IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

<>
  • 特開-液晶光学素子 図1
  • 特開-液晶光学素子 図2
  • 特開-液晶光学素子 図3
  • 特開-液晶光学素子 図4
  • 特開-液晶光学素子 図5
  • 特開-液晶光学素子 図6
  • 特開-液晶光学素子 図7
  • 特開-液晶光学素子 図8
  • 特開-液晶光学素子 図9
  • 特開-液晶光学素子 図10
  • 特開-液晶光学素子 図11
  • 特開-液晶光学素子 図12
  • 特開-液晶光学素子 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147834
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】液晶光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241009BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20241009BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241009BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/18
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132759
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】小橋 淳二
【テーマコード(参考)】
2H149
2H249
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AB03
2H149BA05
2H149EA17
2H149EA22
2H149FA01Z
2H149FA24W
2H149FA27W
2H149FA40W
2H149FA42Z
2H149FA63
2H149FA66
2H149FA67
2H149FA68
2H249AA02
2H249AA43
4F100AK25E
4F100AS00D
4F100AS00E
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100AT00E
4F100BA05
4F100CB00E
4F100CB04E
4F100GB41
4F100JB14E
4F100JN01B
4F100JN01E
(57)【要約】
【課題】光の利用効率の低下を抑制することが可能な液晶光学素子を提供する。
【解決手段】本実施形態の液晶光学素子は、第1外面及び前記第1外面と対向する第1内面を有する第1透明基板と、前記第1内面に配置された第1配向膜と、前記第1配向膜に重なり、第1コレステリック液晶を有し、前記第1透明基板を介して入射した光の一部を前記第1透明基板に向けて反射する第1液晶層と、を備える第1基板と、第2外面及び前記第2外面と対向する第2内面を有する第2透明基板と、前記第2内面に配置された第2配向膜と、前記第2配向膜に重なり、第2コレステリック液晶を有し、前記第1液晶層を透過した光の一部を前記第1透明基板に向けて反射する第2液晶層と、を備える第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを互いに接着する透明な接着層と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外面及び前記第1外面と対向する第1内面を有する第1透明基板と、前記第1内面に配置された第1配向膜と、前記第1配向膜に重なり、第1コレステリック液晶を有し、前記第1透明基板を介して入射した光の一部を前記第1透明基板に向けて反射する第1液晶層と、を備える第1基板と、
第2外面及び前記第2外面と対向する第2内面を有する第2透明基板と、前記第2内面に配置された第2配向膜と、前記第2配向膜に重なり、第2コレステリック液晶を有し、前記第1液晶層を透過した光の一部を前記第1透明基板に向けて反射する第2液晶層と、を備える第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを互いに接着する透明な接着層と、
を備える、液晶光学素子。
【請求項2】
前記第1コレステリック液晶及び前記第2コレステリック液晶は、第1方向に沿って同等の螺旋ピッチを有し、逆回りに旋回している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
前記第1コレステリック液晶及び前記第2コレステリック液晶は、第1方向に沿って異なる螺旋ピッチを有している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
断面視において、前記第1透明基板は、第1側面と、前記第1側面と対向する第2側面と、を有し、
前記第1液晶層は、前記第1側面の側において前記第1透明基板の法線と鋭角に交差する第1反射面を有し、
前記第2液晶層は、前記第1側面の側において前記第1透明基板の法線と鋭角に交差する第2反射面を有している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記第1コレステリック液晶の各々は、前記第1配向膜に近接する一端側に第1液晶分子を有し、
前記第1液晶層と前記第1配向膜の界面に沿って第2方向に並んだ前記第1液晶分子の各々の配向方向は、時計回りに一定角度ずつ変化し、
前記第2コレステリック液晶の各々は、前記第2配向膜に近接する一端側に第2液晶分子を有し、
前記第2液晶層と前記第2配向膜の界面に沿って前記第2方向に並んだ前記第2液晶分子の各々の配向方向は、反時計回りに一定角度ずつ変化している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
断面視において、前記第1透明基板は、第1側面と、前記第1側面と対向する第2側面と、を有し、
前記第1液晶層は、前記第1側面の側において前記第1透明基板の法線と鋭角に交差する第1反射面を有し、
前記第2液晶層は、前記第2側面の側において前記第1透明基板の法線と鋭角に交差する第2反射面を有している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
前記第1コレステリック液晶の各々は、前記第1配向膜に近接する一端側に第1液晶分子を有し、
前記第1液晶層と前記第1配向膜の界面に沿って第2方向に並んだ前記第1液晶分子の各々の配向方向は、時計回りに一定角度ずつ変化し、
前記第2コレステリック液晶の各々は、前記第2配向膜に近接する一端側に第2液晶分子を有し、
