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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014779
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】パンタグラフのロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/38 20060101AFI20240125BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240125BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B60L5/38 B
B60M7/00 Z
B61B13/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114412
(22)【出願日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】22186313.7
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521205102
【氏名又は名称】シュンク トランジット ジステムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィガン アレクスアンドル-ヨアン
(72)【発明者】
【氏名】ゾンマー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】グロス フレデリック
【テーマコード(参考)】
3D101
5H105
【Fターム(参考)】
3D101BA03
3D101BE01
5H105BA02
5H105BB01
5H105CC02
5H105DD03
5H105EE01
5H105EE14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】集電装置のすり板装置の、意図しないロック解除や、収納位置から摺動接触位置への移動を防ぐロック装置を提供する。
【解決手段】すり板装置は、導体レールに対して収納位置と摺動接触位置との間を移動可能である。ロック装置は、カム31と、回転可能に設けられたシャフト32と、回転防止装置33を有し、カム31は、回転可能に固定されるようにシャフト32に配置され、かつカム31は、シャフト32の回転によって解放位置からロック位置へ移動可能である。すり板装置は、収納位置において、カム31が、すり板装置の導体レールに対しての移動を阻止するように、集電装置のロック位置に、好ましくは集電装置のロッカーユニットのロック位置に移動することにより、集電装置の第1接触面に接触する。解放位置又はロック位置において、回転防止装置33は、カム31を固定するシャフト32の回転移動を、確実に阻止する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納位置において集電装置(10)のすり板装置(16)を固定するロック装置(30)であって、前記すり板装置(16)は、導体レール(12)に対して収納位置と摺動接触位置との間を移動可能であり、
前記ロック装置(30)は、カム(31)と、回転可能に設けられたシャフト(32)と、回転防止装置(33)と、を有し、
前記カム(31)は、回転可能に固定されるように前記シャフト(32)に配置され、かつ前記カム(31)は、前記シャフト(32)の回転によって解放位置からロック位置へ移動可能であり、
前記すり板装置(16)の収納位置において前記カム(31)は、前記すり板装置(16)の移動が前記導体レール(12)に対して阻止されるように、集電装置(10)のロック位置に、好ましくは集電装置(10)のロッカーユニット(19)のロック位置に移動されることによって、第1接触面(34)に接触させられ得て、
前記解放位置又は前記ロック位置において、前記カム(31)を固定する前記シャフト(32)の回転移動が、前記回転防止装置(33)によって確実に阻止されることを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記回転防止装置(33)は、前記シャフト(32)の回転軸(35)に沿って前記シャフト(32)内に配置されたピン(36)と、ボルト(37)と、前記シャフト(32)に沿って固定されたブッシング(38)と、を有し、
