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特開2024-14775荷役動線の分析システムおよび分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014775
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】荷役動線の分析システムおよび分析方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20240101AFI20240125BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G06Q10/08
B65G1/137 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113090
(22)【出願日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2022117502
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514172954
【氏名又は名称】川田テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 悟
(72)【発明者】
【氏名】志村 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勇也
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 透
(72)【発明者】
【氏名】池田 一晃
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 幸史
(72)【発明者】
【氏名】青山 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】辻角 学
【テーマコード(参考)】
3F522
5L049
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522CC05
3F522CC06
3F522CC20
3F522FF02
3F522FF05
3F522FF06
3F522FF21
3F522FF35
3F522FF36
3F522FF37
3F522GG03
3F522GG05
3F522GG25
3F522GG26
3F522GG32
3F522GG34
3F522GG46
3F522GG47
3F522HH02
3F522HH23
3F522JJ02
3F522LL57
3F522LL61
3F522LL62
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】荷役における動線分析を簡易に導入および運用できるようにする。
【解決手段】保管区域に設けられて作業者および/または保管物移動手段の動きを撮像し、その画像データを出力するカメラと、前記画像データから、前記保管物の所定位置からの取り上げ動作と移動動作と他の所定位置への降ろし動作とをそれぞれ判別する、コンピュータにより構成される荷役判別手段と、前記判別した保管物の取り上げ動作と移動動作と降ろし動作とのうち少なくとも移動動作からなる実荷役動作とその実荷役動作に対応して設定された最適荷役動作との内容および/または所要時間を比較することで保管物の実荷役動作における動線を分析して評価し、その評価データを出力する、コンピュータにより構成される動線評価手段と、を具える荷役動線の分析システムである。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管区域に設けられて、所定保管物と、作業者および/または保管物移動手段とを撮像し、その画像データを出力するカメラと、
前記カメラが出力した前記画像データから、前記保管物の所定位置からの取り上げ動作と、取り上げた前記保管物を前記保管区域内で移動させる移動動作と、移動させた前記保管物の他の所定位置への降ろし動作とをそれぞれ判別する、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される荷役判別手段と、
前記荷役判別手段が判別した前記保管物の取り上げ動作と移動動作と降ろし動作とのうち少なくとも移動動作からなる実荷役動作と、その実荷役動作に対応して設定された最適荷役動作との内容および/または所要時間を比較することで、前記保管物の前記実荷役動作における動線を分析して評価し、その評価データを出力する、前記コンピュータと別個または共通の、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される動線評価手段と、
