(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147817
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】香味吸引器および香味吸引器の製造方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20241008BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20241008BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/20
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024123235
(22)【出願日】2024-07-30
(62)【分割の表示】P 2022568000の分割
【原出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 則喜
(72)【発明者】
【氏名】桝田 雄気
(57)【要約】 (修正有)
【課題】収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することを抑制する。
【解決手段】香味吸引器100は、開口縁部によって一端に開口が形成され、開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する筒状の収容部50と、開口の全周にわたって開口縁部と当接する当接部34と、収容部50から離れた位置で、収容部50と当接部34との間を封止する封止部38と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口縁部によって一端に開口が形成され、前記開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する筒状の収容部と、
前記開口の全周にわたって前記開口縁部と当接する筒状の当接部と、
前記収容部から離れた位置で、前記収容部と前記当接部との間を封止する封止部と、
を備えた香味吸引器。
【請求項2】
請求項1に記載の香味吸引器であって、
前記封止部は、
前記収容部の外周面の全周にわたって設けられ、前記収容部を支持する環状の第1部材と、
前記当接部の全周にわたって前記当接部と接触するとともに、前記第1部材の全周にわたって前記第1部材と係合する、弾性素材で構成された第2部材と、を有し、
前記第1部材と前記第2部材との接触箇所にシール部が形成され、
前記シール部は、前記第1部材の外縁よりも前記収容部の半径方向において前記収容部の軸側に形成されている、
香味吸引器。
【請求項3】
請求項2に記載の香味吸引器であって、
前記シール部は、前記収容部の軸方向に沿って延在するシール面を有する、
香味吸引器。
【請求項4】
請求項3に記載の香味吸引器であって、
前記第1部材および前記第2部材は、前記収容部の軸方向に沿って並んで配置され、
前記第1部材は、前記収容部の軸方向に沿って前記第2部材に向けて突出する凸部を有し、
前記第2部材は、前記凸部に対向して設けられた凹部を有し、
前記シール面は、前記凸部の前記収容部の軸方向内側の面と前記凹部の前記収容部の軸方向外側の面との接触箇所に形成されている、
香味吸引器。
【請求項5】
請求項3に記載の香味吸引器であって、
前記第1部材および前記第2部材は、前記収容部の軸方向に沿って並んで配置され、
前記第1部材は、前記収容部の軸方向に沿って前記第2部材に向けて突出する第1突出部を有し、
前記第2部材は、前記収容部の軸方向に沿って前記第1部材に向けて突出する第2突出部を有し、
前記シール面は、前記第1突出部の前記収容部の軸方向内側の面と前記第2突出部の前記収容部の軸方向外側の面との接触箇所に形成されている、
香味吸引器。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記シール面で互いに摺動可能である、
香味吸引器。
【請求項7】
請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記第2部材は、前記当接部によって押圧される被押圧部を有する、
香味吸引器。
【請求項8】
請求項7に記載の香味吸引器であって、
前記第2部材は、前記被押圧部が前記当接部によって押圧されることにより、前記第1部材に付勢される、
香味吸引器。
【請求項9】
請求項2から請求項8までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記第2部材は、前記香味吸引器の筐体および前記香味吸引器の筐体に固定された固定部の少なくとも一方に係合される位置決め部を有する、
香味吸引器。
【請求項10】
請求項2から請求項9までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記第2部材は、前記当接部の状態を検出する状態検出部を保持する保持部を有する、
香味吸引器。
【請求項11】
開口縁部によって一端に開口が形成され、前記開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する筒状の収容部と、
前記開口の全周にわたって前記開口縁部と当接する筒状の当接部と、
前記収容部から離れた位置で、前記収容部と前記当接部との間を封止する封止部と、
を備え、
前記封止部は、前記封止部から突出し、前記当接部によって押圧される、環状でかつ弾性部材で構成された被押圧部を有し、
押圧される前の状態において、前記被押圧部の突出長さは、突出方向に直交する前記被押圧部の厚みよりも長い、
香味吸引器。
【請求項12】
開口縁部によって一端に開口が形成され、前記開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する筒状の収容部と、
前記開口縁部と当接する筒状の当接部と、
前記収容部から離れた位置で、前記収容部と前記当接部との間を封止する封止部と、
を備え、
前記封止部は、前記当接部によって押圧される、環状でかつ弾性部材で構成された被押圧部を有する香味吸引器の製造方法であって、
前記収容部を前記封止部内に配置することと、
前記封止部を前記香味吸引器の筐体内に配置することと、
前記開口縁部と当接するように、前記当接部を前記封止部内に挿入することと、
前記当接部を前記封止部内に挿入することで、前記被押圧部を前記当接部の挿入方向に押圧するとともに、前記被押圧部を前記収容部の半径方向外側に向けて付勢することでシール部を形成することと、有する、
