IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭興進株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図1
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図2
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図3
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図4
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図5
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図6
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図7
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図8
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図9
  • 特開-人工木材及びその製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147782
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】人工木材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/00 20060101AFI20241008BHJP
   B29C 43/30 20060101ALI20241008BHJP
   B29C 43/46 20060101ALI20241008BHJP
   B27N 5/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B27N3/00 C
B29C43/30
B29C43/46
B27N5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024118788
(22)【出願日】2024-07-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】306004081
【氏名又は名称】旭興進株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】徐 躍進
(57)【要約】      (修正有)
【課題】木目模様の再現性が高く、外観に違和感の少ない人工木材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る人工木材1の製造方法は、基層2上に第一被覆層3を形成する第一被覆層形成ステップと第一被覆層上に第二被覆層4を形成する第二被覆層形成ステップと、第二被覆層の上から型押しローラー5により木目の凹凸を押圧する型押しステップと第二被覆層を研磨して第一被覆層の一部を露出させ、第一被覆層と第二被覆層の色の違いにより木目模様を形成する木目模様形成ステップを備える。また本発明の他の一観点に係る人工木材は、基層樹脂を含む基層と第一樹脂を含み、基層上に形成される第一被覆層と、第二樹脂を含み第一被覆層上に形成される第二被覆層を備え、第二被覆層の上から型押しローラーにより木目の凹凸を出し、第二被覆層を研磨して第一樹脂の一部を露出させ、第一被覆層と第二被覆層の色の違いにより木目模様として形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層上に第一被覆層を形成する第一被覆層形成ステップ、
前記第一被覆層上に第二被覆層を形成する第二被覆層形成ステップ、
前記第二被覆層の上から型押しローラーにより木目の凹凸を押圧する型押しステップ、
前記第二被覆層を研磨して前記第一被覆層の一部を露出させ、前記第一被覆層と前記第二被覆層の色の違いにより木目模様を形成する木目模様形成ステップ、を備える人工木材の製造方法。
【請求項2】
前記木目模様形成ステップは、第一被覆層表面上の位置によってその研磨深さを異ならせる請求項1記載の人工木材の製造方法。
【請求項3】
前記第一被覆層の厚さは、0.2mm以上1.0mm以下の範囲である請求項1記載の人工木材の製造方法。
【請求項4】
前記第二被覆層の厚さは、0.05mm以上0.4mm以下の範囲である請求項1記載の人工木材の製造方法。
【請求項5】
前記木目模様形成ステップは、前記第一被覆層と前記第二被覆層の境界線を、曲がりながらも一方向に延伸するよう前記第二被覆層を研磨するものである請求項1記載の人工木材の製造方法。
【請求項6】
基層樹脂を含む基層と、
第一樹脂を含み、前記基層上に形成される第一被覆層と、
第二樹脂を含み、前記第一被覆層上に形成される第二被覆層と、を備え、
前記第二被覆層の上から型押しローラーにより木目の凹凸を出し、更に
前記第一樹脂の一部を露出させ、前記第一被覆層と前記第二被覆層の色の違いにより木目模様として形成してなる人工木材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工木材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、適度な硬さや加工のしやすさから、古代より建築や土木の資材として、更には家具や食器等の日用品の素材として用いることができる非常に有用なものである。また木材はその断面における木目も特徴的であり、この木目によって高級感や安心感を演出するために用いることも少なくない。
