IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147835
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】紫外線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20241009BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20241009BHJP
   C08G 65/04 20060101ALI20241009BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20241009BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20241009BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H01L23/36 M
C08G59/68
C08G65/04
C08F2/48
C08F292/00
C08F2/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134342
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】富田 裕介
【テーマコード(参考)】
4J005
4J011
4J026
4J036
5F136
【Fターム(参考)】
4J005AA07
4J005BB02
4J011PA07
4J011PA13
4J011PB22
4J011PC02
4J011QA24
4J011QB20
4J011SA61
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J026AC00
4J026BA28
4J026DB06
4J026DB36
4J026FA05
4J026GA06
4J036AA01
4J036AD08
4J036AJ09
4J036AJ10
4J036GA03
4J036GA06
4J036GA22
4J036GA24
4J036GA26
4J036GA29
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA07
4J036KA01
5F136FA51
5F136FA52
5F136FA63
5F136FA71
5F136FA82
(57)【要約】
【課題】光硬化特性に優れ、所望の領域に放熱材を安定的に形成できる組成物を提供する。
【解決手段】以下の成分(A):重合性化合物および成分(B):フィラーを含む紫外線硬化性組成物であって、紫外線硬化性組成物の硬化膜(厚さ100μm)の波長380~780nmの平行光線透過率の平均値が40%以上であり、紫外線硬化性組成物の硬化膜(厚さ100μm)について、以下の式(100)により得られる熱伝導率が0.25W/m・K以上であり、E型粘度計を用いて25℃にて測定される紫外線硬化性組成物の粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下である、紫外線硬化性組成物。
熱伝導率=密度×比熱×熱拡散率 (100)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)および(B):
(A)重合性化合物、
(B)フィラー
を含む紫外線硬化性組成物であって、
当該紫外線硬化性組成物の硬化膜(厚さ100μm)の波長380~780nmの平行光線透過率の平均値が40%以上であり、
当該紫外線硬化性組成物の硬化膜(厚さ100μm)について、以下の式(100)により得られる熱伝導率が0.25W/m・K以上であり、
E型粘度計を用いて25℃にて測定される当該紫外線硬化性組成物の粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下である、紫外線硬化性組成物。
熱伝導率=密度×比熱×熱拡散率 (100)
【請求項2】
当該紫外線硬化性組成物中の溶剤の含有量が、当該紫外線硬化性組成物全体に対して0.05質量%以下である、請求項1に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項3】
前記成分(B)の熱伝導率が3W/m・K以上100W/m・K以下である、請求項1または2に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項4】
前記成分(B)の25℃における屈折率が、1.40以上1.80以下である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項5】
前記成分(A)の25℃における屈折率が、1.40以上1.80以下である、請求項1乃至4いずれか一項に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項6】
成分(A)の25℃における屈折率と前記成分(B)の25℃における屈折率との差の絶対値が0.15以下である、請求項1乃至5いずれか一項に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項7】
以下の成分(C)をさらに含む、請求項1乃至6いずれか一項に記載の紫外線硬化性組成物。
(C)光重合開始剤
【請求項8】
前記成分(C)が光カチオン開始剤である、請求項7に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項9】
前記成分(A)が、エポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項7または8に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項10】
前記成分(C)が光ラジカル開始剤である、請求項7に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項11】
前記成分(A)が、(メタ)アクリル化合物である、請求項7または10に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれか一項に記載の紫外線硬化性組成物の硬化物からなる、樹脂膜。
【請求項13】
請求項1乃至11いずれか一項に記載の紫外線硬化性組成物の硬化物からなる、放熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の発光素子やパワーデバイスの出力が年々向上していることから、デバイスの放熱設計が重要になってきており、放熱材料として、放熱グリースや熱硬化型の放熱材が使用されている。
【0003】
熱硬化型の放熱材に関する技術として、特許文献1(特開2017-78122号公報)に記載のものがある。