香味吸引器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味吸引器および香味吸引器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料の燃焼をすることなく香味等を吸引するための香味吸引器が知られている。このような香味吸引器として、例えば、香味発生物品を収容する収容部と、収容部に収容される香味発生物品を加熱する加熱部とを有し、Oリングを用いて気密を確保するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された香味吸引器では、収容部の近傍にOリングが配置されている。そのため、加熱部からの熱や収容部で発生したエアロゾルへの長期間の暴露により、Oリングが劣化するおそれがある。その結果、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することを抑制することができる香味吸引器および香味吸引器の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1形態によれば、香味吸引器が提供される。この香味吸引器は、開口縁部によって一端に開口が形成され、開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する筒状の収容部と、開口の全周にわたって開口縁部と当接する当接部と、収容部から離れた位置で、収容部と当接部との間封止する封止部と、を備える。
【0007】
本発明の第1形態によれば、封止部が収容部から離れた位置で、収容部と当接部との間を封止することにより、収容部からの熱が封止部分に伝わりにくく、封止部分の劣化が抑制されるので、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することを抑制することができる。
【0008】
本発明の第2形態では、第1形態において、封止部は、収容部の外周面の全周にわたって設けられ、収容部を支持する環状の第1部材と、当接部の全周にわたって当接部と接触するとともに、第1部材の全周にわたって第1部材と係合する、弾性素材で構成された第2部材と、を有し、第1部材と第2部材との接触箇所にシール部が形成され、シール部は、第1部材の外縁よりも収容部の半径方向において収容部の軸側に形成されている。
【0009】
本発明の第2形態によれば、第1部材と第2部材との接触箇所で、第1部材の外縁よりも収容部の半径方向において収容部の軸側にシール部が形成されるので、第1部材の外縁にシール部が形成される場合よりも、香味吸引器を小型化することができる。また、第2部材が弾性素材で構成されているので、シール部のシール性を向上させることができる。
【0010】
本発明の第3形態では、第2形態において、シール部は、収容部の軸方向に沿って延在するシール面を有する。
【0011】
本発明の第3形態によれば、第1部材と第2部材とが面で接触してシール面を形成することにより、第1部材と第2部材とが接触する面積を広くとることができるので、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することをより抑制することができる。
【0012】
本発明の第4形態では、第3形態において、第1部材および第2部材は、収容部の軸方向に沿って並んで配置され、第1部材は、収容部の軸方向に沿って第2部材に向けて突出する凸部を有し、第2部材は、凸部に対向して設けられた凹部を有し、シール面は、凸部の収容部の軸方向内側の面と凹部の収容部の軸方向外側の面との接触箇所に形成されている。
【0013】
本発明の第4形態によれば、凸部と凹部との接触箇所で、凸部の面と凹部の面とが接触してシール面が形成されるので、シール面のシール性を向上させて、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することをより抑制することができる。また、凸部と凹部とでシール面を形成することで、エアロゾルの漏出経路長を長くとることができるので、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することをさらに抑制することができる。
【0014】
本発明の第5形態では、第3形態において、第1部材および第2部材は、収容部の軸方向に沿って並んで配置され、第1部材は、収容部の軸方向に沿って第2部材に向けて突出する第1突出部を有し、第2部材は、収容部の軸方向に沿って第1部材に向けて突出する第2突出部を有し、シール面は、第1突出部の収容部の軸方向内側の面と第2突出部の収容部の軸方向外側の面との接触箇所に形成されている。
【0015】
本発明の第5形態によれば、第1突出部と第2突出部との接触箇所で、第1突出部の面と第2突出部の面とが接触してシール面が形成されるので、シール面のシール性を向上させて、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することをより抑制することができる。
【0016】
本発明の第6形態では、第3形態から第5形態までのいずれかにおいて、第1部材と第2部材とは、シール面で互いに摺動可能である。
【0017】
本発明の第6形態によれば、収容部に軸方向の力が加えられた場合であっても、第1部材と第2部材とがシール面で互いに摺動することにより、収容部を支持する第1部材に応力が生じないので、第1部材と第2部材との間でシール破壊が生じることを抑制することができる。
【0018】
本発明の第7形態では、第2形態から第6形態までのいずれかにおいて、第2部材は、当接部によって押圧される被押圧部を有する。
【0019】
本発明の第7形態によれば、被押圧部が当接部によって押圧されることにより、当接部と第2部材との間でシールが形成されるので、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することを抑制することができる。
【0020】
本発明の第8形態では、第7形態において、第2部材は、被押圧部が当接部によって押圧されることにより、第1部材に付勢される。
【0021】
本発明の第8形態によれば、被押圧部が当接部によって押圧されることにより、第2部材が第1部材に付勢されるので、シール面のシール性を向上させることができる。
【0022】
本発明の第9形態では、第2形態から第8形態までのいずれかにおいて、第2部材は、香味吸引器の筐体および香味吸引器の筐体に固定された固定部の少なくとも一方に係合される位置決め部を有する。
【0023】
本発明の第9形態によれば、位置決め部により第2部材が香味吸引器の筐体または香味吸引器の筐体に固定された固定部に保持されるので、筐体内における収容部の位置ずれを抑制することができる。
【0024】
本発明の第10形態では、第2形態から第9形態までのいずれかにおいて、第2部材は、当接部の状態を検出する状態検出部を保持する保持部を有する。