【0003】
一方で近年は、適度な硬度や成型のしやすさから、木材に代わり樹脂材料が多く用いられつつある。特に樹脂材料は、色素等を混ぜることで様々な色に着色することや光沢を出すことが可能であり、この特性を用いて木材にはない特徴を演出することが可能である。
【0004】
しかしながら、樹脂材料を用いる場合であっても、木材と同様の見た目とすることで上記木材としての高級感や安心感を得たいというニーズも一定数存在する。
【0005】
この先行技術として、例えば、下記特許文献1には、複数の樹脂を適度に混錬して木材に似た外観を備える人工木材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-197514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1には、複数の樹脂を混ぜることが必要である一方、混ぜ方や、条件によってその外観は大きく異なり、その再現性は高くないといった課題がある。また、このような人工木材では表面が平滑であり、手触りや見た目に違和感があり、樹脂であることがすぐにわかってしまうといった不自然さがある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、木目模様の再現性が高く、外観に違和感の少ない人工木材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する人工木材の製造方法は、基層上に第一被覆層を形成する第一被覆層形成ステップ、前記第一被覆層上に第二被覆層を形成する第二被覆層形成ステップ、前記第二被覆層の上から型押しローラーにより木目の凹凸を押圧する型押しステップ、前記第二被覆層を研磨して前記第一被覆層の一部を露出させ、前記第一被覆層と前記第二被覆層の色の違いにより木目模様を形成する木目模様形成ステップ、を備えるものである。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけではないが、木目模様形成ステップは、第一被覆層表面上の位置によってその研磨深さを異ならせることが好ましい。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、第一被覆層の厚さは、0.2mm以上1.0mm以下の範囲であることが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、第二被覆層の厚さは、0.05mm以上0.4mm以下の範囲であることが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、木目模様形成ステップは、前記第一被覆層と前記第二被覆層の境界線を、曲がりながらも一方向に延伸するよう前記第二被覆層を研磨するものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の一観点に係る人工木材は、基層樹脂を含む基層と、第一樹脂を含み、前記基層上に形成される第一被覆層と、第二樹脂を含み、前記第一被覆層上に形成される第二被覆層と、を備え、前記第二被覆層の上から型押しローラーにより木目の凹凸を出し、更に前記第二被覆層を研磨して、前記第一樹脂の一部を露出させ、第一被覆層と前記第二被覆層の色の違いにより木目模様として形成してなるものである。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明によって、木目模様の再現性が高く、外観に違和感の少ない人工木材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る人工木材の製造方法の処理の流れを示すフロー図である。
図2】実施形態に係る人工木材を製造する人工木材製造システムの概略を示す図である。
図3】実施形態に係る人工木材の斜視概略図である。
図4】実施形態に係る人工木材の一断面の概略図である。
図5】実施形態に係る人工木材の基層の斜視概略図である。
図6】実施形態に係る人工木材の基層に第一被覆層が形成された場合の斜視概略図である。
図7】実施形態に係る人工木材の基層に第一被覆層が形成され、更にその上に第二被覆層が形成された場合(未研磨木材)の斜視概略図である。
図8】実施形態に係る人工木材の第二被覆層上に木目の凹凸を出すための型押しローラーの概略図である。
図9】実施形態に係る人工木材製造システムにおける研磨ローラーの概略図である。
図10】実施例により作成した人工木材の写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載の具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る人工木材の製造方法(以下「本方法」という。)の処理の流れを示すフロー図である。本図で示すように、本方法は、(S0)基層を形成するステップ、(S1)基層上に第一被覆層を形成する第一被覆層形成ステップ、(S2)第一被覆層上に第二被覆層を形成する第二被覆層形成ステップ、(S3)第二被覆層の上から型押しローラーにより木目の凹凸を押圧する型押しステップ、(S4)第二被覆層を研磨して第一被覆層の一部を露出させ、第一被覆層と第二被覆層の色の違いにより木目模様を形成する木目模様形成ステップ、を備えるものである。
【0019】
