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特開2024-147858中和処理システム、及び、中和処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147858
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】中和処理システム、及び、中和処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/66 20230101AFI20241009BHJP
【FI】
C02F1/66 530Q
C02F1/66 510S
C02F1/66 522B
C02F1/66 530C
C02F1/66 530G
C02F1/66 530K
C02F1/66 530L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060535
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】佐川 恭一
(72)【発明者】
【氏名】坂根 英之
(72)【発明者】
【氏名】丹 秀男
(72)【発明者】
【氏名】栗橋 孝明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小柳 裕
(72)【発明者】
【氏名】片根 弘登
(72)【発明者】
【氏名】一條 大介
(57)【要約】
【課題】精度よく、かつ、効率的に、アルカリ性の被処理水の中和処理を行う。
【解決手段】中和処理システム20は、アルカリ性の被処理水を中和処理するものである。中和処理システム20は、被処理水が流通可能な流通経路21と、流通経路21に設けられて、被処理水のpHを測定するpH測定部2aと、流通経路21に設けられて、被処理水の濁りの度合いを測定する濁り度合い測定部2bと、流通経路21におけるpH測定部2aより下流側かつ濁り度合い測定部2bより下流側に設けられて、被処理水に中和剤を添加する中和剤添加部5bと、pH測定部2a及び濁り度合い測定部2bにて測定された被処理水のpH及び濁りの度合いに基づいて、中和剤添加部5bにおける中和剤の被処理水に対する添加量を設定する添加量設定部12と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性の被処理水を中和処理するシステムであって、
前記被処理水が流通可能な流通経路と、
前記流通経路に設けられて、前記被処理水のpHを測定するpH測定部と、
前記流通経路に設けられて、前記被処理水の濁りの度合いを測定する濁り度合い測定部と、
前記流通経路における前記pH測定部より下流側かつ前記濁り度合い測定部より下流側に設けられて、前記被処理水に中和剤を添加する中和剤添加部と、
前記測定されたpH及び濁りの度合いに基づいて、前記中和剤添加部における前記中和剤の前記被処理水に対する添加量を設定する添加量設定部と、
を備える、中和処理システム。
【請求項2】
前記添加量設定部は、前記被処理水のpH及び濁りの度合いと前記添加量とが対応付けられたテーブルを有し、
前記添加量設定部は、前記測定されたpH及び濁りの度合いと前記テーブルとに基づいて、前記添加量を設定する、請求項1に記載の中和処理システム。
【請求項3】
前記添加量設定部は、前記測定された濁りの度合いが高いほど前記添加量が多くなるように前記添加量を設定する、請求項1又は請求項2に記載の中和処理システム。
【請求項4】
アルカリ性の被処理水に中和剤を添加することにより前記被処理水を中和処理する方法であって、
前記中和剤が添加されるより前の前記被処理水のpH及び濁りの度合いを測定することと、
前記測定されたpH及び濁りの度合いに基づいて、前記中和剤の前記被処理水に対する添加量を設定することと、
を含む、中和処理方法。
【請求項5】
前記添加量を設定することは、
前記測定されたpHに基づいて前記添加量の基準値を決定する第1工程と、
前記測定された濁りの度合いに基づいて前記基準値を補正し、その結果を前記添加量の設定値として決定する第2工程と、
