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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147754
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】送出管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/18 20060101AFI20241008BHJP
   G01F 11/04 20060101ALI20241008BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20241008BHJP
   B60P 3/16 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01F3/18
G01F11/04
E04G21/02 103Z
B60P3/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024116012
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2020058650の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神代 泰道
(72)【発明者】
【氏名】堀田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】都築 正則
(57)【要約】
【課題】実際の送出速度や送出量を正確に管理する。
【解決手段】セメント組成物を送出するためのシリンダー及びピストンを備えたポンプ車を用いて前記セメント組成物を送出する際の送出管理方法であって、前記シリンダーにおける前記ピストンの往復動作をセンサーで検出し、前記センサーの検出結果と、前記シリンダーの容量と、前記セメント組成物のスランプに応じた補正値と、に基づいて、実際に前記ポンプ車から送出される前記セメント組成物の送出速度又は送出量を求める。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント組成物を送出するためのシリンダー及びピストンを備えたポンプ車を用いて前記セメント組成物を送出する際の送出管理方法であって、
前記シリンダーにおける前記ピストンの往復動作をセンサーで検出し、
前記センサーの検出結果と、前記シリンダーの容量と、前記セメント組成物のスランプに応じた補正値と、に基づいて、実際に前記ポンプ車から送出される前記セメント組成物の送出速度又は送出量を求め、
前記セメント組成物は、普通コンクリートであって、スランプ8cm~21cmに対して、前記補正値は、0.65~0.90である、
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項2】
セメント組成物を送出するためのシリンダー及びピストンを備えたポンプ車を用いて前記セメント組成物を送出する際の送出管理方法であって、
前記シリンダーにおける前記ピストンの往復動作をセンサーで検出し、
前記センサーの検出結果と、前記シリンダーの容量と、前記セメント組成物のスランプに応じた補正値と、に基づいて、実際に前記ポンプ車から送出される前記セメント組成物の送出速度又は送出量を求め、
前記セメント組成物は、軽量コンクリートであって、スランプ12cm~21cmに対して、前記補正値は、0.50~0.85である、
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項3】
セメント組成物を送出するためのシリンダー及びピストンを備えたポンプ車を用いて前記セメント組成物を送出する際の送出管理方法であって、
前記シリンダーにおける前記ピストンの往復動作をセンサーで検出し、
前記センサーの検出結果と、前記シリンダーの容量と、前記セメント組成物のスランプに応じた補正値と、に基づいて、実際に前記ポンプ車から送出される前記セメント組成物の送出速度又は送出量を求め、
前記セメント組成物は、高流動・高強度コンクリートであって、スランプフロー55cm~65cmに対して、前記補正値は、0.85~0.90である、
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の送出管理方法であって、
前記センサーによって前記ピストンの往復速度を検出し、