を具えることを特徴とする荷役動線の分析システム。
【請求項2】
前記保管区域は、倉庫内の所定区画および/または倉庫外の所定区画であることを特徴とする、請求項1記載の荷役動線の分析システム。
【請求項3】
前記保管物移動手段は、手押し式台車またはフォークリフトであることを特徴とする、請求項1記載の荷役動線の分析システム。
【請求項4】
前記荷役判別手段は、人工知能で前記画像データにおける保管物と、作業者および/または保管物移動手段との輪郭を深層学習することによって、作業者および/または保管物移動手段の、前記所定位置からの保管物の取り上げ動作と、前記取り上げた保管物の移動動作と、前記移動させた保管物の他の所定位置への降ろし動作とをそれぞれ判別することを特徴とする、請求項1記載の荷役動線の分析システム。
【請求項5】
前記動線評価手段は、前記最適荷役動作を少なくとも、前記保管区域内における、前記所定位置と、作業者および/または保管物移動手段のための通路との配置から、自ら計算して設定するか、もしくは別途に設定されて与えられ、それを用いることを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項記載の荷役動線の分析システム。
【請求項6】
前記動線評価手段は、前記実荷役動作と前記最適荷役動作との内容および/または所要時間を比較することに換えて、前記実荷役動作の動線密集度の高さおよび/または所要時間の長さから前記実荷役動作における動線を分析して評価し、その評価データを出力することを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項記載の荷役動線の分析システム。
【請求項7】
保管区域に設けられたカメラが、所定保管物と、作業者および/または保管物移動手段とを撮像して、その画像データを出力し、
前記カメラが出力した前記画像データから、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される荷役判別手段が、前記保管物の所定位置からの取り上げ動作と、取り上げた保管物を前記保管区域内で移動させる移動動作と、移動させた前記保管物の前記他の所定位置への降ろし動作とをそれぞれ判別し、
前記コンピュータと別個または共通の、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される動線評価手段が、前記荷役判別手段が判別した前記保管物の取り上げ動作と移動動作と降ろし動作とのうち少なくとも移動動作からなる実荷役動作と、その実荷役動作に対応して設定された最適荷役動作との内容および/または所要時間を比較することで、前記保管物の前記実荷役動作における動線を分析して評価し、その評価データを出力することを特徴とする荷役動線の分析方法。
【請求項8】
前記動線評価手段は、前記実荷役動作と前記最適荷役動作との内容および/または所要時間を比較することに換えて、前記実荷役動作の動線密集度の高さおよび/または所要時間の長さから前記実荷役動作における動線を分析して評価し、その評価データを出力することを特徴とする、請求項7記載の荷役動線の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫内や屋外等の保管区域における保管物の荷役の動線を分析するシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保管事業において、倉庫内や屋外等の保管区域における保管物の出し入れ作業(上げ降ろしおよび移動作業)である荷役の労働価値は、従来は感覚的に評価されており、それゆえ、荷役の営業収益は多くの保管事業者において近年はマイナスとなっている。従って、倉庫業者においては荷役の収益改善は課題の一つである。
【0003】
ところで、荷役における動線分析は荷役の現状を把握するために有効な方法であるが、従来の動線分析システムではビーコン等を使ったタグ方式のものが多用されている。
【0004】
例えば特許文献1記載のシステムでは、携帯端末を所持する作業者のフォークリフトへの搭乗を検出して弱い搭乗ビーコンをその携帯端末に送信する搭乗ビーコン送信機と、フォークリフトへの荷物の積載を検出して弱い積載ビーコンをその携帯端末に送信する積載センサと、倉庫内に分散配置されてその作業者の携帯端末からの強い位置ビーコンを受信し、その位置ビーコンから三角測量の原理等で作業者の位置を検出するとともにフォークリフトへの作業者の搭乗および荷物の積載を確認する多数の位置ビーコン受信機と、それらの位置ビーコン受信機からの情報に基づき動線分析を行うコンピュータと、を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-019628