特許文献1には、熱伝導性粒子の表面に屈折率制御層を設けた熱伝導性フィラー、および、これを含有する樹脂組成物について記載されており(請求項1、6)、かかる樹脂組成物は透明性と熱伝導性を兼ね備えているため、LED周りやディスプレー周りなどの透明部材の熱の問題を解決することにつながるとされている(段落0006)。同文献において、樹脂組成物中の樹脂として各種の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、シリコーン樹脂等のゴム系樹脂などを用いることができるとされており(段落0027)、シリコーン樹脂を用いて熱硬化によりシート状の成形品を得た例が記載されている(段落0037~0039)。
【0004】
また、特許文献2(国際公開第2005/044875号)には、重合後の全ポリマー成分のガラス転移点温度が20℃以下となるように調整された(メタ)アクリル系モノマー又はその部分重合物、熱伝導性無機充填剤、光重合開始剤、熱重合開始剤を含有する重合性組成物について記載されている(請求項1)。同文献によれば、光重合開始剤に熱重合開始剤を併用することによって、積極的に重合性組成物を加熱しなくとも光照射とそのとき発生する熱によって充分高い重合率が達成できるとされている(第3頁第3~6行)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-78122号公報
【特許文献2】国際公開第2005/044875号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が検討したところ、放熱材料には不透明な材料が多く、不透明な材料を用いた部材の場合、部材のアライメントや実装後の部品の確認などができないとい点で改善の余地があった。
また、放熱部材とともに実装される部品が熱に弱い場合もあり、デバイスの設計の自由度においても改善の余地があった。
そこで、本発明は、光硬化特性に優れ、所望の領域に放熱部材を安定的に形成できる組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す紫外線硬化性組成物、樹脂膜および放熱部材が提供される。
[1] 以下の成分(A)および(B):
(A)重合性化合物、
(B)フィラー
を含む紫外線硬化性組成物であって、
当該紫外線硬化性組成物の硬化膜(厚さ100μm)の波長380~780nmの平行光線透過率の平均値が40%以上であり、
当該紫外線硬化性組成物の硬化膜(厚さ100μm)について、以下の式(100)により得られる熱伝導率が0.25W/m・K以上であり、
E型粘度計を用いて25℃にて測定される当該紫外線硬化性組成物の粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下である、紫外線硬化性組成物。
熱伝導率=密度×比熱×熱拡散率 (100)
[2] 当該紫外線硬化性組成物中の溶剤の含有量が、当該紫外線硬化性組成物全体に対して0.05質量%以下である、[1]に記載の紫外線硬化性組成物。
[3] 前記成分(B)の熱伝導率が3W/m・K以上100W/m・K以下である、[1]または[2]に記載の紫外線硬化性組成物。
[4] 前記成分(B)の25℃における屈折率が、1.40以上1.80以下である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の紫外線硬化性組成物。
[5] 前記成分(A)の25℃における屈折率が、1.40以上1.80以下である、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の紫外線硬化性組成物。
[6] 成分(A)の25℃における屈折率と前記成分(B)の25℃における屈折率との差の絶対値が0.15以下である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の紫外線硬化性組成物。
[7] 以下の成分(C)をさらに含む、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の紫外線硬化性組成物。
(C)光重合開始剤
[8] 前記成分(C)が光カチオン開始剤である、[7]に記載の紫外線硬化性組成物。
[9] 前記成分(A)が、エポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である、[7]または[8]に記載の紫外線硬化性組成物。
[10] 前記成分(C)が光ラジカル開始剤である、[7]に記載の紫外線硬化性組成物。
[11] 前記成分(A)が、(メタ)アクリル化合物である、[7]または[10]に記載の紫外線硬化性組成物。
[12] [1]乃至[11]いずれか一つに記載の紫外線硬化性組成物の硬化物からなる、樹脂膜。
[13] [1]乃至[11]いずれか一つに記載の紫外線硬化性組成物の硬化物からなる、放熱部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光硬化特性に優れ、所望の領域に放熱部材を安定的に形成できる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に説明する。本実施形態において、各成分について、それぞれ、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、数値範囲を表す「~」は、以上、以下を表し、上限値および下限値をいずれも含む。
【0010】
(紫外線硬化性組成物)
本実施形態において、紫外線硬化性組成物(以下、適宜単に「組成物」とも呼ぶ。)は、具体的には紫外線硬化性熱伝導組成物であって、以下の成分(A)および(B)を含む。
(A)重合性化合物
(B)フィラー
紫外線硬化性組成物の硬化膜(厚さ100μm)の波長380~780nmの平行光線透過率の平均値が40%以上であり、紫外線硬化性組成物の硬化膜(厚さ100μm)について、以下の式(100)により得られる熱伝導率が0.25W/m・K以上であり、E型粘度計を用いて25℃にて測定される紫外線硬化性組成物の粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下である。
熱伝導率=密度×比熱×熱拡散率 (100)
【0011】
本実施形態においては、組成物が成分(A)および(B)を含み、平行光線透過率、熱伝導率および粘度がそれぞれ特定の範囲に制御されているため、光硬化特性に優れる組成物を得ることができるとともに、所望の領域に放熱部材を安定的に形成できる。
本実施形態における組成物を用いることにより、透明性および熱伝導性に優れるとともに、製造安定性に優れる樹脂膜および放熱部材を得ることができる。
ここで、平行光線透過率、熱伝導率および粘度がそれぞれ上述の範囲にある組成物を得るためには、組成物の調製にあたり、組成物に含まれる成分(A)および(B)の選択および組み合わせ、配合量を調整することが重要である。
【0012】
組成物の硬化膜(厚さ100μm)の波長380~780nmの平行光線透過率の平均値は、組成物の光硬化特性を向上する観点から、40%以上であり、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。
また、上記平行光線透過率の平均値の上限値は、具体的には100%以下であり、また、たとえば80%以下であってもよい。
