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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014773
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】フォトレジスト剥離液
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20240125BHJP
   H05K 3/00 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
G03F7/42
H05K3/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112987
(22)【出願日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2022117267
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小林 紀
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 佳孝
【テーマコード(参考)】
2H196
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196EA02
2H196JA04
2H196LA03
(57)【要約】
【課題】ジメチルスルホキシドを含まず、特にネガ型レジストの剥離性に優れ、ポリイミドや金属等の接液部材にダメージを与えないフォトレジスト剥離液を提供する。
【解決手段】水酸化第4級アンモニウム、および、ヒドラジンまたはその誘導体を含むフォトレジスト剥離液に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化第4級アンモニウム、および、ヒドラジンまたはその誘導体を含むフォトレジスト剥離液。
【請求項2】
さらに、脂肪族多価アルコール、メトキシブタノール、グリコール、および、グリコールモノエーテルから選択される副溶剤を含む請求項1に記載のフォトレジスト剥離液。
【請求項3】
さらに、アルカノールアミン、エーテルアミン、アミド化合物、尿素化合物、グリコールモノエタノールアミン、グリコールモノエーテル、グリコールジエーテル、および、芳香族アルコールから選択される1種以上の主溶剤を含む請求項1または2に記載のフォトレジスト剥離液。
【請求項4】
水酸化第4級アンモニウムの含有量が0.5~5重量%である請求項1または2に記載のフォトレジスト剥離液。
【請求項5】
ヒドラジンまたはその誘導体の含有量が0.5~40重量%である請求項1または2に記載のフォトレジスト剥離液。
【請求項6】
副溶剤の含有量が2~20重量%である請求項2に記載のフォトレジスト剥離液。
【請求項7】
主溶剤の含有量が20~90重量%である請求項3に記載のフォトレジスト剥離液。
【請求項8】
さらに、水を含む請求項1または2に記載のフォトレジスト剥離液。
【請求項9】
ジメチルスルホキシドを含まない請求項1または2に記載のフォトレジスト剥離液。
【請求項10】
ネガ型レジストの剥離に用いるための、請求項1または2に記載のフォトレジスト剥離液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトレジスト剥離液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板等は微細な配線を施した電極構造を有しており、その製造工程でフォトレジストが使用されている。電極構造は、例えば、基板上に形成された銅等の導電性金属層上にフォトレジストを塗布し、これに露光、現像の処理を施してレジストパターンを形成する。このパターニングされたレジストをマスクとして電解めっきにより配線を形成した後、不要となったフォトレジストをフォトレジスト剥離液で除去して製造される。
【0003】
このようなフォトレジストの中でも、ドライフィルムレジスト(DFR)に使用される剥離剤は、剥離性能が優れるジメチルスルホキシド(DMSO)を溶剤として含有しているものが主流である。近年、ESG(Environment、Social、Governance)に対する需要の高まりからDMSOを含まない剥離液が求められている。
【0004】
特許文献1には、極性非プロトン性溶媒、アルカノールアミン、水酸化第4級アンモニウムを含む剥離液が開示されている。また、特許文献2には、ブチルカルビトール、水酸化第4級アンモニウム、ジグリコールアミン、腐食防止剤、水を含む剥離液が開示されている。いずれの剥離液もDMSOを含まないが、レジストの剥離性は充分ではなかった。そもそもドライフィルムレジストを溶解できる溶媒は少なく、たとえ溶解できたとしても、剥離速度が遅く、ポリイミドにダメージを与えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2016-500159号公報
【特許文献2】特開2019-191565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、DMSOを含まず、特にネガ型レジストの剥離性に優れたフォトレジスト剥離液を提供することを目的とする。さらには、ポリイミドや金属等の接液部材にダメージを与えないフォトレジスト剥離液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、DMSOを含まないレジスト剥離液について検討を進めたところ、水酸化第4級アンモニウムとともにヒドラジンを併用すると、特にネガ型レジスト、さらにはドライフィルムレジストの剥離性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明(1)は、水酸化第4級アンモニウム、および、ヒドラジンまたはその誘導体を含むフォトレジスト剥離液である。
