(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147708
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】固体電解キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20241008BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01G9/028 G
H01G9/15
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024114114
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2021568523の分割
【原出願日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】62/849,395
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ペトルジレック,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウーヘル,ミロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】クハルチク,パーベル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】負荷湿度試験及び高温貯蔵試験におけるキャパシタンス及びESRを改良された固形電解キャパシタを提供する。
【解決手段】電解キャパシタ30において、キャパシタ素子33は、焼結多孔質陽極体、その上に誘電体、誘電体の上に導電性ポリマー及び減極剤を含む固体電解質を含む。減極剤は0より大きい標準還元電位を有する芳香族キノン、ニトロ芳香族化合物、又はそれらの組み合わせである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結多孔質陽極体;
前記陽極体の上に配されている誘電体;及び
前記誘電体の上に配されており、導電性ポリマー及び減極剤を含む固体電解質;
を含むキャパシタ素子を含む固形電解キャパシタ。
【請求項2】
前記減極剤が0より大きい標準還元電位を有する、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項3】
前記減極剤が、芳香族キノン、ニトロ芳香族化合物、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項4】
前記減極剤が、1,4-ベンゾキノン、2-フェニル-1,4-ベンゾキノン、2-メチル-1,4-ベンゾキノン、2-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン、2-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、トリメチル-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、2,5-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、テトラメチル-1,4-ベンゾキノン、テトラフルオロ-1,4-ベンゾキノン、2,5-ジクロロ-1,4-ベンゾキノン、テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン、2-クロロ-1,4-ベンゾキノン、又はそれらの組合せである、請求項3に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項5】
前記陽極体と電気的に接触している陽極終端、及び前記固体電解質と電気的に接続している陰極終端を更に含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項6】
その内部に前記キャパシタ素子が収容されているハウジングを更に含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項7】
前記ハウジングが、前記キャパシタ素子を封入する樹脂材料から形成される、請求項6に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項8】
前記陽極体がタンタルを含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項9】
前記導電性ポリマーが、次式:
【化1】
(式中、
R
7は、線状又は分岐のC
1~C
18アルキル基、C
5~C
12シクロアルキル基、C
6~C
14アリール基、C
7~C
18アラルキル基、又はそれらの組み合わせであり;
qは、0~8の整数である)
の繰り返し単位を有する、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項10】
前記導電性ポリマーがポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項9に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項11】
前記導電性ポリマーがin situ重合によって形成される、請求項1に記載の固体電解キ
ャパシタ。
【請求項12】
前記導電性ポリマーが粒子の形態である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項13】
前記固体電解質がまた、ポリマー対イオンも含む、請求項12に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項14】
前記キャパシタ素子が前記固体電解質の上に配されている金属粒子層を含む陰極被覆を更に含み、前記金属粒子層が複数の導電性金属粒子を含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項15】
前記キャパシタが、約23℃の温度において初期ESR、及び約125℃の温度に1,000時間曝された後において高温ESRを示し、前記初期ESRに対する前記高温ESRの比が約3.0以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項16】
前記キャパシタが、約23℃の温度において初期キャパシタンス、及び約125℃の温度に1,000時間曝された後において高温キャパシタンスを示し、前記初期キャパシタンスに対する前記高温キャパシタンスの比が約3.0以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項17】
前記キャパシタが、約23℃の温度において初期ESR、並びに約85%の相対湿度及び約85℃の温度に1,000時間曝された後において高湿度ESRを示し、前記初期ESRに対する前記高湿度ESRの比が約2.0以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項18】
前記キャパシタが、約23℃の温度において初期キャパシタンス、並びに約85%の相対湿度及び約85℃の温度に1,000時間曝された後において高湿度キャパシタンスを示し、前記初期キャパシタンスに対する前記高湿度キャパシタンスの比が約2.0以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年5月17日の出願日を有する米国仮特許出願第62/849,395号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の出願の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
固体電解キャパシタ(例えばタンタルキャパシタ)は、通常は、金属粉(例えばタンタル)を金属リード線の周囲にプレスし、プレスした部品を焼結し、焼結した陽極を陽極酸化し、その後、固体電解質を施すことによって製造される。固有導電性(intrinsically conductive)ポリマーは、それらの有利な低い等価直列抵抗(ESR)及び「非燃焼/非発火」故障モードのために、固体電解質としてしばしば使用される。例えば、かかる電解質は、触媒及びドーパントの存在下における3,4-ジオキシチオフェンモノマー(EDOT)のin-situ化学重合によって形成することができる。しかしながら、in-situ重合されたポリマーを使用する従来のキャパシタは、比較的高いリーク電流(DCL)を有していて、高速スイッチング又は動作電流スパイク中に経験するような高い電圧において故障する傾向がある。これらの問題点を克服する試みにおいて、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)の複合体(PEDOT:PSS)から形成される分散液も使用されている。これらのキャパシタによって幾つかの利益が達成されるが、問題が残っている。したがって、安定な電気特性を示すことができる改良された固体電解キャパシタに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一実施形態によれば、キャパシタ素子を含む固体電解キャパシタが開示される。キャパシタ素子は、焼結多孔質陽極体、陽極体の上に配されている誘電体、及び誘電体の上に配され、導電性ポリマー及び減極剤を含む固体電解質を含む。
【0004】
下記において、本発明の他の特徴及び形態をより詳細に示す。
【0005】
当業者に向けられた、本発明のベストモードを含む本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面を参照しながら本明細書の残りでより詳しく示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明のキャパシタの一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び図面における参照符号の繰り返しの使用は、本発明の同一又は類似の特徴又は構成要素を表すことを意図している。
【0008】
本議論は代表的な態様のみの説明であり、本発明のより広い形態を限定することは意図しておらず、より広い形態は代表的な構成の中で具現化されることが当業者によって理解される。
【0009】
一般的に言うと、本発明は、焼結多孔質陽極体、陽極体の上に配されている誘電体、及び誘電体の上に配されており、導電性ポリマーを含む固体電解質を含むキャパシタ素子を含む固体電解キャパシタに関する。理論によって限定されることを意図するものではないが、特定の条件(例えば、高い相対湿度及び温度)は、キャパシタ上の水の凝縮をもたらし、それによって、陽極と陰極との間のイオン伝導をもたらす溶解塩を形成し得ると考えられる。このイオン伝導は電流及び電気分解を伴い得、これにより導電性ポリマーを分解
