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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147715
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】角膜幹細胞の選択的レーザ刺激
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/01 20060101AFI20241008BHJP
   A61F 9/008 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61F9/01
A61F9/008 130
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024114385
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2022508451の分割
【原出願日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】62/899,162
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515212529
【氏名又は名称】ベルキン ヴィジョン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】ベルキン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サックス、ザッチャリ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】眼の治療のための方法および装置、特に角膜の症状を治療することに関する。
【解決手段】眼科治療用の装置は、光学ユニット30を含み、光学ユニットは患者の眼の画像を捕捉するように構成されたカメラ54と、レーザ放射のパルスを放出するように構成されたレーザ48と、レーザ放射を集束し、眼の前面に衝突するように指向させるように構成されたビーム調整および走査光学系49、50を有する。コントローラ44は、眼の角膜輪部を識別するように画像を分析し、レーザ放射が角膜輪部の近くの眼の前面上の1つまたは複数の位置のセットに、1つまたは複数の場所で幹細胞を刺激するように選択されたパルス持続時間とエネルギーで衝突するように、光学ユニットを制御するように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ユニットであって:
患者の眼の画像を獲得するように構成されたカメラと;
レーザ放射のパルスを放出するように構成されたレーザと;
前記レーザ放射を、集束し前記眼の前面に衝突させるように構成されたビーム調整および走査光学系と;
を有する、光学ユニットと;そして
コントローラであって、前記眼の角膜輪部を識別するように前記画像を分析し、そして前記光学ユニットを制御して、前記レーザ放射が、前記角膜輪部の近くの前記眼の前面の1つまたは複数の場所の1セットに、パルス持続時間が500ms 未満、そしてパルスあたりエネルギーが100mJ 未満で、衝突するようにさせ、それにより、前記レーザ放射が前記1つまたは複数の場所の幹細胞を刺激する、ように構成されたコントローラと;
を有することを特徴とする眼科治療のための装置。
【請求項2】
前記レーザ放射は、前記1つまたは複数の場所のそれぞれに、1mm 以下のビーム直径で衝突するように集束される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パルス持続時間が100ms 未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記パルス持続時間が50ms 未満である、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記パルス持続時間が10ms 未満である、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記パルス持続時間が5ms 未満である、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記パルス当たりのエネルギーが50mJ 未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記パルス当たりのエネルギーが5mJ 