【0025】
本発明の第10形態によれば、状態検出部を用いて当接部の状態を検出することができるので、例えば状態検出部としてサーミスタを用いることにより、当接部の温度変化に基づいてパフ動作を検出することができる。
【0026】
本発明の第11形態によれば、香味吸引器が提供される。この香味吸引器は、開口縁部によって一端に開口が形成され、開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する筒状の収容部と、開口の全周にわたって開口縁部と当接する筒状の当接部と、収容部から離れた位置で、収容部と当接部との間を封止する封止部と、を備え、封止部は、封止部から突出し、当接部によって押圧される、環状でかつ弾性部材で構成された被押圧部を有し、押圧される前の状態において、被押圧部の突出長さは、突出方向に直交する被押圧部の厚みよりも長い。
【0027】
本発明の第11形態によれば、封止部が収容部から離れた位置で、収容部と当接部との間を封止することにより、収容部からの熱が封止部分に伝わりにくく、封止部分の劣化が抑制されるので、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することを抑制することができる。また、押圧される前の状態において、被押圧部の突出長さが被押圧部の厚みよりも長いので、当接部を挿入する際の抵抗を低減しながら、当接部と被押圧部との間でシールを形成することができる。
【0028】
本発明の第12形態によれば、香味吸引器の製造方法が提供される。この香味吸引器の製造方法は、開口縁部によって一端に開口が形成され、開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する筒状の収容部と、開口縁部と当接する筒状の当接部と、収容部から離れた位置で、収容部と当接部との間を封止する封止部と、を備え、封止部は、当接部によって押圧される、環状でかつ弾性部材で構成された被押圧部を有する香味吸引器の製造方法であって、収容部を封止部内に配置することと、封止部を香味吸引器の筐体内に配置することと、開口縁部と当接するように、当接部を封止部内に挿入することと、当接部を封止部内に挿入することで、被押圧部を当接部の挿入方向に押圧するとともに、被押圧部を収容部の半径方向外側に向けて付勢することでシール部を形成することと、有するものである。
【0029】
本発明の第12形態によれば、封止部が収容部から離れた位置で、収容部と当接部との間を封止することにより、収容部からの熱が封止部分に伝わりにくく、封止部分の劣化が抑制されるので、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出することを抑制することができる香味吸引器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】本実施形態に係る香味吸引器の概略正面図である。
【
図1B】本実施形態に係る香味吸引器の概略上面図である。
【
図1C】本実施形態に係る香味吸引器の概略底面図である。
【
図3】
図1Bに示した矢視3-3における香味吸引器の断面図である。
【
図4B】
図4Aに示す矢視4B-4Bにおけるチャンバの断面図である。
【
図5A】
図4Bに示す矢視5A-5Aにおけるチャンバの断面図である。
【
図5B】
図4Bに示す矢視5B-5Bにおけるチャンバの断面図である。
【
図7】チャンバ内の所望の位置に香味発生物品が配置された状態の
図5Bに示す断面図である。
【
図10】ガスケットおよび円環部材の斜視図である。
【
図12】挿入ガイド部材がインナハウジングに挿入された場合の円環部材の状態を示す断面図である。
【
図13】第2保持部の別の形態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一のまたは相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0032】
図1Aは、本実施形態に係る香味吸引器100の概略正面図である。
図1Bは、本実施形態に係る香味吸引器100の概略上面図である。
図1Cは、本実施形態に係る香味吸引器100の概略底面図である。本明細書で説明する図面においては、説明の便宜のためにX-Y-Z直交座標系を付することがある。この座標系において、Z軸は鉛直上方を向いており、X-Y平面は香味吸引器100を水平方向に切断するように配置されており、Y軸は香味吸引器100の正面から裏面へ延出するように配置されている。Z軸は、後述する霧化部30のチャンバ50に収容される香味発生物品の挿入方向、またはチャンバ50の軸方向ということもできる。また、X軸は、Y軸およびZ軸に直交する方向である。
【0033】
本実施形態に係る香味吸引器100は、例えば、エアロゾル源を含んだ香味源を有するスティック型の香味発生物品を加熱することで、香味を含むエアロゾルを生成するように構成される。
【0034】
図1Aから
図1Cに示されるように、香味吸引器100は、アウタハウジング101(筐体の一例に相当する)と、スライドカバー102と、スイッチ部103と、を有する。アウタハウジング101は、香味吸引器100の最外のハウジングを構成し、ユーザの手に収まるようなサイズを有する。ユーザが香味吸引器100を使用する際は、香味吸引器100を手で保持して、エアロゾルを吸引することができる。アウタハウジング101は、複数の部材を組み立てることによって構成されてもよい。アウタハウジング101は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等、あるいは、アルミ等の金属で形成され得る。
【0035】
アウタハウジング101は、香味発生物品を受け入れるための図示しない開口を有し、スライドカバー102は、この開口を閉じるようにアウタハウジング101にスライド可能に取り付けられる。具体的には、スライドカバー102は、アウタハウジング101の上記開口を閉鎖する閉位置(
図1Aおよび
図1Bに示す位置)と、上記開口を開放する開位置との間を、アウタハウジング101の外表面に沿って移動可能に構成される。例えば、ユーザがスライドカバー102を手動で操作することにより、スライドカバー102を閉位置と開位置とに移動させることができる。これにより、スライドカバー102、香味吸引器100の内部への香味発生物品のアクセスを許可または制限することができる。
【0036】
