(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147824
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】炎検知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241008BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B17/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124163
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2020058710の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良太朗
(72)【発明者】
【氏名】脇野 陽介
(57)【要約】
【課題】複数波長式炎検知器が正常に動作するか否かを試験員が安全かつ効率的に確認できるようにする。
【解決手段】炎検知システム1は、炎検知器11と、炎検知器11と通信接続された防災受信盤12と、防災受信盤12と通信接続されたサーバ装置13と、サーバ装置13と通信が可能なテスタ14を備える。炎検知器11は、例えば、二波長式炎検知器である。炎検知器11は、試験モードにおいて、テスタ14から照射される試験用の光に応じて炎を検知した場合、防災受信盤12に炎検知信号を送信する。防災受信盤12は、炎検知器11から炎検知信号を受信すると、サーバ装置13に炎検知の通知を送信する。サーバ装置13は、防災受信盤12から炎検知の通知を受信すると、テスタ14に受信通知を送信する。テスタ14は、サーバ装置13から受信通知を受信すると、ユーザに受信通知を受信したことを通知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎検知器と、前記炎検知器と通信接続された防災受信盤と、前記防災受信盤と通信接続されたサーバ装置と、前記サーバ装置と通信が可能な端末装置とを備え、
前記炎検知器は、複数の波長帯の各々に関し当該波長帯の光の強度に応じた振幅の信号を出力するセンサと、前記複数の波長帯の各々に関し前記センサが出力する信号の振幅の比率と閾値との比較結果に基づき炎を検知する検知部と、前記炎検知器が正常に動作するか否かを試験するための光の照射に応じて前記検知部が炎を検知した場合に前記防災受信盤に炎検知信号を送信する送信部とを備え、
前記防災受信盤は、前記炎検知器が送信する炎検知信号を受信する受信部と、自装置の前記受信部が炎検知信号を受信した場合に前記サーバ装置に炎検知の通知を送信する送信部とを備え、
前記サーバ装置は、前記防災受信盤が送信する炎検知の通知を受信する受信部と、自装置の前記受信部が炎検知の通知を受信した場合に前記端末装置に受信通知を送信する送信部とを備え、
前記端末装置は、前記サーバ装置が送信する受信通知を受信する受信部と、自装置の前記受信部が受信通知を受信した場合にユーザに受信通知を受信したことを通知する通知部とを備える
炎検知システム。
【請求項2】
前記端末装置は、前記炎検知器が正常に動作するか否かを試験するための光を照射するライトを備える
請求項1に記載の炎検知システム。
【請求項3】
前記端末装置の前記送信部は、前記炎検知器が設置されている場所の識別情報を前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置の前記受信部は、前記端末装置が送信する、前記炎検知器が設置されている場所の識別情報を受信し、
前記サーバ装置の前記送信部は、前記サーバ装置の前記受信部が受信した識別情報により識別される場所に設置されている防災受信盤から炎検知の通知を送信した場合、前記受信部が受信した識別情報の送信元の前記端末装置に受信通知を送信する
請求項1又は2に記載の炎検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎検知器の正常動作を確認するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
炎検知器の不具合に起因する炎の誤検知や非検知を防止するために、炎検知器が正常動作するか否かを然るべき頻度で試験することが重要である。炎検知器の正常動作を確認するための技術を開示している文献として、例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、火災検知器に対し、炎からの放射線を模した試験光と、試験光の照射により火災検知器が出力する火災信号に応じて警報動作を行っている防災受信盤を通常動作に復旧させるための試験復旧光とを照射できるテスタが開示されている。特許文献1に記載のテスタによれば、火災検知器の試験時に警報動作を行っている防災受信盤を正常動作に戻すために、試験員が防災受信盤の場所まで移動する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炎検知器には、複数の波長帯の各々に関し、それらの波長帯の光の強度に応じた振幅の信号を出力するセンサを用いて、それらの波長帯に関しセンサが出力する信号の振幅の比率を閾値と比較することで、炎の有無を判定する方式のものがある。以下、本願において、そのような方式の炎検知器を「複数波長式炎検知器」という。
【0006】
複数波長式炎検知器の正常動作を確認するためのテスタとしては、従来、炎が発する光に含まれる複数の波長帯の各々の成分の振幅の比率を模すために、各々が異なる波長帯の光を発する複数の光源を備え、また、外界からの光がそれらの比率を乱さないように、炎検知器の窓を覆うように接触させるタイプのテスタ(以下、「接触型テスタ」という)が用いられている。