未満である、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記レーザ放射は、30J/cm未満のフルエンスで前記1つまたは複数の場所のそれぞれに衝突するように集束される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記1つまたは複数の位置のそれぞれに複数のパルスを印加するようにレーザを起動させるように構成される、ことを特徴とする請求項1-9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記複数のパルスは、各位置で2000個以下のパルスを含む、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記複数のパルスは、各位置において500個以下のパルスを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記複数のパルスは、各位置において200個以下のパルスを含む、ことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記複数のパルスが、各位置において10J 以下の累積エネルギーのレーザ放射を送達する、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記累積エネルギーが1J 以下である、ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記累積エネルギーが400mJ 以下である、ことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記眼の前面上の前記1つまたは複数の位置が、前記角膜輪部から少なくとも1mm 偏位している、ことを特徴とする請求項1-9のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記眼の前面上の前記1つまたは複数の位置が、前記角膜輪部から少なくとも2mm偏位している、ことを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記ビーム調整および走査光学系は、前記光軸の方向に対して斜めの角度で前記眼の前面に衝突するように前記レーザ放射を指向させるように構成される、ことを特徴とする請求項1-9のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記ビーム調整および走査光学系は、前記角膜輪部の近くの複数の位置に向かって斜めの角度でビームを反射するように前記眼の光軸の周りに配置される、リングミラーを備える、ことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、眼の治療のための方法および装置、特に角膜の症状を治療することに関する。
【0002】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2019年9月12日に出願された米国仮特許出願62/899,162(特許文献1)の利益を主張し、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
角膜上皮は、眼の前面にある数層の細胞で構成されている。これらの細胞はほぼ継続的に露出されているため、絶えず交換される。角膜は、体内で最も神経支配されている組織である。その結果、その上皮表面の障害は、痛みや不快感などの症状を引き起こし、それは深刻な場合がある。さらに、角膜上皮とその涙液層の被覆は、眼の適切な光学的透明性に関与している。
【0004】
ドライアイ症候群は、眼が十分な涙を出さない場合、または涙が急速に蒸発する場合に発生する。ある程度の年齢までの人の5~34%に影響を及ぼし、高齢者の場合は最大70%に影響を及ぼす。ドライアイの症状には、刺激、発赤、分泌物、疲労しやすい目などがある。より深刻な場合は、かすみ目や角膜の瘢痕化につながる可能性がある。
【0005】
角膜内皮は角膜の内面を覆い、組織の透明性を担っている。内皮の欠陥は、病気や外傷によるものかどうかにかかわらず、角膜の腫れや視覚障害につながる可能性がある。
【0006】
光は、一般に光生体変調(PBM)または低光レベル治療(LLLT)と呼ばれるプロセスで、細胞組織内のさまざまなメカニズムに作用して生物活性を刺激または抑制する。この種の治療法は、その臨床的有効性が決定的に確立されていないが、眼の様々な症状の治療のために提案されてきた。例えば、米国特許出願公開第2016/0067087号(特許文献2)は、損傷または罹患した眼組織の治癒を促進するために、選択された多波長の光に眼を曝露するためのウェアラブル眼科光線療法装置および関連する治療方法を記載している。この装置は、フロント部分とフロント部分から延びる2つの耳かけ部分を有するフレームと;治療波長を有する光ビームを生成し、フレーム内またはフレーム上に配置された少なくとも1つの光源と;を有する。
【0007】
別の例として、米国特許第9,192,780号(特許文献3)は、細胞の治療、特に、光変調および/または光若返りを使用する、特に網膜上皮細胞の視覚経路障害の治療のためのシステムおよび方法を記載している。網膜細胞を治療して視覚経路障害の影響を軽減または逆転させるプロセスでは、網膜細胞に適用される多色光の狭帯域光源を使用して、非常に低いエネルギーフルエンスを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国仮特許出願62/899,162
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0067087号
【特許文献3】米国特許第9,192,780号