ここで、上記硬化膜は、波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm2、積算光量3000mJ/cm2の光照射条件で得られ、厚さ100μmである。平行光線透過率は、紫外可視分光光度計により測定される上記硬化膜の380~780nmの透過率の平均値である。
【0013】
組成物の硬化膜(厚さ100μm)の熱伝導率は、組成物を用いて得られる部材の放熱特性を向上する観点から、0.25W/m・K以上であり、好ましくは0.30W/m・K以上、より好ましくは0.40W/m・K以上、さらに好ましくは0.50W/m・K以上である。
また、配合物の粘度が過度に高くなることを抑制する観点、および、組成物のハンドリング性を好ましいものとする観点から、組成物の熱伝導率は、好ましくは5.0W/m・K以下であり、より好ましくは3.0W/m・K以下、さらに好ましくは2.0W/m・K以下である。
ここで、硬化膜は、波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm2、積算光量3000mJ/cm2の条件で光硬化して得られ、厚さ100μmである。得られた硬化膜の密度、比熱および熱拡散率をそれぞれ測定し、得られた測定値に基づき下記式(100)により熱伝導率を求める。
熱伝導率=密度×比熱×熱拡散率 (100)
【0014】
組成物の粘度は、配合物のフィラーの沈降抑制の観点から、0.1Pa・s以上であり、好ましくは0.5Pa・s以上、より好ましくは1.0Pa・s以上である。
また、配合物の作業性の観点から、組成物の粘度は、1000Pa・s以下であり、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である。
ここで、組成物の粘度は、E型粘度計で3°×R9.7のコーンを用いて25℃、以下の回転数にて測定される。
粘度1Pa・s未満:100rpm
粘度1Pa・s以上100Pa・s未満:20rpm
粘度100Pa・s以上:5rpm
【0015】
次に、組成物の構成成分について具体例を挙げて説明する。
【0016】
(成分(A))
成分(A)は、重合性化合物である。成分(A)として、具体的には、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等のカチオン重合性の官能基を有する化合物(以下、「カチオン重合性化合物」とも呼ぶ。);および(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のラジカル重合性官能基を有する化合物(以下、「ラジカル重合性化合物」とも呼ぶ。)が挙げられる。
【0017】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物は、硬化性向上の観点から、好ましくはエポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくはエポキシ化合物を含み、さらに好ましくはエポキシ化合物である。
【0018】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物は、一分子中に1または2以上のエポキシ基を有する化合物であり、具体的には、モノエポキシ化合物、2官能エポキシ化合物、3官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
硬化性向上の観点から、エポキシ化合物は2官能以上のエポキシ化合物を含み、より好ましくは2官能エポキシ化合物を含む。
【0019】
硬化性向上の観点から、エポキシ化合物は、好ましくは脂環式エポキシ化合物および芳香族エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0020】
脂環式エポキシ化合物は、具体的には分子中に脂環式炭化水素構造およびエポキシ基をそれぞれ1つ以上有する化合物である。脂環式エポキシ化合物は、分子内に1つのエポキシ基を有しても2以上のエポキシ基を有してもよいが、組成物の硬化性をより高める観点から、好ましくは2以上のエポキシ基を有する。
【0021】
脂環式エポキシ化合物として、たとえば、エポキシシクロヘキサン構造等のシクロアルケンオキサイド構造を含む化合物、環状脂肪族炭化水素に直接または炭化水素基等を介してエポキシ基が結合した化合物が挙げられる。組成物の硬化性を高める観点から、脂環式エポキシ化合物は、好ましくはシクロアルケンオキサイド構造を有する化合物である。
ここで、シクロアルケンオキサイド構造とは、シクロアルケンを過酸化物などの酸化剤でエポキシ化して得られる構造であり、脂肪族環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基である。シクロアルケンオキサイドは、たとえばシクロヘキセンオキサイド、シクロペンテンオキサイドであり、好ましくはシクロヘキセンオキサイドである。
【0022】
シクロアルケンオキサイド構造を有する脂環式エポキシ化合物の1分子中のシクロアルケンオキサイド構造の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。硬化物の透明性や耐熱性、耐光性等を高めるとの観点から、1分子中のシクロアルケンオキサイド構造の数は、好ましくは2つ以上である。
【0023】
シクロアルケンオキサイド構造を有する脂環式エポキシ化合物として、たとえば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
【化1】
【0025】
一般式(1)中、Xは、単結合または連結基である。連結基は、たとえば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)およびアミド基(アミド結合)ならびにこれらが複数連結した基から選択することができる。
【0026】
2価の炭化水素基として、たとえば、炭素数が1~18のアルキレン基や2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
このうち、炭素数が1~18のアルキレン基の具体例として、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基が挙げられる。
また、2価の脂環式炭化水素基の具体例として、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)が挙げられる。
【0027】
Xは、硬化性を向上する観点から、好ましくは単結合または酸素原子を有する連結基であり、より好ましくは単結合である。
同様の観点から、酸素原子を有する連結基は、好ましくは、-CO-(カルボニル基)、-O-CO-O-(カーボネート基)、-COO-(エステル基)、-O-(エーテル基)、-CONH-(アミド基)、これらの基が複数連結した基、またはこれらの基の1以上と2価の炭化水素基の1以上とが連結した基であり、より好ましくは-CO2CH2-基である。
【0028】
以下、一般式(1)で表される脂環式エポキシ化合物の具体例を示す。
【0029】
【化2】
【化3】
【0030】