スイッチ部103は、香味吸引器100の作動のオンとオフとを切り替えるために使用される。例えば、ユーザは、香味発生物品を香味吸引器100に挿入した状態でスイッチ部103を操作することで、図示しない加熱部に図示しない電源から電力が供給され、香味発生物品を燃焼させずに加熱することができる。なお、スイッチ部103は、アウタハウジング101の外部に設けられるスイッチであってもよいし、アウタハウジング101の内部に位置するスイッチであってもよい。スイッチがアウタハウジング101の内部に位置する場合、アウタハウジング101の表面のスイッチ部103を押下することで、間接的にスイッチが押下される。本実施形態では、スイッチ部103のスイッチがアウタハウジング101の内部に位置する例を説明する。
【0037】
香味吸引器100はさらに、図示しない端子を有してもよい。端子は、香味吸引器100を例えば外部電源と接続するインターフェースであり得る。香味吸引器100が備える電源が充電式バッテリである場合は、端子に外部電源を接続することで、外部電源が電源に電流を流し、電源を充電することができる。また、香味吸引器100は、端子にデータ送信ケーブルを接続することにより、香味吸引器100の作動に関連するデータを外部装置に送信できるように構成され得る。
【0038】
次に、本実施形態に係る香味吸引器100で使用される香味発生物品について説明する。
図2は、香味発生物品110の概略側断面図である。本実施形態において、香味吸引器100と香味発生物品110とにより喫煙システムが構成され得る。
図2に示す例においては、香味発生物品110は、喫煙可能物111と、筒状部材114と、中空フィルタ部116と、フィルタ部115と、を有する。
【0039】
喫煙可能物111は、第1の巻紙112によって巻装される。筒状部材114、中空フィルタ部116、およびフィルタ部115は、第1の巻紙112とは異なる第2の巻紙113によって巻装される。第2の巻紙113は、喫煙可能物111を巻装する第1の巻紙112の一部も巻装する。これにより、筒状部材114、中空フィルタ部116、およびフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結される。ただし、第2の巻紙113が省略され、第1の巻紙112を用いて筒状部材114、中空フィルタ部116、およびフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結されてもよい。第2の巻紙113のフィルタ部115側の端部近傍の外面には、ユーザの唇を第2の巻紙113から離しやすくするためのリップリリース剤117が塗布される。香味発生物品110のリップリリース剤117が塗布される部分は、香味発生物品110の吸口として機能する。
【0040】
喫煙可能物111は、例えばたばこ等の香味源と、エアロゾル源とを含み得る。また、喫煙可能物111を巻く第1の巻紙112は、通気性を有するシート部材であり得る。筒状部材114は、紙管または中空フィルタであり得る。図示の例では、香味発生物品110は、喫煙可能物111、筒状部材114、中空フィルタ部116、およびフィルタ部115を備えているが、香味発生物品110の構成はこれに限られない。例えば、中空フィルタ部116が省略され、筒状部材114とフィルタ部115とが互いに隣接配置されてもよい。
【0041】
次に、香味吸引器100の内部構造について説明する。
図3は、
図1Bに示した矢視3-3における香味吸引器100の断面図である。
図3に示すように、香味吸引器100のアウタハウジング101の内側には、インナハウジング10(筐体の一例に相当する)が設けられる。インナハウジング10は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等、あるいは、アルミ等の金属で形成され得る。なお、耐熱性や強度の観点から、インナハウジング10は、PEEKであることが好ましい。インナハウジング10の内部空間には、電源部20と、霧化部30と、が設けられる。また、アウタハウジング101とインナハウジング10とを合わせて筐体と呼ぶことがある。
【0042】
電源部20は、電源21を有する。電源21は、例えば、充電式バッテリまたは非充電式のバッテリであり得る。電源21は、霧化部30と電気的に接続される。これにより、電源21は、香味発生物品110を適切に加熱するように、霧化部30に電力を供給することができる。
【0043】
霧化部30は、図示のように、香味発生物品110の挿入方向(Z軸方向)に延びるチャンバ50(収容部の一例に相当する)と、チャンバ50の一部を覆う加熱部40と、断熱部32と、略筒状の挿入ガイド部材34(当接部の一例に相当する)と、を有する。チャンバ50は、香味発生物品110を収容するように構成される。加熱部40は、チャンバ50の外周面に接触し、チャンバ50に収容された香味発生物品110を加熱するように構成される。図示のように、チャンバ50の底部には、底部材36が設けられていてもよい。底部材36は、チャンバ50に挿入された消費材110を位置決めするストッパとして機能し得る。底部材36は、香味発生物品110が当接する面に凹凸を有し、香味発生物品110が当接する面に空気を供給可能な空間を画定し得る。底部材36は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等、あるいは、アルミ等の金属でから形成され得る。なお、底部材36は、断熱部32等に熱が伝わることを抑制するために、熱伝導率の小さい素材で形成されることが好ましい。
【0044】
断熱部32は、全体として略筒状であり、チャンバ50を覆うように配置される。断熱部32は、例えばエアロゲルシートを含み得る。挿入ガイド部材34は、例えば樹脂材料により形成され、閉位置にあるスライドカバー102とチャンバ50との間に設けられる。挿入ガイド部材34は、スライドカバー102が開位置にあるときに、香味吸引器100の外部と連通し、香味発生物品110を挿入ガイド部材34に挿入することで、チャンバ50への香味発生物品110の挿入を案内する。
図3において、スライドカバー102が挿入ガイド部材34の全体を覆うように閉じている状態を2点鎖線で示す。
【0045】
香味吸引器100は、さらに、チャンバ50および断熱部32の両端を支持する、第1保持部37と、第2保持部38とを有する。第1保持部37は、チャンバ50および断熱部32のZ軸負方向側の端部を支持するように配置される。第2保持部38は、チャンバ50および断熱部32のスライドカバー102側(Z軸正方向側)の端部を支持するように配置される。第1保持部37および第2保持部38についての詳細は後述する。
【0046】
次に、チャンバ50の構造について説明する。
図4Aは、チャンバ50の斜視図である。
図4Bは、
図4Aに示す矢視4B-4Bにおけるチャンバ50の断面図である。
図5Aは、
図4Bに示す矢視5A-5Aにおけるチャンバ50の断面図である。
図5Bは、
図4Bに示す矢視5B-5Bにおけるチャンバ50の断面図である。
図6は、チャンバ50および加熱部40の斜視図である。