【発明の概要】
【0009】
以下に記載される本発明の実施形態は、眼の処置のための改善された装置と方法を提供する。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、光学ユニットであって:患者の眼の画像を獲得するように構成されたカメラと;レーザ放射のパルスを放出するように構成されたレーザと; レーザ放射を、集束し眼の前面に衝突させるように構成されたビーム調整および走査光学系と;を有する、光学ユニットと;を有することを特徴とする眼科治療のための装置が提供される。コントローラは、眼の角膜輪部を識別するように画像を分析し、そして光学ユニットを制御して、レーザ放射が、角膜輪部の近くの眼の前面の1つまたは複数の場所の1セットに、パルス持続時間が1μs 未満、そしてパルスあたりエネルギーが5mJ 未満で、衝突するようにさせ、それにより、レーザ放射が1つまたは複数の場所の幹細胞を刺激するように構成される。
【0011】
開示された一実施形態では、レーザ放射は、1つまたは複数の場所のそれぞれに、1mm以下のビーム直径で衝突するように集束される。追加的にまたは代替的にパルス持続時間が100ns未満であり、そして10ns未満でありえ、または5ns未満でさえありうる。さらに追加的にまたは代替的にパルス当たりのエネルギーが3mJ 未満である。一般的にレーザ放射は、0.4J/cm2未満のフルエンスで1つまたは複数の場所のそれぞれに衝突するように集束される。
【0012】
幾つかの実施形態では、コントローラは、1つまたは複数の位置のそれぞれに複数のパルスを印加するようにレーザを起動させるように構成される。開示された一実施形態では、複数のパルスは、各位置で200個以下のパルスを含み、可能性として100個以下のパルスを含む。追加的にまたは代替的に複数のパルスが、各位置において100mJ 以下、そして可能性として70mJ 以下、さらに可能性として40mJ 以下の累積エネルギーのレーザ放射を送達する。
【0013】
開示された一実施形態では、眼の前面上の1つまたは複数の位置が角膜輪部から少なくとも1mm、そして可能性として少なくとも2mm偏位している。
【0014】
追加的にまたは代替的にビーム調整および走査光学系は、光軸の方向に対して斜めの角度で眼の前面に衝突するようにレーザ放射を指向させるように構成される。一実施形態では、ビーム調整および走査光学系は、角膜輪部の近くの複数の位置に向かって斜めの角度でビームを反射するように眼の光軸の周りに配置される、リングミラーを備える。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、上記の光学ユニットを有する、眼科治療のための装置が提供される。コントローラは、眼の角膜輪部を識別するように画像を分析し、そして光学ユニットを制御して、レーザ放射が、角膜輪部の近くの眼の前面の1つまたは複数の場所の1組に、パルス持続時間が1ミリ秒から500ms の間、そしてパルスあたりエネルギーが100mJ 未満で、衝突するようにさせ、それにより、レーザ放射が1つまたは複数の場所の幹細胞を刺激するように構成される。
【0016】
幾つかの実施形態では、パルス持続時間が50ms 未満、そして10ms 未満または5ms 未満もありうる。追加的にまたは代替的にパルス当たりエネルギーが50mJ 未満、そして5mJ 未満もありうる。一般的にレーザ放射は、30J/cm2 未満のフルエンスで1つまたは複数の場所のそれぞれに衝突するように集束される。
【0017】
幾つかの実施形態では、コントローラは、レーザが1つまたは複数の位置のそれぞれに複数のパルスを印加するようにレーザを起動するように構成される。 開示された一実施形態では、複数のパルスは、各位置で2000個以下のパルスを含む、そしてパルスは500個以下または200個以下でもありうる。追加的にまたは代替的に複数のパルスが、各位置で10J 以下の累積エネルギーでレーザ放射を送達する、そして累積エネルギーは1J 以下または400mJ 以下もありうる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、患者の眼の角膜輪部を特定するステップと;そして レーザ放射のパルスを、1μs 未満のパルス持続時間と1パルスあたりエネルギー5mJ 未満で、角膜輪部の近くの眼の前面の1つまたは複数の場所のセットに衝突するように指向させ、1つまたは複数の場所で幹細胞を刺激するステップと;を有することを特徴とする眼科治療の方法が追加して提供される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、さらに患者の眼の角膜輪部を特定するステップと;そしてレーザ放射のパルスを、100ms 未満のパルス持続時間とパルスあたりエネルギー100mJ 未満で、角膜輪部の近くの眼の前面の1つまたは複数の場所のセットに衝突するように指向させ、1つまたは複数の場所で幹細胞を刺激するステップと;を有することを特徴とする眼科治療の方法が提供される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、患者の眼を治療するための装置が更に追加的に提供される。装置は光学ユニットを含み、光学ユニットは:レーザ放射を放出するように構成されたレーザと;眼の光軸の周りに配置された1つまたは複数のミラーと;そして光軸に対して斜めの角度で眼の前面に衝突するように、1つまたは複数のミラーから反射するレーザ放射を集束させそして指向させるように構成されたビーム調整および走査光学系と;を有する。コントローラは、レーザ放射が、角膜輪部の近くの1つまたは複数の場所のセットにおいて、斜めの角度で、1つ以上の場所において幹細胞を刺激するように選択されたフルエンスで、眼に衝突するように光学ユニットを制御するように構成される。