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1記載のシステムでは、分析対象のフォークリフトに搭乗ビーコン送信機と積載センサとを搭載し、それら搭乗ビーコン送信機や積載センサでの検出状態と作業者自身の位置とを位置ビーコンで示す携帯端末を作業者自身が所持し、さらにその携帯端末からの位置ビーコンを受信する多数の位置ビーコン受信機を倉庫内に配置し、加えてそれらの位置ビーコン受信機からの情報に基づき動線分析を行うコンピュータを設置する必要があり、導入や運用の手間およびコスト等の面で高いハードルがあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、荷役における動線を分析するシステムの導入および運用のハードルを下げることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を有利に解決する本発明の荷役動線の分析システムは、
保管区域に設けられて、所定保管物と、作業者および/または保管物移動手段とを撮像し、その画像データを出力するカメラと、
前記カメラが出力した前記画像データから、前記保管物の所定位置からの取り上げ動作と、取り上げた前記保管物を前記保管区域内で移動させる移動動作と、移動させた前記保管物の他の所定位置への降ろし動作とをそれぞれ判別する、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される荷役判別手段と、
前記荷役判別手段が判別した前記保管物の取り上げ動作と移動動作と降ろし動作とのうち少なくとも移動動作からなる実荷役動作と、その実荷役動作に対応して設定された最適荷役動作との内容および/または所要時間を比較することで、前記保管物の前記実荷役動作における動線を分析して評価し、その評価データを出力する、前記コンピュータと別個または共通の、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される動線評価手段と、
を具えることを特徴としている。
【0009】
また、上記課題を有利に解決する本発明の荷役動線の分析方法は、
保管区域に設けられたカメラが、所定保管物と、作業者および/または保管物移動手段とを撮像して、その画像データを出力し、
前記カメラが出力した前記画像データから、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される荷役判別手段が、前記保管物の所定位置からの取り上げ動作と、取り上げた保管物を前記保管区域内で移動させる移動動作と、移動させた前記保管物の前記他の所定位置への降ろし動作とをそれぞれ判別し、
前記コンピュータと別個または共通の、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される動線評価手段が、前記荷役判別手段が判別した前記保管物の取り上げ動作と移動動作と降ろし動作とのうち少なくとも移動動作からなる実荷役動作と、その実荷役動作に対応して設定された最適荷役動作との内容および/または所要時間を比較することで、前記保管物の前記実荷役動作における動線を分析して評価し、その評価データを出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の荷役動線の分析システムおよび分析方法にあっては、倉庫内や屋外等に設定された保管区域に設けられたカメラが、所定保管物と、作業者および/または、手押し式台車や動力式荷物運搬車等の保管物移動手段とを動画または複数枚の静止画で撮像してその画像データを出力し、前記カメラに有線あるいは無線で接続された、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される荷役判別手段が、前記カメラが出力した前記画像データから、所定位置からの保管物の取り上げ動作と、取り上げた保管物を移動させる移動動作と、移動させた保管物の他の所定位置への降ろし動作とをそれぞれ判別する。
【0011】
そして、前記荷役判別手段に有線あるいは無線で接続された、前記コンピュータと別個または共通の、所定のプログラムを実行するコンピュータにより構成される動線評価手段が、荷役判別手段が判別した保管物の取り上げ動作と移動動作と降ろし動作とのうち少なくとも移動動作からなる実荷役動作と、その実荷役動作に対応して設定された最適荷役動作との内容および/または所要時間を比較することで、その実荷役動作における動線を分析して評価し、その評価データを出力して、画面表示や集計等に利用可能とする。
【0012】
ここで、本発明におけるコンピュータは、そのコンピュータと一緒に通信ネットワークを構成するONU(光終端)やモデム(有線終端)、ルータ(中継装置)等の周辺機器を含んでもよく、また通常のコンピュータより高機能のCPU(中央処理ユニット)を持つサーバであってもよい。