前記ボルト(37)は、前記シャフト(32)の前記回転軸(35)に対して垂直にピン(36)の中へ挿入され、前記ボルト(37)は、前記シャフト(32)の回転移動が阻止されるように、前記シャフト(32)及び前記ピン(36)を少なくとも部分的に囲む前記ブッシング(38)の少なくとも1つの凹部(39)の中へ、嵌合するように挿入され得ることを特徴とする、請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記ピン(36)は、前記シャフト(32)の中にバネを介して取り付けられ、バネ(40)のバネ力に抗して、前記シャフト(32)の前記回転軸(35)に沿って移動可能であることを特徴とする、請求項2に記載のロック装置。
【請求項4】
前記ピン(36)に挿入された前記ピン(37)は、前記シャフト(32)に形成された溝(41)を移動可能であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のロック装置。
【請求項5】
少なくとも2つの凹部(39)は、前記ロック位置及び/又は前記解放位置において前記カム(31)を固定する前記ブッシング(38)の外周に沿って配置されることを特徴とする、請求項2-4のいずれか1項に記載のロック装置。
【請求項6】
前記凹部(39)は、少なくとも1つの挿入傾斜部(54)を有することを特徴とする、請求項2-5のいずれか1項に記載のロック装置。
【請求項7】
前記カム(31)は、前記集電装置(10)の第2接触面(42)、及び/又は前記ロック装置(30)のハウジング(50)の第2接触面(42)、及び/又は前記ロック装置(30)の保持装置(51)の第2接触面(42)に接触させられることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載のロック装置。
【請求項8】
前記シャフト(32)の回転軸(35)と前記ロッカーユニット(19)の回転軸(43)とが、平行である、及び/又は間隔を空けて配置されることを特徴とする、請求項2-7のいずれか1項に記載のロック装置。
【請求項9】
締結プレート(44)は、ブッシング(38)に配置され、
前記締結プレート(44)は、着脱可能な接続によって、好ましくはネジ接続(45)によって、保持装置(51)に配置されていることを特徴とする、請求項2-8のいずれか1項に記載のロック装置。
【請求項10】
前記シャフト(32)は、一端部において、角柱状の外側輪郭(46)を、好ましくは正方形状に形成された角柱状の外側輪郭(46)を有することを特徴とする、請求項2-9のいずれか1項に記載のロック装置。
【請求項11】
ピン(36)は、前記シャフト(32)の回転軸(35)に沿って、前記シャフト(32)の回転移動が阻止されたときに、シャフト端面(47)を越えて突出することを特徴とする、請求項2-10のいずれか1項に記載のロック装置。
【請求項12】
回転防止ハウジング(48)は、前記シャフト(32)の外周に配置され、前記回転防止装置(33)を、特にブッシング(38)及び/又はボルト(37)を少なくとも部分的に囲むように構成されることを特徴とする、請求項1-11のいずれか1項に記載のロック装置。
【請求項13】
前記カム(31)は、前記シャフト(32)を通して係合するネジ接続(49)によって、前記シャフト(32)に回転可能に固定されるように配置されることを特徴とする、請求項2-12のいずれか1項に記載のロック装置。
【請求項14】
導体レール(12)から車両に電力を伝送する集電装置(10)であって、前記集電装置(10)は、請求項1-請求項13のいずれか1項に記載のロック装置(30)を有し、
前記集電装置(10)は、すり板装置(16)と、ロッカーユニット(19)を有する圧力装置(14)と、を備え、
前記集電装置(10)の前記すり板装置(16)は、前記圧力装置(14)によって、前記導体レール(12)に対して移動可能であり、かつ摺動接続を形成するために、圧力を使用して摺動接触位置において、前記導体レール(12)に押し付けられ得ることを特徴とする集電装置。
【請求項15】
導体レール(12)に対して収納位置と摺動接触位置との間を移動可能な集電装置(10)のすり板装置(16)を、少なくとも1つのカム(31)と、回転可能に設けられたシャフト(32)と、回転防止装置(33)と、を有するロック装置(30)によって前記収納位置に固定する方法であって、
前記シャフト(32)の回転移動は、前記シャフト(32)に回転可能に固定されるように配置された前記カム(31)を移動させるために、前記回転防止装置(33)によって解放され、
その後、前記すり板装置(16)の前記収納位置において前記カム(31)は、前記すり板装置(16)の移動が前記集電装置(10)に対して阻止されるように、前記シャフト(32)の回転によって解放位置からロック位置へ移動されて、前記集電装置(10)の第1接触面(34)に、好ましくは前記集電装置(10)のロッカーユニット(19)の第1接触面(34)に接触させられ、