【0021】
開示された一実施形態では、1つまたは複数のミラーは、光軸を取り囲むリングミラーを有する。
【0022】
一実施形態では、コントローラは、レーザ放射が眼の上皮内の幹細胞に衝突して刺激するように、光学ユニットを制御するように構成される。代替的または追加的に、コントローラは、レーザ放射が眼の角膜実質内の幹細胞に衝突して刺激するように、光学ユニットを制御するように構成される。更に追加的にまたは代替的にコントローラは、レーザ放射が眼の内皮内の幹細胞に衝突して刺激するように、光学ユニットを制御するように構成される。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、さらにゴニオスコープを患者の眼の角膜に接触させるステップを有することを特徴とする眼科治療の方法が提供される。レーザ放射のパルスは、ゴニオスコープを通過して、ゴニオスコープのサイドミラー表面から反射し、次に角膜を斜めに通過し、眼の線維柱帯網の近くの内皮組織に、内皮組織の幹細胞を刺激するように選択されたパルスのエネルギーおよび持続時間で、衝突するように指向される。
【0024】
幾つかの実施形態では、パルスは、1μs 未満のパルス持続時間およびパルス当たり0.1mJ 未満のエネルギーを有する。開示された一実施形態では、パルスを指向させるステップは、0.1J/cm2以下のフルエンスで角膜内皮組織に衝突するようにレーザ放射を制御するステップを有する。追加的にまたは代替的にパルスは、1-500ms の間のパルス持続時間を有し、10J/cm2以下のフルエンスを有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は以下の図面を参照した詳細な実施形態の説明により、より十分に理解されよう:
図1】本発明の一実施形態による、眼科治療のためのシステムの概略側面図である。
図2】本発明の一実施形態による、図1のシステムにおけるレーザ治療装置の詳細を概略的に示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態による、レーザ放射による治療下にある眼の構造の概略断面図である。
図4】本発明の一実施形態による、その領域を通るレーザビームの伝播を示す、眼の輪部領域の概略断面理想化図である。
図5A-B】図5A,5Bは本発明の一実施形態による、異なる焦点特性のレーザビームによる照射下での光フルエンスの分布を示す、眼の組織の概略断面理想化図である。
図6-7】図6,7は本発明の代替の実施形態による、眼科治療のためのシステムの概略断面図である。
図8】本発明のさらに別の一実施形態による、眼科治療のための装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(概要)
幹細胞は、眼の恒常性と組織の修復に重要な役割を果たす。たとえば、不十分な幹細胞の活性は、ドライアイやその他の角膜の病的症状の原因の1つであるように思われる。幹細胞活性の刺激は、そのような症状の効果的な治療になりうる。
【0027】
可視または赤外線レーザ放射を使用するLLLTは、体内のさまざまな組織の幹細胞活性を刺激することがわかっている。この種の治療法は通常、中程度のエネルギーレベルでCW(連続波)レーザ放射を使用する。しかしながら、そのような放射線の眼への適用は、網膜および他の生理学的構造への一時的およびおそらく永久的な損傷を含む、深刻な意図しない結果をもたらす恐れがある。例えば、十分な強度での角膜輪部の周りの領域へのレーザ照射は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第10,702,416号に記載されているように、眼圧を低下させることが示されている。この効果は緑内障の治療に役立つが、初期の眼圧が正常範囲にある患者に適用すると、危険なほどの低圧をもたらす恐れがある。
【0028】
これらの必要性および制約に応答して、本明細書に記載される本発明の実施形態は、望ましくない付随的影響を最小限に抑えながら角膜幹細胞を刺激するように特別に選択されたパルスパラメータを有する、パルスレーザ放射を使用して角膜を治療するための装置および方法を提供する。開示された技術は、角膜上皮、角膜実質、および角膜内皮を含む、角膜の任意のおよびすべての層の幹細胞を刺激するように適応させることができる。それらは、上皮幹細胞の活性を刺激するのに、したがってドライアイなどの角膜上皮の症状を治療するのに特に効果的である。別の実施形態では、角膜内皮幹細胞が、この種のレーザ照射によって活性化される。