【0007】
接触型テスタを用いて炎検知器が正常に動作するか否かの試験を行う場合、試験員は試験を行うために炎検知器のある場所まで移動しなければならず手間である。さらに、炎検知器が高所に設置されている場合は、試験員が試験作業中に落下する可能性があり危険である。
【0008】
このような事情に鑑みて、本発明は、複数波長式炎検知器が正常に動作するか否かを試験員が安全かつ効率的に確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、複数の波長帯の各々に関し、当該波長帯の光の強度に応じた振幅の信号を出力するセンサと、前記複数の波長帯の各々に関し前記センサが出力する信号の振幅の比率と閾値との比較結果に基づき炎を検知する検知部と、自装置の動作モードが運用モードと試験モードのいずれであるかを判定するモード判定部とを備え、前記検知部は、前記モード判定部が運用モードであると判定しているときは運用モード用の閾値を用いて炎を検知し、前記モード判定部が試験モードであると判定しているときは前記運用モード用の閾値とは異なる試験モード用の閾値を用いて前記センサが正常か否かを判定する炎検知器を第1の態様として提供する。
【0010】
また、本発明は、複数の波長帯の各々に関し、当該波長帯の光の強度に応じた振幅の信号を出力するセンサと、自装置の動作モードが運用モードと試験モードのいずれであるかを判定するモード判定部とを備え、前記センサは、照射された光に感応して生成する信号の振幅を増減するアンプを有し、前記センサは、前記モード判定部が運用モードであると判定しているときと試験モードであると判定しているときとで、前記複数の波長帯の各々に関し照射された光に感応して生成する信号の振幅を、前記アンプを用いて異なる比率の増減幅率で増減した後、出力し、前記複数の波長帯の各々に関し前記センサが出力する信号の振幅の比率と閾値との比較結果に基づき炎を検知する検知部を備える炎検知器を第2の態様として提供する。
【0011】
第1又は第2の態様に係る炎検知器によれば、正常に動作するか否かの試験を行うために、炎が発する光と類似の比率の振幅で複数の波長帯の成分を含む光を炎検知器に照射する必要はない。そのため、第1の態様に係る炎検知器による場合、例えば、テスタが照射する光を離れた位置から炎検知器に照射した場合に正常動作しているセンサが複数の波長帯の各々に関し出力する信号の振幅の比率に基づき試験モード用の閾値を決定し、その閾値を設定しておくことで、テスタが照射する光を離れた位置から炎検知器に照射して炎検知器の試験を行うことができる。また、第2の態様に係る炎検知器による場合、例えば、テスタが照射する光を離れた位置から炎検知器に照射した場合に正常動作しているセンサが複数の波長帯の各々に関し出力する信号の振幅の比率に基づき試験モード用の増減幅率を複数の波長帯の各々に関し決定し、それらの増減幅率を設定しておくことで、テスタが照射する光を離れた位置から炎検知器に照射して炎検知器の試験を行うことができる。
【0012】
第1又は第2の態様に係る炎検知器において、前記モード判定部が試験モードであると判定しているときに、視認可能な態様で通知を行う通知部を備える、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第3の態様に係る炎検知器によれば、試験員は炎検知器が見える場所であれば炎検知器から離れていても、炎検知器が正常動作しているか否かを確認できる。
【0014】
第1乃至第3のいずれかの態様に係る炎検知器において、前記モード判定部は、前記センサが出力する信号に基づき、運用モードと試験モードのいずれであるかを判定する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0015】
第4の態様に係る炎検知器によれば、テスタから炎検知器に対し所定の特徴を備える光を照射することで、炎検知器の動作モードを切り替えることができる。
【0016】
また、本発明は、第1乃至第4のいずれかの態様に係る炎検知器と、前記炎検知器が試験モードで動作しているときに前記センサを正常と判定させる光を照射するテスタとを備える炎検知システムを第5の態様として提供する。
【0017】
第5の態様に係る炎検知システムによれば、試験員はテスタが照射する光を離れた位置から炎検知器に照射することで、炎検知器が正常に動作するか否かの試験を行うことができる。
【0018】
第5の態様に係る炎検知システムにおいて、前記テスタは、前記炎検知器、前記炎検知器と通信接続されている防災受信盤、及び、前記防災受信盤と通信接続されているサーバ装置のうちの1以上と無線通信を行う通信部と、ユーザに通知を行う通知部とを備え、前記通信部は、無線通信の相手の装置から、前記炎検知器が通常モードのときに火災を検知したことを示すデータ、又は、前記炎検知器が試験モードのときに前記センサが正常であると判定されたことを示すデータを受信し、前記テスタの前記通知部は、前記通信部が受信したデータに応じてユーザに対する通知を行う、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0019】
第6の態様に係る炎検知システムによれば、試験員はテスタからの通知により、炎検知器が正常に動作していることを確認できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、試験員は、複数波長式炎検知器が正常に動作するか否かを安全かつ効率的に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る炎検知システムの全体構成を示した図。