を含む、請求項4に記載の中和処理方法。
【請求項6】
前記第2工程は、前記測定された濁りの度合いが高いほど前記添加量の設定値が高くなるように前記補正を行うことを含む、請求項5に記載の中和処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性の被処理水を中和処理するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダムやトンネルなどの土木工事や大規模な建築工事の現場で発生する工事廃液を河川などに放流できるように水処理するに当たって、工事廃液に二酸化炭素を注入することで中和処理を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-9473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、二酸化炭素が注入された後の工事廃液(すなわち、中和処理後の工事廃液)のpHをpHセンサで測定し、その測定結果に基づいて、二酸化炭素の工事廃液への注入量が調節され得る。つまり、特許文献1に開示の技術では、pHセンサによる工事廃液のpHの測定が中和処理後に行われるので、前述の注入量の調節が事後的であった。また、pHセンサの測定結果のみに基づいて前述の注入量を設定しても、その値が、実際の中和処理に要する二酸化炭素の注入量と乖離することが多かった。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、精度よく、かつ、効率的に中和処理を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明に係る中和処理システムは、アルカリ性の被処理水を中和処理するシステムである。本発明に係る中和処理システムは、処理水が流通可能な流通経路と、流通経路に設けられて、被処理水のpHを測定するpH測定部と、流通経路に設けられて、被処理水の濁りの度合いを測定する濁り度合い測定部と、流通経路におけるpH測定部より下流側かつ濁り度合い測定部より下流側に設けられて、被処理水に中和剤を添加する中和剤添加部と、前記測定されたpH及び濁りの度合いに基づいて、中和剤添加部における中和剤の被処理水に対する添加量を設定する添加量設定部と、を備える。
【0007】
本発明に係る中和処理方法は、アルカリ性の被処理水に中和剤を添加することにより被処理水を中和処理する方法である。本発明に係る中和処理方法は、中和剤が添加されるより前の被処理水のpH及び濁りの度合いを測定することと、前記測定されたpH及び濁りの度合いに基づいて、中和剤の被処理水に対する添加量を設定することと、を含む。
【0008】
ここにおいて、本発明における「被処理水の濁りの度合いを測定すること」には、被処理水の濁度を測定すること、又は、被処理水に含まれる懸濁物質(SS)の量(例えばSS濃度)を測定すること、が含まれ得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被処理水の中和処理に際して、被処理水のpHの測定のみならず、被処理水の濁りの度合いも測定することで、精度よく、かつ、効率的に中和処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態における中和処理システムを含む濁水処理システムの概略構成を示す図
図2】同上実施形態における中和処理方法を示すフローチャート
図3】同上実施形態における濁水のpH及びSS濃度とCO添加量との関係を示すテーブル
図4】同上実施形態における濁水のSS濃度と所要注入倍率との関係を示すテーブル
図5】本発明の第2実施形態における中和剤の添加量の設定方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態における中和処理システム20を含む濁水処理システム1の概略構成を示す。
濁水処理システム1は、例えば、土木工事や建築工事の現場で発生する廃液を放流管理値内に処理し、河川などに放流するためのシステムである。これらの工事で発生する廃液は、例えば、アルカリ性の濁水(泥水)であり、例えば、セメント及び/又はベントナイトを含有し得る。