また、図2は、本方法を実現するための一例に関する実際の人工木材製造システム(以下「本システム」という。)Sの概略を示す図である。本図で示すように、本システムSは、基層2を形成する基層形成装置M1、基層2上に第一被覆層3を形成する第一被覆層形成装置M2、第一被覆層3上に第二被覆層4を形成する第二被覆層形成装置M3、これら基層形成装置M1から第一被覆層形成装置M2、第二被覆層形成装置M3に対して、基層2を順次搬送させていく搬送機構M4を備えている。また、搬送機構M4はさらに、少なくとも一つ、好ましくは本図で示すように複数の研磨ローラー6に上記第二被覆層4まで形成された基層2を搬送し、研磨させることができるようになっている。
【0020】
図3は、本方法によって製造された人工木材(以下「本木材」という。)1の斜視概略を示す図であって、図4は、本木材1の断面の概略を示す図である。本木材1は、基層2と、基層2を覆う第一被覆層3と、第一被覆層3を覆う第二被覆層4を備え、第二被覆層4を研磨して、第一被覆層3の一部を露出させて第一被覆層3と第二被覆層4の色の違いにより木目模様を形成するものである。
【0021】
上記の処理によって、木目模様の再現性が高く、外観に違和感の少ない人工木材を提供することができる。この詳細については後述の記載から明らかとなる。
【0022】
本方法ではまず(S0)基層を形成するステップがある。本ステップにおいて、「基層」とは、後に詳述する第一被覆層3と第二被覆層4を形成するための下地となる層をいう。基礎樹脂を含む材料によって構成されるものであることが好ましいが、アルミニウム等の金属を用いることも可能ではある。
【0023】
また、本ステップにおける「基礎樹脂」とは、基層に含まれる樹脂を意味するものであり、「基礎」とあるのは、後述の第一被覆層、第二被覆層における樹脂と区別するために用いられる接頭語であり、これ自体に技術的な意味を持たない。
【0024】
また、本ステップにおける樹脂としては、限定されるわけではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、及び、アイオノマー樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0025】
また、本ステップにおいて、基層2には、上記基礎樹脂のほか木粉を含んでもよい。「木粉」とは、適合性のある木材を細かく粉状にした木材をいう。
【0026】
また、ここで木粉の大きさとしては、限定されるわけではないが、メッシュ通過率により測定した木粉の平均の大きさとして20メッシュ以上100メッシュ以下であることが好ましく、より好ましくは40メッシュ以上80メッシュ以下の範囲である。40メッシュ以上とすることで吸水率を低くできるといった利点があり、80メッシュ以下とすることで樹脂との配合効率を高く維持できるといった利点がある。
【0027】
また、本ステップにおける基層2における木粉と樹脂の配合比率としては、基層2としての機能を備えることができる限りにおいて限定されるわけではないが、基層2全体の重量を100とした場合、基礎木粉を50以上70以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは55以上65以下の範囲である。55以上とすることで収縮率を低くできるといった利点があり、65以下とすることで強度を強くできるといった利点がある。
【0028】
また、本ステップにおいて、基層2は、上記木粉、樹脂のほか、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、相溶剤、潤滑剤等を例示することができるがこれに限定されない。相溶剤を用いることで、異なる複数の材料を混合した場合であっても、これらを均一に混ざり合わせることができるようになるといった利点があり、また潤滑剤を用いることで、樹脂と成型加工機の金属面との摩擦や、樹脂間の摩擦を減少させ、流動性や離型性を改善し、加工性を改良することができるといった利点がある。また、相溶剤としては限定されるわけではないが、無水マレイン酸相溶剤、アクリル酸相溶剤、アクリル酸ブチル相溶剤等を例示することができる。また、潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレンワックス等を例示することができる。
【0029】
また、相溶剤の添加量としては、基層2としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、基層2の全体の重量を100とした場合に、1以上7以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは3以上5以下である。
【0030】
また、潤滑剤の添加量としては、基層2としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、基層2の全体の重量を100とした場合に、1以上5以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは1以上2以下である。
【0031】
また、基層2は、上記の通り、第一被覆層3及び第二被覆層4を形成するための下地となる層であり、基層2自体が他の素材の表面に形成された層であってもよいが、基層2自体が人工木材の骨格をなす重要な部材となっていることも好ましい。また基層2の少なくとも一部は、第一被覆層3及び第二被覆層4を均一な厚さで形成しやすくする観点から、平坦な面を有するものであることが好ましく、具体的には板状の部材や柱状の部材であることが好ましい。平坦な面であれば、上記の通り第一被覆層3及び第二被覆層4を均一に形成することが可能となり、第二被覆層4を研磨することで第一被覆層3の一部を所望の形状となるよう露出させ所望の木目模様を形成することが可能となる。図5に、本木材1における基層2の斜視概略図を示す。