さらにその後、前記ロック位置において前記カム(31)を固定する前記シャフト(32)の回転移動が、前記回転防止装置(33)によって確実に阻止されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納位置において集電装置のすり板装置を固定する固定装置及び方法に関し、すり板装置は、導体レールに対し収納位置と摺動接触位置との間を移動可能である。
【背景技術】
【0002】
集電装置、及び摺動接触位置において導体レールに押し付けられるすり板である、すり板装置を持つ集電装置を操作する方法は、先行技術から十分に知られており、導体レールから鉄道車両に電力を伝送する鉄道車両において一般に用いられる。導体レールは、通常、走行レールの領域に配置され、第三軌条とも呼ばれる。既知の集電装置において、すり板は、ジョイントから形成されたロッカー、ロッカーアーム、又はガイドに配置され、ジョイントから形成されたロッカー、ロッカーアーム、又はガイドは、導体レールに対してすり板を固定する又は移動させるために機能する。このすり板の機械式サスペンションによって、すり板は、決められた圧力を用いて導体レールの摺動接触面に押し付けられ得て、よって摺動接触位置に移動され得る。ここでは、導体レールと、導体レールの上側に対して、又は導体レールの下側に対して、又は導体レールの側面に対して、摺動接触位置において押し付けられるすり板を持つ集電装置と、の間の区別がされる。すり板は、通常は始動傾斜路を介する、導体レール上におけるすり板の上下への移動によって、導体レールに接触させられ得て、そしてロッカー又はジョイントガイドが、すり板上に押し戻され得て、よって要求される接触圧力がバネ要素によって与えられ得る。このバネ要素は、機械式ねじりばね、巻ばね、又はゴムばねとして設計され得る。
【0003】
加えて、例えば、もし鉄道車両が異なる方法にて電力を供給されるならば、すり板装置は、ジョイントによって形成されたロッカー、ロッカーアーム、又はガイドによって、摺動接触位置から収納位置に移動され得る。例えば、対応する集電装置を有する車両の鉄道網の拡大された利用は、これらの鉄道車両が鉄道網を横断するときに、異なる電力供給システム間での切り替えを必要とし得る。そのため、関連される鉄道車両は、それぞれの鉄道路線での鉄道車両の使用を可能とするために、電力レールシステムを逸脱する集電装置をさらに装備され得る。したがって、集電装置での送電が行われ得ない場合には、関連する集電装置又はそのすり板装置は、導体レールから分離されなければならず、鉄道車両の収納位置に移動されなければならない。たとえ、鉄道車両の集電装置の一部だけが送電に使用されるとしても、それぞれのすり板の不要な摩耗を避けるために、未使用の集電装置又はすり板を、関連する導体レールから分離することが適切である。
【0004】
既知の集電装置は、多くの場合、すり板装置の圧力装置を有し、この圧力装置は、摺動接触位置において、すり板を導体レールに押し付けて、鉄道の動きを相殺し、例えば、高速度による衝撃によって引き起こされる、すり板の機械的な過剰応力を最小化する。しかし、鉄道車両の運転によって引き起こされる負荷によるロックの解除や、収納位置から摺動接触位置へのすり板装置の意図しない移動を防ぐために、収納位置において鉄道車両のすり板装置を確実に保持することも必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、収納位置において、集電装置のすり板装置を単純かつ安全にロックすることができる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有するロック装置、請求項14の特徴を有する集電装置、及び請求項15の特徴を有する方法によって達成される。
【0007】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。また、明細書、請求項及び/又は図面に記載された特徴の少なくとも2つの組合せの全ては、本発明の範囲内である。
【0008】
収納位置において集電装置のすり板装置を固定する本発明に係る回転移動のロック装置は、すり板装置が、導体レールに対して収納位置と摺動接触位置との間を移動可能であり、カムと、回転可能に設けられたシャフトと、回転防止装置と、を有する。本発明によれば、カムは、回転可能に固定されるようにシャフトに配置されており、シャフトの回転によって、カムがすり板装置の移動を解放するカムの解放位置から、カムが収納位置にすり板装置を支持するカムのロック位置へ移動可能である。すり板装置のすり板が導体レールから分離されて、すり板装置が収納位置に移動されるならば、カムは、シャフトの回転によって、ロック位置に移動され得る。ロック位置において、カムは、導体レールに対するすり板装置の移動が阻止されるように、第1接触面において、集電装置に、好ましくは集電装置のロッカーユニットに接触する。言い換えれば、カムは、集電装置とカムの第1接触面とが接触することによって、すり板が収納位置から摺動接触位置へ戻ることを抑制する。カムを解放位置又はロック位置に固定するために、シャフトの回転移動が、回転防止装置によって確実に阻止される。よって、本発明に係る回転防止装置、カム及びシャフトの協働が、ロック位置におけるカムの固定、及びシャフトの回転移動の阻止によって、収納位置にすり板装置を固定することを可能にする。