【0013】
従って、本発明の荷役動線の分析システムおよび分析方法によれば、荷役における動線分析を簡易に導入および運用することができ、その動線分析によって動線の現状を的確に把握して作業者や保管物移動手段による荷役の動線を効率的なものに改善し、あるいはリフタ付きの搬送ロボットや自律走行台車等に実行させる荷役の動線に活用し、倉庫業者等における荷役の収益改善に役立てることができる。
【0014】
なお、本発明の荷役動線の分析システムおよび分析方法においては、前記保管区域は、倉庫内の所定区画および/または倉庫外の所定区画であってもよい。また、前記保管物移動手段の動力式荷物運搬車は、作業者が運転するフォークリフトや電動式台車等であってもよい。
【0015】
さらに、本発明の荷役動線の分析システムおよび分析方法においては、前記荷役判別手段は、AI(人工知能)で前記画像データにおける保管物と、作業者および/または保管物移動手段との輪郭を深層学習することによって、作業者および/または保管物移動手段の、前記所定位置からの保管物の取り上げ動作と、前記取り上げた保管物の移動動作と、前記移動させた保管物の他の所定位置への降ろし動作とをそれぞれ判別してもよい。
【0016】
そして、本発明の荷役動線の分析システムおよび分析方法においては、前記動線評価手段は、前記最適荷役動作を少なくとも、前記保管区域内における、前記所定位置と、作業者および/または保管物移動手段のための通路との配置から、自ら計算して設定するか、もしくは別途に設定されて与えられてもよい。
【0017】
さらに、本発明の荷役動線の分析システムおよび分析方法においては、前記動線評価手段は、前記実荷役動作と前記最適荷役動作との内容および/または所要時間を比較することに換えて、前記実荷役動作の動線密集度の高さおよび/または所要時間の長さから前記実荷役動作における動線を分析して評価し、その評価データを出力することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法により分析する荷役の一例を示す説明図である。
図2】上記実施形態の荷役動線の分析システムの概略構成を機能ブロックで示すブロック線図である。
図3】上記実施形態の荷役動線の分析システムにおける荷役判別手段および動線評価手段としてのサーバが実行する処理を詳細に示すブロック線図である。
図4】本発明の他の一実施形態の荷役動線の分析システムにおける保管区域での作業者および保管物移動手段の通路並びにカメラの配置を例示する平面図である。
図5】上記実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法における荷役判別手段および動線評価手段としてのサーバが実行する処理を詳細に示すブロック線図である。
図6】上記実施形態の荷役動線の分析システムにおける動線密集度からの荷役動線の分析例を示す説明図である。
図7】上記実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法における高段ピックアップの回数分析例を示す説明図である。
図8】上記実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法における高段ピックアップの対処時間分析例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の荷役動線の分析システムおよび分析方法の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、本発明の一実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法により分析する荷役の一例を示す説明図である。また、図2は、その実施形態の荷役動線の分析システムの概略構成を機能ブロックで示すブロック線図である。
【0020】
図1に例示する荷役では先ず、倉庫内の所定区画に設定された保管区域1に平置きあるいは棚置き等の状態で多数保管された保管物のうち出荷(ピッキング)を指示された所定保管物C1~C4をそれぞれ保管している所定ピッキング位置3~6に、事務室等の所定待機場所2で待機する作業者Wが、保管物移動手段としての手押し式台車Dを押し、あるいは動力式荷物運搬車としてのフォークリフトFに搭乗して移動し、次いで、それら所定保管物C1~C4を所定ピッキング位置3~6で、人手で取り上げて手押し式台車D上に積載し、あるいはフォークリフトFのフォークで取り上げてフォークリフトF上に積載する。
【0021】
なお、所定保管物C1~C4を取り上げる際の実際の順序は、従来は作業者Wが判断しており、所定ピッキング位置3,4,5,6の順とは限らないので、作業者Wは、所定待機場所2から最初に保管物を取り上げる所定ピッキング位置に移動し、その後、所定ピッキング位置を辿り、最後に保管物を取り上げる所定ピッキング位置から所定出荷場所7まで移動することになる。