前記往復速度と、前記シリンダーの容量と、前記補正値と、に基づいて、前記送出速度を求める
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の送出管理方法であって、
前記センサーによって前記ピストンの1ストロークの所要時間を検出し、
前記所要時間と、前記シリンダーの容量と、前記補正値と、に基づいて、前記送出速度を求める、
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の送出管理方法であって、
前記送出速度を、前記セメント組成物の打設部位の断面積で除算して打設高さ速度を求める、
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の送出管理方法であって、
前記センサーによって前記ピストンの往復回数を検出し、
前記往復回数の累計と、前記シリンダーの容量と、前記補正値と、に基づいて、前記送出量を求める、
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項3又は請求項7に記載の送出管理方法であって、
前記送出量を、前記セメント組成物の打設部位の断面積で除算して打設高さを求める
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の送出管理方法であって、
前記セメント組成物は、CFT柱の鋼管の内部に打設される、
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れかに記載の送出管理方法であって、
前記センサーは、前記ピストンの往復動作による前記ポンプ車の振動を検出するものである
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9の何れかに記載の送出管理方法であって、
前記センサーは、前記ピストンの往復動作に伴って発生する音を検出するものである
ことを特徴とする送出管理方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項9の何れかに記載の送出管理方法であって、
前記センサーは、前記シリンダーにおける前記ピストンのストロークエンドを検出するものである、
ことを特徴とする送出管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物の送出管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート(セメント組成物の一例)の打設方法として、シリンダー及びピストンを備えたポンプ車を用いたものが知られている。この方法では、ポンプ車のシリンダーに充填されたコンクリートを、ポンプで発生した駆動力でピストンを移動させることにより、シリンダーから押し出す。シリンダーから押し出されたコンクリートは、供給管を通って打設箇所へと送出される。また、例えば特許文献1には、ポンプ車の圧送経路などにセンサーを配置し、当該センサーによって、コンクリートの圧送性能を評価するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-9596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなシステムを用いても、実際にポンプ車から送出されるコンクリートの送出速度や送出量を正確に管理できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、コンクリートの硬さ(フレッシュ性状)によって、シリンダーにコンクリートが流入する度合いが異なることも考慮して、実際の送出速度や送出量を正確に管理することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、セメント組成物を送出するためのシリンダー及びピストンを備えたポンプ車を用いて前記セメント組成物を送出する際の送出管理方法であって、前記シリンダーにおける前記ピストンの往復動作をセンサーで検出し、前記センサーの検出結果と、前記シリンダーの容量と、前記セメント組成物のスランプに応じた補正値と、に基づいて、実際に前記ポンプ車から送出される前記セメント組成物の送出速度又は送出量を求め、前記セメント組成物は、普通コンクリートであって、スランプ8cm~21cmに対して、前記補正値は、0.65~0.90である、ことを特徴とする送出管理方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実際の送出速度や送出量を正確に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】コンクリートの施工方法を示す概略説明図である。
