(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147685
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】積層造形を活用して形成された多孔質構造を有する関節インプラント並びに関連するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024113319
(22)【出願日】2024-07-16
(62)【分割の表示】P 2022552480の分割
【原出願日】2020-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】522132122
【氏名又は名称】アンコール メディカル,エルピー ディビーエー ディージェーオー サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】パテル,レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ボルヒャート,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー,アレックス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多孔質構造を生成するための既存の積層造形技術を改善するバイオメディカルインプラントのための多孔質構造の積層造形に関する方法及び装置に関する。
【解決手段】多孔質格子を備える医療用インプラントは、ダイレクトメタルレーザ焼結などの積層造形技術を用いて製造される。多孔質格子のCADモデルは、トリミングボリュームを定義し、いくつかの格子要素を隣接する中実基体とマージすることによって作成される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質格子を備えるインプラント装置を製作する方法であって、前記方法が、
コンピューティング装置によって、前記多孔質格子を備える前記インプラント装置のモ
デルを作成するステップであって、前記作成するステップが、
前記インプラント装置に対して境界面を有する初期格子ボリュームを定義するステップ
と、
前記初期格子ボリュームに複数のシードポイントを配置するステップと、
前記初期格子ボリュームを複数の三次元領域に分割する複数のノード及びストラットを
前記初期格子ボリュームに配置し、それによって初期格子を定義するステップと、
トリミング境界が前記初期格子ボリュームと第2のボリュームとの間に画定されるよう
に、前記初期格子ボリューム内に前記第2のボリュームを定義するステップと、
前記トリミング境界の外側に位置するストラット及びノード並びにその一部を前記モデ
ルから除去するステップと、
前記モデルに従い、可融性材料を加熱源にさらすことによって、前記多孔質格子を少な
くとも部分的に含む前記インプラント装置を製作するステップとを含む、作成するステッ
プを含む、方法。
【請求項2】
1つ又は複数のノード及び/又はストラットを前記インプラント装置の基体に向かって
引き付け、引き付けられた少なくとも1つのノード又はストラットが前記インプラント装
置の前記基体と一致して、又は少なくとも部分的に前記インプラント装置の前記基体内に
配置されるようにするステップと、
前記引き付けられたノード及び/又はストラットの一部又は全部を前記インプラント装
置の前記基体にマージするステップとを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のシードポイントの分布が、少なくとも部分的にランダム又は擬似ランダムで
ある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シードポイントの分布が、前記格子のいくつかの領域において他の領域よりも高い
密度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のシードポイントの分布が、少なくとも部分的にポアソン-ディスクサンプリ
ング戦略に基づく、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各三次元領域内のすべての位置が、他のどのシードポイントよりも前記各シードポイン
トに近い、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記第2のノード及び任意の関連するストラットの少なくとも一部を前記基
体にマージすることによって、前記関連するストラットの少なくとも一部が前記インプラ
ント装置の前記基体の縁特徴部と一体化される、請求項1から6のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項8】
前記インプラント装置の前記モデルを作成するステップが、前記複数のストラットの少
なくともいくつかを所望の厚さ及び所望の断面形状を有するように調整するステップをさ
らに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記調整するステップが前記格子の異なる領域で変化する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記調整するステップが前記格子の外面からの距離ごとに異なる、請求項9に記載の方
法。
【請求項11】
前記所望の断面形状が実質的に円形の形状である、請求項8から10のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項12】
前記多孔質格子が、前記格子の少なくとも1つの領域内において所望の平均孔径を中心
とする孔径のガウス分布を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記インプラント装置が、患者の骨を前記インプラント装置に固定するように構成され
た少なくとも1つのポストを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記インプラント装置が膝蓋インプラントを備える、請求項1から13のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項15】
前記可融性材料がチタン又はチタン合金を含む、請求項1から14のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項16】
前記加熱源がレーザを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記除去するステップが、前記第2のボリュームの境界又はその近くにフリーストラッ
ト端部を生成する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記フリーストラットの少なくとも1つについて、前記トリミング境界に対して前記フ
リーストラット端部の位置及びフリーストラットの向きの一方又は両方を操作するステッ
プを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法のいずれか1つによって作製されたイン
プラント装置。
【請求項20】
多孔質格子を備えるインプラント装置の製作モデルを生成する方法であって、前記方法
が、
コンピューティング装置によって、前記多孔質格子を備える前記インプラント装置のモ
デルを作成するステップであって、前記作成するステップが、
前記インプラント装置に対して境界面を有する初期格子ボリュームを定義するステップ
と、
前記初期格子ボリュームに複数のシードポイントを配置するステップと、