【0032】
本方法では、次に(S1)基層上に第一樹脂を含む第一被覆層を形成する第一被覆層形成ステップを有する。
【0033】
また、本ステップにおける「第一被覆層」とは、上記の記載から明らかであるが、基層を覆う被覆層をいい、第一樹脂を含んで構成される。
【0034】
また、本ステップにおける「第一樹脂」とは、第一被覆層に含まれる樹脂を意味するものであり、「第一」とあるのは、前述の基層、後述の第二被覆層における樹脂と区別するために用いられる接頭語であり、これ自体に技術的な意味を持たない。また「樹脂」については、上述の基礎樹脂と同じものとしてもよく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、サーリン樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0035】
また、本ステップにおける第一被覆層3には、上記樹脂のほか、適宜添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、相溶剤、着色剤、粘着剤、酸化防止剤等を例示することができるがこれに限定されない。
【0036】
相溶剤は、これを用いることで、異なる複数の材料を混合した場合であっても、これらを均一に混ざり合わせることができるようになるといった利点がある。相溶剤としては限定されるわけではないが、無水マレイン酸相溶剤、アクリル酸相溶剤、アクリル酸ブチル相溶剤等を例示することができる。
【0037】
また、相溶剤の添加量としては、第一被覆層3としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、第一被覆層3の全体の重量を100とした場合に、1以上7以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは3以上5以下である。
【0038】
また、第一被覆層3に着色剤を添加させることで、第一被覆層3を所望の色に着色することができる。着色剤の色については特に限定されるわけではないが、後に詳述する第二被覆層4における着色剤の色と異ならせるもの又は濃度が異なっていることが好ましい。着色剤としては、例えばカーボンブラック着色剤、オーク着色剤、ゴールド着色剤、グレー着色剤、ダークチーク着色剤、ダークウォールナット着色剤等を例示することができる。
【0039】
また、着色剤の添加量としては、第一被覆層3としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、第一被覆層3の全体の重量を100とした場合に、1以上6以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは3以上4以下である。
【0040】
また、第一被覆層3に粘着剤を用いることで、基層2に確実に接着できるといった利点がある。また、粘着剤としては、エポキシ樹脂粘着剤、ウレタン粘着剤等を例示することができる。
【0041】
また、粘着剤の添加量としては、第一被覆層3としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、第一被覆層3の全体の重量を100とした場合に、1以上7以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは3以上5以下である。
【0042】
また、第一被覆層3に酸化防止剤を用いることで、酸化を防止して品質劣化を防止できるといった利点がある。また、酸化防止剤としては、有機抗酸化剤、リン系抗酸化剤等を例示することができる。
【0043】
また、酸化防止剤の添加量としては、第一被覆層3としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、第一被覆層3の全体の重量を100とした場合に、0.1以上3以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは0.5以上1以下である。
【0044】
また、本ステップにおいて、限定されるわけではないが、第一被覆層3の厚さは、0.2mm以上1.0mm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.4mm以上0.8mm以下の範囲である。0.4mm以上であるとその効果はより顕著となる。一方、1.0mm以下とすることで不必要な厚さとせず効果を発揮し原価を節約することができ、0.8mm以下とすることがより好ましい。なお、図6に、本木材1における基層2に第一被覆層3が形成された場合におけるその断面のイメージを示しておく。
【0045】
また、本方法では、(S2)第一被覆層上に第二樹脂を含む第二被覆層を形成する第二被覆層形成ステップを有する。
【0046】
また、本ステップにおける「第二被覆層」とは、上記の記載から明らかであるが、第一被覆層を覆う被覆層をいう。また、第二被覆層は、第二樹脂を含むものである。ここで、「第二」とあるのは、第一被覆層と同じ基層を覆う被覆層であるためその区別を行うために用いる序数詞であり、これ以外に技術的な意味は含まない。
【0047】