図2】2連シリンダー型の往復動ポンプの説明図である。
図3図3A図3Cは、加速度センサー30の計測データを示す図である。図3Aは圧送速度が30m/hの場合の図である。図3Bは圧送速度が53m/hの場合の図である。図3Cは圧送速度が70m/hの場合の図である。
図4】本実施形態におけるコンクリートの送出管理方法の一例を示すフロー図である。
図5】本実施形態におけるコンクリートの送出管理方法の別の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
セメント組成物を送出するためのシリンダー及びピストンを備えたポンプ車を用いて前記セメント組成物を送出する際の送出管理方法であって、前記シリンダーにおける前記ピストンの往復動作をセンサーで検出し、前記センサーの検出結果と、前記シリンダーの容量と、前記セメント組成物のスランプに応じた補正値と、に基づいて、実際に前記ポンプ車から送出される前記セメント組成物の送出速度又は送出量を求めることを特徴とする送出管理方法が明らかとなる。
【0011】
このような送出管理方法によれば、実際にポンプ車から送出されるセメント組成物の送出速度や送出量を正確に管理することができる。
【0012】
かかる送出管理方法であって、前記センサーによって前記ピストンの往復速度を検し、前記往復速度と、前記シリンダーの容量と、前記補正値と、に基づいて、前記送出速度を求めることが望ましい。
【0013】
このような送出管理方法によれば、ポンプ車から送出されるセメント組成物の送出速度を正確に求めることができる。
【0014】
かかる送出管理方法であって、前記センサーによって前記ピストンの1ストロークの所要時間を検出し、前記所要時間と、前記シリンダーの容量と、前記補正値と、に基づいて、前記送出速度を求めてもよい。
【0015】
このような送出管理方法によれば、ポンプ車から送出されるセメント組成物の送出量を正確に求めることができる。
【0016】
かかる送出管理方法であって、前記送出速度を、前記セメント組成物の打設部位の断面積で除算して打設高さ速度を求めることが望ましい。
【0017】
このような送出管理方法によれば、打設高さ速度(単位時間当たりの打設高さの変化量)をリアルタイムで管理でき、型枠などに過大な応力の負担が発生することを防止できる。
【0018】
かかる送出管理方法であって、前記センサーによって前記ピストンの往復回数を検出し、前記往復回数の累計と、前記シリンダーの容量と、前記補正値と、に基づいて、前記送出量を求めることが望ましい。
【0019】
このような送出管理方法によれば、ポンプ車から送出されるセメント組成物の送出量を正確に求めることができる。
【0020】
かかる送出管理方法であって、前記送出量を、前記セメント組成物の打設部位の断面積で除算して打設高さを求めることが望ましい。
【0021】
このような送出管理方法によれば、打設高さをリアルタイムで管理でき、また、打設高さ測定する機器や人員が不要になる。
【0022】
かかる送出管理方法であって、前記セメント組成物は、CFT柱の鋼管の内部に打設されることが望ましい。
【0023】
このような送出管理方法によれば、CFT柱の鋼管へのコンクリートの打設高さや打設高さ速度を容易に管理できる。
【0024】
かかる送出管理方法であって、前記センサーは、前記ピストンの往復動作による前記ポンプ車の振動を検出するものであってもよい。
【0025】
このような送出管理方法によれば、ポンプ車の振動よってピストンの往復動作を検出できる。
【0026】
かかる送出管理方法であって、前記センサーは、前記ピストンの往復動作に伴って発生する音を検出するものであってもよい。
【0027】
このような送出管理方法によれば、音を検出するセンサー(音センサー)によってピストンの往復動作を検出できる。
【0028】
かかる送出管理方法であって、前記センサーは、前記シリンダーにおける前記ピストンのストロークエンドを検出するものであってもよい。
【0029】
このような送出管理方法によれば、ピストンのストロークエンドを感知するセンサーでピストンの往復動作を検出できる。
【0030】
===本実施形態===
<コンクリートの施工について>
図1は、コンクリートの施工方法の一例を示す概略説明図である。この図では、現場において、コンクリート充填鋼管構造柱1(以下、CFT柱1ともいう)の鋼管2にコンクリートを打設する状況を示している。