【0009】
本発明(2)は、さらに、脂肪族多価アルコール、メトキシブタノール、グリコール、および、グリコールモノエーテルから選択される副溶剤を含む本発明(1)に記載のフォトレジスト剥離液である。
【0010】
本発明(3)は、さらに、アルカノールアミン、エーテルアミン、アミド化合物、尿素化合物、グリコールモノエタノールアミン、グリコールモノエーテル、グリコールジエーテル、および、芳香族アルコールから選択される1種以上の主溶剤を含む本発明(1)または(2)に記載のフォトレジスト剥離液である。
【0011】
本発明(4)は、水酸化第4級アンモニウムの含有量が0.5~5重量%である本発明(1)~(3)のいずれかに記載のフォトレジスト剥離液である。
【0012】
本発明(5)は、ヒドラジンまたはその誘導体の含有量が0.5~40重量%である本発明(1)~(4)のいずれかに記載のフォトレジスト剥離液である。
【0013】
本発明(6)は、副溶剤の含有量が2~20重量%である本発明(2)~(5)のいずれかに記載のフォトレジスト剥離液である。
【0014】
本発明(7)は、主溶剤の含有量が20~90重量%である本発明(3)~(6)のいずれかに記載のフォトレジスト剥離液である。
【0015】
本発明(8)は、さらに、水を含む本発明(1)~(7)のいずれかに記載のフォトレジスト剥離液である。
【0016】
本発明(9)は、ジメチルスルホキシドを含まない本発明(1)~(8)のいずれかに記載のフォトレジスト剥離液である。
【0017】
本発明(10)は、ネガ型レジストの剥離に用いるための、本発明(1)~(9)のいずれかに記載のフォトレジスト剥離液である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフォトレジスト剥離液は、水酸化第4級アンモニウムと、ヒドラジンまたはその誘導体を含むため、ジメチルスルホキシドを含まないにもかかわらず、特にネガ型レジスト、さらにはドライフィルムレジストの剥離性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のフォトレジスト剥離液は、水酸化第4級アンモニウム、および、ヒドラジンまたはその誘導体を含むことを特徴とする。本発明のフォトレジスト剥離液は、ESG(Environment、Social、Governance)の観点から、実質的にDMSOを含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、DMSOの含有量が好ましくは10重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0020】
<水酸化第4級アンモニウム>
水酸化第4級アンモニウムは、アルカリ成分であって、レジストを膨潤、剥離、溶解する成分である。水酸化第4級アンモニウムとしては、例えば一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
【0021】
【化1】
【0022】
一般式(1)中、R~Rは炭素数1~12のアルキル基、ヒドロキシ置換アルキル基又は芳香族置換アルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
水酸化第4級アンモニウムの具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化トリメチルエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化トリプロピル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化トリメチル(1-ヒドロキシプロピル)アンモニウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中では、レジスト剥離性の観点から、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチルエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムが好ましい。また、分子量が最も小さく、単位重量当たりのモル濃度が高くなり、効果的にレジストを剥離できることから、水酸化テトラメチルアンモニウムがより好ましい。
【0024】
本発明のフォトレジスト剥離液において、水酸化第4級アンモニウムの含有量は特に限定されないが、0.5~5重量%が好ましく、1~4重量%がより好ましく、2~3重量%が更に好ましい。水酸化第4級アンモニウムの含有量が0.5重量%未満であると、レジスト剥離性が低下することがあり、5重量%を超えると、金属腐食性が高くなることがある。
【0025】
<ヒドラジンまたはその誘導体>
ヒドラジンまたはその誘導体は、アルカリ成分であって、レジストの膨潤、剥離、溶解成分、エポキシ樹脂やポリイミド等の樹脂部材に対する防食剤、金属の腐食防止剤として機能する。ヒドラジン誘導体とはRNNR(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素、メチル、エチルまたはフェニルである)で示される化合物である。これらの具体例としては、ヒドラジンだけでなく、メチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、フェニルヒドラジンなどのヒドラジン誘導体が挙げられる。これらの化合物は水和物であってもよい。