【
図2】一実施形態に係る炎検知器のハードウェア構成を模式的に示した図。
【
図3】一実施形態に係る炎検知器の機能構成を模式的に示した図。
【
図4】一実施形態に係る炎検知器が記憶している振幅値ログテーブルの構成を例示した図。
【
図5】一実施形態に係る炎検知器が記憶しているステイタステーブルの構成を例示した図。
【
図6】一実施形態に係るテスタのハードウェア構成を模式的に示した図。
【
図7】一実施形態に係るテスタの機能構成を模式的に示した図。
【
図8】一実施形態に係るテスタが発光する光の発光パターンを示すグラフ。
【
図9】一実施形態に係るテスタが表示するテスタ操作画面を例示した図。
【
図10】一変形例に係る炎検知器の機能構成を模式的に示した図。
【0022】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る炎検知システム1を説明する。
図1は炎検知システム1の全体構成を示した図である。炎検知システム1はトンネルTNで発生する炎を検知するシステムである。
【0023】
炎検知システム1は、トンネルTNの内部に車両の走行方向に沿って概ね等間隔に設置されているn個の炎検知器、すなわち、炎検知器11(1)、11(2)、11(3)、・・・、11(n)を備える。以下、これらn個の炎検知器を炎検知器11と総称する。
【0024】
炎検知器11の各々には、実質的に2つの炎検知器が統合されている。具体的には、炎検知器11には、炎検知器11から見て右側の所定領域を監視領域とする炎検知器(以下、「右側炎検知器」という)と、左側の所定領域を監視領域とする炎検知器(以下、「左側炎検知器」という)が統合されている。
【0025】
トンネルTNは監視領域A(1)、A(2)、A(3)、・・・、A(n-1)に区分されている。以下、これら(n-1)個の監視領域を監視領域Aと総称する。監視領域Aの各々は、隣り合う2つの炎検知器11により重複して監視される。例えば、監視領域A(1)は、炎検知器11(1)の左側炎検知器と、炎検知器11(2)の右側炎検知器により監視される。そのため、仮に隣り合う2つの炎検知器11のいずれか一方が故障しても、他方が同時に故障しない限り、監視領域Aに対する監視が途絶えることはない。
【0026】
炎検知システム1は、炎検知器11に加え、炎検知器11の各々と通信接続された防災受信盤12と、防災受信盤12と通信接続されたサーバ装置13と、サーバ装置13と無線通信が可能なテスタ14を備える。テスタ14は炎検知器11の各々が正常に動作するか否かを試験するための光を照射するための装置である。
【0027】
図2は、炎検知器11のハードウェア構成を模式的に示した図である。炎検知器11はコンピュータ101と、コンピュータ101に接続された4つのセンサ、すなわち、センサ111R、センサ112R、センサ111L、センサ112Lと、4つのセンサの各々に応じた4つのアンプ、すなわち、アンプ113R、アンプ114R、アンプ113L、アンプ114Lと、コンピュータ101に接続されたランプ115を備える。
【0028】
センサ111Rとセンサ112Rは炎検知器11から見て右側の監視領域Aを監視するための光センサである。センサ111Lとセンサ112Lは炎検知器11から見て左側の監視領域Aを監視するための光センサである。
【0029】
センサ111Rとセンサ111Lは、炎(熱源)が発する長波長側の波長帯に高い感度で応答する長波長側光センサである。センサ111Rとセンサ111Lとしては、例えば、焦電素子を用いた光センサが採用される。以下、センサ111Rとセンサ111Lをセンサ111と総称する。
【0030】
センサ112Rとセンサ112Lは、炎(熱源)が発する短波長側の波長帯に高い感度で応答する短波長側光センサである。センサ112Rとセンサ112Lとしては、例えば、フォトダイオードを用いた光センサが採用される。以下、センサ112Rとセンサ112Lをセンサ112と総称する。
【0031】
アンプ113Rはコンピュータ101とセンサ111Rの間に接続され、センサ111Rが光に感応して生成する信号の振幅を増減させる。アンプ114Rはコンピュータ101とセンサ112Rの間に接続され、センサ112Rが光に感応して生成する信号の振幅を増減させる。アンプ113Lはコンピュータ101とセンサ111Lの間に接続され、センサ111Lが光に感応して生成する信号の振幅を増減させる。アンプ114Lはコンピュータ101とセンサ112Lの間に接続され、センサ112Rが光に感応して生成する信号の振幅を増減させる。
【0032】
以下の説明において、センサ111又はセンサ112から出力された信号、という場合、特に断らない限り、センサ111又はセンサ112から出力され、アンプ113又はアンプ114により増減幅された信号を意味する。
【0033】
ランプ115はコンピュータ101の制御下で発光する。ランプ115は、例えば、青と赤の2色で発光可能であり、それらの色の各々に関し、点灯発光と点滅発光を行うことができる。
【0034】
コンピュータ101は、プログラムに従いデータ処理を行うプロセッサ1011と、プログラムを含む各種データを記憶するメモリ1012と、4つのアンプを介して4つのセンサから信号の入力を受けるとともにランプ115に対し制御信号を出力する入出力インタフェース1013と、防災受信盤12との間でデータ通信を行う通信インタフェース1014を備える。
【0035】
なお、炎検知器11は、
図2に示す構成部に加え、4つのセンサが出力したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器等の構成部を備えるが、それらは本発明の特徴と無関係であるため、