複数のノード及び前記ノードを接続するストラットを前記初期格子ボリュームに配置し
て、前記初期格子ボリュームを複数の三次元領域に分割し、それによって初期格子を定義
するステップと、
1つ又は複数のノード及び/又はストラットを前記インプラント装置の基体に向かって
引き付け、引き付けられた少なくとも1つのノード又はストラットが前記インプラント装
置の前記基体と一致して、又は少なくとも部分的に前記インプラント装置の前記基体内に
配置されるようにするステップと、
前記引き付けられたノード及び/又はストラットの一部又は全部を前記インプラント装
置の前記基体にマージするステップとを含む、作成するステップを含む、方法。
【請求項21】
多孔質格子を備えるインプラント装置の製作モデルを生成する方法であって、前記方法
が、
コンピューティング装置によって、前記多孔質格子を備える前記インプラント装置のモ
デルを作成するステップであって、前記作成するステップが、
前記インプラント装置に対して境界面を有する初期格子ボリュームを定義するステップ
と、
前記初期格子ボリュームに複数のシードポイントを配置するステップと、
前記初期格子ボリュームを複数の三次元領域に分割する複数のノード及びストラットを
前記初期格子ボリュームに配置し、それによって初期格子を定義するステップと、
トリミング境界が前記初期格子ボリュームと第2のボリュームとの間に画定されるよう
に、前記初期格子ボリューム内に前記第2のボリュームを定義するステップと、
前記トリミング境界の外側に位置するストラット及びノード並びにその一部を前記モデ
ルから除去するステップとを含む、作成するステップを含む、方法。
【請求項22】
前記複数のシードポイントの分布が、少なくとも部分的にランダム又は擬似ランダムで
ある、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記シードポイントの分布が、前記格子のいくつかの領域において他の領域よりも高い
密度を有する、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記複数のシードポイントの分布が、少なくとも部分的にポアソン-ディスクサンプリ
ング戦略に基づく、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
各三次元領域内のすべての位置が、他のどのシードポイントよりも前記各シードポイン
トに近い、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
所望の厚さ及び所望の断面形状を有するように前記複数のストラットの少なくともいく
つかを調整するステップをさらに含む、請求項20から25のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項27】
前記調整するステップが前記格子の異なる領域で変化する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記調整するステップが前記格子の外面からの距離ごとに異なる、請求項27に記載の
方法。
【請求項29】
前記所望の断面形状が実質的に円形の形状である、請求項26から28のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項30】
前記多孔質格子が、前記格子の少なくとも1つの領域内において所望の平均孔径を中心
とする孔径のガウス分布を含む、請求項20から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記除去するステップが、前記第2のボリュームの境界又はその近くにフリーストラッ
ト端部を生成する、請求項20から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記フリーストラットの少なくとも1つについて、前記トリミング境界に対して前記フ
リーストラット端部の位置及びフリーストラットの向きの一方又は両方を操作するステッ
プを含む、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、バイオメディカルインプラントに関し、より具体的には、当該バイ
オメディカルインプラントのための多孔質構造の積層造形に関する方法及び装置に関する
。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオメディカルインプラントの製造には、インプラントへの組織の付着及び内
部成長を容易にするために、スプレー又は粗面化された多孔質材料又は層を、予め形成さ
れたバイオメディカルインプラントに付着させることが組み込まれていた。より最近では
、バイオメディカルインプラントの製造には、バイオメディカルインプラント用の多孔質
構造を生成するために、3Dプリントとも呼ばれる積層造形技術が代替的又は追加的に活
用されている。
【0003】
本明細書に記載の実施形態は、多孔質構造を生成するための既存の積層造形技術を改善
するものである。
【0004】
この背景技術は、特許請求される主題の範囲を決定する助けとなることを意図するもの
ではなく、また、特許請求される主題を、上記で提示された欠点又は問題のいずれか又は
すべてを解決する実装形態に限定するとみなされるものではないことに留意されたい。こ
の背景技術のセクションにおけるすべての技術、文書、又は参考文献の説明は、記載され
た事項が本明細書で特許請求される主題のいずれかに対する先行技術であることを認める
ものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0005】
本技術の様々な構成が本開示から当業者に明らかになり、本技術の様々な構成が例示と
して示され説明されることが理解される。以下の記載から分かるように、本技術は、他の
異なる構成が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本技術の範囲から逸脱すること
なく、他の様々な点で修正が可能である。したがって、概要、図面及び詳細な説明は、本
質的に例示であって限定ではないとみなされるべきである。
【0006】
多孔質格子を備えるインプラント装置を製作する方法が提供される。本方法は、コンピ
ューティング装置によって、多孔質格子を備えるインプラント装置のモデルを作成するス
テップを含む。作成するステップは、インプラント装置の境界面を有する初期格子ボリュ
ームを定義するステップを含む。作成するステップは、初期格子ボリュームに複数のシー
ドポイントを配置するステップを含む。作成するステップは、初期格子ボリュームを複数
の三次元領域に分割する複数のノード及びストラットを初期格子ボリュームに配置し、そ
れによって初期格子を定義するステップを含む。作成するステップは、初期格子ボリュー
ムと第2のボリュームとの間にトリミング境界が画定されるように、初期格子ボリューム
内に第2のボリュームを定義するステップを含む。作成するステップは、トリミング境界
の外側に位置するストラット及びノード、並びにそれらの一部をモデルから除去するステ
ップを含む。作成するステップは、モデルに従って可融性材料を加熱源にさらすことによ
って少なくとも部分的に多孔質格子を備えるインプラント装置を製作するステップを含む
。
【0007】
多孔質格子を備えるインプラント装置を製作する別の方法が提供される。本方法は、コ
ンピューティング装置によって、多孔質格子を備えるインプラント装置のモデルを作成す
るステップを含む。作成するステップは、インプラント装置の境界面を有する初期格子ボ