上記式中、lは、1~10の整数を表し、mは、1~30の整数を表す。Rは、炭素数1~8のアルキレン基を表し、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3のアルキレン基である。また、n1およびn2は、それぞれ独立して1~30の整数を表す。
【0031】
シクロアルケンオキサイド構造を有する脂環式エポキシ化合物の具体例として、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(たとえばセロキサイド(CEL)2021P、ダイセル社製)、ε-カプロラクトン変性 3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2081、ダイセル社製)、(3,3',4,4'-ジエポキシ)ビシクロヘキシル(セロキサイド8010、ダイセル社製)が挙げられる。
【0032】
芳香族エポキシ化合物の具体例として、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環共役系を有するグリシジル化合物が挙げられる。
芳香族エポキシ化合物は、好ましくは、ビスフェノール骨格を有する化合物であり、より好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂であり、さらに好ましくはビスフェノールF型エポキシ樹脂(たとえばYL983U、三井ケミカル社製)およびビスフェノールE型エポキシ樹脂(たとえばR1710、プリンテック社製)の少なくとも一つである。ビスフェノール骨格を有する芳香族エポキシ化合物は、たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる。
【0033】
(オキセタン化合物)
オキセタン化合物は、一分子中に1または2以上のオキセタニル基を有する化合物であり、具体的には、モノオキセタン化合物、2官能オキセタン化合物、3官能以上のオキセタン化合物が挙げられる。硬化性向上の観点から、オキセタン化合物は好ましくは2官能オキセタン化合物である。
【0034】
硬化性向上の観点から、オキセタン化合物は、好ましくは以下の一般式(5)または(6)で表される化合物からなる群から選択される1または2以上の2官能オキセタン化合物である。
【0035】
【化4】
【0036】
一般式(5)および(6)中、R5は、独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、フリル基またはチエニル基であり、好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基である。R6は、2価の有機残基である。
【0037】
5のうち、炭素原子数1~6のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
アリール基の例として、具体的には、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基が挙げられる。
アラルキル基として、具体的には、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0038】
また、R6として、具体的には、アルキレン基、ポリオキシアルキレン基、フェニレン基、キシリレン基、下記一般式で示される構造が挙げられる。
【0039】
【化5】
【0040】
上記一般式中、R3は酸素原子、硫黄原子、-CH2-、-NH-、-SO-、-SO2-、-C(CF32-または-C(CH32-である。
また、R4は、炭素原子数1~6のアルキレン基またはアリーレン基である。炭素原子数1~6のアルキレン基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0041】
また、R6のうち、ポリオキシアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは4~30であり、より好ましくは4~8である。ポリオキシアルキレン基の具体例として、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基が挙げられる。
【0042】
硬化性向上の観点から、オキセタン化合物は、好ましくは一般式(6)に示したオキセタン化合物であり、より好ましくは3-エチル-3{〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕メチル}オキセタン(たとえば、OXT-221(東亞合成社製))である。
【0043】
(ラジカル重合性化合物)
ラジカル重合性官能基の具体例として、(メタ)アクリロイル基およびビニル基からなる群から選択される1または2以上の基が挙げられる。組成物の硬化性を向上させる観点から、ラジカル重合性官能基は、好ましくは(メタ)アクリロイル基を含む化合物(本明細書中、「(メタ)アクリル化合物」とも呼ぶ。)を含み、より好ましくは(メタ)アクリル化合物である。
ここで、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基のうちの少なくとも一方を意味する。また、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルのうちの少なくとも一方を意味する。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートのうちの少なくとも一方を意味する。
【0044】
((メタ)アクリル化合物)
(メタ)アクリル化合物は、一分子中に1または2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、具体的には、モノ(メタ)アクリル化合物、ジ(メタ)アクリル化合物、3官能以上の(メタ)アクリル化合物が挙げられる。
硬化性向上の観点から、(メタ)アクリル化合物は2官能以上の(メタ)アクリル化合物を含み、より好ましくはジ(メタ)アクリル化合物である。
【0045】
(メタ)アクリル化合物中の炭化水素構造に基づく分類では、(メタ)アクリル化合物として、鎖状構造を有する(メタ)アクリル化合物;および環状構造を有する(メタ)アクリル化合物が挙げられる。
鎖状構造は、直鎖構造であっても、分岐を有する構造であってもよい。鎖状構造における炭素数は、モノマー入手容易性の観点から、たとえば1以上であり、好ましくは2以上、より好ましくは4以上である。また、耐熱性向上の観点から、状構造における炭素数は、好ましくは20以下であり、より好ましくは14以下である。
【0046】
鎖状構造を有する(メタ)アクリル化合物の具体例として、3官能以上の(メタ)アクリル化合物が挙げられる。3官能以上の(メタ)アクリル化合物は、好ましくは、トリメチロールプロパントリアクリレート(たとえばライトアクリレートTMP-A、共栄社化学社製)等の3官能(メタ)アクリル化合物である。
【0047】
環状構造を有する(メタ)アクリル化合物における環状構造として、脂環式炭化水素構造、芳香族炭化水素構造が挙げられる。また、環状構造は、単環式であってもよいし、縮合環式炭化水素構造や橋架環式炭化水素基構造の多環式構造であってもよい。