【0029】
以下に説明する実施形態は、患者の眼の画像を獲得するカメラを備える光学ユニットを使用する。光学ユニット内のレーザは、レーザ放射のパルスを放出する。このパルスは、ビーム調整および走査光学系によって集束および指向され、眼の前面に衝突する。コントローラは、画像を分析して角膜輪部を識別し、次に、レーザ放射が、角膜輪部から少なくとも1mm、場合によっては2、3、または4mmの事前定義された半径方向の距離だけ偏位した場所を含む、角膜輪部の近くの眼の前面の1つまたは複数の位置のセット、に衝突するように光学ユニットを制御する。これらは、その下方に存在する構造への望ましくない影響を回避しながら、幹細胞刺激が効果的でありうる場所である。あるいは、照射される位置は、当技術分野で知られている他の画像分析および視線追跡の方法、例えば、瞳孔追跡またはパターン認識によって識別される。
【0030】
他の望ましくない影響を最小限に抑えながら、角膜幹細胞(特に上皮)を刺激するのに効果的であることを発明者が発見したレーザパルスパラメータの2つのレジームがある。いくつかの実施形態では、レーザ放射は、1μs 未満のパルス持続時間およびパルスあたり5mJ未満のエネルギーで眼に衝突する。代替の実施形態では、パルス持続時間は最大100ミリ秒の範囲であり得、パルスエネルギーはパルスあたり最大100mJである。各パルスでの眼へのレーザ放射のフルエンスは、事前定義された制限未満に保たれる。たとえば、短いパルスドメイン(1 μs未満)では2J/cm2未満、長いパルスドメイン(最大100ミリ秒)では120J/cm2未満。各場所に適用される累積エネルギーは、同様に、付随的な影響を回避しながら実質的な幹細胞刺激を提供するように選択された制限未満に保持される。
【0031】
いずれの場合も、レーザビームは通常、各位置における小さなスポットに集束される。たとえば、ビーム径は1mm以下である。この種の小さなスポットサイズの使用は、特にビーム強度を集中させるのに、したがって、上皮層の幹細胞を刺激するのに有利である。線維柱帯網などの構造に影響を与える恐れのある、内皮に到達する強度ははるかに小さい。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態は、角膜輪部内の組織の固有の散乱特性を利用する。シミュレーションによると、輪部に入射するレーザエネルギーの約11%だけがその下にある線維柱帯網に到達する。本発明者らが実施した臨床研究は、0.8mJのパルスエネルギーを有するレーザパルスによる、角膜輪部領域の外面上の線維柱帯網への照射が眼圧を低下させるのに効果的であることを示した。この種の照射では線量反応関係が観察されており、これはエネルギーが高いほど圧力が大きく低下することを意味する。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、角膜上皮および間質幹細胞のみが刺激されるように、0.8mJ未満のレーザパルスエネルギーが使用される。眼圧の望ましくない低下を回避するために、内皮幹細胞が刺激されないことを確実にするために、さらなるエネルギーの低減が有用であり得る。しかしながら、代替の実施形態では、入射レーザビームのエネルギーおよび方向は、内皮幹細胞が有意に刺激されるように選択される。
【0033】
レーザ放射が眼の幹細胞を刺激可能な複数の経路があるように見える。これには、熱加熱、非線形吸収プロセス、および光音響プロセスが含まれるが、これらに限定されない。ナノ秒レーザパルスは、同様のレベルの幹細胞刺激を達成するために、ミリ秒範囲のパルスよりも約2桁少ないフルエンスを必要とする。本発明の実施形態で使用されるフルエンスのレベルでは、角膜輪部を通って伝播するレーザエネルギーの減衰は、パルス持続時間およびエネルギーとは無関係であり、その結果、より高いエネルギーのより長いレーザパルスも約11%減衰する。
【0034】
(システムの説明)
ここで、本発明の一実施形態による、LLLTを使用する眼科治療のためのシステム20を概略的に示す図1および2を参照する。図1はシステムの側面図であり、図2はシステム20のレーザ治療装置21の詳細を示すブロック図である。システム20は、その設計において、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、PCT国際出願公開WO2020/008323に記載される直接レーザ選択的線維柱帯形成術のためのシステムと類似している。しかしながら、本実施形態では、システム20におけるレーザビームパラメータおよび治療モダリティは、線維柱帯網に対するレーザビームの影響を最小限に抑えながら、幹細胞の標的化刺激に特に適合されている。
【0035】
レーザ治療装置21は、患者22の眼25に向けてパルス放射線のビームを出力するレーザなどの放射線源48を含む光学ユニット30を備える。光学ユニット30は、レーザビームの焦点特性を調整するためのビーム調整光学系49をさらに備える。これにより、ビームは、所望のスポットサイズおよびエネルギーで眼球25の表面に入射する。スキャナ50は、LLLT治療のための所望の標的位置にビームを向ける。スキャナ50は、例えば、1つまたは複数のガルバノメトリックミラー、または当技術分野で知られている他の任意の適切なタイプの光学スキャナを備え得る。Fシータレンズ51を使用して、スキャンの範囲にわたって均一なビーム特性を維持することができる。ビームコンバイナ56は、光学ユニット30の前面にある開口58を通して眼25に向かってレーザビームを向ける。