リュームを定義するステップを含む。作成するステップは、初期格子ボリュームに複数の
シードポイントを配置するステップを含む。作成するステップは、複数のノード及びノー
ド同士を接続するストラットを初期格子ボリュームに配置して、初期格子ボリュームを複
数の三次元領域に分割し、それによって初期格子を定義するステップを含む。作成するス
テップは、1つ又は複数のノード及び/又はストラットをインプラント装置の基体に向か
って引き付け、引き付けられた少なくとも1つのノード又はストラットがインプラント装
置の基体と一致して、又は少なくとも部分的にインプラント装置の基体内に配置されるよ
うにするステップを含む。作成するステップは、引き付けられたノード及び/又はストラ
ットの一部又は全部をインプラント装置の基体にマージするステップを含む。
【0008】
さらに、多孔質格子を備えるインプラント装置を製作する別の方法が提供される。本方
法は、コンピューティング装置によって、多孔質格子を備えるインプラント装置のモデル
を作成するステップを含む。作成するステップは、インプラント装置の境界面を有する初
期格子ボリュームを定義するステップを含む。作成するステップは、初期格子ボリューム
に複数のシードポイントを配置するステップを含む。作成するステップは、初期格子ボリ
ュームを複数の三次元領域に分割する複数のノード及びストラットを初期格子ボリューム
に配置し、それによって初期格子を定義するステップを含む。作成するステップは、初期
格子ボリュームと第2のボリュームとの間にトリミング境界が画定されるように、初期格
子ボリューム内に第2のボリュームを定義するステップを含む。作成するステップは、ト
リミング境界の外側に位置するストラット及びノード、並びにそれらの一部をモデルから
除去するステップを含む。
【0009】
本明細書に記載の任意の方法によって作成されたインプラント装置も提供される。
【0010】
様々な実施形態は、有利な特徴を強調することに重点を置いて、以下に説明する図と併
せて詳細に説明される。実施形態は例示のみを目的としており、そこに示され得るいかな
る尺度も、開示される技術の範囲を限定するものではない。図面は以下の図を含み、図に
おいて同様の符号は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】いくつかの実施形態による、積層造形によって製作された膝蓋インプラントの骨に面する側を示す。
【0012】
【
図2A】いくつかの実施形態による、インプラントの周囲と一体化されたストラットを備える多孔質格子のCADモデルを示す。
【0013】
【
図2B】いくつかの実施形態による、積層造形によって製作された
図2Aの多孔質格子を示す。
【0014】
【
図3】いくつかの実施形態による、インプラント基体の多孔質格子を含むための初期ボリュームのCADモデルを示す。
【0015】
【
図4】いくつかの実施形態による、多孔質格子を形成する複数のノード及びストラットを含む
図3のボリュームのCADモデルを示す。
【0016】
【
図5】いくつかの実施形態による、
図4の初期ボリュームの外側境界に沿って延在する複数のストラットを備えるCADモデルを示す。
【0017】
【
図6】いくつかの実施形態による、初期ボリュームの外側境界に沿って延在する複数のノード及びストラットの少なくとも一部を除外するようにトリミングされた
図5の初期ボリュームのCADモデルを示す。
【0018】
【
図7】いくつかの実施形態による、トリミングされた多孔質格子のCADモデルを示す。
【0019】
【
図8】いくつかの実施形態による、インプラント基体に引き付けられた、インプラント基体に近接する1つ又は複数のストラット及び/又はノードを有する
図7のトリミングされた格子のCADモデルを示す。
【0020】
【
図9】いくつかの実施形態による、インプラント基体にマージされた、引き付けられた1つ又は複数のストラット及びノードを有する
図8のトリミングされたボリュームのCADモデルを示す。
【0021】
【
図10】いくつかの実施形態による、共形多孔質格子を備えるインプラントのCADモデルを生成するように構成されたコンピューティング装置を示す。
【0022】
【
図11】いくつかの実施形態による、少なくとも1つのCADモデルに基づいて多孔質格子を備えるインプラント装置を製作するように構成された積層造形装置を示す。
【0023】
【
図12】いくつかの実施形態による、共形の多孔質格子を備えるインプラント装置を製作する方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明及び例は、開示された発明のいくつかの例示的な実装形態、実施形態、及び
構成を詳細に示す。当業者は、本発明の範囲に包含される本発明の多数の変形形態及び修
正形態があることを認識するであろう。したがって、特定の例示的な実施形態の説明は、
本発明の範囲を限定するとみなされるべきではない。
【0025】
本明細書に記載の技術の実装形態は、一般に、関節形成術用のインプラントに関し、よ
り具体的には、セメントレス膝関節全置換術用の、ダイレクトメタルレーザ焼結(DML
S)を活用する、例えば膝蓋インプラントなどのインプラントの積層造形に関する方法及
び装置に関する。
【0026】
本開示の一般的な解釈原理
新規なシステム、装置、及び方法の様々な態様は、添付の図面を参照して本明細書でよ
り十分に説明される。しかしながら、教示の開示は、多くの異なる形態で具体化されても
よく、本開示を通して提示される特定の構造又は機能に限定されると解釈されるべきでは
ない。むしろ、これらの態様は、本開示が徹底的かつ完全であるように、かつ本開示の範
囲を当業者に完全に伝えるように提供される。本明細書の教示に基づいて、当業者は、本
開示の任意の他の態様から独立して実施されるか、又は本開示の任意の他の態様と組み合
わせられるかにかかわらず、本開示の範囲が、本明細書に開示される新規なシステム、装
置、及び方法の任意の態様を対象とすることを意図していることを理解すべきである。例
えば、本明細書に記載の態様のうちの任意の1つ又は複数を使用してシステム又は装置が
実装されてもよく、方法が実施されてもよい。さらに、本開示の範囲は、本明細書に記載
の本開示の様々な態様に加えて、又はそれ以外の他の構造、機能、又は構造及び機能を使
用して実施される、当該システム、装置、又は方法を対象とすることを意図している。本
明細書に開示された任意の態様は、特許請求の範囲の1つ又は複数の要素に記載され得る
ことを理解されたい。好ましい態様のいくつかの利点及び長所が言及されているが、本開
示の範囲は、特定の利点、使用、又は目的に限定されることを意図するものではない。詳
細な説明及び図面は、本開示の限定ではなく単なる例示であり、本開示の範囲は、添付の
特許請求の範囲及びその均等物によって定義される。
【0027】
本明細書における複数対単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に
適切であるように、複数から単数へ、及び/又は単数から複数へと変換することができる
。単数/複数の様々な置換は、明確にするために本明細書に明示的に記載され得る。
【0028】
本明細書に記載されたもの又は動作の特性又は性質の絶対値を述べる場合、「実質的な
」、「実質的に」、「本質的に」、「およそ」という用語及び/又は程度を示す他の用語
又は語句は、数値範囲の特定の記載なしに使用され得る。本明細書に記載のもの又は動作
の特性又は性質に適用される場合、これらの用語は、その特性又は性質に関連する所望の
機能を提供することと一致する特性又は性質の範囲を指す。
【0029】
特性又は性質に単一の数値が与えられる場合、与えられた数値の有効数字1桁以内にそ