【0013】
濁水処理システム1は原水槽2と凝集槽3と放流槽4とを備える。原水槽2と凝集槽3とは配管5によって接続されている。凝集槽3と放流槽4とは配管6によって接続されている。
【0014】
原水槽2には前述の濁水が貯留される。原水槽2に貯留されている濁水(原水)は、図示しないポンプ等により配管5に送出される。配管5には、配管5内を流れる濁水の流量を測定するための流量計5aが設けられている。流量計5aは例えば電磁流量計である。
【0015】
本実施形態において、配管5には、上流側から下流側に向かって順に、中和剤添加部5b、無機凝集剤添加部5c、及び、高分子凝集剤添加部5dが設けられている。中和剤添加部5bには中和剤供給配管7の下流側端部が接続されており、中和剤添加部5bでは、濁水を中和するための酸性の中和剤が、濁水に添加される。無機凝集剤添加部5cには無機凝集剤供給配管8の下流側端部が接続されており、無機凝集剤添加部5cでは、例えばポリ塩化アルミニウム(PAC)などの無機凝集剤が濁水に添加される。高分子凝集剤添加部5dには高分子凝集剤供給配管9の下流側端部が接続されており、高分子凝集剤添加部5dでは、高分子凝集剤が濁水に添加される。
【0016】
ここにおいて、前述の凝集剤は、濁水中の微細粒子を凝集させてフロック(floc)にする機能を有する。本実施形態では、前述の凝集剤として、無機凝集剤と高分子凝集剤との両方を用いるが、この他、これらの凝集剤のいずれか一方を用いてもよい。本実施形態では、前述の中和剤として二酸化炭素(CO)を用いるが、この他、中和剤として希硫酸を用いてもよい。
【0017】
本実施形態では、中和剤添加部5b、無機凝集剤添加部5c、及び高分子凝集剤添加部5dは、例えばラインミキサを含んで構成され得る。中和剤添加部5bでは、中和剤供給配管7からの中和剤が濁水に注入されて混合され、無機凝集剤添加部5cでは、無機凝集剤供給配管8からの無機凝集剤が濁水に注入されて混合され、高分子凝集剤添加部5dでは、高分子凝集剤供給配管9からの高分子凝集剤が濁水に注入されて混合され得る。
【0018】
尚、本実施形態では、配管5において、上流側から下流側に向かって、中和剤添加部5b、無機凝集剤添加部5c、高分子凝集剤添加部5dの順に並んでいるが、中和剤添加部5b、無機凝集剤添加部5c、及び、高分子凝集剤添加部5dの並び順はこれに限らない。例えば、配管5において、上流側から下流側に向かって、無機凝集剤添加部5c、高分子凝集剤添加部5d、中和剤添加部5bの順に並んでいてもよい。
【0019】
ここにおいて、前述の濁水が、本発明の「被処理水」の一例に対応する。この「被処理水」は、セメント及び/又はベントナイトを含有し得る。
【0020】
凝集槽3では、前述のフロック等を沈殿させ、その上澄みは、図示しないポンプ等により配管6に送出されて、放流槽4に貯留される。放流槽4に貯留されている水(以下、「処理済み水」と称する)については、放流管理値内に処理されていることが確認された後に、河川などに放流される。尚、処理済み水が放流管理値内に処理されていることを確認するために、pH計や濁度計などの測定手段(図示せず)が放流槽4に設けられ得る。また、凝集槽3にpH計や濁度計などの測定手段を設けてもよい。
【0021】
中和処理システム20は濁水処理システム1を構成するものである。また、中和処理システム20は、アルカリ性の濁水に酸性の中和剤を添加することにより濁水を中和処理するものである。尚、本実施形態における「中和処理」とは、例えば、当該処理の目標値をpH=7~7.5程度として、アルカリ性の濁水に酸性の中和剤を添加して中和する処理を意味する。
【0022】
中和処理システム20は、濁水が流通可能な流通経路21として、上流側から下流側に向かって順に、前述の原水槽2と配管5とを有する。すなわち、流通経路21は原水槽2と配管5とを含む。
【0023】