【0036】
光学ユニット30は、LLLT処置の前および最中に、ビームコンバイナ56を介して眼25の画像を取得するカメラ54をさらに備える。図示の実施形態では、眼の画像化を支援するために、光学ユニット30は、例えば、開口58を取り囲むLEDのリングなどの1つまたは複数の発光ダイオード(LED)を含む照明源60を備える。コントローラ44は、カメラ54によって出力された画像を処理し、そしてその画像に基づいて、放射線源48、ならびにビーム調整光学系49およびスキャナ50を制御する。具体的には、LLLTの目的のために、コントローラは、眼25の角膜輪部を識別し、次いで、角膜輪部の近くの位置、これは、角膜輪部上にあるか、または眼の前面に沿って適切な距離だけ角膜輪部から径方向に偏位した位置を意味するが、に所望のフルエンスの放射パルスを指向させるため、レーザビームの照準を定める。角膜輪部は、当技術分野で知られる任意の適切な画像処理方法を使用して、例えば、画像内の虹彩と強膜との間の円形端部を見つけることによって識別することができる。輪部の位置を特定する方法は、上記の米国特許第10,702,416号にさらに記載されている。
【0037】
通常、治療を開始する前の準備段階として、眼科医などのシステム20のユーザは、ジョイスティックなどの制御機構36を使用して、眼から所定の距離Dに光学ユニット30を配置する。この位置決めを容易にするために、光学ユニット30は、それぞれの距離測定ビーム64を眼に向ける複数のビームエミッタ62(例えば、レーザダイオードを含む)を備えることができる。ビーム64は、眼に複合パターンを形成し、これにより、ユーザは、光学ユニットが事前定義された距離にあることを確認することができる。
【0038】
光学ユニット30は、制御機構36によって制御されるXYZステージ32に取り付けられている。制御機構36を使用して、システム20のユーザは、患者の眼を治療する前に、光学ユニットを適切な位置に配置する。いくつかの実施形態では、XYZステージ32は、1つまたは複数のモーターを含み、制御機構36は、インターフェース回路46およびコントローラ44を介してXYZステージに接続される。他の実施形態では、XYZステージ32は、制御機構を操作することによって手動で制御される。
【0039】
手術中、患者22は、トレイまたはテーブルなどの水平面38に取り付けられたヘッドレスト24に頭を置く。ヘッドレスト24は、額レスト26および顎レスト28を含む。LLLT処置の間、患者22は、顎を顎レスト28上に置きながら、額を額レスト26に押し付ける。固定ストラップ27は、患者の頭を後ろから固定し、それにより、患者の頭をヘッドレストに押し付けられたままに保つ。
【0040】
図示の実施形態では、レーザ治療装置21のベースユニット34が表面38に取り付けられ、XYZステージ32がベースユニット34に取り付けられている。そのような実施形態では、コントローラ44およびインターフェース回路46は、ベースユニット内に含まれ得る。他の実施形態では、XYZステージは、表面38に直接取り付けられている。
【0041】
図1に示すように、患者の眼を照射している間、光学ユニット30は、眼に向かって斜め上向きに向けられ、一方、眼は、光学ユニット、すなわち、眼の間の光路23に向かって斜め下向きに注視することが有利であり得る。光学ユニットは水平ではなく斜めになっている。例えば、光路23は、患者の上眼瞼および関連する解剖学的構造による患者の眼の閉塞を低減するために、5~20度の間の角度θに向けられ得る。必要に応じて、眼をさらに露出させるために、指、検鏡、または別のツールを使用して、片方または両方のまぶたを引っ込めることができる。図1に示す実施形態では、光路23の斜め方向は、XYZステージ32に取り付けられた楔40に光学ユニット30を取り付けることによって達成される。あるいは、またはさらに、患者の頭をヘッドレスト24で意図的に傾けることができる。
【0042】
システム20は、選択肢として、カメラ54によって取得された眼25の画像を表示し、ユーザがシステムの適切な位置合わせおよび動作を検証することを可能にするモニタ42を備える。モニタ42は、有線または無線通信インターフェースを介してコントローラ44に直接接続することができ、または標準的なコンピュータに属するプロセッサなどの外部プロセッサを介して間接的に接続することができる。
【0043】
図4および5に示されるシステム20および処置装置21の構成は、例としてのみここに示され、説明されている。本明細書で説明されるLLLT治療の原理は、代替的に、本明細書で定義される、適切なビームパラメータで、適切な位置で患者の眼を照射することができる他のシステム構成において、必要な変更を加えて実施され得る。そのようなすべての代替の実施は、本発明の範囲内であると見なされる。
【0044】