図2において省略されており、以下の説明においてもそれらの説明は省略する。
【0036】
図3は、炎検知器11の機能構成を模式的に示した図である。すなわち、コンピュータ101のプロセッサ1011が本実施形態に係るプログラムに従う処理を実行することにより、
図3に符号116で示される判定装置を備える炎検知器11が実現される。以下、判定装置116の機能構成を説明する。
【0037】
判定装置116はセンサ111Rとセンサ112Rから出力される信号を用いて炎検知の判定を行う判定装置116Rと、センサ111Lとセンサ112Lから出力される信号を用いて炎検知の判定を行う判定装置116Lを備える。判定装置116Rと判定装置116Lの構成は共通しているため、以下、例として、判定装置116Rの構成を説明し、判定装置116Lの構成の説明は省略する。
【0038】
判定装置116Rは、記憶部1161R、取得部1162R、モード判定部1163R、検知部1164R、送信部1165R、通知制御部1166R、計時部1167Rを備える。
【0039】
記憶部1161Rはプロセッサ1011の制御下で動作するメモリ1012により実現される。記憶部1161Rは各種データを記憶する。記憶部1161Rが記憶するデータには、振幅値ログテーブル及びステイタステーブルが含まれる。
【0040】
図4は、振幅値ログテーブルの構成を例示した図である。振幅値ログテーブルはセンサ111R及びセンサ112Rの各々に応じて準備され、それらのセンサから出力された信号の振幅値を、信号が出力された時刻と共に格納する。
【0041】
図5は、ステイタステーブルの構成を例示した図である。ステイタステーブルは、炎検知器11の動作モードを示すデータと、炎を検知しているか否かを示すデータを保持するためのテーブルである。
【0042】
炎検知器11の機能構成(
図3)の説明を続ける。取得部1162Rはプロセッサ1011の制御下で動作する入出力インタフェース1013により実現される。取得部1162Rは、センサ111Rから出力された信号と、センサ112Rから出力された信号を継続的に取得し、取得したそれらの信号の振幅値を記憶部1161Rの振幅値ログテーブルに記憶させる。
【0043】
モード判定部1163Rはプロセッサ1011により実現される。炎検知器11は、炎の発生を監視するための動作モードである通常モードと、炎検知器11が正常に動作するか否かを自己診断するための動作モードである試験モードのいずれかで動作する。モード判定部1163Rは、炎検知器11がいずれの動作モードであるかを判定する。具体的には、モード判定部1163Rは、センサ111及びセンサ112から出力された信号の振幅値が所定のパターンに従い経時変化する場合、炎検知器11の動作モードが通常モードから試験モードに切り替わった、と判定する。また、モード判定部1163Rは、動作モードが通常モードから試験モードに切り替わった後、所定時間(例えば、1分間)が経過した時点で、炎検知器11の動作モードが試験モードから通常モードに切り替わった、と判定する。モード判定部1163Rは、それらの判定に基づき炎検知器11の現在の動作モードを特定し、特定した動作モードを示すデータを記憶部1161のステイタステーブルに記憶させる。
【0044】
検知部1164Rはプロセッサ1011により実現される。検知部1164Rは、センサ111Rから出力された信号の振幅値とセンサ112Rから出力された信号の振幅値が所定の条件を満たすと判定した場合、炎を検知したことを示すデータを記憶部1161Rのステイタステーブルに記憶させる。
【0045】
検知部1164Rが炎検知の判定のために用いる条件の例を以下に示す。
(条件1)センサ111Rから出力された信号の振幅値が閾値T1以上である。
(条件2)センサ112Rから出力された信号の振幅値が閾値T2以上である。
(条件3)センサ112Rから出力された信号の振幅値に対するセンサ111Rから出力された信号の振幅値の比率が閾値T3以上、かつ、閾値T4以下(ただし、T3<T4)である。
【0046】
検知部1164Rは、上記の条件1~3の全てが、過去の所定時間長(例えば10秒間)の期間内に所定回数以上、満たされた場合、炎が発生していると判定する。
【0047】
検知部1164Rは、炎検知器11の動作モードに応じて異なる閾値T1~T4を用いて、炎検知の判定を行う。以下、通常モードで用いる閾値T1~T4を閾値群Tnと呼び、試験モードで用いる閾値T1~T4を閾値群Ttと呼ぶ。
【0048】
閾値群Tnは、炎検知器11から離れた位置で発生した炎が発する光に感応してセンサ111及びセンサ112が出力する信号の振幅値に応じて決定された閾値群である。一方、閾値群Ttは、炎検知器11から離れた位置でテスタ14が発した光に感応してセンサ111及びセンサ112が出力する信号の振幅値に応じて決定された閾値群である。
【0049】
送信部1165Rはプロセッサ1011の制御下で動作する通信インタフェース1014により実現される。送信部1165Rは、ステイタステーブルに炎が検知されていることを示すデータが格納されている間、防災受信盤12に対し、炎検知信号を継続的に送信する。
【0050】
通知制御部1166Rはプロセッサ1011により実現される。通知制御部1166Rはステイタステーブルに格納されているデータに基づき、以下の4つのいずれかの態様でランプ115を発光させる。
青点灯:通常モード、炎非検知
赤点灯:通常モード、炎検知
青点滅:試験モード、炎非検知
赤点滅:試験モード、炎検知
【0051】