前記第2液晶層と前記第2配向膜の界面に沿って前記第2方向に並んだ前記第2液晶分子の各々の配向方向は、時計回りに一定角度ずつ変化している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
前記第1外面及び前記第2外面は、空気に接している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
前記接着層は、光硬化型のアクリル系樹脂である、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
前記接着層は、前記第1液晶層と前記第2液晶層とを互いに接着している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項11】
前記接着層は、前記第1液晶層と前記第2透明基板とを互いに接着している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶材料を用いた液晶偏光格子が提案されている。このような液晶偏光格子は、波長λの光が入射した際に、入射光を0次回折光及び1次回折光に分割するものである。液晶材料を用いた光学素子では、格子周期の他に、液晶層の屈折率異方性Δn(液晶層の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)、及び、液晶層の厚さdといったパラメータの調整が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-522601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、光の利用効率の低下を抑制することが可能な液晶光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の液晶光学素子は、
第1外面及び前記第1外面と対向する第1内面を有する第1透明基板と、前記第1内面に配置された第1配向膜と、前記第1配向膜に重なり、第1コレステリック液晶を有し、前記第1透明基板を介して入射した光の一部を前記第1透明基板に向けて反射する第1液晶層と、を備える第1基板と、第2外面及び前記第2外面と対向する第2内面を有する第2透明基板と、前記第2内面に配置された第2配向膜と、前記第2配向膜に重なり、第2コレステリック液晶を有し、前記第1液晶層を透過した光の一部を前記第1透明基板に向けて反射する第2液晶層と、を備える第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを互いに接着する透明な接着層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態1に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図2図2は、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bの構造を模式的に示すY-Z平面における断面図である。
図3図3は、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bの構造を模式的に示すX-Z平面における断面図である。
図4図4は、図2に示した液晶分子LM1及びLM2の配向パターンの一例を示す図である。
図5図5は、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bの他の構造を模式的に示すY-Z平面における断面図である。
図6図6は、図5に示した液晶分子LM1及びLM2の配向パターンの一例を示す図である。
図7図7は、液晶光学素子100の製造方法を説明するための図である。
図8図8は、実施形態2に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図9図9は、実施形態3に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図10図10は、太陽電池装置200の外観の一例を示す図である。
図11図11は、太陽電池装置200の動作を説明するための図である。
図12図12は、液晶光学素子100の変形例1を模式的に示す断面図である。
図13図13は、液晶光学素子100の変形例2を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。Z軸に沿った方向をZ方向または第1方向A1と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向A2と称し、X軸に沿った方向をX方向または第3方向A3と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称し、Y軸及びZ軸によって規定される面をY-Z平面と称する。
【0009】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
液晶光学素子100は、第1透明基板1A、第1配向膜2A、及び、第1液晶層3Aを備える第1基板SUB1と、第2透明基板1B、第2配向膜2B、及び、第2液晶層3Bを備える第2基板SUB2と、第1基板SUB1と第2基板SUB2とを接着する接着層4と、を備えている。
【0010】
第1透明基板1A及び第2透明基板1Bは、光を透過する透明部材、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。第1透明基板1A及び第2透明基板1Bは、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂板によって構成されていてもよい。第1透明基板1A及び第2透明基板1Bは、任意の形状を取り得る。例えば、第1透明基板1A及び第2透明基板1Bは、湾曲していてもよい。第1透明基板1A及び第2透明基板1Bの屈折率は、例えば、空気の屈折率よりも大きい。第1透明基板1A及び第2透明基板1Bは、例えば、窓ガラスとして機能する。
【0011】
本明細書において、『光』は、可視光及び不可視光を含むものである。例えば、可視光域の下限の波長は360nm以上400nm以下であり、可視光域の上限の波長は760nm以上830nm以下である。可視光は、第1波長帯(例えば400nm~500nm)の第1成分(青成分)、第2波長帯(例えば500nm~600nm)の第2成分(緑成分)、及び、第3波長帯(例えば600nm~700nm)の第3成分(赤成分)を含んでいる。不可視光は、第1波長帯より短波長帯の紫外線、及び、第3波長帯より長波長帯の赤外線を含んでいる。
本明細書において、『透明』は、無色透明であることが好ましい。ただし、『透明』は、半透明又は有色透明であってもよい。
【0012】