中和処理システム20は、濁水のpHを測定するpH測定部2aと、濁水の濁りの度合いを測定する濁り度合い測定部2bとを有する。濁り度合い測定部2bにて測定される「濁水の濁りの度合い」には、「濁水の濁度」、又は、「濁水に含まれる懸濁物質(SS)の量(例えばSS濃度)」が含まれ得る。濁り度合い測定部2bにて測定される「濁水の濁りの度合い」が「濁水の濁度」である場合には、例えば濁度計などの濁度測定手段が用いられ得る。濁り度合い測定部2bにて測定される「濁水の濁りの度合い」が「濁水に含まれるSSの量(例えばSS濃度)」である場合には、SS計(例えばSS濃度計)などの懸濁物質量測定手段が用いられ得る。
【0024】
本実施形態では、pH測定部2aと濁り度合い測定部2bとが原水槽2に設けられているが、pH測定部2aと濁り度合い測定部2bとは、流通経路21における中和剤添加部5bより上流側の任意の場所に設置され得る。また、流通経路21において、pH測定部2aの下流側、かつ、濁り度合い測定部2bの下流側に、中和剤添加部5bが設けられている。
【0025】
中和処理システム20は、中和剤添加部5b及び中和剤供給配管7と、中和剤供給配管7に供給される中和剤が収容された収容部10と、を備える。本実施形態では、中和剤としてCOを用いているので、収容部10は、例えば、COを収容する複数のボンベにより構成され得る。
【0026】
中和剤供給配管7には、中和剤供給配管7内を流れる中和剤の流量を測定するための流量計7aと、中和剤供給配管7内を流れる中和剤の流量を調節するための流量制御弁7bとを備える。尚、本実施形態では、流量計7aと流量制御弁7bとを各別の装置として中和剤供給配管7に各別に設けているが、この他、流量計7aと流量制御弁7bとを備えるマスフローコントローラ(MFC)を中和剤供給配管7に設けてもよい。
【0027】
中和処理システム20は、濁水に対する中和処理を制御するための制御部11を備える。制御部11は、pH測定部2aからの濁水のpHの測定値に関する情報と、濁り度合い測定部2bからの濁水の濁りの度合いの測定値に関する情報とを、有線通信又は無線通信を介して受け取るように構成されている。制御部11は、流量計5aからの濁水の流量の測定値に関する情報を、有線通信又は無線通信を介して受け取るように構成されている。制御部11は、流量計7aからの中和剤の流量の測定値に関する情報を、有線通信又は無線通信を介して受け取るように構成されている。制御部11は、流量制御弁7bの弁開度の指示情報を、有線通信又は無線通信を介して、流量制御弁7bに伝達するように構成されている。
【0028】
制御部11は、中和剤の濁水に対する添加量を設定する添加量設定部12を備える。添加量設定部12は、当該添加量設定のための種々の処理を行う処理部12aと、当該種々の処理に用いられ得る種々のデータ(後述の図3及び図4に示すテーブルを含む)を記憶する記憶部12bとを備える。
【0029】
図2は、制御部11によって実現可能な中和処理方法を示すフローチャートである。
【0030】
ステップS1では、pH測定部2aにて濁水のpHを測定すると共に、濁り度合い測定部2bにて濁水の濁りの度合いを測定する。これらの測定時期については、同時であってもよく、又は、互いに前後にずれてもよい。
【0031】
次に、ステップS2では、ステップS1にて取得された濁水のpHの測定値と濁水の濁りの度合いの測定値とに基づいて、濁水の中和に必要な、中和剤の濁水に対する添加量を設定する。
【0032】
ここで、ステップS2にて実施される中和剤の添加量を設定方法の一例について、前述の図1及び図2に加えて、図3を用いて説明する。
【0033】
図3は、濁水のpHと、濁水の濁りの度合いの一例である濁水のSS濃度と、中和剤の一例であるCOの濁水に対する添加量(以下、「CO添加量」と称する)との関係を示すテーブルである。このテーブルは、工事現場で発生し得る濁水のバリエーションごとに試料を準備して各試料の中和処理をする実験を行うなどして事前に得られたものであり、前述の記憶部12bに予め記憶されている。このテーブルでは、濁水のpHが略同等(略一定)である場合に、濁水のSS濃度が高いほど、CO添加量が多くなることが示されている。尚、このテーブルにおける濁水のSS濃度については、濁度計によって測定され得る濁度(単位は「度」や「NTU」など)をSS濃度(単位は「ppm」や「mg/リットル」など)に換算して得られたものであってもよい。この換算式等についても、前述の実験を行うなどして事前に得られ得る。