【0009】
好ましくは、本発明に係るロック装置は、すり板が摺動接触面を形成するすり板装置を持つ圧力装置と、ロッカーユニットとを備える集電装置に配置され、ここで圧力が、揺動可能に設計されたロッカーユニットのロッカーと圧力装置のバネ要素とによって、ロッカーに配置されたすり板装置上に形成されるので、その結果、すり板が、導体レールに対して移動され得て、摺動接触を形成するために要求される圧力を使用して摺動接触位置へ導体レールに対して押し付けられる。圧力装置のロッカーユニットは、ロッカーに取り付けられたすり板装置を有する無負荷のロッカーが、導体レールに対して収納位置から摺動接触位置に移動され得るように、回転可能に設計され得る。この要求される圧力は、バネ要素によって与えられ得る。ばね要素には、接触圧力を発生することに適する機械式、空圧式、液圧式のバネ要素があり得る。したがって、ロッカーユニットは、摺動接触位置と収納位置との間でのすり板又はすり板装置の移動を可能にする。これにより、ロッカーユニットのロッカーは、単純なピボットジョイントにより揺動可能に設けられ得る、又はピボット点にそれぞれが設けられる複数のジョイントからも形成され得る。本発明に係るロック装置が集電装置のロッカーユニットに配置されること、及びロック位置におけるロック装置のカムが、すり板装置が収納位置に固定されるように、集電装置のロッカーユニットを支持することが、考えられる。
【0010】
本発明の文脈において、「回転防止装置」という用語は、確実な接続を形成することによって、その回転軸に対するロック装置のシャフトの回転を確実に阻止するあらゆる装置を意味すると理解される。これは、確実な接続が、シャフトを再び解放するために、この接続を簡単に解放するだけでなく、特に高い力の伝達性を可能にし得るためである。よって、カムは、回転防止装置とカムが回転可能に固定されるように配置されるシャフトとの間に確実な接続を形成することによって、その解放位置又はロック位置において固定され得て、加えて、シャフトは、カムを解放位置からロック位置に移動させるため、又はカムをロック位置から解放位置に移動させるために、回転防止装置とシャフトとの間のこの確実な接続が解除されることによって、再び解放され得る。
【0011】
この回転防止装置は、シャフトの回転軸に沿ってシャフト内に配置されたピンと、ボルトと、シャフトに沿って固定されたブッシングと、を有する。必要に応じて回転移動を阻止することを可能にするため、ボルトは、シャフトの回転軸に対して垂直にピンの中へ挿入され得て、シャフト及びピンを少なくとも部分的に囲むブッシングの凹部へ挿入され、ボルトとブッシングとの間の確実な接続が形成される。好ましくは、ボルトは、ボルトとブッシングとの間に確実な接続を形成するため、シャフトの回転軸に沿ってブッシングの少なくとも1つの凹部の中へ挿入され得る。シャフトの回転軸と、シャフト内に配置されたピンの長手方向軸と、が一致すると考えられる。シャフトの回転移動を固定することを、特に確実に達成するために、ボルトが、シャフト及びピンを通して噛み合い得る。
【0012】
カムを、ロック位置から解放位置へ、又は解放位置からロック位置へ移動させるために、シャフトが、シャフトのブッシングの周りに少なくとも部分的にかみ合っているときに、ブッシング内に回転移動可能に配置されていなければならないことが、当業者には理解し得る。ブッシング自体は、ボルトを介するシャフトの回転移動のロックを可能にするために、シャフトからは独立して、ロック装置、集電装置、又は鉄道車両のさらなる要素に固定され得る。よって、有利には、シャフトの回転移動を阻止するために、ボルトが、固定されたブッシングの凹部の中に確実に噛み合い、これにより、ボルトが、ピンによって、好ましくはシャフトの回転軸に沿ったシャフト内のピンの移動によって、又はシャフトの回転軸に対するピンの移動によって、噛み合わせられ得る、又は噛み合わせが解除され得る。
【0013】
もし、ピンがシャフトの中にバネを介して取り付けられ、バネ力に抗してシャフトの回転軸に沿って移動され得るならば、特に有利である。好ましくは、シャフトのロックは、その後シャフトの回転軸に沿った、バネ力に抗するピンの移動によって行われ、一方で、シャフトのロックは、ピンの移動によって、又はバネ力によるブッシングの凹部へのボルトの挿入によって行われ得る。ピンに接続されたボルトは、バネ力によりブッシングの少なくとも1つの凹部に噛み合い得る、又ははまり得る。