【0031】
鋼管2の近傍には、生コン車10と、ポンプ車20が配車されている。
【0032】
生コン車10は、ミキサー車、アジデータトラックともいい、コンクリートの製造プラントで受け渡されたコンクリートの材料を練り混ぜながら打設現場まで搬送する車である。生コン車10は、ドラム12とシュート14を備えている。
【0033】
ドラム12は、生コンクリート(以下、単にコンクリートともいう)を積載するための略円筒状の容器である。ドラム12は、生コン車10の走行中も常に回転し続けてコンクリートの材料を練り混ぜる。これにより、骨材や水の分離を防ぎ、コンクリートを均質に保っている。
【0034】
シュート14は、ドラム12内のコンクリートを目的の荷降位置(本実施形態ではポンプ車20のホッパ21)へ導く(吐出する)ための部材であり、ドラム12の後方において傾斜を有して設けられている。
【0035】
ポンプ車20は、生コン車10によって現場に輸送されたコンクリートを打設位置(本実施形態では鋼管2)まで圧送するための車である。ポンプ車20は、ホッパ21と、ポンプ22と、コンクリート供給管29を備えている。
【0036】
ホッパ21は、ポンプ車20の後方に設けられており、生コン車10のシュート14と対向するように配置される。そして、ホッパ21は、生コン車10シュート14から吐出されたコンクリートを受け取る。
【0037】
ポンプ22は、ホッパ21に供給されたコンクリートを、コンクリート供給管29内に高圧で圧送する。本実施形態のポンプ22は、2連シリンダー型の往復動ポンプである。なお、ポンプ22についての説明は後述する
コンクリート供給管29は、コンクリートを型枠などの打設場所(本実施形態では鋼管2)に送る(送出する)管状の部材である。
【0038】
鋼管2は、断面が角型又は丸形の中空の部材であり、鋼管2の内部(セメント組成物の打設部位に相当)にコンクリートを充填することでCFT柱1が形成される。このようなCFT柱1の施工においては、鋼管2に過大な応力を負担させることなく、コンクリートを充填することが重要となる。
【0039】
鋼管2の下部には圧入口2aが形成されており、圧入口2aにはポンプ車20のコンクリート供給管29が接続されている。
【0040】
生コン車10のシュート14から、ポンプ車20のホッパ21に受け渡されたコンクリートは、ポンプ22の駆動により、コンクリート供給管29を通って、鋼管2の圧入口2aに連続的に送出されて、鋼管2に打設される。これによりCFT柱1が形成されることになる。
【0041】
図2は、2連シリンダー型の往復動ポンプの一例を示す説明図である。図2に示すように、2連シリンダー型のポンプ22は、ホッパ21の一方の側部に連通された一対のコンクリートシリンダー23を有している。
【0042】
一対のコンクリートシリンダー23内には、それぞれ、コンクリートピストン24が設けられている。コンクリートピストン24は、その後方側に設けられた油圧シリンダー25によって前後に往復移動する。
【0043】
また、ホッパ21の他方の側部には、一端が揺動可能に連結されたスイングパイプ26が設けられており、このスイングパイプ26には、コンクリート供給管29が連結されている。
【0044】
スイングパイプ26には、パイプ駆動シリンダー27のピストンロッド28が接続されており、このパイプ駆動シリンダー27が駆動されてピストンロッド28が進退することにより、スイングパイプ26がホッパ21内にて揺動される。
【0045】
スイングパイプ26の他端は、ホッパ21の一方の側部に摺動可能に当接されており、当該スイングパイプ26がパイプ駆動シリンダー27によってホッパ21内にて揺動されることにより、スイングパイプ26の他端部の開口部が、一対のコンクリートシリンダー23の開口部に択一的に連通される。
【0046】
一対のコンクリートシリンダー23のコンクリートピストン24は、それぞれ、逆向きに駆動される。また、スイングパイプ26は、コンクリートピストン24の駆動に合わせて揺動される。つまり、油圧シリンダー25によって一方のコンクリートシリンダー23のコンクリートピストン24が押し出される際に、当該コンクリートシリンダー23にスイングパイプ26が連通される。これにより、一方のコンクリートシリンダー23内に引き込まれていたコンクリート(生コンクリート)が、スイングパイプ26内に押し出される。
【0047】