【0047】
図4Aおよび
図4Bに示すように、チャンバ50は、香味発生物品110が挿入される開口52と、香味発生物品110を収容する筒状の側壁部60と、を含む筒状形状を有し得る。チャンバ50の一端に形成される開口52を画定する端面には、フランジ部52a(開口縁部の一例に相当する)が形成される。チャンバ50は、耐熱性を有し、熱膨張率の小さい素材で形成されることが好ましく、例えば、ステンレス鋼等で形成され得る。なお、チャンバ50は、金属の他、PEEK等の樹脂や、ガラス、セラミック等で形成されてもよい。これにより、チャンバ50から香味発生物品110へ効果的な加熱が可能になる。なお、チャンバ50は、筒状形状に限定されず、カップ形状を有していてもよい。
【0048】
図4Bおよび
図5Bに示すように、側壁部60は、接触部62と、離間部66と、を含む。香味発生物品110がチャンバ50内の所望の位置に配置されたとき、接触部62は、香味発生物品110の一部と接触または押圧し、離間部66は、香味発生物品110から離間する。なお、本明細書において、「チャンバ50内の所望の位置」とは、香味発生物品110が適切に加熱される位置、またはユーザが喫煙するときの香味発生物品110の位置をいう。接触部62は、内面62aと、外面62bとを有する。離間部66は、内面66aと、外面66bとを有する。
図6に示すように、加熱部40は、接触部62の外面62bに配置される。加熱部40は、接触部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。なお、加熱部40は接着層を含んでもよい。その場合、接着層を含む加熱部40が、接触部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。
【0049】
図4Aおよび
図5Bに示すように、接触部62の外面62bは平面である。接触部62の外面62bが平面であることにより、
図6に示すように接触部62の外面62bに配置される加熱部40に帯状の電極48が接続されている場合に、帯状の電極48が撓むことを抑制することができる。
図4Bおよび
図5Bに示すように、接触部62の内面62aは平面である。また、
図4Bおよび
図5Bに示すように、接触部62の厚みは均一である。
【0050】
図4A、
図4Bおよび
図5Bに示すように、チャンバ50は、接触部62をチャンバ50の周方向に2つ有し、2つの接触部62は、互いに平行になるように対向する。2つの接触部62の内面62a間の少なくとも一部の距離は、チャンバ50に挿入される香味発生物品110の接触部62間に配置される箇所の幅よりも小さいことが好ましい。
【0051】
図5Bに示すように、離間部66の内面66aは、チャンバ50の長手方向(Z軸方向)に直交する面において、全体的に円弧状の断面を有し得る。また、離間部66は、接触部62と周方向において隣接するように配置される。
【0052】
図4Bに示すように、チャンバ50は
図3に示した底部材36が貫通してチャンバ50内部に配置されるように、その底部56に孔56aを有し得る。底部材36は、チャンバ50の底部56の内部に接着剤等により固定され得る。なお、底部材36と底部56との間に介在する接着剤は、エポキシ樹脂等の樹脂材料で構成され得る。また、これに代えて、セメントや溶接等、無機の接着剤も用いられ得る。底部56に設けられる底部材36は、香味発生物品110の端面の少なくとも一部を露出するように、チャンバ50に挿入された香味発生物品110の一部を支持し得る。また、底部56は、露出した香味発生物品110の端面が後述する空隙67(
図7参照)と連通するように、香味発生物品110の一部を支持し得る。
【0053】
図4Aおよび
図4Bに示すように、チャンバ50は、開口52と側壁部60との間に筒状の非保持部54を有することが好ましい。香味発生物品110がチャンバ50の所望の位置に位置決めされた状態において、非保持部54と香味発生物品110との間に隙間が形成され得る。また、
図4Aおよび
図4Bに示すように、チャンバ50は、非保持部54の内面と接触部62の内面62aとを接続するテーパ面58aを備えた第1ガイド部58を有することが好ましい。
【0054】
図6に示すように、加熱部40は、加熱要素42を有する。加熱要素42は、例えばヒーティングトラックであってもよい。加熱要素42は、チャンバ50の離間部66に接触せず、接触部62を加熱するように配置されることが好ましい。言い換えれば、加熱要素42は、接触部62の外面にのみ配置されることが好ましい。加熱要素42は、チャンバ50の離間部66を加熱する部分と、接触部62を加熱する部分とで、加熱能力に差を有していてもよい。具体的には、加熱要素42は、離間部66よりも接触部62を高い温度に加熱するように構成されていてもよい。例えば、接触部62と離間部66とにおける加熱要素42のヒーティングトラックの配置密度が調整され得る。また、加熱要素42は、チャンバ50の全周において略同一の加熱能力を有して、チャンバ50の外周に巻回されてもよい。
図6に示すように、加熱部40は、加熱要素42に加えて、加熱要素42の少なくとも一面を覆う電気絶縁部材44を有することが好ましい。本実施形態においては、電気絶縁部材44は加熱要素42の両面を覆う様に配置される。
【0055】
図7は、チャンバ50内の所望の位置に香味発生物品110が配置された状態の
図5Bに示す断面図である。
図7に示すように、香味発生物品110がチャンバ50内の所望の位置に配置されると、香味発生物品110はチャンバ50の接触部62と接触して押圧され得る。他方、香味発生物品110と離間部66との間には、空隙67が形成される。空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられた香味発生物品110の端面と連通し得る。これにより、チャンバ50の開口52から流入した空気は、空隙67を通過して、香味発生物品110の内部に流入することができる。言い換えれば、香味発生物品110と離間部66との間に空気流路(空隙67)が形成される。
【0056】
次に、チャンバ50および断熱部32を保持する第1保持部37および第2保持部38(封止部の一例に相当する)の構造について説明する。
図8は、第1保持部37の拡大断面図である。
図9は、第2保持部38の拡大断面図である。なお、
図9では、後述する円環部材90は、挿入ガイド部材34が図示しないインナハウジングに挿入される前の状態、すなわち円環部材90の被押圧部92が押し倒されていない状態を示している。
【0057】