第1透明基板1Aは、X-Y平面に沿った平板状に形成され、第1外面F11と、第1内面F12と、第1側面S1と、第2側面S2と、を有している。第1外面F11及び第1内面F12は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。第1側面S1及び第2側面S2は、X-Z平面と略平行な面であり、第2方向A2において、互いに対向している。
【0013】
第2透明基板1Bは、X-Y平面に沿った平板状に形成され、第2外面F21と、第2内面F22と、第3側面S3と、第4側面S4と、を有している。第2外面F21及び第2内面F22は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。第3側面S3及び第4側面S4は、X-Z平面と略平行な面であり、第2方向A2において、互いに対向している。
【0014】
第1透明基板1A及び第2透明基板1Bは、第1方向A1において、間隔をおいて対向している。第1内面F12及び第2内面F22は、互いに向かい合う面である。第1外面F11及び第2外面F21は、空気に接する面である。第1側面S1は、第1方向A1において第3側面S3の直上に位置している。第2側面S2は、第1方向A1において第4側面S4の直上に位置している。
【0015】
第1配向膜2Aは、第1内面F12に配置されている。第2配向膜2Bは、第2内面F22に配置されている。第1配向膜2A及び第2配向膜2Bは、X-Y平面に沿って配向規制力を有する水平配向膜である。第1配向膜2A及び第2配向膜2Bは、例えば、光照射により配向処理される光配向膜であるが、ラビングによって配向処理される配向膜であってもよいし、微小な凹凸を有する配向膜であってもよい。
【0016】
第1液晶層3Aは、第1方向A1において、第1配向膜2Aに重なっている。つまり、第1配向膜2Aは、第1透明基板1Aと第1液晶層3Aとの間に位置し、また、第1透明基板1A及び第1液晶層3Aに接している。
第2液晶層3Bは、第1方向A1において、第2配向膜2Bに重なっている。つまり、第2配向膜2Bは、第2透明基板1Bと第2液晶層3Bとの間に位置し、また、第2透明基板1B及び第2液晶層3Bに接している。
【0017】
第1液晶層3Aは、第1透明基板1Aを介して入射した光LTiの一部を第1透明基板1Aに向けて反射するものである。第2液晶層3Bは、第1透明基板1Aを介して入射した光LTiのうち、第1液晶層3Aを透過した光の一部を第1透明基板1Aに向けて反射するものである。
【0018】
実施形態1では、第1液晶層3Aは、第1旋回方向に旋回した第1コレステリック液晶311を有している。第1コレステリック液晶311は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AX1を有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチP11を有している。
第2液晶層3Bは、第1旋回方向とは逆回りの第2旋回方向に旋回した第2コレステリック液晶312を有している。第2コレステリック液晶312は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AX2を有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチP12を有している。螺旋軸AX1は、螺旋軸AX2に平行である。螺旋ピッチP11は、螺旋ピッチP12と同等である。螺旋ピッチP11及びP12は、それぞれ螺旋の1周期(360度)を示す。
【0019】
このような第1液晶層3A及び第2液晶層3Bは、第1透明基板1Aを介して入射した光LTiのうち、螺旋ピッチ及び屈折率異方性に応じて決定する選択反射帯域の円偏光を反射する。なお、本明細書において、各液晶層における「反射」とは、液晶層の内部における回折を伴うものである。
【0020】
第1液晶層3Aにおいて、第1コレステリック液晶311は、選択反射帯域のうち、第1旋回方向に対応した第1円偏光を反射する反射面321を形成する。
第2液晶層3Bにおいて、第2コレステリック液晶312は、選択反射帯域のうち、第2旋回方向に対応した第2円偏光を反射する反射面322を形成する。第2円偏光は、第1円偏光とは逆回りの円偏光である。
【0021】
一例では、第1コレステリック液晶311及び第2コレステリック液晶312は、拡大して模式的に示すように、ともに選択反射帯域として赤外線Iを反射するように形成されている。つまり、第1コレステリック液晶311は、赤外線Iのうちの第1円偏光I1を反射するように構成され、第2コレステリック液晶312は、赤外線Iのうちの第2円偏光I2を反射するように構成されている。なお、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0022】
ここでは赤外線Iが反射される例について説明したが、第1コレステリック液晶311及び第2コレステリック液晶312は、可視光Vを反射するように構成されてもよいし、紫外線Uを反射するように構成されてもよい。
【0023】
液晶光学素子100を構成する各薄膜の厚さの関係については、以下の通りである。
第1配向膜2A及び第2配向膜2Bのそれぞれの厚さは、5nm~300nmであり、好ましくは10nm~200nmである。
第1液晶層3A及び第2液晶層3Bのそれぞれの厚さは、1μm~10μmであり、好ましくは2μm~7μmである。
【0024】
接着層4は、図1に示す例では、第1液晶層3Aと第2液晶層3Bとを互いに接着している。接着層4は、透明であり、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bと同等の屈折率を有している。接着層4の屈折率は、例えば1.3~1.9であり、好ましくは、1.5~1.7である。
このような接着層4は、アクリル系樹脂、エンチオール系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などの光硬化型樹脂であってもよいし、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化型樹脂であってもよいし、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などの各種接着剤であってもよい。
【0025】
なお、後に変形例として説明するが、接着層4は、第1透明基板1Aと第2液晶層3Bとを互いに接着していてもよいし、第2透明基板1Bと第1液晶層3Aとを互いに接着していてもよい。
【0026】
次に、図1に示す実施形態1において、液晶光学素子100の光学作用について説明する。
【0027】
液晶光学素子100に入射する光LTiは、例えば、可視光V、紫外線U、及び、赤外線Iを含んでいる。
図1に示す例では、理解を容易にするために、光LTiは、第1透明基板1Aに対して略垂直に入射するものとする。なお、第1透明基板1Aに対する光LTiの入射角度は、特に限定されない。例えば、互いに異なる複数の入射角度をもって第1透明基板1Aに光LTiが入射してもよい。