屈折率向上の観点から、(メタ)アクリル化合物は、好ましくは、分子構造中に環状炭化水素骨格を有する。
【0048】
上記環状炭化水素骨格の具体例として、脂環式炭化水素骨格および芳香族炭化水素骨格が挙げられる。炭化水素骨格は、好ましくは芳香族炭化水素骨格であり、より好ましくはビスフェノール骨格およびフルオレン骨格からなる群から選択される少なくとも一つである。
【0049】
分子構造中にビスフェノール骨格を有する(メタ)アクリル化合物として、具体的には、アルキレンオキサイド変性されたビスフェノール骨格を有する化合物が挙げられ、好ましくはEO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートおよびプロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートからなる群から選択される1または2以上の化合物が挙げられる。
【0050】
また、アルキレンオキサイド変性されたビスフェノール骨格を有する化合物は、下記一般式(7)で表されるものであってもよい。
【0051】
【化6】
【0052】
(上記一般式(7)中、R7およびR8は、互いに独立して水素原子またはメチル基である。R9およびR10は互いに独立して水素原子、メチル基またはアリール基である。pおよびqは、互いに独立して1以上20以下の数である。)
【0053】
一般式(7)中、硬化性向上の観点から、R7およびR8は、好ましくは水素原子であり、R9およびR10はメチル基である。
また、フィラーの結束性向上の観点から、pおよびqは、互いに独立して、好ましくは1以上10以下の数であり、より好ましくは1以上5以下の数であり、さらに好ましくは1以上3以下である。
同様の観点から、p+qは、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、また、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である。
【0054】
一般式(7)で表される化合物の市販品の例として、NKエステルA-BPE-2.2、ABE-300、A-BPE-4、A-BPE-10、A-BPE-20、A-BPP-3(以上、新中村化学工業社製)、ライトアクリレートBP-4EAL、BP-4PA(以上、共栄社化学社製)が挙げられる。
【0055】
また、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル化合物として、具体的には、OGSOL(オグソール) EA-0200、EA-0300(以上、大阪ガス化学社製)等のフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート;OGSOL GA-5060P、GA-2800(以上、大阪ガス化学社製)等のフルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、他の芳香族骨格を有する(メタ)アクリル化合物として、具体的には、エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート(下記式(8)で表される化合物、たとえばA-LEN-10、新中村化学工業社製)、下記式(9)で表される化合物(たとえばPOB-A、共栄社化学社製)、ベンジルアクリレート(下記式(10)で表される化合物、たとえばビスコート#160、大阪有機化学工業社製)が挙げられる。
【0056】
【化7】
【0057】
組成物中の成分(A)の含有量は、硬化物の強度を向上する観点から、組成物の全組成に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上である。
また、組成物の放熱特性を向上する観点から、組成物中の成分(A)の含有量は、組成物の全組成に対し、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0058】
成分(A)の25℃における屈折率は、組成物の透明性向上の観点から、好ましくは1.40以上であり、より好ましくは1.45以上、さらに好ましくは1.50以上である。
また、組成物の透明性向上の点から、成分(A)の25℃における屈折率は、好ましくは1.80以下であり、より好ましくは1.75より好ましくは、さらに好ましくは1.70以下、さらにより好ましくは1.65以下である。
ここで、成分(A)の屈折率は、室温(25℃)でのd線(波長587.6nm)に対する屈折率ndであり、具体的にはアッベ屈折計(アタゴ社製、DR-M4)にて測定される。
また、成分(A)が複数の種類の重合性化合物を含むとき、成分(A)の屈折率は、各成分の屈折率に質量分率を乗じたものの総和として求められる。
【0059】
(成分(B))
成分(B)は、フィラーである。
フィラーの材料は、具体的には、無機化合物である。無機フィラーの具体例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;タルクが挙げられる。
【0060】
また、成分(B)の形状はたとえば粒子状である。
成分(B)の平均粒径d50は、熱伝導性をより安定的に発現する観点から、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは2.5μm以上である。
また、組成物を接着層として使用する際の接着層の厚みの自由度を向上する観点から、成分(B)の平均粒径d50は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
ここで、成分(B)の平均粒径d50は、具体的には、レーザー回折法により成分(B)の粒子の粒度分布を体積基準で測定することにより得られる。
【0061】
成分(B)の熱伝導率は、組成物の放熱特性向上の観点から、好ましくは3W/m・K以上であり、より好ましくは5W/m・K以上である。
また、組成物の透明性向上の観点から、成分(B)の熱伝導率は、好ましくは100W/m・K以下であり、より好ましくは75W/m・K以下、さらに好ましくは50W/m・K以下、さらにより好ましくは20W/m・K以下である。
【0062】
成分(B)の25℃における屈折率は、組成物の透明性向上の観点から、好ましくは1.40以上であり、より好ましくは1.45以上、さらに好ましくは1.50以上である。
また、組成物の透明性向上の観点から、成分(B)の25℃における屈折率は、好ましくは1.80以下であり、より好ましくは1.75以下、さらに好ましくは1.70以下である。
【0063】
成分(A)の25℃における屈折率と成分(B)の25℃における屈折率との差の絶対値は、組成物の硬化物の透明性向上の観点から、好ましくは0.15以下であり、より好ましくは0.10以下、さらに好ましくは0.05以下である。
また、成分(A)および(B)の屈折率の上記差の絶対値は、好ましくは0であり、また、たとえば0.01以上であってもよい。
【0064】
(成分(C))
組成物は、成分(C):光重合開始剤をさらに含んでもよい。成分(C)として、具体的には、光カチオン開始剤および光ラジカル開始剤からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0065】