また、本ステップにおいて、第二被覆層4は、第一被覆層3の少なくとも一部、好ましくは全部を被覆することが好ましい。このようにすることで、後のステップにより第一被覆層3の一部を露出させてこれらとの間の境界線を木目模様として活用することができるようになる。なお、図7に、本木材1における基層2に第一被覆層3、更にそのうえに第二被覆層4が形成され未研磨の状態の本木材1(以下「未研磨木材」という。)の断面のイメージを示しておく。
【0048】
また、本ステップにおける「第二樹脂」とは、第二被覆層に含まれる樹脂を意味するものであり、「第二」とあるのは、上記第二被覆層における「第二」と同様、前述の基層、第一被覆層における樹脂と区別するために用いられる序数詞であり、これ自体に技術的な意味を持たない。また「樹脂」については、上述の基礎樹脂と同様でありこれにおいて限定されない。
【0049】
また、本ステップにおける第二樹脂の種類としては、上述の基礎樹脂と同じものとしてもよく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、サーリン樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0050】
また、本ステップにおける第二被覆層4には、上記樹脂のほか、適宜添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、相溶剤、着色剤、粘着剤、酸化防止剤等を例示することができるがこれに限定されない。
【0051】
相溶剤は、これを用いることで、異なる複数の材料を混合した場合であっても、これらを均一に混ざり合わせることができるようになるといった利点がある。相溶剤としては限定されるわけではないが、無水マレイン酸相溶剤、アクリル酸相溶剤、アクリル酸ブチル相溶剤等を例示することができる。
【0052】
また、相溶剤の添加量としては、第二被覆層4としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、第二被覆層4の全体の重量を100とした場合に、1以上7以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは3以上5以下である。
【0053】
また、第二被覆層4に着色剤を添加させることで、第二被覆層4を所望の色に着色することができる。着色剤の色については特に限定されるわけではないが、前記第一被覆層3における着色剤の色と異ならせるもの又は濃度が異なっていることが好ましい。また、着色剤の具体的な例としては限定されるわけではないが、例えばカーボンブラック着色剤、オーク着色剤、ゴールド着色剤、グレー着色剤、ダークチーク着色剤、ダークウォールナット着色剤等を例示することができる。
【0054】
また、着色剤の添加量としては、第二被覆層4としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、第二被覆層4の全体の重量を100とした場合に、1以上6以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは3以上4以下である。
【0055】
また、第二被覆層4に粘着剤を用いることで、第一被覆層3に確実に接着できるといった利点がある。また、粘着剤としては、エポキシ樹脂粘着剤、ウレタン粘着剤等を例示することができる。
【0056】
また、粘着剤の添加量としては、第二被覆層4としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、第二被覆層4の全体の重量を100とした場合に、1以上7以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは3以上5以下である。
【0057】
また、第二被覆層4に酸化防止剤を用いることで、酸化を防止して品質劣化を防止できるといった利点がある。また、酸化防止剤としては、有機抗酸化剤、リン系抗酸化剤等を例示することができる。
【0058】
また、酸化防止剤の添加量としては、第二被覆層4としての機能を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、第二被覆層4の全体の重量を100とした場合に、0.1以上3以下の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましくは0.5以上1以下である。
【0059】
また、本ステップにおいて、限定されるわけではないが、第二被覆層4の厚さは、0.05mm以上0.4mm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以下の範囲である。0.05mm以上とすることで上記の第一被覆層3を十分に覆うことができるといった被覆効果があり、0.4mm以下とすることで研磨して第一被覆層3を露出させやすいといった利点があり、0.2mm以下とすることでこの効果はより顕著となる。
【0060】
また、本方法では、(S3)第二被覆層の上から型押しローラーにより木目の凹凸を押圧する型押しステップ、を有する。木目を形成するための凹凸を形成することで、後段の研磨するステップにおいて切削しやすい位置と切削されにくい位置を区分け、より実物に近い木目を形成しやすくなるといった利点がある。特に、やわらかいうちに凹凸を加えると効果がある。図8に、本ステップで用いる型押しローラー5の概略図を示しておく。
【0061】