【0028】
光LTiは、第1外面F11から第1透明基板1Aの内部に進入し、第1内面F12から出射して、第1配向膜2Aを透過し、第1液晶層3Aに入射する。そして、第1液晶層3Aは、光LTiのうち、赤外線Iの第1円偏光I1を第1透明基板1Aに向けて反射し、他の光LTtを透過する。
【0029】
第1液晶層3Aを透過した光LTtは、接着層4を透過し、第2液晶層3Bに入射する。そして、第2液晶層3Bは、光LTtのうち、赤外線Iの第2円偏光I2を第1透明基板1Aに向けて反射し、他の光LTtを透過する。第2液晶層3Bを透過した光LTtは、可視光V及び紫外線Uを含み、第2配向膜2B及び第2透明基板1Bを透過する。
【0030】
第1液晶層3Aは、第1円偏光I1を、第1透明基板1Aにおける光導波条件を満足する進入角θで、第1透明基板1Aに向けて反射する。同様に、第2液晶層3Bは、第2円偏光I2を、第1透明基板1Aにおける光導波条件を満足する進入角θで、第1透明基板1Aに向けて反射する。
ここでの進入角θとは、第1透明基板1Aと空気との界面で全反射を起こす臨界角θc以上の角度に相当する。進入角θは、第1透明基板1Aに直交する垂線に対する角度を示す。
【0031】
第1透明基板1A、第1配向膜2A、第1液晶層3A、接着層4、第2液晶層3B、第2配向膜2B、及び、第2透明基板1Bが同等の屈折率を有している場合、これらの積層体が単体の光導波体となり得る。この場合、光LTrは、第1透明基板1Aと空気との界面、及び、第2透明基板1Bと空気との界面において、反射を繰り返しながら、第2側面S2及び第4側面S4に向けて導光される。
【0032】
図2は、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bの構造を模式的に示すY-Z平面における断面図である。図3は、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bの構造を模式的に示すX-Z平面における断面図である。
【0033】
第1液晶層3Aは、螺旋状構造体として、複数の第1コレステリック液晶311を有している。複数の第1コレステリック液晶311の各々は、第1透明基板1Aの法線Nにほぼ平行な螺旋軸AX1を有している。法線Nは、第1方向A1に平行である。第1コレステリック液晶311の各々は、第1方向A1に沿って螺旋ピッチP11を有している。第1液晶層3Aにおいて、螺旋ピッチP11は、第1方向A1に沿ってほとんど変化することなく一定である。
【0034】
1つの第1コレステリック液晶311に着目すると、第1コレステリック液晶311は、旋回しながらZ方向に沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LM1によって構成されている。液晶分子LM1のうち、第1コレステリック液晶311の一端側に位置する液晶分子(第1液晶分子)LM11は、第1配向膜2Aに近接している。また、液晶分子LM1のうち、第1コレステリック液晶311の他端側に位置する液晶分子LM12は、接着層4に近接している。
【0035】
第1液晶層3Aにおいて、第2方向A2に沿って隣接する複数の第1コレステリック液晶311は、互いに配向方向が異なっている。複数の液晶分子LM11の配向方向は、第2方向A2に沿って連続的に変化している。また、複数の液晶分子LM12の配向方向も、第2方向A2に沿って連続的に変化している。なお、本明細書での液晶分子の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子の長軸の方向に相当する。
【0036】
図3に示すように、第1液晶層3Aにおいて、第3方向A3に沿って隣接する複数の第1コレステリック液晶311は、互いに配向方向が揃っている。つまり、複数の液晶分子LM11の配向方向は、ほぼ一致している。また、複数の液晶分子LM12の配向方向も、ほぼ一致している。
【0037】
第1液晶層3Aは、複数の反射面(第1反射面)321を有している。一例では、複数の反射面321は、一定方向に延びる略平面形状を有し、互いに略平行である。反射面321は、第1側面S1の側において法線Nと鋭角に交差するように傾斜している。つまり、図2に示したY-Z平面の断面視において、反射面321と法線Nとのなす角度θ1は、法線Nの左側(第1側面S1の側)で90°未満である。
反射面321は、ブラッグの法則に従って、第1液晶層3Aに入射する光LTiのうち一部の光LTr1を選択反射し、他の光LTtを透過する。反射面321は、なす角度θ1に応じて光LTr1を第2側面S2の側に向かって反射する。
【0038】
ここでの反射面321は、液晶分子LM1の配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。なお、反射面321の形状は、平面形状に限らず、凹状や凸状の曲面形状であってもよく、特に限定されるものではない。また、反射面321の一部に凸凹を有していたり、反射面321と法線Nとのなす角度θ1が均一でなかったり、複数の反射面321が、規則的に整列していなかったりしてもよい。第1コレステリック液晶311の空間位相分布に応じて、任意の形状の反射面321を構成することができる。
【0039】
このような第1液晶層3Aは、液晶分子LM1の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM1の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、第1液晶層3Aに電界を形成するための電極は設けられていない。
【0040】
第2液晶層3Bは、螺旋状構造体として、複数の第2コレステリック液晶312を有している。複数の第2コレステリック液晶312の各々は、法線Nにほぼ平行な螺旋軸AX2を有している。第2コレステリック液晶312の各々は、第1方向A1に沿って螺旋ピッチP12を有している。第2液晶層3Bにおいて、螺旋ピッチP12は、第1方向A1に沿ってほとんど変化することなく一定である。
【0041】
1つの第2コレステリック液晶312に着目すると、第2コレステリック液晶312は、旋回しながらZ方向に沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LM2によって構成されている。但し、第2コレステリック液晶312の旋回方向は、第1コレステリック液晶311の旋回方向とは逆である。液晶分子LM2のうち、第2コレステリック液晶312の一端側に位置する液晶分子(第2液晶分子)LM21は、第2配向膜2Bに近接している。また、液晶分子LM2のうち、第2コレステリック液晶312の他端側に位置する液晶分子LM22は、接着層4に近接している。
【0042】
第2液晶層3Bにおいて、第2方向A2に沿って隣接する複数の第2コレステリック液晶312は、互いに配向方向が異なっている。複数の液晶分子LM21の配向方向は、第2方向A2に沿って連続的に変化している。また、複数の液晶分子LM22の配向方向も、第2方向A2に沿って連続的に変化している。