【0014】
さらに、もし、ピンに挿入されたボルトがシャフトに形成された溝内を移動されるならば、有利であることが示されている。有利には、溝が、ボルトの経路を制限し、よってシャフト内のピンの経路も制限する。好ましくは、シャフトの外周面に180°ずらしてシャフトに形成された溝が、シャフトを貫通するボルトの経路を制限する。
【0015】
ブッシングの円周に沿って、少なくとも2つの溝が、ロック位置及び/又は解放位置においてカムをロックするために配置され得る。このロック位置及び解放位置、又はロック位置と解放位置との間の経路の長さは、ブッシングの外周の凹部の位置の関数として定義され得る。好ましくは、少なくとも2つの凹部が、ブッシングの外周面に90°の角度において互いにずらして配置される。このことは、例えば、カムが、第1凹部に噛み合わされたときに、解放位置においてロックされることを可能とし、カムが、第2凹部に噛み合わされたときに、90°移動された後にロック位置においてロックされることを可能とする。言い換えれば、カムは、カムの90°の回転の後に、いずれの場合においても固定され得る。さらに好ましくは、4つの凹部は、ブッシングの外周の周りに均等に配置され、つまり、シャフトを囲む円筒形状ブッシングの場合には、互いに90°の間隔を空けて配置される。よって、シャフトを貫通するボルトは、シャフトの回転移動のロック、及びカムの位置の固定のために、互いに対向して配置された2つの凹部に同時に噛み合い得る。凹部へのボルトの挿入を容易にするため、凹部は、スロットのように設計され得る。
【0016】
もし、凹部が、ボルトが凹部に挿入され得る挿入傾斜部を少なくとも1つ有するならば、ボルトは、カムの位置が変更されたときに、簡単な方法かつ最小限の抵抗によって、凹部内へ滑り得る。好ましくは、挿入傾斜部は、面取りによって形成される。
【0017】
収納位置にすり板装置をさらに固定するため、カムは、集電装置の第2接触面、及び/又はロック装置のハウジングの第2接触面、及び/又はロック装置の保持装置の第2接触面に接触させられ得る。このように、力が、特に加速によりすり板装置及び/又はロッカーユニットに伝達される力が、ロック装置のハウジング、集電装置、特にその支持装置又は圧力装置、又は鉄道車両に伝達され得る。この保持装置が、ロック装置のハウジングの一部を形成する、及び/又はハウジングに接続されることが考えられる。
【0018】
シャフトの回転軸とロッカーユニットの回転軸とが、平行であり得る、及び/又は間隔を空けて配置され得る。好ましくは、ロック装置のシャフトの回転軸が、ロッカーユニットの回転軸と平行に延び、ロッカーユニットの回転軸から間隔を空けて配置される。
【0019】
取付プレートが、ロック装置のシャフトに沿ったブッシングの取り付けのため、特に回転可能に固定されて取り付けのために、ブッシングに配置され得る。この締結プレートは、着脱可能な接続を使用して、好ましくはネジ接続を使用して、ロック装置の保持装置に配置され得る。このロック装置の保持装置は、集電装置に、及び/又はロック装置が配置された鉄道車両に、接続される。もし、保持装置もロック装置のシャフトを支持するならば、有利であることが示されている。ロック装置の保持装置は、集電装置の要素によって、例えば集電装置の圧力装置又は支持装置によって、少なくとも部分的に形成されることが考えられる。取付プレートの好ましい実施形態によれば、取付プレートは2つの穴を有しており、その内の1つはシャフトを囲み、もう1つは接続手段を、好ましくはネジを通すために機能する。この実施形態によれば、ブッシングは、シャフトがブッシング及び締結プレートを貫通するように、シャフトを囲む締結プレートの第1穴に配置される。ワッシャは、特にネジ接続によって締結するときに、締結プレートの微調整のために、及び保持装置に対する位置合わせのために使用され得る。加えて、ワッシャは、着脱可能な接続の安全性を向上し得る。
【0020】
ロック装置の回転防止装置の簡易な操作のために、シャフトは、一端部において、角柱状の外側輪郭を、好ましくは正方形状の角柱状の外側輪郭を有し得る。角柱状の外側輪郭に相補的なレンチ又はナットのような、シャフトの角柱状の外側輪郭に相補的な工具が、シャフトを、よってカムを動かすために使用され得る。好ましくは、ピンがシャフトの一端部に挿入され、好ましくは、角柱状の外側輪郭が、ピンが挿入された一端部においてシャフトに設けられる。さらに好ましくは、ブッシング又は取付プレートと、シャフト端部又はシャフト端面と、の間のシャフトの一部が、角柱状の外側輪郭を有する。この結果、角柱状の外側輪郭は、ブッシング及び/又は取付プレートの停止部を同時に形成し得る。