また、本方法では、このステップの後に、切断するステップを備えていてもよい。本方法によると基層2、第一被覆層3、第二被覆層4を形成した後に所望の製品サイズに切り分け、取り扱いやすくなる。また上記ステップの後は1日ほど養生(冷却固化)することで製品の品質を安定化させることができる。
【0062】
また、本方法では、(S4)第二被覆層を研磨して第一被覆層の一部を露出させ、第一被覆層と第二被覆層の色の違いにより木目模様を形成する木目模様形成ステップ、を有する。本ステップでは、上記の記載から明らかであるが、第一被覆層3全体をまず覆い、第一被覆層3を隠した後、凹凸を形成し、第二被覆層4を研磨して第一被覆層3の一部を露出させる。これにより、この二つの層の間の境界線が木目模様となって表現される。なお、ここで「木目模様」とは、本物の木目ではないが、木目のように見える模様のことをいう。また「木目」には、木材をその成長方向に対して垂直に切断した際に現れる木目だけでなく、木材をその成長方向に沿って切断した際に現れる木目(木理)も含まれる。本方法によって製造される本木材1のイメージは上記図3で示したとおりである。
【0063】
また、本ステップは、第一被覆層3の表面上の位置によってその研磨深さを異ならせるようにすることが好ましい。これにより、規則的ではなくなり、自然の木目(木理)に似せた模様とすることができるといった利点がある。特に、この研磨の深さにより、前ステップの凹凸押圧型押しステップに加え、自然の木材の手触りと同様の凹凸と模様を形成することができ、本木材1に触れた者にとって違和感をより少なくすることができるといった利点がある。
【0064】
また本ステップにおいては、更に、第一被覆層3と第二被覆層4の境界線を、曲がりながらも一方向に延伸するよう第二被覆層4を研磨するものであることが好ましい。このように一方向に延伸しつつ曲がっているように第一被覆層3と第二被覆層4の境界線を形成することで、上記と同様、より自然の木目(木理)に似せた模様とすることができるといった利点がある。もちろんこの場合において、境界線は複数形成することが好ましい。
【0065】
また、本ステップにおいては、第一被覆層3の一部は研磨することができるが、基層2まで露出させないことが好ましい。研磨の深さは基層2を露出させないような範囲とすることで本木材1自体の強度を確保することができるといった利点がある。すなわち、本ステップによる研磨の深さとしては、第一被覆層3の厚さと第二被覆層4の厚さの合計の厚さ未満ということになる。
【0066】
本ステップにおける研磨方法としては、上記の効果を実現できる限りにおいて限定されるわけではないが、上記基層2上に第一被覆層3を形成し、第二被覆層4によって第一被覆層3全体が被覆され、かつ凹凸が押された状態のもの(未研磨木材)に対し、研磨ローラー6を用いて研磨することが簡便な構成とすることができるとともに、同様な模様の本木材1を多量に生産することができるようになる観点から好ましい。この場合の研磨ローラー6のイメージを図9に示しておく。またこの場合において、研磨ローラー6は、その軸方向及び回転方向のそれぞれにおいて、表面に付される研磨材の量、厚さ、長さ等の状態が異なっていることが好ましい。このようにすることで、本木材1の表面の縦横方向にムラが生じることとなり、より自然の木目に近い状態とすることができるといった利点がある。また、本ステップにおいて用いる研磨ローラーの数は特に限定されず、複数の研磨ローラーを用いて順次研磨することも好ましい。これにより、より複雑な研磨状態を達成することができる。
【0067】
以上、本実施形態によって、木目の再現性が高く、外観に違和感の少ない人工木材及びその製造方法を提供することができる。
【実施例0068】
ここで、上記人工木材について実際にその作製を行い、その効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0069】
まず、ポリエチレンと木粉の混合材を、高さ40mm、巾219mm(押し出し長さ1830mm)の基層として形成し、その上に、厚さ0.6mmの第一被覆層で被覆した。なお、この第一被覆層は、ポリエチレンとポリプロピレンとサーリン樹脂を使用し、これにオーク着色剤を重量3.5%添加し着色した。
【0070】
次に、更にこの上に、0.05mmの第二被覆層により、第一被覆層全体を被覆した。この結果、第一被覆層は完全に被覆され、未研磨木材となった。なお、この第二被覆層も、ポリエチレンとポリプロピレンとサーリン樹脂を使用し、これに着色剤としてダークチーク着色剤を重量3.5%添加した。すなわち、第一被覆層と第二被覆層は異なる色となるようにした。
【0071】
そして、型押しローラーにより木目の凹凸を押圧し、木目調の凹凸を形成し、切断、養生を経てその上から研磨ローラーにて研磨し、第一被覆層の一部を露出させ、木目模様を顕現させ、本木材として完成させた。この結果製造された本木材の実際の写真図について図10に示しておく。
【0072】
以上、本実施例によって、木目の再現性が高く、外観に違和感の少ない人工木材及びその製造方法を提供することができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、人工木材及びその製造方法として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0074】
1…人工木材
2…基層
3…第一被覆層
4…第二被覆層
5…型押しローラー
6…研磨ローラー
M1…基層形成装置
M2…第一被覆層形成装置
M3…第二被覆層形成装置
M4…搬送機構

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10