【0026】
本発明のフォトレジスト剥離液において、ヒドラジンまたはその誘導体の含有量は特に限定されないが、0.5~40重量%が好ましく、2~10重量%がより好ましい。ヒドラジンまたはその誘導体の含有量が0.5重量%未満であると剥離性が不十分となることがあり、40重量%を超えると、保存安定性が不十分となることがある。
【0027】
<任意成分>
本発明のフォトレジスト剥離液は、前述した成分に加えて、他の任意成分を含有していてもよい。他の任意成分としては、副溶剤、主溶剤、水、アルキレンアミン、防食剤、界面活性剤、消泡剤等が挙げられる。
【0028】
<<副溶剤>>
副溶剤は水酸化第4級アンモニウムを溶解する成分である。副溶剤の具体例としては、グリセロール,トリメチロールプロパン等の脂肪族多価アルコール;1-ブトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のメトキシブタノール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-オクタンジオール等のグリコール;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールヘキシルエーテル等のグリコールモノエーテルが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2以上を混合して使用してもよい。
【0029】
本発明のフォトレジスト剥離液において、副溶剤の含有量は特に限定されないが、レジスト剥離性と保存安定性のバランスの観点から、1~40重量%が好ましく、2~20重量%がより好ましく、5~10重量%がさらに好ましい。1重量%未満では不溶物が発生することがあり、40重量%を超えると剥離性が不十分となることがある。
【0030】
<<主溶剤>>
主溶剤はレジストを溶解する成分である。主溶剤の具体例としては、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-プロポキシプロピルアミン、3-ヘキシルオキシプロピルアミンなどのエーテルアミン、ジメチルホルムアミド、モノメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどのアミド化合物、1,3―ジメチルー2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素などの尿素化合物、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールヘキシルエーテルなどのグリコールモノエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールジエーテル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの芳香族アルコール、モノエタノールアミン、ジグリコールアミン、N-メチルエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられる。これらの主溶剤は、単独で用いてもよく、2以上を混合して使用してもよい。
【0031】
これらの主溶剤のなかでも、アルカノールアミン、エーテルアミン、アミド化合物、尿素化合物、グリコールモノエタノールアミン、グリコールモノエーテル、グリコールジエーテル、および、芳香族アルコールから選択される1種以上が好ましい。さらにはレジスト剥離性の観点で、アルカノールアミンがより好ましく、モノエタノールアミン、ジグリコールアミンがさらに好ましい。なお、グリコールモノエーテルを使用する場合、他の主溶剤とも併用可能であり、他の副溶剤とも併用可能である。
【0032】
本発明のフォトレジスト剥離液において、主溶剤の含有量は特に限定されないが、20~90重量%が好ましく、60~90重量%がより好ましい。アルカノールアミンの含有量が20重量%未満であるとレジスト溶解性が不十分となることがあり、90重量%を超えると、剥離性が不十分となることがある。
【0033】
<<水>>
水は、水酸化第四級アンモニウムやヒドラジンまたはヒドラジン誘導体を溶解させるために配合することが好ましい。水を配合する場合、水の含有量は特に限定されないが、10重量%以下が好ましく、6重量%以下がより好ましい。水の含有量が10重量%を超えると、剥離性が不十分となることがある。
【0034】
<<アルキレンアミン>>
アルキレンアミンとしては、特に限定されず一般式(2)で表される化合物を用いることができる。
【0035】
【化2】

(一般式(2)中、m、nは1~5の整数を表す。R、Rは、互いにそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。R、Rが複数ある場合は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0036】
アルキレンアミンの具体例としては、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)等の一般式(3)で表されるエチレンアミン、プロピレンジアミン等が挙げられる。これらの中では、二酸化炭素の吸収性の観点から、一般式(3)で表されるエチレンアミンが好ましく、n=2以上のポリエチレンアミンがより好ましく、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンがさらに好ましい。これらのアルキレンアミンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【化3】