の値の偏差を少なくとも含むと解釈されることを意図している。
【0030】
本明細書に記載のもの又は動作の特性又は性質を定義するために数値又は数値範囲が提
供される場合、その値又は範囲が程度を示す用語で限定されるか否かにかかわらず、特性
又は性質を測定する特定の方法も本明細書で定義され得る。特性又は性質を測定する特定
の方法が本明細書で定義されておらず、その特性又は性質について一般に受け入れられて
いる様々な測定方法がある場合、測定方法は、当業者によって、特性又は性質の記述及び
文脈を考慮して採用される可能性が最も高い測定方法として解釈されるべきである。さら
に、特性又は性質を測定するために当業者によって採用される可能性が同等に高い2つ以
上の測定方法がある場合、どの測定方法が選択されるかにかかわらず、値又は値の範囲が
満たされると解釈されるべきである。
【0031】
本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体部)で使
用される用語は、特に別段の記載がない限り「オープン」用語として意図される(例えば
、「含む(including)」という用語は、「含むがこれに限定されない(including but n
ot limited to)」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少
なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」
という用語は、「含むがこれに限定されない(includes but not limited to)」と解釈
されるべきである、など)ことが当業者によって理解されよう。
【0032】
導入された請求項の記載において特定の数が意図される場合、そのような意図は請求項
に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが当
業者によってさらに理解されるであろう。理解を助けるために、例えば、以下の添付の特
許請求の範囲は、請求項の記載を導入するために「少なくとも1つの」及び「1つ又は複
数の」という導入句を使用することを含み得る。しかしながら、そのような語句の使用は
、1つの請求項が導入句「1つ又は複数の」又は「少なくとも1つの」及び「a」又は「
an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項
の記載の導入が、そのような導入された請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、1つ
のみのそのような記載を含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではな
い(例えば、「1つの(a)」及び/又は「1つの(an)」は、典型的には、「少なくと
も1つの(at least one)」又は「1つ又は複数の(one or more)」を意味すると解釈
されるべきである)。請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても
、同じことが当てはまる。さらに、たとえ導入された請求項の記載において特定の数が明
示的に記載されているとしても、当業者は、そのような記載が典型的には少なくとも記載
された数(例えば、他の修飾語を含まない「2つの記載」というありのままの記載は、典
型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)を意味すると解釈さ
れるべきであることを認識するであろう。
【0033】
「A、B、及びCの少なくとも1つ」に類似した慣用表現が使用される場合、そのよう
な構文は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、CなしでA及びB、BなしでA及びC、AなしでB
及びC、並びにA、B、及びCを有する体系を含むであろう。2つ以上の代替的な用語を
示す実質的にすべての選言的な語及び/又は句は、明細書、特許請求の範囲、又は図面上
のいずれかにかかわらず、用語の1つ、用語のいずれか、又は両方の用語を含む可能性を
考慮すると理解されるべきであることが当業者によってさらに理解されるであろう。例え
ば、「A又はB」という語句は、BなしのA、AなしのB、並びにA及びBを含むと理解
されるであろう。
【0034】
本開示に記載された実装形態に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかになり得
、本明細書で定義された一般的な原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく他
の実装形態に適用され得る。したがって、本開示は、本明細書に示される実装形態に限定
されることを意図するものではなく、本明細書に開示される特許請求の範囲、原理、及び
新規の特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。「例示的」という用語は、
本明細書では「例、事例、又は説明としての役割を果たす」を意味するためのみに使用さ
れる。本明細書で「例示的」として説明される実施態様は、必ずしも他の実装形態よりも
好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0035】
別個の実装形態の文脈で本明細書で説明される特定の特徴は、単一の実装形態において
組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実装形態の文脈で説明される様々な特
徴は、複数の実装形態において別々に、又は任意の適切な部分的組み合わせで実施するこ
ともできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明するこ
とができ、さらにはそのように最初に特許請求することもできるが、特許請求された組み
合わせからの1つ又は複数の特徴を、ある場合において組み合わせから削除することがで
き、また、特許請求された組み合わせを、部分的な組み合わせ又は部分的な組み合わせの
変形に向けることができる。
【0036】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の説明
本開示に従って製作された例示的なインプラントの最初の説明を、
図1~
図2Bに関連
して記載する。次いで、当該インプラントを製作するための例示的な技術を、
図3~
図1
2に関連してより詳細に説明する。本明細書に詳細に記載される具体例は膝蓋インプラン
トであるが、本明細書に記載される設計及び製作方法及びシステムは、多孔質構造が望ま
しいすべてのインプラントに適用することができる。
【0037】
図1は、いくつかの実施形態による、積層造形によって製作された多孔質格子114を
含む膝蓋インプラント102の骨に面する側110を示す。いくつかの実施形態では、膝
蓋インプラント102は、固体チタン合金基材、例えばTi-6 Al-4Vを含むこと
ができる。しかしながら、本出願はそのように限定されず、膝蓋インプラント102は、
追加的又は代替的に、任意の適切な金属、合金、ポリマー又は他の材料を含むことができ
る。膝蓋インプラント102の骨に面する側110は、患者の骨、例えば膝蓋骨を膝蓋イ
ンプラント102に固定するように構成された1つ又は複数のポスト112a、112b
、112c(112a~112c)を備えることができる。インプラント手術後の治癒プ
ロセス中、患者の骨は、ポスト112a~112cを含む膝蓋インプラント102の骨に