計時部1167Rはプロセッサ1011により実現される。計時部1167Rは基準時刻からの経過時間を継続的に計測し、現在時刻を特定し、特定した現在時刻を示す時刻信号を生成する。振幅値ログテーブルに格納される時刻情報は、センサ111R又はセンサ112Rから出力された信号を取得部1162Rが取得した時点において計時部1167Rが生成した時刻信号が示す時刻である。また、計時部1167Rが生成する時刻信号は、モード判定部1163Rが試験モードから通常モードに切り替わるタイミングを計るためにも用いられる。
【0052】
炎検知システム1を構成する防災受信盤12(
図1)は、トンネルTN内に設置され、炎検知器11からの炎検知信号を受信した場合、表示や発音により周りの人々に警報を行うとともに、サーバ装置13に炎が検知された旨の通知を送信する装置である。防災受信盤12は、一般的な防災受信盤であるため、その説明を省略する。
【0053】
サーバ装置13は、トンネルTNから離れた場所に設置され、炎検知システム1の管理者が、炎検知器11による炎検知の結果を遠隔から確認したり、防災受信盤12を遠隔から操作したりするための装置である。サーバ装置13のハードウェアは一般的なコンピュータであるため、その説明を省略する。また、サーバ装置13の機能は防災センター、消防機関等に配置されている一般的なサーバ装置の機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0054】
図6は、テスタ14のハードウェア構成を模式的に示した図である。テスタ14は、コンピュータ104と、コンピュータ104に接続されたライト141と、コンピュータ104に接続されたタッチスクリーン142を備える。
【0055】
ライト141は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子と集光レンズを備え、コンピュータ104の制御下で発光する。
【0056】
タッチスクリーン142は、例えば液晶ディスプレイ等のディスプレイと、ディスプレイに積層配置されたタッチパネルを備え、コンピュータ104の制御下で画像等を表示するとともに、ユーザのタッチ操作を受け付ける。
【0057】
コンピュータ104は、プログラムに従いデータ処理を行うプロセッサ1041と、プログラムを含む各種データを記憶するメモリ1042と、ライト141に対し制御信号を出力する入出力インタフェース1043と、サーバ装置13との間で無線データ通信を行う通信インタフェース1044を備える。
【0058】
図7は、テスタ14の機能構成を模式的に示した図である。すなわち、コンピュータ104のプロセッサ1041が本実施形態に係るプログラムに従う処理を実行することにより、
図7に符号143で示される制御装置を備えるテスタ14が実現される。以下、制御装置143の機能構成を説明する。
【0059】
制御装置143は、記憶部1431、操作受付部1432、発光制御部1433、送受信部1434、表示制御部1435を備える。
【0060】
記憶部1431はプロセッサ1041の制御下で動作するメモリ1042により実現される。記憶部1431は各種データを記憶する。記憶部1431が記憶するデータには、ライト141の発光パターンを示す発光パターンデータが含まれる。ライト141は、モード切替用発光パターンと、試験用発光パターンの2つの発光態様で発光する。発光パターンデータは、これらの発光パターンを示すデータである。
【0061】
図8は、発光パターンを示すグラフである。
図8(a)は切替用発光パターンを示す。切替用発光パターンは、炎検知器11の動作モードを通常モードから試験モードに切り替えさせるための発光パターンである。
図8(a)に示されるように、切替用発光パターンは、時間の経過に伴い規則的に強度が変化する発光パターンである。なお、
図8(a)のグラフで示す発光パターンは一例であって、自然には生じ得ない人工的な規則で強度が変化する発光パターンであれば、どのような発光パターンが切替用発光パターンとして採用されてもよい。
【0062】
図8(b)は試験用発光パターンを示す。
図8(b)に示されるように、試験用発光パターンは、一定の短い時間間隔で強度が一定の振幅間で変化する発光パターンである。
【0063】
制御装置143の機能構成(
図7)の説明を続ける。操作受付部1432はプロセッサ1041により実現される。操作受付部1432はタッチスクリーン142に対するユーザのタッチ操作に応じた信号をタッチスクリーン142から取得し、取得した信号が示すユーザの操作内容を示すデータを生成し、記憶部1431に記憶させる。操作受付部1432により生成されるそれらのデータは、発光制御部1433、表示制御部1435等により用いられる。
【0064】
発光制御部1433はプロセッサ1041により実現される。発光制御部1433は、操作受付部1432により受け付けられたユーザの操作に応じて、ライト141に消灯、切替用発光パターンに従った発光、又は、試験用発光パターンに従った発光を指示する。
【0065】
送受信部1434はプロセッサ1041の制御下で動作する通信インタフェース1044により実現される。送受信部1434は、サーバ装置13との間でデータ通信を行う。例えば、送受信部1434はサーバ装置13に、試験が行われる炎検知器11が設置されているトンネルTNの識別情報(名称等)を送信する。また、送受信部1434は、炎検知器11が試験中に炎を検知し、炎検知信号を防災受信盤12に送信した場合、サーバ装置13が防災受信盤12から炎検知の通知を受けたことを示す受信通知をサーバ装置13から受信する。
【0066】
表示制御部1435はプロセッサ1041により実現される。表示制御部1435はタッチスクリーン142に各種情報を表示させる。
【0067】