(一般式(3)中、nは1~5の整数を表す。)
【0037】
<<防食剤>>
防食剤としては、特に限定されないが、例えば、カテコール、ベンゾトリアゾール、アミノテトラゾール、5-アミノ-1-フェニルテトラゾール、5-アミノ-1-(1-ナフチル)テトラゾール、1-メチル-5-アミノテトラゾール、1,5-ジアミノテトラゾール、イミダゾール、インドール、プリン、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、ピロリン等の含窒素複素環化合物、マルトール、クレアチニン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
<<界面活性剤>>
界面活性剤としては、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のカチオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、コカミドプロピルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのなかでも、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルが好ましい。
【0039】
<<消泡剤>>
消泡剤としては、シリコーンオイル、脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0040】
本発明のフォトレジスト剥離液は、上述した各成分を常法により混合することで調製することができる。調製後は-5~40℃の温度で、濁り、凝固、沈殿を生じることなく保存することができる。
【0041】
本発明のフォトレジスト剥離液は、半導体基板やフラットパネルディスプレイ(FPD)基板等の製造工程において、電解めっき等の処理後に不要となったフォトレジストを剥離するために用いることができる。本発明のフォトレジスト剥離液は常温のほか、例えば30℃~80℃に加熱して使用することができる。剥離に要する時間は、フォトレジストの変質度合い等によるが、一般には、例えば30秒~90分間程度である。処理後、必要に応じて水洗、空気ブロー乾燥等を行うことができる。
【0042】
本発明のフォトレジスト剥離液を用いて、銅層又は銅合金層を有する金属配線基板のフォトレジストを剥離するには、フォトレジストを使用して銅層又は銅合金層を有する金属配線を基板上に形成する際に、銅層又は銅合金層の腐食を防止するために、不要となったフォトレジストを本発明のフォトレジスト剥離液を使用して剥離除去すればよい。より具体的には、基板を本発明のフォトレジスト剥離液中に、例えば室温~80℃、1~90分間浸漬する。このとき、必要によりフォトレジスト剥離液を攪拌するか、又は基板を振動してもよい。または、本発明のフォトレジスト剥離液を基板にシャワーやスプレー等で吹き付けることもできる。この際、ブラシ洗浄を併用することにより、レジスト剥離性を向上させることもできる。
【0043】
フォトレジストを溶解又は剥離した後、好ましくは純水で、溶解したレジストを含むフォトレジスト剥離液を洗浄除去し、レジストを基板上から除去する。その後、エアナイフ等で、基板上の液体を吹き飛ばし、基板を乾燥させる。こうすることにより、銅層又は銅合金層が過度に腐食して銅配線又は銅合金配線の線幅がやせてしまうことを防止でき、電解めっき等で形成された配線形状を損なうことなく、良好な金属配線が形成される。金属配線の多層態様としては、上層から順に、銅又は銅合金の1層配線、銅又は銅合金/上層とは異なる組成の銅又は銅合金の2層配線、銅又は銅合金/モリブテン、チタン等のキャップメタルの2層配線、モリブデン、チタン等のキャップメタル/銅又は銅合金/モリブテン、チタン等のキャップメタルの3層配線等が挙げられる。
【0044】
本発明のフォトレジスト剥離液は、ポジ型、ネガ型のいずれのフォトレジストの剥離にも使用することができるが、高いフォトレジスト剥離性を有することから、ネガ型レジストの剥離に好適に用いられる。また、ネガ型ドライフィルムレジストに好適に使用することができる。
【実施例0045】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
実施例1~16、比較例1~3
表1に示す重量比で各成分を混合し、フォトレジスト剥離液を得た。後述する方法により、得られたフォトレジスト剥離液のレジスト剥離性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0047】
<レジスト剥離性>
Si基板上にTi膜及び銅シード層をそれぞれスパッタリングで形成した上に、ネガ型ドライフィルムレジストを成膜し、UV露光及び現像によりフォトレジストのパターニングを行った後、電気めっきにて銅めっき層を形成した。この基板を80℃に調整したフォトレジスト剥離液に浸漬し、剥離処理をした。浸漬処理後、基板を水洗及び空気ブロー乾燥した。デジタルマイクロスコープを用いてドライフィルムレジストの剥離具合を確認し、以下の基準で評価した。
A:剥離時間が60分以内で、基板上に残渣がない
B:剥離時間が80分以内で、基板上に残渣がない
C:剥離時間が90分以上で、基板上に残渣がない
【0048】
【表1】
【0049】
比較例1および2は、ヒドラジンまたはその誘導体を含まないため、レジスト剥離性に劣っていた。また、比較例3は、水酸化第4級アンモニウムを含まないため、レジスト剥離性に劣っていた。一方、実施例1~16では、水酸化第4級アンモニウムと、ヒドラジンまたはその誘導体を含むため、レジスト剥離性に優れていた。