また、このとき、他方のコンクリートシリンダー23では、油圧シリンダー25によって、コンクリートピストン24が引き込まれる。これにより、当該コンクリートシリンダー23には、ホッパ21内のコンクリート(生コンクリート)が引き込まれる。
【0048】
その後、一方のコンクリートシリンダー23から、スイングパイプ26内にコンクリートが押し出されると、スイングパイプ26は、パイプ駆動シリンダー27によって揺動され、コンクリートが引き込まれた他方のコンクリートシリンダー23と連通される。
【0049】
上記の動作が繰り返し行われることにより、ホッパ21内のコンクリートがスイングパイプ26及びコンクリート供給管29を介して鋼管2へ送り出される。
【0050】
また、本実施形態では、図2に示すように、ホッパ21の下部に加速度センサー30を設けている。加速度センサー30は、コンクリートシリンダー23のコンクリートピストン24の往復動(ストローク)に伴って発生する振動(ポンプ22の脈動)を検出する。
【0051】
加速度センサー30の出力は、無線などの通信手段を介して、パーソナルコンピュータ(PC)やタブレット端末などの端末装置(不図示)に送信される。端末装置は、データやプログラムを記憶する記憶部、プログラムに基づいて各種演算を行う演算部、測定データ(波形など)を表示する表示部、音や発光などで警告を発生する警告発生部などを有している。そして、端末装置は、測定されたデータの管理を行う。
【0052】
図3A図3Cは、加速度センサー30の計測データの一例を示す図である。図3Aは圧送速度が30m/hの場合、図3Bは圧送速度が53m/hの場合、図3Cは圧送速度が70m/hの場合をそれぞれ示している。各図の横軸は時間(s)であり、縦軸は加速度(m/s)である。なお、圧送速度は、ポンプ車20にて設定される。
【0053】
各図(図3A図3C)において、端末装置によって波形のピークが出現したと検出された部分を丸印で囲んでいる。加速度センサー30の出力(波形)からストローク数、ストローク時間を読み取る方法は、特に限定されず、波形の分析でもよいし、AIによる学習でもよい。
【0054】
図に示すようにストローク数と圧送速度との間には相関があることがわかる。例えば、圧送速度30m/hのときストロークは10回/分、圧送速度が53m/hのときストロークは16回/分、圧送速度が70m/hのときストロークは22回/分となっており、圧送速度が大きいほど、ストローク数が多くなっている。また、波形の大きさ(振幅)も圧送速度が大きいほど大きくなっている。
【0055】
本実施形態では、一対のコンクリートシリンダー23から交互にコンクリートの圧送を行なうので、各図における複数の脈動は、一方のコンクリートシリンダー23によるストロークと、他方のコンクリートシリンダー23によるストロークとが交互に並んだものとなっている。例えば、図3Aの10回のストロークのうちの5回分(例えば奇数回目)は一方のコンクリートシリンダー23によるストロークであり、他の5回分(例えば偶数回目)は他方のコンクリートシリンダー23によるストロークである。
【0056】
このように、加速度センサー30を設けることにより、圧送速度によらず、コンクリートの圧送に伴うストロークの回数を正確に把握することができる。
【0057】
なお、コンクリートは、製造してからの時間経過に伴って、流動性が低下する。コンクリートの流動性が低下すると、コンクリートシリンダー23に引き込まれにくく(充填されにくく)なるため、コンクリートシリンダー23へのコンクリートの流入度合いが小さくなる。この場合、コンクリートシリンダー23から押し出されるコンクリートが少なくってしまい、例えば、ポンプ車20で設定した速度(圧送速度)でコンクリートを送出できないことになる。
【0058】
そこで、本実施形態では、後述するように、コンクリートの流動性(スランプ)に応じた効率(補正値に相当)を用いて、コンクリートの送出についての管理を行っている。
【0059】
<コンクリートの送出管理方法について>
図4は、本実施形態におけるコンクリートの送出管理方法の一例を示すフロー図である。ここでは、CFT柱1の鋼管2への打込み高さ(打設高さに相当)を管理する場合について説明する。なお、以下の動作の主体は端末装置である。
【0060】
まず、加速度センサー30の出力(出力波形:図3参照)から、コンクリートシリンダー23のストローク数(コンクリートピストン24の往復動作の回数)をカウントする(S101)。すなわち、図3A図3Cに示すような加速度の波形から波形のピークの出現を検出し、その数をカウントする。これにより、一対のコンクリートシリンダー23におけるそれぞれのストロークが合わせてカウントされる。