図9は、表示制御部1435の指示に従いタッチスクリーン142が表示する画面(以下、「テスタ操作画面」という)を例示した図である。以下に、
図9に示すテスタ操作画面を参照しながら、炎検知システム1の動作を説明する。
【0068】
試験員はトンネルTNにおいて、テスタ14の電源を投入する。電源を投入されたテスタ14のタッチスクリーン142には
図9(a)に示すテスタ操作画面が表示される。テスタ操作画面には、「サーバとの接続状態」、「施設名」、「ライトの発光状態」、「サーバからの応答」という項目が含まれている。
【0069】
「サーバとの接続状態」という項目は、テスタ14とサーバ装置13との間の通信接続の状態を示すとともに、その通信接続の状態を変更するための操作を受け付ける項目である。テスタ14とサーバ装置13との通信接続が切断されている場合、この項目には「切断」が表示されるとともに、その右に「接続」ボタンが表示される。試験員は「接続」ボタンをタッチすることで、テスタ14にサーバ装置13との間の通信接続の確立を指示することができる。テスタ14とサーバ装置13との通信接続が確立されている場合、この項目には「接続」が表示されるとともに、その右に「切断」ボタンが表示される。試験員は「切断」ボタンをタッチすることで、テスタ14にサーバ装置13との間の通信接続の切断を指示することができる。
【0070】
「施設名」という項目は、試験員がテスタ14を用いて動作試験を行おうとしている炎検知器11が設置されている施設の名称(識別情報)を入力するための項目である。試験員はこの項目のテキストボックスにトンネルTNの名称を入力した後、「OK」ボタンをタッチする。この項目において入力された施設の名称はサーバ装置13に送信される。その結果、サーバ装置13はテスタ14と通信接続が確立されている間に、トンネルTNに設置されているいずれかの炎検知器11が炎検知信号を防災受信盤12に送信し、それに応じて防災受信盤12がサーバ装置13に炎検知の通知をした場合、サーバ装置13はテスタ14に対し受信通知を送信することができる。
【0071】
「ライトの発光状態」という項目は、ライト141の発光状態を示すとともに、その発光状態を変更するための操作を受け付ける項目である。テスタ14が発光していない場合、この項目には「消灯」が表示されるとともに、その右に「切替用発光」ボタンと「試験用発光」ボタンが表示される。テスタ14が切替用発光パターンに従い発光している場合、この項目には「切替用発光」が表示されるとともに、その右に「消灯」ボタンと「試験用発光」ボタンが表示される。テスタ14が試験用発光パターンに従い発光している場合、この項目には「試験用発光」が表示されるとともに、その右に「消灯」ボタンと「切替用発光」ボタンが表示される。試験員はこの項目に表示されるいずれかのボタンをタッチすることで、ライト141の発光の状態を変更することができる。
【0072】
「サーバからの応答」という項目は、サーバ装置13から受信通知が受信されたか否かを示す項目である。この項目には「リセット」ボタンが表示される。試験員はいずれかの炎検知器11の動作試験を開始する前に、この「リセット」ボタンをタッチする。これにより、この項目には「なし」が表示される。その後、試験員がいずれかの炎検知器11に関する試験のための動作を行い、その炎検知器11から炎検知信号が防災受信盤12に送信され、防災受信盤12からサーバ装置13に炎検知の通知が送信され、サーバ装置13からテスタ14に受信通知が送信されると、この項目の表示が「なし」から「あり」へと変化する。この表示により、試験員は動作試験の対象の炎検知器11が正常に動作しているか否か、また、炎が検知された場合に、防災受信盤12が正常にサーバ装置13に炎検知の通知を送信するか、を確認することができる。
【0073】
既述のように、テスタ14は電源を投入されると、
図9(a)のようなテスタ操作画面を表示する。試験員は、まず、「サーバとの接続状態」の「接続」ボタンをタッチして、テスタ14とサーバ装置13との間の通信接続を確立させる。続いて、試験員は、「施設名」のテキストボックスにトンネルTNの名称を入力し、「OK」ボタンをタッチする。この「OK」ボタンのタッチに応じて、送受信部1434はサーバ装置13にトンネルTNの名称を送信する。サーバ装置13は、テスタ14から送信されるトンネルTNの名称を、その送信元のテスタ14の識別情報と共に記憶する。その状態において、テスタ14には
図9(b)のようなテスタ操作画面が表示される。
【0074】
続いて、試験員は、例えば炎検知器11(1)の近くに行き、「ライトの発光状態」の「切替用発光」ボタンをタッチして発光状態を変更する。その結果、テスタ14には
図9(c)のようなテスタ操作画面が表示される。試験員は、その状態のテスタ14が発光する光で、炎検知器11(1)を照らす。
【0075】
炎検知器11(1)は、テスタ14からの光の照射を受けるまでは、通常モードで動作しており、通常、炎検知はしていないため、ランプ115を青点灯させている。その状態で、テスタ14から切替用発光パターンに従う光の照射を受けると、振幅値ログテーブルには、切替用発光パターン(
図8(a)参照)に従う経時変化を示すデータが格納されてゆく。モード判定部1163は、振幅値ログテーブルに格納されてゆくデータが切替用発光パターンに従う経時変化を示していることを検知すると、ステイタステーブルに現在の動作モードが試験モードであることを示すデータを書き込む。それに伴い、通知制御部1166はランプ115を青点滅させる。
【0076】
試験員はランプ115が青点滅していることを見て、炎検知器11(1)が試験モードで動作していることを確認した後、テスタ操作画面の「ライトの発光状態」の「試験用発光」ボタンをタッチして発光状態を変更する。その結果、テスタ14には