【0043】
図3に示すように、第2液晶層3Bにおいて、第3方向A3に沿って隣接する複数の第2コレステリック液晶312は、互いに配向方向が揃っている。つまり、複数の液晶分子LM21の配向方向は、ほぼ一致している。また、複数の液晶分子LM22の配向方向も、ほぼ一致している。
【0044】
第2液晶層3Bは、複数の反射面(第2反射面)322を有している。一例では、複数の反射面322は、一定方向に延びる略平面形状を有し、互いに略平行である。反射面322は、第1側面S1の側において法線Nと鋭角に交差するように傾斜している。つまり、図2に示したY-Z平面の断面視において、反射面322と法線Nとのなす角度θ2は、法線Nの左側(第1側面S1の側)で90°未満である。
反射面322は、ブラッグの法則に従って、第1液晶層3Aを透過した光LTtのうち一部の光LTr2を選択反射し、他の光を透過する。反射面322は、なす角度θ2に応じて光LTr2を第2側面S2の側に向かって反射する。
【0045】
ここでの反射面322は、液晶分子LM2の配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。なお、反射面322の形状は、平面形状に限らず、凹状や凸状の曲面形状であってもよく、特に限定されるものではない。また、反射面322の一部に凸凹を有していたり、反射面322と法線Nとのなす角度θ2が均一でなかったり、複数の反射面322が、規則的に整列していなかったりしてもよい。第2コレステリック液晶312の空間位相分布に応じて、任意の形状の反射面322を構成することができる。
【0046】
このような第2液晶層3Bは、液晶分子LM2の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM2の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、第2液晶層3Bに電界を形成するための電極は設けられていない。
【0047】
一般的に、垂直入射した光に対するコレステリック液晶の選択反射帯域Δλは、コレステリック液晶の螺旋ピッチP、異常光に対する屈折率ne、常光に対する屈折率noに基づいて、「no*P~ne*P」で示される。このため、反射面において特定波長λの円偏光を効率よく反射するためには、特定波長λが選択反射波長帯Δλに含まれるように、螺旋ピッチP、屈折率ne及びnoが設定される。
【0048】
一例として、選択反射帯域Δλが赤外線となるように、第1コレステリック液晶311の螺旋ピッチP11及び第2コレステリック液晶312の螺旋ピッチP12が調整された場合について説明する。第1液晶層3Aの反射面321及び第2液晶層3Bの反射面322での反射率を高くする観点では、第1液晶層3Aの第1方向A1に沿った厚さ及び第2液晶層3Bの第1方向A1に沿った厚さは、螺旋ピッチの数倍から10倍程度とすることが望ましい。屈折率異方性Δnが約0.2であると想定すると、赤外線を選択反射帯域とするためには、螺旋ピッチは約500nmとなる。この場合、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bの各々の厚さは、1~10μm程度となり、好ましくは2~7μmとなる。
【0049】
図4は、図2に示した液晶分子LM1及びLM2の配向パターンの一例を示す図である。
図4においては、第1液晶層3Aに含まれる液晶分子LM1のうち、第1液晶層3Aと第1配向膜2Aの界面に沿って配列した液晶分子(第1液晶分子)LM11の配向パターンと、第2液晶層3Bに含まれる液晶分子LM2のうち、第2液晶層3Bと第2配向膜2Bの界面に沿って配列した液晶分子(第2液晶分子)LM21の配向パターンと、を示している。
【0050】
第1液晶層3Aにおいて、第2方向A2に並んだ液晶分子LM11の各々の配向方向は、互いに異なる。つまり、第1液晶層3AのX-Y平面における空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。例えば、A-A’線に沿って並んだ5つの液晶分子LM11に着目すると、液晶分子LM11の各々の配向方向は、Y方向に沿って(図の左から右に向かって)、時計回りに一定角度ずつ変化している。ここでは、互いに隣接する液晶分子LM11の配向方向の変化量は、Y方向に沿って一定であるが、徐々に増大したり、徐々に減少したりしてもよい。
【0051】
ここで、Y方向に沿って液晶分子LM11の配向方向が180度だけ変化するときの2つの液晶分子LM11の間隔を配向ピッチα1と定義する。
【0052】
一方、第1液晶層3Aにおいて、第3方向A3に並んだ液晶分子LM11の各々の配向方向は略一致する。つまり、第1液晶層3AのX-Y平面における空間位相は、第3方向A3において略一致する。
【0053】
第2液晶層3Bにおいて、第2方向A2に並んだ液晶分子LM21の各々の配向方向は、互いに異なる。つまり、第2液晶層3BのX-Y平面における空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。例えば、B-B’線に沿って並んだ5つの液晶分子LM21に着目すると、液晶分子LM21の各々の配向方向は、Y方向に沿って(図の左から右に向かって)、反時計回りに一定角度ずつ変化している。ここでは、互いに隣接する液晶分子LM21の配向方向の変化量は、Y方向に沿って一定であるが、徐々に増大したり、徐々に減少したりしてもよい。
【0054】
ここで、Y方向に沿って液晶分子LM21の配向方向が180度だけ変化するときの2つの液晶分子LM21の間隔を配向ピッチα2と定義する。一例では、配向ピッチα1及びα2は、700nm以下である。なお、配向ピッチα1が配向ピッチα2と同一であってもよいし、配向ピッチα1が配向ピッチα2とは異なっていてもよい。
【0055】
一方、第2液晶層3Bにおいて、第3方向A3に並んだ液晶分子LM21の各々の配向方向は略一致する。つまり、第2液晶層3BのX-Y平面における空間位相は、第3方向A3において略一致する。
【0056】
図5は、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bの他の構造を模式的に示すY-Z平面における断面図である。
図5に示す例は、図2に示した例と比較して、反射面322の傾斜方向が反射面321の傾斜方向と異なる点で相違している。なお、第1液晶層3A及び第2液晶層3BのX-Z平面における断面構造については、図3に示した通りである。
【0057】