面する側110に固着してもよく、それによって膝蓋インプラント102を適所に固定す
る。多孔質格子114は、ノードで交わる略直線状に延在するストラットを備えることが
できる。ノード及びストラットの位置は、例えば三次元ボロノイ分割に基づくランダム化
又は擬似ランダム化構造であってもよく、以下でより詳細に説明するように、積層造形技
術を活用して単一のステップで製作されてもよい。
図1には示されていないが、膝蓋イン
プラント102は、患者の膝関節に当接するために実質的に適切に輪郭付けられた、骨に
面する側110の反対側の関節に面する、又は関節接合する側も備える。
【0038】
図2Aは、いくつかの実施形態による、膝蓋インプラント102と一体化された多孔質
格子114の拡大されたCADモデルを示す。前述のように、多孔質格子114は、治癒
プロセス中の骨内部成長及びインプラント固定を容易にするために全体的な多孔性の所望
のレベルを維持しながら、所望の平均孔径を中心とする孔径のガウス分布を生成すること
ができる三次元ボロノイ分割に基づいた、ランダム化又は擬似ランダム化構造を備えるこ
とができる。多孔質格子114は、表面粗さ並びに初期の骨内部成長及び固定を増加させ
るために、その外側の骨に面する表面に複数の開放端を有する(例えば、ノードから片持
ち支持された)ストラット302を備えてもよい。多孔質格子114は、十分な機械的支
持を確保し、多孔質格子114と膝蓋インプラント102の中実基体との間を堅牢に接続
するために、膝蓋インプラント102の中実基体の縁特徴部306と一体化した複数のス
トラット304をさらに備えてもよい。
図2Bは、いくつかの実施形態による、実際に製
作された多孔質格子114の拡大図を示す。
【0039】
図2A及び
図2Bは、ポスト112a~cで膝蓋インプラント102の縁特徴部306
と一体化する複数のストラット304を示しているが、本開示はそのように限定されず、
複数のストラット304はまた、多孔質格子114、例えば、膝蓋インプラント102の
骨に面する表面110の少なくとも一部及び/又はポスト112a~cの上面の少なくと
も一部(例えば、
図1を参照)に当接する膝蓋インプラントの実質的にすべての表面に沿
って、膝蓋インプラント102の縁特徴部と一体化することもできる。
【0040】
次に、膝蓋インプラント102と一体化された多孔質格子114のCADモデルを生成
するための例示的なプロセス、及びそれに続く製作について、
図3~
図12に関連してよ
り詳細に説明する。
【0041】
図3は、いくつかの実施形態による、膝蓋インプラント102の多孔質格子114を含
むための初期ボリューム402のCADモデルを示す。初期ボリューム402及び膝蓋イ
ンプラント102の中実基体は、格子モデリングコンピュータソフトウェア、例えばニュ
ーヨーク(ニューヨーク州)のnTopologyによるElement及び/又はサン
ラフェル(カリフォルニア州)のAutodeskによるAutodesk Withi
n Medicalを含む標準的なCAD技術を用いて設計することができる。初期ボリ
ューム402は、実質的に円筒形の形状と、ポスト112cの当接する縁特徴部で膝蓋イ
ンプラント102の勾配と実質的に一致するように湾曲する外側境界とを有するように示
されているが、本開示はそのように限定されず、初期ボリューム402は、任意の適切な
外側境界によって画定される任意の適切な形状を有してもよい。
【0042】
初期ボリューム402には、複数のシードポイントを配置することができる。これらの
シードポイントの少なくともいくつかの三次元分布は、ランダム又は擬似ランダムとする
ことができ、同一のボリューム、例えば残りのポスト112a、112bを囲む同様のボ
リュームでも繰り返し実行することができる。いくつかの実施形態では、これらのシード
ポイントの分布は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Gamit
o MNとMaddock SCによるAccurate Multi-dimensional Poisson-disc Sa
mpling,ACM Transactions ON Graphics(2009)29,1,Article 8(December 2009)に記載さ
れているようなポアソン-ディスクサンプリング戦略に基づくことができる。ポアソン-
ディスクサンプリングを用いることにより、その後に初期格子ボリューム402の細分化
のためにボロノイ分割を適用するときに所望の目標セルサイズとなるシードポイントの指
定が可能になる。
【0043】
図4は、複数のストラット502によって複数の三次元領域に細分化された初期ボリュ
ーム402のCADモデルを示す。上述したように、いくつかの実装形態では、ストラッ
ト及びノードの位置は、ボロノイ分割に従って定義してもよい。
図4に示すように、ボロ
ノイ分割を活用して、複数のストラット502によって接続された複数のノードを定義し
、初期ボリューム402を複数の三次元領域に細分化してもよい。
【0044】
一般化されたn次元ボロノイ分割技術は、20世紀初期にGeorges Voron
oiによって定義された(例えば、“Nouvelles applications des parameters continus
a la theorie des forms quadratiques”, Premier Memoire,Sur quelques proprietes
des forms quadratiques positives parfaits..”, Journal fur die reine und angewan
dte Mathematik 133(1908):97-178、Voronoi,Georges、及び“Nouvelles
applications des parametres continus a la theorie des forms quadratiques Deuxie
me Memoire, Recherches sur les parallelloedres primitifs..”, Journal fur die re
ine und angewandte Mathematik 134(1908):198-287;136(1909):67-181を参照)。ボロ
ノイ分割の例示的なアルゴリズム実装は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる
、Guibasらによる“Randomized incremental construction of Delaunay and Voro
noi diagrams”,Algorithmica(1992)7:381-413に記載されている。
【0045】
結果として得られる格子500は、初期ボリューム402の隣接する細分化された三次
元領域の接合境界に沿って延在する複数のストラット502と、ストラット502が互い
に交差する位置を定義する複数のノード504とを備える。ストラット及びノード位置は
、ボロノイ分割で使用される複数のシードポイントの位置によって定義されてもよい。
【0046】
シードポイントの分布は、いくつかの非ランダム又は非擬似ランダム特性を有するよう
にしてもよい。例えば、シードポイント位置を生成するために用いられる(例えば、前述
のGamitoに記載されている様々な戦略などの)サンプリング戦略に対して、格子の
いくつかの領域において他の領域よりもポイントの密度が高くなるようにバイアスをかけ
ることができる。これは、例えば、格子の外側境界から格子の内側境界にかけてシードポ
イントを高密度化するような分布を生成することによって格子特性を向上させるために、