図9(d)のようなテスタ操作画面が表示される。試験員は、その状態のテスタ14が発光する光で、炎検知器11(1)を照らす。
【0077】
炎検知器11(1)がテスタ14から試験用発光パターンに従う光の照射を受けると、振幅値ログテーブルには、試験用発光パターン(
図8(b)参照)に従うデータ、すなわち、時間の経過に伴い一定の短い時間間隔で強度が一定の振幅間で変化するような振幅値を示すデータが格納されてゆく。検知部1164は、振幅値ログテーブルに格納されてゆくデータが示すセンサ111が出力している信号の振幅値と、センサ112が出力している信号の振幅値とが、試験モード用の閾値群Ttを用いた炎検知のための所定の条件を満たすか否かに基づき、センサ111及びセンサ112が正常に動作しているか否かの判定を行う。
【0078】
センサ111及びセンサ112が正常に動作している場合、炎検知のための所定の条件は満たされる。その結果、検知部1164はステイタステーブルに炎が検知されていることを示すデータを書き込む。それに伴い、通知制御部1166はランプ115を赤点滅させる。試験員はランプ115が赤点滅していることを見て、炎検知器11(1)が正常に動作していることを確認することができる。また、ステイタステーブルに炎が検知されていることを示すデータが書き込まれると、送信部1165は炎検知信号を防災受信盤12に送信する。
【0079】
なお、炎検知器11が試験モードで動作しているときに炎検知器11から防災受信盤12に送信される炎検知信号は、炎を検知したことを示す信号ではなく、炎検知器11が正常に動作していることを示す信号の役割を果たす。
【0080】
防災受信盤12は炎検知器11(1)から送信される炎検知信号を受信すると、表示及び音により警報を行うとともに、サーバ装置13に対し炎検知の通知を送信する。この通知には、炎検知器11(1)が設置されているトンネルTNの名称が含まれている。サーバ装置13は防災受信盤12から送信される炎検知の通知を受信すると、その通知に含まれるトンネルTNの名称がテスタ14の識別情報と共に記憶されていることを検知し、テスタ14に受信通知を送信する。テスタ14はサーバ装置13から送信される受信通知を受信する。それに伴い、テスタ14には
図9(e)のように、「サーバからの応答」という項目に「はい」と表示されたテスタ操作画面が表示される。この表示により、試験員は防災受信盤12及びサーバ装置13が正常に動作していることを確認することができる。
【0081】
試験員は、炎検知器11(1)、防災受信盤12、及び、サーバ装置13が正常に動作していることを確認すると、炎検知器11(1)に対する試験用発光パターンの光の照射を終了する。それに応じて、検知部1164は炎の検知を終了し、ステイタステーブルに炎が検知されていないことを示すデータを書き込む。それに伴い、通知制御部1166はランプ115を青点滅させる。続いて、試験員は、テスタ操作画面の「ライトの発光状態」の「消灯」ボタンをタッチしてテスタ14からの発光を停止させる。また、試験員は、「サーバからの応答」の「リセット」ボタンをタッチする。その状態において、テスタ14には
図9(b)に示すようなテスタ操作画面が表示される。
【0082】
炎検知器11(1)のモード判定部1163は、動作モードが通常モードから試験モードに切り替わった時刻から所定時間が経過すると、ステイタステーブルに現在の動作モードが通常モードであることを示すデータを書き込む。それに伴い、通知制御部1166はランプ115を青点灯させる。これにより、炎検知器11(1)に関する一連の試験作業が完了したことになる。
【0083】
試験員は、試験作業が未完了の炎検知器11に関し順次、上述したものと同様の試験作業を繰り返す。
【0084】
上述した炎検知システム1によれば、試験員は離れた位置から炎検知器11が正常に動作しているか否かを確認することができる。そのため、試験員は、炎検知器11の動作試験を効率的かつ安全に行うことができる。
【0085】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0086】
(1)上述した炎検知システム1が備える炎検知器11は二波長式炎検知器であるが、炎検知システム1が備える炎検知器が炎の検知に用いる波長帯の数は3以上であってもよい。
【0087】
(2)上述した炎検知システム1においては、炎検知器11は試験モードで動作中に炎を検知するための条件が満たされたと判定すると、通常モードにおける場合と同じ炎検知信号を防災受信盤12に送信するものとした。これに代えて、炎検知器11が、試験モードで動作中に炎を検知するための条件が満たされたと判定した場合、炎検知信号とは異なる信号を防災受信盤12に送信してもよい。この場合、防災受信盤12は実際に炎が検知されたのか、試験において炎検知器11が正常に動作していると判定されたのかを区別することができるため、実際に炎が検知された場合と異なる動作を行うことができる。
【0088】
(3)上述した炎検知システム1において、炎検知器11の動作モードが通常モードであるか試験モードであるかの判定に、センサ111及びセンサ112が出力する信号の振幅値が用いられる。炎検知器11の動作モードが通常モードであるか試験モードであるかの判定に、他の情報が用いられてもよい。例えば、炎検知器11にセンサ111及びセンサ112とは異なる波長帯の光に感応するセンサを設け、そのセンサが感応する波長帯の光を照射するライトをテスタ14に設け、そのライトの光を炎検知器11に照射することで、炎検知器11の動作モードを試験モードに切り替えさせる構成が採用されてもよい。また、炎検知器11にテスタ14と無線通信を行う通信インタフェースを設け、テスタ14から無線通信により炎検知器11に対し信号を送ることで、炎検知器11の動作モードを試験モードに切り替えさせる構成が採用されてもよい。