第1液晶層3Aは、複数の第1コレステリック液晶311を有している。第1コレステリック液晶311は、旋回しながらZ方向に沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LM1によって構成されている。液晶分子LM1のうち、第1コレステリック液晶311の一端側に位置する液晶分子(第1液晶分子)LM11は、第1配向膜2Aに近接し、第1コレステリック液晶311の他端側に位置する液晶分子LM12は、接着層4に近接している。
【0058】
第1液晶層3Aにおいて、反射面(第1反射面)321は、第1側面S1の側において法線Nと鋭角に交差するように傾斜している。つまり、図5に示したY-Z平面の断面視において、反射面321と法線Nとのなす角度θ1は、法線Nの左側(第1側面S1の側)で90°未満である。
反射面321は、ブラッグの法則に従って、第1液晶層3Aに入射する光LTiのうち一部の光LTr1を選択反射し、他の光LTtを透過する。反射面321は、なす角度θ1に応じて光LTr1を第2側面S2の側に向かって反射する。
【0059】
第2液晶層3Bは、複数の第2コレステリック液晶312を有している。第2コレステリック液晶312は、旋回しながらZ方向に沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LM2によって構成されている。但し、第2コレステリック液晶312の旋回方向は、第1コレステリック液晶311の旋回方向とは逆である。液晶分子LM2のうち、第2コレステリック液晶312の一端側に位置する液晶分子(第2液晶分子)LM21は、第2配向膜2Bに近接し、第2コレステリック液晶312の他端側に位置する液晶分子LM22は、接着層4に近接している。
【0060】
第2液晶層3Bにおいて、反射面(第2反射面)322は、第2側面S2の側において法線Nと鋭角に交差するように傾斜している。つまり、図5に示したY-Z平面の断面視において、反射面322と法線Nとのなす角度θ2は、法線Nの右側(第2側面S2の側)で90°未満である。
反射面322は、ブラッグの法則に従って、第1液晶層3Aを透過した光LTtのうち一部の光LTr2を選択反射し、他の光を透過する。反射面322は、なす角度θ2に応じて光LTr2を第1側面S1の側に向かって反射する。
【0061】
図6は、図5に示した液晶分子LM1及びLM2の配向パターンの一例を示す図である。
図6においては、第1液晶層3Aに含まれる液晶分子LM1のうち、第1液晶層3Aと第1配向膜2Aの界面に沿って配列した液晶分子(第1液晶分子)LM11の配向パターンと、第2液晶層3Bに含まれる液晶分子LM2のうち、第2液晶層3Bと第2配向膜2Bの界面に沿って配列した液晶分子(第2液晶分子)LM21の配向パターンと、を示している。
【0062】
第1液晶層3Aにおいて、第2方向A2に並んだ液晶分子LM11の各々の配向方向は、互いに異なる。つまり、第1液晶層3AのX-Y平面における空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。例えば、A-A’線に沿って並んだ5つの液晶分子LM11に着目すると、液晶分子LM11の各々の配向方向は、Y方向に沿って(図の左から右に向かって)、時計回りに一定角度ずつ変化している。ここでは、互いに隣接する液晶分子LM11の配向方向の変化量は、Y方向に沿って一定であるが、徐々に増大したり、徐々に減少したりしてもよい。
【0063】
第2液晶層3Bにおいて、第2方向A2に並んだ液晶分子LM21の各々の配向方向は、互いに異なる。つまり、第2液晶層3BのX-Y平面における空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。例えば、B-B’線に沿って並んだ5つの液晶分子LM21に着目すると、液晶分子LM21の各々の配向方向は、Y方向に沿って(図の左から右に向かって)、時計回りに一定角度ずつ変化している。ここでは、互いに隣接する液晶分子LM21の配向方向の変化量は、Y方向に沿って一定であるが、徐々に増大したり、徐々に減少したりしてもよい。
【0064】
一例では、配向ピッチα1及びα2は、700nm以下であり、配向ピッチα1が配向ピッチα2と同一であってもよいし、配向ピッチα1が配向ピッチα2とは異なっていてもよい。
【0065】
なお、第1液晶層3Aにおいて、第3方向A3に並んだ液晶分子LM11の各々の配向方向は略一致する。また、第2液晶層3Bにおいて、第3方向A3に並んだ液晶分子LM21の各々の配向方向は略一致する。
【0066】
次に、液晶光学素子100の製造方法の一例について図7を参照しながら説明する。
第1透明基板1Aの上に第1配向膜2A及び第1液晶層3Aを形成する第1基板SUB1の製造工程と、第2透明基板1Bの上に第2配向膜2B及び第2液晶層3Bを形成する第2基板SUB2の製造工程とは、並行して行うことができる。
【0067】
第1基板SUB1の製造工程は、以下の通りである。
まず、第1透明基板1Aを洗浄する(ステップST1)。
そして、第1透明基板1Aの第1内面F12に第1配向膜2Aを成膜する(ステップST2)。その後、第1配向膜2Aの配向処理を行う(ステップST3)。
【0068】
そして、第1配向膜2Aの上に第1液晶材料(第1コレステリック液晶を形成するためのモノマー材料)を塗布する(ステップST4)。第1液晶材料に含まれる液晶分子は、第1配向膜2Aの配向処理方向に応じて所定の方向に配向する。その後、チャンバ内を減圧することで第1液晶材料を乾燥し(ステップST5)、さらに、第1液晶材料をベークする(ステップST6)。そして、第1液晶材料に紫外線を照射して液晶材料を硬化する(ステップST7)。これにより、第1コレステリック液晶311を有する第1液晶層3Aが形成される。
【0069】
第2基板SUB2の製造工程は、以下の通りである。
一方、第2透明基板1Bを洗浄する(ステップST11)。
そして、第2透明基板1Bの第2内面F22に第2配向膜2Bを成膜する(ステップST12)。その後、第2配向膜2Bの配向処理を行う(ステップST13)。
【0070】
そして、第2配向膜2Bの上に第2液晶材料(第2コレステリック液晶を形成するためのモノマー材料)を塗布する(ステップST14)。第2液晶材料に含まれる液晶分子は、第2配向膜2Bの配向処理方向に応じて所定の方向に配向する。その後、チャンバ内を減圧することで第2液晶材料を乾燥し(ステップST15)、さらに、第2液晶材料をベークする(ステップST16)。そして、第2液晶材料に紫外線を照射して液晶材料を硬化する(ステップST17)。これにより、第2コレステリック液晶312を有する第2液晶層3Bが形成される。
【0071】
第1基板SUB1と第2基板SUB2とを接着する工程は、以下の通りである。
まず、硬化した第1液晶層3Aの表面、または、硬化した第2液晶層3Bの表面に、接着層4を塗布する(ステップST18)。そして、接着層4を挟んで第1液晶層3A及び第2液晶層3Bを貼り合わせる(ステップST19)。その後、接着層4に紫外線等の光を照射する、あるいは、接着層4を加熱するなどして、接着層4を硬化させる(ステップST20)。