行うことができる。これにより、格子の骨内部成長の特性を著しく低下させることなく、
格子の機械的強度を高めることができる。もちろん、ランダムなポイント分布内であって
も、異なるポイント密度を有する様々な領域を定義することができるが、上記のように、
局所領域におけるポイントの位置決めにはやはりかなりのランダム性があり得る。この場
合、ある領域内のポイント密度が他の領域と異なることは、ランダム又は擬似ランダムプ
ロセスのみでは合理的に生成できないポイント密度差を意味する。
【0047】
図5は、いくつかの実施形態による、初期ボリューム402の外側境界に沿って延在す
る複数のストラット502を示すCADモデルを示す。格子500の表面粗さを増加させ
るために、部分的又は全体的に初期ボリューム402の内部にあるトリミングボリューム
を定義してもよい。初期ボリューム402の骨に面する外側境界に一致する少なくともい
くつかのストラット502は、トリミングボリュームの外側にあり、少なくともいくつか
のストラットは、トリミングボリュームの表面を通り抜けて初期ボリューム402の表面
まで延びる。トリミングボリューム内の格子500の一部はモデル内に維持されてもよい
が、一方で、初期ボリューム402内であってトリミングボリューム内ではない格子50
0の一部はモデルから除去されてもよい。したがって、初期ボリューム402の外面とト
リミングボリュームの外面との間の外層は、トリミングボリュームの外側のストラット及
びノードをモデルから除去することによってトリミングすることができる。モデルのうち
トリミングボリュームの表面と交差するストラットは、交点又はその近傍で終端されても
よく、上述のようにフリーストラット端部を有する開放端ストラットの外面が生成される
。
【0048】
そのような格子トリミングの結果の一例が
図6に示されており、図は、トリミング境界
の外側の複数のストラット502の少なくとも一部を除去することによってモデルが修正
された、トリミングされた格子702のCADモデルを示している。いくつかの実施形態
では、フリーストラットは、トリミングボリューム境界に対する初期の端位置及び/又は
向きを有することによって、トリミング後に操作されてもよい。これにより、格子の製造
性を向上させたり、強度や摩擦係数などの格子の物理的特性を変更したりすることができ
る。例えば、フリーストラット端部のグループは、残りのフリーストラット端部よりもト
リミングボリューム境界からさらに外側に延在してもよい。グループは、フリーストラッ
ト端部の総数に対するいくつかの割合を示す、フリーストラット端部のランダム又は擬似
ランダムに選択されたサブセットとして選択されてもよい。フリーな端部を有するストラ
ットのトリミングボリューム境界に対する配向角も操作することができる。例えば、表面
法線に対する角度は、特定の範囲内に含むことができる。この角度の外側にあるフリース
トラット端部を有する任意のストラットを境界交点における法線ベクトルに向かって回転
させて、法線に対して正常範囲内のどこかの角度にすることができる。この再配向は、ラ
ンダム化又は擬似ランダム化することができる。例えば、所望の角度範囲外であり、した
がって再配向を必要とするストラットごとに、所望の範囲内のランダム又は擬似ランダム
な角度を選択することができ、各ストラットは、そのストラットに対して選択された法線
から角度をつけるように再配向することができる。上述の両方のフリーストラット操作が
トリミングされた1つの格子構造に対して実行でき、結果、一部又は全部のフリーストラ
ット端部の長さ及び向きの両方が変更されることが理解されよう。
【0049】
トリミングされた格子702と膝蓋インプラント102の中実基体との一体化をさらに
向上させるために、膝蓋インプラント102の中実基体に直接隣接するトリミングされた
格子702のノードの少なくともいくつか、及び関連するストラットは、膝蓋インプラン
ト102の中実基体に引き付けられ、引き付けられたノード及び関連するストラットの少
なくとも一部が、膝蓋インプラント102の中実基体のモデル境界内に配置される。例え
ば、
図7は、
図6と実質的に同様であるが、膝蓋インプラント102の中実基体上のトリ
ミングされた格子ボリューム702の境界802をさらに視覚的に示すトリミングされた
格子702のCADモデルを示す。
図8は、膝蓋インプラント102の中実基体に引き付
けられた、膝蓋インプラント102の中実基体に直接隣接する、1つ又は複数のノード及
び関連するストラット902を有するトリミングされた格子702のCADモデルを示す
。
図8は、引き付けるステップの視覚化を容易にするために、膝蓋インプラント102の
骨に面する側110を半透明の図としてさらに示す。
図9は、膝蓋インプラント102の
中実基体にマージされた、1つ又は複数の引き付けられたノード及び関連するストラット
902を有するトリミングされた格子702のCADモデルを示す。
【0050】
トリミングされた格子702の引き付けられたノード及びストラットが膝蓋インプラン
ト102の中実基体にマージされると、ストラット502の全部又は一部は、適切なかつ
/又は所望の厚さ、及び/又は断面形状、例えば実質的な円形の断面形状になるように厚
くすることができる。しかしながら、ストラット502の任意の適切な断面形状も考慮さ
れる。いくつかの実装形態では、格子の異なる領域によってストラット特性を変化させる
ことができる。そのような手順の用途の1つは、上述のバイアスをかけたシードポイント
分布と同様の利点を得るためであり得る。この実装形態では、特定のストラットの断面直
径は、ストラット上の所与の点(例えば、中心点又は終点)と外側境界上の点との間の最
短距離の線形関数、非線形関数、階段関数、又は任意の他の関数として変化させることが
できる。この距離は、その特定のストラットの断面積を定義するために、最小断面積と乗
算される倍率を定義してもよい。外側境界からの距離が増加するにつれて関数が増加する
場合、ストラットは格子の外側境界から内側境界にかけて徐々に厚くなり、外側表面から
内側に向かって多孔率が減少する。
【0051】
上述のプロセスを利用することにより、インプラント用の大ボリューム多孔質格子モデ
ルを有するインプラント、例えば膝蓋インプラント102を、単一のストラット及びノー
ド定義ステップで作成することができる。従来の分割方法では、多孔質格子のより大きな
所望の全体ボリュームを個別に分割したサブボリュームを整列させて接合するための追加
の演算が必要であった。したがって、そのような上述のプロセスは、別々に生成された格
子の複数のタイル又は複数の細分化されたボリュームを接合するステップ、又はそれらの
中の冗長な特徴を分解するステップを排除することができ、より効率的な設計及び/又は
製作プロセスを提供する。さらに、より大きな格子ボリュームを作成した後にボリューム
の外面をトリミングするプロセスは、格子の表面全体に対して垂直又は略垂直に延びるス
トラットを含む、格子の表面全体から様々な角度で外側に延びる開放端ストラットを生成
する効率的な方法である。
【0052】
上述のCADモデリング及び製作プロセスは、以下の
図10に関連して説明するような
コンピューティング装置1100、及び/又は以下の
図11に関連して説明するような製
作装置1200を利用して実行することができる。コンピューティング装置1100及び
製作装置1200は別個の装置として図示及び説明されているが、本開示はそのように限
定されず、コンピューティング装置1100及び製作装置1200は同じ装置内に配置さ
れてもよい。
【0053】
図10は、いくつかの実施形態による、多孔質格子を備えるインプラントのCADモデ
ルを生成するように構成されたコンピューティング装置1100を示す。コンピューティ