【0034】
ステップS2では、ステップS1にて取得された濁水のpHの測定値と、濁水のSS濃度の測定値(測定された濁水の濁度を前述のようにSS濃度に換算したものを含む)とを、図3に示すテーブルに適用して、CO添加量(濁水1リットル当たりのCOの添加量)を設定する。例えば、図3を参照して、濁水のpHの測定値が10であり、濁水のSS濃度の測定値が6000ppmであれば、CO添加量として、0.01496g/リットルが設定される。尚、図3に示すテーブルを構成する有限個の離散データを補間するために、周知の手法(例えば、線形補間、ラグランジュ補間、スプライン補間など)を用いてもよいことは言うまでもない。
このようにして、ステップS2では、濁水の中和に必要な、中和剤の濁水に対する添加量が設定される。
【0035】
次に、ステップS3では、ステップS2にて設定された中和剤の濁水に対する添加量となるように、流量制御弁7bの弁開度を制御することで、中和剤の濁水に対する添加を制御する。この制御においては、ステップS2にて設定された中和剤の濁水に対する添加量と、流量計5aにて測定された濁水の流量とに基づいて、中和剤の目標流量が算出され、この目標流量となるように、流量計7aによって中和剤の流量を監視しつつ、流量制御弁7bの弁開度を制御する。
このようにして、濁水に対する中和処理のフィードフォワード制御が実施される。
【0036】
次に、図3に示したテーブルの作成方法の一例について、図4を用いて説明する。
図4は、濁水のSS濃度と所要注入倍率との関係を示すテーブルである。
【0037】
図3に示すテーブルを作成する際には、まず、CO添加量の基準値αを算出する。この基準値αは、アルカリ性の濁水を目標pH(本実施形態では目標pH=7)にするのに必要なCO添加量である。この基準値αの算出には、例えば、以下の式(1)が用いられ得る。
【0038】
α[g/リットル]=44×10-(14-n) ・・・(1)
【0039】
この式(1)において、右辺の「44」はCOの分子量を意味し、「n」は濁水のpHを意味する。
【0040】
次に、前述の算出された基準値αに対して、図4に示す濁水のSS濃度と所要注入倍率βとの関係を示すテーブルを適用することで(具体的には、濁水のSS濃度ごとに、α×βを算出することで)、図3に示すテーブルが作成される。
【0041】
例えば、図3に示すテーブルにおける濁水のpH=10に関して説明すると、まず、前述の式(1)により、前述の基準値αが以下のように算出される。
α=44×10-(14-10)
=44×10-4
=0.0044[g/リットル]
濁水のSS濃度が3000ppmであれば、図4に示すように所定注入倍率βが1.8であるので、濁水のpHが10、濁水のSS濃度が3000ppmであれば、CO添加量は、
α×β=0.0044×1.8
=0.00792[g/リットル]
となる。
濁水のSS濃度が6000ppmであれば、図4に示すように所定注入倍率βが3.4であるので、濁水のpHが10、濁水のSS濃度が6000ppmであれば、CO添加量は、
α×β=0.0044×3.4
=0.01496[g/リットル]
となる。
濁水のSS濃度が12000ppmであれば、図4に示すように所定注入倍率βが3.5であるので、濁水のpHが10、濁水のSS濃度が12000ppmであれば、CO添加量は、
α×β=0.0044×3.5
=0.01540[g/リットル]
となる。
濁水のpHが10以外である場合についてもこれと同様に算出することで、図3に示すテーブルが作成される。
【0042】
ここにおいて、図3及び図4に示すテーブルは、工事現場で発生し得る濁水のバリエーションごとに試料を準備して各試料の中和処理をする実験を行うなどして事前に得られたものであり、本発明者によって見出されたものである。図3に示すテーブルには、濁水のpHが略同等(略一定)である場合に、濁水のSS濃度が高いほど、CO添加量が多くなることが示されており、また、図4に示すテーブルには、濁水のSS濃度が高いほど、所要注入倍率βが高くなることが示されている。これらは、本発明者によって見出された新たな知見である。
【0043】