する水素ラジカルを生成し得る。しかしながら、本発明者らは、固体電解質へ減極剤を組み込むことによって、水素ラジカルと反応して、より容易に還元され、したがってポリマーを保護することができるイオン(例えば金属イオン)を生成することができることを見出した。この点に関し、一般に、25℃及び1モル/リットル(液体の場合)において標準水素電極に対して測定して、0より大きく、幾つかの実施形態においては約0.1ボルト以上、幾つかの実施形態においては0.2ボルト以上、幾つかの実施形態においては約0.4ボルト以上(例えば、約0.5~約1ボルト)の標準還元電位(E0)を有する減極剤を使用することが望ましい。かかる減極剤の幾つかの例としては、例えば、1,4-ベンゾキノン、2-フェニル-1,4-ベンゾキノン、2-メチル-1,4-ベンゾキノン、2-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン、2-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、トリメチル-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、テトラメチル-1,4-ベンゾキノン、テトラフルオロ-1,4-ベンゾキノン、2,5-ジクロロ-1,4-ベンゾキノン、テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン、2-クロロ-1,4-ベンゾキノン等の芳香族キノン;2-ニトロフェノール、3-ニトロフェノール、4-ニトロフェノール、2-ニトロ安息香酸、3-ニトロ安息香酸、4-ニトロ安息香酸、2-ニトロアセトフェノン、3-ニトロアセトフェノン、4-ニトロアセトフェノン、2-ニトロアニソール、3-ニトロアニソール、4-ニトロアニソール、2-ニトロベンズアルデヒド、3-ニトロベンズアルデヒド、4-ニトロベンズアルデヒド、2-ニトロベンジルアルコール、3-ニトロベンジルアルコール、4-ニトロベンジルアルコール、2-ニトロフタル酸、3-ニトロフタル酸、4-ニトロフタル酸、2-メチル-3-ニトロ安息香酸、2-メチル-6-ニトロ安息香酸、3-メチル-2-ニトロ安息香酸、3-メチル-4-ニトロ安息香酸、3-メチル-6-ニトロ安息香酸、4-メチル-3-ニトロ安息香酸等のニトロ芳香族化合物;及び同様のもの、並びに上記のいずれかの誘導体、塩、無水物、及び混合物を挙げることができる。通常は、減極剤は、固体電解質の約1~約500ppm、幾つかの実施形態においては約10~約200ppm、幾つかの実施形態においては約20~約150ppmを構成する。
【0010】
固体電解質の独特の性質の結果として、得られるキャパシタは優れた電気特性を示し得る。例えば、本キャパシタは、100kHzの動作周波数及び約23℃の温度で測定して、約200ミリオーム、幾つかの実施形態においては約200ミリオーム未満、幾つかの実施形態においては約150ミリオーム未満、幾つかの実施形態においては約0.01~約125ミリオーム、幾つかの実施形態においては約0.1~約100ミリオームのような比較的低い等価直列抵抗(ESR)を示し得る。本キャパシタはまた、120Hzの周波数及び約23℃の温度において測定して、約30ナノファラド/平方センチメートル(nF/cm2)以上、幾つかの実施形態においては約100nF/cm2以上、幾つかの実施形態においては約200~約3,000nF/cm2、幾つかの実施形態においては約400~約2,000nF/cm2の乾燥キャパシタンスを示し得る。約30分~約20時間、幾つかの実施形態においては約1時間~約18時間、幾つかの実施形態においては約4時間~約16時間の時間、印加電圧(例えば120ボルト)にかけた後において、本キャパシタはまた、約100マイクロアンペア(μA)以下、幾つかの実施形態においては約70μA以下、幾つかの実施形態においては約1~約50μAの漏れ電流(DCL)も示し得る。特に、かかる電気特性(例えば、ESR、DCL、及び/又はキャパシタンス)は、高温においてもなお安定したままであり得る。例えば、本キャパシタは、約80℃以上、幾つかの実施形態においては約100℃~約180℃、幾つかの実施形態においては約105℃~約150℃(例えば、約105℃、125℃、又は150℃)の温度に、約100時間以上、幾つかの実施形態においては約150時間~約3,000時間、幾つかの実施形態においては約200時間~約2,500時間(例えば、250、500、750、又は1,000時間)のような実質的な期間曝露した後であっても、上記の範
囲内のESR、DCL、及び/又はキャパシタンス値を示し得る。例えば一実施形態においては、キャパシタの初期ESR、DCL、及び/又はキャパシタンス値(例えば、約23℃)に対する、高い温度(例えば、約125℃)に1,000時間曝した後のキャパシタのESR、DCL、及び/又はキャパシタンス値の比は、約3.0以下、幾つかの実施形態においては約2.0以下、幾つかの実施形態においては約1.8以下、幾つかの実施形態においては約1.6以下、幾つかの実施形態においては約0.9~約1.3である。
【0011】
また、本キャパシタは、室温又は高温(例えば、約85℃)のいずれかにおいて高い相対湿度レベルに曝した後に、上述の範囲内のESR、DCL、及び/又はキャパシタンス値も示し得る。かかる高い相対湿度レベルは、例えば、上記のような相当な時間の間、約40%以上、幾つかの実施形態においては約45%以上、幾つかの実施形態においては約50%以上、幾つかの実施形態においては約70%以上(例えば、約85%~100%)であり得る。相対湿度は、例えばASTM-E337-02,方法A(2007)にしたがって求めることができる。例えば一実施形態においては、初期ESR、DCL、及び/又はキャパシタンス値(例えば、約23℃)に対する、高い湿度レベル(例えば、約85%)及び高温(例えば、約85℃)に1,000時間曝した後のキャパシタのESR、DCL、及び/又はキャパシタのキャパシタンス値の比は、約2.0以下、幾つかの実施形態においては約1.8以下、幾つかの実施形態においては約1.6以下、幾つかの実施形態においては約0.9~約1.3である。
【0012】
本キャパシタはまた、その湿潤キャパシタンスの高いパーセントも示し得、これにより、キャパシタが雰囲気湿分の存在下で小さなキャパシタンスの損失及び/又は変動しか有しないようにすることが可能になる。この性能特性は、式:
湿潤対乾燥キャパシタンス=(乾燥キャパシタンス/湿潤キャパシタンス)×100
によって求められる「湿潤対乾燥キャパシタンスパーセント(wet-to-dry capacitance percentage)」によって定量される。
【0013】
本キャパシタは、約50%以上、幾つかの実施形態においては約60%以上、幾つかの実施形態においては約70%以上、幾つかの実施形態においては約80%~100%の湿潤対乾燥キャパシタンスパーセントを示すことができる。
【0014】
また、キャパシタの損失係数(dissipation factor)を比較的低いレベルに維持することができるとも考えられる。損失係数は、一般にキャパシタ内で生じる損失を指し、通常は理想的なキャパシタ性能のパーセントとして表される。例えば、本キャパシタの損失係数は、通常は、120Hzの周波数において求めて約250%以下、幾つかの実施形態においては約200%以下、幾つかの実施形態においては約1%~約180%である。本キャパシタはまた、約35ボルト以上、幾つかの実施形態においては約50ボルト以上、幾つかの実施形態においては約60ボルト~約200ボルトの定格電圧のような高電圧用途において使用することもできる。本キャパシタは、例えば、約60ボルト以上、幾つかの実施形態においては約70ボルト以上、幾つかの実施形態においては約80ボルト以上、幾つかの実施形態においては約100ボルト~約300ボルトのような比較的高い「ブレークダウン電圧」(キャパシタが故障する電圧)を示すことができる。更に、本キャパシタはまた、高電圧用途においても一般的である比較的高いサージ電流に耐えることができる。ピークサージ電流は、例えば、約100アンペア以上、幾つかの実施形態においては約200アンペア以上、幾つかの実施形態においては約300アンペア~約800アンペアであってよい。
【0015】
キャパシタの種々の実施形態が詳細に記述されるであろう。
【0016】
I.キャパシタ素子
A.陽極体
本キャパシタ素子は、焼結多孔質体上に形成された誘電体を含む陽極を含む。多孔質陽極体は、バルブメタル(すなわち酸化することができる金属)又はバルブメタル系化合物、例えば、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、それらの合金、それらの酸化物、それらの窒化物などを含む粉末から形成することができる。粉末は、通常はタンタル塩(例えば、フルオタンタル酸カリウム(K2TaF7)、フルオタンタル酸ナトリウム(Na2TaF7)、五塩化タンタル(TaCl5)など)を還元剤と反応させる還元プロセスから形成される。還元剤は、液体、気体(例えば水素)、又は固体、例えば金属(例えばナトリウム)、金属合金、又は金属塩の形態で提供することができる。例えば一実施形態においては、タンタル塩(例えばTaCl5)を約900℃~約2,000℃、幾つかの実施形態においては約1,000℃~約1,800℃、幾つかの実施形態においては約1,100℃~約1,600℃の温度で加熱して蒸気を形成することができ、それを気体還元剤(例えば水素)の存在下で還元することができる。かかる還元反応の更なる詳細は、MaeshimaらのWO-2014/199480に記載されている。還元後、生成物を冷却、粉砕、及び洗浄して粉末を形成することができる。
【0017】
粉末の比電荷は、通常は、所望の用途に応じて約2,000~約800,000マイクロファラド・ボルト/グラム(μF・V/g)で変動する。当該技術において公知なように、比電荷は、キャパシタンスに使用した陽極酸化電圧をかけ、次にこの積を陽極酸化電極体の重量で割ることによって求めることができる。例えば、約2,000~約70,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約5,000~約60,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約10,000~約50,000μF・V/gの比電荷を有する低電荷粉末を使用することができる。勿論、約70,000~約800,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約80,000~約700,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約100,000~約600,000μF・V/gの比電荷を有するもののような高電荷粉末を使用することもできる。
【0018】
粉末は、一次粒子を含む自由流動性の微細粉末であってよい。粉末の一次粒子は、一般的に、場合によっては粒子を70秒間の超音波振動にかけた後に、例えばBECKMAN COULTER Corporation製のレーザー粒径分布分析装置(例えばLS-230)を使用して求めて、約5