光カチオン開始剤は、紫外線等の光が照射されることによってカチオン種を発生し、成分(A)の重合を開始させることが可能な化合物であればよい。成分(C)が光カチオン開始剤であるとき、成分(A)は具体的にはカチオン重合性化合物であり、好ましくはエポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0066】
光カチオン開始剤の具体例として、下記一般式(11)で表されるオニウムイオンの塩(オニウム塩)が挙げられる。かかるオニウム塩は、光反応によってルイス酸を放出する。
[R12 a13 b14 c15 dW]v+[MXv+uu- (11)
【0067】
一般式(11)中、Wは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、またはN≡Nを示す。R12、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に有機基を示し、a、b、cおよびdは、それぞれ独立に0~3の整数を示す。なお、「a+b+c+d」はWの価数に等しい。
【0068】
また、一般式(11)中、Mは、ハロゲン化錯体[MXv+u]の中心原子を構成する金属、またはメタロイドを示す。Mの具体例として、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coが挙げられる。一般式(11)中、XはF、Cl、Br等のハロゲン原子を示し、uはハロゲン化錯体イオンの正味の電荷を示し、vはMの原子価を示す。
【0069】
一般式(11)におけるオニウムイオンの具体例として、ジフェニルヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、4-メチルフェニル-4'-イソプロピルフェニルヨードニウム、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリルクミルヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4-(ジフェニルスルフォニオ)-フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)-フェニル〕スルフィド、η5-2,4-(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6-η-(メチルエチル)ベンゼン〕-鉄(1+)が挙げられる。
【0070】
また、一般式(11)における陰イオンの具体例として、テトラフルオロボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネートが挙げられる。
【0071】
生体に対する安全性に優れるという点で、一般式(11)における陰イオンは、テトラフルオロボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択されるものが好ましい。
【0072】
一般式(11)で表される光カチオン開始剤の市販品の例として、Irgacure250、Irgacure270、Irgacure290(BASF社製)、CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、CPI-310B、CPI-400PG(サンアプロ社製)、SP-150、SP-170、SP-171、SP-056、SP-066、SP-130、SP-140、SP-601、SP-606、SP-701(ADEKA社製)、PI-2074(商品名、ローディア社製)などが挙げられる。中でも、硬化性を向上する観点から、一般式(11)で表される光カチオン開始剤は、好ましくはIrgacure270、Irgacure290、CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、CPI-310B、CPI-400PG、SP-150、SP-170、SP-171、SP-056、SP-066、SP-601、SP-606、SP-701およびPI-2074からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0073】
光ラジカル開始剤は、紫外線等の光が照射されることによってラジカルを発生し、成分(A)の重合を開始させることが可能な化合物であればよい。成分(C)が光ラジカル発生剤であるとき、成分(A)は具体的にはラジカル重合性化合物であり、好ましくは(メタ)アクリル化合物である。
光ラジカル発生剤の具体例として、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルオキシンホスフィド化合物、オキシムエステル化合物、アルキルフェノン化合物およびベンゾフェノン誘導体からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0074】
組成物中の成分(C)の含有量は、硬化性を向上する観点から、成分(A)100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、さらにより好ましくは3質量部以上である。
また、組成物の着色を抑制する観点から、組成物中の成分(C)の含有量は、成分(A)100質量部に対して好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
【0075】
(溶剤)
組成物を使用する工程の簡便化の観点から、本実施形態において、組成物は、好ましくは溶剤を含有しないものであり、または、組成物が溶剤を含むときの溶剤の含有量は0質量%超であり、また、0.05質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以下である。組成物が溶剤を含有しないものである具体的な態様として、組成物の調製時に溶剤が意図的に配合されないものが挙げられる。
【0076】
本実施形態において、組成物は、上述した成分以外の成分をさらに含んでもよい。他の成分の具体例として、光増感剤、酸化防止剤、耐光性付与剤、レベリング剤、消泡剤、チクソ付与剤、重合禁止剤、カップリング剤などが挙げられる。
【0077】
組成物が光増感剤を含むことにより、組成物の硬化性をさらに向上することができる。組成物として、たとえば光カチオン増感剤が挙げられる。