図8に示すように、第1保持部37は、キャップ72と、ヒータクッション74と、を有する。キャップ72は、チャンバ50と対面する第1側面72aがチャンバ50の底部56と当接してチャンバ50を支持するように構成される。キャップ72は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等から形成され得る。なお、キャップ72は、金属やガラス、セラミック等で形成されてもよい。また、耐熱性の観点から、キャップ72は、PEEKであることが好ましい。また、キャップ72には、第1側面72aとは反対側の面に、ヒータクッション74に向けて突出したリブ72bが立設されている。
【0058】
ヒータクッション74は、キャップ72の一端を収容して支持するように構成される。ヒータクッション74は、キャップ72に形成されたリブ72bと当接するように構成される第2側面74dを有する。また、ヒータクッション74は、チャンバ50とは反対側の面に、固定部22と当接するよう構成され、チャンバ50とは反対方向に突出する突起部74aが設けられた第3側面74eを有する。ヒータクッション74は、例えばシリコーンゴム等の弾性部材で形成され得る。なお、シリコーンゴムを用いる場合、好適なショアA硬度の範囲は、40~60であり、ヒータクッション74の変形に応じて適宜選択可能である。また、ヒータクッション74は、図示しないインナハウジングに固定された固定部22に位置決め固定されるよう構成される。なお、固定部22は、インナハウジングそのものであってもよい。
【0059】
図9に示すように、チャンバ50のフランジ部52aは、全周にわたって挿入ガイド部材34と当接するよう構成される。挿入ガイド部材34は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等から形成され得る。なお、挿入ガイド部材34は、金属やガラス、セラミック等で形成されてもよい。また、耐熱性の観点から、挿入ガイド部材34は、PEEKであることが好ましい。第2保持部38は、チャンバ50から離れた位置、具体的にはチャンバ50を覆う加熱部40から熱的に離間した位置で、香味発生物品110の加熱によってチャンバ50で発生し、チャンバ50と挿入ガイド部材34との間から漏出するエアロゾルを封止するよう構成される。
【0060】
具体的には、第2保持部38は、ガスケット80(第1部材の一例に相当する)と、円環部材90(第2部材の一例に相当する)と、を有する。ガスケット80および円環部材90により、封止部が形成される。ガスケット80は、チャンバ50の非保持部54の周囲に、チャンバ50の外周面の全周にわたって配置され、チャンバ50を支持する環状の部材として構成される。ガスケット80は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等から形成され得る。なお、ガスケット80は、金属やガラス、セラミック等で形成されてもよい。また、耐熱性の観点から、ガスケット80は、PEEKであることが好ましい。
【0061】
円環部材90は、後述する被押圧部92で挿入ガイド部材34の全周にわたって挿入ガイド部材34と接触するとともに、ガスケット80の全周にわたってガスケット80と係合してこれらを支持するように構成される。円環部材90は、例えばシリコーンゴム等の弾性部材で形成され得る。なお、シリコーンゴムを用いる場合、好適なショアA硬度の範囲は、40~60であり、円環部材90の変形に応じて適宜選択可能である。また、円環部材90は、図示しないインナハウジングに固定された固定部22に位置決め固定されるよう構成される。
【0062】
ここで、ガスケット80と円環部材90との接触箇所には、チャンバ50の軸方向に沿って延在するシール面85が形成される。シール面85は、ガスケット80の外縁よりもチャンバ50の半径方向においてチャンバ50の軸側に形成されている。これにより、ガスケット80および円環部材90を有する第2保持部38が、チャンバ50から離れた位置で、チャンバ50と挿入ガイド部材34との間からインナハウジング内部に漏出するエアロゾルを封止することができる。
【0063】
このように、第2保持部38がチャンバ50から離れた位置で、チャンバ50と挿入ガイド部材34との間から漏出するエアロゾルを封止することにより、チャンバ50からの熱が封止部分に伝わりにくく、封止部分の劣化が抑制されるので、チャンバ50で発生したエアロゾルがインナハウジング内部に漏出することを抑制することができる。
【0064】
また、ガスケット80と円環部材90との接触箇所で、ガスケット80の外縁よりもチャンバ50の半径方向においてチャンバ50の軸側にシール面85が形成されるので、ガスケット80の外縁にシール面が形成される場合よりも、香味吸引器100を小型化することができる。また、円環部材90が弾性素材で構成されているので、シール面85のシール性を向上させることができる。
【0065】
さらに、ガスケット80と円環部材90とが面で接触してシール面85を形成することにより、ガスケット80と円環部材90とが接触する面積を広くとることができるので、チャンバ50で発生したエアロゾルがインナハウジング内部に漏出することをより抑制することができる。なお、ガスケット80と円環部材90とは、必ずしも面で接触する必要はなく、
図9に示す断面視において、ガスケット80と円環部材90とは、点で接触してもよい。この場合、ガスケット80と円環部材90との接触箇所には、シール部が形成される。
【0066】
次に、ガスケット80および円環部材90の好ましい形状について説明する。
図10は、ガスケット80および円環部材90の斜視図である。
図11は、円環部材90および固定部22の斜視図である。
図9、
図10および
図11に示すように、ガスケット80は、顎部81と、凸部82とを有する。また、円環部材90は、凹部91と、被押圧部92と、位置決め部93と、保持部94と、を有する。ガスケット80および円環部材90は、チャンバ50の軸方向に沿って並んで配置されている。
【0067】
ガスケット80の顎部81は、ガスケット80の内周面に形成され、チャンバ50のフランジ部52aと係合して、チャンバ50を支持するように構成される。ガスケット80の凸部82は、ガスケット80の本体部分からチャンバ50の軸方向に沿って円環部材90に向けて突出するように構成される。
【0068】
円環部材90の凹部91は、ガスケット80の凸部82に対向して設けられる。ここで、シール面85は、凸部82のチャンバ50の軸方向内側の面と凹部91のチャンバ50の軸方向外側の面との接触箇所に形成されている。これにより、凸部82と凹部91との接触箇所で、凸部82の面と凹部91の面とが接触してシール面85が形成されるので、シール面85のシール性を向上させて、チャンバ50で発生したエアロゾルがインナハウジング内部に漏出することをより抑制することができる。また、凸部82と凹部91とでシール面85を形成することで、エアロゾルの漏出経路長を長くとることができるので、チャンバ50で発生したエアロゾルがインナハウジング内部に漏出することをさらに抑制することができる。