【0021】
シャフトの回転移動がシャフトの回転軸に沿ってロックされたときに、ピンが、シャフト端面又はシャフト端部を越えて突出し得ることが考えられる。ピンの突出する端部を動かすことによって、特にシャフトの中へピンの突出する端部を押し込むことによって、ボルトとブッシングとの間での確実なロックが、ブッシングの少なくとも1つの凹部の中から外へボルトを案内することによって解放され得る。有利には、回転防止装置の状態も、シャフトを越えて突出するピンの一部に基づいた単純な目視確認を介して、確認され得る。もし、ピンがシャフトを越えて突出するならば、ピンはブッシングの凹部に確実に噛み合っており、シャフトの回転移動が阻止される。これにより、もし、ピンがシャフト内に挿入されており、そのためにボルトとブッシングの凹部との間の確実な噛み合いがないならば、シャフトの回転移動が可能にされる。好ましくは、ピンを受け入れるためにシャフトに形成された穴の長さは、少なくともピンの長さに対応する。よって、シャフト内でのピンの移動の経路が、少なくともシャフト端面を越えて突出するピンの一部の長さに対応する。シャフトの回転移動が阻止されたときにシャフトの面を越えて突出するピンの一部は、ピンの残りの部分よりも小さい直径、又はピンの残りの部分とは異なる断面を有し得て、よってピン延長部とよばれ得る。さらに好ましくは、シャフトの回転移動が、シャフトの回転軸に沿って阻止されたとき、ピンはシャフト端面を越えて突出し、その端部においてシャフトが角柱状の外側輪郭を有する。有利には、シャフトを回転させることによって工具を使用するカムの調整をするために、シャフトの角柱状の外側輪郭に相補的に設計された工具が角柱状の外側輪郭に配置され得て、そして同時に、ピンが、シャフトの回転移動を解放するために、この工具を使用してシャフトの中へ押し込まれ得る。
【0022】
この回転防止装置の保護のために、ロック装置は、シャフトの外周に配置された回転防止ハウジングを備え得る。回転防止装置の保護を確実にするために回転防止ハウジングは、少なくとも部分的に回転防止装置を囲むべきであり、よって、塵、摩耗、潤滑剤及び/又は液体のような外的要因から回転防止装置を保護する。好ましくは、回転防止ハウジングは、ブッシング又はボルトを囲む。さらに好ましくは、回転防止ハウジングは、ブッシング及びピンを囲む。考えられることとして、回転防止ハウジングは、形状が円筒形であり、シャフト及びブッシング上を滑らされ得る。さらに、回転防止ハウジングは、ブッシング及びシャフトも配置される保持装置の凹部へ挿入され得る。シャフトの回転軸に沿った回転防止ハウジングの意図しない移動を防ぐために、カムは、回転防止装置の一方側の停止部として機能し得て、維持装置は回転防止装置の他方側の停止部として機能し得る。
【0023】
カムをシャフトに確実に接続するために、カムは、シャフトを貫通するねじ接続によって、回転可能に固定されるようにシャフトに配置され得る。
【0024】
導体レールから車両に電力を伝送する本発明に係る集電装置は、本発明に係るロック装置を備え、集電装置は、支持装置と、すり板装置と、ロッカーユニットを有する圧力装置と、を備える。支持装置は、集電装置を車両に固定するために機能する。この集電装置のすり板装置は、圧力装置によって、導体レールに対して移動可能であり、かつ摺動接続を形成するために、圧力を使用して摺動接触位置において、導体レールに押し付けられ得る。
集電装置のさらに有利な実施形態は、装置の請求項1を参照する従属請求項の特徴の記述から得られる。
【0025】
導体レールに対して収納位置と摺動接触位置との間を移動可能な集電装置のすり板装置を、少なくとも1つのカムと、回転可能に設けられたシャフトと、回転防止装置と、を有するロック装置によって収納位置に固定する方法において、シャフトの回転移動は、シャフトに回転可能に固定されるように配置されたカムを移動させるために、回転防止装置によって解放され得て、その後、すり板装置が収納位置に移動された後に、カムは、すり板装置の移動が集電装置に対して阻止されるように、シャフトの回転によって解放位置からロック位置へ移動され得て、集電装置の第1接触面に、好ましくは集電装置のロッカーユニットの第1接触面に接触させられ得る。すり板装置が収納位置に移動され、カムが解放位置からロック位置に移動された後に、ロック位置においてカムを固定するシャフトの回転移動が、回転防止装置によって、確実に阻止され得る。
【0026】