また、前述のステップS2において、添加量設定部12は、図3に示すテーブルを参照し、pH測定部2aにて測定される濁水のpHが略同等(略一定)である場合に、濁り度合い測定部2bにて測定される濁水のSS濃度が高いほど、CO添加量が多くなるように、CO添加量を設定することができる。
【0044】
本発明は、工事現場等で発生する濁水の濁りの度合いを測定することで、当該濁水における、中和剤の効きを低減させる妨害成分(緩衝成分)の含有状況を簡易に把握できるという、本発明者によって見出された新たな知見に基づいてなされたものであり、その測定結果を、当該濁水の中和処理のフィードフォワード制御に活用することができるという、格別な効果を奏するものである。
【0045】
本実施形態によれば、中和処理システム20は、アルカリ性の被処理水(例えば濁水)を中和処理するシステムである。中和処理システム20は、被処理水が流通可能な流通経路21と、流通経路21に設けられて、被処理水のpHを測定するpH測定部2aと、流通経路21に設けられて、被処理水の濁りの度合いを測定する濁り度合い測定部2bと、流通経路21におけるpH測定部2aより下流側かつ濁り度合い測定部2bより下流側に設けられて、被処理水に中和剤(例えばCO)を添加する中和剤添加部5bと、pH測定部2a及び濁り度合い測定部2bにて測定された被処理水のpH及び濁りの度合いに基づいて、中和剤添加部5bにおける中和剤の被処理水に対する添加量を設定する添加量設定部12と、を備える。従って、被処理水の中和処理に際して、被処理水のpHの測定のみならず、被処理水の濁りの度合いも測定することで、精度よく、かつ、効率的に、中和処理のフィードフォワード制御を実現することができる。
【0046】
また本実施形態によれば、添加量設定部12は、被処理水(例えば濁水)のpH及び濁りの度合いと、中和剤(例えばCO)の被処理水に対する添加量とが対応付けられたテーブル(図3参照)を有する。添加量設定部12は、pH測定部2a及び濁り度合い測定部2bにて測定された被処理水のpH及び濁りの度合いと、テーブル(図3参照)とに基づいて、中和剤の被処理水に対する添加量を設定する(図2のステップS2参照)。このテーブル(図3参照)は、被処理水のpHが略同等(略一定)である場合に、被処理水の濁りの度合いが高いほど当該添加量が多くなるように前記対応付けがなされている。このテーブル(図3参照)を用いて当該添加量を容易に設定することができる。
【0047】
また本実施形態によれば、添加量設定部12は、濁り度合い測定部2bにて測定された被処理水(例えば濁水)の濁りの度合いが高いほど、中和剤(例えばCO)の被処理水に対する添加量が多くなるように、当該添加量を設定する。これにより、被処理水の濁りの度合いの変化に応じて迅速に当該設定値を変更し、それを、被処理水の中和処理のフィードフォワード制御に反映することができる。
【0048】
添加量設定部12は、被処理水(例えば濁水)の濁りの度合いと、所要注入倍率βとが対応付けられたテーブル(図4参照)を有する。このテーブル(図4参照)は、被処理水の濁りの度合いが高いほど所要注入倍率βが高くなるように前記対応付けがなされている。これは、本発明者によって見出された新たな知見である。
【0049】
また本実施形態によれば、中和処理方法は、アルカリ性の被処理水(例えば濁水)に中和剤(例えばCO)を添加することにより被処理水を中和処理する方法である。この中和処理方法は、中和剤が添加されるより前の被処理水のpH及び濁りの度合いを測定すること(図2のステップS1参照)と、前記測定されたpH及び濁りの度合いに基づいて、中和剤の被処理水に対する添加量を設定すること(図2のステップS2参照)と、を含む。従って、被処理水の中和処理に際して、被処理水のpHの測定のみならず、被処理水の濁りの度合いも測定することで、精度よく、かつ、効率的に、中和処理のフィードフォワード制御を実現することができる。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態について、図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態における中和剤の添加量の設定方法を示すフローチャートである。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0051】