【0022】
次いで作業者Wは、それらの保管物C1~C4を手押し式台車DあるいはフォークリフトFで所定ピッキング位置3~6から所定出荷場所7まで移動させ、その後、それらの所定保管物C1~C4を所定出荷場所7で手押し式台車DあるいはフォークリフトFから下ろし、トラックTに積み替えている。この荷役の際に待機場所2から所定ピッキング位置3~6を経て所定出荷場所7に至る、図1中矢印で示す作業者Wの移動経路が、この荷役における動線TLである。
【0023】
かかる荷役における動線TLを分析するこの実施形態の荷役動線の分析システムは、図2に機能ブロックで示すように、図2中左側に示す保管区域1内の、全ての保管物が保管された領域と、作業者W並びに手押し式台車DおよびフォークリフトFの待機場所と、保管物の出荷場所7との天井下や梁や棚上等に複数台のビデオカメラ8を分散させて設置し、それらのビデオカメラ8の撮像範囲を組み合わせると保管区域1内の各部が少なくとも1つの上下方向および/または左右方向から撮像できるようにして、それらのビデオカメラ8で、動画および/または時系列で連続する複数枚の静止画により、上記全ての保管物が保管された領域と、作業者W並びに手押し式台車DおよびフォークリフトFの待機場所と、保管物の出荷場所7とを実質的に常時撮像する。
【0024】
そして、それらのビデオカメラ8は、動画および/または静止画での撮像データである動画データ8aおよび/または静止画データ8bを、中継装置9aを介してローカルエリアネットワーク(LAN)やインターネット等の通信ネットワーク9に乗せて、図2中右側に示す、上記保管区域1とは別の若しくは同一の保管区域1内、または上記保管区域1がある倉庫とは別の施設内、またはインターネットのクラウド上に設置された1台、または上記保管区域1を分割した複数の区画にそれぞれ割り当てられた複数台のサーバ10に送り、上記1台または複数台のサーバ10は、それらの動画データ8aおよび/または静止画データ8bをハードディスクやSSD等の記憶媒体に一旦保存する。
【0025】
次いで上記1台または複数台のサーバ10は、対象検出処理部10aで、上記記憶媒体からそれらの動画データ8aおよび/または静止画データ8bを所定時間分あるいは所定日数分読み出して、それらの動画データ8aおよび/または静止画データ8bから検出対象である作業者W並びに手押し式台車DおよびフォークリフトFを、そのサーバ10にあらかじめインストールされたAIソフトウェアが実行する例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)による既知の輪郭抽出処理で識別して検出し、トラッキング処理部10bで、上記の動画データ8aおよび/または静止画データ8bから、検出した作業者Wおよび作業者Wが使用している手押し式台車DまたはフォークリフトFの、上記所定待機場所2から所定ピッキング位置3~6までの区間、所定ピッキング位置3~6間の区間および、所定ピッキング位置3~6から所定出荷場所7までの区間の実際の移動を、例えば斜路やエレベータ等での移動を含めて3次元的にトラッキング(追跡)して、各区間の実際の3次元的な動線TLと実際の移動時間とを含む実際の荷役動作を求める。
【0026】
また、上記1台または、複数台のうちの所定の1台のサーバ10は、効率評価部10cで、保管区域1内における所定待機場所2と、所定ピッキング位置3~6の各々と、所定出荷場所7と、作業者W並びに手押し式台車DまたはフォークリフトFのための通路との配置から、指示された出荷(ピッキング)を最も効率良く行える最適荷役動作を、上記AIソフトウェアが実行する例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による既知の最適経路探索手法で自ら計算して設定し、その最適荷役動作と上記実際の荷役動作とを対比して実際の動線TLの効率を求め、それをモニタ等で出力する。
【0027】
図3は、上記実施形態の荷役動線の分析システムにおける荷役判別手段および動線評価手段として上記1台または複数台のサーバ10が実行する処理を詳細に示すブロック線図であり、上記1台または複数台のサーバ10は、処理P1で、そのサーバ10に対応するビデオカメラ8から動画データ8aおよび/または静止画データ8bである画像データを受信し、処理P2で、その受信した画像データを保存して受信情報を蓄積する。この実施形態の荷役動線の分析システムではこのサーバ10に蓄積した受信情報に、例えばこの分析システムの管理者が、画像データに写っている被写体の種類・動作を示す、例えば複数人の作業者の各々の名前、保管物収納用段ボール箱の各サイズ、各作業者が保管物を取り上げるピッキング動作、各作業者が保管物を降ろす降ろし動作、手押し式台車、フォークリフト等のタグをつけておく。