この方法のさらに有利な実施形態は、装置の請求項1及び装置の請求項1を参照する従属請求項の特徴の記述から得られる。同様に、装置について記載された全ての特徴及び実施形態は、たとえ同一でなくとも、本発明に係る方法についても同等に参照する。この文脈において、慣用的な言語の変化及び/又は慣用的な言語的慣習におけるそれぞれの用語の実質的な同義語は、特に、一般に認められた言語学の文献によって支持された類義語の使用は、それぞれが明確な記述における明らかな言及がされていなくとも、本開示によって包含される。
【0027】
以下さらに説明される、上述された実施形態及び実施形態の例は、本発明の範囲から逸脱することなく、個別に形成され得るだけでなく、互いに任意に組み合わせても形成され得ることが理解される。同様に、上述され、以下さらに説明される実施形態及び実施形態の例は、本発明に係る方法と同等のもの又は少なくとも類似するものに関連することが、後者について個別に言及されることがなくとも理解される。
【0028】
本発明の実施形態が、図面において概略的に示され、以下例示的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、摺動接触位置におけるすり板装置を有する、集電装置の側面図を示す。
図2図2は、収納位置におけるすり板装置を有する、図1の集電装置の側面図を示す。
図3図3は、ロック位置におけるカムを有する、本発明に係るロック装置の断面図を示す。
図4図4は、解放位置におけるカムを有する、断面図における図3に示される本発明に係るロック装置の等角図を示す。
図5図5は、ロック状態におけるシャフトを有する、図3に示される本発明に係るロック装置を通る長手方向断面図を示す。
図6図6は、解放状態におけるシャフトを有する、図5のロック装置を通る長手方向断面図を示す。
図7図7は、図5のロック装置の細部Yを示す。
図8図8は、図6のロック装置の細部Zを示す。
図9図9は、斜視図において、本発明に係るロック装置の回転防止装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び図2を合わせて見れば、導体レール12上の車両(詳細を不図示)のホイール11間の集電装置10がわかる。この集電装置10は、支持装置13及び圧力装置14だけでなく、すり板15を有するすり板装置16も備える。支持装置13は、車両(詳細は不図示)に集電装置を固定するように機能する。すり板15は、圧力装置14に接続されて、示される摺動接触位置において導体レール12に当たっている。ここで示される実施形態において、すり板15の摺動接触面は、集電装置10と導体レール12との間における電気的接触が確実にされるように、導体レール12の表面に接触している。しかし、すり板15が、導体レール12の下方から導体レール12に接触させられることも考えられ得る。
【0031】
圧力装置14は、圧力を用いて導体レール12にすり板15を押し付け、ここで圧力装置14は、ロッカー20及びバネ要素21を用いて圧力を形成するロッカーユニット19を備える。さらに、圧力装置14は、支持装置13にバネ要素21を接続する固定要素22を備える。このバネ要素21は、例えば、巻ばね(不図示)と軸とから形成され得て、この巻ばねは、回転可能に固定されるように軸に接続される。ロッカーユニット19は、バネ要素21、又はコイルバネ及び軸を囲む、回転可能に設けられたスリーブを形成する。特に、ロッカー20は、軸上又はコイルバネ上のスリーブの回転が、ロッカー20とすり板装置16とを揺動させるように、スリーブに配置され、又はねじ止めされる。このバネ要素21は、圧力が導体レールの方向においてのみ作用されるように設計される。ロッカーユニット19の揺動装置によって、図2に示されるように、ロッカー20とすり板装置16とが、摺動接触位置と収納位置との間において移動され得る。鉄道車両(不図示)の断面に関連して、すり板装置16を持つ接触圧力装置14は、結果的に、摺動接触位置において導体レール12の拡大された有効範囲28内に配置され、収納位置において縮小された有効範囲29内に配置される。このことが、車両の有効断面積を小さくすることを可能とし、よって物体や建造物との衝突を防止し得る。このようにして、さまざまな線路においてこの種の鉄道車両を使用する可能性が、実質的に拡大され得る。
【0032】
図3及び図4を合わせて見ることから、ロック位置と解放位置との間でのカムの調整が明らかとなり、図3はロック位置におけるカムを示し、図4は解放位置におけるカム31を示している。図3の本発明に係るロック装置30を示す断面図において、カムは、第1接触面34においてロッカーユニット19のロッカー20に接触させられて、収納位置において、回転軸43に対して回転可能なこのロッカーユニット19を支持することが理解され得る。収納位置においてロッカーユニット19を付加的に固定するために、カム31は、ロック装置30のハウジング50の第2接触面42に接触する。カム31は、ネジ接続49を介してシャフト32に回転不能に接続されるので、カム31は、シャフト32の回転によって揺動され得る。