ここでは、第1液晶層3Aと第2液晶層3Bとを接着する場合について説明したが、第1透明基板1Aと第2液晶層3Bとが接着層4によって接着されてもよいし、第2透明基板1Bと第1液晶層3Aとが接着層4によって接着されてもよい。
以上の工程により、図1に示した液晶光学素子100が製造される。
【0072】
このような実施形態1によれば、第1コレステリック液晶311を有する第1液晶層3Aは第1透明基板1Aをベースとして形成することができ、また、第2コレステリック液晶312を有する第2液晶層3Bは第2透明基板1Bをベースとして形成することができる。そして、第1液晶層3Aの表面、あるいは、第2液晶層3Bの表面に、他の配向膜を塗布したり、他の液晶層を塗布したりする工程が不要となる。
【0073】
このため、第1コレステリック液晶311に含まれる液晶分子LM1、及び、第2コレステリック液晶312に含まれる液晶分子LM2の配向乱れが抑制され、第1液晶層3Aにおける不所望な散乱(あるいは第1液晶層3Aの白濁化)が抑制されるとともに、第2液晶層3Bにおける不所望な散乱(あるいは第2液晶層3Bの白濁化)が抑制される。したがって、液晶光学素子100における光の利用効率の低下を抑制することができる。
【0074】
また、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bを貼り合わせる前後で、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bの各々の選択反射帯域Δλがほとんど変化しない。このため、所望の反射性能を実現することができる。
【0075】
また、実施形態1によれば、第1コレステリック液晶311及び第2コレステリック液晶312は、同等の螺旋ピッチを有し、互いに逆回りに旋回している。このため、液晶光学素子100において、同一の選択反射帯域(上記の例では赤外線)の第1円偏光のみならず、第2円偏光も導光することができ、光の利用効率をさらに向上することができる。
【0076】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図8に示す実施形態2は、図1に示した実施形態1と比較して、第1コレステリック液晶311の螺旋ピッチP11が第2コレステリック液晶312の螺旋ピッチP12とは異なる点で相違している。液晶光学素子100の断面構造に関しては、実施形態2も実施形態1と同一である。つまり、液晶光学素子100は、第1透明基板1A、第1配向膜2A、第1液晶層3A、接着層4、第2液晶層3B、第2配向膜2B、及び、第2透明基板1Bの積層体として構成されている。
【0077】
図示した例では、螺旋ピッチP11は、螺旋ピッチP12より小さい。但し、螺旋ピッチP12が螺旋ピッチP11より小さくてもよい。第1コレステリック液晶311の旋回方向は、第2コレステリック液晶312の旋回方向と同一である。
【0078】
第1液晶層3Aにおいて、第1コレステリック液晶311は、選択反射帯域のうち、第1円偏光を反射する反射面321を形成する。
第2液晶層3Bにおいて、第2コレステリック液晶312は、第1液晶層3Aとは異なる選択反射帯域のうち、第1円偏光を反射する反射面322を形成する。
【0079】
一例では、第1コレステリック液晶311は、選択反射帯域として紫外線Uを反射するように形成されている。つまり、第1コレステリック液晶311は、紫外線Uのうちの第1円偏光U1を反射するように構成されている。
また、第2コレステリック液晶312は、選択反射帯域として赤外線Iを反射するように形成されている。つまり、第2コレステリック液晶312は、赤外線Iのうちの第1円偏光I1を反射するように構成されている。
【0080】
なお、ここでは紫外線U及び赤外線Iが反射される例について説明したが、第1コレステリック液晶311及び第2コレステリック液晶312は、可視光Vを反射するように構成されてもよい。
【0081】
次に、図8に示す実施形態2において、液晶光学素子100の光学作用について説明する。
【0082】
液晶光学素子100に入射する光LTiは、例えば、可視光V、紫外線U、及び、赤外線Iを含んでいる。
光LTiは、第1外面F11から第1透明基板1Aの内部に進入し、第1内面F12から出射して、第1配向膜2Aを透過し、第1液晶層3Aに入射する。そして、第1液晶層3Aは、光LTiのうち、紫外線Uの第1円偏光U1を第1透明基板1Aに向けて反射し、他の光LTtを透過する。
【0083】
第1液晶層3Aを透過した光LTtは、接着層4を透過し、第2液晶層3Bに入射する。そして、第2液晶層3Bは、光LTtのうち、赤外線Iの第1円偏光I1を第1透明基板1Aに向けて反射し、他の光LTtを透過する。第2液晶層3Bを透過した光LTtは、可視光V、紫外線Uの第2円偏光U2、及び、赤外線Iの第2円偏光I2を含んでいる。
【0084】
第1透明基板1A、第1配向膜2A、第1液晶層3A、接着層4、第2液晶層3B、第2配向膜2B、及び、第2透明基板1Bが同等の屈折率を有している場合、これらの積層体が単体の光導波体となり得る。この場合、光LTrは、第1透明基板1Aと空気との界面、及び、第2透明基板1Bと空気との界面において、反射を繰り返しながら、第2側面S2及び第4側面S4に向けて導光される。
【0085】
このような実施形態2においても、上記の実施形態1と同様の効果が得られる。加えて、液晶光学素子100の選択反射帯域を広帯域化することができる。
【0086】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図9に示す実施形態3は、図8に示した実施形態2と比較して、第1コレステリック液晶311の旋回方向が第2コレステリック液晶312の旋回方向とは逆である点で相違している。図示した例では、螺旋ピッチP11は、螺旋ピッチP12より小さい。但し、螺旋ピッチP12が螺旋ピッチP11より小さくてもよい。
【0087】
第1液晶層3Aにおいて、第1コレステリック液晶311は、選択反射帯域のうち、第1円偏光を反射する反射面321を形成する。
第2液晶層3Bにおいて、第2コレステリック液晶312は、第1液晶層3Aとは異なる選択反射帯域のうち、第2円偏光を反射する反射面322を形成する。
【0088】
一例では、第1コレステリック液晶311は、選択反射帯域として紫外線Uを反射するように形成されている。つまり、第1コレステリック液晶311は、紫外線Uのうちの第1円偏光U1を反射するように構成されている。
また、第2コレステリック液晶312は、選択反射帯域として赤外線Iを反射するように形成されている。つまり、第2コレステリック液晶312は、赤外線Iのうちの第2円偏光I2を反射するように構成されている。
【0089】
このような実施形態3においても、上記の実施形態2と同様の効果が得られる。
【0090】
次に、本実施形態に係る液晶光学素子100の適用例として、太陽電池装置200について説明する。