【0028】
そして上記1台または複数台のサーバ10は、処理P3で、今回出荷(ピッキング)を指示された所定保管物C1~C4並びにその出荷作業を行う所定作業者Wおよび所定保管物の移動に用いる保管物移動手段を検出対象として、今まで蓄積した受信情報から、例えばこのサーバ10にあらかじめインストールされた上記AIプログラムが実行する深層学習(ディープラーニング)としての畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により上記タグを手掛かりに、互いに特徴が深く関連する情報としてあらかじめ抽出しておいた検出対象の種類・動作の特徴情報、例えば出荷(ピッキング)を指示された所定保管物C1~C4の種類を示す例えば保管物収納用段ボール箱の輪郭のサイズ等の特徴情報と、画像中の複数人のうちの所定作業者Wの輪郭および所定作業者Wが保管物を取り上げるピッキング動作および保管物を降ろす降ろし動作の輪郭等の作業者Wの特徴情報と、作業者Wが保管物の移動に用いる例えば手押し式台車Dや動力式荷物運搬車としてのフォークリフトF等の種類およびその動作を示す輪郭等の保管物移動手段の特徴情報を読み込む。
【0029】
さらに上記1台または複数台のサーバ10は、処理P4で、その読み込んだ検出対象の種類・動作の特徴情報を用いて例えばパターンマッチングにより、今回の出荷作業の画像中の検出対象の種類および動作、特に所定ピッキング位置3~6で所定作業者Wが所定保管物を取り上げるピッキング動作および所定保管物を降ろす降ろし動作を自動的に検出し、次いで処理P5で、その検出した情報から、今回の出荷作業の各画像中での所定作業者Wおよびその所定作業者Wが使用している手押し式台車DまたはフォークリフトFのピッキング動作および降ろし動作並びに移動における位置情報を取得し、次いで処理P6で、今回の出荷作業の各画像中で取得した所定作業者Wおよびその所定作業者Wが使用している手押し式台車DまたはフォークリフトFの位置情報から、例えばそれらの位置情報を複数画像間で繋ぎ合わせることで、今回の出荷作業における所定作業者Wおよびその所定作業者Wが使用している手押し式台車DまたはフォークリフトFの移動位置を追跡するトラッキング処理を行う。
【0030】
次いで、上記複数台のうちの所定の1台のサーバ10が、それら複数台のサーバ10が保管区域1を分割した複数の区画の各々について行ったトラッキング処理を保管区域1全体で繋ぎ合わせることで保管区域1内全体における所定作業者Wおよびその所定作業者Wが使用している手押し式台車DまたはフォークリフトFの実際の移動経路すなわち動線TLと所定ピッキング位置3~6とを求めて、それらを処理P7でモニタ11に表示し、あるいは上記1台のサーバ10が、上記トラッキング処理を保管区域1全体について行うことで保管区域1内全体における所定作業者Wおよびその所定作業者Wが使用している手押し式台車DまたはフォークリフトFの実際の移動経路すなわち動線TLと所定ピッキング位置3~6とを求めて、それらを処理P7でモニタ11に表示する。
【0031】
さらにこの実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法では、例えば上記倉庫内やクラウド上に設けられた1台の、または複数台のうちの所定の1台のサーバ10は、その倉庫内等の保管区域1の、平置きあるいは棚置き等の状態で多数の保管物をそれぞれ保管する保管場所と、待機場所2および出荷場所7と、それらの間での所定作業者Wおよびその所定作業者Wが使用している手押し式台車DまたはフォークリフトFの移動の通路とのレイアウト(配置)情報を処理P8で与えられ、処理P9で、そのレイアウト情報と今回の所定ピッキング位置3~6とから、最適荷役動作としての、所定作業者Wおよびその所定作業者Wが使用している手押し式台車DまたはフォークリフトFの移動の最短ルート(最短距離および/または最短所要時間の動線TL)を計算で求めて、その最短ルートの所要時間および/または内容(作業効率)を実荷役動作としての実ルート(実際の動線TL)の所要時間および/または内容(作業効率)と比較し、処理P10で、その最短ルートと実ルートとの荷役の所要時間および/または内容(作業効率)の比較情報を、処理P7での表示と一緒にあるいは選択的にモニタ11に表示する。
【0032】
図4は、本発明の他の一実施形態の荷役動線の分析システムにおける保管区域での作業者および保管物移動手段の通路並びにカメラの配置を例示する平面図である。この実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法は、倉庫の二階フロアでのフォークリフトおよび作業者の動線分析を行うもので、この倉庫は、6本の柱CMを避けつつ、棚列2B01~2B10とそれらに連なる棚列2B18~2B24と壁際の棚2B29~2B32とを備えており、各棚列および壁際の各棚には高段と低段の置き場があり、高段の置き場も低段の置き場もそれぞれ荷物を二段ずつ置けるようになっている。