コントローラ44は通常、本明細書に記載の機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされ、システム20の他の要素と通信するための適切なインターフェースを有する汎用マイクロプロセッサを含む。ソフトウェアは、たとえば、ネットワーク上で、電子形式でコントローラにダウンロードすることができる。代替的または追加的に、ソフトウェアは、磁気、光学、または電子メモリなどの非一過性有形媒体に提供および/または格納され得る。このようなソフトウェアは、コントローラに提供されると、ここで説明するタスクを実行するように構成されたマシンまたは専用コンピュータを生成する。代替的または追加的に、コントローラ44の機能の少なくともいくつかは、例えば、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用して、専用またはプログラム可能なハードウェアロジックで実装され得る。
【0045】
(治療法)
図3は、本発明の一実施形態による、レーザ放射80による治療下にある眼の角膜輪部領域70内の構造の概略断面図である。(角膜輪部自体は、この領域のほぼ中央に位置する。)角膜輪部領域70は、角膜上皮幹細胞82を含む角膜上皮72を含む。レーザ放射80は、例えば、上記のように、システム20の光学ユニット30によって生成される。レーザパルスの数、パルスあたりのエネルギーと持続時間、および上皮72上のレーザビームの焦点サイズを含むレーザ放射80のビームパラメータは、上皮幹細胞82を選択的に刺激するように選択される。
【0046】
角膜上皮の下の角膜には、角膜実質幹細胞83を含む角膜実質78と、線維柱帯とシュレム管76(他の構造の中でも)および角膜内皮幹細胞(不図示)を備える角膜内皮74が含まれる。本実施形態では、レーザビームパラメータは、これらの内層へのレーザエネルギーの浸透を最小限に抑え、したがってこれらの層の幹細胞の刺激を回避するように選択される。この選択性は、例えば、レーザ照射81を角膜上皮幹細胞82の領域に斜め方向に衝突させるように向けることによって増強され得る。(本明細書および特許請求の範囲で使用される「斜め」という用語は、レーザビームが、眼の光軸、すなわち瞳孔の中心を通過して黄斑に到達する軸の方向に対して少なくとも5度の角度で眼に衝突することを意味する。いくつかの実施形態では、レーザビームは、10度以上の角度で眼に衝突する可能性がある。)
【0047】
しかしながら、代替の実施形態では、レーザビームパラメータは、例えば、角膜実質78および角膜内皮74の幹細胞を刺激するために、フルエンスおよび/または焦点スポットサイズを増加させることによって変更され得る。線維柱帯に影響を与えるのに十分なエネルギー投与量の増加はまた、角膜内皮幹細胞に対するレーザ放射の効果と併せて、上記の米国特許第10,702,416号に記載されているように、眼圧を低下させることができる。追加的または代替的に、レーザ放射85は、角膜上皮および角膜実質幹細胞を回避しながら、角膜内皮幹細胞を刺激するように選択された斜めの角度で、輪部領域70の端部で眼に衝突するように指向され得る。
【0048】
図4は、本発明の一実施形態による、輪部領域を通る非散乱レーザ放射80の伝播を示す、眼の輪部領域70の概略的で理想化された断面図である。レーザ放射80は、眼の前面の角膜上皮72上の標的位置にある入口スポット90に衝突する。前述のように、入口スポット90は通常直径1 mm以下であり、それよりも小さい場合がある。放射線は、眼の角膜84を通過し、出口スポット92で内皮74に衝突する。
【0049】
レーザ放射の強度は、主に辺縁組織内での放射の散乱により、入口スポット90と出口スポット92の間で急激に(通常は90%以上)低下する。これらの散乱特性により、上皮幹細胞の刺激は、内皮幹細胞の刺激よりも20倍も強くなる可能性がある(または、光の波長と特定の患者の眼の解剖学的構造によってはさらに強くなる可能性がある)。この格差効果は、放射線80を入口スポット90に鋭く集束させることによってさらに増強されうる。
【0050】
図5Aおよび5Bは、本発明の実施形態による、異なる焦点特性のレーザビーム80aおよび80bによる放射下での光フルエンスの分布を示す、眼の輪部領域70における組織の概略断面図である。ビーム80aは眼の前面に鋭く焦点を合わせているが、ビーム80bははるかに大きなスポットサイズを持っている。図の等高線は、ビームが組織内を伝播するときのフルエンスの相対的な減少を示している。ビーム80bのより大きなスポットサイズは、内皮に到達する相対的なフルエンスを増加させ、したがって、間質および内皮幹細胞などの内部構造のより大きな刺激を可能にする。
【0051】
いくつかの実施形態では、光学ユニット30(図1)は、1μs 未満のパルス持続時間およびパルスあたり5mJ未満のエネルギーを有するパルスを放出するように操作される。あるいは、パルスはさらに短く、例えば100ns未満であり得る。場合によっては、パルス幅が10ns未満または5ns未満であることが有利である。追加的または代替的に、パルスエネルギーはより小さく、例えば3mJ未満であり得る。通常、レーザ放射は、処置された各位置に0.4J/cm2 未満のフルエンスで衝突するように集束される。コントローラ44は、通常、レーザ48を作動させ、スキャナ50を制御して、眼の前面の治療位置のそれぞれに複数のパルスのシーケンスを適用する。通常、各位置での200パルスが十分な治療効果を提供し、治療を加速して付随的効果を低減するために100パルス以下が好ましい場合がある。同じ理由で、光学ユニット30によってそのような各場所に供給される累積エネルギーは、100mJ以下であり、70mJまたは40mJ未満でさえあり得る。