【0091】
図10は、太陽電池装置200の外観の一例を示す図である。
太陽電池装置200は、上記したいずれかの液晶光学素子100と、発電装置210と、を備えている。発電装置210は、液晶光学素子100の一辺に沿って設けられている。発電装置210と対向する液晶光学素子100の一辺は、図1などに示した第1透明基板1Aの第2側面S2及び第2透明基板1Bの第4側面S4に沿った辺である。このような太陽電池装置200において、液晶光学素子100は、発電装置210に所定波長の光を導く導光素子として機能する。
【0092】
発電装置210は、複数の太陽電池を備えている。太陽電池は、光を受光して、受光した光のエネルギーを電力に変換するものである。つまり、太陽電池は、受光した光によって発電する。太陽電池の種類は、特に限定されない。例えば、太陽電池は、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、有機物系太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池、又は、量子ドット型太陽電池である。シリコン系太陽電池としては、アモルファスシリコンを備えた太陽電池や、多結晶シリコンを備えた太陽電池などが含まれる。
【0093】
図11は、太陽電池装置200の動作を説明するための図である。
第1透明基板1Aの第1外面F11は、屋外に面している。また、第2透明基板1Bの第2外面F21は、例えば屋内に面している。図11において、第1配向膜及び第2配向膜の図示を省略している。
【0094】
第1液晶層3A及び第2液晶層3Bは、例えば、図1に示したように赤外線Iの第1円偏光I1及び第2円偏光I2を反射するように構成されている。なお、第1液晶層3A及び第2液晶層3Bは、図8に示したように紫外線Uの第1円偏光U1及び赤外線Iの第1円偏光I1をそれぞれ反射するように構成されてもよいし、図9に示したように紫外線Uの第1円偏光U1及び赤外線Iの第2円偏光I2を反射するように構成されてもよい。
【0095】
第1液晶層3A及び第2液晶層3Bで反射された赤外線Iは、第2側面S2及び第4側面S4に向かって液晶光学素子100を伝播する。発電装置210は、第2側面S2及び第4側面S4を透過した赤外線Iを受光して発電する。
【0096】
太陽光のうちの可視光V及び紫外線Uは、液晶光学素子100を透過する。特に、可視光Vの主要な成分である第1成分(青成分)、第2成分(緑成分)、及び、第3成分(赤成分)の各々は、液晶光学素子100を透過する。このため、太陽電池装置200を透過した光の着色を抑制することができる。また、太陽電池装置200における可視光Vの透過率の低下を抑制することができる。
【0097】
(変形例1)
図12は、液晶光学素子100の変形例1を模式的に示す断面図である。
変形例1では、第1液晶層3Aと第2透明基板1Bとが接着層4によって接着されている。つまり、第1液晶層3Aと第2液晶層3Bとの間には、接着層4、第2透明基板1B、及び、第2配向膜2Bが介在している。
【0098】
第1液晶層3A及び第2液晶層3Bについては、詳述しないが、上記の実施形態1乃至3のいずれのようにも構成することができる。
例えば、実施形態1の場合、第1液晶層3Aの第1コレステリック液晶311の旋回方向は、第2液晶層3Bの第2コレステリック液晶312の旋回方向とは逆であり、第1コレステリック液晶311の螺旋ピッチP11は、第2コレステリック液晶312の螺旋ピッチP12と同等である。
また、実施形態2の場合、第1液晶層3Aの第1コレステリック液晶311の旋回方向は、第2液晶層3Bの第2コレステリック液晶312の旋回方向と同一であり、第1コレステリック液晶311の螺旋ピッチP11は、第2コレステリック液晶312の螺旋ピッチP12とは異なる。
また、実施形態3の場合、第1液晶層3Aの第1コレステリック液晶311の旋回方向は、第2液晶層3Bの第2コレステリック液晶312の旋回方向とは逆であり、第1コレステリック液晶311の螺旋ピッチP11は、第2コレステリック液晶312の螺旋ピッチP12とは異なる。
【0099】
このような変形例1においても、上記の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0100】
(変形例2)
図13は、液晶光学素子100の変形例2を模式的に示す断面図である。
液晶光学素子100は、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、第3基板SUB3と、第4基板SUB4と、接着層4Aと、接着層4Bと、接着層4Cと、を備えている。
【0101】
第1基板SUB1は、第1透明基板1A、第1配向膜2A、及び、第1液晶層3Aを備えている。
第2基板SUB2は、第2透明基板1B、第2配向膜2B、及び、第2液晶層3Bを備えている。接着層4Aは、第1液晶層3Aと第2透明基板1Bとを接着している。
第3基板SUB3は、第3透明基板1C、第3配向膜2C、及び、第3液晶層3Cを備えている。接着層4Bは、第2液晶層3Bと第3透明基板1Cとを接着している。
第4基板SUB4は、第4透明基板1D、第4配向膜2D、及び、第4液晶層3Dを備えている。接着層4Cは、第3液晶層3Cと第4透明基板1Dとを接着している。
【0102】
例えば、第1液晶層3Aの第1コレステリック液晶311の旋回方向は、第3液晶層3Cの第3コレステリック液晶313の旋回方向とは逆であり、第1コレステリック液晶311の螺旋ピッチP11は、第3コレステリック液晶313の螺旋ピッチP13と同等である。
第2液晶層3Bの第2コレステリック液晶312の旋回方向は、第4液晶層3Dの第4コレステリック液晶314の旋回方向とは逆であり、第2コレステリック液晶312の螺旋ピッチP12は、第4コレステリック液晶314の螺旋ピッチP14と同等である。
また、第1コレステリック液晶311の螺旋ピッチP11は、第2コレステリック液晶312の螺旋ピッチP12とは異なる。
このような変形例2においても、上記の各実施形態と同様の効果が得られる。
【0103】
以上説明したように、本実施形態によれば、光の利用効率の低下を抑制することが可能な液晶光学素子を提供することができる。
【0104】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
100…液晶光学素子
1A…第1透明基板 F11…第1外面 F12…第1内面 S1…第1側面 S2…第2側面
1B…第2透明基板 F21…第2外面 F22…第2内面 S3…第3側面 S4…第4側面
2A…第1配向膜 2B…第2配向膜
3A…第1液晶層 311…第1コレステリック液晶 321…反射面
3B…第2液晶層 312…第2コレステリック液晶 322…反射面
4…接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13