【0061】
次に、ストローク数の累計×シリンダー容量×効率(補正値に相当)により、実際の送出量を算出する(S102)。ここで、シリンダー容量は、コンクリートシリンダー23の一つ分(一対のコンクリートシリンダー23の片方)の容量である。
【0062】
また、効率とは、理論送出量に対する実際の送出量の割合(コンクリートシリンダー23内部のコンクリートの流入度合)である。すなわち、コンクリートの流動性が小さいと、コンクリートシリンダー23にコンクリートが充填されにくくなるため、コンクリートシリンダー23からの実際の送出量は、理論上の送出量よりも小さくなる。これを補正するために効率を用いている。具体的には、理論送出量をQa(m/h)、実際の送出量をQb(m/h)、効率をηとすると、
Qa=Qb/η
すなわち、η=Qb/Qa
となる。なお、効率ηはコンクリートの種類やスランプ(流動性)に応じて定められる。
【0063】
表1に効率の一例を示す。
【0064】
【表1】

表1に示すように、コンクリートの種類が同じである場合、スランプが小さい(流動性 が小さい)ほど、効率が小さくなっている。
【0065】
本実施形態では、表1に示すようなスランプと効率を対応付けたテーブルが、端末装置の記憶部に記憶されている。そして、例えば、スランプ試験の結果が入力されると、その結果に対応した効率が選択されて、ステップS102の演算(ここでは送出量の算出)に用いられる。なお、スランプと効率との関係は表1には限られず、実績に基づく数値(表1以外の数値)を用いてもよい。また、スランプをリアルタイムに検出できる場合は、その検出結果が随時入力されるようになっていてもよい。
【0066】
次に、ステップS102で算出した送出量を、鋼管2の断面積(具体的にはコンクリートの打設部位の断面積)で除算する(S103)。これにより、鋼管2におけるコンクリートの打込み高さ(打設高さ)を求めることができる。
【0067】
次に、算出した打込み高さから打込み完了か否かの判定を行う(S104)。打込み完了でないと判定された場合(S104でNO)、ステップS101に戻り、打込みが完了であると判定された場合(S104でYES)、打込みを完了する。
【0068】
このように、加速度センサー30を用いてカウントしたコンクリートシリンダー23のストローク数の累計と、シリンダー容量と、効率とにより、実際にポンプ車20から送出されたコンクリートの送出量を算出することができる。また、この送出量から打込み高さを求めることができる。
【0069】
図5は、本実施形態におけるコンクリートの打設管理方法の別の例のフロー図である。ここでは、コンクリートの打込み高さ速度(打設高さ速度に相当)を管理する場合について説明する。なお、打込み高さ速度とは、単位時間当たりの打設高さの変化量であり、単位時間に打込まれるコンクリートによって上昇する高さのことである。この場合も、動作の主体は端末装置である。また、図4の打込み高さの管理も同時に行ってもよい。
【0070】
まず、図4のステップS101と同様に、加速度センサー30の出力(出力波形:図3参照)から、コンクリートシリンダー23のストローク数(コンクリートピストン24の往復動作の回数)をカウントする(S201)。ここでも、一対のコンクリートシリンダー23におけるストロークが合わせてカウントされる。
【0071】
次に、単位時間当たりのストローク数×シリンダー容量×効率により、実際の送出速度(単位時間当たりの送出量)を算出する(S202)。単位時間当たりのストローク数(ピストンの往復速度に相当)は、単位時間(例えば1分)当たりに検出されたストロークの数であり、例えば図3Aの場合は10となる。シリンダー容量及び効率は、図4のステップS102と同じなので説明を省略する。
【0072】
次に、ステップS202で算出した送出速度を、鋼管2の断面積(具体的にはコンクリートの打設部位の断面積)で除算し、鋼管2におけるコンクリートの打込み高さ速度を求める(S203)。
【0073】
次に、算出した打込み高さ速度が、閾値(例えば、1m/分)以内であるか否かを判定する(S204)。打込み高さ速度が閾値を超えていれば(S204でNO)、警告を発生させる。打込み高さ速度が閾値以内であれば(S204でYES)、打込みが完了か否かの判定を行う(S205)、打込みが完了でないと判定された場合(S205でNO)、ステップS201に戻り、打込みが完了であると判定された場合(S205でYES)、打込みを完了する。
【0074】