【0033】
この二階フロアでのフォークリフトおよび作業者の動線分析を行うこの実施形態の荷役動線の分析システムは、図2に示す先の実施形態の分析システムとほぼ同様の構成を備えており、この実施形態では、図4に示すように、棚列2B05およびそれに連なる棚列2B19と棚列2B06およびそれに連なる棚列2B20との間の通路PW1と、棚列2B07およびそれに連なる棚列2B21と棚列2B08およびそれに連なる棚列2B22との間の通路PW2と、棚列2B09およびそれに連なる棚列2B23と棚列2B10およびそれに連なる棚列2B24との間の通路PW3と、棚2B29~2B32側と反対の側の通路PW1~3の端部同士を繋ぐ通路PW4とのそれぞれに向けて、それらの通路全体を俯瞰するように、動画を撮影可能なカメラ8A~8Dを天井から吊り下げて設置している。
【0034】
そしてカメラ8A~8Dは、各々電源Pから電源供給されるとともに、NAS(ネットワークデータストレージ)を持つモバイルWi-Fi(登録商標)ルータ9aに、二階フロアに分散配置したWi-Fi中継器9bを介して無線の通信ネットワーク9で接続され、そのモバイルWi-Fiルータ9aは、図2に示す先の実施形態の分析システムと同様に、カメラ8A~8Dで撮影してNASに録画した動画の画像データを所定時間ごとにサーバ10に送る。
【0035】
図5は、この実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法における荷役判別手段および動線評価手段としてのサーバ10が実行する処理を詳細に示すブロック線図であり、この実施形態では、サーバ10は、処理P1で受信した画像データから処理P2~P5で、先の実施形態におけると同様にして検出対象としてのフォークリフトおよび作業者の画像中の位置等の情報を取得し、次いで処理P6で、カメラ8A~8Dで撮影した通路PW1~3の各々でのフォークリフトおよび作業者の画像の大きさおよび画像中の位置と、各通路内でのフォークリフトおよび作業者の実際の位置との対応関係から、通路PW1~3の各々でのフォークリフトおよび作業者の実際の移動位置を追跡するトラッキング処理を行う。
【0036】
次いでサーバ10は、通路PW1~3の各々での、フォークリフトおよび作業者の実際の移動経路すなわち動線と、フォークリフトのフォークの昇降位置と、荷物のピッキング位置とを、フォークリフトおよび作業者の動作とその動作の位置とから求めて、特に所定期間内の動線密集度が高かった場合について、処理P7でモニタ11に表示する。
【0037】
サーバ10はまた、二階フロアにおける棚列2B01~2B10とそれらに連なる棚列2B18~2B24と壁際の棚2B29~2B32と、ピッキング位置に対応する棚列および棚の間での作業者およびフォークリフトの移動のための通路PW1~3とのレイアウト(配置)情報を処理P8で与えられ、処理P9で、そのレイアウト情報と通路PW1~3の各々での、フォークリフトおよび作業者の、実際の移動経路すなわち動線の起点から終点までの移動に要した時間である移動時間を計算し、次いで処理P12でフォーク昇降回数とピッキング回数と移動時間とを集計して、特に移動の所要時間が長かった場合について、処理P12でモニタ11に表示する。
【0038】
図6は、上記実施形態の荷役動線の分析システムにおける動線密集度からの荷役動線の分析例を示す説明図である。この分析例では、通路PW1~3の各々での、フォークリフトおよび作業者の実際の移動経路すなわち動線と、フォークの昇降位置(□印)と、荷物のピッキング位置(○印)とを、フォークリフトおよび作業者の動作とその動作を行った位置とから求めて、所定の日の所定期間内の特に動線密集度が高かった時刻および位置(11時~12時では通路PW1,2の破線枠内、13時30分~14時40分では通路PW2,3の破線枠内、14時40分~16時20分では通路PW1,2の破線枠内)について、高段からのピッキング(ピックアップ)作業が集中したことを確認している。
【0039】
図7は、上記実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法における高段ピックアップの回数分析例を示す説明図である。この分析例では、図6に示す所定の日の所定期間内のピッキング作業を集計しており、これによれば、11時~16時20の集計の結果、カメラ1~3で45回のピッキング作業が発生し、そのうちで高段からのピッキング作業(高段へ戻す)が19回(42%)あったことが判明した。なお、図7中のカメラ1は図6中のカメラ8A、カメラ2はカメラ8B、カメラ3はカメラ8Cに対応する。
