】