加えて、シャフト32内を案内されたピン36は、シャフト32が回転をロックされたときに、ピン36がシャフト32の端面47から突出し、視認できる。簡単な工具によってロック装置30を操作することを可能とするために、ピン36が突出するシャフト32の端部には、角柱状の外側輪郭46が設けられ、ここでは正方形の形状である。特に、図4から、締結プレート44に配置された(不図示)ブッシング38は、締結プレート44及びネジ接続45を介してロック装置30の保持装置51に接続されることが理解され得る。シャフト32及びブッシング38に対する、締結プレート44又はネジ接続45の微調整のために、ワッシャ51が、締結プレート44とネジ53との間に配置される。
【0033】
図5及び図6に併せて、図7及び図8に示される図5及び図6から抜粋された細部Y及びZを合わせて見れば、シャフト32の回転移動のロック及び解放の機能が理解され得る。図5は、シャフト32の回転移動がロックされたロック装置30を示し、一方で、図6は、シャフト32の回転移動が解放されたロック装置30を示す。シャフト32が、回転軸35に対して回転可能に設けられており、カム31が、シャフト32によって移動するために、ネジ接続49を介してシャフト32に回転不能に配置されることがわかる。回転防止装置33は、本質的にブッシング38、ブッシング38に配置された取付プレート44、ピン36、ボルト37、バネ40及び回転防止ハウジング48から構成される。ピン36は、バネ40によってシャフト32内においてバネが装填されており、シャフト32の回転軸に沿ってシャフト32内を摺動可能である。図5に示される状態において、ピン36がシャフト32の端面47を越えて延びるので、シャフト32の回転はロックされていることを、ユーザは、容易に認識できる。シャフトの端面47を越えて突出するピン36の部分は、ピン36の残りの部分よりも認識し得るほどに小さな直径を有しており、よってピン延長部52と呼ばれ得る。シャフト32の回転移動がロックされたとき、図5に示されるように、ブッシング38が取付プレート44を介して固定された保持装置51に接続されているので、ボルト37は、ブッシング38の凹部39に確実に挿入され、シャフト32の回転移動をロックする。これに対して、図6は、シャフト32の回転移動が解放された回転防止装置の状態を示す。ピン延長部52はシャフト32の中へ完全に挿入されて、ピン36がシャフト端面47と面一になることを可能にし、ユーザが、シャフト32の回転移動が解放されたことを視覚的に確認することを可能にする。ピン36は、シャフト32の角柱状の外側輪郭46に相補的に対応する工具の単純な装着を介して挿入され得て、この工具を使用してシャフト32の中にピン36を挿入することに加えて、シャフト32の回転移動ももたらされ得る。ピン36をバネ40のバネ力に抗してシャフト32の中へ押し込むことによって、ボルト37が回転軸35とピン36とに沿って移動されて、さらにボルト37が凹部39には噛み合わないので、ブッシング38の凹部39とボルト37との間の確実な接続が解除される。ピン36がシャフト32に挿入された後、よってシャフト32の回転移動が、カム31をロック位置から解放位置に、又はカム31を解放位置からロック位置に移動し得る。
【0034】
図9は、シャフト32に配置された回転防止装置33を有するシャフト32の一部分を示し、回転防止ハウジング48の図示は、明確性の為に省略されている。シャフト32は、一端部において角柱状の外側輪郭46を有し、角柱状の外側輪郭46は、工具(不図示)によって噛み合わされることが理解され得る。本件では、角柱状の外側輪郭46を有する端部は、シャフト端面47から締結プレート44まで延びる。図9に示される回転防止装置33の状態によれば、ボルト37は凹部39の外側に配置されて、よってボルト37がブッシング38との確実な接続を形成しないので、シャフト32の回転移動が解放される。しかし、もしピン36が、シャフト32の回転軸35(不図示)に沿ってシャフト32内のシャフト端面47を越えて移動されるならば、そのときは、ピン36とシャフト32とを貫通するボルト37が、溝41内を移動されて、ブッシング38の凹部39に挿入される。ピン37の挿入は、挿入傾斜部54によって大幅に簡易化される。加えて、図9において、少なくとも2つが見える4つの凹部39は、ブッシング38の外周を横断して、互いに90°の角度に配置される。このことは、この凹部の位置が、他の位置においてシャフト32の回転移動をロックすることを許容しないので、カム31が、解放位置からロック位置へ移動される、又はロック位置から解放位置へ移動されるように、90°回転することを意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】