~約500ナノメートル、幾つかの実施形態においては約10~約400ナノメートル、幾つかの実施形態においては約20~約250ナノメートルのメジアン径(D50)を有する。一次粒子は、通常は三次元の粒子形状(例えば球状又は角状)を有する。かかる粒子は、通常は比較的低い「アスペクト比」、すなわち粒子の平均直径又は幅を平均厚さで割った値(D/T)を有する。例えば、粒子のアスペクト比は、約4以下、幾つかの実施形態においては約3以下、幾つかの実施形態においては約1~約2であってよい。一次粒子に加えて、粉末は、一次粒子の凝集(又は凝塊化)によって形成される二次粒子のような他のタイプの粒子を含んでいてもよい。かかる二次粒子は、約1~約500マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10~約250マイクロメートルのメジアン径(D50)を有していてよい。
【0019】
粒子の凝集は、粒子を加熱することによるか、及び/又はバインダーを使用することによって行うことができる。例えば、凝集は、約0℃~約40℃、幾つかの態様においては約5℃~約35℃、幾つかの態様においては約15℃~約30℃の温度で行うことができる。また好適なバインダーとしては、例えば、ポリ(ビニルブチラール);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);セルロースポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルヒドロキシエチルセルロース;アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン;ポリエチレングリコール(例えば、Dow Chemical Co.製のCarbowax);ポリスチレン、ポリ(ブタジエン/スチレン);ポリアミド、ポリイミド、及びポリア
クリルアミド、高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、及びフルオロオレフィンコポリマー;アクリルポリマー、例えばナトリウムポリアクリレート、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)、及び低級アルキルアクリレートとメタクリレートのコポリマー;並びに脂肪酸及びワックス、例えばステアリン酸及び他の石鹸脂肪酸、植物性ワックス、マイクロワックス(精製パラフィン)などを挙げることができる。
【0020】
得られる粉末は、任意の従来の粉末プレス装置を使用して圧縮してペレットを形成することができる。例えば、ダイと1つ又は複数のパンチを含むシングルステーション式圧縮プレス機であるプレス成形機を使用することができる。或いは、ダイと単一の下方パンチのみを使用するアンビルタイプの圧縮プレス成形機を使用することができる。シングルステーション式圧縮プレス成形機は、シングルアクション、ダブルアクション、浮動ダイ、可動式プラテン、対向ラム、スクリュー、インパクト、ホットプレス、圧印加工、又はサイジングのような種々の能力を有するカムプレス、トグル/ナックルプレス、及び偏心/クランクプレスのような幾つかの基本的タイプで入手可能である。粉末は、ワイヤ、シートなどの形態であってよい陽極リードの周囲に圧縮することができる。リードは、陽極体から長手方向に伸長させることができ、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタンなど、並びにそれらの導電性酸化物及び/又は窒化物のような任意の導電性材料から形成することができる。陽極体へのリードの接続はまた、他の公知の技術を使用して、例えば、リードを陽極体に溶接するか、或いは形成中(例えば圧縮及び/又は焼結の前)に陽極体内部にそれを埋め込むことによって達成することもできる。
【0021】
圧縮の後、得られた陽極体を、正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、六角形、八角形、七角形、五角形などの任意の所望の形状に切除することができる。次に、陽極体を、バインダー/潤滑剤の全部ではないにしても大部分を除去する加熱工程にかけることができる。例えば、バインダーは、ペレットを真空下で一定の温度(例えば約150℃~約500℃)において数分間加熱することによって除去することができる。或いは、バインダーは、ペレットを、Bishopらの米国特許第6,197,252号に記載されているような水溶液と接触させることによって除去することもできる。その後、ペレットを焼結して多孔質の一体部材を形成する。ペレットは、通常は約700℃~約1600℃、幾つかの実施形態においては約800℃~約1500℃、幾つかの実施形態においては約900℃~約1200℃の温度で、約5分~約100分、幾つかの実施形態においては約8分~約15分焼結する。これは1以上の工程で行うことができる。所望の場合には、焼結は、酸素原子の陽極への移動を制限する雰囲気中で行うことができる。例えば、焼結は、真空中、不活性ガス中、水素中などの還元雰囲気中で行うことができる。還元雰囲気は、約10Torr~約2000Torr、幾つかの実施形態においては約100Torr~約1000Torr、幾つかの実施形態においては約100Torr~約930Torrの圧力であってよい。水素と他の気体(例えばアルゴン又は窒素)の混合物を使用することもできる。
【0022】
B.誘電体
陽極は誘電体で被覆されている。誘電体は、誘電体層が陽極上及び/又は陽極内に形成されるように、焼結陽極体を陽極酸化することによって形成することができる。例えば、タンタル(Ta)陽極を五酸化タンタル(Ta2O5)に陽極酸化することができる。通常は、陽極酸化は、最初に溶液を陽極に適用することによって、例えば陽極を電解液中に浸漬することによって行われる。一般に、水(例えば脱イオン水)のような溶媒を用いる。イオン伝導度を増大させるために、溶媒中で解離してイオンを形成することができる化合物を使用することができる。かかる化合物の例としては、例えば、電解質に関して下記に記載するような酸が挙げられる。例えば、酸(例えばリン酸)が、陽極酸化溶液の約0
.01重量%~約5重量%、幾つかの実施形態においては約0.05重量%~約0.8重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約0.5重量%を構成することができる。所望の場合には、複数の酸のブレンドを使用することもできる。
【0023】
電流を陽極酸化溶液に流して、誘電体層を形成する。化成電圧の値によって誘電体層の厚さが制御される。例えば、電源は、まず、必要な電圧に到達するまで定電流モードに設定することができる。その後、電源を定電位モードに切り替え、所望の誘電体厚さが陽極の表面全体の上に確実に形成されるようにすることができる。勿論、パルス又はステップ定電位法などの他の公知の方法も使用することができる。陽極酸化を行う電圧は、通常は、約4~約250V、幾つかの実施形態においては約9~約200V、幾つかの実施形態においては約20~約150Vの範囲である。酸化中は、陽極酸化溶液は昇温温度、例えば約30℃以上、幾つかの実施形態においては約40℃~約200℃、幾つかの実施形態においては約50℃~約100℃に維持することができる。陽極酸化はまた、周囲温度以下で実施することもできる。得られる誘電体層は、陽極の表面上及びその細孔内に形成することができる。
【0024】
必須ではないが、幾つかの実施形態においては、誘電体層は、陽極の外表面上に配される第1の部分と陽極の内表面上に配される第2の部分を有するという点において、陽極全体にわたって区別された厚さを有することができる。かかる実施形態においては、第1の部分は、その厚さが第2の部分の厚さよりも大きくなるように選択的に形成される。しかしながら、誘電体層の厚さは特定の領域内で均一である必要はないことを理解すべきである。外表面に隣接する誘電体層の幾つかの部分は、例えば、実際には内表面における層の幾つかの部分より薄い場合があり、その逆の場合もある。それでもなお、誘電体層は、外表面における層の少なくとも一部が内表面における少なくとも一部よりも大きな厚さを有するように形成することができる。これらの厚さにおける実際の差は特定の用途に応じて変化させることができるが、第2の部分の厚さに対する第1の部分の厚さの比は、通常は約1.2~約40、幾つかの実施形態においては約1.5~約25、幾つかの実施形態においては約2~約20である。
【0025】
区別された厚さを有する誘電体層を形成するために、多段階法が一般に使用される。このプロセスの各段階において、焼結した陽極を陽極酸化して誘電体層(例えば五酸化タンタル)を形成する。陽極酸化の第1段階中においては、通常は比較的小さい化成電圧、例えば、約1~約90ボルト、幾つかの実施形態においては約2~約50ボルト、幾つかの実施形態においては約5~約20ボルトの範囲の化成電圧を使用して、内部領域に関して所望の誘電体厚さが達成されるのを確実にする。その後、焼結体を次にプロセスの第2段階で陽極酸化して、誘電体の厚さを所望レベルに増加させることができる。これは、一般的には、電解液中において、第1段階中において使用された電圧より高い電圧、例えば約50~約350ボルト、幾つかの実施形態においては約60~約300ボルト、幾つかの実施形態においては約70~約200ボルトの範囲の化成電圧で陽極酸化することにより達成される。第1及び/又は第2段階中においては、電解液は、約15℃~約95℃、幾つかの実施形態においては約20℃~約90℃、幾つかの実施形態においては約25℃~約85℃の範囲内の温度に維持することができる。
【0026】
陽極酸化プロセスの第1及び第2段階中において使用される電解液は同じでも又は異なっていてもよい。しかしながら、通常は、誘電体層の外側部分においてより大きい厚さを達成するのをより良好に促進するのを助けるために、異なる溶液を用いることが望ましい。例えば、相当量の酸化物皮膜が陽極の内表面上に形成されないようにするために、第2段階において使用される電解液が第1段階において使用される電解液よりも低いイオン伝導度を有することが望ましい可能性がある。この点に関し、第1段階中に使用される電解液には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸等のような酸性化合
物を含ませることができる。かかる電解液は、25℃の温度で求めて、約0.1~約100mS/cm、幾つかの実施形態においては約0.2~約20mS/cm、幾つかの実施形態においては約1~約10mS/cmの導電率を有することができる。第2段階中に使用される電解液には、通常は弱酸の塩を含ませて、ヒドロニウムイオン濃度が、細孔内での電荷通過の結果として細孔内で増大するようにすることができる。イオン輸送又はイオン拡散は、電荷のバランスを取るために必要に応じて、弱酸のアニオンが細孔中に移動するように起こる。その結果、主要導電種(ヒドロニウムイオン)の濃度は、ヒドロニウムイオン、酸アニオン、及び非解離酸の間の平衡が形成される際に減少して、導電不良種が形成される。導電種の濃度の低下は、電解液中での比較的高い電圧降下をもたらし、これにより内部の更なる陽極酸化が妨害され、一方で連続した高導電率の領域における高い化成電圧に対してはより厚い酸化物層が外側の上に蓄積する。好適な弱酸塩としては、例えば、ホウ酸、ボロン酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、アジピン酸などのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩(例えばナトリウム、カリウムなど)を挙げることができる。特に好適な塩としては、四ホウ酸ナトリウム及び五ホウ酸アンモニウムが挙げられる。かかる電解液は、通常は、25℃の温度で求めて約0.1~約20mS/cm、幾つかの実施形態においては約0.5~約10mS/cm、幾つかの実施形態においては約1~約5mS/cmの導電率を有する。