ング装置1100は、記憶装置1130を備えることができ、記憶装置1130は、1つ
又は複数のCADプログラムを格納するように構成されたコンピュータメモリ、例えばニ
ューヨーク(ニューヨーク州)のnTopologyによるElement及び/又はサ
ンラフェル(カリフォルニア州)のAutodeskによるAutodesk With
in Medicalを備えることができる。記憶装置1130はまた、
図1~
図9のい
ずれかに関連して前述したようなインプラントのCADモデルを格納するように構成され
てもよい。
【0054】
コンピューティング装置1100は、記憶装置1130内に保持された非一時的なコン
ピュータ可読命令に基づいて1つ又は複数の動作を実行して、前述のインプラントのCA
Dモデルを生成するように構成されたプロセッサ1120をさらに備えることができる。
【0055】
コンピューティング装置1100は、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)1
110をさらに備えることができ、グラフィカルユーザインタフェース1110は、CA
Dモデルを設計者及び/又はユーザに表示するように構成されたディスプレイ1112を
含むことができる。コンピューティング装置1100は、上述の原理で作成されたモデル
に対するCADファイルのユーザ入力及び出力を受け入れるように構成された入力/出力
1140をさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、入力/出力1140は
GUI1110内に組み込まれてもよいが、本開示はそのように限定されない。
【0056】
図11は、いくつかの実施形態による、少なくとも1つのCADモデルに基づいて多孔
質格子を備えるインプラント装置を製作するように構成された製作装置1200を示す。
いくつかの実施形態では、製作装置1200は、ダイレクトメタルレーザ焼結(DMLS
)などの積層造形(AM)技術を活用することができ、これは、例えばチタン又はチタン
合金などの可融性材料の層を、例えばレーザなどの加熱源に選択的にさらす技術である。
そのような技術は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Abeらに
よる“Manufacturing of Titanium Parts for Medical Purposes by Selective Laser Me
lting,” Proceedings of The Eighth International Conference ON Rapid Prototyping
(June 12-13,2000)288-293に記載されているように周知である。
【0057】
Abeらに記載された任意又はすべての特徴に加えて、かつ/又は代替として、製作装
置1200は記憶装置1230を含むことができ、記憶装置1230は、多孔質格子を備
えるインプラント装置の製作用の1つ又は複数のCADモデル、並びに、
図1~
図9のい
ずれかに関連して前述したような1つ又は複数のCADモデルに基づいて、多孔質格子を
備えるインプラント装置を製造するために製造装置のレーザ及び他の動作を制御するよう
に構成された1つ又は複数のコンピュータプログラムを格納するように構成されたコンピ
ュータメモリを備えることができる。
【0058】
製作装置1200は、前述のような1つ又は複数のCADモデルに基づいてインプラン
トを製作するための1つ又は複数の動作を、記憶装置1230内に保持された非一時的な
コンピュータ可読命令に基づいて実行するように構成されたプロセッサ1220をさらに
備えることができる。
【0059】
製作装置1200は、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)1210をさらに
備えることができ、グラフィカルユーザインタフェース1210は、製作プロセスに関す
る情報をユーザに表示するように構成されたディスプレイ1212を含むことができる。
製作装置1200は、ユーザ入力を受け入れるように構成された周辺入力装置1240を
さらに備えることができる。いくつかの実施形態では、周辺入力装置1240はGUI1
210内に組み込まれてもよいが、本開示はそのように限定されない。
【0060】
製作装置1200は製作機器1250をさらに含むことができ、製作機器1250は、
少なくともAbeらによって記載されたようなDMLS AM技術を実行するためのいず
れか及びすべての機器を備えてもよい。
【0061】
図12は、いくつかの実施形態による、多孔質格子を備えるインプラント装置を製作す
る方法のフローチャート1300を示す。フローチャート1300は、
図1~
図11のい
ずれかに関連して前述したように、
図10及び
図11のコンピューティング装置1100
及び製作装置1200のいずれか又は両方によって全体的又は部分的に実行されてもよい
。
【0062】
ブロック1302において、フローチャート1300は、コンピューティング装置によ
って、多孔質格子を備えるインプラント装置のモデルを作成するステップを含む。例えば
、
図10のコンピューティング装置1100は、多孔質格子114を備える膝蓋インプラ
ント102のCADモデルを作成するように構成されてもよい。多孔質格子114は、所
望の平均孔径を中心とし、所望の半値幅を有する孔径のガウス分布を含んでもよい。膝蓋
インプラント102は、患者の骨を膝蓋インプラント102に固定するように構成された
少なくとも1つのポスト112a~112cを備える。前述のように、ブロック1302
の作成プロセスは、以下のブロック1304~ブロック1320のうちの1つ又は複数に
よって説明されるような1つ又は複数のステップ、ブロック、及び/又はプロセスを含ん
でもよい。
【0063】
ブロック1304において、フローチャート1300は、インプラント装置の境界面を
有する初期格子ボリュームを定義するステップを含む。例えば、コンピューティング装置
1100のプロセッサ1120は、膝蓋インプラント102に対して境界面を有する初期
格子ボリューム402を定義するように構成されてもよい。
【0064】
ブロック1306において、フローチャート1300は、初期格子ボリュームに複数の
シードポイントを配置するステップを含む。例えば、コンピューティング装置1100の
プロセッサ1120は、初期格子ボリューム402に複数のシードポイントを配置するよ
うに構成されてもよい。シードポイントの分布は、例えば前述のポアソン-ディスクサン
プリング戦略に基づいて擬似ランダムとすることができる。
【0065】
ブロック1308において、フローチャート1300は、複数のノード及びノード同士
を接続するストラットを初期格子ボリュームに配置して、初期格子ボリュームを複数の三
次元領域に分割し、それによって初期格子を定義するステップを含む。各三次元領域は、
複数のシードポイントのうちの各シードポイントを囲む。例えば、コンピューティング装
置1100のプロセッサ1120は、ノード504及びノード同士を接続する複数のスト
ラット502を初期格子ボリューム402に配置して、初期格子ボリューム402を複数
の三次元領域に分割し、それによって初期格子500を定義するように構成されてもよい
。図示のように、各ストラット502は、2つのノード504を接続することができる。
このブロックは、前述したボロノイ分割を活用して実行してもよい。
【0066】
ブロック1310において、フローチャート1300は、初期格子ボリュームと第2の
ボリュームとの間にトリミング境界が画定されるように、初期格子ボリューム内に第2の