【0069】
このとき、ガスケット80の凸部82と円環部材90の凹部91とは、シール面85で互いに摺動可能に構成されることが好ましい。これによれば、例えば挿入ガイド部材34によってチャンバ50に軸方向の力が加えられ、チャンバ50が軸方向に移動した場合であっても、凸部82と凹部91とがシール面85で互いに摺動することにより、チャンバ50を支持するガスケット80に応力が生じない。そのため、ガスケット80と円環部材90との間でシール破壊が生じることを抑制することができる。
【0070】
なお、凸部82と凹部91との接触箇所にシール面85が形成されると説明したが、これに限定されるものではない。ガスケット80および円環部材90は、それぞれチャンバ50の軸方向に沿って円環部材90およびガスケット80に向けて突出する第1突出部および第2突出部を有し、第1突出部のチャンバ50の軸方向内側の面と第2突出部のチャンバ50の軸方向外側の面との接触箇所にシール面が形成されてもよい。
【0071】
この場合であっても、第1突出部と第2突出部との接触箇所で、第1突出部の面と第2突出部の面とが接触してシール面が形成されるので、シール面のシール性を向上させて、チャンバ50で発生したエアロゾルがインナハウジング内部に漏出することをより抑制することができる。
【0072】
円環部材90の被押圧部92は、円環部材90の内周面から突出して形成され、挿入ガイド部材34と接触する環状のリップ状の部材として構成される。被押圧部92の突出長さ(チャンバ50の半径方向に沿った長さ)は、被押圧部92の厚み(チャンバ50の軸方向に沿った長さ)よりも長く、被押圧部92は、挿入ガイド部材34の外径よりも小さい内径を有する。被押圧部92は、香味吸引器100の製造時において、挿入ガイド部材34がインナハウジングに挿入される際、挿入ガイド部材34によって押圧され、Z軸負方向側に押し倒される。
図12は、挿入ガイド部材がインナハウジングに挿入された場合の円環部材の状態を示す断面図である。
図12に示すように、円環部材90の被押圧部92は、挿入ガイド部材34の挿入方向(図中上方から下方)に押し倒されている。
【0073】
これにより、挿入ガイド部材34と被押圧部92との間でシールが形成されるので、チャンバ50で発生したエアロゾルがインナハウジング内部に漏出することを抑制することができる。また、被押圧部92の突出長さが被押圧部92の厚みよりも長いので、挿入ガイド部材34挿入時の抵抗を低減しながら、挿入ガイド部材34と被押圧部92との間でシールを形成することができる。さらに、挿入ガイド部材34挿入時の抵抗を低減することで、円環部材90の外周部がスライドカバー102側(Z軸正方向側)にめくれ、ガスケット80との係合が不完全になることを防止することができる。
【0074】
このとき、円環部材90は、被押圧部92が挿入ガイド部材34によって押圧されることにより、ガスケット80に付勢されるよう構成されることが好ましい。これによれば、円環部材90がガスケット80に付勢されるので、シール面85のシール性を向上させることができる。
【0075】
以上まとめると、円環部材90の凹部91は、ガスケット80の凸部82に対向して設けられ、凹部91に凸部82が挿入されて、円環部材90がガスケット80に保持される。チャンバ50は、底部側からガスケット80に通されたとき、フランジ部52aが通過しないので、チャンバ50は、ガスケット80に保持される。フランジ部52aとガスケット80との間は、粘着剤や接着剤によって隙間なく密着される。また、ガスケット80は、断熱部32の一端側の内径に嵌って、断熱部32を保持する。
【0076】
ヒータクッション74は、チャンバ50の底部側と、断熱部32の他端側の内径と、を保持する。ヒータクッション74の第2側面74dには、支持部72に設けられたリブ72bが当接し、ヒータクッション74の第3側面74eに形成された突起部74aが固定部22に当接している。
【0077】
これら、円環部材90とガスケット80とチャンバ50と断熱材32とヒータクッション74とからなる加熱ユニットが筐体内に収容された状態で、挿入ガイド部材34を筐体内へ差し込むと、挿入ガイド部材34が被押圧部92に接触する。被押圧部92の直径は、挿入ガイド部材34の直径よりも小さくされているので、挿入ガイド部材34の挿入とともに被押圧部92が挿入方向に押し倒され、被押圧部92の一面が挿入ガイド部材34に密着して、被押圧部92の一面と挿入ガイド部材34との間をシールする。その後、挿入ガイド部材34の先端がフランジ部52aに接触し、さらに、挿入ガイド部材34の爪が筐体と係合するまで差し込むと、ヒータクッション74にリブ72bが食い込み、同時にヒータクッション74の突起部74aが潰れてヒータクッション74が反力を生じる。この反力により、フランジ部52aに挿入ガイド部材34の先端が密着し、フランジ部52aと挿入ガイド部材34との間の隙間が解消される。この隙間の解消により、この隙間からチャンバ50内に存在するエアロゾルが筐体内へ漏出することを抑制することができる。
【0078】
特許文献1に記載された香味吸引器において、Oリングは、溝に嵌めるために伸長され、さらに取り付けた状態で圧縮されるので、溝が形成される部材には、長期間圧縮応力が作用し続ける。溝が変形すると、収容部で発生したエアロゾルが香味吸引器の筐体内部に漏出してしまい、電子回路部の劣化を促進させたり、電気接点部の接点不良による装置の故障を招いたりするおそれがある。これを回避するためには、溝が形成される部材の剛性を高めるべく、厚肉化や高剛性材料を採用する必要がある。また、安定した圧縮量を確保するためには、溝が形成される部材を高い精度で製作することが求められる。その結果、装置の大型化やコストアップを招く場合がある。
【0079】
これに対して、本実施形態では、上述した簡素な構成により、フランジ部52aと挿入ガイド部材34との間の隙間を解消することができる。
【0080】
また、この種の機器は携帯されるので、時にはユーザが誤って落下させてしまうことがある。落下させて機器と地面とが衝突した瞬間に機器に変形が生じ、ヒータクッション74の作用によるフランジ部52aと挿入ガイド部材34の先端との密着が一瞬だけ解消される場合がある。密着が解消されると、フランジ部52aと挿入ガイド部材34との間の隙間から筐体内にエアロゾルが漏出するおそれがある。
【0081】
そこで、本実施形態では、フランジ部52aと挿入ガイド部材34との間に生じた隙間を経由して筐体内にエアロゾルが漏出することを防止するために、また、簡単な構成で、かつ装置の大型化を回避できるようにするために、押し倒されることで挿入ガイド部材34と円環部材90との間、および円環部材90とガスケット80との間のシール性を確保することができる環状部材90を配置している。