【0027】
所望の場合には、所望の誘電体厚さを達成するために、陽極酸化の各段階を1以上のサイクル繰り返すことができる。更に、陽極は、第1及び/又は第2段階の後に、電解液を除去するために他の溶媒(例えば水)ですすぐか又は洗浄することもできる。
【0028】
C.プレコート層:
決して必須ではないが、場合によって、有機金属化合物を含むプレコート層を誘電体膜の上に配することができる。有機金属化合物は、次の一般式:
【0029】
【化1】
(式中、
Mは、ケイ素、チタンなどのような有機金属原子であり;
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)、又はヒドロキシアルキル(例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなど)であり、R
1、R
2、及びR
3の少なくとも1つはヒドロキシアルキルであり;
nは、0~8、幾つかの実施形態においては1~6、幾つかの実施形態においては2~4(例えば3)の整数であり;そして
Xは、グリシジル、グリシジルオキシ、メルカプト、アミノ、ビニルなどのような有機又は無機官能基である)
を有し得る。
【0030】
幾つかの実施形態においては、R1、R2、及びR3はヒドロキシアルキル(例えばOCH3)であってよい。しかしながら他の実施形態においては、R1はアルキル(例えばCH3)であってよく、R2及びR3はヒドロキシアルキル(例えばOCH3)であってよい。
【0031】
更に、幾つかの実施形態においては、Mはケイ素であってよく、有機金属化合物はアル
コキシシランのような有機シラン化合物である。好適なアルコキシシランとしては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、グリシドキシメチルトリブトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、β-グリシドキシエチルトリブトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシエチルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリブトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、γ-プロポキシブチルトリブトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシブチルトリブトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)-メチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリブトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリプロポキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリブトキシシラン(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリプロポキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリブトキシシランなどを挙げることができる。
【0032】
プレコート層をキャパシタ体に施す特定の方法は、所望のように変化させることができる。1つの特定の実施形態においては、化合物を有機溶媒中に溶解し、スクリーン印刷、浸漬、電気泳動被覆、噴霧などによって、溶液として部品に施す。有機溶媒は変化させることができるが、通常は、メタノール、エタノールなどのようなアルコールである。有機金属化合物は、溶液の約0.1重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約8重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約5重量%を構成することができる。また、溶媒は、溶液の約90重量%~約99.9重量%、幾つかの実施形態においては約92重量%~約99.8重量%、幾つかの実施形態においては約95重量%~約99.5重量%を構成することができる。施したら、次に部品を乾燥してそ
れから溶媒を除去して、有機金属化合物を含むプレコート層を形成することができる。
【0033】
D.固体電解質
上記に示したように、固体電解質は誘電体及び随意的なプレコート層の上に配され、一般にキャパシタのための陰極として機能する。固体電解質は、導電性ポリマーを含む少なくとも1つの層を含み、誘電体及び任意のプレコート層の上に配される。導電性ポリマーは、通常はπ共役であり、酸化又は還元後に少なくとも約1μS/cmの導電率のような導電率を有する。かかるπ共役導電性ポリマーの例としては、例えば、多複素環化合物(例えばポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等)、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン、ポリフェノラートなどが挙げられる。例えば一実施形態においては、ポリマーは、次の一般式(I):
【0034】
【化2】
(式中、
TはO又はSであり;
Dは、場合によっては置換されているC
1~C
5アルキレン基(例えばメチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン等)であり;
R
7は、線状又は分岐のC
1~C
18アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-若しくはイソプロピル、n-、イソ-、sec-、又はtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル等);C
5~C
12シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等);C
6~C
14アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等);C
7~C
18アラルキル基(例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-キシリル、メシチル等)であり;
qは、0~8、幾つかの態様においては0~2、一態様においては0の整数である)
の繰り返し単位を有する置換ポリチオフェンである。
【0035】
基「D」又は「R7」に関する置換基の例としては、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシラン及びアルコキシシラン基、カルボキシルアミド基などが挙げられる。
【0036】
特に好適なチオフェンポリマーは、「D」が場合によって置換されているC2~C3アルキレン基であるものである。例えば、ポリマーは、次の一般式(II):
【0037】
【化3】
の繰り返し単位を有する、場合によって置換されているポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であってよい。
【0038】
1つの特定の態様においては、「q」は0である。3,4-エチレンジオキシチオフェンの1つの商業的に好適な例は、HeraeusからClevios(登録商標)Mの名称で入手できる
。他の好適なモノマーはまた、Blohmらの米国特許5,111,327、及びGroenendaalらの米国特許6,635,729に記載されている。また、例えば上記のモノマーの二量体又は三量体であるこれらのモノマーの誘導体を使用することもできる。モノマーのより高分子量の誘導体、即ち四量体、五量体等は、本発明において使用するのに好適である。誘導体は、同一か又は異なるモノマー単位で構成することができ、純粋形態、並びに互いとの混合物及び/又はモノマーとの混合物で使用することができる。これらの前駆体の酸化又は還元形態を用いることもできる。
【0039】
導電性ポリマーを固体電解質中に導入するために、種々の技術を用いることができる。例えば一実施形態においては、ポリマーをin situで誘電体上に形成することができる。
かかる実施形態においては、上記で参照したような前駆体モノマーを、酸化触媒の存在下で重合(例えば化学的に重合)する。酸化触媒は、通常は、鉄(III)、銅(II)、クロム(VI)、セリウム(IV)、マンガン(IV)、マンガン(VII)、又はルテニウム(III)カチオン等のような遷移金属カチオンを含む。また、ドーパントを用いて、導電性ポリマーに過剰の電荷を与え、ポリマーの導電性を安定化させることもできる。ドーパントは、通常は無機又は有機アニオン、例えばスルホン酸のイオン(例えばp-トルエンスルホネート)を含む。幾つかの実施形態においては、酸化触媒は、カチオン(例えば遷移金属)及びアニオン(例えばスルホン酸)を含む点で、触媒機能性及びドーピング機能性の両方を有する。例えば、酸化触媒は、鉄(III)ハロゲン化物(例えばFeCl3)、又は他の無機酸の鉄(III)塩、例えばFe(ClO4)3又はFe2(SO4)3、並びに有機酸及び有機基を含む無機酸の鉄(III)塩のような鉄(III)カチオンを含む遷移金属塩であってよい。有機基を有する無機酸の鉄(III)塩の例としては、例えば、C1~C20アルカノールの硫酸モノエステルの鉄(III)塩(例えば硫酸ラウリルの鉄(III)塩)が挙げられる。更に、有機酸の鉄(III)塩の例としては、例えば、C1~C20アルカンスルホン酸(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、又はドデカンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族C1~C20カルボン酸(例えば2-エチルヘキシルカルボン酸)の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロカルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸又はペルフルオロオクタン酸)の鉄(III)塩;場合によってC1~C20アルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸)の鉄(III)塩;シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸)の鉄(III)塩;などが挙げられる。これらの上述の鉄(III)塩の混合物を用いることもできる。鉄(III)-p-トルエンスルホネート、鉄(III)-o-トルエンスルホネート、及びこれらの混合物が、本発明において用いるのに特に好適である。鉄(III)-p-トルエンスルホネートの1つの商業的に好適な例は、HeraeusからClevios(登録商標)Cの名称で入手できる。
【0040】