なお、上述した例ではストローク数をカウントしていたが、以下に説明するように、1回あたりのストローク(1ストローク)の所要時間を検出して、その所要時間から送出速度(単位時間当たりの送出量(吐出量))を算出することも可能である。
【0075】
ポンプ車20の単位時間(ここでは1時間)当たり吐出量(Q(m/h))は、コンクリートシリンダー23の1回で吐出するコンクリートの容積Vc(コンクリートシリンダー23の容量:m/回)×1時間あたりのコンクリートピストン24のストローク数N(回/h)として表すことができる。
【0076】
したがって、1回あたりのストロークの所要時間Ts(sec)から、吐出量Qは(1)式で算出することができる。なお、効率ηは、上記と同じくコンクリートシリンダー23内部のコンクリートの流入度合であり、スランプによって異なり、スランプが小さくなると小さくなる。
【0077】
Q=3600×Vc×η/Ts ・・・(式1)
ここで、Q :吐出量(m/h)
Vc:コンクリートシリンダー23の容積(m
η :効率
Ts:1回あたりのストロークの所要時間(sec)
このように、1ストロークの所要時間を検出することによって、送出速度(単位時間当たりの送出量)を求めてもよい。
【0078】
以上説明したように、加速度センサー30を用いてポンプ車20のコンクリートシリンダー23のストロークを検出することにより、コンクリートの送出や打設についての管理がリアルタイムで可能となる。これにより、打込み高さなどを測定する機器や人員が不要となる。また、本実施形態では効率ηを用いることによってコンクリートの流動性(スランプ)に応じた補正を行っているので、実際にポンプ車20から送出されるコンクリートの送出量や、送出速度を正確に求めることができる。また、加速度センサー30の波形により、圧送性の異常の有無もモニターすることも可能である。
【0079】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0080】
前述の実施形態では、CFT柱1の鋼管2に圧入工法でコンクリートを打設する場合を例示したが、これには限られない。例えば、落と込み工法で打設してもよい。また、CFT構造以外の柱や、壁などの型枠にコンクリートを打設する場合などにも適用できる。この場合も、打込み高さ速度の管理値(閾値)を超えると警告を発生するようにすれば、過大な側圧の作用による型枠の変形、崩壊を防止できる。また、適切な送出速度に管理することにより、豆板などの不具合を低減でき、品質の向上を図ることができる。
【0081】
また、例えば、逆打ち工法における地下壁の圧入工法による打込みにも適用することができる。この場合も、上記と同様の効果を得ることができる。なお、地下壁の圧入工法では、型枠内が目視不可能であるため、予定数量よりも多めにコンクリートを発注している。本実施形態では、送出量の累計を正確に把握できるので、適切な量のコンクリートを発注することができ、コンクリートの残り(残コン)を低減できる。
【0082】
また、前述の実施形態では、加速度センサー30をポンプ車20のホッパ21に設けていたが、ストロークを検出できる場所であればよく、ポンプ車20の別の部位(例えば、コンクリート供給管29など)に設けてもよい。
【0083】
また、前述の実施形態では、加速度センサー30でポンプ車20の振動を検出していたが、これには限られない、例えば、音を検出するセンサー(音センサー)を用いて、ストロークによって発生する音を検出してもよい。あるいは、コンクリートシリンダー23にコンクリートピストン24のストロークエンドを検出するセンサーが設けられている場合、当該センサーでストロークを検出してもよい。これらの場合でも、前述の実施形態と同様にストローク数をカウント(検出)することができる。
【0084】
また、前述の実施形態では、コンクリートを打設する場合について説明したが、コンクリートには限られず、他のセメント組成物(例えばモルタル)についても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 コンクリート充填鋼管構造柱(CFT柱)、2 鋼管、2a 圧入口、
10 生コン車、12 ドラム、14 シュート、
20 ポンプ車、21 ホッパ、22 ポンプ、
23 コンクリートシリンダー(シリンダー)、
24 コンクリートピストン(ピストン)、
25 油圧シリンダー、26 スイングパイプ、
27 パイプ駆動シリンダー、28 ピストンロッド、
29 コンクリート供給管、
30 加速度センサー
図1
図2
図3
図4
図5