【0082】
なお、
図10では、円環部材90の被押圧部92がリップ状の部材であると説明したが、これに限定されるものではない。
図13は、第2保持部の別の形態を示す拡大断面図である。
図13に示すように、被押圧部192は、円環部材90の内周面から挿入ガイド部材34に向けて円弧状に突出し、
図9に示す断面視において、挿入ガイド部材34と点で接触する環状の部材として構成されてもよい。また、被押圧部192は、挿入ガイド部材34の外径よりも小さい内径を有する。この場合、円環部材90の内周面全体が挿入ガイド部材34と接触する場合と比較して、挿入ガイド部材34挿入時の抵抗を低減しながら、挿入ガイド部材34と被押圧部192との間でシールを形成することができる。
【0083】
円環部材90の位置決め部93は、円環部材90の本体部分から外側に向けて突出し、固定部22に形成された位置決め爪22aに係合するように構成される。これにより、円環部材90が固定部22に保持されるので、円環部材90とガスケット80とが協働して、インナハウジング内におけるチャンバ50の位置ずれを抑制することができる。そのため、挿入ガイド部材34を容易に装着することができる。
【0084】
円環部材90の保持部94は、円環部材90の本体部分から外側に向けて突出し、挿入ガイド部材34の状態を検出する状態検出部を保持するように構成される。状態検出部は、例えばパフサーミスタである。これによれば、パフサーミスタにより挿入ガイド部材34の温度変化を測定し、ユーザによるパフ動作を検出することができる。
【0085】
なお、
図8および
図9において、チャンバ50で発生するエアロゾルが、チャンバ50と挿入ガイド部材34との間からインナハウジング内部に漏出することをさらに抑制するために、ヒータクッション74により、チャンバ50を挿入ガイド部材34に付勢し、チャンバ50のフランジ部52aと挿入ガイド部材34との間にシールが形成されてもよい。
【0086】
このような香味吸引器100の製造方法は、チャンバ50を封止部内に配置することと、封止部をインナハウジング内に配置することと、フランジ部52aと当接するように、挿入ガイド部材34を封止部内に挿入することと、挿入ガイド部材34を封止部内に挿入することで、被押圧部92を挿入ガイド部材34の挿入方向に押圧するとともに、被押圧部92をチャンバ50の半径方向外側に向けて付勢することでシール部を形成することとを有する。
【0087】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書および図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0088】
例えば、本実施形態の香味吸引器100は、チャンバ50の開口52から流入した空気が香味発生物品110の端面に供給される、いわゆるカウンターフロー式の空気流路を有するが、これに限らず、チャンバ50の底部56からチャンバ50内に空気が供給する、いわゆるボトムフロー式の空気流路を有してもよい。また、加熱要素42は、抵抗加熱型に限らず、誘導加熱型であってもよい。その場合、加熱要素42は、誘導加熱によってチャンバ50を加熱することができる。また、香味発生物品110がサセプタを有する場合には、加熱要素42が誘導加熱によって香味発生物品110のサセプタを加熱することができる。
【符号の説明】
【0089】
10…インナハウジング
22…固定部
22a…位置決め爪
34…挿入ガイド部材
37…第1保持部
38…第2保持部
50…チャンバ
52…開口
52a…フランジ部
72…キャップ
74…ヒータクッション
80…ガスケット
81…顎部
82…凸部
85…シール面
90…円環部材
91…凹部
92…被押圧部
93…位置決め部
94…保持部
100…香味吸引器
101…アウタハウジング
110…香味発生物品
192…被押圧部
【手続補正書】
【提出日】2024-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口縁部によって一端に開口が形成され、前記開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する筒状の収容部と、
前記開口縁部と当接する筒状の当接部と、
前記収容部から離れた位置で、前記収容部と前記当接部との間を封止する封止部と、
を備えた香味吸引器。
【請求項2】
請求項1に記載の香味吸引器であって、
前記封止部は、
前記収容部の外周に設けられ、前記収容部を支持する環状の第1部材と、
前記当接部の全周にわたって前記当接部と接触する、弾性素材で構成された第2部材と、を有し、
前記第1部材と前記第2部材との接触箇所に第1シール部が形成される、
香味吸引器。
【請求項3】
請求項2に記載の香味吸引器であって、
前記第1シール部は、前記第1部材の外縁よりも前記収容部の半径方向において前記収容部の軸側に形成されている、
香味吸引器。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の香味吸引器であって、
前記当接部と前記第2部材との接触箇所に第2シール部が形成される、
香味吸引器。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記第1部材および前記第2部材は、前記収容部の軸方向に沿って並んで配置される、
香味吸引器。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記第1部材は、前記収容部の外周面の全周にわたって設けられ、
前記第2部材は、前記第1部材の全周にわたって前記第1部材と係合する、
香味吸引器。
【請求項7】
請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記第1部材は、前記開口縁部を支持する、
香味吸引器。
【請求項8】
請求項2から請求項7までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記第1部材は、前記第1部材の内周面に形成された顎部を有する、
香味吸引器。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記開口縁部は、フランジ部である、
香味吸引器。
【請求項10】
請求項8を引用する請求項9に記載の香味吸引器であって、
前記顎部は、前記フランジ部と係合し、前記収容部を支持する、
香味吸引器。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記当接部は、前記開口の全周にわたって前記開口縁部と当接する、
香味吸引器。