酸化触媒及び前駆体モノマーは、順次か又は一緒のいずれかで適用して重合反応を開始することができる。一例として、モノマーをまず酸化触媒と混合して前駆体溶液を形成することができる。幾つかの実施形態においては、通常必要な化学量論量未満の酸化触媒を用いてモノマーの重合を遅延させることを助けて、ポリマーに完全に重合した場合よりも短いオリゴマーを生成させて、高比電荷粉末中へより良好に浸透させることができる。例えば、モノマーがチオフェンモノマー(例えば3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含む場合には、モノマーを重合するのに用いられる通常必要なモル比は、酸化触媒18モルに対してモノマー約1モルである。しかしながら、モノマー(例えば3,4-エチレンジオキシチオフェン)1モルあたり18モル未満、例えば15モル未満、幾つかの実施形態においては約4~約12モル、幾つかの実施形態においては約5~約10モルの酸化重合触媒を重合溶液中に存在させることができる。
【0041】
モノマー、酸化触媒、及び随意的なドーパントに加えて、重合溶液にはまた、1種類以上の溶媒のような他の成分を含ませることもできる。特に好適な溶媒としては、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びブタノール);グリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、へキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、及びジプロピレングリコール);グリコールエーテル(例えば、メチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテル、及びイソプロピルグリコールエーテル);エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン);トリグリセリド;ケトン;エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ジエチレングリコールエーテル、及び酢酸メトキシプロピル);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド、及びN-アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル及びベンゾニトリル)、スルホキシド又はスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン)等、並びに上記のいずれか(例えば、水とアルコール)の混合物を挙げることができる。
【0042】
重合溶液は、通常は、反応中において、約-20℃~約50℃、幾つかの実施形態においては約-15℃~約30℃、幾つかの実施形態においては約-10℃~約10℃のような比較的低い温度に保持する。溶液は、スクリーン印刷、浸漬、電気泳動コーティング、及び噴霧のような当該技術において公知の任意の好適な適用技術を用いて陽極体に施すことができる。使用される適用技術にかかわらず、モノマーは一般に、陽極体上に存在する時点で反応し始めてポリマー層を形成する。モノマーを陽極体上で反応させる時間は、通常は高比電荷粉末の小さな細孔中のポリマーの良好な含浸を可能にするのに十分長い。例えばほとんどの実施形態においては、この時間(含浸時間)は、約1分以上、幾つかの実施形態においては約1.5分以上、幾つかの実施形態においては約2~約5分である。反応後、得られた1つ又は複数の導電性ポリマー層を洗浄溶液と接触させて、種々の副生成物、過剰な触媒などを除去することができる。洗浄溶液を1つ又は複数の導電性ポリマー層と接触させて配置する時間(洗浄時間)は、通常は、副生成物、過剰の触媒などを高比電荷粉末の小さい細孔から適切に除去することができることを確実にするのに十分な長さである。洗浄時間は、例えば、約25分以上、幾つかの実施形態においては約30分以上、幾つかの実施形態においては約45分~約90分であってよい。この時間中において、洗浄は、単一工程、又は各工程の合計時間が上記の範囲内にある複数工程で行うことができる。洗浄溶液は、所望に応じて変化し得るが、通常は1種類以上の溶媒(例えば、水、アルコールなど)、及び場合によっては上記のようなドーパントである。
【0043】
洗浄したら、1つ又は複数の導電性ポリマー層を、通常は約15℃以上、幾つかの実施形態においては約20℃以上、幾つかの実施形態においては約20℃~約80℃の温度で
乾燥することができる。1つ又は複数のポリマー層はまた、形成後にヒーリングすることもできる。ヒーリングは、導電性ポリマー層のそれぞれの適用後に行うことができ、又は導電性ポリマーコーティング全体の適用後に行うことができる。幾つかの実施形態においては、陽極体を電解質溶液中に浸漬し、その後、電流が予め選択されたレベルに低下するまで溶液に定電圧を印加することによってヒーリングすることができる。所望であれば、かかるヒーリングは、複数の工程で達成することができる。例えば、電解質溶液は、アルコール溶媒(例えば、エタノール)中のモノマー、触媒、及びドーパントの希釈溶液であってよい。
【0044】
in situ重合に加えて、導電性ポリマーはまた、予め重合された(pre-polymerized)固有及び/又は外因性導電性のポリマー粒子の形態で適用することもできる。かかる粒子を使用することの1つの利点は、これらによって、従来のin-situ重合プロセス中に生成する
、イオン移動のために高電界下で絶縁破壊を引き起こす可能性があるイオン種(例えばFe2+又はFe3+)の存在を最小にすることができることである。而して、導電性ポリマーをin-situ重合によるのではなく予め重合された粒子として適用することによって、
得られるキャパシタは比較的高い「ブレークダウン電圧」を示すことができる。
【0045】
例えば幾つかの実施形態においては、上記の式(I)又は(II)の繰り返し単位を有する「外因性」導電性ポリマーを、固体電解質において用いることができる。かかるポリマーは、一般に、ポリマーに共有結合していない別の対イオンの存在を通常は必要とする点で「外因性」導電性であるとみなされる。対イオンは、導電性ポリマーの電荷を中和するモノマー又はポリマーアニオンであってよい。ポリマーアニオンは、例えばポリマーカルボン酸(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等);ポリマースルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニルスルホン酸等);などのアニオンであってよい。酸はまた、ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸と、アクリル酸エステル及びスチレンのような他の重合性モノマーとのコポリマーのようなコポリマーであってもよい。更に、好適なモノマーアニオンとしては、例えば、C1~C20アルカンスルホン酸(例えばドデカンスルホン酸);脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸);脂肪族C1~C20カルボン酸(例えば2-エチルヘキシルカルボン酸);脂肪族ペルフルオロカルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸又はペルフルオロオクタン酸);場合によってC1~C20アルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸);シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸、又はテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、又はヘキサクロロアンチモネート);などのアニオンが挙げられる。特に好適な対アニオンは、ポリマーカルボン酸又はスルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸(PSS)ののようなポリマーアニオンである。かかるポリマーアニオンの分子量は、通常は、約1,000~約2,000,000、幾つかの態様においては約2,000~約500,000の範囲である。
【0046】
また、ポリマーに共有結合しているアニオンによって少なくとも部分的に補償(compensate)されている主鎖上に配置されている正電荷を有する固有導電性ポリマーを用いることもできる。例えば、好適な固有導電性ポリマーの1つの例は、次式(III):
【0047】
【化4】
(式中、
Rは(CH
2)
a-O-(CH
2)
bであり;
aは、0~10、幾つかの態様においては0~6、幾つかの態様においては1~4(例えば1)であり;
bは、1~18、幾つかの態様においては1~10、幾つかの態様においては2~6(例えば、2、3、4、又は5)であり;
Zは、SO
3
-、C(O)O
-、BF
4
-、CF
3SO
3
-、SbF
6
-、N(SO
2CF
3)
2
-、C
4H
3O
4
-、ClO
4
-等のようなアニオンであり;
Xは、水素、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、又はカリウム)、アンモニウム等のようなカチオンである)
の繰り返し単位を有していてよい。
【0048】
1つの特定の実施形態においては、式(I)におけるZはスルホネートイオンであって、固有導電性ポリマーは次式(IV):
【0049】
【化5】
(式中、R及びXは上記に規定した通りである)
の繰り返し単位を含む。式(III)又は(IV)において、aは好ましくは1であり、bは好ましくは3又は4である。更に、Xは好ましくはナトリウム又はカリウムである。
【0050】
所望の場合には、ポリマーは他のタイプの繰り返し単位を含むコポリマーであってよい。かかる実施形態においては、式(III)の繰り返し単位は、通常はコポリマー中の繰り返し単位の全量の約50モル%以上、幾つかの実施形態においては約75モル%~約99モル%、幾つかの実施形態においては約85モル%~約95モル%を構成する。勿論、ポリマーは、100モル%の式(III)の繰り返し単位を含む点でホモポリマーであってもよい。かかるホモポリマーの具体例としては、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸,塩)、及びポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-プロパンスルホン酸,塩)が挙げられる。
【0051】
ポリマーの特定の性質に関係なく、導電性ポリマー粒子は、通常は、約1~約80ナノメートル、幾つかの態様においては約2~約70ナノメートル、幾つかの態様においては約3~約60ナノメートルの平均径(例えば直径)を有する。粒子の直径は、超遠心分離、レーザー回折等のような公知の技術を用いて求めることができる。更に、粒子の形状を変化させることができる。例えば1つの特定の実施形態においては、粒子は球状の形状である。しかしながら、プレート、ロッド、ディスク、バー、チューブ、不規則形状等のような他の形状も本発明によって意図されることを理解すべきである。
【0052】