本実施形態では、図5に示す中和剤の添加量の設定方法が、前述の図2のステップS2にて実施され得る。本実施形態においても、中和剤の一例としてCOを採用しているが、中和剤はCOに限らず、例えば希硫酸であってもよい。
【0052】
ステップS11では、pH測定部2aにて測定された濁水のpH(つまり、濁水のpHの測定値)に基づいて、前述のCO添加量の基準値αを決定する(第1工程)。この基準値αの決定には、例えば前述の式(1)による当該基準値αの算出結果が用いられる。
【0053】
次に、ステップS12では、濁り度合い測定部2bにて測定された濁水の濁りの度合い(つまり、濁水の濁りの度合いの測定値)に基づいて、前述のCO添加量の基準値αを補正し、ステップS13では、その補正結果を、前述のCO添加量の設定値として決定する(第2工程)。
【0054】
ここで、ステップS12,S13における処理の一例について、前述の図4を用いて説明する。
【0055】
ステップS12では、濁水の濁りの度合いの一例であるSS濃度の測定値を、図4に示すテーブルに適用することで、当該SS濃度の測定値に対応した所要注入倍率βを取得する。この取得した所要注入倍率βを、ステップS11にて決定されたCO添加量の基準値αに対して適用することで(具体的には、α×βを算出することで)、当該CO添加量の基準値αの補正が行われる。尚、このステップでは図4を用いるので、前述のSS濃度の測定値が高いほど、前述のCO添加量の設定値が高くなるように、前述の補正が行われ得る。
ステップS13では、この補正結果(つまり、前述のα×β)を、当該CO添加量の設定値として決定する。
【0056】
尚、図4に示すテーブルを構成する有限個の離散データを補間するために、周知の手法(例えば、線形補間、ラグランジュ補間、スプライン補間など)を用いてもよいことは言うまでもない。
【0057】
特に本実施形態によれば、中和処理方法において、中和剤(例えばCO)の被処理水(例えば濁水)に対する添加量を設定すること(図2のステップS2参照)は、前記測定されたpHに基づいて当該添加量の基準値αを決定する第1工程(図5のステップS11参照)と、前記測定された濁りの度合いに基づいて当該添加量の基準値αを補正し、その結果を当該添加量の設定値として決定する第2工程(図5のステップS12,S13)と、を含む。第2工程は、前記測定された濁りの度合いが高いほど当該添加量の設定値が高くなるように前記補正を行うことを含む。従って、前述の図3に示したテーブルの作成を省略することができ、その分、記憶部12bの負担の軽減を行うことができる。
【0058】
前述の第1及び第2実施形態では、CO添加量の基準値αの算出に前述の式(1)を用いたが、これに代えて、当該基準値αの算出に、以下の式(2)を用いてもよい。
【0059】
α[g/リットル]=44×{10-(14-n)-10-(14-m)} …(2)
【0060】
この式(2)において、右辺の「44」及び「n」は前述の式(1)と同様であり、右辺の「m」は、中和処理の目標pHである。この目標pHは、例えば7~7.5の範囲内であり得る。
【0061】
前述の第1及び第2実施形態では、本発明の「被処理水」の一例として、工事現場で発生する廃液を挙げて説明したが、この他、例えば、プレキャストコンクリート製品を製造する工場で発生する廃液も、本発明の「被処理水」の一例として挙げられ得る。
【0062】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1 濁水処理システム
2 原水槽
2a pH測定部
2b 濁り度合い測定部
3 凝集槽
4 放流槽
5 配管
5a 流量計
5b 中和剤添加部
5c 無機凝集剤添加部
5d 高分子凝集剤添加部
6 配管
7 中和剤供給配管
7a 流量計
7b 流量制御弁
8 無機凝集剤供給配管
9 高分子凝集剤供給配管
10 収容部
11 制御部
12 添加量設定部
12a 処理部
12b 記憶部
20 中和処理システム
21 流通経路
図1
図2
図3
図4
図5