【0089】
(4)上述した炎検知システム1が備えるテスタ14は、サーバ装置13と無線通信を行う。これに代えて、もしくは加えて、テスタ14が炎検知器11及び防災受信盤12の少なくとも一方と無線通信を行う構成が採用されてもよい。テスタ14が炎検知器11と無線通信を行う場合、上記の変形例(3)で述べたように、テスタ14から炎検知器11に対し動作モードの切り替えを指示することができる。また、炎検知器11からテスタ14に対し、炎検知器11が正常に動作しているか否かの判定結果を通知することができる。
【0090】
また、テスタ14が防災受信盤12と無線通信を行う場合、テスタ14から防災受信盤12に試験の開始や終了を通知することができる。また、試験中に防災受信盤12が炎検知器11から炎検知信号を受信したことをテスタ14に通知することができる。
【0091】
(5)上述した炎検知システム1が備えるテスタ14は炎検知器11に光を照射する機能に加え、サーバ装置13と無線通信する端末装置の機能を備える。テスタ14がサーバ装置13と無線通信する機能を備えず、テスタ14とは異なる端末装置がサーバ装置13と無線通信を行ってもよい。例えば試験員がスマートホン等の無線通信可能な携帯端末装置を携帯し、携帯端末装置をサーバ装置13と接続させた後、トンネルTNの名称を入力してその名称をサーバ装置13に送信させる。その後、テスタ14を用いて炎検知器11に光を照射する。その結果、炎検知器11が炎検知信号を防災受信盤12に送信すると、携帯端末装置にサーバ装置13から受信通知が送られてきて、その旨が携帯端末装置に表示される。このような構成によっても、試験員は炎検知器11、防災受信盤12、及び、サーバ装置13が正常に動作していることを確認することができる。
【0092】
(6)上述した炎検知システム1が備える炎検知器11はトンネルTN内の空間を監視するものとしたが、炎検知システム1が監視の対象とする領域はトンネル内に限られない。例えば、炎の発生の危険性がある工場内の空間が炎検知器11により監視されてもよい。
【0093】
(7)上述した炎検知システム1が備える炎検知器11は右側炎検知器と左側炎検知器を備えるが、炎検知器11が1つの領域のみを監視対象とする単眼の炎検知器であってもよい。
【0094】
(8)上述した炎検知システム1が備える炎検知器11は、通常モードと試験モードとで、異なる閾値群を用いて、炎検知の判定を行う。これに代えて、炎検知器11が、通常モードと試験モードとで、センサ111が生成する信号の振幅をアンプ113が増減する際に用いる増減幅比と、センサ112が生成する信号の振幅をアンプ114が増減する際に用いる増減幅比との比率を異ならせる構成が採用されてもよい。例えば、通常モードにおいては、アンプ113とアンプ114が共にR1倍に信号を増幅する一方、試験モードにおいてはアンプ113がR2倍に信号を増幅し、アンプ114がR3倍(ただし、R2≠R3)に信号を増幅する。この場合、通常モードにおけるアンプ113とアンプ114の増減幅率の比率はR1:R1=1:1であるが、試験モードにおけるアンプ113とアンプ114の増減幅率の比率はR2:R3≠1:1である。
【0095】
そして、通常モードと試験モードのいずれにおいても、同じ閾値群を用いて炎検知の判定を行う。ここで、R2及びR3は、テスタ14のライト141が発する光に感応してセンサ111とセンサ112が判定装置116に出力する信号により、炎検知の判定のための条件が満たされるように決定された増減幅率である。
【0096】
図10は、この変形例に係る炎検知器11の機能構成を模式的に示した図である。
図10に示す炎検知器11は、上述した実施形態に係る炎検知器11が備える構成部に加え、設定部1168R及び1168Lを備える。以下、これらを「設定部1168」と総称する。
【0097】
設定部1168は、ステイタステーブルに、現在の動作モードが通常モードであることを示すデータが格納されているときには、アンプ113とアンプ114に増減幅率R1を設定する。この設定に従い、アンプ113はセンサ111が生成する信号を増減幅率R1で増減し、アンプ114はセンサ112が生成する信号を増減幅率R1で増減する。
【0098】
一方、設定部1168は、ステイタステーブルに、現在の動作モードが試験モードであることを示すデータが格納されているときには、アンプ113に増減幅率R2を設定し、アンプ114に増減幅率R3を設定する。この設定に従い、アンプ113はセンサ111が生成する信号を増減幅率R2で増減し、アンプ114はセンサ112が生成する信号を増減幅率R3で増減する。
【符号の説明】
【0099】
1…炎検知システム、11…炎検知器、12…防災受信盤、13…サーバ装置、14…テスタ、101…コンピュータ、104…コンピュータ、111…センサ、112…センサ、113…アンプ、114…アンプ、115…ランプ、116…判定装置、141…ライト、142…タッチスクリーン、143…制御装置、1011…プロセッサ、1012…メモリ、1013…入出力インタフェース、1014…通信インタフェース、1041…プロセッサ、1042…メモリ、1043…入出力インタフェース、1044…通信インタフェース、1161…記憶部、1162…取得部、1163…モード判定部、1164…検知部、1165…送信部、1166…通知制御部、1167…計時部、1168…設定部、1431…記憶部、1432…操作受付部、1433…発光制御部、1434…送受信部、1435…表示制御部。