必ずしも必須ではないが、導電性ポリマー粒子は分散液の形態で施すことができる。分散液中の導電性ポリマーの濃度は、分散液の所望の粘度、及び分散液をキャパシタ素子に施す特定の方法に応じて変化させることができる。しかしながら、通常はポリマーは、分散液の約0.1~約10重量%、幾つかの態様においては約0.4~5重量%、幾つかの態様においては約0.5~約4重量%を構成する。分散液にはまた、得られる固体電解質の全体的な特性を向上させるための1以上の成分を含ませることもできる。例えば、分散液にバインダーを含ませて、ポリマー層の接着性を更に高め、また分散液中における粒子の安定性をも増加させることもできる。バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル及びエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシド樹脂、シリコーン樹脂又はセルロースのような有機的性質のものであってよい。また、バインダーの接着能力を増大させるために架橋剤を使用することもできる。かかる架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネート又は架橋性ポリマー、例えばポリウレタン、ポリアクリレート、又はポリオレフィンを挙げることができ、その後の架橋を含めることができる。また、層を陽極に施す能力を促進させるために、分散剤を使用することもできる。好適な分散剤としては、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、及びブタノール)、脂肪族ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、脂肪族カルボン酸エステル(例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチル)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及びキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサン)、塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン及びジクロロエタン)、脂肪族ニトリル(例えばアセトニトリル)、脂肪族スルホキシド及びスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド及びスルホラン)、脂肪族カルボン酸アミド(例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド)、脂肪族及び芳香脂肪族エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びアニソール)、水、及び任意の上記の溶媒の混合物のような溶媒が挙げられる。特に好適な分散剤は水である。
【0053】
上述したものに加えて、更に他の成分を分散液中で使用することもできる。例えば、約10ナノメートル~約100マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約50ナノメートル~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約100ナノメートル~約30マイクロメートルの寸法を有する通常のフィラーを使用することができる。かかるフィラーの例としては、炭酸カルシウム、シリケート、シリカ、硫酸カルシウム又はバリウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維又はガラス球、木粉、セルロース粉末、カーボンブラック、導電性ポリマーなどが挙げられる。フィラーは、粉末形態で分散液中に導入することができるが、繊維のような他の形態で存在させることもできる。
【0054】
イオン性又は非イオン性界面活性剤のような表面活性物質を分散液中で使用することもできる。更に、有機官能性シラン又はそれらの加水分解物、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン又はオクチルトリエトキシシランのような接着剤を使用することができる。分散液にはまた、エーテル基含有化合物(例えばテトラヒドロフラン)、ラクトン基含有化合物(例えば、γ-ブチロラクトン又はγ-バレロラクトン)、アミド又はラクタム基含有化合物(例えば、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP
)、N-オクチルピロリドン、又はピロリドン)、スルホン及びスルホキシド(例えば、スルホラン(テトラメチレンスルホン)又はジメチルスルホキシド(DMSO))、糖又は糖誘導体(例えば、サッカロース、グルコース、フルクトース、又はラクトース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、フラン誘導体(例えば、2-フランカルボン酸又は3-フランカルボン酸)、アルコール(例えば、エチレングリコール、グリセロール、ジ-又はトリエチレングリコール)のような、導電性を増加させる添加剤を含ませることもできる。
【0055】
分散液は、スピン被覆、含浸、流し込み、滴下適用、注入、噴霧、ドクターブレード塗布、ブラシ塗布、印刷(例えば、インクジェット、スクリーン、又はパッド印刷)、又は浸漬などによる種々の公知の技術を使用して施すことができる。分散液の粘度は、通常は、約0.1~約100,000mPa・秒(100秒-1の剪断速度で測定)、幾つかの実施形態においては約1~約10,000mPa・秒、幾つかの実施形態においては約10~約1,500mPa・秒、幾つかの実施形態においては約100~約1000mPa・秒である。
【0056】
上記のように、導電性ポリマーと組み合わせて、固体電解質中において減極剤も使用される。減極剤は、様々な異なる方法で固体電解質中に導入することができる。例えば幾つかの実施形態においては、前駆体モノマー、酸化触媒、又はそれらの混合物を含む溶液中、又は導電性ポリマー粒子を含有する分散液中などで、導電性ポリマーと組み合わせて減極剤を単に施すことができる。しかしながら、他の実施形態においては、導電性ポリマーの1以上の層が形成された後に、減極剤を施すことができる。かかる実施形態においては、減極剤を施すために用いる技術は、変化させることができる。例えば、減極剤は、液浸、浸漬、注ぎ込み、滴下、注入、噴霧、展開、塗装、又は印刷、例えば、インクジェット又はスクリーン印刷のような種々の方法を用いて液体溶液の形態で施すことができる。当業者に公知の溶媒、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、及びブタノール);グリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、及びジプロピレングリコール);グリコールエーテル(例えば、メチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテル、及びイソプロピルグリコールエーテル);エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン);トリグリセリド;ケトン;エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ジエチレングリコールエーテル、及び酢酸メトキシプロピル);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド、及びN-アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル);スルホキシド又はスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン)等、並びにこれら(例えば、水及びアルコール)の混合物を溶液中で使用することができる。かかる溶液中の減極剤の濃度は、通常は溶液の約0.1重量%~約50重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約1重量%~約20重量%の範囲である。所望であれば、かかる溶液は、導電性ポリマーを概して含んでいなくてよい。例えば、導電性ポリマーは、溶液の約2重量%以下、幾つかの実施形態においては約1重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.5重量%以下を構成し得る。
【0057】
E.陰極被覆:
所望の場合には、固体電解質及び他の随意的な層の上に配される陰極被覆を使用することもできる。陰極被覆には、ポリマーマトリクス内に分散されている多数の導電性金属粒子を含む金属粒子層を含ませることができる。粒子は、通常は層の約50重量%~約99重量%、幾つかの実施形態においては約60重量%~約98重量%、幾つかの実施形態においては約70重量%~約95重量%を構成し、一方でポリマーマトリクスは、通常は層
の約1重量%~約50重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約40重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約30重量%を構成する。
【0058】
導電性金属粒子は、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウムなどのような種々の異なる金属、並びにこれらの合金から形成することができる。銀がかかる層において使用するのに特に好適な導電性金属である。金属粒子は、しばしば、約0.01~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.1~約40マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約30マイクロメートルの平均径のような比較的小さい寸法を有する。通常は1つのみの金属粒子層を使用するが、所望の場合には複数の層を使用することができることを理解すべきである。かかる1つ又は複数の層の合計厚さは、約1μm~約500μm、幾つかの実施形態においては約5μm~約200μm、幾つかの実施形態においては約10μm~約100μmの範囲内である。
【0059】
ポリマーマトリクスは、通常は本質的に熱可塑性又は熱硬化性であってよいポリマーを含む。しかしながら、通常は、ポリマーは、銀イオンのエレクトロマイグレーションに対するバリヤとして作用することができ、また陰極被覆における水吸着の程度を最小にするように比較的少量の極性基を含むように選択される。この点に関し、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどのようなビニルアセタールポリマーが、この目的のために特に好適であり得る。例えば、ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールをアルデヒド(例えばブチルアルデヒド)と反応させることによって形成することができる。この反応は通常は完全ではないので、ポリビニルブチラールは一般的に残留ヒドロキシル含量を有する。しかしながら、この含量を最小にすることによって、ポリマーはより低い程度の強極性基を有することができる(これを有していないと高い程度の湿分吸着が引き起こされ、且つ銀イオンの移動が引き起こされる)。例えば、ポリビニルアセタール中の残留ヒドロキシル含量は、約35モル%以下、幾つかの実施形態においては約30モル%以下、幾つかの実施形態においては約10モル%~約25モル%にすることができる。かかるポリマーの1つの商業的に入手できる例は、Sekisui Chemical Co., Ltd.から「BH-S」(ポリビニルブチラール)の名称で入手できる。