【0040】
この結果を通常の作業時間である9時~12時および13時30分~17時に拡張すると、全回数45回が76回に、高段ピッキング19回が32回に増え、さらに分析対象を二階フロア全域に拡張すると約7.7倍の広さになるので、高段ピッキング32回が246回になる。
【0041】
図8は、上記実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法における高段ピックアップの対処時間分析例を示す説明図である。この分析例に示すように、低段からのピッキング(ピックアップ)は約30秒で済むのに対し、高段からのピッキング(ピックアップ)は約3分30秒を要し、1回につき低段よりも約3分長くかかっている。これを1日に拡張すると、3分/回×246回/(二階・1日)=約12時間/二階・1日となる。従って、全て低段からのピッキングとすれば、二階フロアでの作業を1日に約12時間短縮できる可能性があることが判明した。
【0042】
さらに、図示しないが上記実施形態の荷役動線の分析システムおよび分析方法では、ピッキング作業の多い(動線密集度が高い)時間帯および通路の上位1位から例えば20位までと、所要時間が長い動線の上位1位から例えば20位までとをそれぞれ評価して、作業効率の低下原因を検討してもよい。
【0043】
なお、上記実施形態は二階フロアでのフォークリフトおよび作業者の荷役動線の分析に適用したものであるが、同倉庫の三階フロアにおける手押し式台車Dおよび作業者Wの荷役動線の分析にも同様にして適用することができる。
【0044】
以上、図示例の実施形態に基づき説明したが、この発明は上述の実施形態に限られるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、先の実施形態では所定ピッキング位置での所定保管物の取り上げに要する時間を考慮していないが、保管場所が棚等の高い位置にある場合にはフォークリフトでの取り上げが作業者の人手での取り上げより短時間で済み、保管場所が平置きの場合には手押し式台車への人手での取り上げの方がフォークリフトでの取り上げより短時間で済む場合があること等を作業効率の要素に含めて動線の分析を行い、保管物移動手段を選択してもよい。
【0045】
また例えば、先の実施形態では所定作業者等の位置情報として3次元情報を用いているが、それを後の実施形態におけるように水平面内での2次元情報に替えることで、トラッキング処理を簡易にして分析時間を短縮するようにしてもよい。
【0046】
さらに例えば、先の実施形態ではカメラ8は動画および/または静止画の撮像と画像データの送信のみを行っているが、サーバ10の処理の一部も併せて実行してもよく、またカメラ8とサーバ10の代わりに、それらの機能を併せて持つ例えばカメラ付きのラップトップ型コンピュータを用いてもよい。
【0047】
さらに例えば、先の実施形態では分析システムの動線評価手段を構成するサーバ10が、処理P9で最適荷役動作を自ら計算して設定しているが、それに替えて例えば上記複数台のサーバ10のうちの他のサーバ10、あるいはクラウド上の他のサーバが別途に設定してそこに与えたものを用いてもよい。また、動力式荷物運搬車として上述の実施形態ではフォークリフトを用いているが、それに替えてあるいは加えて電動式台車を用いてもよい。
【0048】
さらに例えば、後の実施形態では動線密集度の高さおよび所要時間の長さから実荷役動作における動線を分析して評価しているが、これに換えて動線密集度の高さまたは所要時間の長さから実荷役動作における動線を分析して評価してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
かくしてこの発明の本発明の荷役動線の分析システムおよび分析方法によれば、荷役における動線分析を簡易に導入および運用することができ、その動線分析によって動線の現状を的確に把握して作業者や保管物移動手段による荷役の動線を効率的なものに改善し、あるいはリフタ付きの搬送ロボットや自律走行台車等に実行させる荷役の動線に活用し、倉庫業者等における荷役の収益改善に役立てることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 保管区域
2 待機場所
3~6 所定ピッキング位置
7 出荷場所
8,8A,8B,8C カメラ
8a 動画データ
8b 静止画データ
9 通信ネットワーク
9a 中継装置(モバイルWi-Fiルータ)
9b Wi-Fi中継器
10 サーバ
11 モニタ
C1~C4 所定保管物
D 手押し式台車
F フォークリフト
T トラック
TL 動線
W 所定作業者(作業者)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8