【0052】
他の実施形態では、光学ユニット30は、より低いピークパワーであるがより高い総エネルギーのパルスを眼の前面に印加することができる。そのような実施形態では、レーザ48は、1ミリ秒より長く500ミリ秒未満のパルス持続時間と、パルスあたり100mJ未満のエネルギーを有するパルスを放出する。あるいは、パルスはより短く、例えば100ミリ秒未満であり得る。場合によっては、パルス幅が50ミリ秒未満、場合によっては10ミリ秒未満または5ミリ秒未満であることが有利である。追加的または代替的に、パルスエネルギーはより小さく、例えば、50mJ未満またはおそらく5mJ未満であり得る。通常、レーザ放射は、30J/cm2 未満のフルエンスでそれぞれの処置位置に衝突するように集束される。コントローラ44は、通常、レーザ48を作動させ、スキャナ50を制御して、処置位置のそれぞれに複数のパルスのシーケンスを適用し、通常、各位置に2000パルス以下である。あるいは、前述の実施形態のように、治療を加速し、付随的効果を低減するために、各位置で500パルス以下、またはわずか200パルスでさえ好ましい場合がある。光学ユニット30によってそのような各場所に供給される累積エネルギーは、10J 以下であり、1J 未満または400mJ 未満でさえあり得る。
【0053】
(代替案)
図6および7は、本発明の代替の実施形態による、それぞれ眼科治療のためのシステム100および110の概略断面図である。これらのシステムは、図1および2に示されるシステム20に類似しているが、眼の光軸の方向に対して斜めの角度で眼の前面に衝突するようにレーザ放射を指向させることを容易にするための追加の光学部品を含む。レーザ放射は、上記のようにパルス化することも、連続波(CW)にすることもできる。前に説明したように、この種の斜角照射は、上皮、間質、または内皮幹細胞などの角膜の特定の層の幹細胞を選択的に刺激するのに役立つ。
【0054】
システム100において、リングミラー102は、眼の光軸の周りに配置され、光軸およびビームコンバイナ56を取り囲む。一実施形態では、リングミラー102は、単一の楕円形反射体を備える。あるいは、リングミラー102は、楕円体の光学性能をエミュレートするように配置された複数のミラーセグメント、例えばフラットセグメントを含み得る。いずれの場合でも、スキャナ50がレーザビームをリングミラー102に向けると、ビームは、光軸に対して斜めの角度で眼に向かって反射される。
【0055】
システム110において、リングミラー112は、同様に眼の光軸を取り囲むように、光学ユニットの外部に取り付けられている。リングミラー112は、例えば、本明細書に参照として取り入れられる、2020年3月9日出願のPCT特許出願PCT/IB2020/052020において錐台形状の導管が光学ユニットに取り付けられる方法で構築および取り付けられ得る。この場合も、スキャナ50がレーザビームをリングミラー112に向けると、ビームは、光軸に対して斜めの角度で眼に向かって反射される。
【0056】
図8は、本発明のさらに別の一実施形態による、眼科治療のための装置120の概略断面図である。この実施形態では、ゴニオスコープ122は、眼の角膜124と接触して保持される。レーザビーム126は、ゴニオスコープ122のサイドミラー表面128から反射され、したがって、角膜124の透明な領域を斜めに通過し、線維柱帯網74の近くの内皮組織に衝突するように指向される。この種の光学的アプローチが当技術分野で知られているレーザ線維柱帯形成術のいくつかの方法において使用される。
【0057】
しかしながら、本実施形態では、レーザパルスエネルギーは、効果的な線維柱帯形成術の閾値よりはるかに低い。例えば、レーザビーム126は、1μs 未満のパルス持続時間およびパルスあたり0.1mJ 未満のエネルギー、0.1J/cm2以下のフルエンスを有するパルスを含み得る。あるいは、パルスのパルス持続時間は1~500ミリ秒で、フルエンスは 10J/cm2 以下である場合がある。これらのレーザパルスは、内皮幹細胞を刺激する。レーザビームの大きな入射角および輪部領域70における組織の高い散乱損失のために、比較的少ないレーザエネルギーが角膜内皮から上皮および間質幹細胞に外向きに浸透する。この場合、内皮幹細胞は選択的に刺激される。
【0058】
上記の実施形態は例として引用され、本発明は、上記で特に示され、説明されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせおよびサブ組合せの両方、ならびに前述の説明を読んだときに当業者に想起される、先行技術に開示されていないその変形および修正を含む。
図1
図2
図3
図4
図5A-B】
図6-7】
図8
【外国語明細書】