【0060】
陰極被覆を形成するためには、通常は、導電性ペーストをキャパシタに、固体電解質の上に重ねて施す。一般にペースト中で1種類以上の有機溶媒を使用する。一般に、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、及びジプロピレングリコール);グリコールエーテル(例えば、メチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテル、及びイソプロピルグリコールエーテル);エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン);アルコール(例えば、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、及びブタノール);トリグリセリド;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、及びメトキシプロピルアセテート);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド及びN-アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオンニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル);スルホキシド又はスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン);など、並びにこれらの混合物のような種々の異なる有機溶媒を使用することができる。1種類又は複数の有機溶媒は、通常は、ペーストの約10重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約65重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約60重量%を構成する。通常は、金属粒子は、ペーストの約10重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約45重量%、幾つかの実施形態においては約25重量%~約40重量%を構成し、樹脂状マ
トリクスは、ペーストの約0.1重量%~約20重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約8重量%を構成する。
【0061】
ペーストは比較的低い粘度を有していてよく、これによりそれを容易に取り扱ってキャパシタ素子に施すことが可能になる。粘度は、例えば、Brookfield DV-1粘度計(コーン
プレート)などを使用して10rpmの速度及び25℃の温度で運転して測定して、約50~約3,000センチポアズ、幾つかの実施形態においては100~約2,000センチポアズ、幾つかの実施形態においては約200~約1,000センチポアズの範囲であってよい。所望の場合には、ペースト中で増粘剤又は他の粘度調整剤を使用して粘度を増加又は減少させることができる。更に、施すペーストの厚さは比較的薄くてもよく、これでもなお所望の特性を達成することができる。例えば、ペーストの厚さは、約0.01~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.5~約30マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約25マイクロメートルであってよい。施したら、金属ペーストを場合によっては乾燥して、有機溶媒のような幾つかの成分を除去することができる。例えば、乾燥は、約20℃~約150℃、幾つかの実施形態においては約50℃~約140℃、幾つかの実施形態においては約80℃~約130℃の温度で行うことができる。
【0062】
F.他の構成要素:
所望の場合には、当該技術において公知の他の層をキャパシタに含ませることもできる。例えば、幾つかの実施形態においては、炭素層(例えばグラファイト)を固体電解質と銀層との間に配置して、これによって銀層と固体電解質との接触を更に制限することを助けることができる。更に、誘電体の上に配され、下記においてより詳細に記載するような有機金属化合物を含むプレコート層を用いることもできる。
【0063】
II.終端(termination):
キャパシタ素子の層が形成されたら、得られたキャパシタに終端を与えることができる。例えば、それにキャパシタ素子の陽極リードが電気的に接続される陽極終端、及びそれにキャパシタの陰極が電気的に接続される陰極終端をキャパシタに含ませることができる。導電性金属(例えば、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、パラジウム、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、及びこれらの合金)のような任意の導電性材料を用いて終端を形成することができる。特に好適な導電性金属としては、例えば、銅、銅合金(例えば、銅-ジルコニウム、銅-マグネシウム、銅-亜鉛、又は銅-鉄)、ニッケル、及びニッケル合金(例えばニッケル-鉄)が挙げられる。終端の厚さは、一般的にキャパシタの厚さを最小にするように選択される。例えば、終端の厚さは、約0.05~約1ミリメートル、幾つかの態様においては約0.05~約0.5ミリメートル、及び約0.07~約0.2ミリメートルの範囲であってよい。一つの代表的な導電性材料は、Wieland(ドイツ)から入手できる銅-鉄合金の金属プレー
トである。所望の場合には、終端の表面は、当該技術において公知なように、最終部品を回路基板へ実装することができるのを確実にするために、ニッケル、銀、金、スズなどで電気めっきすることができる。一つの特定の態様においては、終端の両方の表面をそれぞれニッケル及び銀フラッシュでめっきし、一方で、実装面もスズはんだ層でめっきする。
【0064】
終端は、当該技術において公知の任意の技術を用いてキャパシタ素子に接続することができる。例えば一実施形態においては、陰極終端と陽極終端を画定するリードフレームを与えることができる。電解キャパシタ素子をリードフレームに取り付けるためには、まず導電性接着剤を陰極終端の表面に施すことができる。導電性接着剤には、例えば、樹脂組成物に含まれる導電性金属粒子を含ませることができる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどであってよい。樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(例えば
エポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及び化合物(例えばシラン化合物)を含ませることができる。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許出願公開第2006/0
038304号に記載されている。任意の種々の技術を用いて、導電性接着剤を陰極終端に施すことができる。例えば、それらの実用上及びコスト節約上の利益のために印刷技術を用いることができる。陽極リードも、機械的溶接、レーザー溶接、導電性接着剤などのような当該技術において公知の任意の技術を用いて陽極終端に電気的に接続することができる。陽極リードを陽極終端に電気的に接続したら、次に導電性接着剤を硬化させ、電解キャパシタ素子が陰極終端へ適切に接着することを確実にすることができる。
【0065】
例えば
図1を参照すると、電解キャパシタ30が、上面37、下面39、背面38、前面36を有するキャパシタ素子33と電気的に接続されている陽極終端62及び陰極終端72を含むものとして示されている。
図1にには明白には示されていないが、キャパシタの形態は上記で議論した陽極体の形態に対応しうることを理解すべきである。即ち、キャパシタ素子にはまた、1以上のその外表面(例えば、上面37及び/又は下面39)中にチャンネルを含ませることができる。
【0066】
示されている実施形態における陰極終端72は、導電性接着剤を介して下面39と電気的に接触している。より具体的には、陰極終端72は、キャパシタ素子33の下面39と電気的に接触していて、それと概して平行である第1の部品73を含む。陰極終端72にはまた、第1の部品73に対して実質的に垂直で、キャパシタ素子33の背面38と電気的に接触している第2の部品74を含ませることもできる。また、陽極終端62は、第2の部品64に対して実質的に垂直に配置されている第1の部品63を含む。第1の部品63は、キャパシタ素子33の下面39と電気的に接触していて、概してそれと平行である。第2の部品64は、陽極リード16を支持する領域51を含む。
図1には示していないが、領域51は、リード16の表面接触及び機械的安定性を更に増大させるために、「U字形」を有していてよい。
【0067】
終端は、当該技術において公知の任意の技術を用いてキャパシタ素子に接続することができる。例えば一実施形態においては、陰極終端72と陽極終端62を画定するリードフレームを与えることができる。電解キャパシタ素子33をリードフレームに取り付けるためには、まず導電性接着剤を陰極終端72の表面に施すことができる。導電性接着剤には、例えば樹脂組成物と共に含まれる導電性金属粒子を含ませることができる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどであってよい。樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及びカップリング剤(例えばシランカップリング剤)を含ませることができる。好適な導電性接着剤は、Osako
らの米国特許公開第2006/0038304号に記載されている。任意の種々の技術を用いて導電性接着剤を陰極終端72に施すことができる。例えば、それらの実施上及びコスト節約上の利益のために印刷技術を用いることができる。
【0068】
一般に、種々の方法を用いて終端をキャパシタに取り付けることができる。例えば一実施形態においては、まず陽極終端62の第2の部品64を、
図1において示されている位置まで上方向に屈曲させる。その後、キャパシタ素子33の下面39が接着剤と接触し、陽極リード16が領域51によって受容されるように、陰極終端72上にキャパシタ素子33を配置する。所望の場合には、プラスチックパッド又はテープのような絶縁材料(図示せず)を、キャパシタ素子33の下面39と、陽極終端62の第1の部品63との間に配置して、陽極終端と陰極終端を電気的に絶縁することができる。次に、機械的溶接、レーザー溶接、導電性接着剤などのような当該技術において公知の任意の技術を用いて、陽極リード16を領域51に電気的に接続する。例えば、レーザーを用いて陽極リード16を陽極終端62に溶接することができる。レーザーは、一般に誘導放出によって光子を放出することができるレーザー媒体、及びレーザー媒体の元素を励起するエネルギー源を含