光増感剤は、UV-LED等の波長選択的な光源に対応する観点から、好ましくは波長350nm~450nmの光によって励起状態となる化合物である。このような増感剤の具体例として、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン等の多核芳香族類;フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等のキサンテン類;キサントン、チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のキサントン類;チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等のシアニン類;メロシアニン、カルボメロシアニン等のメロシアニン類;ローダシアニン類;オキソノール類;チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等のチアジン類;アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等のアクリジン類;アクリドン、10-ブチル-2-クロロアクリドン等のアクリドン類;アントラキノン類;、スクアリウム類;スチリル類;ベーススチリル類;7-ジエチルアミノ4-メチルクマリン等のクマリン類が挙げられる。これらの中でも、光増感剤は、硬化性向上の観点から、好ましくは多環芳香族類、アクリドン類、クマリン類またはベーススチリル類であり、より好ましくはアントラセン化合物である。
【0078】
組成物中の光増感剤の含有量は、組成物の硬化性をより好ましいものとする観点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0079】
また、組成物がカップリング剤を含むことにより、組成物の硬化物と硬化物に隣接する部材との密着性をさらに高めることができる。
カップリング剤として、たとえばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリングは、組成物の硬化物と硬化物に隣接する部材との密着性を向上する観点から、好ましくは成分(A)中の重合性官能基と共通の官能基を有するシランカップリング剤、または、成分(A)中の重合性官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤である。たとえば、成分(A)がエポキシ化合物を含むとき、カップリング剤が、エポキシ基を有するシランカップリング剤およびエポキシ基と反応(たとえば、付加反応)する官能基を有するシランカップリング剤からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0080】
エポキシ基を有するシランカップリング剤の具体例として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0081】
エポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤の具体例として、1級アミノ基や2級アミノ基等のアミノ基;カルボキシル基等;(メタ)アクリロイル基;イソシアネート基等を含むシランカップリング剤が挙げられる。
【0082】
これらのシランカップリング剤の具体例として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン又は3-(4-メチルピペラジノ)プロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル安息香酸、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0083】
また、カップリング剤は、上述のもの以外のもの、たとえば他のシランカップリング剤を含んでもよい。他のシランカップリング剤として、たとえば、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシランが挙げられる。
なお、カップリング剤の分子量は、組成物の硬化物と硬化物に隣接する部材との密着性を向上する観点から、好ましくは80~800である。
【0084】
組成物中のカップリング剤の含有量は、組成物の硬化物と硬化物に隣接する部材との密着性を向上する観点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0085】
次に、組成物の製造方法を説明する。
組成物の製造方法は限定されず、たとえば、成分(A)および(B)ならびに適宜その他の成分を混合することを含む。各成分を混合する方法として、たとえば、遊星式撹拌装置、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、2本ロール、3本ロール、押出機等の公知の各種混練機を単独または併用して、常温下または加熱下で、常圧下、減圧下、加圧下または不活性ガス気流下等の条件下で均一に混練する方法が挙げられる。
【0086】
ここで、組成物の屈折率、熱伝導率および粘度を前述の範囲内により安定的に制御して、前述の屈折率、熱伝導率および粘度の条件を満たす組成物を得るためには、組成物の製造にあたり、たとえば、組成物に含まれる成分(A)および(B)の選択および組み合わせ、配合量を制御することが重要である。
【0087】
本実施形態において、得られた組成物を用いて樹脂膜や放熱部材を形成することもできる。たとえば、組成物を基材上に塗布し、乾燥してもよい。塗布には、インクジェット法、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布等の公知の手法を用いることができる。また、乾燥は、たとえば成分(A)が重合しない温度に加熱すること等によりおこなうことができる。得られる放熱部材の形状に制限はなく、たとえば膜状とすることができる。
【0088】
本実施形態において得られる組成物は、透明性および熱伝導性に優れており、所望の領域に放熱部材を安定的に形成できるため、たとえば、透明性(視認性)および放熱が必要とされる電子部品の分野で幅広く活用することができる。さらに具体的には、本実施形態において得られる組成物は、パワーデバイス等の半導体装置、発光装置、電池等の電子装置;自動車およびその部品;照明および部品における放熱部材、接着剤、コーティング剤等に好適に用いることができる。
本実施形態における組成物を用いることにより、たとえば、部材のアライメントや実装後の部品の確認を容易におこなうことができ、電子装置等の製造安定性を向上することも可能となる。
また、本実施形態における組成物は、熱に弱い部材とも好適に組み合わせて用いることができるため、デバイスの設計の自由度を向上させることができる。
【実施例0089】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
はじめに、以下の例において用いた材料を示す。
((A)重合性化合物)
重合性化合物1:下記式(12)に示す脂環式エポキシ化合物(3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2官能)、CEL2021P、ダイセル社製、屈折率1.52
重合性化合物2:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、YL983U、三菱ケミカル社製、屈折率1.58
重合性化合物3:ビスフェノールE型エポキシ樹脂、R1710、プリンテック社製、屈折率1.58
重合性化合物4:2官能オキセタン、OXT-221、東亞合成社製、屈折率1.45
重合性化合物5:EO変性ビスフェノールA骨格アクリル樹脂(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、2官能)、A-BPE-4、新中村化学工業社製、屈折率1.54