ボリュームを定義するステップを含む。例えば、コンピューティング装置1100のプロ
セッサ1120は、初期格子ボリューム402と第2のボリュームとの間にトリミング境
界が画定されるように、初期格子ボリューム402内に第2のボリュームを定義するよう
に構成されてもよい。
【0067】
ブロック1312において、フローチャート1300は、トリミング境界の外側に位置
するストラット及びノードをモデルから除去することを含む。例えば、コンピューティン
グ装置1100のプロセッサ1120は、初期格子ボリューム402内に位置するが第2
のボリューム内には位置しないストラット及びノードを除去するように構成されてもよい
。このノード及びストラットの除去は、初期格子500を、トリミング境界の外側のスト
ラット502の少なくとも一部を除外するトリミングされた格子702に変換する。
【0068】
ブロック1314において、フローチャート1300は、1つ又は複数のノード及び/
又はストラットをインプラント装置の基体に向かって引き付け、少なくとも1つのノード
又はストラットがインプラント装置の基体と一致して、又は少なくとも部分的にインプラ
ント装置の基体内に配置されるようにするステップを含む。例えば、コンピューティング
装置1100のプロセッサ1120は、1つ又は複数のノード及び/又はストラットを膝
蓋インプラント102の基体に向かって引き付け、少なくとも1つのノード又はストラッ
トが膝蓋インプラント102の基体と一致して、又は少なくとも部分的に膝蓋インプラン
ト102の基体内に配置するように構成されてもよい。
【0069】
ブロック1316において、フローチャート1300は、引き付けられたノード及び/
又はストラットの一部又は全部をインプラント装置の基体にマージするステップを含む。
例えば、コンピューティング装置1100のプロセッサ1120は、引き付けられたノー
ド504及び/又はストラット502の一部又は全部を膝蓋インプラント102の基体に
マージするように構成されてもよい。
【0070】
ブロック1318において、フローチャート1300は、所望の厚さ及び所望の断面形
状を有するように複数のストラットの少なくともいくつかを調整するステップを含む。例
えば、コンピューティング装置1100のプロセッサ1120は、所望の厚さ及び/又は
所望の断面形状、例えば実質的な円形の形状を有するようにストラット502の少なくと
もいくつかを厚くするように構成されてもよい。
【0071】
ブロック1320において、フローチャート1300は、モデルに従って可融性材料を
加熱源にさらすことによって少なくとも部分的に多孔質格子を備えるインプラント装置を
製作するステップを含む。例えば、プロセッサ1220は、CADモデルに従って、可融
性材料、例えばチタン又はチタン合金を、例えばレーザなどの加熱源にさらすことによっ
て、少なくとも部分的に多孔質格子114を備える膝蓋インプラント102を製作するよ
うに、製作装置1200(
図11)の製作機器1250に指示するように構成されてもよ
い。
【0072】
本明細書に開示される方法は、記載された方法を達成するための1つ又は複数のステッ
プ又は動作を含む。方法ステップ及び/又は動作は、特許請求の範囲から逸脱することな
く入れ替えることができる。言い換えれば、ステップ又は動作の特定の順序が指定されな
い限り、特定のステップ及び/又は動作の順序及び/又は使用は、特許請求の範囲から逸
脱することなく変更することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質格子を備えるインプラント装置の製作モデルを生成する方法であって、前記方法が、
コンピューティング装置によって、前記多孔質格子を備える前記インプラント装置のモデルを作成するステップを含み、
前記作成するステップが、
前記インプラント装置に対して境界面を有する初期格子ボリュームを定義するステップと、
前記初期格子ボリュームに複数のシードポイントを配置するステップと、
複数のノード及び前記ノードを接続する複数のストラットを前記初期格子ボリュームに配置して、前記初期格子ボリュームを複数の三次元領域に分割し、それによって初期格子を定義するステップと、
1つ又は複数のノード及び/又はストラットを前記インプラント装置の基体に向かって引き付け、引き付けられた少なくとも1つのノード又はストラットが前記インプラント装置の前記基体と一致して、又は少なくとも部分的に前記インプラント装置の前記基体内に配置されるようにするステップと、
前記引き付けられたノード及び/又はストラットの一部又は全部を前記インプラント装置の前記基体にマージするステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記複数のシードポイントの分布が、少なくとも部分的にランダム又は擬似ランダムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シードポイントの分布が、前記格子のいくつかの領域において他の領域よりも高い密度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のシードポイントの分布が、少なくとも部分的にポアソン-ディスクサンプリング戦略に基づく、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各三次元領域内のすべての位置が、他のどのシードポイントよりも前記各シードポイントに近い、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
所望の厚さ及び所望の断面形状を有するように前記複数のストラットの少なくともいくつかを調整するステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記調整するステップが前記格子の異なる領域で変化する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記調整するステップが前記格子の外面からの距離ごとに異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所望の断面形状が実質的に円形の形状である、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記多孔質格子が、前記格子の少なくとも1つの領域内において所望の平均孔径を中心とする孔径のガウス分布を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記除去するステップが、前記第2のボリュームの境界又はその近くにフリーストラット端部を生成する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記フリーストラットの少なくとも1つについて、前記トリミング境界に対して前記フリーストラット端部の位置及びフリーストラットの向きの一方又は両方を操作するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
多孔質格子を備えるインプラント装置を製作する方法であって、前記方法が、
コンピューティング装置によって、前記多孔質格子を備える前記インプラント装置のモデルを作成するステップであって、前記作成するステップが、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を備える、ステップと、
前記モデルに従い、可融性材料を加熱源にさらすことによって、前記多孔質格子を少なくとも部分的に含む前記インプラント装置を製作するステップとを含む、方法。
【外国語明細書】