む共振器を含む。好適なレーザーの1つのタイプは、レーザー媒体が、ネオジム(Nd)がドープされたアルミニウム・イットリウム・ガーネット(YAG)から構成されるものである。励起された粒子はネオジムイオン:Nd
3+である。エネルギー源によってレーザー媒体に連続エネルギーを与えて連続レーザービームを放出させるか、或いは放出エネルギーを与えてパルスレーザービームを放出させることができる。陽極リード16を陽極終端62に電気的に接続したら、次に導電性接着剤を硬化させることができる。例えば、ヒートプレスを用いて熱及び圧力を加えて、電解キャパシタ素子33が接着剤によって陰極終端72に適切に接着するのを確実にすることができる。
【0069】
III.ハウジング:
種々の環境中で良好な電気的性能を示す本キャパシタの能力のために、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止する必要はない。それでも、幾つかの実施形態においては、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止するのが望ましい可能性がある。キャパシタ素子は種々の方法でハウジング内に封止することができる。例えば幾つかの実施形態においては、キャパシタ素子をケース内に収容することができ、次にこれに、硬化させて硬化したハウジングを形成することができる熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)のような樹脂材料を充填することができる。かかる樹脂の例としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂はまた特に好適である。光開始剤、粘度調整剤、懸濁助剤、顔料、応力低減剤、非導電性フィラー、安定剤などのような更に他の添加剤を使用することもできる。例えば、非導電性フィラーとしては、無機酸化物粒子、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、ゼオライト、シリケート、クレイ(例えばスメクタイトクレイ)など、及び複合材料(例えばアルミナ被覆シリカ粒子)、並びにこれらの混合物を挙げることができる。これとは関係なく、陽極及び陰極終端の少なくとも一部が回路基板上に実装するために露出されるように、樹脂材料でキャパシタ素子を包囲及び封入することができる。このようにして封入した場合には、キャパシタ素子と樹脂材料は一体のキャパシタアセンブリを形成する。例えば、
図1に示すように、キャパシタ素子33は、陽極終端62の一部及び陰極終端72の一部が露出されるようにハウジング28内に封入する。
【0070】
勿論、別の実施形態においては、キャパシタ素子を離隔して別個の状態でハウジング内に収容することが望ましい可能性がある。このようにすると、ハウジングの雰囲気を気体状にして、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、クリプトン、ラドンなど、並びにこれらの混合物のような少なくとも1種類の不活性ガスを含ませることができる。通常は、不活性ガスは、ハウジング内の雰囲気の大部分、例えば、雰囲気の約50重量%~100重量%、幾つかの実施形態においては約75重量%~100重量%、幾つかの実施形態においては約90重量%~約99重量%を構成する。所望の場合には、二酸化炭素、酸素、水蒸気等のような比較的少量の非不活性ガスを用いることもできる。しかしながら、かかる場合においては、非不活性ガスは、通常はハウジング内の雰囲気の15重量%以下、幾つかの実施形態においては10重量%以下、幾つかの実施形態においては約5重量%以下、幾つかの実施形態においては約1重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.01重量%~約1重量%を構成する。金属、プラスチック、セラミックなどのような任意の種々の異なる材料を用いて別のハウジングを形成することができる。例えば一実施形態においては、ハウジングは、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ニッケル、ハフニウム、チタン、銅、銀、鋼(例えばステンレス)、これらの合金(例えば導電性酸化物)、これらの複合材料(例えば導電性酸化物で被覆された金属)などのような金属の1以上の層を含む。他の実施形態においては、ハウジングに、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ガラス等、並びにこれらの組合せのようなセラミック材料の1以上の層を含ませることができる。ハウジングは、円筒形、D字形、長方形、三角形、角柱形等のような任意の所望の形状を有していてよい。
【実施例0071】
本発明は以下の実施例を参照することにより、より良好に理解することができる。
【0072】
試験手順:
等価直列抵抗(ESR)
等価直列抵抗は、Kelvinリードを備えたHP4284A LCR計を用い、0ボルトのDCバイアス及び10mVACの信号を用いて測定することができる。動作周波数は100kHzであり、温度は23℃±2℃であった。
【0073】
損失係数
損失係数は、Kelvinリードを備えたLCZHP4284A LCR計を用い、0ボルトのDCバイ
アス及び10mVACの信号を用いて測定することができる。動作周波数は120Hzであってよく、温度は23℃±2℃であってよい
キャパシタンス
キャパシタンスは、Kelvinリードを備えたKeithley 3300精密LCZ計を用い、2.2
ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ツー・ピーク正弦波信号を用いて測定することができる。動作周波数は120Hzであり、温度は23℃±2℃であってよい。
【0074】
リーク電流
リーク電流は、リーク試験メーター(YHP4140B)を用い,23℃±2℃の温度において、荷電電流を制限するために1キロオームの抵抗を用い、定格電圧において最小で60秒後に測定することができる。
【0075】
負荷湿度試験
湿度試験は、標準規格IEC68-2-67:1995(85℃/相対湿度85%)に基づく。25の試験部品(印刷回路基板上に実装)に、上述の湿度試験条件において定格電圧を印加することができる。湿度試験条件の回復から2~24時間後に、0、500、及び1000時間において23℃±2℃の温度においてキャパシタンス及びESRを測定することができる。
【0076】
高温貯蔵試験
高温貯蔵試験は、IEC60068-2-2:2007(条件Bb、温度150℃)に基づく。25の試験部品(印刷回路基板上に実装)を、上述の温度条件において試験することができる。キャパシタンス及びESRの全ての測定は、温度試験条件の回復から1~2時間後に、23℃±2℃の温度で行うことができる。
【0077】
実施例1
50,000μFV/gのタンタル粉末を用いて陽極試料を形成した。それぞれの陽極試料にタンタル線を埋め込み、1350℃で焼結し、プレスして5.8g/cm3の密度にした。得られたペレットは1.7×2.4×1.0mmの寸法を有していた。ペレットを、85℃の温度において8.6mSの導電率を有する水/リン酸電解液中で23.5ボルトに陽極酸化して、誘電体層を形成した。ペレットを、30℃の温度において2.0mSの導電率を有する水/ホウ酸/四ホウ酸二ナトリウム中で25秒間、再び80ボルトに陽極酸化して、外側の上に堆積しているより厚い酸化物層を形成した。次に、陽極をトルエンスルホン酸鉄(III)のブタノール溶液(Clevios(登録商標)C、Heraeus)中に
、次に3,4-エチレンジオキシチオフェン(Clevios(登録商標)M、Heraeus)中に浸
漬し、重合することによって、導電性ポリマー被膜を形成した。45分間の重合の後、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の薄層が誘電体の表面上に形成された。陽極をメタノール中で洗浄して反応副生成物を除去し、液体電解質中で陽極酸化し、メタノー
ル中で再び洗浄した。このプロセスを6回繰り返した。その後、2.0%の固形分及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(
登録商標)K、Heraeus)中に部品を浸漬した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥させた。このプロセスを3回繰り返した。その後、2%の固形分及び粘度160mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K
、Heraeus)中に部品を浸漬した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥させた。
このプロセスを12回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥させた。部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥させた。最後に、部品を銅母材から形成された金属終端に実装した。このようにして47μF/10Vキャパシタの多数の部品(2,000)を作製し、標準シリカ樹脂中に封入した。
【0078】
実施例2
得られた部品をステンレススチールの母材から形成された金属終端に実装した他は実施例1で記載した方法でキャパシタを形成した。このようにして47μF/10Vキャパシタの多数の部品(1,000)を作製し、標準シリカ樹脂中に封入した。
【0079】
実施例3
in situ重合したら、部品をジメチルスルホキシド中の2,5-ジメトキシベンゾキノ
ンの0.3%溶液中に浸漬した他は、実施例1に記載した方法でキャパシタを形成した。被覆したら、部品を125℃で30分間乾燥させた。このプロセスを10回繰り返した。グラファイト分散液中に浸漬する前に、部品をジメチルスルホキシド中の2,5-ジメトキシベンゾキノンの0.3%溶液中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で30分間乾燥させた。このプロセスを5回繰り返した。このようにして47μF/10Vキャパシタの多数の部品(1,000)を作製し、標準シリカ樹脂中に封入した。
【0080】
実施例4
ポリマー被覆したら、部品をジメチルスルホキシド中の2,5-ジメトキシベンゾキノンの0.3%溶液中に浸漬した他は、実施例2に記載した方法でキャパシタを形成した。被覆したら、部品を125℃で30分間乾燥させた。このプロセスを10回繰り返した。このようにして47μF/10Vキャパシタの多数の部品(1,000)を作製し、標準シリカ樹脂中に封入した。
【0081】
負荷湿度試験及び高温貯蔵試験におけるキャパシタンス及びESRの結果を、下記において表1及び2に示す。
【0082】
【0083】
【表2】
本発明のこれら及び他の修正及び変更は、当業者によって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的又は部分的の両方で交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載はほんの一例にすぎず、添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。