重合性化合物6:単官能芳香族アクリル樹脂、POB-A、共栄社化学社製、屈折率1.57
重合性化合物7:フルオレン骨格アクリル樹脂(2官能)、オグソールEA-0200、大阪ガス化学社製、屈折率1.63
重合性化合物8:多官能アクリル樹脂(トリメチルロールプロパントリアクリレート、3官能)、TMP-A、共栄社化学社製、屈折率1.47
【0091】
【化8】
【0092】
((C)光重合開始剤)
開始剤1:光カチオン開始剤、CPI-210S、サンアプロ社製、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
開始剤2:光ラジカル開始剤、Omnirad TPO-H、IGM Resins社製、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド
(増感剤)
増感剤1:光増感剤(アントラセン化合物)、UVS-1331、川崎化成社製
(添加剤)
添加剤1:シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBM-403、信越化学工業社製
添加剤2:シランカップリング剤(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、KBM-5103、信越化学工業社製
【0093】
((B)フィラー)
フィラー1:タルク、SG-200、日本タルク社製、屈折率1.54、熱伝導率5W/m・K、平均粒径d502.7μm
フィラー2(水酸化アルミニウム1):水酸化アルミニウム、CW-320LV、住友化学社製、屈折率1.57、熱伝導率11W/m・K、平均粒径d5018μm
フィラー3(水酸化アルミニウム2):水酸化アルミニウム、CW-310LV、住友化学社製、屈折率1.57、熱伝導率11W/m・K、平均粒径d5010μm
フィラー4:アルミナ、ASFP20、デンカ社製、屈折率1.76、熱伝導率25W/m・K、平均粒径d500.3μm
フィラー4:シリカ、SO-C6、アドマテックス社製、屈折率1.46、熱伝導率2W/m・K、平均粒径d502.0μm
【0094】
(実施例1~8、比較例1~4)
表1に示した配合組成となるように各成分を配合し、流動性を有し溶剤を含まない組成物である組成物を得た。具体的には、50mLの茶色ポリ瓶に組成物が30gとなるように各成分を秤量して、泡取り錬太郎(シンキー社製)で10分攪拌した。その後、3本ロールで3回混錬して、組成物を得た。
各例で得られた組成物またはその硬化物の物性を以下の方法で測定した。測定結果を表1にあわせて示す。なお、比較例3および4については、上述の方法で組成物の調製を試みた際にペースト化せずに粉状のままとなったことから、以下の測定をおこなわなかった。
【0095】
(平行光線透過率)
100μm厚のテフロン(登録商標)をスペーサーとして、組成物を25mm×70mmの無アルカリガラスに挟みこんだ。波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm2、積算光量3000mJ/cm2の条件で両面に照射し、硬化させ、平行光線透過率測定用のサンプルを得た。
得られたサンプルを紫外可視分光光度計 UV-2550(島津製作所社製)で測定して、380~780nmの透過率の平均を求めた。
【0096】
(熱伝導率)
まず、以下の手順で組成物の硬化物を得た。すなわち、100μm厚のテフロン(登録商標)シートを型枠として、PETフィルム間に未硬化の組成物を挟みこみ、波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm2、積算光量3000mJ/cm2の条件で硬化させ、硬化物を得た。得られた硬化物の密度、比熱および熱拡散率をそれぞれ以下の方法で測定した。
【0097】
(密度測定)
得られた硬化物をアキュピックII 1340 自動密度計(島津製作所社製)で2回測定して、平均値を密度とした。
(比熱測定)
パーキンエルマー社製のパン(B014-3018/B014-3003)に得られた硬化物を約5mg秤量して、Diamond DSC(パーキンエルマー社製)にて10℃/秒で昇温して、23℃での比熱を求めた。
(熱拡散率測定)
得られた硬化物を周期加熱法拡散率測定装置(FTC-RT アドバンス理工社製)で3回測定して、平均値を熱拡散率とした。
【0098】
(熱伝導率の算出)
以上により得られた測定値を用いて、以下の式(100)により、硬化物の熱伝導率を求めた。
熱伝導率=密度×比熱×熱拡散率 (100)
【0099】
(組成物の粘度)
得られた組成物の粘度を、E型粘度計(TVE-35L、東機産業社製)で3°×R9.7のコーンを用いて25℃、以下の回転数にて測定した。
粘度1Pa・s未満:100rpm
粘度1Pa・s以上100Pa・s未満:20rpm
粘度100Pa・s以上:5rpm
【0100】
(硬化率)
組成物を25mm×70mmの無アルカリガラス上にNo.6のバーコーターで塗布し、大気下で波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm、積算光量3000mJ/cmの条件で照射し、硬化させた。
また、実施例3および8以外の例については、上記条件で硬化後、さらにホットプレート上で80℃、30分硬化させ、熱硬化膜を得た。
得られた硬化サンプルと硬化前のサンプルをFT/IR-6600(日本分光社製)でIR測定し、以下の式により硬化率を得た。
硬化率=[1-{反応ピーク高さ(硬化後)/基準ピーク高さ(硬化後)}/反応ピーク高さ(硬化前)/基準ピーク高さ(硬化前)}]×100
反応率サンプルのための、基準ピークと反応ピークは以下の通りとした。
重合性化合物1の場合、基準ピークを1610cm-1、反応ピークを830cm-1
重合性化合物2、3の場合、基準ピークを1610cm-1、反応ピークを910cm-1
重合性化合物4の場合、基準ピークを1610cm-1、反応ピークを980cm-1
重合性化合物5、6、7、8の場合、基準ピークを1722cm-1、反応ピークを810cm-1
【0101】
(クロスピール強度)
硬化膜を安定的に形成できることの指標として、クロスピール強度を測定した。
25mm×70mmの無アルカリガラス上に組成物をのせ、50μm厚のテフロン(登録商標)をスペーサーとして配置して、25mm×70mmの無アルカリガラスを十字に重ねて、組成物の面積が1.0~5.0mm2となるようにした。波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm2、積算光量3000mJ/cm2の条件で照射し、硬化させた。実施例3以外の例については、上記硬化後さらにホットプレート上で80℃、30分硬化させ、熱硬化サンプルを得た。
得られたサンプルを200X型万能試験機(インテスコ社製)で5mm/分の速度で引張って、強度を求めた。強度が2.0MPa以上の場合を合格とした。
【0102】
【表1】
【0103】
表1より、各実施例においては、組成物の光硬化性に優れることと、硬化膜を安定的に形成できることとの効果のバランスに優れていた。